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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147364
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】有機半導体薄膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/368 20060101AFI20241008BHJP
   C30B 29/54 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L21/368 L
C30B29/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060328
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】赤井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】網 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】藤内 謙光
【テーマコード(参考)】
4G077
5F053
【Fターム(参考)】
4G077BF02
4G077HA06
5F053AA50
5F053LL02
5F053LL05
5F053LL10
5F053PP03
5F053RR20
(57)【要約】
【課題】新規な有機半導体薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る有機半導体薄膜の製造方法は、工程1および工程2を有する。工程1は、酸基を有する有機半導体分子を含んでいる溶媒を、基材に塗布する工程である。工程2は、基材に塗布した酸基を有する有機半導体分子と、気相のアミンとを接触させる工程である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を有する、有機半導体薄膜の製造方法:
工程1:酸基を有する有機半導体分子を含んでいる溶媒を、基材に塗布する工程;
工程2:上記基材に塗布した上記酸基を有する有機半導体分子と、気相のアミンとを接触させる工程。
【請求項2】
上記酸基は、スルホン酸基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記アミンは、アルキルアミンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
酸基を有する有機半導体分子と、アミンとを含んでいる、結晶性の有機半導体薄膜。
【請求項5】
上記酸基は、スルホン酸基である、請求項4に記載の有機半導体薄膜。
【請求項6】
上記アミンは、アルキルアミンである、請求項4に記載の有機半導体薄膜。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の有機半導体薄膜を含んでいる、有機半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体薄膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、次世代の技術を担うことが期待される重要な材料であり、今日に至るまで様々な研究が積み重ねられてきている。有機半導体の物性には、有機半導体分子の構造のみならず、その配列も影響を及ぼす。例えば、本発明者らによる既報(非特許文献1)では、スルホン酸基を有する有機半導体分子とアミンとの単結晶を作製した。このとき、アミンの種類を変更することにより、結晶中の有機半導体分子の配列を変化させることができた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】R. Akai, K. Oka, N. Tohnai et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 2022, 95, 1178-1182.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの場合、有機半導体デバイスにおける有機半導体の形状は、薄膜状である。そのため、有機半導体デバイスとしての性能を評価するためには、有機半導体薄膜の物性を評価することが好ましい。
【0005】
しかし、非特許文献1は、有機半導体の単結晶(粒子状)の製造方法を開示しているが、有機半導体薄膜の製造方法を開示していない。さらに、同文献で作製しているのはスルホン酸およびアミンによる塩であり、アミンの種類によっては、溶媒に対する溶解性があまり高くなく、溶液を介した薄膜化も難しい場合がある。
【0006】
また、非特許文献1のように、酸およびアミンを溶媒中で混合してから結晶化させる方法は、材料の組合せによっては溶媒に対する溶解度が低下するため、適用の難しい場合がある。
【0007】
本発明の一態様は、新規な有機半導体薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明には、下記の態様が含まれる。
<1>
下記工程を有する、有機半導体薄膜の製造方法:
工程1:酸基を有する有機半導体分子を含んでいる溶媒を、基材に塗布する工程;
工程2:上記基材に塗布した上記酸基を有する有機半導体分子と、気相のアミンとを接触させる工程。
<2>
上記酸基は、スルホン酸基である、<1>に記載の製造方法。
<3>
上記アミンは、アルキルアミンである、<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>
酸基を有する有機半導体分子と、アミンとを含んでいる、結晶性の有機半導体薄膜。
<5>
上記酸基は、スルホン酸基である、<4>に記載の有機半導体薄膜。
<6>
上記アミンは、アルキルアミンである、<4>または<5>に記載の有機半導体薄膜。
<7>
<4>~<6>のいずれかに記載の有機半導体薄膜を含んでいる、有機半導体デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、新規な有機半導体薄膜の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1Aに係るBTDBS/nBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図2】実施例1Bに係るBTDBS/sBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図3】実施例1Cに係るBTDBS/tBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図4】実施例2Aに係るBTDBS/nBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図5】実施例2Bに係るBTDBS/sBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図6】実施例2Cに係るBTDBS/tBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図7】実施例3Aに係るBTBTDS/nBuA薄膜のXRDスペクトルである。
図8】実施例3Bに係るBTBTDS/sBuA薄膜のXRDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、以下に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する各構成に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に示した範囲で種々に変更できる。本発明の技術的範囲は、本明細書に開示されている複数の技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態または実施例にも及ぶ。このとき、複数の技術的手段は、複数の実施形態または実施例にわたって開示されていてもよい。
【0012】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0013】
〔1.有機半導体薄膜の製造方法〕
本発明の一態様に係る有機半導体薄膜の製造方法は、工程1および工程2を有する。工程1は、酸基を有する有機半導体分子を含んでいる溶媒を、基材に塗布する工程である。工程2は、基材に塗布した酸基を有する有機半導体分子と、気相のアミンとを接触させる工程である。以下、それぞれの工程について詳述する。
【0014】
[1.1.工程1]
工程1において、酸基を有する有機半導体分子は、有機半導体骨格および酸基を有している。有機半導体骨格とは、本技術分野において一般的に用いられる有機半導体化合物の分子骨格である。それゆえ、酸基を有する有機半導体分子とは、本技術分野において一般的に用いられる有機半導体化合物に含まれている一部の水素原子が酸基に置換された分子であると言える。
【0015】
有機半導体骨格には、一般的には、π電子共役系が含まれている。π電子共役系に含まれている原子の数(水素原子を含めない)は、例えば、10個以上、12個以上または14個以上でありうる。一実施形態において、有機半導体骨格には、アセン構造および/またはチオフェン構造が含まれている。一実施形態において、有機半導体骨格に含まれている原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のいずれかである。
【0016】
酸基を有する有機半導体分子に含まれている酸基の種類は、特に限定されない。一実施形態において、酸基は、スルホン酸基、カルボン酸基およびリン酸基からなる群より選択される1種類以上である。アミンと共に安定な結晶を形成しやすいという点では、スルホン酸基が好ましい。
【0017】
酸基を有する有機半導体分子に含まれている酸基の個数および位置は、特に限定されない。酸基の数は、例えば偶数個であり、好ましくは2個である。酸基の位置は、好ましくは、有機半導体骨格上の点対称となる位置である。このような分子設計とすれば、アミンと反応させたときに有機半導体骨格が配向しやすく、それゆえ結晶を形成しやすい。
【0018】
酸基を有する有機半導体分子の例としては、下記が挙げられる。また、下記の構造式において、スルホン酸基の一方または両方がカルボン酸基またはリン酸基に置換されている分子も、さらなる例として挙げられる(一方のスルホン酸基がカルボン酸基に置換され、他方のスルホン酸基がリン酸基に置換されていてもよい)。
【化1】
【0019】
一実施形態において、酸基を有する有機半導体分子は、4,4’-([2,2’-ビチオフェン]-5,5’-ジイル)ジベンゼンスルホン酸(BTDBS)またはベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]-2,7-ジスルホン酸(BTBTDS)である。
【0020】
工程1における溶媒は、酸基を有する有機半導体分子の種類に応じて適宜選択できる。通常は、酸基を有する有機半導体を溶解する溶媒を選択する。溶媒中における酸基を有する有機半導体の濃度は、適宜設定できる。
【0021】
工程1における基材は、特に限定されない。例えば、有機半導体薄膜の形成専用の基材を用いてもよい。この場合、得られた有機半導体薄膜をロール・トゥ・ロールなどにより転写することにより、有機半導体デバイスを組立てることができる。他の例として、有機半導体デバイスを構成する部材を基材としてもよい。
【0022】
工程1における塗布方法の例としては、ドロップキャスト、スピンコート、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷が挙げられる。
【0023】
[1.2.工程2]
工程2において、アミンとは、アンモニア分子に含まれている3つの水素原子のうち1つ以上が炭素含有基により置換されている化合物である。本発明者らの先行研究によると、アミンが有する炭素含有基の嵩高さを変化させることにより、有機半導体骨格の配向を変化させることができ、ひいては有機半導体の物性を変化させることができる。
【0024】
アミンの例としては、アルキルアミン、アリールアミンが挙げられる。これらのうちでは、アルキルアミンが好ましい。アミンの他の例としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンが挙げられる。これらのうちでは、第一級アミンが好ましい。
【0025】
第一級アミンであるアルキルアミンの例としては、メタンアミン、エタンアミン、プロパン-1-アミン、ブタン-1-アミン、ペンタン-1-アミン、ヘキサン-1-アミン、ヘプタン-1-アミン、プロパン-2-アミン、2-メチルプロパン-1-アミン、ブタン-2-アミン、2-メチルプロパン-2-アミン、2-メチルブタン-1-アミン、ペンタン-3-アミン、シクロプロパンアミン、シクロペンタンアミンが挙げられる。第二級アミンであるアルキルアミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピロリドン、ピペリジン、アゼピンが挙げられる。第三級アミンであるアルキルアミンの例としては、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタンアミン、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン、1-メチルピロリドン、1-メチルピペリジンが挙げられる。
【0026】
一実施形態において、アミンは、ブタン-1-アミン(n-ブチルアミン)、ブタン-2-アミン((rac)-sec-ブチルアミン)または2-メチルプロパン-2-アミン(tert-ブチルアミン)である。
【0027】
工程2において、アミンは常温(例えば20℃)において揮発性なので、アミンを気化させるための特別の操作は必須ではない。しかし、アミンを加熱したり、アミンが含まれる系を減圧したりして、アミンを気化させてもよい。
【0028】
工程2において、酸基を有する有機半導体分子とアミンとを接触させる条件は、特に限定されない。接触時の温度や接触させる時間は、使用する材料に応じて、当業者が適宜選択できる。
【0029】
酸基を有する有機半導体、基材および塗布方法については、[1.1.]節において説明した通りである。
【0030】
[1.3.その他の工程]
有機半導体薄膜の製造方法は、工程1および工程2以外の工程を有してもよい。
【0031】
一実施形態において、製造方法には、基材上に形成された薄膜を溶媒に浸漬する工程が含まれる。これにより、基板に付着した過剰なアミンを溶解させて除去する。したがって、溶媒としては、アミンを溶解し酸基を有する有機半導体分子を溶解しない溶媒を選択することが好ましい。このような溶媒の例としては、エーテルが挙げられる。エーテルの例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0032】
一実施形態において、製造方法には、基材上に形成された薄膜をアニーリングする工程が含まれる。アニーリングとは、工程2における温度よりも低く、常温(例えば20℃)よりも高い温度において、薄膜を静置することである。アニーリングの温度および時間は、当業者が適宜選択できる。
【0033】
〔2.有機半導体薄膜および有機半導体デバイス〕
本発明の一態様に係る結晶性の有機半導体薄膜は、酸基を有する有機半導体分子と、アミンとを含んでいる。酸基を有する有機半導体分子およびアミンについては、〔1〕節において説明した通りである。一実施形態において、結晶性の有機半導体薄膜は、上述の製造方法によって製造される。
【0034】
有機半導体薄膜は、結晶性である。有機半導体薄膜が結晶性であるか否かは、XRDスペクトルによって判断できる。有機半導体薄膜のXRDスペクトルがピークを有しているならば、当該有機半導体薄膜は結晶性である。一実施形態において、有機半導体薄膜のXRDスペクトルは、酸基を有する有機半導体分子およびアミンにより形成される粉末結晶のXRDスペクトルと同じピークを有している。
【0035】
有機半導体薄膜は、好ましくは、1種類の酸基を有する有機半導体分子と、1種類のアミンとから構成されている。このように材料を選択すると、結晶性の有機半導体薄膜を得やすい。
【0036】
有機半導体薄膜の面積の下限は、1μm以上でありうる。有機半導体薄膜の面積の上限は、100cm以下でありうる。有機半導体薄膜の厚さの下限は、2nm以上でありうる。有機半導体薄膜の厚さの上限は、1mm以下でありうる。このような形状における特徴点により、有機半導体薄膜は、粒子状の有機半導体から区別されうる。
【0037】
本発明の一態様に係る有機半導体デバイスは、上述の有機半導体薄膜を含んでいる。有機半導体デバイスの例としては、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、有機発光ダイオードが挙げられる。
【実施例0038】
本実施例で使用する材料については、下記の略称を使用する。
【化2】
【0039】
〔実施例1:BTDBS薄膜の作製〕
本発明の一実施形態に係る製造方法により、BTDBSおよびアミンを含んでいる薄膜を作製した。得られた薄膜の結晶性をXRDにより検討した。薄膜の製造手順は、下記の通りである。
1. DMSOにBTDBSを溶解させて、8mg/mLの溶液を調製した。
2. ガラスのプレパラートに溶液をドロップキャストした後、乾燥させた。乾燥温度は100℃とした。
3. マヨネーズ瓶にプレパラートを収容した後、アミンを蒸気拡散させた。反応温度は30℃または60℃とした。反応時間は12時間とした。このようにして、BTDBS/アミン薄膜を得た。
【0040】
[実施例1A:BTDBS/nBuA薄膜の作製]
アミンとしてnBuAを使用して、BTDBS/nBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図1に示す。レファレンスとして、BTDBSおよびnBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTDBS/nBuA薄膜が得られた(特に、2θ=3.1°、6.2°、9.3°近傍のピークを参照)。
【0041】
[実施例1B:BTDBS/sBuA薄膜の作製]
アミンとしてsBuAを使用して、BTDBS/sBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図2に示す。レファレンスとして、BTDBSおよびsBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTDBS/sBuA薄膜が得られた(特に、2θ=3.9°、7.8°、11.7°近傍のピークを参照)。正規化前のXRDスペクトルを比較したところ、反応温度が60℃であったサンプルの方が、ピークが高かった。そのため、反応温度を高くすれば、結晶性が高い薄膜が得られる可能性がある。
【0042】
[実施例1C:BTDBS/tBuA薄膜の作製]
アミンとしてtBuAを使用して、BTDBS/tBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図3に示す。レファレンスとして、BTDBSおよびsBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTDBS/sBuA薄膜が得られた(特に、2θ=4.2°、8.4°、12.6°近傍のピークを参照)。正規化前のXRDスペクトルを比較したところ、反応温度が60℃であったサンプルの方が、ピークが高かった。そのため、反応温度を高くすれば、結晶性が高い薄膜が得られる可能性がある。
【0043】
〔実施例2:BTDBS薄膜の製造条件の検討〕
実施例1における薄膜の製造条件を改変し、得られる薄膜の結晶性をXRDにより検討した。改変した製造条件は、下記の通りである。
●条件1:エーテルへの浸漬
1. DMSOにBTDBSを溶解させて、8mg/mLの溶液を調製した。
2. ガラスのプレパラートに溶液をドロップキャストした後、乾燥させた。乾燥温度は100℃とした。
3. マヨネーズ瓶にプレパラートを収容した後、アミンを蒸気拡散させた。反応温度は30℃とした。反応時間は12時間とした。
4. 工程3により得られた薄膜を、ジエチルエーテルに30分間浸漬させた後、取出して乾燥させた。工程4の操作は、合計2回繰り返した。このようにして、BTDBS/アミン薄膜を得た。
●条件2:アニーリング
1. DMSOにBTDBSを溶解させて、8mg/mLの溶液を調製した。
2. ガラスのプレパラートに溶液をドロップキャストした後、乾燥させた。乾燥温度は100℃とした。
3. マヨネーズ瓶にプレパラートを収容した後、アミンを蒸気拡散させた。反応温度は30℃とした。反応時間は12時間とした。
4. 工程3で得られた薄膜を、60℃にて2時間アニーリングした。このようにして、BTDBS/アミン薄膜を得た。
●条件3:結晶化時間の短縮
1. DMSOにBTDBSを溶解させて、8mg/mLの溶液を調製した。
2. ガラスのプレパラートに溶液をドロップキャストした後、乾燥させた。乾燥温度は100℃とした。
3. マヨネーズ瓶にプレパラートを収容した後、アミンを蒸気拡散させた。反応温度は60℃とした。反応時間は30分間とした。このようにして、BTDBS/アミン薄膜を得た。
【0044】
[実施例2A:BTDBS/nBuA薄膜の作製]
アミンとしてnBuAを使用して、条件1、2によりBTDBS/nBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図4に示す。レファレンスとして、実施例1Aで作製した薄膜(60℃で反応させた薄膜)と、BTDBSおよびnBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTDBS/nBuA薄膜が得られた(特に、2θ=3.1°、6.2°、9.3°近傍のピークを参照)。
【0045】
[実施例2B:BTDBS/sBuA薄膜の作製]
アミンとしてsBuAを使用して、条件1~3によりBTDBS/sBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図5に示す。レファレンスとして、実施例1Bで作製した薄膜(60℃で反応させた薄膜)と、BTDBSおよびsBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTDBS/sBuA薄膜が得られた(特に、2θ=3.9°、7.8°、11.7°近傍のピークを参照)。
【0046】
[実施例2C:BTDBS/tBuA薄膜の作製]
アミンとしてtBuAを使用して、条件1、3によりBTDBS/tBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図6に示す。レファレンスとして、実施例1Cで作製した薄膜(60℃で反応させた薄膜)と、BTDBSおよびtBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTDBS/tBuA薄膜が得られた(特に、2θ=4.2°、8.4°、12.6°近傍のピークを参照)。
【0047】
〔実施例3:BTBTDS薄膜の作製〕
本発明の一実施形態に係る製造方法により、BTBTDSおよびアミンを含んでいる薄膜を作製した。得られた薄膜の結晶性をXRDにより検討した。薄膜の製造手順は、下記の通りである。
1. DMSOにBTBTDSを溶解させて、5mg/mLの溶液を調製した。
2. ガラスのプレパラートに溶液をドロップキャストした後、乾燥させた。乾燥温度は100℃とした。
3. マヨネーズ瓶にプレパラートを収容した後、アミンを蒸気拡散させた。反応温度は30℃または60℃とした。反応時間は12時間とした。このようにして、BTBTDS/アミン薄膜を得た。
【0048】
[実施例3A:BTBTDS/nBuA薄膜の作製]
アミンとしてnBuAを使用して、BTBTDS/nBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図7に示す。レファレンスとして、BTBTDSおよびnBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTBTDS/nBuA薄膜が得られた(特に、2θ=3.8°、7.6°、11.4°近傍のピークを参照)。
【0049】
[実施例3B:BTBTDS/sBuA薄膜の作製]
アミンとしてsBuAを使用して、BTBTDS/sBuA薄膜を作製した。正規化したXRDスペクトルを図8に示す。レファレンスとして、BTBTDSおよびsBuAを溶媒に混合して得た単結晶に基づくXRDスペクトルと、シミュレーションにより計算されるXRDスペクトルも併せて示す。同図から分かるように、結晶性の高いBTBTDS/sBuA薄膜が得られた(特に、2θ=4.0°、8.0°、12.0°近傍のピークを参照)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、有機半導体デバイスなどに利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8