(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147420
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】移動体システム、移動体、情報処理システム、設定方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20241008BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241008BHJP
【FI】
G01C21/34
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060426
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠斗
【テーマコード(参考)】
2F129
5H301
【Fターム(参考)】
2F129AA01
2F129DD47
2F129DD49
2F129FF02
2F129GG17
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5H301QQ06
(57)【要約】
【課題】異なる種別の移動体の情報を利用して、消費電力を考慮した移動ルートを決定すること。
【解決手段】本発明は、移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する第一取得手段と、前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する第二取得手段と、前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する推定手段と、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する判断手段と、を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーが設定した移動ルートに基づいて移動体を移動させる移動体システムであって、
前記ユーザーが設定した移動体の移動ルートに基づいて、過去の移動ルートから前記ユーザーが設定した別の移動ルートである提案移動ルートを決定する提案移動ルート決定部と、
移動体が過去の移動ルートを移動した際の消費電力と複数の環境情報と移動体の種別とが対応付けられた移動履歴情報を記憶する記憶部とを有し、
前記提案移動ルート決定部は、
前記移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する第一取得手段と、
前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する第二取得手段と、
前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する推定手段と、
前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する判断手段と、
を有する移動体システム。
【請求項2】
前記予め決められた条件は、前記移動体の移動時に消費電力に影響する前記環境情報が、移動ルートが設定される前記移動体が検出する前記環境情報に対し一定範囲内であることである請求項1に記載の移動体システム。
【請求項3】
前記予め決められた条件は、前記環境情報が有する前記移動体の高度が、移動ルートが設定される前記移動体の高度に対し一定範囲内であることである請求項1又は2に記載の移動体システム。
【請求項4】
前記予め決められた条件は、更に、前記移動履歴情報に登録されている走行開始日時が、前記移動体が移動を開始する時刻から一定時間内であることである請求項3に記載の移動体システム。
【請求項5】
前記提案移動ルート決定部が決定した前記提案移動ルートを端末装置に送信する移動体情報送信部を有し、
前記移動体情報送信部は、前記予め決められた条件の少なくとも一部の設定を受け付ける画面情報を端末装置に送信し、
ユーザーから前記予め決められた条件の少なくとも一部の設定を受け付ける移動体情報受信部を有し、
前記提案移動ルート決定部は、前記環境情報が、前記移動体情報受信部が受け付けた前記予め決められた条件に合致する移動履歴を特定する請求項1に記載の移動体システム。
【請求項6】
移動ルートの設定時に前記移動体が検出する前記環境情報に基づいて、前記消費電力を補正する消費電力補正部を有し、
前記提案移動ルート決定部が取得した前記消費電力よりも、前記消費電力補正部が補正した前記消費電力の方が大きくなる場合、
前記提案移動ルート決定部が取得した前記消費電力よりも、前記消費電力補正部が補正した前記消費電力の方が大きくなる旨と大きくなる要因の前記環境情報を端末装置に送信する移動体情報送信部を有する、請求項1に記載の移動体システム。
【請求項7】
前記消費電力補正部は、移動ルートの設定時に前記移動体が検出する風向と前記移動体の向きの角度差、及び、風速に基づいて、前記消費電力を補正する請求項6に記載の移動体システム。
【請求項8】
前記提案移動ルート決定部は、ユーザーが設定した移動ルートを前記移動体が移動することにより推定される推定移動電力を決定し、
前記推定移動電力と、前記提案移動ルート決定部が取得した前記消費電力に対応付けられてる前記移動ルートを前記移動体が走行して消費した消費電力とを端末装置に送信する移動体情報送信部を有する請求項1に記載の移動体システム。
【請求項9】
前記提案移動ルート決定部が取得した前記消費電力に対応付けられてる前記移動ルートを端末装置に送信する移動体情報送信部を有し、
ユーザーが設定した前記移動ルートを前記移動体に設定する旨を前記端末装置から受信した場合、
前記移動体情報送信部が、ユーザーが設定した前記移動ルートを前記移動体に設定してよいか否かの確認要求を前記端末装置に送信する、請求項1に記載の移動体システム。
【請求項10】
所定期間において、前記推定移動電力を集計し、前記提案移動ルート決定部が取得した前記消費電力に対応付けられてる前記移動ルートを前記移動体が走行して消費した消費電力を集計する集計部を有し、
前記移動体情報送信部は、前記集計部の集計結果を端末装置に送信する請求項8に記載の移動体システム。
【請求項11】
前記提案移動ルート決定部が前記移動履歴情報から取得した前記消費電力よりも、前記消費電力に対応付けられてる前記移動ルートを前記移動体が走行して消費した消費電力の方が一定以上大きい場合、
前記移動体情報送信部は、前記移動ルートに異常がある可能性を端末装置に送信する請求項8に記載の移動体システム。
【請求項12】
ユーザーが設定した移動ルートを自律移動する移動体であって、
前記ユーザーが設定した移動体の移動ルートに基づいて、過去の移動ルートから前記ユーザーが設定した別の移動ルートである提案移動ルートを決定する提案移動ルート決定部と、
移動体が過去の移動ルートを移動した際の消費電力と複数の環境情報と移動体の種別とが対応付けられた移動履歴情報を記憶する記憶部とを有し、
前記提案移動ルート決定部は、
前記移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する第一取得手段と、
前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する第二取得手段と、
前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する推定手段と、
前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する判断手段と、
を有する移動体。
【請求項13】
ユーザーが端末装置に設定した移動体の移動ルートを移動体に設定する情報処理システムであって、
前記ユーザーが設定した移動体の移動ルートに基づいて、過去の移動ルートから前記ユーザーが設定した別の移動ルートである提案移動ルートを決定する提案移動ルート決定部と、
移動体が過去の移動ルートを移動した際の消費電力と複数の環境情報と移動体の種別とが対応付けられた移動履歴情報を記憶する記憶部とを有し、
前記提案移動ルート決定部は、
前記移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する第一取得手段と、
前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する第二取得手段と、
前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する推定手段と、
前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する判断手段と、
前記提案移動ルート決定部が決定した前記提案移動ルートを端末装置に送信する移動体情報送信部、
を有する情報処理システム。
【請求項14】
ユーザーが端末装置に設定した移動体の移動ルートを受け付ける移動体システムが行う設定方法であって、
前記ユーザーが設定した移動体の移動ルートに基づいて、過去の移動ルートから前記ユーザーが設定した別の移動ルートである提案移動ルートを決定する処理と、
移動体が過去の移動ルートを移動した際の消費電力と複数の環境情報と移動体の種別とが対応付けられた移動履歴情報を記憶する記憶部に基づいて、
前記移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する処理と、
前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する処理と、
前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する処理と、
前記推定移動電力よりも取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する処理と、
を行う設定方法。
【請求項15】
ユーザーが端末装置に設定した移動体の移動ルートを受け付ける情報処理システムに、
前記ユーザーが設定した移動体の移動ルートに基づいて、過去の移動ルートから前記ユーザーが設定した別の移動ルートである提案移動ルートを決定する処理と、
移動体が過去の移動ルートを移動した際の消費電力と複数の環境情報と移動体の種別とが対応付けられた移動履歴情報を記憶する記憶部に基づいて、
前記移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する処理と、
前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する処理と、
前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する処理と、
前記推定移動電力よりも取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する処理と、
前記提案移動ルートを端末装置に送信する処理と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体システム、移動体、情報処理システム、設定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
業務効率化、自動化、又は省人化を実現する手段の1つとして自律移動ロボット等の移動体が注目されている。移動体の移動方法の1つに、予め設定された移動ルートに従って移動する移動方法がある。ユーザーは、移動ルート上の地点である通過位置(ウェイポイント)を設定することで、移動体が移動すべき移動ルートを定義する。移動体が設定された移動ルートに沿って移動中に電池切れが生じると作業を達成できないだけでなく、電池切れになった移動体を人手で回収するなどの作業も必要になる。
【0003】
バッテリ残量を考慮してタスクを設定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、移動体であるロボットのバッテリ残量と、ロボットが実行する、移動経路の移動を含むタスクに必要なバッテリ消費量とを考慮して、ロボットの実行するタスクを設定又は変更する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、消費電力を考慮した移動ルートの提案に同種の移動体のバッテリ情報を用いて移動ルートを決定しており、異なる種別の移動体の情報を利用して移動ルートを決定することが考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、異なる種別の移動体の情報を利用して、消費電力を考慮した移動ルートを決定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、ユーザーが設定した移動ルートに基づいて移動体を移動させる移動体システムであって、前記ユーザーが設定した移動体の移動ルートに基づいて、過去の移動ルートから前記ユーザーが設定した別の移動ルートである提案移動ルートを決定する提案移動ルート決定部と、移動体が過去の移動ルートを移動した際の消費電力と複数の環境情報と移動体の種別とが対応付けられた移動履歴情報を記憶する記憶部とを有し、前記提案移動ルート決定部は、前記移動体とは種別が異なり、第一の環境情報が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報を取得する第一取得手段と、前記移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ前記第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力を取得する第二取得手段と、前記ユーザーが設定した前記移動体の前記移動ルートの推定移動電力を推定する推定手段と、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さいか否かを判断し、前記推定移動電力よりも前記第二取得手段が取得した前記消費電力の方が小さい場合に、前記消費電力に対応付けられた移動ルートを提案移動ルートと決定する判断手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、異なる種別の移動体の情報を利用して、消費電力を考慮した移動ルートを決定する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】移動体システムが蓄積する消費電力、予想される合計の消費電力、より消費電力が少ない別ルートの表示例を示す図である。
【
図4】移動体の一例のハードウエア構成を示す図である。
【
図5】情報処理システム、及び、端末装置の一例のハードウエア構成を示す図である。
【
図6】移動体、情報処理システム、及び、端末装置の機能をブロックに分けて説明する一例の機能ブロック図である。
【
図7】情報記憶部に記憶されている移動履歴情報の一例を示す図である。
【
図8】拠点内を、移動体を走行させて自律走行で通過するウェイポイントとなる候補を登録する作業について説明する図である。
【
図9】登録されたウェイポイントの一例を示した図である。
【
図10】設定されたウェイポイント情報の一例を示す図である。
【
図11】ユーザーが移動ルートを設定する処理の流れを説明するシーケンス図の一例である。
【
図12】提案移動ルート決定部が消費電力に基づいて提案する移動ルートを決定する処理を説明するフローチャート図の一例である。
【
図13】端末装置が表示する、消費電力が少ない移動ルートを提案する移動ルート提案画面の一例を示す図である。
【
図14】消費電力を含む、消費電力が少ない移動ルートを提案する移動ルート提案画面の一例を示す図である。
【
図15】端末装置が表示する消費電力参照条件設定画面の一例を示す図である。
【
図16】移動体、情報処理システム、及び、端末装置の機能をブロックに分けて説明する一例の機能ブロック図である。
【
図17】消費電力が少ない移動ルートを提案する移動ルート提案画面の一例を示す図である。
【
図19】移動体情報送信部が端末装置に通知した消費電力の一例を示す図である。
【
図20】ユーザーが移動ルートを設定する処理の流れを説明する一例のシーケンス図である。
【
図21】移動体、情報処理システム、及び、端末装置の機能をブロックに分けて説明する一例の機能ブロック図である。
【
図22】端末装置が表示する集計結果画面の一例を示す図である。
【
図23】移動体、情報処理システム、及び、端末装置の機能をブロックに分けて説明する一例の機能ブロック図である。
【
図25】情報処理システムが消費電力から判断した移動ルート上の異変をユーザーに通知する処理を説明する一例のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、移動体システムと移動体システムが行う設定方法について図面を参照しながら説明する。
【0010】
<動作又は処理の概略>
少子高齢化の影響などにより、人手不足・労働力不足が大きな話題となっている。一方で、AI(Artificial Intelligence)やロボット、5Gによる高速大容量のデータ通信など、IoT技術やインフラが日進月歩で進化しており、これらの広範な利活用が期待されている。このような状況下において、AIやロボットなどのIoT技術を活用し、業務効率化や自動化、省人化を実現できないか、様々な業界で技術開発・検証が進められている。
【0011】
移動体による自動化を実現する際、稼働途中での電池切れは大きな障害となる。ユーザーが求めていた移動体による作業自動化が達成できないだけでなく、電池切れになった移動体を人手で回収するなどの作業も必要になる。
【0012】
そこで、本実施形態では、以下のような処理が行われる。
A:移動体が移動を含む作業完了までに消費した消費電力等を移動履歴として蓄積する。移動履歴には、消費電力だけでなく、移動体が移動時に取得した高度や風速などの環境情報も記録される。移動履歴はクラウド上に蓄積され、他の移動体の移動履歴と共に移動体システムが利用できる。
B:開始地点と終了地点が同じ移動ルートが複数ある場合、移動体システムは、その中で消費電力が最小となるルートをユーザーへ提示する。
図1を参照して説明する。
【0013】
図1(a)は、移動体システムが蓄積する消費電力を模式的に示す。移動体がスタート地点301からゴール地点302まで移動するが、移動ルートが2つある。移動履歴によると、移動ルートAの平均の消費電力は39[kW]、移動ルートBの平均の消費電力は32[kW]である。
【0014】
この場合、移動体システムは、
図1(b)に示すように、予想される合計の消費電力を表示する。また、移動体システムは、
図1(c)に示すように、より消費電力が少ない別ルートを提示する。
【0015】
別ルートの提示においては、移動体システムは、種別(クローラ型、飛行型、四輪型等)の異なる移動体の情報を参照するとよい。移動体システムは、例えば、走行開始日時が現在から一定時間以内で「高度」が一定範囲内である移動体の走行環境を特定する。これは、高度が同じであれば、移動手段に関係無く風速、風向は同じであるという考えに基づく。
【0016】
次に、移動体システムは、移動体の種別及び移動ルート(少なくとも開始地点、終了地点)が同じであり、特定した走行環境に近い移動履歴を検索し、その消費電力を取得する。取得した消費電力が、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力より小さい場合、移動体システムは、消費電力が小さい別ルートを提案できる。
【0017】
このように、本実施形態の移動体システムは、種別が異なる移動体の移動履歴を用いることで、より消費電力が少ない移動ルートを提案できる。
【0018】
<用語について>
移動ルートとは、移動体が移動するための経路である。移動ルートは、2つ以上の通過位置を有し、通過位置を1回以上通過するように接続されたものである。
【0019】
消費電力とは、電力で動作する機器を動かすときに使われる電力をいう。本実施形態では、消費電力は、主に移動体20の移動に要する電力である。
【0020】
環境情報とは、移動体20が移動する空間の状態を表す情報である。環境情報は、消費電力に影響する空間の状態であってよい。環境情報は、例えば、高度、風速、風向、気温、機内温度、路面状況、天候等である。
【0021】
通過位置は、移動体が通過する目標となる地点であり、管理者等が地図上に設定できる。通過位置は例えば交差点やT字路などに設定されてもよいし、空間があり移動可能なる任意の位置に設定されてもよい。また、三次元の移動が可能な移動体の場合、通過位置は三次元座標でよい。本実施形態では、通過位置をウェイポイントという。
【0022】
自律移動とは、人間が操縦しなくても、移動体自身が環境を把握し単体で移動することをいう。本実施形態では、移動体が自律移動のためにウェイポイントが設定されてもよいし、ユーザーが操縦するための目安としてウェイポイントが設定されてもよい。
【0023】
<システム構成例>
図2は、本実施形態に係る移動体システム100の構成例を示す図である。移動体システム100は、所定の区域を監視区域とし、監視区域内を移動する移動体20として移動体20と、移動体20を制御する制御システムとして情報処理システム40とを含む。移動体20と情報処理システム40は、通信ネットワークNに接続され、通信ネットワークNを介して通信を行う。
【0024】
通信ネットワークNは、インターネット、移動体20通信網、LAN(Local Area Network)等により構築され、有線ネットワーク、無線ネットワークのいずれであってもよい。
【0025】
移動体20は、監視区域内に設置され、監視区域内を自律移動可能なロボットである。自律移動は、監視区域内の指定された経路に従って自律的に移動する動作やライントレース等の技術を用いて自律的に監視区域内を移動する動作のいずれであってもよく、過去に移動した経路を機械学習し、機械学習の結果を利用して自律的に移動する動作であってもよい。移動体20は、操作者(オペレータ)により手動操作させることもできる。
【0026】
移動体20は、各種センサを備え、点検、保守等の所定の作業(タスク)を実行することができる。移動体20は、物をつかむことができるアームを備えることができ、運搬、軽作業等の作業を実行してもよい。移動体20は、自律移動可能なロボットであれば、自動車、ドローン、マルチコプタ、無人飛行体等であってもよい。
【0027】
移動体20は、監視区域内を監視するため、撮像装置(撮像手段)、ガス検知装置(ガス検知手段)、録音装置(録音手段)等の監視対象の状態を検知するための検知装置(検知手段)を備える。撮像装置は、監視対象を撮像する。監視対象が、水道やガスのメータ、流量計、液面計である場合、メータの目盛りや表示値等を撮像する。撮像装置は、移動体20の周囲の状態として、路面に形成された穴や障害物等も撮像することができる。ガス検知装置は、監視対象が配管やタンク等である場合、周囲の状態として、これらから漏れ出る有害ガスの濃度等を測定する。録音装置は、弁、ポンプ、圧縮機等の動作を伴う機器の動作音等を記録する。監視対象の状態は、所定位置の温度や湿度等であってもよく、移動体20は、検知装置として温湿度センサ等を備えることもできる。
【0028】
監視区域は、移動体20が設置される区域(対象拠点もしくは単に拠点とも呼ばれる。)であり、例えば、事業所、工場、化学プラント、建設現場、変電所、農場、田畑、耕地、災害現場等の屋外の区域、又はオフィス、学校、工場、倉庫、商業施設、病院、介護施設等の屋内の区域である。これらの区域は、従来人手で行われていた作業を移動体20に担わせたいニーズが存在する場所であればいかなる場所であってもよい。監視区域を監視する移動体20は、1台に限らず、複数台が連携して監視してもよい。この場合、例えば、監視区域内の第1エリアを移動体Aが監視し、第2エリアを移動体Bが監視し、第3エリアを移動体Cが監視するように設定することができる。以下、移動体20は、複数の車輪により移動可能とされ、検知装置として撮像装置(カメラ)を備えるものとして説明する。
【0029】
情報処理システム40は、移動体20に対して通信ネットワークNを介して第1の移動ルートに従って移動しながら、指定された監視対象を撮像するように指示する。監視対象は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。情報処理システム40は、移動体20が撮像した監視対象の画像データを受信する。情報処理システム40は、受信した画像データを解析し、異常の有無を判断する。監視対象が、流量計であり、正常流量が1~10m3/sである場合、この範囲外の流量(例えば0.5m3/s)の場合、異常と判断される。情報処理システム40は、移動体20に対し、第1の移動ルートとは異なる第2の移動ルートに切り替えるように指示することもできる。
【0030】
情報処理システム40は、一台以上の情報処理装置により実現される。情報処理システム40は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよいし、単一の情報処理装置によって実現されてもよい。複数の情報処理装置が存在し、それぞれが負荷等に応じてサービスを提供してもよい。クラウドコンピューティングとは、特定ハードウエア資源が意識されずにネットワーク上のリソースが利用される形態をいう。また、情報処理システム40は、インターネット上に存在しても、オンプレミスに存在してもよい。
【0031】
通信ネットワークNには、オペレータが操作するノートPC(Personal Computer)やタブレットPC等の端末装置30が接続される。端末装置30は、ユーザーから複数のウェイポイントを受け付け、ウェイポイントをつなげて移動体20のルート定義を受け付ける。また、端末装置30は、管理拠点に設置され、情報処理システム40と通信ネットワークNを介して通信し、情報処理システム40から移動体20により撮像された画像を表示させることができる。
【0032】
このようにオペレータが操作しなくても、見たい場所を撮像して提供してくれるため、オペレータは、監視区域において異常の原因を特定することができ、最適な対処を迅速に行うことができる。なお、通常の点検時に全ての箇所の撮像を行うと、点検時間が長くなってしまうが、異常が見つかった場合に必要な箇所の撮像を行うため、通常の点検時は点検箇所を絞って点検を行うことができ、点検時間を短縮することができる。
【0033】
図2に示した例では、移動体20の動作を情報処理システム40が制御しているが、移動体20の動作の制御の一部又は全部を、移動体20が実行するように構成されていてもよい。
【0034】
また、
図2のように情報処理システム40を使用することなく、情報処理システム40の機能が端末装置30にあってもよい。この場合、移動体20と端末装置30とが直接通信する。また、移動体20が、情報処理システム40と端末装置30の機能を有していてもよい。
【0035】
<移動体の概略>
図3(a)は、本実施形態の移動体20の外観斜視図である。移動体20は、履帯式走行体10a,10b及び本体600によって構成される。
【0036】
履帯式走行体10a,10bは、移動体20の移動手段となるユニットである。また、履帯式走行体10a,10bは、金属又はゴム製のベルトを用いた履帯(クローラ)式の走行体である。履帯式の走行体は、自動車のようなタイヤで走行する走行体と比較して接地面積が広く、例えば、足場の悪い環境においても、安定した走行を行うことができる。また、タイヤで走行する走行体は、回転動作を行う際に旋回スペースを必要とするのに対して、履帯式の走行体を備えた移動体20は、いわゆる超信地旋回を行うことができるため、限られたスペースでも回転動作をスムーズに行うことができる。履帯式走行体10a,10bの詳細な構成については後述する。
【0037】
本体600は、履帯式走行体10a,10bを走行可能な状態で支持する支持体であると共に、移動体20を駆動させるための制御を行う制御装置である。また、本体600は、履帯式走行体10a,10bを駆動させるための電力を供給する、後述のバッテリ605を搭載する。
【0038】
図3(b)は、移動体20の前面図(P矢視図)である。移動体20の本体600は、非常停止ボタン31、状態表示ランプ33及び蓋部35を備える。非常停止ボタン31は、移動体20の周辺にいる人が、走行中の移動体20を停止させる際に押下する操作手段である。
【0039】
状態表示ランプ33は、移動体20の状態を通知するための通知手段である。状態表示ランプ33は、例えば、バッテリ残量の低下等の移動体20の状態が変化した場合、周囲の人に、移動体20の状態変化を知らせるために点灯する。また、状態表示ランプ33は、例えば、移動体20の走行を妨げる障害物の存在等が検知された場合等、異常発生のおそれがある場合に点灯する。なお、
図3は、移動体20に状態表示ランプ33が二つ備えられている例を示すが、状態表示ランプ33の数は、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。また、通知手段は、状態表示ランプ33のみならず、スピーカから発せられる警告音等によって移動体20の状態を通知する構成であってもよい。
【0040】
蓋部35は、本体600の上面に設けられ、本体600の内部を覆っている。また、蓋部35は、本体600の内部の通気を行うための通気口を有する通気部35aを有する。
【0041】
また、二つの履帯式走行体10a,10bは、本体600を挟んで、後述の履帯11aと履帯11bとが略平行になるように、すなわち移動体20が走行可能な状態で設置される。なお、履帯式走行体の数は、二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。例えば、移動体20は、三つの履帯式走行体を平行に三列に整列させる等、移動体20が走行可能な状態で設置されてもよい。また、例えば、移動体20は、四つの履帯式走行体を自動車のタイヤのように前後左右に配列させてもよい。
【0042】
図3(c)は移動体20の側面図(Q矢視図)である。履帯式走行体10aは、後述する駆動輪13と二つの転輪15a,15bによって形成された三角形の形状を有する。三角形の形状の履帯式走行体10aは、例えば、走行体の前後のサイズに制約がある場合、前後の限られたサイズの中で接地面積を大きくすることができるので、走行時の安定性を向上させることができる。一方で、下側(転輪側)よりも上側(駆動輪側)の方が長い、いわゆる戦車タイプのクローラでは、前後のサイズの制約がある場合には全体的に接地面積が小さくなって不安定になる。このように、履帯式走行体10aは、比較的に小型の移動体20の走行性を高める場合に有効である。
【0043】
なお、
図3の移動体20はキャタピラ走行型であるが、この他、二足歩行型、多足歩行型、ドローン型、飛行型、水中移動型など、移動体20の形状や移動方式は
図3の態様に限られない。
【0044】
<ハードウエア構成例>
次に、
図4,
図5を用いて、移動体20、情報処理システム40、端末装置30のハードウエア構成を説明する。なお、
図4,
図5に示すハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加又は削除されてもよい。
【0045】
<<移動体>>
図4は、実施形態に係る移動体のハードウエア構成の一例を示す図である。移動体20は、
図4に示されているように、移動体20の処理又は動作を制御する本体600を備える。本体600は、ラジコン受信部601、CPU(Central Processing Unit)602、メモリ603、ICカードリーダ611、デバイス類612、通信I/F(Interface)606、バッテリ605、走行制御用モータドライバ606、姿勢制御用モータドライバ607、及び姿勢制御用モータ608a,608bを備える。また、ラジコン受信部601、CPU602、メモリ603、通信I/F604、バッテリ605、走行制御用モータドライバ606、及び姿勢制御用モータドライバ607は、システムバス610を介して接続している。システムバス610は、上記各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等であり、アドレス信号、データ信号、及び各種制御信号等を伝送する。
【0046】
ラジコン受信部601は、移動体20の操作者が使用するPC等の送信機から送信される動作指示信号を受信する。CPU602は、移動体20全体の制御を行う。CPU602は、メモリ603に格納された、プログラムP1又は移動体20を動作させるのに必要な各種データを読み出し、処理を実行することで、移動体20の各機能を実現する演算装置である。
【0047】
メモリ603は、CPU602が実行するプログラムP1をはじめ、移動体20を動作させるのに必要な各種データを記憶する。プログラムP1は、メモリ603に予め組み込まれて提供される。
【0048】
また、プログラムP1は、インストール可能な形式、又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R又はDVD(Digital Versatile Disc)等のCPU602(コンピュータ)で読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。更に、プログラムP1は、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で移動体20にダウンロードさせることにより提供されるように構成してもよい。また、プログラムP1は、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されるように構成してもよい。プログラムP1が外部から提供される場合、CPU602は、通信I/F604を介してプログラムP1を読み込む。なお、移動体20は、CPU602をプログラムP1に従って動作させる代わりに、プログラムP1が実行するのと同じ演算機能及び制御機能を有する専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)を実装することによって、ハードウエア的に動作させてもよい。
【0049】
通信I/F604は、通信ネットワークを経由して、他の機器又は装置との通信(接続)を行う通信インターフェースである。通信I/F604は、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)等の通信インターフェースである。なお、通信I/F604は、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、Zigbee(登録商標)、又はミリ波無線通信等の通信インターフェースを備えてもよい。移動体20は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行うための通信回路を備えていてもよい。
【0050】
また、ICカードリーダ611は、NFC(Near Field communication)によりICカードを読み取るカードリーダである。ICカードリーダはスマートフォンに内蔵されていてもよい。
【0051】
デバイス類612は、移動体に搭載されたオプション機能を実現する各種のデバイスである。デバイス類612は、例えば撮像装置(平面カメラ)、全天球カメラ、サーモカメラ、マイク、吸引式ガスセンサ、及び、レーザ式ガスセンサ等である。
【0052】
バッテリ605は、移動体20の処理又は動作に必要な電力を供給する電力供給ユニットである。バッテリ605は、例えば、インホイールモータ610a,610b及び姿勢制御用モータ608a,555bに対して電力を供給する。
【0053】
走行制御用モータドライバ606は、インホイールモータ610a,610bに対して、モータ駆動信号をそれぞれ供給することによって、インホイールモータ610a,610bを駆動させる。
【0054】
インホイールモータ610a,610bは、履帯式走行体10aの駆動輪13a、履帯式走行体10bの駆動輪13bの内部にそれぞれ設置されており、駆動輪13a,13bに回転力を伝達する。インホイールモータ610a,610bは、駆動輪13a,13bに対して、移動体20を前進させる正方向の回転、又は移動体20を後退させる負方向の回転を与える。更に、インホイールモータ610a,610bは、一方の駆動輪13a(又は13b)のみを正方向又は負方向に回転させて、他方の駆動輪13b(又は13a)を停止させることによって、移動体20を信地旋回させる。また、インホイールモータ610a,610bは、一方の駆動輪13a(又は13b)を正方向に回転させて、他方の駆動輪13b(又は13a)を負方向に回転させることによって、移動体20を超信地旋回させる。
【0055】
姿勢制御用モータドライバ607は、姿勢制御用モータ608a,555bに対して、モータ駆動信号をそれぞれ供給することによって、姿勢制御用モータ608a,555bを駆動させる。姿勢制御用モータ608a,555bは、例えば、姿勢制御用モータドライバ607からの制御信号に応じて、後述するリンク19の高さを上下に変更することで、アイドラ18a,18bの高さを調整する。また、姿勢制御用モータ608a,555bは、例えば、本体600の姿勢を制御することによって、移動体20の転倒を防止する。
【0056】
なお、移動体20は、ラジコン受信部601に受信された動作指示に応じて走行する構成に限られず、自律走行又はライントレース等の技術を用いて走行する構成であってもよい。また、移動体20は、通信ネットワークを介して送信された動作指示信号を通信I/F604で受信することで、遠隔地にいるユーザーから遠隔操作によって走行する構成であってもよい。
【0057】
<<情報処理システム及び端末装置>>
図5は、本実施形態に係る情報処理システム40、及び、端末装置30の一例のハードウエア構成を示す図である。
図5に示されているように、情報処理システム40及び端末装置30は、コンピュータ500によって構築されており、CPU501、ROM502、RAM503、HD(Hard Disk)504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレー506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、バスライン510、キーボード511、ポインティングデバイス512、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0058】
これらのうち、CPU501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御に従ってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ディスプレー506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F509は、ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、
図5に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0059】
また、キーボード511は、文字、数値、又は各種指示などの入力に使用される複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWドライブ514は、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【実施例0060】
<機能について>
図6を参照し、移動体20、情報処理システム40、及び、端末装置30の機能について説明する。
図6は、移動体20、情報処理システム40、及び、端末装置30の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図である。
【0061】
<<移動体>>
移動体20は、消費電力測定部21、通信部22、及び環境情報取得部23を有する。移動体20が有する各機能は、
図4に示されている各構成要素のいずれかが、メモリ603のプログラムP1に従ったCPU602からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。移動体20の各機能がICなどのハードウエア回路で実現されてもよい。
【0062】
消費電力測定部21は、移動体の移動時及び作業時に消費した消費電力を測定する。消費電力測定部21は、好ましくは、移動中は周期的(例えば1秒ごと)に消費電力を累積し、少なくともウェイポイント間の移動ごとに消費電力を測定する。消費電力測定部21は、電流を積算して消費電力を測定してもよいし、バッテリ残量から逆算してもよい。また、作業時に消費した消費電力は、例えばデバイス類612の消費電力である。
【0063】
環境情報取得部23は、移動中の環境情報を取得する。環境情報は、例えば、移動時の高度、風速、風向、気温、機内温度、路面状況、天候である。高度は高度計により、風速と風向は風速計により、気温と機内温度は温度計により、測定される。路面状況は、平面カメラが撮像する路面を移動体20又は情報処理システム40が画像処理することで、乾燥状態又は湿潤状態等を判断する。天候は、日射計や雨量計で判断される。
【0064】
通信部22は、取得された消費電力や環境情報を情報処理システム40に送信する。また通信部22は、ウェイポイント等、移動のための情報を情報処理システム40から受信する。
【0065】
<<端末装置>>
端末装置30は、通信部61、移動体情報表示部62、移動体制御入力部63を有する。端末装置30が有する各機能は、
図5に示されている各構成要素のいずれかが、HD504からRAM503に展開されたプログラムに従ったCPU501からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。
【0066】
通信部61は、情報処理システム40と各種の情報を送受信する。本実施形態では、通信部61は、移動体20の制御に関する情報を情報処理システム40に送信し、情報処理システム40から移動体20の制御を支援する情報を受信する。支援する情報には最適な移動ルートや消費電力等が含まれる。
【0067】
移動体制御入力部63は、ユーザーが入力する移動体20の制御に関する情報を受け付ける。移動体20を利用する際、ユーザーは、移動体20の特定(同時に種別も定まる)、開始地点から終了地点までのウェイポイント、移動体20の速度、ウェイポイントで使用するデバイス(撮像装置など)など、移動体20の制御に関する情報を端末装置30に入力する。入力された情報は情報処理システム40に送信される。
【0068】
移動体情報表示部62は、通信部61が受信した移動体20の制御を支援する情報をディスプレー506に表示させる。
【0069】
<<情報処理システム>>
情報処理システム40は、情報記憶部42、提案移動ルート決定部43、通信部44、移動体情報受信部45、及び、移動体情報送信部46を有している。情報処理システム40が有する各機能は、
図5に示されている各構成要素のいずれかが、HD504からRAM503に展開されたプログラムに従ったCPU501からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。
【0070】
通信部44は、移動体20から消費電力や環境情報を受信する。また、通信部44は、ウェイポイント(目的地を含む)、移動体20の速度、目的地で使用するデバイス(撮像装置など)などの移動体20の制御に関する情報を移動体20に送信する。
【0071】
情報記憶部42は、移動履歴情報を記憶している。移動履歴情報は、移動履歴に関する情報である。移動履歴情報には、移動体20から送信された消費電力や環境情報が含まれる。移動履歴情報については
図7にて説明する。
【0072】
提案移動ルート決定部43は、端末装置30から入力された移動体の移動ルートに基づいて、入力された移動ルートとは異なる提案移動ルートを決定する。提案移動ルート決定部43は、情報記憶部42に記憶されている、消費電力と環境情報とに基づいて、消費電力を考慮した移動ルートの候補を決定する。決定とは一つの移動ルートに決定することだけではなく、該当する複数の移動ルートを決定することを含む。提案移動ルート決定部43は、決定した移動ルートを端末装置30に移動ルート候補として提案してもよいし、メールやSNS等で提案してもよい。
提案移動ルート決定部43は、第一取得手段、第二取得手段、推定手段及び判断手段を有している。第一取得手段は、移動体種別が異なり、かつ、第一の環境情報(例えば高度)が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報(例えば風向等)を取得する。第二取得手段は、移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力(本実施形態では、移動電力)を取得する。推定手段は、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力を推定する。判断手段は、移動履歴の移動電力が、ユーザーが設定した移動ルートにおける推定移動電力よりも小さいか否か判断する。
【0073】
移動体情報受信部45は、端末装置30から移動体20の制御に関する情報を受信し、それを提案移動ルート決定部43に渡す。
【0074】
移動体情報送信部46は、移動体20の制御を支援する情報を提案移動ルート決定部43から取得し、出力する。移動体情報送信部46は、例えば、移動体20の制御を支援する情報を端末装置30に送信し、端末装置30が出力(表示する)。情報処理システム40がディスプレー506に出力してもよい。移動体情報送信部46が制御を支援する情報を移動体20に送信し、移動体20が出力してもよい。
【0075】
<<移動履歴情報>>
図7は、情報記憶部42に記憶されている移動履歴情報の一例を示す。移動履歴情報は、走行開始日時、開始地点、終了地点、ウェイポイント、移動体種別、高度、風速、風向、気温、機内温度、路面状況、天候、移動電力、作業電力、及び、合計電力である。これらのうち、環境情報は、移動時の高度、風速、風向、気温、機内温度、路面状況、及び、天候である。また、消費電力という場合、移動電力、作業電力、及び、合計電力が含まれるが、本実施形態では、主に移動電力に基づいて移動ルートが提案される。作業電力は定数とみなしてもよいので、本実施形態の消費電力は主に移動電力又は合計電力である。
【0076】
・走行開始日時は、移動体20が移動ルートに従って走行を開始した日時である。走行終了日時も記録されていてよい。
【0077】
・開始地点は、移動ルートの始点である。開始地点は、ユーザーが端末装置30から設定できる。
【0078】
・終了地点は、移動ルートの終点である。終了地点は、ユーザーが端末装置30から設定できる。
【0079】
・ウェイポイントは、開始地点と終了地点を除いた、移動ルートが含むウェイポイントである。ウェイポイントは、ユーザーが端末装置30から設定できる。ウェイポイントを情報処理システム40が移動時間最小化などの手法を用いて自動で設定してもよい。なお、本実施形態では、ウェイポイントに開始地点と終了地点が含まれる場合がある。
【0080】
・移動体種別は、移動体20の種別である。種別は、主に移動手段の違いを示す。移動体種別は、例えばクローラ型、飛行型又は四輪型等である。
【0081】
・高度は、走行開始日時における移動体20の高度(標高)である。高度は、移動中の高度の平均、最大値、最小値などでもよい。
【0082】
・風向は、走行開始日時における風向(例えば東西南北を8等分した方向、又は、北向きを0度とする10度刻みの値等)である。風向は、移動中の風向の平均、最大値、最小値などでもよい。
【0083】
・気温は、走行開始日時における気温である。気温は、移動中の気温の平均、最大値、最小値などでもよい。
【0084】
・機内温度は、走行開始日時における移動体20内の温度である。機内温度は、移動中の機内温度の平均、最大値、最小値などでもよい。
【0085】
・路面状況は、移動ルートにおける路面の状況である。路面状況は、例えば移動体20が平面カメラで路面を撮像し、画像処理によって乾燥、湿潤等の状態を認識してよい。移動体20が平面カメラを搭載していない、又は路面状況の撮像が不可能な場合等、路面状況を把握できない場合 "-" が設定される。
【0086】
・天候は、走行開始日時における天候である。天候は、移動中の平均的な天候でもよいし、消費電力に不利な天候が一度でも生じたことが記録されてもよい。
【0087】
・移動電力は、移動体20が移動ルートの移動に消費した電力である。
【0088】
・作業電力は、移動体20がウェイポイントにおける作業で消費した電力である。
【0089】
・合計電力は、移動電力と作業電力の合計値である。
【0090】
なお、
図7では、移動ルート単位(開始地点、終了地点)で移動履歴情報が蓄積されているが、ウェイポイント単位(あるウェイポイントから次のウェイポイントまで)で蓄積されてもよい。ウェイポイント単位である場合、移動ルートを構成するウェイポイント間で移動電力が記録されるので、推定移動電力をより精度良く推定可能となる。
【0091】
<ウェイポイントの設定例>
図8~
図10を参照して、ウェイポイントの設定方法の一例を説明する。
図8は、拠点内を、移動体20を走行させて自律走行で通過するウェイポイントとなる候補を登録する作業について説明する図である。ユーザーは、端末装置30から所定の入力操作を行い、移動体20に対して操作を開始し、対象拠点の地図情報を表示させる。ユーザーは、操作画面で移動体20が撮像する画像を見ながら遠隔操作し、移動体20の現在位置を確認しつつ、撮像装置により撮像された撮像画像を見ながらウェイポイントを探し、ウェイポイント登録ボタンを押下することで、ウェイポイントを登録する。
図8に示す例では、ユーザーは、エリア1~4の4つのエリアをそれぞれ走行させ、ウェイポイントとなる候補を探す。
【0092】
図9は、登録されたウェイポイントの一例を示した図である。エリア1~4を点検するために、ウェイポイント(位置P0~P21)が登録されている。ウェイポイントには、移動体20が撮像など所定の作業を行う点検箇所も含まれる。
【0093】
移動体20は、位置P0をスタート位置とし、位置P1~P21を順番に移動するようにウェイポイントが登録されている。
図9のように設定されたウェイポイントは情報処理システム40に送信され、情報処理システム40が移動体20に送信することで移動体20に設定される。
【0094】
なお、ウェイポイントは、緯度・経度などの座標でよい。屋内の場合、移動体20の位置情報は、UWB(Ultra Wide Band)で検出される位置情報(室内の座標)、IMES(Indoor Messaging System)等で検出される位置情報(座標)でもよい。この他、ウェイポイントは拠点で移動体20の位置と比較できる情報であればよい。
【0095】
図10は、設定されたウェイポイント情報の一例を示す。ウェイポイントは地点IDに対応付けられた位置情報である。地点IDは上方から下方に順番に付されており、
図10の例では、「P0→P1→P2→……」が移動ルートである。位置情報は、ウェイポイントの座標である。この座標は緯度・経度のほか、拠点内のある位置を基準とする座標であってもよい。
【0096】
<消費電力を考慮した移動ルートの提案の処理又は動作>
次に、
図11、
図12を参照して、情報処理システム40が消費電力を考慮して移動ルートを提案する処理又は動作について説明する。まず、
図11は、ユーザーが移動ルートを設定する処理の流れを説明するシーケンス図である。
【0097】
S1:ユーザーは移動体20を指定して(種別の指定も含まれる)端末装置30に開始地点から終了地点までのウェイポイントを指定する。端末装置30の移動体制御入力部63がウェイポイントの指定を受け付ける。
【0098】
S2:端末装置30の通信部61が移動体20の識別情報、及び、移動体20の制御に関する情報(ウェイポイント、移動体20の速度、目的地で使用するデバイス(撮像装置など))を情報処理システム40に送信する。
【0099】
S3:情報処理システム40の移動体情報受信部45が移動体20の識別情報及び移動体20の制御に関する情報を受信する。提案移動ルート決定部43は、消費電力に基づいて最適な移動ルートを決定する。この処理の詳細を
図12にて説明する。
【0100】
S4:情報処理システム40の移動体情報送信部46は、ユーザーが設定した移動ルートとその推定移動電力を端末装置30に送信する。移動体情報送信部46は、推定移動電力よりも消費電力が少ない移動ルートがあった場合、この移動ルートと消費電力を端末装置30に送信することで、消費電力を考慮した移動ルートを提案する。
【0101】
S5:端末装置30の通信部61は、ユーザーが設定した移動ルートとその推定移動電力、及び、提案された移動ルートと消費電力を受信し、移動体情報表示部62がこれらを表示する。表示例を
図14に示す。
【0102】
S6:ユーザーは、自分が設定した移動ルートの確定、又は、提案された移動ルートを選択する。移動体制御入力部63は操作を受け付ける。ここでは、ユーザーが提案された移動ルートを選択したものとする。
【0103】
S7:端末装置30の通信部61は、提案された移動ルートを設定する旨を情報処理システム40に送信する。通信部61は、移動体20の制御に関する情報を再度、情報処理システム40に送信してよい。
【0104】
S8:情報処理システム40の移動体情報受信部45は、移動ルートの設定を受け付ける。情報処理システム40の通信部44がウェイポイント、移動体20の速度、ウェイポイントで使用するデバイス(撮像装置など)などを移動体20に送信する。
【0105】
移動体20の通信部22がこれらを受信し、ウェイポイントとウェイポイントが接続された移動ルートを管理する。ウェイポイントとウェイポイントの接続は管理者が設定してもよいし、数学的な方法(例えば移動距離が最低になる、ルートの重複が少ない等)で自動的に設定してもよい。移動体20は移動ルートに従って拠点内を移動する。移動制御については公知の方法を使用するとして詳細は省略する。
【0106】
図12を参照して、
図11のステップS3で示した移動ルートの提案方法を説明する。
図12は、提案移動ルート決定部43が消費電力に基づいて提案する移動ルートを決定する処理を説明するフローチャート図である。
【0107】
・S11、S12
移動体20のユーザーが移動ルートを設定すると、提案移動ルート決定部43は、ユーザーが設定した移動ルートについて、移動履歴情報に、走行開始日時が現在から一定時間以内で、移動体種別と移動ルートが同じ移動履歴があれば、その移動履歴の消費電量(本実施形態では、移動電力)を推定移動電力として取得する。これは、現在(移動体20が移動を開始しようとしている時刻)から一定時間以内であれば、移動電力に影響する外部環境の変化は少ないためである。一定時間は例えば2時間等でよいが、ユーザーが環境を考慮して設定してよい。また、予約した時刻に移動体20が移動開始する場合は、予約した時刻から一定時間が判断される。
【0108】
例えば、ユーザーが、「2022/3/11 13:01」に「クローラ型」の移動体をルート「A→B→C→D→E」として設定したとする。
図7の移動履歴情報によれば、一定時間以内に、同じ移動ルート、同じ移動体種別の移動履歴が存在する。移動電力は32[kW]である。従って、同じ移動ルート、同じ移動体種別の移動履歴のみを考慮する場合、推定移動電力は32[kW]になる。移動履歴情報に「同じ移動ルート、同じ移動体種別の移動履歴」が複数ある場合、提案移動ルート決定部43は、これらの移動電力の平均等を利用しても良い。
【0109】
・S13
また、提案移動ルート決定部43は、提案するための別の移動ルートを探す。提案移動ルート決定部43は、移動履歴情報に、走行開始日時が現在から一定時間以内で、移動体種別、開始地点及び終了地点が同じ(移動ルート全体が同じものは除く)情報があるか判断する。
・S14
移動体情報送信部46が有する判断手段は、ステップS13であると判断された移動履歴の移動電力が、ユーザーが設定した移動ルートにおける推定移動電力よりも小さいか否か判断する。
・S15
提案移動ルート決定部43が有する判断手段は、ステップS14でYesと判断した場合、ステップS13において判断した移動履歴の移動ルートを提案移動ルートと決定する。
・S16
移動体情報送信部46は、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力よりも消費電力(本実施形態では、移動電力)が少ない移動ルートがある旨を端末装置30へ送信することでユーザーに提案する。
【0110】
例えば、先述した条件と同様に、ユーザーが「2022/3/11 13:01」に「クローラ型」の移動体をルート「A→B→C→D→E」として設定したとする。
図7の移動履歴情報によれば、一定時間以内(例えば2時間以内)に、開始地点と終了地点、移動体種別が同じ移動履歴が存在する。移動電力は21[kW]である。移動体情報送信部46は、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力(ステップS11で特定されている)よりも少ない場合、その旨をユーザーへ提案する。
【0111】
・S11のNo→S17
一方、移動履歴情報に、走行開始日時が一定時間以内で、移動体種別及び移動ルートが同じ移動履歴が存在しなかった場合、提案移動ルート決定部43の第一取得手段は、移動体種別が異なり、かつ、第一の環境情報(例えば高度)が予め決められた条件に合致する移動履歴情報から、第二の環境情報(例えば風向等)を取得する。具体的には、提案移動ルート決定部43は移動体種別が異なる移動体の移動履歴を参照する。「参照条件(予め決められた条件の一例)」は、移動電力に影響する環境情報を抽出又は検索するための条件であり、予め利用者が設定しておく。提案移動ルート決定部43は、例えば、走行開始日時が現在から一定時間以内で、「高度」が現在の移動体20から一定範囲内という参照条件に合致する移動履歴を参照する。これは、高度が同じであれば、移動手段に関係無く風速、風向は同じであるという考えに基づいた場合である。走行開始日時と高度を用いることで、提案移動ルート決定部43は、現在の移動環境と類似する移動環境(例えば、風速、風向、温度)を把握できる。高度(第一の環境情報)を「予め決められた条件」とすると、風速、風向及び温度が「予め決められた条件以外」の第二の環境情報に相当する。
【0112】
・S18
次に、提案移動ルート決定部43の第二取得手段は、移動体と種別が同じ、かつ移動ルートが同じ、かつ第二の環境情報が類似する移動履歴情報から消費電力(本実施形態では、移動電力)を取得する。具体的には、提案移動ルート決定部43は、移動履歴情報に、移動体種別及び移動ルートが同じであり、ステップS17で把握した移動環境(風速、風向及び温度)に類似する移動履歴があるか判断する。ある場合、提案移動ルート決定部43は、該移動履歴の移動電力を取得し、当該移動電力に基づき、後述のように提案移動ルートを決定する。なお、該当する移動履歴が複数ある場合は平均等を利用しても良い。ここで移動ルートが同じとは、一例として開始地点と終了地点が同じ場合であるが、開始地点、終了地点が座標で表されている場合、所定の範囲内の座標である場合も含む。その他、開始地点、終了地点を示すフラグなどが一致する場合であってもよい。また、類似する、とは、一例として環境、つまり風速、風向、温度等を示す数値が一定範囲内である場合である。その他、予め環境つまり風速、風向、温度等のレベルを示す分類を設定しておき、分類が一致する場合等であってもよい。
【0113】
・S19
提案移動ルート決定部43の推定手段は、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力を推定する。走行開始日時が現在から一定時間以内で、移動体種別及び移動ルートが同じ移動履歴が存在しないので、提案移動ルート決定部43は、例えば移動体種別及び移動ルートが同じ移動履歴から移動電力を推定移動電力として取得する。この移動履歴がない場合、提案移動ルート決定部43は、移動ルートの距離に標準的な単位距離当たり消費電力を乗じて推定移動電力を推定する。
【0114】
・S19→S14,S15、S16
移動体情報送信部46は、ステップS19で取得された、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力よりも、ステップS18で取得された移動電力の方が小さい場合、ステップS18において判断した移動履歴の移動ルートを提案移動ルートと決定する。そしてユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力よりも消費電力が少ないルートがある旨をユーザーへ提案する。
ステップS14では、提案移動ルート決定部43が有する判断手段が、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力よりも、ステップS18で取得された移動電力の方が小さいか否か判断する。
ステップS15では、提案移動ルート決定部43が有する判断手段は、ステップS14でYesと判断した場合、ステップS18において判断した移動履歴の移動ルートを提案移動ルートと決定する。
ステップS16では、移動体情報送信部46は、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力よりも消費電力(本実施形態では、移動電力)が少ないルートがある旨を端末装置30へ送信することでユーザーに提案する。
【0115】
<ユーザーへの移動ルートの提案例>
図13は、端末装置30が表示する、消費電力が少ない移動ルートを提案する移動ルート提案画面200の一例である。移動ルート提案画面200は、ユーザーが設定した移動ルート209を表示する。また、移動ルート提案画面200は、「設定したルートよりも、消費電力が少ないルートが存在します。このまま点検開始しますか?」というメッセージ201、ユーザーが設定した移動ルート202、より消費電力が少ない移動ルート203が表示されている。ユーザーは、メッセージ201を見て、より消費電力が少ない移動ルートを確認し、移動ルートを変更するか否か判断できる。
【0116】
また、
図14に示すように、移動体情報送信部46は、各移動ルートの消費電力をユーザーに提示するとよい。
図14は、消費電力を含む、消費電力が少ない移動ルートを提案する移動ルート提案画面200の一例である。
図14の移動ルート提案画面200は、ユーザーが設定した移動ルートの推定移動電力204と、提案移動ルート決定部43が決定した移動電力が少ない移動ルートの消費電力205と、現在のバッテリ残量206が表示されている。
【0117】
これにより、ユーザーが最適な移動ルートだけでなく具体的な消費電力を把握でき、電池切れしない移動ルートを選択できる。
【0118】
<主な効果>
以上説明したように、本実施形態の移動体システム100は、種別が異なる移動体20の移動履歴を用いることで、より消費電力が少ない移動ルートを提案できる。
例えば、移動履歴情報にドローン等の飛行型の移動体20の移動電力が登録されている場合に、ユーザーがクローラ型の移動体20にこれから作業を開始させる。ユーザーとしては、高度の代わりに又は高度と共に、「風速」、「風向」を移動電力が少ない移動ルートの提案に使用したい場合がある。
また、移動履歴情報に四輪等の飛行型の移動体20の移動電力が登録されている場合に、ユーザーがクローラ型の移動体20にこれから作業を開始させる。同一の移動ルートという条件が一致するのであれば、「路面状況」のみを移動電力が少ない移動ルートの提案に使用したい場合がある。
例えば、走行開始日時が一定時間以内で、移動体種別と移動ルートが同じ情報がないが、移動体種別が異なり同一ルートの移動履歴がある場合、ユーザーは「路面状況」のみを、移動電力を参照する条件に設定するかどうかを、チェックボックス211で設定できる。
また、ユーザーは「高度」「風速」「風向」「気温」を、参照条件に設定するかどうかを、チェックボックス212~215で設定できる。端末装置30の通信部61はチェックボックス211~215の設定内容を情報処理システム40に送信する。情報処理システム40の移動体情報受信部45は参照条件のカスタマイズを受け付ける。
なお、端末装置30と情報処理システム40は、Webアプリを実行してよい。Webアプリとは、Webブラウザ上で動作するプログラミング言語(例えばJavaScript(登録商標))によるプログラムとWebサーバー側のプログラムが協調することによって動作するアプリケーションである。これに対し、端末装置30にインストールされなければ実行されないアプリケーションをネイティブアプリという。本実施形態に関しても、端末装置30で実行されるアプリケーションはWebアプリでもネイティブアプリでもよい。
情報処理システム40は、Webアプリの画面を端末装置30が表示するための画面情報を生成する。画面情報は、HTML、XML、スクリプト言語、及びCSS(Cascading Style Sheet)等で記述されたプログラムであり、主にHTMLによりWebページの構造が特定され、スクリプト言語によりWebページの動作が規定され、CSSによりWebページのスタイルが特定される。
本実施例によれば、実施例1の効果に加え、走行時の環境や条件に合わせて、移動電力を取得する移動履歴の参照条件をユーザーが変更できるので、推定移動電力の推定精度が上がる。