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特開2024-147422硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、プリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147422
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20241008BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08F290/06
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060429
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳純
(72)【発明者】
【氏名】青山 良朋
(72)【発明者】
【氏名】大城 康太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓実
(72)【発明者】
【氏名】仲田 和貴
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB091
4J127BB191
4J127BC051
4J127BC151
4J127BD231
4J127BE211
4J127BE21Y
4J127BE231
4J127BE23Y
4J127BF231
4J127BF23X
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG121
4J127BG12Y
4J127BG141
4J127BG14X
4J127CB281
4J127CB352
4J127CC021
4J127CC292
4J127DA12
4J127EA05
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】 表面凹凸を有する基板に対しても好ましく使用可能な硬化性樹脂組成物の提供を提供する。
【解決手段】 本発明のある形態は、不飽和炭素結合を含む官能基を有し分岐構造を有するポリフェニレンエーテルと、(メタ)アクリレート基を有する化合物と、を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和炭素結合を含む官能基を有し分岐構造を有するポリフェニレンエーテルと、(メタ)アクリレート基を有する化合物と、を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物の含有量が固形分換算で、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して15質量部以上である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物の含有量が固形分換算で、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して30質量部以上である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物の分子量が3,000以下である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物が芳香環を含まない化合物である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1記載の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有するドライフィルム。
【請求項7】
請求項1記載の硬化性樹脂組成物又は請求項6に記載のドライフィルムにおける前記樹脂層を硬化して得られる硬化物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物を有するプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板の製造方法としては、プリプレグと銅箔をプレス加工して回路形成された内層回路板(いわゆる銅張積層板)に絶縁層と導体層を交互に積み上げていくビルドアップ方式の製造技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-087927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の基板の構造は複雑化しており、表面凹凸等を有する基板等も存在する。
【0005】
多層プリント配線板においては、2層間を導通させることを目的として、レーザーやドリル等を用いた、開口部(スルーホール或いはビアホール)の形成が実施される。また、この開口部を形成する際に発生する残渣(スミア)を除去することを目的として、デスミア処理液等を用いた、デスミア処理が実施される。表面凹凸を含む基板に従来の樹脂層を適用した場合には、デスミア処理後に、表面凹凸部周辺の樹脂層にクラックが特に発生しやすいことが解った。
【0006】
また、従来の樹脂層は、表面凹凸を有する基板等に積層させた場合に表面凹凸への埋め込み性(平坦性)等が不足することがあった。
【0007】
このように、従来の樹脂層は、表面凹凸を有する基板等には十分に対応していない場合があった。
【0008】
そこで本発明は、表面凹凸を有する基板に対しても好ましく使用可能な硬化性樹脂組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の樹脂と、特定の化合物とを組み合わせることで、前記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
本発明の形態(1)は、不飽和炭素結合を含む官能基を有し分岐構造を有するポリフェニレンエーテルと、(メタ)アクリレート基を有する化合物と、を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物である。
【0011】
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物の含有量が固形分換算で前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して15質量部以上であることが好ましい。
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物の含有量が固形分換算で前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して30質量部以上であることが好ましい。
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物の分子量が3,000以下であることが好ましい。
【0012】
前記(メタ)アクリレート基を有する化合物が芳香環を含まない化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明の形態(2)は、形態(1)の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有するドライフィルムである。
【0014】
本発明の形態(3)は、形態(1)の硬化性樹脂組成物又は形態(2)のドライフィルムにおける前記樹脂層を硬化して得られる硬化物である。
【0015】
本発明の形態(4)は、形態(3)の硬化物を有するプリント配線板である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0017】
本明細書において、ポリフェニレンエーテル(PPE)の原料として用いられ、ポリフェニレンエーテルの構成単位になり得るフェノール類を総称して、「原料フェノール類」とする。
【0018】
本明細書において、原料フェノール類の説明を行う際に「オルト位」や「パラ位」等と表現した場合、特に断りがない限り、フェノール性水酸基の位置を基準(イプソ位)とする。
【0019】
本明細書において、単に「オルト位」等と表現した場合、「オルト位の少なくとも一方」等を示す。従って、特に矛盾が生じない限り、単に「オルト位」とした場合、オルト位のどちらか一方を示すと解釈してもよいし、オルト位の両方を示すと解釈してもよい。
【0020】
本明細書において、原料フェノール類としては主に1価のフェノール類を開示しているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、原料フェノール類として多価のフェノール類を使用してもよい。
【0021】
本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
【0022】
本明細書において、特に断らない限り、各種測定は、環境温度を室温(25℃)として実施する。
【0023】
本明細書において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0024】
本明細書において、硬化性樹脂組成物中に含まれる成分と、硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜である硬化性樹脂層等に含まれる成分と、を区別せずに説明することがある。
【0025】
以下、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、プリント配線板又は電子部品等について説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
【0026】
<<<<硬化性樹脂組成物の組成>>>>
本開示に係る硬化性樹脂組成物は、不飽和炭素結合を含む官能基を有し分岐構造を有するポリフェニレンエーテルと、(メタ)アクリレート基を有する化合物と、を含む。
本開示に係る硬化性樹脂組成物は、フィラーを含んでいてもよい。
本開示に係る硬化性樹脂組成物は、有機溶媒を含むワニスであってもよい。
本開示に係る硬化性樹脂組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。
【0027】
以下、(メタ)アクリレート基を有する化合物を、(メタ)アクリレート系化合物と称する場合がある。
【0028】
<<<ポリフェニレンエーテル>>>
本開示のポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合を含む官能基を有し、且つ、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルである。
【0029】
ここで、不飽和炭素結合を含む官能基を有し分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを反応性分岐ポリフェニレンエーテルと称する場合がある。
【0030】
以下、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルについて説明し、次いで、反応性分岐ポリフェニレンエーテルについて説明する。
【0031】
分岐構造を有するポリフェニレンエーテルは、少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られる。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
【0032】
条件1を満たすフェノール類{例えば、後述するフェノール類(A)およびフェノール類(B)}は、オルト位に水素原子を有するため、フェノール類と酸化重合される際に、イプソ位、パラ位のみならず、オルト位においてもエーテル結合が形成され得るため、分岐鎖状の構造を形成することが可能となる。
【0033】
このように、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルは、その構造の一部が、少なくともイプソ位、オルト位、パラ位の3か所がエーテル結合されたベンゼン環により分岐することとなる。この分岐構造を有するポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテル化合物であると考えられる。
【0034】
【化1】
【0035】
式(i)中、R~Rは、相互に独立に、水素原子、または炭素数1~15(好ましくは、炭素数1~12)の炭化水素基である。
【0036】
また、反応性分岐ポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合を含む官能基を有する。かかる官能基を有することにより、架橋性を付与する効果と優れた反応性により、硬化物の諸特性が良好となる。
【0037】
このような不飽和炭素結合を含む官能基を、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルに導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、
原料フェノール類として、
少なくとも下記条件1および下記条件2をいずれも満たすフェノール類(A)を含ませる(形態1)、または、少なくとも下記条件1を満たし下記条件2を満たさないフェノール類(B)と下記条件1を満たさず下記条件2を満たすフェノール類(C)の混合物を含ませる(形態2)方法である。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件2)
パラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有する
【0038】
前記方法によって得られる反応性分岐ポリフェニレンエーテルは、条件2を満たすフェノール類{例えば、フェノール類(A)およびフェノール類(C)のいずれか}を少なくともフェノール原料として用いているので、少なくとも不飽和炭素結合を含む炭化水素基による架橋性を有することとなる。
【0039】
すなわち、前記方法によって得られる反応性分岐ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテルであり、且つ少なくとも一つの不飽和炭素結合を含む炭化水素基を官能基として有する化合物と考えられる。具体的には、上記式(i)中のR~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である化合物と考えられる。
【0040】
特に、上記形態2において、工業的・経済的な観点から、フェノール類(B)が、o-クレゾール、2-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノールおよびフェノールの少なくともいずれか1種であり、フェノール類(C)が、2-アリル-6-メチルフェノールであることが好ましい。
【0041】
ここで、反応性分岐ポリフェニレンエーテルを構成する原料フェノール類は、本開示の効果を阻害しない範囲内で、条件1を満たさないその他のフェノール類を含んでいてもよい。
【0042】
このようなその他のフェノール類としては、例えば、後述するフェノール類(C)およびフェノール類(D)、パラ位に水素原子を有しないフェノール類が挙げられる。特に後述するフェノール類(C)およびフェノール類(D)は、酸化重合される際には、イプソ位およびパラ位においてエーテル結合が形成され、直鎖状に重合されていく。そのため、ポリフェニレンエーテルの高分子量化のためには、原料フェノール類として、フェノール類(C)およびフェノール類(D)をさらに含むことが好ましい。
【0043】
以下、フェノール類(A)~(D)に関してより詳細に説明する。
【0044】
フェノール類(A)は、上述のように、条件1および条件2のいずれも満たすフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式(1)で示されるフェノール類(a)である。
【0045】
【化2】
【0046】
式(1)中、R~Rは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0047】
式(1)で示されるフェノール類(a)としては、o-ビニルフェノール、m-ビニルフェノール、o-アリルフェノール、m-アリルフェノール、3-ビニル-6-メチルフェノール、3-ビニル-6-エチルフェノール、3-ビニル-5-メチルフェノール、3-ビニル-5-エチルフェノール、3-アリル-6-メチルフェノール、3-アリル-6-エチルフェノール、3-アリル-5-メチルフェノール、3-アリル-5-エチルフェノール等が例示できる。式(1)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0048】
フェノール類(B)は、上述のように、条件1を満たし、条件2を満たさないフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式(2)で示されるフェノール類(b)である。
【0049】
【化3】
【0050】
式(2)中、R~Rは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rは、不飽和炭素結合を有しない。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0051】
式(2)で示されるフェノール類(b)としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、o-tert-ブチルフェノール、m-tert-ブチルフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノール、等が例示できる。式(2)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0052】
フェノール類(C)は、上述のように、条件1を満たさず、条件2を満たすフェノール類、即ち、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式(3)で示されるフェノール類(c)である。
【0053】
【化4】
【0054】
式(3)中、RおよびR10は、相互に独立に、炭素数1~15の炭化水素基であり、RおよびRは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~R10の少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0055】
式(3)で示されるフェノール類(c)としては、2-アリル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-エチルフェノール、2-アリル-6-フェニルフェノール、2-アリル-6-スチリルフェノール、2,6-ジビニルフェノール、2,6-ジアリルフェノール、2,6-ジイソプロペニルフェノール、2,6-ジブテニルフェノール、2,6-ジイソブテニルフェノール、2,6-ジイソペンテニルフェノール、2-メチル-6-スチリルフェノール、2-ビニル-6-メチルフェノール、2-ビニル-6-エチルフェノール等が例示できる。式(3)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0056】
フェノール類(D)は、上述のように、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式(4)で示されるフェノール類(d)である。
【0057】
【化5】
【0058】
式(4)中、R11およびR14は、相互に独立して、不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基であり、R12およびR13は、相互に独立して、水素原子、または不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0059】
式(4)で示されるフェノール類(d)としては、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジトリルフェノール等が例示できる。式(4)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0060】
ここで、本開示において、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、アルケニル基である。不飽和炭素結合を有する炭化水素基としては、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なお、これらの炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0061】
以上説明したような反応性分岐ポリフェニレンエーテルは、硬化性組成物の成分として用いる場合、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0062】
なお、反応性分岐ポリフェニレンエーテル合成時に用いられる原料フェノール類の合計に対する条件1を満たすフェノール類の割合は、1~50mol%であることが好ましい。
【0063】
また、原料フェノール類の合計に対する条件2を満たすフェノール類の割合は、0.5~99mol%であることが好ましく、1~99mol%であることがより好ましい。
【0064】
反応性分岐ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、2,000~30,000であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましく、8,000~30,000であることが更に好ましく、8,000~25,000であることが特に好ましい。分子量をこのような範囲とすることで、溶媒への溶解性を維持しつつ、硬化性組成物の製膜性を向上させることができる。さらに、多分散指数(PDI:重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5~20であることが好ましい。
【0065】
反応性分岐ポリフェニレンエーテルの分子量は、使用する原料フェノール類の種類にもよるが、合成時の反応温度や反応時間等を変更することで調整することが可能である。また、原料フェノール類中の少なくとも条件2を満たすフェノール類の割合を多くすることで、重合反応が抑制され、分子量の増加速度が遅くなり反応性分岐ポリフェニレンエーテルの分子量制御が容易となる。
【0066】
硬化性樹脂組成物における反応性分岐ポリフェニレンエーテルの含有量は、硬化性樹脂組成物中のフィラーを除いた固形分換算の全量基準で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~60質量%である。
【0067】
<<ポリフェニレンエーテルの製造方法>>
本開示の反応性分岐ポリフェニレンエーテルは、使用する原料フェノール類や原料フェノール類の比率を前述したものとする以外は、公知のポリフェニレンエーテルの合成方法で製造することができる。例えば、国際公開WO2020/017570公報にて開示された合成方法にて製造することができる。
【0068】
<<<(メタ)アクリレート系化合物>>>
(メタ)アクリレート系化合物は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。より詳細には、(メタ)アクリレート基とは、HC=CH-C(=O)-O-で示されるアクリレート基、又は、HC=C(CH)-C(=O)-O-で示されるメタクリレート基、の少なくともいずれか一方を有する化合物である。
【0069】
反応性分岐ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリレート系化合物とを併用することで、凹凸等への埋め込み性を向上させる効果やデスミア処理時におけるクラックの発生を抑制する効果(デスミア耐性)が得られやすい。また、反応性分岐ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリレート系化合物とを併用した場合、架橋密度や耐熱性等が向上し、また、反応性分岐ポリフェニレンエーテル由来の低誘電特性が維持され易い。
【0070】
(メタ)アクリレート系化合物は、特に限定されず、脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環式化合物、脂環式化合物等であってもよい。(メタ)アクリレート系化合物は、芳香環を含まない化合物であることが好ましい。
【0071】
(メタ)アクリレート系化合物は、2官能以上であることが好ましく、2官能以上4官能以下であることがより好ましい。
【0072】
芳香環を含まない2官能の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
芳香環を含まない3官能以上の(メタ)アクリレート系化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、4ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
芳香環を含む2官能以上の(メタ)アクリレート系化合物としては、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0075】
また、(メタ)アクリレート系化合物は、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー(例えば、(メタ)アクリレート基を有するポリフェニレンエーテル)等であってもよい。
【0076】
(メタ)アクリレート系化合物の分子量は、3,000以下が好ましく、1,000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましい。このような(メタ)アクリレート系化合物を用いることで、凹凸等への埋め込み性を向上させる効果やデスミア処理時におけるクラックの発生を抑制する効果(デスミア耐性)が得られやすい。
【0077】
また、(メタ)アクリレート系化合物の(メタ)アクリレート基当量[(メタ)アクリレート系化合物の分子量/1分子中の(メタ)アクリレート基数]は、80以上が好ましく、100以上がより好ましい。また、1,000以下が好ましく、500以下より好ましく、200以下がさらに好ましい。このような(メタ)アクリレート系化合物を用いることで、凹凸等への埋め込み性を向上させる効果やデスミア処理時におけるクラックの発生を抑制する効果(デスミア耐性)が得られやすい。
【0078】
硬化性樹脂組成物における(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、固形分換算で硬化性樹脂組成物中の反応性分岐ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上がさらにより好ましく、50質量部以上が特に好ましい。また、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらにより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0079】
<<<フィラー>>>
フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
【0080】
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;タルク、マイカなどの粘土鉱物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどのフェロブスカイト型結晶構造を有するフィラー;窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を使用できる。
【0081】
有機フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンの共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィラー;シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等の炭化水素系樹脂フィラー等を使用できる。
【0082】
フィラーは、シリカであることが好ましい。シリカの平均粒径は、好ましくは0.01~5μm、より好ましくは0.01~1μmである。ここで平均粒径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法による粒度分布の測定値から、累積分布によるメディアン径(d50、体積基準)として求めることができる。また、シリカの平均粒径は、樹脂組成物を調製(予備攪拌、混練)する前の粉体状のものを上記のようにして測定した値をいうものとする。
【0083】
フィラーはカップリング剤により表面処理が施されていてもよい。表面をシランカップリング剤で処理することで、反応性分岐ポリフェニレンエーテルとの分散性を向上させることができる。また有機溶媒との親和性も向上させることができる。
【0084】
硬化性樹脂組成物中のフィラーの含有量は、固形分換算で、硬化性樹脂組成物中の反応性分岐ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、又は、100質量部以上がさらに好ましい。また、1500質量部以下が好ましく、1000質量部以下がより好ましく、800質量部以下がさらにより好ましい。
【0085】
<<<有機溶媒>>>
有機溶媒は、反応性分岐ポリフェニレンエーテルを溶解可能なものを使用することができ、特に限定されず、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン等が挙げられる。また、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アニソール等の溶媒を使用してもよい。
有機溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0086】
<<<その他の成分>>>
その他の成分としては、例えば、過酸化物、架橋型硬化剤、エラストマー、反応性分岐ポリフェニレンエーテル以外のポリフェニレンエーテル、マレイミド樹脂等の樹脂及びポリマー成分、増感剤、接着助剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、密着剤、着色剤、繊維、シランカップリング剤、難燃性剤、セルロースナノファイバー、分散剤、熱硬化触媒、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、密着性付与剤等が挙げられる。その他の成分は、各々、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その他の成分として、低誘電特性のものを併用することが好ましい。
【0087】
硬化性樹脂組成物におけるその他の成分の含有量は、用途等に応じて適宜の量を配合すればよい。一例として、硬化性樹脂組成物中のその他の成分の合計の含有量は、固形分換算で硬化性樹脂組成物中の反応性分岐ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、200質量部以下、150質量部以下、又は、100質量部以下である。
【0088】
<<過酸化物>>
過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ブテン、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチレンパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、等があげられる。過酸化物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0089】
硬化性樹脂組成物中の過酸化物の含有量は、固形分換算で硬化性樹脂組成物中の反応性分岐ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、0.1~10質量部、又は、1~5質量部であることが好ましい。
【0090】
<<架橋型硬化剤>>
架橋型硬化剤としては、反応性分岐ポリフェニレンエーテルとの相溶性が良好なものが用いられるが、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物;フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物;スチレンモノマー,フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物;さらにトリアルケニルイソシアヌレートなどが良好である。架橋型硬化剤としては、反応性分岐ポリフェニレンエーテルとの相溶性が特に良好なトリアルケニルイソシアヌレートが好ましく、なかでも具体的にはトリアリルイソシアヌレート(以下、TAIC(登録商標))やトリアリルシアヌレート(以下TAC)が好ましい。これらは、低誘電特性を示し、かつ耐熱性を高めることができる。特にTAIC(登録商標)は、反応性分岐ポリフェニレンエーテルとの相溶性に優れるので好ましい。
【0091】
硬化性樹脂組成物中の架橋型硬化剤の含有量は、固形分換算で硬化性樹脂組成物中の反応性分岐ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、1~100質量部、又は、10~80質量部であることが好ましい。
【0092】
<<エラストマー>>
エラストマーは、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマーのいずれでもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。
熱硬化性エラストマーとしては、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、および、天然ゴム等が挙げられる。
【0093】
硬化性樹脂組成物中のエラストマーの含有量は、固形分換算で硬化性樹脂組成物中の反応性分岐ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、10~100質量部、又は、40~80質量部であることが好ましい。
【0094】
<<<<ドライフィルム>>>>
ドライフィルムは、第一のフィルム(支持フィルム)上に本開示の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有する。
【0095】
ドライフィルムは、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法を用いて、硬化性樹脂組成物を第一のフィルム上に均一に塗布し、乾燥して、樹脂層を形成することで得られる。
【0096】
ドライフィルムは、表面に第二のフィルム(保護フィルム)が積層されていてもよい。第二のフィルムと第一のフィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
【0097】
第一のフィルム及び第二のフィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
【0098】
第一のフィルムとしては、例えば、2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
【0099】
第二のフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、第一のフィルムよりも小さいものが良い。
【0100】
ドライフィルム上の樹脂層の膜厚は、用途に応じて適宜変更可能であり、100μm以下が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0101】
<<<<硬化物>>>>
本開示の硬化性樹脂組成物から硬化物を得るための方法は、特に限定されず、硬化性樹脂組成物の組成に応じて適宜変更可能である。
一例として、基材(基板を含む)上に硬化性樹脂組成物を塗工(例えば、アプリケーター等による塗工)した後、必要に応じて組成物中の有機溶媒を除去する乾燥工程を実施し、加熱により組成物中の熱硬化性成分を熱架橋させる熱硬化工程を実施すればよい。
【0102】
塗工方法としては、例えば、有機溶剤を用いて塗工方法に適した粘度に調整して、基材上に、インクジェット法、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。
【0103】
乾燥方法は熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0104】
熱硬化方法としては、例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、真空オーブン、真空プレス機等による加熱等が挙げられる。
【0105】
各工程における実施条件(例えば、塗工厚、乾燥及び加熱工程における温度や時間等)は、硬化性樹脂組成物の組成や用途等に応じて適宜変更すればよい。
【0106】
また、硬化物は、前述したドライフィルムの樹脂層を硬化して得ることも可能である。
【0107】
なお、前述したドライフィルムを使用する場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成することができる。ドライフィルムの基材への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~140℃であることが好ましい。
【0108】
<<<<プリント配線板又は電子部品>>>>
プリント配線板又は電子部品は、前述した硬化物を有するものであり、優れたピール強度等を有することから、種々の用途に使用可能である。
【0109】
その用途は特に限定されないが、好ましくは、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等が挙げられる。
【0110】
ここで、本開示に係る硬化性樹脂組成物は、プリント配線板又は電子部品の製造工程において、デスミア処理を含むものに好ましく使用することができる。
【0111】
以下、デスミア処理の実施方法の概略について説明する。
【0112】
本開示に係る硬化性樹脂組成物を基材(基板を含む。)上に塗布し乾燥させる、或いは、基材上にドライフィルム上の樹脂層をラミネートして、樹脂層を形成する。
基材は、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板、金属基板、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板、銅箔等の金属箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルム、ガラスクロス、アラミド繊維等の繊維が挙げられる。
【0113】
次に、樹脂層を硬化(例えば、熱硬化)させる。
【0114】
次に、硬化物層に対して、COレーザーやUV-YAGレーザー等のレーザー又はドリルにて孔(穴)を形成する。孔(穴)は、基板の表と裏を導通させることを目的とする貫通孔(スルーホール)、基材上の回路と第2の層上の回路を導通させることを目的とする有底穴(ビアホール)のどちらでもよい。
【0115】
次に、孔(穴)の形成後、加工により生じる残渣(スミア)をデスミア液により除去する。
【0116】
次に、硬化物層の表面に、めっき層を形成する。めっき金属としては、銅、スズ、はんだ、ニッケル等、特に制限は無く、複数組み合わせて使用することもできる。めっき層の形成方法は、特に限定されず、無電解めっき、電解めっき、又は、これらの組み合わせが例示される。
【0117】
更に、このような樹脂層の形成やめっき層の形成等を繰り返すことで、多層プリント配線板を形成してもよい。
【0118】
本開示に係る硬化性樹脂組成物を用いた場合、このようなデスミア処理が実施された際にクラック等の発生を抑制することができる。そのため、特にクラックが発生しやすい表面凹凸を有する基板を用いた場合であっても、クラックの発生を抑制することができる。
【0119】
また、本開示に係る硬化性樹脂組成物は、表面凹凸を有する基板を用いた場合に、埋め込み性(平坦性)に優れた硬化物を得やすい。表面凹凸を有する基板としては、例えば、デガスホールを有する基板や配線パターンが描かれた基板等が挙げられる。デガスホールを有する基板とは、コア層上に設けられた金属層に予め孔を設けておき、加熱の際等にコア層から発生するガスの抜けを促し、金属層の膨れ等を防止可能な基板である。デガスホールのホール径は、特に限定されず、10~500μm等である。また、デガスホールのピッチは、特に限定されず、0.1~5mm等である。
【実施例0120】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明は以下には限定されない。
【0121】
<<<硬化性樹脂組成物のワニスの作製>>>
<<実施例1>>
<反応性分岐PPEの合成>
500mLのセパラブルフラスコに、2,6-ジメチルフェノール19.8g(0.16mol)、2-アリルフェノール2.42g(0.018mol)を加え、得られた混合物をトルエン261gで溶解させた。さらにジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)が0.18wt%、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が0.16wt%となるように調製し、反応液中に乾燥空気を75mL/minの流量で吹込みながら、四つ羽根パドル翼を用いて攪拌速度200rpmにて攪拌、40℃で所定時間反応させ、ポリフェニレンエーテルを含む反応液を得た。
反応液の加温、並びに、乾燥空気の吹込みを停止した後、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)を濾過にて取り除き、メタノール1,200mL、濃塩酸4.0mL、HO27.0mLの混合液で再沈殿させて減圧濾過にて取り出し、メタノールで洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、反応性分岐ポリフェニレンエーテルを得た。得られた反応性分岐ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は13,000、重量平均分子量は45,000であった。
【0122】
<ワニスの調製>
反応性分岐PPE:100質量部およびスチレン系エラストマー(旭化成株式会社製:商品名「タフテックH1051」):24.5質量部に、有機溶媒を加えて40℃にて30分混合、攪拌して完全に溶解させた。これによって得た反応性分岐PPE樹脂溶液に、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学株式会社製:商品名「A-DCP」):60質量部、トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル株式会社製:商品名「TAIC」):60質量部、球状シリカフィラー(株式会社アドマテックス製:商品名「SC2050-HNF」):165質量部、をそれぞれ添加してこれを混合した後、三本ロールミルで分散させた。
最後に、過酸化物であるα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(日油株式会社製:商品名「パーブチルP-40」)を4質量部それぞれ配合し、マグネチックスターラーにて攪拌した。
以上のようにして、実施例1の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0123】
<<実施例2>>
A-DCP:30質量部とした以外は、実施例1と同様に、実施例2の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0124】
<<実施例3>>
A-DCP:15質量部とした以外は、実施例1と同様に、実施例3の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0125】
<<実施例4>>
TAICを添加せず、A-DCP:75質量部、タフテックH1051:75質量部、球状シリカフィラー:169質量部とした以外は、実施例1と同様に、実施例4の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0126】
<<実施例5>>
タフテックH1051を添加せず、A-DCP:100質量部、球状シリカフィラー:136質量部とした以外は、実施例2と同様に、実施例5の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0127】
<<実施例6>>
A-DCPをジオキサングリコールジアクリレート(新中村化学株式会社製「A-DOG」)とした以外は、実施例3と同様に、実施例6の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0128】
<<実施例7>>
A-DCPを1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(株式会社日本触媒製「HDDA」)とした以外は、実施例3と同様に、実施例7の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0129】
<<実施例8>>
A-DCPをジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM408」)とした以外は、実施例5と同様に、実施例8の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0130】
<<実施例9>>
タフテックH1051:50質量部とし、A-DCPをイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM313」):100質量部とした以外は、実施例4と同様に、実施例7の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0131】
<<実施例10>>
アロニックスM313をSABICジャパン合同会社製「SA-9000」(反応型低分子量ポリフェニレンエーテル)とした以外は、実施例9と同様に、実施例10の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0132】
<<比較例1>>
A-DCPを添加せず、パーブチルP-40:3質量部、球状シリカフィラー:123質量部とした以外は実施例1と同様に、比較例1の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0133】
<<比較例2>>
A-DCPをDIC株式会社製「EPICLON NE-X-0470S」とした以外は、実施例5と同様に、比較例2の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0134】
<<比較例3>>
A-DCPを信越化学工業株式会社製「SLK2600」とした以外は、実施例5と同様に、比較例3の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0135】
<<比較例4>>
A-DCPをTAICとした以外は、実施例5と同様に、比較例4の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0136】
<<<評価>>>
<<試験基板の作製>>
厚さ38μmのPETフィルム(東レ株式会社製:商品名「R80」)上に、各実施例及び各比較例の硬化性樹脂組成物のワニスをそれぞれ乾燥後の厚さが35μmに示す値となるように、アプリケーターにて塗布、熱風循環式乾燥炉にて90℃で15分間乾燥し、各試験用ドライフィルムを得た。
【0137】
各試験用ドライフィルムを、銅厚35μm、デガスホール径200μm、0.5mmピッチのデガス構造を多数有する銅張積層板の両面に、ドライフィルムの樹脂組成物が接するように配置した。真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製「CVP-600」)を用いて140℃、0.8MPaでラミネート後、イナートオーブンを用いて窒素を完全に充満させて200℃まで昇温後60分保持し、各樹脂層を備えた試験基板を作製した。
【0138】
<<デスミア処理>>
市販のデスミア処理液を使用し、各試験基板表面のデスミア処理を実施した。具体的には、PETを剥離した試験基板を膨潤液(アトテックジャパン株式会社製「スウェリングディップ セキュリガントP」)に60℃で5分間浸漬した後、粗化液(アトテックジャパン株式会社製「コンセントレート コンパクト CP)に80℃、20分間浸漬し、その後、中和液(アトテックジャパン株式会社製「リダクション セキュリガント P500:」)に40℃で5分間浸漬させた。
【0139】
<<デスミア後クラックの評価>>
各実施例及び比較例で作製した試験基板におけるデスミア後のデガスホール周辺の表層を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-5000)を使用して150倍で観察し、クラックの評価を行った。100個のデガスホール周辺の表層において、クラックが発生している箇所を数え、下記の評価基準で評価した。評価結果を、表1および表2に示す。
【0140】
<評価基準>
「◎」:クラックが発生したデガスホール数が0個の場合
「〇」:クラックが発生したデガスホール数が1個以上3個未満の場合
「△」:クラックが発生したデガスホール数が3個以上10個未満の場合
「×」:クラックが発生したデガスホール数が10個以上の場合
【0141】
<<埋め込み性の評価>>
各実施例および比較例で作製した試験基板における硬化後のデガスホール周辺の表層を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-5000)を使用して150倍で観察し、埋め込み性の評価を行った。100個のデガスホール周辺の表層において、埋め込み不良が生じているデガスの個数を数え、下記の評価基準で評価した。評価結果を、表1および表2に示す。
【0142】
<評価基準>
「◎」:埋め込み不良のデガスホール数が0個の場合
「〇」:埋め込み不良のデガスホール数が1個以上5個未満の場合
「×」:埋め込み不良のデガスホール数が5個以上の場合
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】