(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147449
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法、情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20241008BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20241008BHJP
C09B 47/10 20060101ALI20241008BHJP
C09B 67/04 20060101ALI20241008BHJP
C09B 67/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B67/20 L
C09B67/20 B
C09B47/10
C09B67/04
C09B67/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060475
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】山崎 竜史
(72)【発明者】
【氏名】清水 克哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 武士
(72)【発明者】
【氏名】近藤 仁
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA06
(57)【要約】
【課題】カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術を改善する。
【解決手段】フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練するステップと、教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を算出するステップと、第1予測データ群と教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を決定するステップと、第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を決定するステップと、第3予測データ群から最適な組成及び製造条件を決定するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタにおいて、情報処理装置が実行するカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法であって、
フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練するステップと、
前記教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成するステップと、
前記第1予測データ群と前記教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成するステップと、
前記第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成するステップと、
前記第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定するステップと、
を含む、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
【請求項2】
請求項1に記載の探索方法であって、
前記モデル適用範囲は、k近傍法、One-Class Support Vector Machine、又はアンサンブル学習に基づき定められる、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
【請求項3】
請求項1に記載の探索方法であって、
前記実現可能性に係る条件は、以下の式(1)乃至式(4)をすべて満足することである、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
16Br > 15Br1Cl > 14Br2Cl・・・(1)
16Br > 15Br1H > 14Br2H・・・(2)
15Br1Cl > 14Br1Cl1H・・・(3)
15Br1H > 14Br1Cl1H・・・(4)
ただし16Br、15Br1Cl、14Br2Cl、15Br1H、14Br2H、及び14Br1Cl1Hは、それぞれフタロシアニンクルード中の16Brフタロシアニン、15Br1Clフタロシアニン、14Br2Clフタロシアニン、15Br1Hフタロシアニン、14Br2Hフタロシアニン、及び14Br1Cl1Hフタロシアニンのマススペクトル強度比(単位は%)を表す。
【請求項4】
請求項1に記載の探索方法であって、さらに、
第3予測データ群はさらに、理想組成に係る条件に基づき決定される、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
【請求項5】
請求項4に記載の探索方法であって、
前記理想組成に係る条件は、以下の式(5)を満足することである、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
100-(16Br+15Br1Cl+15Br1H+14Br2Cl+14Br1Cl1H+14Br2H+AlPc) < 5・・・(5)
ただし、16Br、15Br1Cl、15Br1H、14Br2Cl、14Br1Cl1H、14Br2H、及びAlPcは、それぞれフタロシアニンクルード中の16Brフタロシアニン、15Br1Clフタロシアニン、15Br1Hフタロシアニン、14Br2Clフタロシアニン、14Br1Cl1Hフタロシアニン、14Br2Hフタロシアニン、及び不純物のマススペクトル強度比(単位は%)を表す。
【請求項6】
請求項1に記載の探索方法であって、
前記最適な組成及び製造条件は、輝度に基づき定められる、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
【請求項7】
請求項1に記載の探索方法であって、
前記最適な組成及び製造条件は、輝度及び膜厚に基づき定められる、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法。
【請求項8】
フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタにおいて、制御部を備え、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索をする情報処理装置であって、
前記制御部は、
フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練し、
前記教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成し、
前記第1予測データ群と前記教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成し、
前記第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成し、
前記第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定する、情報処理装置。
【請求項9】
フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタにおいて、情報処理装置が実行するカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索をするプログラムであって、コンピュータに、
フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練することと、
前記教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成することと、
前記第1予測データ群と前記教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成することと、
前記第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成し、
前記第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定することと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機械学習により新規材料を探索する技術が知られている。例えばカラー材料に関して機械学習を用いた例としては、学習用データを機械学習させて人工知能モデルを生成し、これに目標色彩データを入力することで候補組成データを得るという塗料の製造方法がある(特許文献1)。また他の例として、見本色の色彩値を測定し、基本色材の組み合わせデータにより学習したニューラルネットワークを用いて、色材の配合比を求める調色方法がある(特許文献2)。また顔料に関して機械学習を用いた例としては、30種類の光輝性顔料から作成した塗膜と画像特徴量の関係について学習モデルを作成し、これを用いて光輝性顔料の同定を行う方法がある(特許文献3)。また接着剤組成物について実験計画法で求められた最適配合を実施例としてトレースし特性を評価し、最適配合中のアクリレート量とマレイン酸量を請求範囲に記載している例もある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021―188046
【特許文献2】特開平11―341297
【特許文献3】特開2007―218895
【特許文献4】特表2003―519713
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、逆解析を用いた最適組成等の算出方法は知られているが、グリッドサーチをはじめとする最適化を行う場合に予測値の信頼性が低い組成及び製造条件も含まれること、算出された予測値には実際の製造において理論上不可能な条件も含まれていることもあり、依然として実験による確認が必要な場面が多々見られる。またカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法に着目した事例は存在しない。このようにカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術には改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(付記1)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、
フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタにおいて、情報処理装置が実行するカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法であって、
フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練するステップと、
前記教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成するステップと、
前記第1予測データ群と前記教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成するステップと、
前記第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成するステップと、
前記第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定するステップと、
を含む。
【0007】
(付記2)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、(付記1)に記載の探索方法であって、
前記モデル適用範囲は、k近傍法、One-Class Support Vector Machine、又はアンサンブル学習に基づき定められる。
【0008】
(付記3)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、(付記1)又は(付記2)に記載の探索方法であって、
前記実現可能性に係る条件は、以下の式(1)乃至式(4)をすべて満足することである。
16Br > 15Br1Cl > 14Br2Cl・・・(1)
16Br > 15Br1H > 14Br2H・・・(2)
15Br1Cl > 14Br1Cl1H・・・(3)
15Br1H > 14Br1Cl1H・・・(4)
ただし16Br、15Br1Cl、14Br2Cl、15Br1H、14Br2H、及び14Br1Cl1Hは、それぞれフタロシアニンクルード中の16Brフタロシアニン、15Br1Clフタロシアニン、14Br2Clフタロシアニン、15Br1Hフタロシアニン、14Br2Hフタロシアニン、及び14Br1Cl1Hフタロシアニンのマススペクトル強度比(単位は%)を表す。
【0009】
(付記4)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、(付記1)乃至(付記3)のいずれか一項に記載の探索方法であって、
第3予測データ群はさらに、理想組成に係る条件に基づき決定される。
【0010】
(付記5)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、(付記4)に記載の探索方法であって、
前記理想組成に係る条件は、以下の式(5)を満足することである。
100-(16Br+15Br1Cl+15Br1H+14Br2Cl+14Br1Cl1H+14Br2H+AlPc) < 5・・・(5)
ただし、16Br、15Br1Cl、15Br1H、14Br2Cl、14Br1Cl1H、14Br2H、及びAlPcは、それぞれフタロシアニンクルード中の16Brフタロシアニン、15Br1Clフタロシアニン、15Br1Hフタロシアニン、14Br2Clフタロシアニン、14Br1Cl1Hフタロシアニン、14Br2Hフタロシアニン、及び不純物のマススペクトル強度比(単位は%)を表す。
【0011】
(付記6)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、(付記1)乃至(付記5)のいずれか一項に記載の探索方法であって、
前記最適な組成及び製造条件は、輝度に基づき定められる。
【0012】
(付記7)本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法は、(付記1)乃至(付記5)のいずれか一項に記載の探索方法であって、
前記最適な組成及び製造条件は、輝度及び膜厚に基づき定められる。
【0013】
(付記8)本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、
フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタにおいて、制御部を備え、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索をする情報処理装置であって、
前記制御部は、
フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練し、
前記教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成し、
前記第1予測データ群と前記教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成し、
前記第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成し、
前記第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定する。
【0014】
(付記9)本開示の一実施形態に係るプログラムは、
フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタにおいて、情報処理装置が実行するカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索をするプログラムであって、コンピュータに、
フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練することと、
前記教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成することと、
前記第1予測データ群と前記教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成することと、
前記第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成し、
前記第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定することと
を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法、情報処理装置、及びプログラムによれば、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術を実行する情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法を示すフローチャートである。
【
図7】第3予測データ群の変形例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術ついて、図面を参照して説明する。
【0018】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0019】
まず、本実施形態の概要について説明する。本開示の一実施形態に係る探索技術の対象は、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件である。本実施形態に係るカラーフィルタは、フタロシアニンクルードを顔料化し、分散剤を加えて分散し、ガラス基板上に塗布乾燥されて製造される。当該組成及び製造条件は、フタロシアニンクルードの組成、顔料化条件、及び分散条件を含む。また、カラーフィルターは主に、輝度、膜厚、及びコントラストの3つの特性を有する。そこで、本開示の一実施形態に係る探索技術では、フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練する。なお、本開示における輝度は、顔料単独で評価する場合の単色輝度、及び他の顔料と混合して評価する場合の調色輝度のどちらの概念をも含む。また本開示における膜厚は、顔料単独で評価する場合の単色膜厚、及び他の顔料と混合して評価する場合の調色膜厚のどちらの概念も含む。また、本開示の一実施形態に係る探索技術では、教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成する。続いて第1予測データ群と教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成する。続いて第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成する。そして第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定する。
【0020】
このように本実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術によれば、フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルが訓練される。そして、グリッドサーチにより第1予測データ群が生成され、モデル適用範囲に基づき第2予測データ群が生成され、実現可能性に係る条件に基づき第3予測データ群が生成される。そして第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件が決定される。そのため、本実施形態によれば、モデル適用範囲及び実現可能性を考慮した組成及び製造条件の探索ができるという点で、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術が改善される。
【0021】
(情報処理装置の構成)
次に、情報処理装置10の各構成について詳細に説明する。情報処理装置10は、ユーザによって使用される任意の装置である。例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、汎用の電子機器、又は専用の電子機器が、情報処理装置10として採用可能である。
【0022】
図1に示されるように、情報処理装置10は、制御部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14とを備える。
【0023】
制御部11には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、CPU(central processing unit)若しくはGPU(graphics processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)又はASIC(application specific integrated circuit)である。制御部11は、情報処理装置10の各部を制御しながら、情報処理装置10の動作に関わる処理を実行する。
【0024】
記憶部12には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部12には、情報処理装置10の動作に用いられるデータと、情報処理装置10の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0025】
入力部13には、少なくとも1つの入力用インタフェースが含まれる。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。また入力用インタフェースは、例えば、音声入力を受け付けるマイクロフォン、又はジェスチャー入力を受け付けるカメラ等であってもよい。入力部13は、情報処理装置10の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部13は、情報処理装置10に備えられる代わりに、外部の入力機器として情報処理装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0026】
出力部14には、少なくとも1つの出力用インタフェースが含まれる。出力用インタフェースは、例えば、情報を映像で出力するディスプレイ等である。ディスプレイは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイである。出力部14は、情報処理装置10の動作によって得られるデータを表示出力する。出力部14は、情報処理装置10に備えられる代わりに、外部の出力機器として情報処理装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0027】
情報処理装置10の機能は、本実施形態に係るプログラムを、情報処理装置10に相当するプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、情報処理装置10の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、情報処理装置10の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを情報処理装置10として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って情報処理装置10の動作を実行することにより情報処理装置10として機能する。
【0028】
本実施形態においてプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(digital versatile disc)又はCD-ROM(compact disc read only memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。またプログラムの流通は、プログラムを外部サーバのストレージに格納しておき、外部サーバから他のコンピュータにプログラムを送信することにより行ってもよい。またプログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0029】
情報処理装置10の一部又は全ての機能が、制御部11に相当する専用回路により実現されてもよい。すなわち、情報処理装置10の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0030】
図2のフローチャートを参照して、本開示の一実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法を示す。
【0031】
ステップS101:情報処理装置10の制御部11は、予測モデルを訓練する。具体的には、制御部11は、フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルを訓練する。なお輝度、膜厚を算出するために、本開示のフタロシアニン顔料に対して、黄色顔料や紫色顔料を混ぜて色の微調整が行われる。黄色顔料としてはC.I.ピグメントイエロー(PY) 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36: 1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、199、231等が使用される。紫色顔料としてはC.I.ピグメント バイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50等が使用される。
【0032】
ステップS102:制御部11は、第1予測データ群を生成する。具体的には制御部11は、教師データの下限値及び上限値に基づくグリッドサーチにより第1予測データ群を生成する。
【0033】
図3に、第1予測データ群の一例を示す。第1予測データ群は、教師データの各説明変数の取り得る値の範囲で、説明変数を下限から上限まで所定ステップで変更させ、かかる各説明変数の全組合せを、ステップS101にて訓練した予測モデルに入力することで得られる。本実施形態において説明変数は、フタロシアニンクルードの組成分析情報、顔料化条件、及び分散条件である。つまりこれらのそれぞれの説明変数の開始値、終了値、ステップが定められて入力データが決定され、かかる全入力データに対応する出力データが予測モデルに基づき取得される。換言すると第1予測データは、これらの入力データ及び出力データの組合せである。
図3は、横軸を相対輝度とし、縦軸を相対膜厚として、第1予測データ群をプロットしたものである。第1予測データ群は、プロットの集合100により示されている。
【0034】
ステップS103:制御部11は、第2予測データ群を生成する。具体的には制御部11は、第1予測データ群と教師データとにより定められるモデル適用範囲に基づき第2予測データ群を生成する。ここでモデル適用範囲は、k近傍法、One-Class Support Vector Machine、又はアンサンブル学習に基づき定められてよい。
【0035】
図4に、第2予測データ群の一例を示す。
図4は、横軸を相対輝度とし、縦軸を相対膜厚として、第2予測データ群をプロットしたものである。
図4に示す第2予測データ群のモデル適用範囲は、k近傍法に基づき定められたものである。具体的にはモデル適用範囲は以下のように定められる。第2予測データ群は、プロットの集合200により示されている。
【0036】
(a)まず、教師データの説明変数X(フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件)が変数毎に標準化される。当該標準化により、平均0、標準偏差が1になるように説明変数が変換される。具体的には各データから平均を引いて標準偏差により除算することにより、変数の変換処理が行われる。
【0037】
(b)次に、グリッドサーチ結果の説明変数が標準化される。具体的には変数毎に各データから、(a)で求めた教師データの平均値を引いて標準偏差により除算することにより、変数の変換処理が行われる。
【0038】
(c)続いて、全ての教師データにおいてそれぞれの近傍5個の教師データとの距離が計算される。また当該距離の平均値が算出される。
【0039】
(d)上記(c)の算出結果が昇順に並べられ、小さい方から96%の教師データが入る距離がモデル適用範囲の閾値として設定される。
【0040】
(e)続いて、判定したいグリッドサーチ結果と近傍5個の教師データとの距離が計算され、平均距離が算出される。
図5に、判定したいグリッドサーチ結果に係る距離の計算の概念図を示す。d1―d5の距離の平均値が、平均距離に相当する。
【0041】
(f)かかる平均距離がモデル適用範囲の閾値未満である場合、モデル適用範囲内と判定される。他方で平均距離がモデル適用範囲の閾値以上である場合、モデル適用範囲外と判定される。
【0042】
(g)全てのグリッドサーチ結果において上記の(e)及び(f)の処理が行われ、モデル適用範囲内のグリッドサーチ結果が第2予測データ群として決定される。
【0043】
ここで上記の(a)―(f)の処理は、k近傍法のパラメータであるk及びαがそれぞれ5、及び0.96である例を示したが、パラメータの設定はこれらに限られず、異なるパラメータ設定が用いられてもよい。
【0044】
ステップS104:制御部11は、第3予測データ群を生成する。具体的には制御部11は、第2予測データ群と実現可能性に係る条件とに基づき、第3予測データ群を生成する。
【0045】
第3予測データ群は、実現可能性に係る条件として、以下の式(1)乃至式(4)に基づき生成されたものである。換言すると、第3予測データ群は、第2予測データ群のうち、以下の式(1)乃至式(4)をすべて満足するもののみを抽出したデータ群である。
16Br > 15Br1Cl > 14Br2Cl・・・(1)
16Br > 15Br1H > 14Br2H・・・(2)
15Br1Cl > 14Br1Cl1H・・・(3)
15Br1H > 14Br1Cl1H・・・(4)
ただし式(1)乃至式(4)において、16Br、15Br1Cl、14Br2Cl、15Br1H、14Br2H、及び14Br1Cl1Hは、それぞれフタロシアニンクルード中の16Brフタロシアニン、15Br1Clフタロシアニン、14Br2Clフタロシアニン、15Br1Hフタロシアニン、14Br2Hフタロシアニン、及び14Br1Cl1Hフタロシアニンのマススペクトル強度比(単位は%)を表す。
【0046】
図6に、第3予測データ群の一例を示す。
図6は、横軸を相対輝度とし、縦軸を相対膜厚として、第3予測データ群をプロットしたものである。第3予測データ群は、プロットの集合300により示されている。
【0047】
ステップS105:制御部11は、最適な組成及び製造条件を決定する。具体的には制御部11は、第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件を決定する。
【0048】
最適な組成及び製造条件の決定方法は種々の手法を採用可能である。例えば、最適な組成及び製造条件は、輝度に基づき定められてよい。具体的には制御部11は、第3予測データ群のうち、輝度が最大である組成及び製造条件を最適な組成及び製造条件であると決定してよい。あるいは例えば、最適な組成及び製造条件は、輝度及び膜厚に基づき定められてよい。具体的には、制御部11は、膜厚が目標とする任意の値であり、かつ、輝度が最大の組成及び製造条件を、最適な組成及び製造条件であるとして決定してよい。
【0049】
このように本実施形態に係るカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術によれば、フタロシアニンクルードの組成分析情報と顔料化条件と分散条件とを説明変数とし、カラーフィルタの輝度と膜厚とコントラストとを目的変数とする教師データに基づき予測モデルが訓練される。そして、グリッドサーチにより第1予測データ群が生成され、モデル適用範囲に基づき第2予測データ群が生成され、実現可能性に係る条件に基づき第3予測データ群が生成される。そして第3予測データ群に基づき最適な組成及び製造条件が決定される。そのため、本実施形態によれば、モデル適用範囲及び実現可能性を考慮した組成及び製造条件の探索ができるという点で、カラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索技術が改善される。
【0050】
ここで、第3予測データ群はさらに、理想組成に係る条件に基づき決定されてもよい。理想組成に係る条件は、例えば、以下の式(5)を満足することである。換言すると、第3予測データ群は、第2予測データ群のうち、上記の式(1)乃至式(4)に加えて、以下の式(5)を満たすもののみを抽出したデータ群としてもよい。
100-(16Br+15Br1Cl+15Br1H+14Br2Cl+14Br1Cl1H+14Br2H+AlPc) < 5・・・(5)
ただし式(5)において、16Br、15Br1Cl、15Br1H、14Br2Cl、14Br1Cl1H、14Br2H、AlPcは、それぞれフタロシアニンクルード中の16Brフタロシアニン、15Br1Clフタロシアニン、15Br1Hフタロシアニン、14Br2Clフタロシアニン、14Br1Cl1Hフタロシアニン、14Br2Hフタロシアニン、及び不純物のマススペクトル強度比(単位は%)を表す。
図7に、変形例に係る第3予測データ群を示す。
図7は、横軸を相対輝度とし、縦軸を相対膜厚として、変形例に係る第3予測データ群をプロットしたものである。
図7中のプロットの集合400が、変形例に係る第3予測データ群に対応する。
【0051】
(実施例)
以下、本実施形態により決定した最適な組成及び製造条件を用いた実施例を示す。ここでは、本実施形態により決定した最適な組成及び製造条件のフタロシアニンクルードの組成分析情報を理想組成とした。
【0052】
まず、フタロニトリル、アンモニア、塩化亜鉛を原料として亜鉛フタロシアニンを製造した。反応終了後の1-クロロナフタレン溶液は、750~850nmに光の吸収を有していた。
塩化スルフリル(富士フィルム和光純薬株式会社、製品コード:190-04815)270部、無水塩化アルミニウム(関東 化学株式会社、製品コード:01156-00)315部、塩化ナトリウム(東京化成株式会社、製品コード:S0572)43部、臭素(富士フィルム和光純薬株式会社、製品コード:026-02405)116部を混合し、得られた混合物に上記で製造した亜鉛フタロシアニン84部を加えた。これに臭素465部を滴下して加え、22時間かけて80℃まで昇温した。その後、3時間かけて130℃まで昇温し、反応混合物を水に取り出し、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を析出させた。この水性スラリーを濾過し、60℃の湯洗浄を行った後、水に再解膠した。得られたスラリーを再度濾過し、60℃の湯洗浄を行った後、90℃で乾燥させ、173部のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を得た。さらにこれを顔料化してポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得た。このポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を、質量分析(日本電子株式会社、JMS-S3000)した結果は表1のようになった。表1に示すように、上記製造方法により、理想組成に近接した組成のフタロシアニン顔料が得られることが分かる。なお表1では比較例として、機械学習及びグリッドサーチのみで選択した、輝度と膜厚が最良である組成条件を参考に挙げている。
【0053】
【0054】
表1において、16Br、15Br1Cl、15Br1H、14Br2Cl、14Br1Cl1H、14Br2Hの値は、マススペクトルの強度比(単位は%)に基づき理想組成からの相対差で表記している。かかる相対差は実験誤差範囲内であることから、実施例は、理想組成とほぼ同様の組成のフタロシアニン顔料であることが分かる。ここで、knn距離の閾値は2.61である。かかる閾値以上である場合、モデル適用範囲外であることを示し、かかる閾値未満である場合はモデル適用範囲内であることを示す。理想組成及び実施例は、knn距離の値が閾値よりも低いため、モデル適用範囲内であることが分かる。なお、理想組成と実施例とのknn距離の差が大きいのはメイン組成以外の影響(顔料化条件、不純物量)があるためと考えられる。また実施例は、理想組成と同様に、実現可能性の関係式も満たしていることがわかる。他方で比較例では、実現可能性を満たさないことが分かる。
【0055】
なお本実施例におけるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の顔料化方法には特に制限はなく、例えば、特許6455748号、特許6744002号、特許 6819823号、特許6819824号、特許6819825号、特許6989050号、特許6870785号、特許6923106号、WO2022/004261に記載の方法を使用して、または組み合わせて、または参考にして行うことができる。
【0056】
以下の表2に、理想組成、実施例、及び市場品の輝度、膜厚、及びコントラストの比較を示す。ここでは、輝度、膜厚、及びコントラストの値を、理想組成のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の輝度、膜厚、及びコントラストを0とし、理想組成からの相対差で示した。ここで市場品はDIC製の顔料であり、製品名はFASTOGEN GREEN A110である。本実施例では、輝度、膜厚、及びコントラストを算出するために、本実施例のフタロシアニン顔料に黄色顔料(ピグメントイエローY138)を混ぜて調色した。調色輝度、調色膜厚の測定法は、例えばWO2018/051876の段落〔0080〕―〔0082〕〔0085〕〔0086〕に記載の方法に基づく。具体的には、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料2.48gを、ビックケミー社製BYK-LPN69191.24g、DIC株式会社製ユニディック ZL-295 1.86g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92gと共に0.3~0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機株式会社製ペイントシェーカーで2時間分散して、着色組成物(1)を得た。着色組成物(1)4.0g、DIC株式会社製 ユニディック ZL-295 0.98g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物(1-A)を得た。また、ピグメントイエロー138(BASFジャパン株式会社、Paliotol Yellow D0960)2.48gを、ビックケミー社製 BYK-LPN6919 1.24g、DIC株式会社製 ユニディック ZL-295 1.86g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92gと共に0.3~0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機株式会社製ペイントシェーカーで2時間分散して、着色組成物(2)を得た。着色組成物(2)4.0g、DIC株式会社製 ユニディック ZL-295 0.98g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための調色用組成物(2-A)を得た。調色用組成物(2-A)と評価用組成物(1-A)を色度(x,y)=(0.286,0.575)となるように混合、製膜、乾燥することにより評価用ガラス基板(1-B)を得た。この評価用ガラス基板(1-B)の輝度を、株式会社日立ハイテクサイエンス製分光光度計U3900で測定した。またこの評価用ガラス基板(1-B)の膜厚を、株式会社日立ハイテクサイエンス製走査型白色干渉顕微鏡VS1330で測定した。さらにこの評価用ガラス基板(1-B)のコントラストを壺坂電機株式会社製コントラストテスターCT-1で測定した。
【0057】
【0058】
表2に示す通り、輝度に関し、理想組成は実施例より僅かに優れるが概ね同等といえる。ここで輝度における0.05-0.10程度の差は実験誤差といえる。また理想組成及び実施例は、いずれも市場品よりも輝度の点で優れている。また膜厚に関し、僅かに市場品が優れるが3種とも概ね同等といえる。なお膜厚は薄い方が優れる。また膜厚における0.1程度の差は実験誤差といえる。コントラストに関し、3種ともほぼ同等といえる。なおコントラストにおける500程度の差は実験誤差といえる。かかる結果から、実施例に係るポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、理想組成とほぼ同等の輝度、膜厚、及びコントラストを有していることがわかる。また実施例に係るポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、市場品よりも優れていることがわかる。換言すると、本実施形態にかかるカラーフィルタ用フタロシアニン顔料の組成及び製造条件の探索方法により探索された最適な組成及び製造条件を用いることで、最適な物性を示すカラーフィルタ用フタロシアニン顔料を実際に製造することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、フタロシアニンクルードを顔料化し分散剤を加えて分散しガラス基板上に塗布乾燥されるカラーフィルタを対象としたが、本技術は他の任意の混合組成材料のカラーフィルタ材料にも適用可能である。
【0060】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
13 入力部
14 出力部
100、200、300、400 集合