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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147542
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20241008BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20241008BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20241008BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241008BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241008BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61F13/53 300
C08F8/12
C08J9/28 CEY
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
A61L15/60 200
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094413
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2021526994の分割
【原出願日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019121033
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 響
(72)【発明者】
【氏名】岩井 若菜
(72)【発明者】
【氏名】中下 将志
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】体液を吸収しやすい吸収体及び吸収性物品を提供する。
【解決手段】体液を吸収するための吸収体であって、連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を有し、前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を吸収するための吸収体であって、
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を有し、
前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする吸収体。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収体であって、
前記高分子吸収剤は、モノリス状の吸収剤であることを特徴とする吸収体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収体であって、
単位重さ当たりの前記高分子吸収剤が、濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する第1吸収重量と、
前記単位重さ当たりの前記高分子吸収剤が、濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を吸収する第2吸収重量について、
前記第1吸収重量が前記第2吸収重量の0.5~1.9倍であることを特徴とする吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体であって、
濃度0.9wt%のNaCl水溶液を前記第1吸収重量だけ吸収した第1高分子吸収剤と、濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を前記第2吸収重量だけ吸収した第2高分子吸収剤について、
それぞれ所定時間だけ遠心分離機を用いて、150Gで850rpmの条件下で90秒間脱水した後の、前記第1高分子吸収剤が吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重さは、第2高分子吸収剤が吸収した濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重さの0.5~1.6倍であることを特徴とする吸収体。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収体であって、
前記脱水をした後の、前記第1高分子吸収剤に吸収された濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重さを第1保水重量とし、
前記脱水をした後の、前記第2高分子吸収剤に吸収された濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重さを第2保水重量とし、
前記第1高分子吸収剤の、前記第1吸収重量と前記第1保水重量との差を、前記第1吸収重量で除した値が、50~80%であり、
前記第2高分子吸収剤の、前記第2吸収重量と前記第2保水重量との差を、前記第2吸収重量で除した値が、40~85%であることを特徴とする吸収体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の吸収体であって、
ボルテックス法による、2.0gの前記高分子吸収剤が50gの濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する時間が1.0~10.0秒であることを特徴とする吸収体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収体であって、
前記高分子吸収剤が、濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収する吸収重量は、前記高分子吸収剤の重さの13倍以上であることを特徴とする吸収体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収体であって、
1.0gの前記高分子吸収剤の下端部を、濃度0.9wt%のNaCl水溶液の水面に接触させた状態で1分経過後に、前記高分子吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が、15ml以上であることを特徴とする吸収体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収体であって、
600gwの荷重を加えた状態の2.0gの前記高分子吸収剤の下端部を、濃度0.9wt%のNaCl水溶液の水面に接触させた状態で、
2分経過後に、前記高分子吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が、1.0ml以上であり、
15分経過後に、前記高分子吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が、5.0ml以上であることを特徴とする吸収体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収体であって、
前記高分子吸収剤の単位体積当たりの前記空孔の空隙の体積が85%以上であることを特徴とする吸収体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収体であって、
前記高分子吸収剤は、0.1~30.0%の架橋重合残基を含有することを特徴とする吸収体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の吸収体であって、
前記連続空孔の平均直径が、1~1000μmであることを特徴とする吸収体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の吸収体であって、
前記吸収体は、前記高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤より高い保水倍率を備える高分子化合物とを有することを特徴とする吸収体。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の吸収体であって、
前記高分子吸収剤の単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量が、4.0mg当量/g以上であることを特徴とする吸収体。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の吸収体を有することを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い吸収量を有する高吸収性ポリマー(所謂「SAP」)を用いた使い捨ておむつや生理用品等の吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、吸収量が優れた吸収性樹脂粒子(高吸収性ポリマー)5と、吸収速度が優れたパルプ繊維等の親水性繊維13とを組み合わせた吸収体15を用いた吸収性物品30が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013-018571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品30は、流通や保管、携帯性等の観点からその厚みを薄くすることが望まれている。しかし、例えば、吸収体15として吸収性樹脂粒子5のみを用いた場合には、吸収速度が劣るために、体液等が勢いよく排泄された場合に、その体液を十分に吸収できない事態を生じていた。一方、吸収性樹脂粒子5と親水性繊維13とを組み合わせると、吸収体15が嵩高になってしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、体液を吸収しやすい吸収体及び吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、体液を吸収するための吸収体であって、連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を有し、前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする吸収体である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高分子吸収剤が体液を吸収すると、連続骨格を伸長させ、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすくなるため、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
図2図2Aは、展開状態且つ伸長状態のおむつ1を肌側面側から見た概略平面図である。図2Bは、図2A中のX-X矢視で示す概略断面図である。
図3図3は、吸収剤aの製造過程について説明する図である。
図4図4は、吸収剤aの拡大倍率50倍のSEM写真である。
図5図5は、吸収剤aの拡大倍率100倍のSEM写真である。
図6図6は、吸収剤aの拡大倍率500倍のSEM写真である。
図7図7は、吸収剤aの拡大倍率1000倍のSEM写真である。
図8図8は、吸収剤aの拡大倍率1500倍のSEM写真である。
図9図9は、吸収剤aの各測定結果を示す図である。
図10図10は、吸収剤Aの吸収速度及び吸収量試験結果を示すグラフである。
図11図11は、比較例の高吸収性ポリマーの吸収速度及び吸収量試験結果を示すグラフである。
図12図12Aは、吸収剤Aの破断面のSEM写真である。図12Bは、図12Aと同一部分のNa分布のマッピング図である。
図13図13は、吸収剤aと吸収剤bについて、吸収対象液が純水のときの吸収量と時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
体液を吸収するための吸収体であって、連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を有し、前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする吸収体である。
【0010】
このような吸収体によれば、高分子吸収剤が体液を吸収すると、連続骨格を伸長させ、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすくなるため、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0011】
かかる吸収体であって、前記高分子吸収剤は、モノリス状の吸収剤であることが望ましい。
【0012】
このような吸収体によれば、モノリス状の吸収剤が体液を吸収すると、連続骨格の伸長に伴って広がった貫通した孔に体液を取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0013】
かかる吸収体であって、単位重さ当たりの前記高分子吸収剤が、濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する第1吸収重量と、前記単位重さ当たりの前記高分子吸収剤が、濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を吸収する第2吸収重量について、前記第1吸収重量が前記第2吸収重量の0.5~1.9倍 であることが望ましい。
【0014】
このような吸収体によれば、体液の成分によって吸収体の吸収重量が変化してしまう恐れを軽減させることができる。
【0015】
かかる吸収体であって、濃度0.9wt%のNaCl水溶液を前記第1吸収重量だけ吸収した第1高分子吸収剤と、濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を前記第2吸収重量だけ吸収した第2高分子吸収剤について、それぞれ所定時間だけ遠心分離機を用いて、150Gで850rpmの条件下で90秒間脱水した後の、前記第1高分子吸収剤が吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重さは、第2高分子吸収剤が吸収した濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重さの0.5~1.6倍であることが望ましい。
【0016】
このような吸収体によれば、体液の成分によって吸収体の保水重量が変化してしまう恐れを軽減させることができる。
【0017】
かかる吸収体であって、前記脱水をした後の、前記第1高分子吸収剤に吸収された濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重さを第1保水重量とし、前記脱水をした後の、前記第2高分子吸収剤に吸収された濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重さを第2保水重量とし、前記第1高分子吸収剤の、前記第1吸収重量と前記第1保水重量との差を、前記第1吸収重量で除した値が、50~80%であり、前記第2高分子吸収剤の、前記第2吸収重量と前記第2保水重量との差を、前記第2吸収重量で除した値が、40~85%であることが望ましい。
【0018】
このような吸収体によれば、高分子吸収剤は、一旦吸収した体液を他の物質に移動させやすいため、吸収と離水を繰り返し行うことが可能であり、体液を高分子吸収剤の外に移動させた後は、使用者に濡れ感を感じさせにくくさせることができる。
【0019】
かかる吸収体であって、ボルテックス法による、2.0gの前記高分子吸収剤が50gの濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する時間が1.0~10.0秒であることが望ましい。
【0020】
このような吸収体によれば、高分子吸収剤は短時間で液体を吸収することができるため、体液をより速く吸収することができる。
【0021】
かかる吸収体であって、前記高分子吸収剤が、濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収する吸収重量は、前記高分子吸収剤の重さの13倍以上であることが望ましい。
【0022】
このような吸収体によれば、2価のイオンの含有量が多い体液であっても、吸収体が体液を吸収しやすい。
【0023】
かかる吸収体であって、1.0gの前記高分子吸収剤の下端部を、濃度0.9wt%のNaCl水溶液の水面に接触させた状態で1分経過後に、前記高分子吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が、15ml以上であることが望ましい。
【0024】
このような吸収体によれば、高分子吸収剤は、重力に逆らう方向にも液体を素早く多くの液体を吸収することができるため、吸収体は様々な角度から体液を吸収しやすくなる。
【0025】
かかる吸収体であって、600gwの荷重を加えた状態の2.0gの前記高分子吸収剤の下端部を、濃度0.9wt%のNaCl水溶液の水面に接触させた状態で、2分経過後に、前記高分子吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が、1.0ml以上であり、15分経過後に、前記高分子吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が、5.0ml以上であることが望ましい。
【0026】
このような吸収体によれば、荷重がかけられた高分子吸収剤であっても、重力に逆らう方向にも液体を吸収することができるため、吸収体は様々な角度から体液を吸収しやすくなる。
【0027】
かかる吸収体であって、前記高分子吸収剤の単位体積当たりの前記空孔の空隙の体積が85%以上であることが望ましい。
【0028】
このような吸収体によれば、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0029】
かかる吸収体であって、前記高分子吸収剤は、0.1~30.0%の架橋重合残基を含有することが望ましい。
【0030】
このような吸収体によれば、体液を吸収すると、連続骨格を伸長させ、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすい高分子吸収剤とすることができる。
【0031】
かかる吸収体であって、前記連続空孔の平均直径が、1~1000μmであることが望ましい。
【0032】
このような吸収体によれば、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0033】
かかる吸収体であって、前記吸収体は、前記高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤より高い保水倍率を備える高分子化合物とを有することが望ましい。
【0034】
このような吸収体によれば、まず毛細管現象によって体液を吸収しやすい高分子吸収剤が体液を吸収しつつ、高分子化合物が体液を保水することができるため、吸収体として、体液の素早い吸収と、体液を保水した状態を保つことができる。
【0035】
かかる吸収体であって、前記高分子吸収剤の単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量が、4.0mg当量/g以上であることが望ましい。
【0036】
このような吸収体によれば、単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量が、4.0mg当量/gより少ない場合よりも高分子吸収剤が体液を吸収しやすいため、連続骨格を伸長させやすくなり、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすくなり、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなることで、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0037】
上記のいずれかの吸収体を有する吸収性物品であることが望ましい。
【0038】
このような吸収性物品によれば、吸収体の高分子吸収剤が体液を吸収すると、連続骨格を伸長させ、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすくなるため、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、体液を吸収しやすい吸収性物品とすることができる。
【0039】
===実施形態===
本実施形態にかかる吸収体を用いた吸収性物品の一例として、所謂パンツ型使い捨ておむつを例に挙げて説明する。なお、吸収体を用いた吸収性物品としては、パンツ型使い捨ておむつに限らず、テープ型使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収パッド、ペット用の使い捨ておむつやペット用の吸収パッド等の吸収性物品の吸収体として用いることができる。使い捨ておむつ及び吸収パッド等は、乳幼児用としても大人用としても利用可能である。なお、体液とは、人間だけでなく動物も含めた生物から排出される液体をいう。例えば、汗、尿、便、経血、おりもの、母乳、血液、滲出液等を挙げることができる。
【0040】
===パンツ型使い捨ておむつ1の基本構成===
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。図2Aは、展開状態且つ伸長状態のおむつ1を肌側面側から見た概略平面図である。図2Bは、図2A中のX-X矢視で示す概略断面図である。「展開状態」とは、おむつ1の両側部の、腹側部材30の側部30aと背側部材40の側部40aとの接合をそれぞれ分離し、開いておむつ1全体を平面的に展開した状態である。「伸長状態」とは、おむつ1の皺が視認できなくなる程度まで、おむつ1が備える弾性部材を伸長させた状態を示す。具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する腹側部材30等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態を示す。図2A及び図2B中のC-C線は左右方向における中心線である。図2Bでは、便宜上、接着剤を省略して示している。
【0041】
図1に示すように、パンツ型のおむつ1は上下方向と左右方向と前後方向とを有し、おむつ1には胴回り開口部BH及び一対の脚回り開口部LHが形成されている。図2Aの展開かつ伸長状態のおむつ1の上下方向を「長手方向」といい、長手方向の一方側を「腹側」、他方側を「背側」ともいう。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。また、おむつ1は図2Bに示すように厚さ方向を有し、厚さ方向において着用者に接触する側を肌側とし、その逆側を非肌側とする。
【0042】
おむつ1は、所謂3ピースタイプであり、吸収性本体10と腹側部材30、背側部材40とを有する。腹側部材30、背側部材40は平面視略長方形状であり、その長手方向が左右方向に沿っている。腹側部材30は、着用者の腹側を覆い、背側部材40は、着用者の背側を覆う。吸収性本体10は平面視略長方形形状である。吸収性本体10の腹側の端部10eaと背側の端部10ebは、それぞれ腹側部材30、背側部材40の肌側面と重ね合されている。
【0043】
図2Aに示すように、展開状態且つ伸長状態のおむつ1は、中心線C-Cに対して左右対称な形状を有している。吸収性本体10の腹側の端部10ea、背側の端部10ebの非肌側面と腹側部材30、背側部材40の肌側面とを接着剤等(不図示)により接合し、腹側部材30と背側部材40とが対向するように吸収性本体10を二つ折りして、腹側部材30の左右方向の両側部30aと背側部材40の左右方向の両側部40aとをサイド溶着部SSで溶着接合することにより、おむつ1はパンツ型となる。
【0044】
腹側部材30及び背側部材40はそれぞれ、柔軟な不織布等からなる肌側シート31、41と非肌側シート32、42と、左右方向に伸縮する複数の糸ゴム35、45を備える。複数の糸ゴム35、45は、上下方向に間隔を空けて並んで配されるとともに、左右方向に伸長した状態で2枚のシート(31と32、41と42)の間に固定されている。したがって、腹側部材30及び背側部材40は左右方向に伸縮可能であり、着用者の胴回りにフィットする。
【0045】
腹側部材30は、肌側から順に肌側シート31、糸ゴム35、非肌側シート32が厚さ方向に重ねられており、ホットメルト等の接着剤等によって互いに接合されている。同様に、背側部材40は、肌側から順に肌側シート41、糸ゴム45、非肌側シート42が厚さ方向に重ねられており、ホットメルト等の接着剤等によって互いに接合されている。
【0046】
肌側シート31、41及び非肌側シート32、42は、それぞれ不織布からなるシートであり、具体的には、スパンボンド不織布である。但し、これに限らず、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等の不織布を用いてもよい。また、本実施形態においては、不織布の構成繊維として熱可塑性樹脂のポリプロピレン(PP)の単独繊維を用いているが、これに限られない。例えば、ポリエチレン(PE)などの他の熱可塑性樹脂の単独繊維を用いても良いし、PE及びPP等の鞘芯構造を有した複合繊維を用いても良い。さらに、肌側シート31、41及び非肌側シート32、42の全てが不織布でなくてもよく、肌側シート31、41又は非肌側シート32、42のいずれか一方については、不織布以外の他の柔らかいシート素材を用いてもよい。
【0047】
吸収性本体10は、トップシート13と、吸収体11と、バックシート15とを備え、それぞれホットメルト等の接着剤によって接着されている。トップシート13は液透過性シートであればよく、親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等を例示できる。バックシート15は液不透過性シートであればよく、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、疎水性のSMS不織布等を例示できる。トップシート13及びバックシート15は吸収体11全体を覆う大きさとする。
【0048】
吸収性本体10は、左右方向の端部に設けられた長手方向に伸縮するレッグギャザーLGと、吸収体11より肌側に設けられた横漏れを防止するための防漏壁部としての立体ギャザーLSGを有する。レッグギャザーLG及び立体ギャザーLSGは、それぞれ長手方向(上下方向)に伸長する弾性部材17、弾性部材18を備えている。
【0049】
吸収体11は、平面視略矩形形状であり、液体を吸収する吸収性コア11cを備える。吸収性コア11cは、高分子吸収剤(吸収剤A)と高吸収性ポリマー(所謂SAP)とをティッシュ等で包んで、略砂時計形状に成形している。高分子吸収剤(吸収剤A)と高吸収性ポリマー(SAP)は、例えば、それぞれ粒状のものを用いることができ、ふるいを用いて、粒子がそれぞれ所定範囲内の粒度を有するものとすることが好ましい。以下の説明では、粒子状の高分子吸収剤(吸収剤A)について説明するが、これに限られない。おむつ1等の吸収性物品に用いる高分子吸収剤(吸収剤A)は、粒子状、微粒子状、ブロック状、シート状、糸状等、使用状態に応じて適宜用いることができる。
【0050】
===高分子吸収剤について===
高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を備える化合物の架橋重合体の加水分解物であり、少なくとも-COONa基を備える高分子化合物である。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいう。高分子吸収剤は、一分子中に少なくとも1個以上の-COONa基を備えるモノリス状有機多孔質体である。さらに、-COOH基を備えていてもよい。多孔質体の骨格中に、-COONa基が略均一に分布されている。「モノリス状」とは、貫通した孔と骨格を有し,網目状の共連続構造をもつ多孔体をいう。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステルと、ジビニルベンゼンとの架橋重合体の加水分解物である高分子吸収剤は、少なくとも-COONa基を有する有機ポリマーによって連続骨格が形成され、骨格間に吸収対象液の吸収場となる連通孔(連続空孔)を有している。また、加水分解処理は、架橋重合体の-COOR基(カルボン酸エステル基)を-COONa基又は-COOH基とするものであることから(図3)、高分子吸収剤が-COOR基を備えていてもよい。連続骨格を形成する有機ポリマー中の-COOH基及び-COONa基の存在は、赤外分光光度法、弱酸性イオン交換基を定量する方法により分析することにより確認することができる。
【0052】
図3は、吸収剤Aの製造過程について説明する図である。図3において、上図は、重合の構成原料を示し、中図は、(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体としてのモノリスAを示し、下図は、中図のモノリスAに加水分解及び乾燥処理をした吸収剤Aを示している。
【0053】
以下、高分子吸収剤の一例としての、(メタ)アクリル酸エステルと、ジビニルベンゼンとの架橋重合体の加水分解物(以下、「吸収剤A」ともいう。)について、説明する。高分子吸収剤としては、吸収剤Aに限られず、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であればよい。以下、「モノリスA」とは、加水分解処理がなされる前の(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体からなる有機多孔質体であり、「モノリス状有機多孔質体」ともいう。「吸収剤A」は、加水分解処理及び乾燥処理がなされた後の(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体(モノリスA)の加水分解物である。なお、以下の説明において、吸収剤Aは乾燥状態のものをいう。
【0054】
吸収剤Aの構造について説明する。吸収剤Aは、連続骨格と連続空孔を有する。連続骨格を形成する有機ポリマーである吸収剤Aは、図3に示すように、重合モノマーである(メタ)アクリル酸エステルと、架橋モノマーであるジビニルベンゼンとを用いて、架橋重合させ、得られた架橋重合体(モノリスA)を加水分解することにより得られる。連続骨格を形成する有機ポリマーは、構成単位として、エチレン基の重合残基(以下、「構成単位X」ともいう。)と、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(以下、「構成単位Y」ともいう。)とを備える。連続骨格を形成する有機ポリマー中のエチレン基の重合残基(構成単位X)は、カルボン酸エステル基の加水分解により生成する-COONa基、又は-COOH基と-COONa基を有する。なお、重合モノマーが(メタ)アクリル酸エステルであることから、エチレン基の重合残基(構成単位X)は、-COONa基、-COOH基、及びエステル基とを有する。具体的な例として、メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤aの製造は、後述する。
【0055】
吸収剤Aにおいて、連続骨格を形成する有機ポリマー中、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(構成単位Y)の割合は、全構成単位に対し、0.1~30モル%、好ましくは0.1~20モル%である。メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤aにおいては、連続骨格を形成する有機ポリマー中、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(構成単位Y)の割合は、全構成単位に対し、約3%であり、0.1~10モル%が好ましく、より好ましくは0.3~8モル%である。連続骨格を形成する有機ポリマー中のジビニルベンゼンの架橋重合残基の割合が、上記範囲未満だと、吸収剤Aの強度が低下し、また、上記範囲を超えると、吸収対象液の吸収量が低下する。
【0056】
吸収剤Aにおいて、連続骨格を形成する有機ポリマー中、構成単位X及び構成単位Yの合計モル数に対する構成単位Yの割合は、好ましくは0.1~30モル%、特に好ましくは0.5~20モル%である。メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤aにおいては、連続骨格を形成する有機ポリマー中、構成単位X及び構成単位Yの合計モル数に対する構成単位Yの割合は、好ましくは0.1~10モル%、特に好ましくは0.3~8モル%である。連続骨格を形成する有機ポリマー中の構成単位X及び構成単位Yの合計モル数に対する構成単位Yの割合が、上記範囲未満だと、吸収剤Aの強度が低下し、上記範囲を超えると、吸収対象液の吸収量が低下する。
【0057】
吸収剤Aにおいて、連続骨格を形成する有機ポリマーは、構成単位X及び構成単位Yのみからなるものであってもよいし、あるいは、構成単位X及び構成単位Yに加えて、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位、すなわち、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外のモノマーの重合残基を有していてもよい。構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位としては、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、(メタ)アクリル酸グリシジル、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のモノマーの重合残基が挙げられる。また、連続骨格を形成する有機ポリマー中、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位の割合は、全構成単位に対し、0~50モル%、好ましくは0~30モル%である。メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤aにおいては、連続骨格を形成する有機ポリマー中、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位の割合は、全構成単位に対し、0~50モル%、好ましくは0~30モル%である。
【0058】
吸収剤Aの連続骨格の厚みは0.1~100μmである。吸収剤Aの連続骨格の厚みが0.1μm未満の場合、多孔質の水を取り込むための空間(空孔)が、吸収時に潰れやすくなり、吸収量が低下してしまう恐れがある。一方、連続骨格の厚みが、100μmより厚くなると、液体の吸収が遅くなる恐れがある。なお、吸収剤Aの連続骨格の細孔構造は、連続気泡構造であるため、連続骨格の厚みの測定は、電子顕微鏡測定用の試験片に現れる骨格断面を厚みの評価箇所とする。骨格は、後述の加水分解後の脱水・乾燥処理で取り除かれる水(水滴)同士の間隔で形成されるため、多角形であることが多い。そのため、骨格の厚みは、多角形断面に外接する円の直径の平均値とする。まれに、多角形の中に小さな穴が開いている場合もあるが、その場合は、小さな穴を囲んでいる多角形の断面の外接円を測定する。
【0059】
吸収剤Aは、また、連続空孔の平均直径は、1~1000μmである。吸収剤Aの連続空孔の平均直径が、1μm未満の場合、多孔質の水を取り込むための空間(空孔)が、吸収時に潰れやすくなり、吸収速度が低下してしまう恐れがある。一方、連続空孔の平均直径が、1000μmより厚くなると、液体の吸収速度が低下する恐れがある。なお、吸収剤Aの連続空孔の平均直径は、水銀圧入法によって測定することができ、水銀圧入法によって得られた細孔分布曲線の最大値である。連続空孔の平均直径の測定用サンプルについては、吸収剤Aのイオン形によらず減圧乾燥器によって50℃、18時間以上乾燥させたものをサンプルとして用いる。最終到達圧力を0TORRとする。
【0060】
吸収剤Aは、気泡状のマクロポア同士が重なっている構造を有し(図4図8参照)、この重なる部分は、平均直径1~1000μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは20~100μmの共通の開口(メソポア)となる連続気泡構造体(連続マクロポア構造体)である連続気泡構造を有する。その大部分がオープンポア構造のものである。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1~12個、多くのものは3~10個である。
【0061】
図4は、吸収剤aの拡大倍率50倍のSEM写真である。図5は、吸収剤aの拡大倍率100倍のSEM写真である。図6は、吸収剤aの拡大倍率500倍のSEM写真である。図7は、吸収剤aの拡大倍率1000倍のSEM写真である。図8は、吸収剤aの拡大倍率1500倍のSEM写真である。吸収剤aは、メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとする吸収剤Aの一例であり、図4図8の吸収剤aは、それぞれ2mm角の立方体である。
【0062】
図4図8には、吸収剤Aの具体例である吸収剤aの形態例の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示すが、図4図8に示す吸収剤aは、多数の気泡状のマクロポアを有しており、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口(メソポア)となる連続気泡構造体となっている。その大部分がオープンポア構造である。メソポアの乾燥状態での平均直径が、上記範囲未満であると、吸収対象液の吸収速度が遅くなり過ぎ、また、上記範囲を超えると、吸収剤a(吸収剤A)が脆くなる。吸収剤Aがこのような連続気泡構造となることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、特開平8-252579号公報等に記載されるような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。
【0063】
吸収剤Aの細孔(空孔)の全細孔容積は、1~50ml/gが好ましく、好ましくは2~30ml/gである。吸収剤Aの全細孔容積が、0.5ml/g未満の場合、多孔質の水を取り込むための空間(空孔)が、吸収時に潰れやすくなり、吸収量及び吸収速度が低下してしまう恐れがある。また、50ml/gを超えると、吸収剤Aの強度が低下する。なお、全細孔容積は、水銀圧入法で測定することができる。全細孔容積の測定用サンプルは、吸収剤Aのイオン形によらず、減圧乾燥器で50℃の温度のもと、18時間以上乾燥させた吸収剤Aを用いる。最終到達圧力を0TORRとする。
【0064】
以下、吸収剤Aと体液等の液体(以下、「体液」ともいう。)とが接触した場合の様子について説明するが、吸収剤Aを備える吸収体11と体液とが接触した場合も同様である。また、吸収された体液の重量は、体液量に略比例することから、以下において、体液重量を「体液量」ともいう。
【0065】
まず、体液が吸収剤Aと接触すると、毛細管現象によって、吸収剤Aの細孔(空孔)に吸収される。図4図8に示すように、吸収剤Aが備える連続空孔は、複数の細孔(空孔)が互いに連通している空孔であり、外観からも空孔が多数設けられていることを視認することができる。毛細管現象によって、一定量の体液がこの多数の空孔に体液が入り込み、吸収剤Aが体液を吸収する。吸収剤Aに吸収された一定量の体液のうち、一部は、浸透圧によって連続骨格に吸収されて、連続骨格が伸長する。吸収剤Aに吸収された一定量の体液のうち、連続骨格に吸収されていない体液は、空孔内に留められた状態で吸収されている。
【0066】
吸収剤Aは、液体を吸収すると、連続骨格が伸長する性質を有する。この連続骨格の伸長は、ほぼ全方位に亘って伸長する。連続骨格の伸長によって、吸収剤Aの外形が大きくなるのに伴い、各空孔の大きさも大きくなる。空孔の大きさが大きくなると、空孔内の容積が大きくなり、空孔内に留めることができる体液の量が増える。つまり、一定量の体液を吸収して大きくなった吸収剤Aは、毛細管現象によって、さらに所定量の体液を吸収することができる。また、毛細管現象によって体液を吸収するため、吸収剤Aは、体液の吸収を素早く行うことができる。なお、吸収剤Aが吸収した体液について、連続骨格が吸収する体液より空孔内に留められた体液の方が多い。
【0067】
このように、吸収剤Aの体液の吸収の大部分は、毛細管現象によって空孔内に体液を留めることによって行われることから、空孔の体積(全細孔容積)の割合である空隙率(吸収剤Aの体積に対する空孔の空隙の体積)が大きいほど、より多くの体液を吸収できる。この空隙率が、85%以上であることが好ましい。
【0068】
吸収剤aの空隙率を求める。水銀圧入法によって、得られた吸収剤aの比表面積は400m/g、細孔容積は15.5ml/gである。この細孔容積15.5mlは、1gの吸収剤Aの中の細孔の容積である。仮に、吸収剤Aの比重を1g/mlとすると、1gの吸収剤Aの中で占める体積は、それぞれ細孔容積が15.5ml、吸収剤Aが1mlとなる。1gの吸収剤Aの全容積(体積)は、15.5+1[ml]となり、そのうちの細孔容積の比率が空隙率となる。この結果、空隙率は、15.5/(15.5+1)×100≒94%となる。
【0069】
この吸収剤A(吸収剤a)は、体液の組成による吸収量の変化が少ない。単位重さ当たりの吸収剤Aが、濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する重量(第1吸収重量)は、濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を吸収する重量(第2吸収重量)の0.5~1.9倍であることが好ましい。濃度0.9wt%のNaCl水溶液とは、体液の組成に近いとされる所謂生理食塩水と同程度の食塩水である。第1吸収重量が、第2吸収重量の0.5~1.9倍である吸収剤Aを備えた吸収体11は、体液の吸収量について、体液中の電解質イオン濃度に左右されにくいため、吸収体11は体液をより確実に吸収することができる。
【0070】
汗、尿、便、経血、おりもの、母乳、血液、滲出液等の生物から排出される液体である体液は、その体液の種類だけでなく、個体差、健康状態等によってその組成が変化する。例えば、生物の尿成分中の電解質濃度は、Na+、K+、Ca2+等の各イオン濃度が人間と動物とで異なり、その健康状態等でも異なる。吸収性物品に広く用いられている高吸収性ポリマー(所謂SAP)は、浸透圧の原理によって体液を吸収するため、電解質イオンの数が多くなるにつれて(電解質濃度が高くなるにつれて)、体液を吸収できる重量が減少してしまう恐れがあった。一方、吸収剤A(吸収剤a)は、浸透圧の原理によって吸収する体液の吸収量より、毛細管現象によって空孔に体液を取り込むことによる吸収量が多いため、体液の組成、特に電解質濃度による吸収量の減少が起こりにくい。
【0071】
図9は、吸収剤aの各測定結果を示す図である。図9における「吸水重量」、「吸水速度」は、「吸収重量」、「吸収速度」と同義である。図9に示すように500~850μmの粒子の大きさの吸収剤aと、250μm以下の粒子の大きさの吸収剤aについて複数回の測定を行っている。また、比較例として、高吸収性ポリマーであるSAP(住友精化株式会社製 アクアキープSA60S)の結果を併せて示している。
【0072】
各濃度のNaCl水溶液を吸収する吸収重量の測定は以下の方法で行うことができる。
まず、それぞれ1000ml入れた容器を各濃度のNaCl水溶液毎に用意する。
次に、200mm×200mmにカットされたナイロンネット(255メッシュナイロンネット 株式会社NBCメッシュテック製 N-No.255HD)を2枚重ね合わせ、1.0gの吸収剤Aをナイロンネット同士の間に挟んだ状態で、四方にヒートシールを行い、試料入りの袋とする。
続いて、試料入りの袋を各濃度のNaCl水溶液が入れられた容器の底面に触れるように浸漬させ、袋の上部の一辺を洗濯はさみで容器の端に固定した状態で1時間放置する。
その後、NaCl水溶液から袋を引き上げて、袋の上端より5mm、及び両端より50mmの部分を洗濯はさみで挟んだ状態で15分間水切りを行う。
最後に、吸収剤Aが入った状態の袋の重量を測定し、測定結果から袋単体の重量及び1.0g(NaCl水溶液を吸収する前の吸収剤Aの重量)を減じることで、吸収剤Aが吸収したNaCl水溶液の重量を得ることができる。
【0073】
図9に示すように、1.0gの吸収剤a(第1高分子吸収剤、以下、「第1吸収剤」ともいう。)が吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重量(第1吸収重量)は、37.71~62.09gであり、1.0gの吸収剤a(第2高分子吸収剤、以下、「第2吸収剤」ともいう。)が吸収した濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重量(第2吸収重量)は、34.40~68.61gである。この測定結果より、第1吸収重量の第2吸収重量に対する割合の下限値は、(第1吸収重量の最小値/第2吸収重量の最大値)であり、上限値は、(第1吸収重量の最大値/第2吸収重量の最小値)である。したがって、第1吸収重量の第2吸収重量に対する割合は、(37.71/68.61)~(62.09/34.40)≒0.55~1.80となり、第1吸収重量は、第2吸収重量の0.55~1.80倍となる。なお、当該数値の算出は、有効数字を小数点以下2桁として行っている。
【0074】
同様に、SAPについては、1.0gのSAP(第1SAP)が吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重量(第1SAP吸収重量)が、60.08~63.69gであり、1.0gのSAP(第2SAP)が吸収した濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重量(第2SAP吸収重量)が45.74~311.12gである。第1SAP吸収重量の第2SAP吸収重量に対する割合は、(第1SAP吸収量の最小値/第2SAP吸収重量の最大値)~(第1SAP吸収重量の最大値/第2SAP吸収重量の最小値)=(60.08/311.12)~(63.69/45.74)≒0.19~1.39となっている。SAPは、NaCl水溶液の濃度が高くなるほど、NaCl水溶液の吸収量が低下する。
【0075】
この結果より、吸収剤A(吸収剤a)は、SAPと同等又はSAPより多くの吸収を可能としつつ、吸収剤AのNaCl水溶液の吸収量について、濃度による変化が少ないことがわかる。したがって、吸収剤Aを用いた吸収体11は、体液の吸収について、SAPと同程度の体液を確保しつつ、SAPのように電解質イオンの濃度によって吸収力が低下してしまう恐れを軽減させることができる。
【0076】
また、吸収剤Aは、吸収剤A内に保持される水溶液の量(保水量)の変化が、電解質イオン濃度によって変動されにくい。電解質イオン濃度による水溶液の保水量の変化が小さいことから、体液の組成によって吸収剤A内に留められる体液の量が変わってしまう恐れを軽減させることができる。
【0077】
上述のNaCl水溶液の重量の測定と同じ方法で、濃度0.9wt%のNaCl水溶液を第1吸収量だけ吸収した第1吸収剤(第1高分子吸収剤)と、濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を第2吸収量だけ吸収した第2吸収剤(第2高分子吸収剤)とを準備する。第1吸収剤と第2吸収剤を、それぞれ所定時間だけ遠心分離機を用いて、150Gで850rpmの条件下で90秒間脱水する。そして、第1吸収剤及び第2吸収剤にそれぞれ吸収されているNaCl水溶液の重量を測定すると、第1吸収剤が吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重さ(第1保水重量)は、第2吸収剤が吸収した濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液(第2保水重量)の重さの0.5~1.6倍であることが好ましい。第1保水重量が第2保水重量の0.5~1.6倍である吸収剤Aは、一旦吸収した体液を、吸収剤Aの外側に移動させて、体液を他の物質に吸収させやすくなる。
【0078】
図9に示すように、1.0gの吸収剤aが保水した状態の濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重量(第1保水重量)は、13.59~17.12gであり、1.0gの吸収剤aが保水した状態の濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重量(第2保水重量)は、11.46~19.47gである。この結果から、NaCl水溶液の濃度差による吸収剤aが保水するNaCl水溶液の重量の差が小さいことがわかる。
【0079】
吸収剤aについて、第1保水重量の第2保水重量に対する割合の下限値は、(第1保水重量の最小値/第2保水重量の最大値)であり、上限値は、(第1保水重量の最大値/第2保水重量の最小値)である。したがって、第1保水重量の第2保水重量に対する割合は、(13.59/19.47)~(17.12/11.46)≒0.70~1.49倍となる。なお、当該数値の算出は、有効数字を小数点以下2桁として行っている。
【0080】
また、各濃度におけるNaCl水溶液の保水重量は、全体としてSAPより吸収剤aの方が少ないことがわかる。SAPについては、1.0gのSAP(第1SAP)が保水した状態の濃度0.9wt%のNaCl水溶液の重量(第1SAP保水重量)は、39.98~40.41gであり、1.0gのSAP(第2SAP)が保水した状態の濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の重量(第2SAP保水重量)は、29.31~286.11gである。したがって、第1SAP保水量の第2SAP保水量に対する割合の下限値は、(第1SAP保水量の最小値/第2SAP保水量の最大値)であり、上限値は、(第1SAP保水量の最大値/第2SAP保水量の最小値)である。したがって、第1SAP保水量の第2SAP保水量に対する割合は、(39.98/286.11)~(40.41/29.31)≒0.14~1.38倍となる。
【0081】
上述の吸収重量と保水重量との差は、吸収剤A又はSAPがそれぞれ一旦吸収した液体を外部に放出(離水)した液体の重さ(以下、「離水重量」ともいう。)である。また、離水重量を吸収重量で除した値は、一旦吸収した液体の量に対する離水重量の割合であり、離水倍率ともいう。吸収剤Aは、第1吸収剤について、第1吸収重量と第1保水重量との差を、第1吸収重量で除した値が、50~80%であることが好ましい。同様に、第2吸収剤について、第2吸収重量と第2保水重量との差を、第2吸収重量で除した値が、40~85%であることが好ましい。上記数値の離水率となる吸収剤Aは、一旦吸収した体液を他の物質に移動させやすい。つまり、吸収と離水を繰り返し行いやすい。一旦吸収した体液を、吸収剤Aの外側に移動させることで、吸収剤Aを備える吸収体11が着用者へ与える濡れ感を減少させやすくなる。
【0082】
吸収剤aについて、第1吸収剤による濃度0.9wt%のNaCl水溶液の離水重量を第1吸収重量で除した値である第1離水率の下限値は、{(第1吸収重量の最小値-第1保水重量の最大値)/第1吸収重量の最小値}×100であり、第1離水率の上限値は、{(第1吸収重量の最大値-第1保水重量の最小値)/第1吸収重量の最大値}×100である。第2吸収剤による濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液の離水重量を第2吸収重量で除した値である第2離水率の下限値は、{(第2吸収重量の最小値-第2保水重量の最大値)/第2吸収重量の最小値}×100であり、第2離水率の上限値は、{(第2吸収重量の最小値-第2保水重量の最大値)/第2吸収重量の最小値}×100である。図9に示すように、吸収剤aの第1離水率は、{(37.71-17.12)/37.71}×100~{(62.09-13.59)/62.09}×100≒54.60~78.11となる。吸収剤aの第2離水率は、{(34.40-19.47)/34.40}×100~{(68.61-11.46)/68.61}×100≒43.40~83.30となる。なお、当該数値の算出は、有効数字を小数点以下2桁として行っている。
【0083】
なお、図9に示すように、吸収剤aとSAPの保水重量を比較すると、それぞれ吸収重量の値が異なっているため、単純比較は難しいが、SAPの保水重量より吸収剤aの保水重量の方が全体的に少ない。つまり、吸収剤aは、SAPより保水性が低い。
【0084】
さらに、2.0gの吸収剤Aが、ボルテックス法によって50gの濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する時間が1.0~10.0秒であることが好ましい。この時間内にNaCl水溶液の吸収が可能な吸収剤Aは、短時間で液体を吸収することができるため、吸収剤Aを備えた吸収体11は、素早く体液を吸収することができる。
【0085】
ボルテックス法による吸収時間の測定は以下のように行う。
容器に30×8mmの大きさの回転子を入れ、液温25度±1度に調整した50gの濃度0.9wt%のNaCl水溶液を入れる。
マグネックスターラー(MITAMURA RIKEN KOGYO INC.MAGMIX STIRRER(AC100W)で回転子を600±30rpmの回転数に調整してNaCl水溶液を攪拌する。
攪拌中の容器に2.00gの吸収剤Aを投入し、投入と同時に時間の計測を開始する。
そして、溶液内の溶液表面がフラットになったときの時間を測定する。溶液表面がフラットになったときとは、激しく回転している液体の渦の傾斜が平面に近づく点とし、渦の液表面に反射する明かりの消失を観察することで判断する。
【0086】
図9に示すように、2.0gの吸収剤aが、50gの濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収する時間は、1.69~1.93秒である。なお、2.0gの吸収剤aについて、より濃度の低い濃度0.3wt%のNaCl水溶液を吸収する時間が、1.56~2.01秒であり、より濃度の高い濃度2.0wt%のNaCl水溶液を吸収する時間が、1.36~2.29秒であることから、2.0gの吸収剤aが50gの濃度0~2.0wt%のNaCl水溶液を吸収する時間は、1.34~2.29秒であり、NaCl水溶液の濃度による吸収する時間の変化が小さいことがわかる。
【0087】
上述のとおり、吸収剤Aが高い離水率を有し、吸収速度が速いことから、おむつ1等の吸収性物品の吸収体11においては、吸収剤Aとともに、吸収剤Aより高い保水倍率を備える高分子化合物を備えることがより好ましい。吸収剤Aより高い保水倍率を備える高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等の所謂SAPを挙げることができる。SAPは、保水性が高く、離水性も低いことから、一旦吸収した体液を保持し続けることができる。しかし、吸収速度が遅く(図9参照)、体液を吸収するのに時間がかかってしまう。この点、吸収体11が吸収剤AとSAPとを備えることで、吸収体11に体液が接触すると、まず、吸収速度の速い吸収剤Aが吸収する。そして、離水率が高い吸収剤Aは、体液を吸収体11内に放出する。放出された体液をSAPが時間をかけて吸収することで、体液は、SAP内に留められる。これによって、吸収体11としては、一旦吸収剤Aが吸収した体液をSAPに移動させて、吸収剤Aに留められた体液が少ない状態とすることで、吸収体11の表面に体液が残ってしまう恐れを軽減させて、着用者が感じる濡れ感を減少させる。また、吸収体11としては、内部のSAPに排泄物を留めた状態としやすくなるため、おむつ1等の吸収性物品から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0088】
また、1.0gの吸収剤Aの下端部を、濃度0.9wt%のNaCl水溶液の水面に接触させた状態で1分経過後の、吸収剤Aによる濃度0.9wt%のNaCl水溶液の吸収量が15ml以上であることが好ましい。吸収剤Aの下端部をNaCl水溶液の水面に接触させた状態とは、吸収剤Aが重力に逆らう方向にNaCl水溶液を吸収する状態である。このような重力に逆らう方向でも、1分間という時間で15ml以上の濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収することができる吸収剤Aによって、素早く、より多くのNaCl水溶液の吸収が可能となり、吸収剤Aを備える吸収体11は、様々な角度から体液を吸収することが可能となる。
【0089】
図9に示すように、吸収剤aが1分後に吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の量は、20.2~26.5mlである。このように、吸収剤aは、重力に逆らう方向にも良く吸収することができる。SAPについては、1分後に吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液の量は、14.0~18.0mlである。この結果から、吸収剤Aは、SAPより重力に逆らう方向でも素早く体液の吸収が可能であることがわかる。
【0090】
さらに、600gwの荷重を加えた状態の2.0gの吸収剤Aの下端部を、濃度0.9wt%のNaCl水溶液の水面に接触させた状態で、2分経過後に吸収剤Aが吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液が1.0ml以上であり、15分経過後に吸収剤Aが吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液が5.0ml以上であることがより好ましい。吸収剤Aを吸収体11に用いた場合、一旦排泄物を吸収した吸収体11が、着用者の体重によって、厚さ方向に潰されたり、着用者の両脚によって左右方向に潰されてしまったりする。この点、吸収剤Aに所定の荷重を加えた状態でも、吸収剤Aは、NaCl水溶液の吸収が可能であり、且つ、重力に逆らう方向にもNaCl水溶液の吸収が可能であることから、吸収体11は、吸収剤Aを備えることで、吸収体11(吸収剤A)に荷重を加えられた場合でも、様々な角度から体液を吸収することが可能となる。
【0091】
図9に示すように、吸収剤aについては、2分経過後に2.0gの吸収剤Aが吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液は、2.6~5.6mlであり、15分経過後に吸収剤Aが吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液は、13.2~25.2mlである。SAPについては、2分経過後に2.0gのSAPが吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液は、0.8~1.0mlであり、15分経過後に吸収剤Aが吸収した濃度0.9wt%のNaCl水溶液は、4.0mlである。この結果から、吸収剤Aが加圧された状態で、且つ重力に逆らう方向にも、SAPより優れた吸収性を有することがわかる。
【0092】
また、単位重さ当たりの吸収剤Aが、濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収する吸収重量が、吸収剤Aの重さの13倍以上であることが好ましい。電解質イオンの数がNa+より多いCa2+の水溶液においても、吸収剤Aの重さの13倍以上の溶液を吸収することができることから、吸収剤Aを備えた吸収体11は、体液の組成によらず、体液を吸収しやすくすることができる。
【0093】
図9に、1gの吸収剤aが濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収した重量を示している。なお、CaCl水溶液の吸収重量の測定は、NaCl水溶液の重量の測定と同じ方法で行う。図9に示すように、吸収剤aの濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収する吸収重量の測定結果は、16.29~27.69gであり、1gの吸収剤aが濃度0.5wt%のCaCl水溶液を、吸収剤aの重量の16.29倍以上の量を吸収している。
【0094】
図9に示すように、1gのSAPが、濃度0.5wt%のCaCl水溶液の吸収重量は、6.71~7.43gである。1gの吸収剤aが濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収した重量と、1gのSAPが濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収した重量とを比較すると、明らかに吸収剤aが吸収した重量の方が多い。また、この1gのSAPが濃度0.5wt%のCaCl水溶液を吸収した重量は、1gのSAPが濃度0.9wt%のNaCl水溶液を吸収した重量より少ない。つまり、SAPは、電解質イオンの数が増えるほど、吸収量が低下してしまうところ、吸収剤aは、SAPのように電解質イオンの数による吸収量の低下の程度が低い。そのため、吸収剤a(吸収剤A)を用いることで、体液の組成によって吸収量が低下してしまう恐れを軽減させることができる。
【0095】
吸収剤Aについて下記の吸収速度試験及び吸収量試験を行った。図10は、吸収剤Aの吸収速度及び吸収量試験結果を示すグラフである。図11は、比較例の高吸収性ポリマーの吸収速度及び吸収量試験結果を示すグラフである。
【0096】
図10に示すように、当該吸収速度試験では吸収対象液を純水と0.9%塩化ナトリウム水溶液で試験し、いずれも飽和吸収量の90%の吸収量に到達するのに浸漬時間は5秒以内であった。さらに、吸収剤Aの吸収量試験を、試験水に、0.9%塩化ナトリウム水溶液、4%NaOH水溶液、35%塩酸、29%アンモニア水を用いて行った。その結果、0.9%塩化ナトリウム水溶液の吸収量は67g/g-resin、4%NaOH水溶液の吸収量は78g/g-resin、35%塩酸の吸収量は28g/g-resin、29%アンモニア水の吸収量は105g/g-resinであった。
【0097】
(吸収速度試験方法)
不織布で片端を封じた長さ100mm、内径10mmチューブに乾燥状態の吸収剤Aを入れたものをサンプルチューブとする。この吸収剤Aを入れる前後のチューブ重量を測定しておき、予めチューブ内の吸収剤Aの重量を算出しておく。次に濃度既知の吸収対象液にサンプルチューブの不織布側を浸漬させた状態で所定時間経過後に、溶液からチューブを引き上げる。そして、1分間保持した後にチューブ重量を測定する。この浸漬と測定を重量変化がなくなるまで繰り返す。重量変化がなくなった時点の吸収量を飽和吸収量とする。
【0098】
(吸収量試験方法)
JISの方法に準じて行う。ティーバッグに吸収剤Aを入れたものをサンプルとし、サンプルを吸収対象液に24時間浸漬させる前と浸漬させた後のそれぞれ吸収前後の重量から吸収対象液の吸収量を求める。
【0099】
(比較例)
和光純薬社製の超吸収性ポリマー商品名:高吸収性ポリマー(アクリル酸塩系)を用いて、吸収速度試験と吸収量試験を行う。図11に示すように、当該吸収量試験の結果、吸収速度試験では純水では飽和吸収量に対して90%の吸収量に到達するのに必要な浸漬時間は12分であり、0.9%塩化ナトリウム水溶液では飽和吸収量に対して90%の吸収量に到達するのに必要な浸漬時間は3.5分である。また、0.9%塩化ナトリウム水溶液の吸収量は52g/g-resinであり、4%NaOH水溶液の吸収量は浸漬中に溶解してしまったため測定不能であり、35%塩酸の吸収量は2g/g-resinであり、29%アンモニア水の吸収量は128g/g-resinであった。
【0100】
吸収剤Aは、モノリスイオン交換体としても用いることができ、吸収剤Aを「モノリス状有機多孔質イオン交換体」ともいう。吸収剤Aの単位重量当たりの-COONa基及び-COOH基の総イオン交換容量は、5mg当量/g以上、好ましくは6mg当量/g以上である。モノリスイオン交換体の乾燥状態での-COOH基及び-COONa基の総イオン交換容量が、上記範囲未満では、吸収対象液の吸収量が減り、吸収速度も遅くなる。また、モノリスイオン交換体の乾燥状態での-COOH基及び-COONa基の総イオン交換容量の上限値は、特に制限されないが、例えば、14.0mg当量/g以下、あるいは、13.0mg当量/g以下が挙げられる。メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤aの単位重量当たりの-COONa基及び-COOH基の総イオン交換容量は、4.0mg当量/g以上、好ましくは6mg当量/g以上である。また、吸収剤aのモノリスイオン交換体の乾燥状態での-COOH基及び-COONa基の総イオン交換容量の上限値は、特に制限されないが、例えば、11mg当量/g以下、あるいは、14mg当量/g以下が挙げられる。そして、吸収剤Aの単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量が、4.0mg当量/g以上であることが望ましい。単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量が、4.0mg当量/g以上の吸収剤Aとすることで、単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量が、4.0mg当量/gより少ない場合よりも高分子吸収剤が体液を吸収しやすいため、連続骨格を伸長させやすくなり、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすくなり、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなることで、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0101】
なお、本発明において、-COOH基及び-COONa基の総イオン交換容量とは、本発明のモノリスイオン交換体が、-COOH基及び-COONa基のうち、-COOH基のみを有する場合は、-COOH基のイオン交換容量を指し、また、本発明のモノリスイオン交換体が、-COOH基及び-COONa基のうち、-COONa基のみを有する場合は、-COONa基のイオン交換容量を指し、また、本発明のモノリスイオン交換体が、-COOH基及び-COONa基のうち、-COOH基及び-COONa基の両方を有する場合は、-COOH基及び-COONa基のイオン交換容量の合計を指す。また、モノリスイオン交換体の乾燥状態での重量当たりの-COOH基及び-COONa基の総イオン交換容量は、モノリスイオン交換体のイオン交換基を充分量の酸を用いてすべて-COOH基としたサンプルを用いて中和滴定により-COOH基の量を定量し、この時用いたモノリスイオン交換体を全量回収し、乾燥重量の値を求めることにより測定される。また、単位重量当たりの-COONa基の総イオン交換容量は、モノリスイオン交換体のイオン交換基を全て-COOH基にするために加えた酸の量から求めることができる。
【0102】
モノリスイオン交換体において、導入されているイオン交換基は、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面及び骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAを用いることで簡単に確認される。
【0103】
モノリスイオン交換体の構造例としては、連続気泡構造(特開2002-306976号公報、特開2009-62512号公報)や、共連続構造(特開2009-67982号公報)、粒子凝集型構造(特開2009-7550号公報)、粒子複合型構造(特開2009-108294号公報)等を挙げることができる。
【0104】
吸収剤Aのモノリスカチオン交換体としてのイオン交換容量は、乾燥状態で8mg当量/gであり、カルボキシル基が定量的に導入されていることを確認した。また、水銀圧入法による測定から求めた、吸収剤Aの三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径は49.1μm、乾燥状態での全細孔容積は13.5mL/gであった。SEM観察で得られた連続骨格の厚みは9.5μmであった。
【0105】
図12A及び図12Bは、モノリスA中のカルボキシル基の分布状態を確認するため、EPMAによるナトリウムの分布状態示している。図12Aは、吸収剤Aの破断面のSEM写真である。図12Bは、図12Aと同一部分のNa分布のマッピング図である。図12A及び図12Bによって、骨格断面におけるカルボキシル基の分布状態は、カルボキシル基はモノリスカチオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、カルボキシル基がモノリスイオン交換体中に均一に導入されていることが確認できる。
【0106】
また、吸収剤Aの構造例として、特開2002-306976号公報や特開2009-62512号公報に開示されている連続気泡構造や、特開2009-67982号公報に開示されている共連続構造や、特開2009-7550号公報に開示されている粒子凝集型構造や、特開2009-108294号公報に開示されている粒子複合型構造等として挙げられたモノリスイオン構造体がある。
【0107】
===吸収剤Aの製造方法について===
吸収剤Aは、図3に示すように、架橋重合工程と加水分解工程を経ることで得ることができる。以下、吸収剤Aの製造方法について説明する。
【0108】
まず、架橋重合用の油溶性モノマーと架橋性モノマーと、界面活性剤と、水と、必要に応じて重合開始剤とを混合して、油中水滴型エマルションを得る。油中水滴型エマルションとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルションを言う。
【0109】
吸収剤Aにおいては、図3の上図に示すように、油溶性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルとしてメタクリル酸ブチルを用い、架橋性モノマーとして、ジビニルベンゼンを用い、界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを用い、重合開始剤としてイソブチロニトリルを用いて架橋重合させたモノリスAを形成する。
【0110】
吸収剤Aにおいては、図3の上図に示すように、まず、油溶性モノマーとしてメタクリル酸t-ブチル9.2g、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン0.28g、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0g及び重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させる。
【0111】
次に、メタクリル酸t-ブチル/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得る。
【0112】
その後、このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させる。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリスAを得る。このモノリスAの内部構造をSEMにより観察した。図10Aは、吸収剤Aの破断面のSEM写真である。図10Bは、図10Aと同一部分のNa分布のマッピング図である。モノリスAは、連続気泡構造を有しており、連続骨格の厚みは5.4μmであった。水銀圧入法により測定した平均直径は36.2μm、全細孔容積は15.5mL/gであった。
【0113】
なお、全モノマーに対するジビニルベンゼンの含有量は、0.3~10モル%であることが好ましく、0.3~5モル%であることがより好ましい。また、メタアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンの合計に対するジビニルベンゼンの割合が0.1~10モル%であることが好ましく、0.3~8モル%であることがより好ましい。吸収剤Aにおいては、メタアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンの合計に対するメタアクリル酸ブチルの割合が、97.0モル%、ジビニルベンゼンの割合が3.0モル%である。
【0114】
界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルション粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動する。油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2~70%の範囲とすることが好ましい。
【0115】
また、モノリスAの気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール、ステアリン酸等のカルボン酸、オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを系内に共存させてもよい。
【0116】
油中水滴型エマルションを形成させる際の混合方法としては、特に制限はない。各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法等の混合方法を採用することができる。エマルションを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、目的のエマルション粒径を得るために、通常のミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーや、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置等から適切な装置を選択することができる。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルション粒径を得るために、攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。これらの混合装置のうち、遊星式攪拌装置はW/Oエマルション中の水滴を均一に生成させることができ、その平均径を幅広い範囲で任意に設定することができる。
【0117】
油中水滴型エマルションを重合させる重合条件は、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30~100℃で1~48時間、加熱重合させればよい。重合開始剤として過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0~30℃で1~48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出し、未反応モノマーと残留界面活性剤を除去して図3の中図に示すモノリスAを得る。
【0118】
続いて、モノリスA(架橋重合体)を加水分解して、吸収剤Aを得る。モノリスAを、臭化亜鉛を入れたジクロロエタンに浸漬させて40℃、24h撹拌した後、メタノール、4%塩酸、4%水酸化ナトリウム水溶液、水の順で接触させて、加水分解を行い、乾燥させた後、ブロック状の吸収剤Aを所定の大きさに粉砕して粒子状の吸収剤Aを得る。
【0119】
モノリスAの加水分解の方法については特に制限はなく、種々の方法で行うことができる。例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフランやイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒、酢酸やプロピオン酸などのカルボン酸系溶媒、あるいは水を溶媒とし、水酸化ナトリウムなどの強塩基と接触させる方法や、塩酸などのハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのブレンステッド酸、あるいは臭化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化チタン(IV)、塩化セリウム/ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウムなどのルイス酸と接触させる方法等が挙げられる。
【0120】
吸収剤Aの連続骨格を形成する有機ポリマーの重合原料のうち、(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸のC1~C10のアルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸のC4アルキルエステルが特に好ましい。(メタ)アクリル酸のC4アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸t-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸n-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸iso-ブチルエステルが挙げられる。
【0121】
架橋重合に用いるモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼンのみであってもよいし、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼンに加えて、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外の他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、イソブテン、ブタジエン、イソブレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、架橋重合に用いる全モノマー中、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外のモノマーの割合は、0~80モル%が好ましく、0~50モル%がより好ましい。
【0122】
界面活性剤は、ソルビタンモノオレエートに限られない。架橋重合用モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルションを形成できるものであればよい。例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン基ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン基ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン基ソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤、オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0123】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性でも油溶性でもよく、例えば、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0124】
吸収剤Aの他の例として、吸収剤aのメタクリル酸t-ブチル9.2gに代えて、メタクリル酸t-ブチル6.4g及びメタクリル酸2エチルヘキシル2.8gとした吸収剤bを用いることもできる。油溶性モノマーをメタクリル酸t-ブチル6.4g及びメタクリル酸2エチルヘキシル2.8gとすること以外は、吸収剤aと同様である。乾燥状態の吸収剤bのイオン交換容量は、5.0mg当量/gである。
【0125】
吸収剤bについて、上述の吸収剤aと同様の方法で、吸収対象液を純水として、吸収速度試験を行った。図13は、吸収剤aと吸収剤bについて、吸収対象液が純水のときの吸収量と時間の関係を示すグラフである。図13に示すように、飽和吸収量は18g/g-resinであり、飽和吸収量の90%の吸収量に到達するのに浸漬時間は5秒以内であった。
【0126】
===その他の実施形態===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0127】
上述の実施形態では、吸収体11が吸収剤A(吸収剤a)とSAPとを備えるものとしたが、これに限られない。吸収体11が吸収剤Aのみから構成されるものであってもよい。また、吸収剤Aと一緒に用いる物質は、SAPのみに限らない。例えば、吸収剤Aとパルプ繊維とを備えた吸収体11や、吸収剤AとSAPとパルプ繊維とを備えた吸収体11であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 おむつ(パンツ型使い捨ておむつ、吸収性物品)、10 吸収性本体、10ea 端部、10eb 端部、11 吸収体、11c 吸収性コア、13 トップシート、15 バックシート、30 腹側部材、30a 側部、31 肌側シート、32 非肌側シート、35 糸ゴム、40 背側部材、40a 側部、41 肌側シート、42 非肌側シート、45 糸ゴム、SS 溶着部、LH 脚回り開口部、BH 胴回り開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13