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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147548
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】がんの治療及び診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241008BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20241008BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
C12Q1/06
C07K16/28
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024097141
(22)【出願日】2024-06-17
(62)【分割の表示】P 2022199067の分割
【原出願日】2017-08-07
(31)【優先権主張番号】16183245.6
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17150273.5
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんのための、並びにがんを有する個体において免疫機能を増強するための、治療及び診断方法並びに組成物を提供する。
【解決手段】PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に対して応答するかどうかを決定し、PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に対するがんに罹患している個体の応答性を予測するための方法、並びにがんに罹患している個体のために治療法を選択する方法を提供する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるがんを治療するか又はがんの進行を遅らせるための方法であって、治療有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含み、個体から得られる血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定 されている、方法。
【請求項2】
がんに罹患している個体がPD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答しているかどうかを決定するための方法であって、
個体から得られた試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定することを含み、試料中の1以上のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が、個体がPD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答していることを示す、方法。
【請求項3】
試料が血液試料である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
試料が全血試料又は末梢血単核細胞試料である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
個体が、PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療を受けているか又は受けたことがある、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
がんが、膀胱がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、肺扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃(gastric又はstomach)がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん(liver cancer)、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん(hepatic carcinoma)、肛門がん、陰茎がん、メルケル細胞がん、精巣がん、食道がん、胆道腫瘍、頭頸部がん及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
がんがメラノーマである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
がんが尿路上皮膀胱がんである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
尿路上皮膀胱がんが転移性尿路上皮膀胱がんである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
尿路上皮膀胱がんが局所進行性尿路上皮膀胱がんである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
個体におけるがん細胞がPD-L1を発現する、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
PD-L1発現が免疫組織化学(IHC)アッセイによって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
個体が、局所進行性又は転移性がんに対して以前に2回以下の細胞傷害性治療レジメンを受けたことがある、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
個体が、局所進行性又は転移性がんに対して以前に標的全身治療を受けたことがない、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
治療に対する個体の応答が完全寛解である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
治療に対する個体の応答が部分応答である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
治療に対する個体の応答が、治療中止後の持続応答である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が4である、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が45である、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
PD-L1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
PD-L1軸結合アンタゴニストがPD-L1結合アンタゴニストである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のそのリガンド結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1への結合を阻害する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のB7-1への結合を阻害する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1のPD-1とB7-1の両方への結合を阻害する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
PD-L1結合アンタゴニストが抗体である、請求項21から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
抗体が、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体が、配列番号 19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と;配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
抗体が、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
PD-L1軸結合アンタゴニストがPD-1結合アンタゴニストである、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のそのリガンド結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1への結合を阻害する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L2への結合を阻害する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
PD-1結合アンタゴニストが、PD-1のPD-L1とPD-L2の両方への結合を阻害する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
PD-1結合アンタゴニストが抗体である、請求項30から34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
抗体が、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
PD-1結合アンタゴニストがFc融合タンパク質である、請求項30から34の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
Fc融合タンパク質がAMP-224である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
個体に有効量の第二の治療剤を投与することを更に含む、請求項1から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
第二の治療剤が、細胞傷害剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
細胞傷害剤が化学療法剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
化学療法剤がタキサンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
タキサンが、PD-1軸結合アンタゴニストの前、PD-1軸結合アンタゴニストと同時、又はPD-1軸結合アンタゴニストの後に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
タキサンが、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、又はドセタキセルである、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
個体が、白金系化学療法剤による治療後に進行している、請求項1から44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が、グランザイムBタンパク質を発現するCD4T細胞の数とFOXP3タンパク質を発現するCD4T細胞の数を決定することによって決定される、請求項1から45の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つのタンパク質発現レベルが、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、及びウエスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して決定される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つのタンパク質発現レベルが、フローサイトメトリーを使用して決定される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つの発現レベルがmRNA発現レベルである、請求項1から45の何れか一項に記載の方法。
【請求項50】
グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つのmRNA発現レベルが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNAシークエンシング、マイクロアレイ解析、インサイツハイブリダイゼーション、及び遺伝子発現連続解析(SAGE)からなる群から選択される方法を使用して決定される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
がんに罹患している患者の、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に対する応答性を予測するための方法であって、
個体から得られた試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定することを含み、1以上のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が、個体がPD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項52】
個体に少なくとも1用量のPD-L1軸結合アンタゴニストが投与された後に個体から試料が得られる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
がんに罹患している個体に対する治療法を選択するための方法であって、
個体から得られた試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定し、試料中の1以上のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比に基づいて個体に対してPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療法を選択することを含む、方法。
【請求項54】
がんに罹患している個体を治療するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、PD-1軸結合アンタゴニスト。
【請求項55】
がんに罹患している個体の治療における使用のための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用であって、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、使用。
【請求項56】
がんに罹患している個体を治療する方法における使用のための有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを含有する組成物であって、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、組成物。
【請求項57】
PD-1軸結合アンタゴニストを用いてメラノーマを有する個体において免疫機能を増強する方法であって、
有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含み、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、方法。
【請求項58】
個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞の数が、PD-1軸結合アンタゴニストの投与前と比較して増加している、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
個体から得られた血液試料中のFOXP3CD4T細胞の数が、PD-1軸結合アンタゴニストの投与前と比較して減少している、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
T細胞消耗が、PD-1軸結合アンタゴニストの投与前と比較して減少している、請求項57から59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
治療のための個体を選択し、個体におけるがんを治療するか又はがんの進行を遅らせる方法であって、
a.少なくとも1用量のPD-1軸結合アンタゴニストが投与されている個体から血液試料を得るステップ;
b.個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定するステップ;
c.グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上である場合、PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療のために個体を選択するステップ;及び
d.PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで提供されるのは、がん(例えば、メラノーマ)などの病態のための治療及び診断方法並びに組成物と、PD-1軸結合アンタゴニストを使用する方法である。特に、本発明は、治療に対する応答をモニターする方法、治療の方法、製造品及びキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
がんは依然としてヒトの健康に対する最も致命的な脅威の一つである。がん、又は悪性腫瘍は、制御されない形で転移し急速に増殖し、時宜を得た検出及び治療を極めて困難にする。
【0003】
PD-L1及びPD-L2を含むリガンドに結合する、プログラム死1ポリペプチド(PD-1)。プログラム死-リガンド1(PD-L1)は、慢性感染症、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、及びがんの間の免疫系応答の抑制に関与している。正常組織及び末梢血中のTリンパ球とは対照的に、腫瘍浸潤性Tリンパ球の大部分は、PD-1を優勢的に発現する。PD-L1/PD-1及びPD-L1/B7-1複合体の形成は、T細胞受容体シグナル伝達を負に調節し、CD8+T細胞活性化及びCD8+T細胞媒介腫瘍細胞死滅のその後のダウンレギュレーションをもたらすと考えられている。
腫瘍微小環境内のCD8T細胞コンパートメントに焦点を当てた研究では、治療された患者のかなりの部分、大まかに30%において明らかな臨床上の利益があるにもかかわらず、抗PD-1免疫療法の作用機序をこれまで明らかにできなかった。研究は主にCD8T細胞に焦点を当てているが、最近、マイクロサテライト不安定腫瘍における腫瘍浸潤性CD4T細胞が、マイクロサテライト安定腫瘍におけるよりも高いレベルのPD-1を発現することが観察された(Llosa及びCruise, Cancer discovery 5(1): 43-51 (2015))。加えて、メラノーマにおいて、腫瘍浸潤性CD4T細胞はしばしば変異した抗原を認識する(Linnemann及びvan Buuren, Nature medicine 21(1): 81-85 (2015))。これらの研究と一致して、結腸直腸がん及びメラノーマの動物モデルにおいて実施された実験では、MHCクラスII拘束性T細胞応答が腫瘍制御において重要な役割を果たしうること(Kreiter等, Nature 520(7549): 692-696 (2015))、腫瘍反応性CD4T細胞が細胞傷害性能力を発達させ、大きな樹立腫瘍を根絶しうること(Quezada等, J Exp. Med., 207(3): 637-650 (2010))が実証された。ここで報告された研究の前には、PD-1遮断薬、例えば抗PD-1抗体がヒトがんの状況においてCD4T細胞に影響を及ぼすかどうか、また如何にして影響を及ぼすかは知られていなかった。
【0004】
メラノーマなどの様々ながんの治療、安定化、予防、及び/又は進行の遅延のためにPD-1受容体/リガンド相互作用の遮断を含む治療戦略をモニターし最適化する必要性が依然としてある。具体的には、そのような治療に応答する可能性が高い患者を特定すること、並びに進行中の治療の有効性を迅速にモニターする方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
この発明は、がんのための治療及び診断方法並びに組成物に関する。
一態様では、本発明は、個体におけるがんを治療するか又はがんの進行を遅らせるための方法であって、治療有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、方法を特徴とする。
【0006】
一態様では、本発明は、がんに罹患している個体がPD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答しているかどうかを決定するための方法であって、個体から得られた試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定することを含み、試料中の1以上のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が、個体がPD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答していることを示す、方法に関する。
【0007】
上記態様の幾つかの実施態様では、試料は血液試料である。幾つかの実施態様では、試料は全血試料又は末梢血単核細胞試料である。幾つかの実施態様では、血液試料は、PD-1アンタゴニストによる最後の治療後2ヶ月以内に個体から採取されている。幾つかの実施態様では、個体は、PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療を受けているか又は受けたことがある。幾つかの実施態様では、がんは、膀胱がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、肺扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃(gastric又はstomach)がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん(liver cancer)、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん(hepatic carcinoma)、肛門がん、陰茎がん、メルケル細胞がん、精巣がん、食道がん、胆道腫瘍、頭頸部がん及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、がんはメラノーマである。幾つかの実施態様では、がんは尿路上皮膀胱がんである。幾つかの実施態様では、尿路上皮膀胱がんは転移性尿路上皮膀胱がんである。幾つかの実施態様では、尿路上皮膀胱がんは局所進行性尿路上皮膀胱がんである。幾つかの実施態様では、個体におけるがん細胞はPD-L1を発現する。
【0008】
幾つかの実施態様では、PD-L1発現は免疫組織化学(IHC)アッセイによって決定される。幾つかの実施態様では、個体は、局所進行性又は転移性がんに対して以前に2回以下の細胞傷害性治療レジメン(例えば0、1、又は2回の以前の細胞傷害性治療レジメン)を受けたことがある。幾つかの実施態様では、個体は、局所進行性又は転移性がんに対して以前に標的全身治療を受けたことがない。幾つかの実施態様では、治療に対する個体の応答は完全寛解である。幾つかの実施態様では、治療に対する個体の応答は部分応答である。幾つかの実施態様では、治療に対する個体の応答は、治療中止後の持続応答である。
【0009】
幾つかの実施態様では、グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比は4である。幾つかの実施態様では、グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比は45である。
【0010】
上記態様の幾つかの実施態様では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストから選択される。幾つかの実施態様では、PD-L1軸結合アンタゴニストはPD-L1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1とB7-1の両方への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、抗体は、配列番号:19のHVR-H1配列、配列番号:20のHVR-H2配列、及び配列番号:21のHVR-H3配列を含む重鎖と;配列番号:22のHVR-L1配列、配列番号:23のHVR-L2配列、及び配列番号:24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。幾つかの実施態様では、抗体は、配列番号:25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0011】
幾つかの実施態様では、PD-L1軸結合アンタゴニストはPD-1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1とPD-L2の両方への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。
【0012】
幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはFc融合タンパク質である。幾つかの実施態様では、Fc融合タンパク質はAMP-224である。
【0013】
上記態様の先の実施態様の何れかにおいて、個体は有効量の第二の治療剤の投与を受けているか受けたことがある。幾つかの実施態様では、第二の治療剤は、細胞傷害剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、細胞傷害剤は化学療法剤である。幾つかの実施態様では、化学療法剤はタキサンである。幾つかの実施態様では、タキサンは、PD-1軸結合アンタゴニストの前、PD-1軸結合アンタゴニストと同時、又はPD-1軸結合アンタゴニストの後に投与される。幾つかの実施態様では、タキサンは、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、又はドセタキセルである。幾つかの実施態様では、個体は、白金系化学療法剤による治療後に進行している。
【0014】
上記態様の先の実施態様の何れかにおいて、グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比は、グランザイムBタンパク質を発現するCD4T細胞の数とFOXP3タンパク質を発現するCD4T細胞の数を決定することによって決定される。幾つかの実施態様では、グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つのタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、及びウエスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して決定される。幾つかの実施態様では、グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つのタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリーを使用して決定される。幾つかの実施態様では、グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つの発現レベルはmRNA発現レベルである。幾つかの実施態様では、グランザイムBとFOXP3の少なくとも一つのmRNA発現レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNAシークエンシング、マイクロアレイ解析、インサイツハイブリダイゼーション、及び遺伝子発現連続解析(SAGE)からなる群から選択される方法を使用して決定される。
【0015】
別の態様では、本発明は、がんに罹患している患者の、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に対する応答性を予測するための方法であって、個体から得られた試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定することを含み、1以上のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が、個体がPD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す、方法を特徴とする。幾つかの実施態様では、個体に少なくとも1用量のPD-L1軸結合アンタゴニストが投与された後に個体から試料が得られる。
【0016】
別の態様では、本発明は、がんに罹患している個体に対する治療法を選択するための方法であって、個体から得られた試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定し、試料中の1以上のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比に基づいて個体に対してPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療法を選択することを含む、方法を特徴とする。
【0017】
別の態様では、本発明は、がんに罹患している個体を治療するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、PD-1軸結合アンタゴニストを特徴とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、がんに罹患している個体を治療するのに使用するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用であって、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、使用を特徴とする。
【0019】
別の態様では、本発明は、がんに罹患している個体を治療する方法に使用するための有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを含有する組成物であって、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、組成物を特徴とする。
【0020】
別の態様では、本発明は、PD-1軸結合アンタゴニストを用いてメラノーマを有する個体において免疫機能を増強する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含み、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている、方法を特徴とする。一実施態様では、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞の数は、PD-1軸結合アンタゴニストの投与前と比較して増加している。一実施態様では、個体から得られた血液試料中のFOXP3CD4T細胞の数は、PD-1軸結合アンタゴニストの投与前と比較して減少している。一実施態様では、T細胞消耗が、PD-1軸結合アンタゴニストの投与前と比較して減少している。
【0021】
別の態様では、本発明は、治療のための個体を選択し、個体におけるがんを治療し又はがんの進行を遅らせる方法であって、(a)個体から血液試料を得るステップ;(b)個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比を決定するステップ;(c)グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上である場合、PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療のために個体を選択するステップ;及び(d)PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0022】
別の態様では、本発明は、PD-1軸結合アンタゴニストと任意の薬学的に許容可能な担体を含有する医薬と、個体におけるがんを治療し又はがんの進行を遅らせるための医薬の投与の説明書を含む添付文書を含むキットを特徴とし、ここで、個体から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストはMPDL3280Aである。幾つかの実施態様では、医薬は、約840mgの用量のMPDL3280Aを含む。幾つかの実施態様では、添付文書は、2週間に1回の個体への医薬の投与のための説明書を含む。
【0023】
前述の態様の何れか一つにおいて、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1とPD-L2の両方への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗体である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1とB7-1の両方への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、抗体は、配列番号:19のHVR-H1配列、配列番号:20のHVR-H2配列、及び配列番号:21のHVR-H3配列を含む重鎖と;配列番号:22のHVR-L1配列、配列番号:23のHVR-L2配列、及び配列番号:24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。幾つかの実施態様では、抗体は、配列番号:26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。幾つかの実施態様では、抗体は、配列番号:25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0024】
ここに記載の様々な実施態様の特性のうちの一つ、幾つか、又は全てを組み合わせて本発明の他の実施態様を形成してもよいことを理解されたい。本発明のこれらの態様及び他の態様は当業者には明らかであろう。本発明のこれらの実施態様及び他の実施態様を、次の詳細な説明によって更に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本出願書類には、カラーで作成された少なくとも一つの図面が含まれる。カラー図面を含む本特許又は特許出願の写しは、請求と必要な手数料の支払いにより、特許庁により提供される。
図1図1A及びBは、mMLRアッセイにおけるCD4T細胞単独(図1A)及び同種DCを伴うCD4T細胞(図1B)におけるPD-1発現を示す。y軸はPD-1発現を示し、x軸はCFSE発現を示す。図1Bは、CFSE低集団として同定されたアロ特異的CD4T細胞におけるPD-1発現プロファイルを示す。
図2図2は、PD-1遮断がCD4T細胞によるIFN-γ分泌を増加させることを示す。抗PD-1遮断抗体又はアイソタイプ対照を加えて又は加えないで、同種DCと共培養したCD4T細胞の上清中に存在するIFN-γのレベル。各データ点(円、正方形又は三角形)は各独立した実験からの1ドナーを表す。
図3A-B】図3A~Cは、PD-1遮断がCD4T細胞によるグランザイムB産生を増加させることを示す。図3A及びBは、mMLRアッセイ単独(図3A)又は5日間のPD-1遮断後(図3B)のグランザイムB陽性CFSE低CD4T細胞の頻度を示す、CD4でゲーティングされた代表的なFACSプロットを示す。y軸:グランザイムB;x軸:CFSE。
図3C図3Cは、抗PD-1遮断抗体を加えて又は加えないで、あるいはアイソタイプ対照抗体を加えて、同種DCと5日間共培養した際にグランザイムBを産生するCD4T細胞の頻度をまとめるグラフを示す。各データ点(円、正方形又は三角形)は各独立した実験からの1ドナーを表す。
図4A図4A~Bは、ベースライン(培養物に抗体を加えない,”-”)に対する抗PD-1抗体0376、MDX-1106及びMK-3475又はアイソタイプ対照を用いたIFN-γ及びグランザイムBCD4T細胞の誘導の比較を示す。抗PD-1抗体0376、MDX-1106及びMK-3475は同様な量のIFN-γの分泌を誘発するが(図4A)、0376はグランザイムBCD4T細胞の誘導において有意に優れている(P=0.02)(図4B)。
図4B】上記
図5図5A~Bは、抗PD-L1処理がIFN-γ及びグランザイムB産生を誘導することを示す。抗PD-1遮断抗体又は抗PDL-1を加えて又は加えないで、同種DCと共培養したCD4T細胞の上清中に存在するIFN-γのレベル(図5A)及びCD4T細胞によるグランザイムBの発現(図5B)。各データ点(円、正方形又は三角形)は各独立した実験からの1ドナーを表す。試験条件では、PD-1遮断がPDL-1遮断よりも多くのIFN-γ分泌と僅かに多いグランザイムB発現を誘導した。
図6図6A及びBは、ニボルマブで処置されたメラノーマ患者の末梢血中のCD4T細胞プロファイルを示す。図6A及びBは、2つの異なる時点での同じメラノーマ患者からのCD4T細胞内の制御性T細胞(FOXP3)対グランザイムBの頻度を示す:図6Aは、患者が抗PD-1(MDX-1106)療法に応答している間の結果を示し、図6Bは、4ヵ月後の再発中の同じ患者に対する結果を示す。
図7図7は、ニボルマブで処置されたメラノーマ患者の末梢血中のCD4T細胞集団内のグランザイムB細胞とTreg細胞との比を示す。グランザイムB対FOXP3CD4T細胞の間の比(y軸)は、より高い頻度の細胞傷害性CD4T細胞及び比例してより長い無病生存期間を有するTregを有する2名のメラノーマ患者を強調する一方、他の患者は疾患が絶えず悪化していた。
図8図8は、健康なドナー(HD)、未処置及び抗PD-1処置メラノーマ患者における細胞傷害性CD4T細胞の頻度を示す。各点は1ドナーを表す。この図は、抗PD-1処置メラノーマ患者の末梢血中の細胞傷害性CD4T細胞の頻度の増加を示す(P=0.04)。
図9図9は、疾患が進行しない日数での期間に対する抗PD-1療法で処置されたメラノーマ患者からのグランザイムBCD4T細胞の頻度を示す。末梢血中の細胞傷害性CD4T細胞の頻度は、抗PD1療法に対するメラノーマ患者の応答と相関している。
図10図10は、抗PD-1療法で処置されたメラノーマ患者におけるグランザイムBCD4T細胞/Treg比対無増悪期間を示す。末梢血中の細胞傷害性CD4T細胞頻度とTreg頻度との比は、抗PD1療法に対するメラノーマ患者の応答と相関する。
図11図11は、末梢血中の細胞傷害性CD4T細胞頻度とTreg頻度との比が抗PD-1処置患者及び治療応答を特定することを示す。グランザイムBCD4T細胞/Treg比は、抗PD-1アンタゴニストで処置されたメラノーマ患者において増加し、応答者群において更に高い。メラノーマ未処置群は抗PD-1を受けなかった患者を表し、処置前の患者(ベースライン群)は臨床転帰に基づいてPD=進行者及びPR=応答者に分けられる。HDは健康なドナーを示す。各点は1ドナーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.定義
発明を詳細に説明する前に、この発明は、特定の組成物又は生物系(当然、変わりうる)に限定されるものではないことが理解されるべきである。また、ここで使用される専門用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0027】
この明細書と添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容がそうではないことを明らかに示していない限り複数の指示対象を含む。従って、例えば、「分子(a molecule)」への言及は、任意選択的に二以上のそのような分子の組合せを含む等である。
【0028】
ここで使用される「約」という用語は、それぞれの値についてのこの技術分野における当業者に容易に知られている通常の誤差範囲を意味する。ここでの値又はパラメーターへの「約」の言及は、その値又はパラメーター自体に対する実施態様を含む(そして記載する)。
【0029】
ここに記載される発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様を「含む」、それら「からなる」及び/又は「から本質的になる」ことを含む。
【0030】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能不全を除去し、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、及び/又は標的細胞死滅)を回復又は増強するという結果をもたらすように、PD-1軸結合パートナーとその結合パートナーの一又は複数との相互作用を阻害する分子を指す。ここで使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。
【0031】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1と、PD-L1及び/又はPD-L2のようなその結合パートナーの一又は複数との相互作用に起因するシグナル伝達を、低減させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する分子を指す。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーの一又は複数に対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及び/又はPD-L2に対する結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及び他の分子を含む。一実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を介するシグナル伝達が媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質により又は同タンパク質を介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害性T細胞の機能障害性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはここに記載されるMDX-1106(ニボルマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、ここに記載されるMK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、ここに記載されるMEDI-0680(AMP-514)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、ここに記載されるPDR001である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、ここに記載されるREGN2810である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、ここに記載されるBGB-108である。
【0032】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1と、PD-1及び/又はB7-1のようなその結合パートナーの何れか一又は複数との相互作用に起因するシグナル伝達を低減させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する分子を指す。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーに対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及び/又はB7-1に対する結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1と、PD-1及び/又はB7-1のようなその結合パートナーの一又は複数との相互作用に起因するシグナル伝達を低減させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド及び他の分子を含む。一実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介するシグナル伝達が媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質により又は同タンパク質を介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害性T細胞の機能障害性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。特定の態様では、抗PD-L1抗体は、ここに記載されるMPDL3280A(アテゾリズマブ)である。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、ここに記載されるMDX-1105である。また別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、ここに記載されるYW243.55.S70である。また別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、ここに記載されるMEDI4736(デュルバルマブ)である。また別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、ここに記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0033】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2と、PD-1のようなその結合パートナーの何れか一又は複数との相互作用に起因するシグナル伝達を低減させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する分子を指す。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーの一又は複数に対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1に対する結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L2アンタゴニストは、PD-L2と、PD-1のようなその結合パートナーの何れか一又は複数との相互作用に起因するシグナル伝達を低減させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド及び他の分子を含む。一実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2を介するシグナル伝達が媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質により又は同タンパク質を介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害性T細胞の機能障害性を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。
【0034】
ここで使用される「タキサン」は、チューブリンに結合し、微小管アセンブリ及び安定化を促進し、及び/又は微小管脱重合を阻止しうるジテルペンである。ここに含まれるタキサンは、タキソイド10-デアセチルバッカチンIII及び/又はその誘導体を含む。例示的なタキサンには、限定されないが、パクリタキセル(すなわち、TAXOL(登録商標)、CAS#33069-62-4)、ドセタキセル(すなわち、TAXOTERE(登録商標)、CAS#114977-28-5)、ラロタキセル、カバジタキセル、ミラタキセル、テセタキセル、及び/又はオラタキセル(orataxel)が含まれる。幾つかの実施態様では、タキサンは、アルブミン被覆ナノ粒子(例えば、ナノ-アルブミン結合(nab)-パクリタキセル、すなわち、ABRAXANE(登録商標)及び/又はnab-ドセタキセル、ABI-008)である。幾つかの実施態様では、タキサンは、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。幾つかの実施態様では、タキサンは、CREMAPHOR(登録商標)(例えば、TAXOL(登録商標))及び/又はTween、例えばポリソルベート80(例えば、TAXOTERE(登録商標))において製剤化される。幾つかの実施態様では、タキサンは、リポソームに封入されたタキサンである。幾つかの実施態様では、タキサンは、タキサンのプロドラッグ形態及び/又はコンジュゲート形態(例えば、パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、及び/又は炭酸リノレイル-パクリタキセルに共有結合的にコンジュゲートされたDHA)である。幾つかの実施態様では、パクリタキセルは、実質的に界面活性剤なしで(例えば、CREMAPHOR及び/又はTweenの不存在下で-TOCOSOL(登録商標)パクリタキセルなど)製剤化される。
【0035】
免疫機能不全の文脈における「機能不全」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を指す。この用語には、抗原認識が起こりうるが、続いて起こる免疫応答が感染又は腫瘍増殖の制御に効果がない「消耗」及び/又は「アネルギー」両方の一般的要素が含まれる。
【0036】
ここで使用される「機能不全」という用語は、抗原認識に対する抵抗性又は非応答性、特に、抗原認識を下流のT細胞エフェクター機能、例えば増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)及び/又は標的細胞死滅へ翻訳する能力の不全をまた含む。
【0037】
ここで使用される場合、「細胞傷害性CD4T細胞」は、細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞を指す。「細胞傷害性CD4T細胞」、「CD4細胞傷害性T細胞」、及び「細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞」は同義的に使用される。これらの細胞は、当該技術分野で知られている方法、例えばCD4及びグランザイムBに対する蛍光標識抗体で細胞を染色し、蛍光標識細胞分取を使用して、CD4陽性細胞及びグランザイムB二重陽性細胞上でのゲーティングにより、同定することができる。
【0038】
ここで使用される場合、制御性T細胞又はTregは、FOXP3CD4T細胞を指す。「制御性T細胞」、「Treg」、及び「FOXP3CD4T細胞」は同義的に使用される。これらの細胞は、当該技術分野で知られた方法、例えばCD4及びFOXP3に対する蛍光標識抗体で細胞を染色し、蛍光標識細胞分取を使用して、CD4陽性細胞及びFOXP3二重陽性細胞上でのゲーティングにより、同定することができる。
【0039】
ここで使用される場合、「グランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比」は、CD4陽性細胞集団内のグランザイムBCD4T細胞をFOXP3CD4T細胞で割った頻度を指す。
【0040】
「T細胞機能の増強」とは、持続もしくは増幅した生物学的機能を有するように、又は消耗しもしくは不活性なT細胞を再生もしくは再活性化するように、T細胞を誘導し、作用し又は刺激することを意味する。T細胞機能の増強の例には、治療介入前の同様のレベルと比較した場合の、CD8+T細胞由来のγ-インターフェロンの分泌の増大、増殖の増大、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体、又は腫瘍クリアランス)の増大が含まれる。一実施態様では、増強のレベルは少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%の増強である。この増強を測定する方法は当業者には知られている。
【0041】
「T細胞機能不全障害」は、抗原刺激に対する応答性の低下を特徴とするT細胞の障害又は状態である。特定の実施態様では、T細胞機能不全障害は、PD-1によるシグナル伝達の不適切な増大と特異的に関連する障害である。別の実施態様では、T細胞機能不全障害は、T細胞がアネルギー性であるか又はサイトカインを分泌し、増殖し、もしくは細胞溶解活性を達成する能力が低下した障害である。特定の態様では、応答性の低下により、免疫原を発現する病原体又は腫瘍の制御が無効となる。T細胞機能不全を特徴とするT細胞機能不全障害の例には、未解明の急性感染症、慢性感染症及び腫瘍免疫が含まれる。
【0042】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを指す。従って、治療的概念として、このような回避が減弱されて、腫瘍が免疫系によって認識され攻撃されるとき、腫瘍免疫は「治療」される。腫瘍認識の例には、腫瘍結合、腫瘍縮小及び腫瘍クリアランスが含まれる。
【0043】
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強により、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが支援される。腫瘍免疫原性の増強の例には、PD-L1軸結合アンタゴニスト及びタキサンでの治療が含まれる。
【0044】
「持続応答」は、治療の休止後の腫瘍増殖の低減に対する持続効果を指す。例えば、腫瘍サイズが、投薬フェーズの開始時のサイズと比較して同じに又は小さく維持されうる。幾つかの実施態様では、持続応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5×、2.0×、2.5×、又は3.0×の長さを有する。
【0045】
ここで使用される場合、「がんの再発を低減し又は阻害する」とは、腫瘍もしくはがんの再発又は腫瘍もしくはがんの進行を低減し又は阻害することを意味する。ここで開示される場合、がんの再発及び/又はがんの進行は、限定されないが、がんの転移を含む。
【0046】
ここで使用される場合、「完全寛解」又は「CR」は、全ての標的病変の消失を指す。
【0047】
ここで使用される場合、「部分応答」又は「PR」は、ベースラインSLDを参照として、標的病変の最長直径(SLD)の合計の少なくとも30%の減少を指す。
【0048】
ここで使用される場合、「安定した疾患」又は「SD」は、治療開始以来最小のSLDを参照として、PRに適格な標的病変の十分な縮小がないしPDに適格な十分な増加もないことを指す。
【0049】
ここで使用される場合、「進行性疾患」又は「PD」は、治療開始以来記録された最小のSLD又は一又は複数の新しい病変の存在を参照として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。
【0050】
ここで使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療中の疾患(例えば、がん)が悪化しない治療中及び治療後の期間の長さを指す。無増悪生存期間には、患者が完全寛解又は部分応答を経験した時間の量、並びに患者が安定した疾患を経験した時間の量が含まれうる。
【0051】
ここで使用される場合、「全奏効率」又は「客観的奏効率」(ORR)は、完全寛解(CR)率及び部分応答(PR)率の合計を指す。
【0052】
ここで使用される場合、「全生存期間」(OS)は、特定の期間の後に生存している可能性が高い群内の個体の割合を指す。
【0053】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性を有効にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できない毒性である追加の成分を含んでいない調製物を指す。このような製剤は無菌である。「薬学的に許容可能な」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、用いられる活性成分の有効用量をもたらすために対象の哺乳動物に合理的に投与されうるものである。
【0054】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象に対して無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体には、限定されないが、緩衝液、賦形剤、安定剤、又は保存料が含まれる。
【0055】
ここで使用される場合、「治療」という用語は、臨床病理学の過程中に治療される個体又は細胞の自然経過を変更するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患の進行速度の低下、病状の軽減もしくは緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。例えば、個体は、限定されないが、がん性細胞の増殖の低減(又は破壊)、疾患に起因する症候の軽減、疾患罹患者の生活の質の向上、疾患を治療するために必要とされる他の薬物の用量の低減、及び/又は個体の生存期間の延長を含む、がんに関連する一又は複数の症候が軽減され又は排除された場合に成功裏に「治療」される。
【0056】
ここで使用される場合、疾患の「進行を遅らせる」とは、疾患(例えば、がん)の発生を、延ばし、妨げ、遅くし、遅延させ、安定させ、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療される個体に応じて、様々な時間の長さでありうる。当業者には明らかであるように、十分な又は有意な遅延は、実際には、個体が疾患を発症しない予防を包含しうる。例えば、転移の発生などの末期がんを遅延させることができる。
【0057】
「有効量」又は「治療有効量」は、少なくとも、特定の障害の測定可能な改善又は予防を生じさせるために必要な最小量である。ここでの有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体に所望の応答を導く薬剤の能力などの要因に応じて変化しうる。有効量は、治療の何らかの毒性の又は有害な影響を治療的に有益な効果が凌駕する量でもある。予防的使用の場合、有益な又は望ましい結果には、リスクを排除もしくは低減すること、重症度を軽減すること、又は疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動症候、その合併症、及び疾患の発生中に提示される中間的な病理学的表現型を含む疾患の発症を遅延させることが含まれる。治療的使用の場合、有益な又は望ましい結果には、疾患に起因する一又は複数の症候の低減、疾患罹患者の生活の質の向上、疾患を治療するために必要とされる他の薬物の用量の低減、例えば標的化による別の薬物の効果の増強、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。がん又は腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞数を減少させ;腫瘍サイズを縮小させ;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、望ましくは停止させ);腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、望ましくは停止させ);腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又は障害に関連する一又は複数の症状をある程度緩和する点で効果を有しうる。有効量は、一又は複数回の投与で投与することができる。本発明の目的のために、有効量の薬物、化合物、又は薬学的組成物は、直接的又は間接的に、予防的又は治療的処置を達成するために十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、薬物、化合物、又は薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は薬学的組成物と併せて達成されても又はされなくてもよい。従って、「有効量」は一又は複数の治療剤を投与する状況において考慮され得、単一の薬剤は、一又は複数の他の薬剤との組み合わせで所望の結果が達成されうるか又は達成される場合、有効量で投与されると考慮されうる。
【0058】
ここで使用される場合、「~と併せて」とは、別の治療様式に加えた一つの治療様式の投与を指す。而して、「~と併せて」は、個体に対し、他の治療様式での投与の前、最中、又は後の、一つの治療様式での投与を指す。
【0059】
「障害」は、哺乳動物を当該障害に罹患させる病態を含む、慢性及び急性の障害又は疾患を含むがこれらに限定されない、治療からベネフィットを受けるであろう任意の状態である。
【0060】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関係している障害を指す。一実施態様では、細胞増殖性障害はがんである。一実施態様では、細胞増殖性障害は腫瘍である。
【0061】
ここで使用される「腫瘍」という用語とは、悪性又は良性を問わず、全ての腫瘍性細胞成長及び増殖並びに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、ここで言及される場合、互いを排除しない。
【0062】
「がん」及び「がん性」という用語は、未制御の細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指すか又は記述する。この定義に含まれるものは良性及び悪性がんである。「早期がん」又は「早期腫瘍」とは、非浸潤もしくは非転移又はステージ0、1、又は2のがんを意味する。がんの例には、限定されないが、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍、及び島細胞がんを含む)、中皮腫、シュワン細胞腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺がん、メラノーマ、及び白血病又はリンパ系腫瘍が含まれる。このようながんのより特定の例には、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん(例えば、移行上皮又は尿路上皮がん、筋層非浸潤性膀胱がん、筋層浸潤性膀胱がん、及び転移性膀胱がん)及び非尿路上皮膀胱がん)、扁平上皮細胞がん(例えば、上皮系扁平上皮細胞がん)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がんを含む胃(gastric)又は胃(stomach)がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、ヘパトーマ、乳がん(転移性乳がんを含む)、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓(kidney)又は腎臓(renal)がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、メルケル細胞がん、菌状息肉腫、精巣がん、食道がん、胆管の腫瘍、並びに頭頸部がん及び血液悪性腫瘍が含まれる。幾つかの実施態様では、がんは、トリプルネガティブ転移性乳がんであり、これには、局所再発性又は転移性疾患(局所再発性疾患は、治療意図での摘出を受けることができない)を伴う、任意の組織学的に確認されたトリプルネガティブ(ER、PR、HER2)乳腺がんが含まれる。幾つかの実施態様では、がんは膀胱がんである。特定の実施態様では、膀胱がんは尿路上皮膀胱がんである。
【0063】
ここで使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/又は生理学的特性に基づいて、特徴付けされ及び/又は特定される細胞及び/又は他の分子実体を含む、目的の対象及び/又は個体から得られるか又は由来する組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句とその変化形は、特徴付けられる細胞及び/又は分子実体を含んでいることが予想されるか又は知られている、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料には、限定されないが、組織試料、初代又は培養細胞又は細胞株、細胞上清、細胞可溶化物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍可溶化物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0064】
「組織試料」又は「細胞試料」とは、対象又は個体の組織から得られた類似の細胞の集合を意味する。組織又は細胞試料源は、新鮮、凍結、及び/又は保存器官、組織試料、生検、及び/又は吸引液由来の固形組織;血液又は任意の血液成分、例えば、血漿;体液、例えば、脳脊髄液、羊水、腹水、もしくは間質液;対象の妊娠又は発育中の任意の時点の細胞でありうる。組織試料はまた初代又は培養された細胞又は細胞株でありうる。場合によっては、組織又は細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍試料」は、腫瘍又は他のがん性組織から得られた組織試料である。組織試料は、細胞型の混合集団(例えば、腫瘍細胞と非腫瘍細胞、がん性細胞と非がん性細胞)を含みうる。組織試料は、保存料、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、抗生物質など、本来は組織とは天然には混ざり合わない化合物を含みうる。
【0065】
「検出」という用語は、直接的及び間接的検出を含む、任意の検出手段を含む。
【0066】
ここで使用される「バイオマーカー」という用語は、試料中で検出されうる指標、例えば、予測指標、診断指標、及び/又は予後指標を指す。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/又は臨床的特徴によって特徴付けられる疾患又は障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たしうる。幾つかの実施態様では、バイオマーカーは遺伝子である。バイオマーカーには、限定されないが、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/又はRNA)、ポリヌクレオチドコピー数改変(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、及び/又は糖脂質ベースの分子マーカーが含まれる。
【0067】
ここで使用される「細胞傷害性剤」という用語は、細胞に有害な(例えば、細胞死を引き起こし、増殖を阻害し、又は他に細胞機能を妨げる)あらゆる薬剤を指す。細胞傷害性剤には、限定されないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤;増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素など;及び毒素、例えば小分子毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はバリアントを含む)が含まれる。例示的な細胞傷害性剤は、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン剤及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH-Aの阻害剤、脂肪酸生合成の阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びがん代謝の阻害剤から選択することができる。一実施態様では、細胞傷害性剤は白金系化学療法剤である。一実施態様では、細胞傷害性剤はEGFRのアンタゴニストである。一実施態様では、細胞傷害性剤は、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ,TARCEVATM)である。一実施態様では、細胞傷害性剤はRAF阻害剤である。一実施態様では、RAF阻害剤はBRAF及び/又はCRAF阻害剤である。一実施態様では、RAF阻害剤はベムラフェニブである。一実施態様では、細胞傷害性剤はPI3K阻害剤である。
【0068】
ここで使用される場合、「化学療法剤」という用語は、がんの治療に有用な化合物を含む。化学療法剤の例には、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(sunitib)(スーテント(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(finasunate)(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(Sirolimus、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(lonafamib)(SCH66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシトキサン(登録商標)シクロスホスファミド;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine)(アルトレタミンを含む)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリド及びデュタステリドを含む5α-レダクターゼ;ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクズオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(Angew Chem. Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994));ジネマイシンAを含むジネマイシン;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグルコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフォミチン(elfomithine);エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidamnol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン;クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;並びに上記の何れかの薬学的に許容可能な塩、酸、及び誘導体が含まれる。
【0069】
化学療法剤には、白金を分子の不可欠な部分として含む有機化合物を含む「白金系」化学療法剤がまた含まれる。典型的には、白金系化学療法剤は白金の配位錯体である。白金系化学療法剤は、当該技術分野において「プラチン」と呼ばれることがある。白金系化学療法剤の例には、限定されないが、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンが含まれる。
【0070】
化学療法剤には、(i)例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);タモキシフェンシトレートを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びフェアストン(登録商標)(クエン酸トレミフェン(toremifine))を含む、例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のような、腫瘍に対するホルモン作用を調節し又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;(ii)例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾ-ル;AstraZeneca)のような、副腎におけるエストロゲン生成を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;ブセレリン、トリプテレリン(tripterelin)、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、all-trans-レチノイン酸、フェンレチニド、並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC-アルファ、Ralf及びH-Rasのような、異常な細胞増殖に関与しているシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤;(viii)遺伝子療法ワクチンのようなワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;トポイソメラーゼ1阻害剤、例えばLURTOTECAN(登録商標);ABARELIX(登録商標)rmRH;及び(ix)上記の何れかの薬学的に許容可能な塩、酸及び誘導体がまた含まれる。
【0071】
化学療法剤には、抗体、例えばアレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガミシン(マイロターグ(登録商標)、Wyeth)がまた含まれる。本発明の化合物と組み合わせられる薬剤として治療可能性を有する追加的なヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピヌズマブ、ビヴァツズマブ メルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、ペクセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルピリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、及びインターロイキン-12p40タンパク質を認識するように遺伝的に修飾された組み換え独占的ヒト配列の完全長IgGλ抗体である抗インターロイキン-12(ABT-874/J695,Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
【0072】
化学療法剤には、EGFRに結合するか又は他の様式でそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を防止又は低減する化合物を指し、「EGFRアンタゴニスト」とも称される「EGFR阻害剤」がまた含まれる。このような薬剤の例には、EGFRに結合する抗体及び小分子が含まれる。EGFRに結合する抗体の例には、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4943533号を参照)とそれらのバリアント、例えば、キメラ化225(C225又はセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))及び再構成(reshaped)ヒト225(H225)(例えば国際公開第96/40210号(Imclone Systems Inc.)を参照)、IMC-11F8、完全ヒトEGFR標的抗体(Imclone);II型変異EGFRに結合する抗体(米国特許第5212290号)、米国特許第5891996号に記載のEGFRに結合するヒト化及びキメラ抗体、並びにEGFRに結合するヒト抗体、例えば、ABX-EGF又はパニツムマブ(国際公開第98/50433号(Abgenix/Amgen)を参照);EMD55900(Stragliotto等 Eur. J. Cancer 32A:636-640 (1996));EGFR結合についてEGF及びTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対して産生されたヒト化EGFR抗体EMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3及びE7.6.3として知られ、米国特許第6235883号に記載された完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);及びmAb806又はヒト化mAb806(Johns等, J. Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004))が含まれる。抗EGFR抗体は、細胞傷害剤にコンジュゲートされ、それにより免疫コンジュゲートを作製できる(例えば、欧州特許出願公開第659439A2号、Merck Patent GmbHを参照)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5616582号、同第5457105号、同第5475001号、同第5654307号、同第5679683号、同第6084095号、同第6265410号、同第6455534号、同第6521620号、同第6596726号、同第6713484号、同第5770599号、同第6140332号、同第5866572号、同第6399602号、同第6344459号、同第6602863号、同第6391874号、同第6344455号、同第5760041号、同第6002008号、及び同第5747498号、並びに次のPCT公報:国際公開第98/14451号、国際公開第98/50038号、国際公開第99/09016号、及び国際公開第99/24037号に記載の化合物などの小分子が含まれる。特定の小分子EGFRアンタゴニストには、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals));PD183805(CI1033,2-プロペンアミド,N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-,二塩酸塩、Pfizer Inc.);ZD1839,ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU5271;Pfizer);二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標),GSK572016又はN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2-メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が含まれる。
【0073】
化学療法剤には「チロシンキナーゼ阻害剤」もまた含まれ、これは、前段落に記載のEGFR標的化薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばTakedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724714(Pfizer及びOSI);優先的にEGFRに結合するがHER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能)のような二重HER阻害剤;経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブ(GSK572016;Glaxo-SmithKlineから入手可能);PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えばカネルチニブ(CI-1033;Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えばRaf-1シグナル伝達を阻害する、ISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス剤ISIS-5132;非HER標的化TK阻害剤、例えばメシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的化チロシンキナーゼ阻害剤、例えばスニチニブ(スーテント(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばバタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Scherin AGから入手可能);MAPK細胞外調節キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えばPD153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えばCGP59326、CGP60261及びCGP62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含むチロホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えばHERコード化核酸に結合するもの);キノキサリン誘導体(米国特許第5804396号); チルホスチン(tryphostin)(米国特許第5804396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えばCI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS3521;Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));又は次の特許公報:米国特許第5804396号;国際公開第1999/09016号(American Cyanamid);国際公開第1998/43960号(American Cyanamid);国際公開第1997/38983号(Warner Lambert);国際公開第1999/06378号(Warner Lambert);国際公開第1999/06396号(Warner Lambert);国際公開第1996/30347号(Pfizer,Inc);国際公開第1996/33978号(Zeneca);国際公開第1996/3397号(Zeneca)及び国際公開第1996/33980(Zeneca)の何れかに記載のものが含まれる。
【0074】
化学療法剤には、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバクジマブ(bevacuzimab)、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ(elotinib)、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミソール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩がまた含まれる。
【0075】
化学療法剤には、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバリン酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、ジプロピオン酸アクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾール-17-プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン及び酢酸フルプレドニデン;免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAID)、例えばフェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)とそのD-異性体型(feG)(IMULAN BioTherapeutics,LLC)、抗リウマチ薬、例えばアザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン,金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノサイクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断薬、例えばエタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セルトリズマブペゴル(Cimzia)、ゴリムマブ(Simponi)、インターロイキン1(IL-1)遮断薬、例えばアナキンラ(Kineret)、T細胞共刺激遮断薬、例えばアバタセプト(Orencia)、インターロイキン6(IL-6)遮断薬、例えばトシリズマブ(ACTEMRA(登録商標));インターロイキン13(IL-13)遮断薬、例えばレブリキズマブ;インターフェロンアルファ(IFN)遮断薬、例えばロンタリズマブ;ベータ7インテグリン遮断薬、例えばrhuMAbベータ7;IgE経路遮断薬、例えば抗M1プライム;分泌ホモ三量体LTa3及び膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断薬、例えば抗リンホトキシンアルファ(LTa);放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);
種々の治験薬、例えばチオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH、又はファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832);ポリフェノール、例えばケルセチン、レスベラトロール、ピセタノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体;オートファジー阻害剤、例えばクロロキン;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));及び上皮増殖因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えばPS341);CCI-779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファーニブ(SCH6636、SARASARTM);及び上記の何れかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体;並びに上記の二つ以上の組み合わせ、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略記);及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いた治療レジメンの略記)がまた含まれる。
【0076】
化学療法剤には、鎮痛、解熱及び抗炎症効果を有する非ステロイド性抗炎症薬がまた含まれる。NSAIDには、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤が含まれる。NSAIDの特定の例には、アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン及びナプロキセン、酢酸誘導体、例えばインドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、エノール酸(enolic acid)誘導体、例えばピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム及びイソキシカム、フェナム酸誘導体、例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、及びCOX-2阻害剤、例えばセレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが含まれる。NSAIDは、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移部骨痛、頭痛及び片頭痛、術後痛、炎症及び組織傷害に起因する軽度から中程度の疼痛、発熱、腸閉塞、及び腎疝痛のような状態の症状緩和のために適用されうる。
【0077】
ここで使用される場合、「増殖阻害剤」は、インビトロ又はインビボの何れかで細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を指す。一実施態様では、増殖阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現している細胞の増殖を予防又は低減する増殖阻害抗体である。別の実施態様では、増殖阻害剤は、S期で細胞の割合を有意に減少させるものでありうる。増殖阻害剤の例には、細胞周期の進行を(S期以外の場所で)遮断する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘導する薬剤が含まれる。古典的なM期遮断薬には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-C(アラビノフラノシルシトシン)である。更なる情報は、Mendelsohn及びIsrael編, The Molecular Basis of Cancer, Chapter 1, Murakami等, 表題“Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs”(W.B. Saunders, Philadelphia, 1995)、例えば13頁に見出すことができる。
【0078】
「放射線療法」とは、正常に機能する能力を制限するか、又は細胞を完全に破壊するように細胞に十分な損傷を誘導する指向性ガンマ線又はベータ線の使用を意味する。投薬量及び治療期間を決定するための当該技術分野で知られた方法が多く存在することが理解される。典型的な治療剤は、1回の投与として与えられ、典型的な投薬量は、1日当たり10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0079】
治療の目的のための「個体」又は「対象」は、哺乳動物として分類される何れかの動物を指し、ヒト、家畜動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む。個体又は対象は患者でありうる。特定の実施態様では、個体又は患者はヒトである。
【0080】
ここでの「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片を包含する。
【0081】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定されて分離され、及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の研究、診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質を含みうる。幾つかの実施態様では、抗体は、(1)例えばローリー法で測定して抗体の95重量%を超えるまで、幾つかの実施態様では99重量%を超えるまで;(2)例えばスピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分な程度まで、又は(3)例えばクーマシーブルー又は銀色素を使用した還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0082】
「天然抗体」は、通常、二つの同一の軽(L)鎖と二つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、複数の定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、その他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。
【0083】
「定常ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの他の部分、すなわち抗原結合部位を含む可変ドメインより多くの保存アミノ酸配列を有する免疫グロブリンの部分を指す。定常ドメインは、重鎖のC1、C2及びC3ドメイン(まとめてCHという)、及び軽鎖のCHL(又はCL)ドメインを含む。
【0084】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「V」と呼ばれることがある。軽鎖の可変ドメインは「V」と呼ばれることがある。これらドメインは、通常、抗体の最も可変度の高い部分であり、抗原結合部位を含んでいる。
【0085】
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が広範囲に相違しているという事実を指し、各特定の抗体のその特定の抗原への結合及び特異性に使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方において、超可変領域(HVR)と呼ばれる三つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ四つのFR領域を含み、ベータシート構造を連結し、場合によってはその一部を形成するループを形成する、三つのHVRにより連結されたベータシート立体配置を大部分がとる。各鎖のHVRは、FR領域により互いに近接した状態で保持され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版, National Institute of Health, Bethesda, Md.(1991)を参照)。定常ドメインは、抗原との抗体の結合には直接関わっていないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など、様々なエフェクター機能を示す。
【0086】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に区別される型の一つに割り当てることができる。
【0087】
ここで使用されるIgGの「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学特性及び抗原特性により定まる免疫グロブリンのサブクラスの何れかを意味する。
【0088】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)を異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IGA、及びIgAに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置はよく知られており、一般的に、例えば、Abbas等 Cellular and Mol. Immunology, 4版(W.B. Saunders, Co., 2000)に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質もしくはペプチドとの共有的又は非共有的結合により形成される、より大きな融合分子の一部であってもよい。
【0089】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」という用語は、ここでは互換可能に使用されて、その実質的にインタクトな形態の抗体を指し、以下に定義する抗体断片を指すのではない。該用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0090】
ここでの目的のための「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0091】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。幾つかの実施態様では、ここに記載の抗体断片は抗原結合断片である。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0092】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗体結合断片と、その名前が容易に結晶化する能力を反映する残りの「Fc」断片を生成する。パパイン処理は、二つの抗原結合部位を有し、なお抗原を架橋することが可能なF(ab’)断片を生じる。
【0093】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施態様では、二本鎖「Fv」種は、一本の重鎖と一本の軽鎖の可変ドメインが堅固な非共有結合をなした二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、柔軟なペプチドリンカーによって一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインが共有結合的に連結され得、軽鎖及び重鎖が、二本鎖Fv種のものと類似の「二量体」構造で結合しうる。各可変ドメインの三つのHVRが相互作用し、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成するのはこの配置においてである。集合的に、六つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な三つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低下するものの、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0094】
Fab断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、また軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、ここでは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab’に対する名称である。F(ab’)抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生産された。抗体断片の他の化学結合もまた知られている。
【0095】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFVが抗原結合に望まれる構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインの間に更に含む。scFvの概説については、例えば、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, (Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315を参照のこと。
【0096】
「ダイアボディ」という用語は、二つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、その断片は、同一ポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは二価でも二重特異性でもよい。ダイアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson等, Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもHudson等, Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0097】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、例えば、少量で存在しうる可能な変異、例えば天然に生じる変異を除き、その集団を構成する個々の抗体が同一である。従って、「モノクローナル」という修飾語は、別々の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。所定の実施態様では、そのようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、ここで、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られた。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような、複数のクローンからの独特のクローンの選択とすることができる。選択された標的結合配列を更に改変させることにより、例えば標的に対する親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養中におけるその生成を改善し、インビボでの免疫原性を低減させ、多重特異性抗体を作製することなどが可能になること、また、改変させた標的結合配列を含む抗体もまた本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、他の免疫グロブリンで典型的には汚染されていないという点で有利である。
【0098】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495-97 (1975);Hongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995);Harlow 等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2版 1988);Hammerling等 : Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージ-ディスプレイ技術(例えば、Clackson等, Nature, 352: 624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132 (2004)参照)、並びに、ヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子又はヒト免疫グロブリン座位の一部もしくは全部を有するヒト又はヒト様抗体を動物において産生させる技術(例えば、国際公開第1998/24893号;同第1996/34096号;同第1996/33735号;同第1991/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362: 255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016;Marks等, Bio/Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996);及びLonberg等, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)参照)を含む様々な技術により作製することができる。
【0099】
ここでのモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一もしくは相同であるが、鎖の残りが別の種に由来する抗体又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一もしくは相同である「キメラ」抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体の断片を、特に含む(例えば、米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984)を参照)。キメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば、対象とする抗原でマカクザルを免疫化することにより生成される抗体に由来する、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。
【0100】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含みうる。これら修飾は、抗体性能を更に洗練させるためになされうる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの全てを実質的に含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。更なる詳細については、例えばJones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。例えば、Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);並びに米国特許第6982321号及び同第7087409号もまた参照のこと。
【0101】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有し、及び/又はここに開示されるヒト抗体を作製するための何れかの技術を使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野で知られた様々な技術を使用して生成することができる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製にまた利用可能であるものは、Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載の方法である。van Dijk及びvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原を、抗原曝露に応答してこのような抗体を生成するように修飾されているが、その内因性座位が無能にされているトランスジェニック動物、例えば免疫化キセノマウスに投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6075181号及び6150584号を参照)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により作製されたヒト抗体に関するLi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)をまた参照のこと。
【0102】
ここで使用される場合、「超可変領域」、「HVR」又は「HV」という用語は、配列が超可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、VHに三つ(H1、H2、H3)、VLに三つ(L1、L2、L3)の計六つのHVRを含む。天然抗体では、H3とL3が六つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3は抗体に高度な特異性を付与するのに独特の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu等, Immunity 13:37-45 (2000);Johnson及びWu, in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo編, Human Press, Totowa, N.J., 2003)を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は、軽鎖の非存在下で機能的で安定である。例えば、Hamers-Casterman等, Nature 363:446-448 (1993);Sheriff等, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照のこと。
【0103】
複数のHVRの描写が使用されており、ここに包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を指す(Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造的ループとの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の解析に基づく。これらのHVRの各々からの残基は以下に記される。
【0104】
【0105】
HVRは、次のような「伸長HVR」を含みうる:VLの24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)及び89~97又は89~96(L3)、並びにVHの26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基には、これらの定義の各々に対して、上掲のKabat等に従って番号が付される。
【0106】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義されているHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0107】
「Kabatの可変ドメイン残基番号付け」又は「Kabatのアミノ酸位置番号付け」という用語及びそれらの変形語は、上掲のKabat等の抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対して使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVRの短縮物又はそれらへの挿入物に相当する、より少ないアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによれば残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82b、及び82cなど)を含みうる。残基のKabat番号付けは、「標準的な」Kabat番号付け配列との抗体の配列の相同性がある領域におけるアラインメントにより、所与の抗体について決定されうる。
【0108】
Kabat番号付けシステムは、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す場合に一般に使用される(例えば、Kabat等, Sequences of Immunological Interest. 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、一般に「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」が使用される(例えば、上掲のKabat等に報告されたEUインデックス)。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0109】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapata等(1995 Protein Eng, 8(10):1057-1062)に記載される抗体を指す。簡潔には、これら抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデム型Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性でありうる。
【0110】
ここで使用される場合、「結合する」、「~に特異的に結合する」、又は「~に特異的」という用語は、生体分子を含む分子の異種集団の存在下における標的の存在を決定付ける、標的と抗体の間の結合などの測定可能で再生可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープでありうる)に結合し又は特異的に結合する抗体は、この標的に対し、他の標的に結合するより高い親和性、結合活性で、より容易に、及び/又はより長い期間にわたって結合する抗体である。一実施態様では、抗体の無関係な標的への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。所定の実施態様では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd値)を有する。所定の実施態様では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間に保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施態様では、特異的な結合は、必須ではないが排他的結合を含みうる。
【0111】
II.PD-1軸結合アンタゴニスト
ここに提供されるものは、治療有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含む、がんに罹患した患者を治療する方法であって、患者から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている方法である。ここにまた提供されるものは、がんに罹患した患者が、PD-1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性があるかどうかを決定するための方法である。例えば、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。PD-1(プログラム死1)は、当該技術分野では「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」及び「SLEB2」とまた呼ばれる。例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q15116に示されている。PD-L1(プログラム死リガンド1)はまた当該技術分野では「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」と呼ばれる。例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されている。PD-L2(プログラム死リガンド2)はまた当該技術分野では、「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、及び「PDL2」と呼ばれる。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9BQ51に示されている。幾つかの実施態様では、PD-1、PD-L1、及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1及びPD-L2である。
【0112】
幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーに対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーはPD-L1及び/又はPD-L2である。別の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーに対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナーはPD-1及び/又はB7-1である。別の実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーに対する結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合パートナーはPD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドでありうる。
【0113】
幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。幾つかの実施態様では、抗PD-1抗体は、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、MPDL3280A、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群より選択される。抗体YW243.55.S70は、国際公開第2010/077634号に記載される抗PD-L1である。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載される抗PD-L1抗体である。MEDI4736は、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載される抗PD-L1モノクローナル抗体である。MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、又はニボルマブとしても知られるMDX-1106は、国際公開第2006/121168号に記載される抗PD-1抗体である。ランブロリズマブとしてもまた知られているMK-3475は、国際公開第2009/114335号に記載される抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されるPD-L2-Fc融合可溶型受容体である。
【0114】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間の結合及び/又はPD-L1とB7-1の間の結合を阻害することができる。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はヒト化抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はヒト抗体である。
【0115】
この発明の方法に有用な抗PD-L1抗体、並びにその作製方法の例は、PCT特許出願の国際公開第2010/077634号、国際公開第2007/005874号、国際公開第2011/066389号、及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載されており、それら特許文献は出典明示によりここに援用される。この発明に有用な抗PD-L1抗体(そのような抗体を含む組成物を含む)は、タキサンと組み合わせてがんを治療するために使用されうる。
【0116】
[抗PD-1抗体]
幾つかの実施態様では、抗PD-1抗体はMDX-1106である。「MDX-1106」の別名には、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、又はニボルマブが含まれる。幾つかの実施態様では、抗PD-1抗体はニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。また更なる実施態様では、配列番号:1の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は配列番号:2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗PD-1抗体が提供される。また更なる実施態様では、重鎖及び/又は軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号:1)
に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有し、かつ
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:2)
に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0117】
[抗PD-L1抗体]
幾つかの実施態様では、製剤中の抗体は、重鎖及び/又は軽鎖配列中に少なくとも一つのトリプトファン(例えば、少なくとも二つ、少なくとも三つ、又は少なくとも四つ)を含む。幾つかの実施態様では、アミノ酸トリプトファンは、抗体のHVR領域、フレームワーク領域及び/又は定常領域中にある。幾つかの実施態様では、抗体は、HVR領域に二つ又は三つのトリプトファン残基を含む。幾つかの実施態様では、製剤中の抗体は抗PD-L1抗体である。PDL1、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hとしても知られるPD-L1(プログラム死リガンド1)は、膜貫通タンパク質であり、PD-1とのその相互作用はT細胞活性化及びサイトカイン産生を阻害する。幾つかの実施態様では、ここに記載の抗PD-L1抗体はヒトPD-L1に結合する。ここに記載の方法で使用することができる抗PD-L1抗体の例は、その全体が出典明示によりここに援用されるPCT特許出願の国際公開第2010/077634A1号及び米国特許第8217149号に記載されている。
【0118】
幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間及び/又はPD-L1とB7-1の間の結合を阻害することができる。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はヒト化抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はヒト抗体である。
【0119】
国際公開第2010/077634A1号及び米国特許第8217149号に記載される抗PD-L1抗体は、ここに記載される方法に使用されうる。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、配列番号:3の重鎖可変領域配列及び/又は配列番号:4の軽鎖可変領域配列を含む。また更なる実施態様では、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号:3)
に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有し、かつ
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:4)
に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0120】
一実施態様では、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを含み、ここで、
(a)HVR-H1配列はGFTFSXSWIH(配列番号:5)であり;
(b)HVR-H2配列はAWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号:6)であり;
(c)HVR-H3配列はRHWPGGFDY(配列番号:7)であり;
更にここで、XはD又はGであり;XはS又はLであり;XはT又はSである。特定の一態様では、XはDであり;XはSであり、XはTである。
【0121】
別の態様では、ポリペプチドは、式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従ってHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列を更に含む。また別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、フレームワーク配列の少なくとも一つが次の通りである:
HC-FR1がEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:8)である。
HC-FR2がWVRQAPGKGLEWV(配列番号:9)である。
HC-FR3がRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:10)である。
HC-FR4がWGQGTLVTVSA(配列番号:11)である。
【0122】
また更なる態様では、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組み合わされ、ここで、
(a)HVR-L1配列はRASQXTXA(配列番号:12)であり;
(b)HVR-L2配列はSASXLX10S,(配列番号:13)であり;
(c)HVR-L3配列はQQX11121314PX15T(配列番号:14)であり;
ここで、XはD又はVであり;XはV又はIであり;XはS又はNであり;XはA又はFであり;XはV又はLであり;XはF又はTであり;X10はY又はAであり;X11はY、G、F、又はSであり;X12はL、Y、F又はWであり;X13はY、N、A、T、G、F又はIであり;X14はH、V、P、T又はIであり;X15はA、W、R、P又はTである。また更なる態様では、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。
【0123】
また更なる態様では、軽鎖は、式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従ってHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含む。また更なる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、フレームワーク配列の少なくとも一つは次の通りである:
LC-FR1がDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:15)であり
LC-FR2がWYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:16)であり、
LC-FR3がGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:17)であり、
LC-FR4がFGQGTKVEIKR(配列番号:18)である。
【0124】
別の実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体又は抗原結合断片が提供され、ここで、
(a)重鎖はHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、更に、
(i)HVR-H1配列はGFTFSXSWIH;(配列番号:5)であり、
(ii)HVR-H2配列はAWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号:6)であり、
(iii)HVR-H3配列はRHWPGGFDY(配列番号:7)であり、かつ
(b)軽鎖はHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含み、更に、
(i)HVR-L1配列はRASQXTXA(配列番号:12)であり、
(ii)HVR-L2配列はSASXLX10S(配列番号13)であり、及び
(iii)HVR-L3配列はQQX11121314PX15T(配列番号:14)であり、
ここで、XはD又はGであり;XはS又はLであり;XはT又はSであり;XはD又はVであり;XはV又はIであり;XはS又はNであり;XはA又はFであり;XはV又はLであり;XはF又はTであり;X10はY又はAであり;X11はY、G、F、又はSであり;X12はL、Y、F又はWであり;X13はY、N、A、T、G、F又はIであり;X14はH、V、P、T又はIであり;X15はA、W、R、P又はTである。特定の態様では、XはDであり;XはSであり、XはTである。別の態様では、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。また別の態様では、XはDであり;XはSであり、XはTであり、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり、及びX15はAである。
【0125】
更なる態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、かつ軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また更なる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:8、9、10及び11として規定される。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:15、16、17及び18として規定される。
【0126】
また更なる特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。また更なる特定の態様では、抗体は低下した又は最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクター不足Fc変異」又は非グリコシル化に起因する。また更なる実施態様では、エフェクター不足Fc変異は、定常領域におけるN297A又はD265A/N297A置換である。
【0127】
また別の実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖は、GFTFSDSWIH(配列番号:19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:20)及びRHWPGGFDY(配列番号:21)に対してそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含むか、又は
(b)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号:22)、SASFLYS(配列番号:23)及びQQYLYHPAT(配列番号:24)に対してそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。
【0128】
別の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、かつ軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:8、9、10及び11として規定される。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:15、16、17及び18として規定される。
【0129】
また更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。また更なる特定の態様では、抗体は低下した又は最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクター不足Fc変異」又は非グリコシル化に起因する。また更なる実施態様では、エフェクター不足Fc変異は、定常領域におけるN297A又はD265A/N297A置換である。
【0130】
別の更なる実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号:25)
に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、及び/又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:4)
に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0131】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、かつ軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:8、9、10及びWGQGTLVTVSS(配列番号:27)として規定される。
【0132】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:15、16、17及び18として規定される。
【0133】
また更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。また更なる特定の態様では、抗体は低下した又は最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の態様では、最小のエフェクター機能は原核細胞における生成に起因する。また更なる特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクター不足Fc変異」又は非グリコシル化に起因する。また更なる実施態様では、エフェクター不足Fc変異は、定常領域におけるN297A又はD265A/N297A置換である。
【0134】
更なる態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、かつ軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また更なる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列の一又は複数は次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号:29)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWVA(配列番号:30)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:10)
HC-FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号:27)。
【0135】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列の一又は複数は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:15)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:16)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:17)
LC-FR4 FGQGTKVEIK(配列番号:28)。
【0136】
また更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。また更なる特定の態様では、抗体は低下した又は最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクター不足Fc変異」又は非グリコシル化に起因する。また更なる実施態様では、エフェクター不足Fc変異は、定常領域におけるN297A又はD265A/N297A置換である。
【0137】
また別の実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(c)重鎖は、GFTFSDSWIH(配列番号:19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:20)及びRHWPGGFDY(配列番号:21)に対してそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含み、及び/又は
(d)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号:22)、SASFLYS(配列番号:23)及びQQYLYHPAT(配列番号:24)に対してそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。
【0138】
別の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、かつ軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のようにHVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:8、9、10及びWGQGTLVTVSSASTK(配列番号:31)として規定される。
【0139】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列の一又は複数は、配列番号:15、16、17及び18として規定される。また更なる特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。また更なる特定の態様では、抗体は低下した又は最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクター不足Fc変異」又は非グリコシル化に起因する。また更なる実施態様では、エフェクター不足Fc変異は、定常領域におけるN297A又はD265A/N297A置換である。
【0140】
また更なる実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号:26)
に対して少なくとも85%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:4)
に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0141】
幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、軽鎖可変領域配列は、配列番号:4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、重鎖可変領域配列は、配列番号:26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、軽鎖可変領域配列は、配列番号:4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有し、かつ重鎖可変領域配列は、配列番号:26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、重鎖及び/又は軽鎖のN末端における1、2、3、4又は5のアミノ酸残基が、欠失され、置換され又は修飾されうる。
【0142】
更なる実施態様では、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号:32)
に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、及び/又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:33)
に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0143】
幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、軽鎖配列は、配列番号:33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、重鎖配列は、配列番号:32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、軽鎖配列は、配列番号:33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ重鎖配列は、配列番号:32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0144】
幾つかの実施態様では、単離された抗PD-L1抗体は非グリコシル化型である。抗体のグリコシル化は典型的にはN結合又はO結合の何れかである。N結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合に対する認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらトリペプチド配列の何れかの存在が、潜在的なグリコシル化部位をつくる。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンがまた使用されてもよい。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上記トリペプチド配列の一つ(N結合グリコシル化部位のもの)が除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成される。改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン又はスレオニン残基を別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン又は保存的置換)で置換することによりなされうる。
【0145】
ここでの実施態様の何れにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えばUniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1又はそのバリアントに結合することができる。
【0146】
また更なる実施態様では、ここに記載される抗体の何れかをコードする単離された核酸が提供される。幾つかの実施態様では、核酸は、前述の抗PD-L1抗体の何れかをコードする核酸の発現に適したベクターを更に含む。また更なる特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に適した宿主細胞中にある。また更なる特定の態様では、宿主細胞は真核細胞又は原核細胞である。また更なる特定の態様では、真核細胞は哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0147】
抗体又はその抗原結合断片は、当該技術分野において知られている方法を使用して、例えば発現に適した形態の前述の抗PD-L1抗体又は抗原結合断片の何れかをコードする核酸を含む宿主細胞を、そのような抗体又は断片を産生するために適した条件下で培養し、及び抗体又は断片を回収することを含む方法により、作製することができる。
【0148】
III.抗体調製物
ここに記載される抗体は、抗体を作製するための当該技術分野で利用可能な技術を使用して調製され、その例示的な方法を、次のセクションでより詳細に説明する。
【0149】
抗体は、対象の抗原(例えば、PD1(例えばヒトPD-1)、PD-L1(例えばヒトPD-L1)、PD-L2(例えばヒトPD-L2)等々)に対するものである。好ましくは、障害に罹患した哺乳動物に対する抗体の投与は、その哺乳動物に治療的ベネフィットをもたらしうる。
【0150】
所定の実施態様では、ここで提供される抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0151】
一実施態様では、次のアッセイにより記載されるように、Kdは、目的の抗体のFab型とその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。滴定系列の非標識抗原の存在下で最小濃度の(125I)標識抗原でFabを平衡化し、ついで抗Fab抗体被覆プレートで結合抗原を捕捉することによって、抗原に対するFabの溶液結合親和性が測定される(例えば、Chen等, J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照)。アッセイ条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩被覆し、その後PBS中の2%(w/v)のウシ血清アルブミンで2~5時間室温(およそ23℃)でブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)において、100pM又は26pM[125I]の抗原を、段階希釈した対象のFabと混合する。ついで対象のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションは、平衡状態に達したことを確実にするために更に長い時間にわたって(例えば約65時間)継続してもよい。その後、混合物を捕捉プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。ついで、溶液を除去し、PBS中の0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT-20TM;Packard)を加え、プレートをTOPCOUNTTMガンマ計測器(Packard)で10分間計測する。最大結合の20%以下が得られるFabの濃度が、競合結合アッセイでの使用のために選択される。
【0152】
別の実施態様によれば、およそ10応答単位(RU)で固定抗原CM5チップを用いた25℃のBIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用してKdを測定する。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIACORE, Inc.)を、供給者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈した後、結合タンパク質の応答単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流量で注入する。抗原の注入後、未反応群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動態測定のため、Fabの2倍段階希釈(0.78nMから500nM)を、25℃において約25μl/分の流量で、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合速度(kon)及び解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen等, J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照のこと。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる会合速度が10-1-1を上回る場合、会合速度は、分光計、例えばストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)で測定して、漸増濃度の抗原の存在下、25℃においてPBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって測定することができる。
【0153】
(i)抗原調製物
場合によっては他の分子にコンジュゲートされる、可溶型抗原又はその断片を、抗体を作製するための免疫原として使用することができる。受容体などの膜貫通分子では、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫原として使用することができる。このような細胞は、天然源(例えば、がん細胞株)に由来するものであり得、又は膜貫通分子を発現するように組換え技術によって形質転換された細胞でありうる。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には明らかであろう。
【0154】
(ii)所定の抗体ベース法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントの複数回にわたる皮下(sc)又は腹腔内(ip)注入により動物内で産生される。関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又はダイズトリプシン阻害因子に、二官能性又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRN=C=NR(ここで、RとRは異なるアルキル基)にコンジュゲートさせることが有用である場合がある。
【0155】
動物は、例えば100μg又は5μgのタンパク質又はコンジュゲート(それぞれ、ウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3体積と併せて、この溶液を複数部位に皮内注射することにより、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化される。一か月後、動物は、複数部位への皮下注射により、完全フロイントアジュバントの元の量の1/5から1/10のペプチド又はコンジュゲートで追加免疫される。7日から14日後、動物を出血させ、血清を、抗体力価についてアッセイする。動物を、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートを用いて追加免疫されるが、異なるタンパク質に、及び/又は異なる架橋試薬により、コンジュゲートされる。また、コンジュゲートは、タンパク質融合として組換え細胞培養において作製することができる。また、ミョウバンのような凝集剤が、免疫応答を増強するために適切に使用される。
【0156】
本発明のモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)により記載され、更にヒト-ヒトハイブリドーマに関して例えば、Hongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995)、Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2版 1988);Hammerling等, in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)、及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)に記載されたハイブリドーマ法を使用して作製することができる。更なる方法には、例えば、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生に関する米国特許第7189826号に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)が、Vollmers及びBrandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005)並びにVollmers及びBrandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0157】
他の様々なハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号;同第2006/183887号(完全ヒト抗体)、同第2006/059575号;同第2005/287149号;同第2005/100546号;及び同第2005/026229号;並びに米国特許第7078492号及び同第7153507号を参照のこと。ハイブリドーマ法を使用するモノクローナル抗体の産生のための例示的なプロトコールは次のように記載される。一実施態様では、マウス又はハムスターなどの他の適切な宿主動物が免疫化され、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を生成し又は生成することができるリンパ球を誘発する。本発明のポリペプチド又はその断片とアジュバント、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)/ジクリノミコール酸トレハロース(TDM)(Ribi Immunochem. Research, Inc., Hamilton, MT)の複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって、抗体が動物中で産生される。本発明のポリペプチド(例えば抗原)又はその断片は、当該技術分野でよく知られた方法、例えばその幾つかがここに更に記載される組換え法を使用して、調製されうる。免疫化した動物由来の血清が抗抗原抗体についてアッセイされ、場合によっては追加免疫が行われる。抗抗原抗体を産生する動物のリンパ球が単離される。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化されうる。
【0158】
ついで、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986)を参照のこと。効率よく融合し、選択された抗体産生細胞により抗体の安定した高レベル産生をサポートし、HAT培地などの培地に対して感受性である骨髄腫細胞が、使用されうる。例示的な骨髄腫細胞株には、限定されないが、マウス骨髄種株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center(San Diego, Calif. USA)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍から誘導されるものやAmerican Type CultureCollection(Rockville, Md. USA)から入手可能なSP-2又はX63-Ag8-653細胞が含まれる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0159】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、適切な培地中、例えば、未融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を含む培地に播種され、培養される。例えば、親骨髄腫細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)がない場合、ハイブリドーマの培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを典型的には含むことになり(HAT培地)、これら物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。好ましくは、例えば、Even等, Trends in Biotechnology, 24(3), 105-108 (2006)に記載されるように、無血清ハイブリドーマ細胞培養方法が、ウシ胎仔血清などの動物由来の血清の使用を低減するために使用される。
【0160】
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を向上させるツールとしてのオリゴペプチドが、Franek, Trends in Monoclonal Antibody Research, 111-122 (2005)に記載されている。具体的には、標準の培地が、所定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)で、又はタンパク質加水分解物の画分で濃縮され、アポトーシスが、3~6個のアミノ酸残基からなる合成オリゴペプチドにより有意に抑制されうる。ペプチドは、ミリモル又はそれより高い濃度で存在する。
【0161】
ハイブリドーマ細胞が増殖する培地は、本発明の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされうる。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定されうる。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析により決定されうる。例えば、Munson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)を参照のこと。
【0162】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンが、希釈手順を制限することによりサブクローニングされ、標準的方法により増殖させられうる。例えば、上掲のGodingを参照のこと。この目的のための好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させてもよい。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、一般的な免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどにより、培地、腹水、又は血清から適切に分離される。ハイブリドーマ細胞からタンパク質を単離するための一手順が、米国特許出願公開第2005/176122号及び米国特許第6919436号に記載されている。その方法は、結合工程において離液性塩などの最小の塩を使用することと、好ましくはまた溶出工程において少量の有機溶媒を使用することを含む。
【0163】
(iii)ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性又は活性群を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離されうる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作成して所望の結合特性を有する抗体のそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が、当該技術分野で知られている。更なる方法は、例えば、Hoogenboom等, in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien等編, Human Press, Totowa, NJ, 2001)に概説があり、更に例えば、McCafferty等, Nature 348:552-554;Clackson等, Nature 352: 624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992);Marks及びBradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo編, Human Press, Totowa, NJ, 2003);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)に記載されている。
【0164】
所定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローニングし、ファージライブラリーにおいてランダムに再結合させ、これをついで、Winter等, Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片の何れかとして抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対して高親和性の抗体を提供する。あるいは、Griffiths等, EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されるように、ナイーブなレパートリーを、如何なる免疫感作も無く、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対して抗体の単一起源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローニングすることができる。最後に、ナイーブなライブラリーは、幹細胞由来の再配置されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用して高度に可変性のCDR3領域をコードし、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)により記載されるようにインビトロでの再配置を達成することにより、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許刊行物には、例えば米国特許第5750373号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、及び第2009/0002360号が含まれる。
【0165】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、ここではヒト抗体又はヒト抗体の断片とみなされる。
【0166】
(iv)キメラ、ヒト化及びヒト抗体
所定の実施態様では、ここで提供される抗体はキメラ抗体である。所定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号、及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類由来の可変領域)とヒト定常領域とを含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0167】
所定の実施態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するために、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を保持したままヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、かつFR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、一又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、場合によっては、ヒト定常領域の少なくとも一部をまた含むであろう。幾つかの実施態様では、ヒト化抗体の幾つかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復させ又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0168】
ヒト化抗体とそれらの作製方法は、例えば、Almagro及びFransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において概説され、更に、例えばRiechmann等, Nature 332:323-329 (1988);Queen等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989);米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号;Kashmiri等, Methods 36:25-34 (2005)(SDR(a-CDR)グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991)(「リサーフェシング」を記載);Dall’Acqua等, Methods 36:43-60 (2005)(「FRシャッフリング」を記載);及びOsbourn等, Methods 36:61-68 (2005)及びKlimka等, Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」手法を記載)に記載されている。
【0169】
ヒト化に使用されうるヒトフレームワーク領域には、限定されないが、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims等 J. Immunol. 151:2296 (1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter等 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);及びPresta等 J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照);及びFRライブラリーのスクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca等, J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997)及びRosok等, J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照)が含まれる。
【0170】
所定の実施態様では、ここで提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られている様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は一般にvan Dijk及びvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001)とLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に記載されている。
【0171】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を生成するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製することができる。そのような動物は、典型的には内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するかもしくは動物の染色体にランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含む。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座が一般に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005)を参照のこと。また、例えばXENOMOUSETM技術を記載している米国特許第6075181号及び第6150584号、HUMAB(登録商標)技術を記載している米国特許第5770429号、K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7041870号、及びVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号を参照のこと。そのような動物により産生されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、更に改変されうる。
【0172】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner等, J. Immunol., 147: 86 (1991)を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により作製されるヒト抗体もまたLi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)に記載されている。更なる方法には、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載)及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)もまたVollmers及びBrandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005)並びにVollmers及びBrandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0173】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによってもまた作製されうる。ついで、そのような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0174】
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化などの常套的手段によって、又は組換え技術によって作製されうる。所定の状況下では、全抗体よりも抗体断片を使用することに利点がある。より小さいサイズの断片であると、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセス改善につながりうる。所定の抗体断片の概説については、Hudson等 (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照のこと。
【0175】
抗体断片を生成するために様々な技術が開発されてきている。伝統的には、これら断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);及びBrennan等, Science, 229:81 (1985)を参照のこと)。しかしながら、これら断片は、今では組換え宿主細胞により直接生成することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片は全て、大腸菌中に発現され、そこから分泌され得、よってこれらの断片の多量の生産が容易となる。抗体断片は、上で検討された抗体ファージライブラリーから単離されうる。あるいは、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的に結合されてF(ab’)断片を形成しうる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167 (1992))。別の手法によれば、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離されうる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)断片は、米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片の生成のためのその他の技術は、当業者には明らかであろう。所定の実施態様では、抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。例えば、国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;及び同第5587458号を参照のこと。Fv及びscFvは定常領域を欠いたインタクトな結合部位を有する唯一の種であり;従って、それらはインビボ使用中の非特異的結合減少に適している場合がある。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ又はカルボキシ末端の何れかにエフェクタータンパク質の融合を生じるように構築されうる。上掲のAntibody Engineering, Borrebaeck編を参照のこと。抗体断片はまた、例えば米国特許第5641870号に記載されるように「直鎖状抗体」であってもよい。そのような直鎖状抗体は、単一特異性又は二重特異性でありうる。
【0176】
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し、そのエピトープは通常異なる抗原に由来している。そのような分子は通常二つの異なるエピトープにのみ結合するが(すなわち二重特異性抗体、BsAb)、この表現をここで使用する場合、三重特異性抗体のような更なる特異性を有する抗体も包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)二重特異性抗体)として調製されうる。
【0177】
二重特異性抗体を作製するための方法は当該技術分野で知られている。完全長二重特異性抗体の伝統的な生成は、二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づいており、二本の鎖は異なる特異性を有する(例えば、Millstein等, Nature, 305:537-539 (1983)を参照)。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖がランダムに取り合わされるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生成し、そのうち1個のみが正しい二重特異性構造を有する。通常アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり面倒であり、生成物収率は低い。類似の手順が、国際公開第93/08829号とTraunecker等, EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている
【0178】
当該技術分野で知られている二重特異性抗体を作製するための一手法は、「ノブ・イントゥ・ホール」又は「空洞内隆起(protuberance-into-cavity)」法(例えば、米国特許第5731168号参照)である。この手法では、二つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)がそれぞれ界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面が他方の免疫グロブリンポリペプチドの対応する界面と相互作用することにより、二つの免疫グロブリンポリペプチドが会合する。これら界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」又は「隆起」(これらの用語はここでは互換可能に使用されうる)が、他方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」又は「空洞」(これらの用語はここでは互換可能に使用されうる)に対応するように改変されうる。幾つかの実施態様では、ホールは、ノブと同じか同様のサイズであり、二つの界面が相互作用するとき、一方の界面のノブが他方の界面の対応するホール内に配置可能であるように、適切に配置される。理論に拘束されることを望まないが、このことは、ヘテロ多量体を安定させ、他の種、例えばホモ多量体よりヘテロ多量体の形成を促すと考えられる。幾つかの実施態様では、この手法は、異なるエピトープに対する結合特異性を有する二つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を生成する、二つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促すために使用されうる。
【0179】
幾つかの実施態様では、ノブは、小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖で置き換えることにより構築されうる。幾つかの実施態様では、ホールは、大きなアミノ酸側鎖を、より小さな側鎖で置き換えることにより構築されうる。ノブ又はホールは、元の界面に存在してもよく、又は合成的に導入されてもよい。例えば、ノブ又はホールは、少なくとも一つの「元の」アミノ酸残基を少なくとも一つの「移入」アミノ酸残基で置き換えるように、界面をコードする核酸配列を改変することにより、合成的に導入することができる。核酸配列を改変するための方法には、当該技術分野で周知の標準的な分子生物学的技術が含まれうる。様々なアミノ酸残基の側鎖体積を次の表に示す。幾つかの実施態様では、元の残基は小さな側鎖体積を有し(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、スレオニン、又はバリン)、ノブを形成するための移入残基は、天然に生じるアミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンを含みうる。幾つかの実施態様では、元の残基はより大きな側鎖体積を有し(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)、ホールを形成するための移入残基は、天然に生じるアミノ酸であり、アラニン、セリン、スレオニン、及びバリンを含みうる。
【0180】
【0181】
幾つかの実施態様では、ノブ又はホールを形成するための元の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造に基づいて同定される。三次元構造を得るための当該技術分野で知られている技術にはX線結晶学及びNMRが含まれうる。幾つかの実施態様では、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これら実施態様では、ヒトIgGのCH3/CH3界面は、四つの逆平行β鎖上に位置する各ドメインに16の残基を含む。理論に拘束されることを望まないが、変異した残基は、パートナーCH3ドメイン内の相補的なホールではなく周囲の溶媒にノブが収容される危険を最小化するために、好ましくは二つの中央の逆平行β鎖上に位置する。幾つかの実施態様では、二つの免疫グロブリンポリペプチドに対応するノブとホールを形成する変異は、次の表に提供される一又は複数の対に対応する。
【0182】
【0183】
幾つかの実施態様では、免疫グロブリンポリペプチドは、上の表2に列挙された一又は複数のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。幾つかの実施態様では、二重特異性抗体は、表2の左欄に列挙された一又は複数のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第一免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右欄に列挙された一又は複数の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第二免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0184】
上で検討されたDNAの変異に続き、一又は複数の対応するノブ又はホール形成変異で修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、標準的な組換え技術及び当該技術分野で知られている細胞系を使用して発現され、精製されうる。例えば、米国特許第5731168号;同第5807706号;同第5821333号;同第7642228号;同第7695936号;同第8216805号;米国特許出願公開第2013/0089553号;及びSpiess等, Nature Biotechnology 31: 753-758, 2013を参照のこと。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、大腸菌などの原核宿主細胞、又はCHO細胞などの真核生物宿主細胞を使用して産生されうる。対応するノブ及びホールを有する免疫グロブリンポリペプチドは、共培養物中の宿主細胞に発現されて、ヘテロ多量体として一緒に精製されうるか、又は単一の培養物中に発現されて別々に精製され、インビボでアセンブリされうる。幾つかの実施態様では、細菌宿主細胞の二つの株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)が、当該技術分野で知られている標準的な細菌培養技術を使用して共培養される。幾つかの実施態様では、二つの株は、例えば、培養物中において等しい発現レベルを達成するために、特定の比で混合されうる。幾つかの実施態様では、二つの株は、50:50、60:40、又は70:30の比で混合されうる。ポリペプチド発現の後、細胞は一緒に溶解され得、タンパク質が抽出されうる。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在比の測定を可能にする当該技術分野で知られた標準的技術は、サイズ排除クロマトグラフィーを含みうる。幾つかの実施態様では、各々の修飾免疫グロブリンポリペプチドが、標準的組換え技術を使用して別々に発現され、インビトロで一緒にアセンブリされうる。アセンブリは、例えば、各修飾免疫グロブリンポリペプチドを精製し、それらを等しい質量で一緒に混合及びインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールでの処理により)、濃縮し、ポリペプチドを再酸化させることにより達成されうる。形成された二重特異性抗体は、陽イオン交換クロマトグラフィーを含む標準的技術を使用して精製され得、サイズ排除クロマトグラフィーを含む標準的な技術を使用して測定されうる。これら方法のより詳細な説明については、Spiess等, Nat Biotechnol 31:753-8, 2013を参照のこと。幾つかの実施態様では、修飾免疫グロブリンポリペプチドは、CHO細胞中に別々に発現され、上述の方法を使用してインビトロでアセンブリされうる。
【0185】
異なる手法によれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの間で行われる。典型的には、軽鎖結合に必要な部位を含む第一重鎖定常領域(CH1)が、融合体のうち少なくとも一つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により免疫グロブリン軽鎖とをコードしているDNAが別々の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主生物中に共トランスフェクトされる。これにより、構築に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす実施態様では、三つのポリペプチド断片の相互の割合を調節する際に大きな柔軟性がもたらされる。しかしながら、少なくとも二つのポリペプチド鎖が等しい比率で発現することで収率が高くなるとき、又はその比率が特に重要性を持たないとき、二つ又は三つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0186】
この手法の一実施態様では、二重特異性抗体は、一方のアームの第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供)とから構成される。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がない場合に容易な分離法が提供されるので、この非対称的構造が、不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出された。この手法は国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体作製の更なる詳細については、例えば、Suresh等, Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと。
【0187】
国際公開第96/27011号に記載された別の手法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作することにより、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化することができる。一つの界面は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面由来の一又は複数の小さいアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。より大きな側鎖と同一又は類似のサイズを有する相補的な「空洞」は、大きいアミノ酸側鎖を小さな側鎖(例えばアラニン又はトレオニン)で置き換えることにより、第二の抗体分子の界面上に形成される。これは、ヘテロ二量体の収率を、ホモ二量体などの他の所望されない最終生成物よりも高める機構を提供する。
【0188】
二重特異性抗体は、架橋又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方はアビジンに、他方はビオチンに結合されうる。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化するため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染症の治療のため(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号、及び欧州特許出願公開第03089号)に提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製されうる。好適な架橋剤は当該技術分野においてよく知られており、米国特許第4676980号において、多くの架橋技術と共に開示されている。
【0189】
抗体断片から二重特異性抗体を作製するための技術もまた文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体を、化学結合を使用して調製することができる。Brennan等, Science, 229: 81 (1985)には、インタクトな抗体をタンパク分解性に切断してF(ab’)断片を作製する手順が記載されている。これら断片をジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して隣接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。ついで、作製されたFab’断片をチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換する。ついで、Fab’-TNB誘導体の一方を、メルカプトエチルアミンを用いた還元によりFab’-チオールに再変換し、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化用薬剤として使用されうる。
【0190】
最近の進歩により、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができるFab’-SH断片を大腸菌から直接回収することが容易になった。Shalaby等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子の生成を記述している。各Fab’断片を大腸菌から別々に分泌させ、インビトロで定方向化学的カップリングに供して二重特異性抗体を形成する。
【0191】
組換え細胞培養物から直接、二重特異性抗体断片を作製して単離するための様々な技術がまた記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny等, J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により、二つの異なる抗体のFab’部分と連結された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されて単量体が形成され、ついで、再酸化されて抗体ヘテロ二量体が形成された。この方法は、抗体ホモ二量体の生成にもまた利用することができる。Hollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的メカニズムを提供した。その断片は、同一鎖上の二つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)と連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む。従って、一つの断片のV及びVドメインを、もう一つの断片の相補的なV及びVドメインと強制的に対形成させ、それにより二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略もまた報告されている。Gruber等, J. Immunol, 152:5368 (1994)参照。
【0192】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技術は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」又はBiTE(登録商標)手法である(例えば、国際公開第2004/106381号、同第2005/061547号、同第2007/042261号、及び同第2008/119567号参照)。この手法は、単一のポリペプチド上に配置された二つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一ポリペプチド鎖は、各々が、二つのドメイン間の分子内会合を可能にするために十分な長さのポリペプチドリンカーにより分離された可変重鎖(V)及び可変軽鎖(V)ドメインを有する、二つの単鎖Fv(scFv)断片を含む。この単一ポリペプチドは、二つのscFv断片の間にポリペプチドスペーサー配列を更に含む。各scFvは異なるエピトープを認識し、各scFvがその同族エピトープと結合するときに二つの異なる細胞型の細胞が近接するか又は繋がるように、これらエピトープは異なる細胞型に対して特異的でありうる。この手法の特定の一実施態様には、悪性細胞又は腫瘍細胞のような標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに結合した、T細胞上のCD3ポリペプチドのような免疫細胞によって発現される細胞表面抗原を認識するscFvが含まれる。
【0193】
単一ポリペプチドであるので、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当該技術分野で知られている何れかの原核細胞又は真核細胞発現系、例えば、CHO細胞株を使用して発現されうる。しかしながら、モノマーの意図された活性以外の生物学的活性を有しうる、単量体の二重特異性T細胞エンゲージャーを他の多量体種から分離するために、特定の精製技術(例えば、欧州特許出願公開第1691833号参照)が必要なこともある。例示的な一精製スキームでは、分泌されたポリペプチドを含む溶液を、先ず金属アフィニティークロマトグラフィーに供し、イミダゾール濃度の勾配を用いてポリペプチドを溶出させる。この溶出液は、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して更に精製され、ポリペプチドが、塩化ナトリウム濃度の勾配を用いて溶出される。最後に、この溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに供し、多量体種から単量体を分離する。
【0194】
二価より多い抗体も考慮される。例えば、三重特異性抗体が調製されうる。例えば、Tuft等 J. Immunol. 147: 60 (1991)を参照のこと。
【0195】
(vii)単一ドメイン抗体
幾つかの実施態様では、本発明の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む単一ポリペプチド鎖である。所定の実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, Mass.;例えば、米国特許第6248516B1号参照)。一実施態様では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部からなる。
【0196】
(viii)抗体バリアント
幾つかの実施態様では、ここに記載される抗体のアミノ酸配列修飾が考慮される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製されうる。そのような修飾は、例えば抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入、及び/又はそれの置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性を有する限り、欠失、挿入、及び置換の何れの組み合わせも最終コンストラクトに到達するように行なわれうる。アミノ酸改変は、配列が作製されるときに対象の抗体のアミノ酸配列に導入されうる。
【0197】
(ix)置換、挿入、及び欠失バリアント
所定の実施態様では、一又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発の目的の部位は、HVR及びFRを含む。好ましい置換は、「好ましい置換」と題して表3に示される。より実質的な変化は、「例示的置換」と題して表3に示され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされる。
【0198】
【0199】
アミノ酸は共通の側鎖特性に従ってグループ化することができる:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
f.芳香性:Trp、Tyr、Phe。
【0200】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一つのメンバーを別のクラスのものと交換することを必要とする。
【0201】
置換バリアントの一種は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の超可変領域残基の置換を伴う。一般には、更なる研究のために選択される得られたバリアントは、親抗体と比較して、所定の生物学的特性に修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の向上、免疫原性の低下)を有し、及び/又は親抗体の所定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、これは、例えば、ここに記載されるもののようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して、簡便に作製されうる。簡潔に言えば、一又は複数のHVR残基が変異させられ、変異抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0202】
改変(例えば、置換)は、例えば抗体親和性を向上させるために、HVRにおいて行うことができる。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で変異を受けるコドンによりコードされた残基(例えばChowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照)、及び/又はSDR(a-CDR)で行うことができ、得られたバリアントVH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリーから構築し選択し直すことによる親和性成熟が、例えばHoogenboom等 Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien等編, Human Press, Totowa, NJ, (2001)に記載されている。親和性成熟の幾つかの実施態様では、多様性が、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発)の何れかにより、成熟のために選択された可変遺伝子中に導入される。ついで、二次ライブラリーが作成される。ついで、ライブラリーが、所望の親和性を持つ抗体バリアントを同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、幾つかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるHVR指向性手法を含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に同定することができる。特に、CDR-H3及びCDR-L3がしばしば標的とされる。
【0203】
所定の実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、一又は複数のHVR内で生じうる。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的改変(例えばここで提供される保存的置換)をHVR内で行うことができる。このような改変は、HVR「ホットスポット」又はSDRの外側であってもよい。上に与えられたバリアントVH又はVL配列の所定の実施態様では、各HVRは不変であるか、又は多くとも一つ、二つ又は三つのアミノ酸置換しか含まない。
【0204】
突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されるように「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基又は標的残基群(例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGluなどの荷電残基)が同定され、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)により置き換えられる。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されうる。代替的に又は加えて、抗体と抗原の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基が、置換の候補として標的とされてもよいし、又は排除されてもよい。バリアントは、所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされうる。
【0205】
アミノ酸配列挿入物は、1残基から、100以上の残基を有するポリペプチドの長さに及ぶアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合体、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体を含む。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体の血清半減期を延ばすポリペプチド又は酵素(例えばADEPTのための)に対する抗体のN末端又はC末端への融合体を含む。
【0206】
(x)グリコシル化バリアント
所定の実施態様では、ここで提供される抗体は、抗体がグリコシル化される度合いを上昇させ又は低下させるように改変される。グリコシル化部位の抗体への付加又は欠失は、一又は複数のグリコシル化部位がつくり出され又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成することができる。
【0207】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する糖鎖を改変させることができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合により一般に結合した分岐状の二分岐オリゴ糖を典型的に含む。例えばWright等 TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照。オリゴ糖は、様々な糖鎖、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースを含みうる。幾つかの実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、所定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するためになされうる。
【0208】
一実施態様では、Fc領域に結合した糖鎖構造が、フコースが減少するか又はフコースを欠くFc領域を含む抗体バリアントが提供され、これはADCC機能を向上させうる。具体的には、ここでは、野生型CHO細胞において生成される同じ抗体上のフコースの量に対して減少したフコースを有する抗体が考慮される。すなわち、それらは、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを生むCHO細胞、例えば天然FUT8遺伝子を含むCHO細胞)によって生成された場合に有するであろう量より少ないフコースを有することを特徴とする。所定の実施態様では、抗体は、その上のN結合グリカンのうちの約50%、40%、30%、20%、10%、又は5%未満がフコースを含むものである。例えば、そのような抗体のフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%又は20%から40%である。所定の実施態様では、抗体は、その上のN-結合グリカンの何れもがフコースを有さない、すなわち、抗体が完全にフコースを伴わない、又はフコースを有さない、又はアフコシル化されている、抗体である。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定されて、Asn297に結合している全ての糖構造の合計(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)に対して、糖鎖中のAsn297に平均量のフコースを計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域(Fc領域残基のEu番号付け)のおよそ297位に位置するアスパラギン残基を指す;しかしながら、Asn297は、位置297の上流又は下流のおよそ±3アミノ酸に、すなわち抗体の軽微な配列変動に起因して、位置294と300の間にまた位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照のこと。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例には、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki等 J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);Yamane-Ohnuki等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka等 Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号;及び国際公開第2004/056312A1号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y.等, Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)が含まれる。
【0209】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分オリゴ糖を有する抗体バリアントが更に提供される。そのような抗体バリアントは、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。そのような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号;米国特許第6602684号;米国特許出願公開第2005/0123546号、及びFerrara等, Biotechnology and Bioengineering, 93(5): 851-861 (2006)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも一のガラクトース残基を持つ抗体バリアントもまた提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号;同第1998/58964号;及び同第1999/22764号に記載されている。
【0210】
所定の実施態様では、ここに記載されるFc領域を含む抗体バリアントは、FcγRIIIに結合することができる。所定の実施態様では、ここに記載されるFc領域を含む抗体バリアントは、ヒトエフェクター細胞の存在下においてADCC活性を有するか、又はヒト野生型IgG1Fc領域を含むこと以外は同じ抗体と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下で増加したADCC活性を有する。
【0211】
(xi)Fc領域バリアント
所定の実施態様では、一又は複数のアミノ酸修飾を、ここで提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域バリアントを作製することができる。Fc領域バリアントは、一又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含みうる。
【0212】
所定の実施態様では、本発明は、インビボでの抗体半減期は重要であるが、所定のエフェクター機能(例えば補体及びADCCなど)が不要であるか又は有害である用途に対して望ましい候補とならしめる、全てではないが幾つかのエフェクター機能を有する抗体バリアントを意図している。インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイは、CDC及び/又はADCC活性の低下/欠乏を確認するために実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体が、FcγR結合を欠く(従っておそらくADCC活性を欠く)がFcRn結合能を保持することを確認することができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5500362号(例えば、Hellstrom等 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照)及びHellstrom, I等, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);第5821337号(Bruggemann等, J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA;及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価されうる。また、C1q結合アッセイを、抗体がC1qに結合できず、よってCDC活性を欠くことを確認するために実施することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg等, Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg等, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定もまた当該分野で知られている方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova等, Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照)。
【0213】
エフェクター機能が低下した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの一又は複数の置換を伴うものが含まれる(米国特許第6737056号)。そのようなFc変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含め、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの二以上に置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。
【0214】
FcRへの結合が改善し又は減少した所定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照)。
【0215】
所定の実施態様では、抗体バリアントは、ADCCを改善する一又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334(残基のEU番号付け)に置換を含むFc領域を含む。例示的な実施態様では、抗体は、そのFc領域に次のアミノ酸置換:S298A、E333A、及びK334Aを含む。
【0216】
幾つかの実施態様では、例えば、米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載されるような、改変された(すなわち改善され又は低減された)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる改変がFc領域においてなされる。
【0217】
半減期が延長され、胎児への母性IgGの移動を担う(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976)及び Kim等, J. Immunol. 24:249 (1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合性が改善された抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hinton等)に記載されている。それら抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する一又は複数の置換を伴うFc領域を含む。そのようなFcバリアントは、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの一又は複数における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を伴うものを含む(米国特許第7371826号)。Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan及びWinter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;同第5624821号;及び国際公開第94/29351号をまた参照のこと。
【0218】
(xii)抗体誘導体
本発明の抗体は、当該技術分野で知られ、容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように更に改変されうる。所定の実施態様では、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定しないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキソラン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(単独重合体又はランダム共重合体)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール単独重合体、プロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性のために製造上の利点を有しうる。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が定まった条件下で治療に使用されるかどうかを含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0219】
(xiii)ベクター、宿主細胞、及び組換え法
抗体は、組換え法を使用して生成することもできる。抗抗原抗体の組換え生産では、抗体をコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、容易に単離され得、常套的な手順を使用して (例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定されうる。多くのベクターが利用可能である。ベクターの成分は、限定されないが、次のうちの一又は複数を一般に含む:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0220】
(a)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接的に組換えで生産されるだけではなく、シグナル配列又は成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産されうる。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され、プロセシング(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断)されるものである。天然抗体シグナル配列を認識しプロセシングしない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母分泌の場合、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(サッカロミセス及びクリベロマイセスα因子リーダーを含む)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダアルビカンスグルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載のシグナルによって置換されうる。哺乳動物細胞での発現では、哺乳動物シグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
【0221】
(b)複製開始点
発現及びクローニングベクターは両方とも、一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターが複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクター中では、この配列は、宿主の染色体DNAから独立してベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自己複製配列を含む。そのような配列は、様々な細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322からの複製開始点は、大部分のグラム陰性細菌に適しており、2μ,プラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞中におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製開始点成分は哺乳動物の発現ベクターには不要である(早期プロモーターを含むという理由のみでSV40開始点が通常使用されうる)。
【0222】
(c)選択遺伝子成分
発現及びクローニングべクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含みうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、又はテトラサイクリンに耐性を付与し、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えば、バシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼを供給するタンパク質をコードする。
【0223】
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子により首尾よく形質転換される細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、よって選択レジメンを生き延びる。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0224】
哺乳動物細胞のための適切な選択可能マーカーの別の例は、DHFR、グルタミンシンセターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの抗体コード核酸を取り込む能力を持つ細胞の同定を可能にするものである。
【0225】
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含む培地中で形質転換体を培養することにより同定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子を、任意の他の共形質転換核酸と共に増幅させる。内因性のDHFR活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)を使用することができる。
【0226】
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GSの阻害剤であるL-メチオニンスルホキシイミン(Msx)を含む培地中で形質転換体を培養することにより同定される。これらの条件下で、GS遺伝子を、任意の他の共形質転換核酸と共に増幅させる。GS選択/増殖系を、上述のDHFR選択/増殖系と組み合わせて使用してもよい。
【0227】
あるいは、対象の抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような別の選択可能マーカーで形質転換又は共形質転換された宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシン、又はG418などのアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択されうる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0228】
酵母での使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39 (1979))。trp1遺伝子は、ATCC番号44076又はPEP4-1のようなトリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の変異株のための選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。ついで、酵母宿主細胞ゲノムにおけるtrp1損傷の存在により、トリプトファンの非存在下における増殖による形質転換の検出に効果的な環境が提供される。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC20622又は38626)が、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドにより補完される。
【0229】
加えて、1.6μmの円形プラスミドpKD1から誘導されるベクターを、クリベロマイセス酵母の形質転換に使用することができる。あるいは、組換え仔ウシキモシンの大規模生産用の発現系が、クリベロマイセス・ラクティスに対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クリベロマイセスの工業用菌株による成熟した組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定なマルチコピー発現ベクターもまた開示されている。Fleer等, Bio/Technology, 9:968-975 (1991)。
【0230】
(d)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、抗体をコードする核酸に作用可能に連結されるプロモーターを含む。原核生物宿主との使用に適したプロモーターには、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターが含まれる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも適している。細菌系に使用されるプロモーターもまた、抗体をコードするDNAに作用可能に連結されたシャイン-ダルガーノ(S.D.)配列を含むであろう。
【0231】
真核生物のためのプロモーター配列は知られている。実質的に全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25から30塩基上流に位置するATリッチ領域を有している。多くの遺伝子の転写の開始から70から80塩基上流に見出されるもう一つの配列は、Nが任意のヌクレオチドでありうるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加に対するシグナルでありうるAATAAA配列がある。これら配列の全てが、真核生物発現ベクター中に適切に挿入される。
【0232】
酵母宿主と共に使用するための適切なプロモーター配列の例には、3-ホスホグリセラートキナーゼ、又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-ホスフェートイソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼのプロモーターが含まれる。
【0233】
他の酵母プロモーターは、増殖条件によって転写が制御されるという更なる利点を有する誘導性プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、並びにマルトース及びガラクトース利用に貢献する酵素のプロモーター領域である。酵母の発現において使用される適切なベクター及びプロモータは、欧州特許出願公開第73657号に更に記載されている。酵母エンハンサーもまた酵母プロモーターと共に有利に使用される。
【0234】
哺乳動物宿主細胞中のベクターからの抗体転写は、そのようなプロモーターが宿主細胞系と適合性である限り、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアドノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、サルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから、あるいは例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターなどの異種哺乳動物プロモーターから、熱ショックプロモーターから得られたプロモーターによって、制御することができる。
【0235】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製開始点をまた含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを使用する哺乳動物宿主中でDNAを発現する系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は、米国特許第4601978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞中におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature 297:598-601 (1982)をまた参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列をプロモーターとして使用することができる。
【0236】
(e)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による本発明の抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が今は知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルスからのエンハンサーが使用されるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100~270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化の増強要素についてYaniv, Nature 297:17-18 (1982)をまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5’部位に位置している。
【0237】
(f)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列をまた含む。そのような配列は、真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの5’、及び時には3’の未翻訳領域から一般に入手できる。これら領域は、抗体をコードするmRNAの未翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示される発現ベクターを参照のこと。
【0238】
(g)宿主細胞の選択及び形質転換
ここでのベクター中でのDNAのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、上記の原核細胞、酵母、又は高等真核細胞である。この目的のための適切な原核生物には、グラム陰性又はグラム陽性生物のような真正細菌、例えば、大腸菌類のような腸内細菌科、例えば、大腸菌、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えば霊菌、及びシゲラ属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバチルス・リケニフォルミス(例えば、1989年4月12日公開のDD266710に開示されたバチルス・リケニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌、及びストレプトマイセス属が含まれる。一つの好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)、及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような他の菌株も適している。これらの例は限定的なものではなく例示的なものである。
【0239】
完全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体断片は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が不要であるとき、例えば治療抗体が、腫瘍細胞破壊においてそれ自体が効果を示す細胞傷害性薬物(例えば毒素)にコンジュゲートしているとき、細菌中で産生させることができる。完全長抗体は、より長い循環半減期を有する。大腸菌中での生成が、より速く、かつ最も費用効率がよい。抗体断片及びポリペプチドの細菌中での発現については、例えば、発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列について記載している米国特許5648237号(Carter等)、同第5789199号(Joly等)、同第5840523号(Simmons等)を参照のこと。また、大腸菌中での抗体断片の発現について記載しているCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B. K. C. Lo編, Humana Press, Totowa, N.J., 2003), pp. 245-254もまた参照のこと。発現後、抗体は、可溶型画分中において大腸菌細胞ペーストから単離され得、例えばアイソタイプに応じてプロテインA又はGカラムにより精製することができる。最終的な精製は、例えばCHO細胞中で発現された抗体を精製するための方法と同様に実施されうる。
【0240】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物が、抗体をコードするベクターのための好適なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシア、又は一般的なパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかしながら、例えば分裂酵母;クリベロマイセス宿主、例えばクリベロマイセス・ラクティス、クリベロマイセス・フラジリス(ATCC12424)、クリベロマイセス・ブルガリクス(ATCC16045)、クリベロマイセス・ウィッケラミー(wickeramii)(ATCC24178)、クリベロマイセス・ワルティー(waltii)(ATCC56500)、クリベロマイセス・ドロソフィラルム(drosophilarum)(ATCC36906)、クリベロマイセス・サーモトレランス(thermotolerans)及びクリベロマイセス・マルキシアヌス(marxianus);ヤロウイア属(EP402226);ピキア・パストリス(EP183070);カンジダ属;トリコデルマ・リージア(Trichoderma reesia)(EP244234);アカパンカビ;シュワンニオマイセス(Schwanniomyces)属、例えばシュワンニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);及び糸状菌、例えばアカパンカビ属、アオカビ属、トリポクラディウム属(Tolypocladium)、及びアスペルギルス属宿主、例えばアスペルギルス・ニデュランス及びクロコウジカビのような多くの他の属、種、及び株が一般的に入手可能であり、ここで有用である。治療用タンパク質の生成のための酵母及び糸状菌の使用について検討している概説については、例えばGerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)を参照のこと。
【0241】
グリコシル化経路が「ヒト化」されている所定の真菌及び酵母株が選択され得、部分的又は完全なヒトグルコシル化パターンを有する抗体が産生されうる。例えば、Li等, Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)(ピキア・パストリス中のグリコシル化経路のヒト化について記載);及び上掲のGerngross等を参照のこと。
【0242】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にもまた由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。ヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコのような宿主由来の多数のバキュロウイルス株及びバリアント並びに対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、例えば、オートグラファ・カルフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1バリアント及びカイコNPVのBm-5株は公に入手可能であり、このようなウイルスは、特にヨトウガ細胞のトランスフェクションのために、本発明によるここでのウイルスとして使用される。
【0243】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、ウキクサ(ウキクサ科)、アルファルファ(タルウマゴヤシ(M. truncatula))、及びタバコの植物細胞培養物もまた宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号、及び第6417429号(トランスジェニック植物において抗体を生成するためのPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照のこと。
【0244】
脊椎動物細胞を宿主として使用してもよく、培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は常套的手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞、Graham等, J. Gen Virol. 36: 59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23: 243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(HepG2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N. Y Acad. Sci. 383: 44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞種株(HepG2)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFRCHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));並びに骨髄腫細胞株、例えばNS0及びSp2/0が含まれる。抗体産生に適した所定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki及びWu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B. K. C. Lo編, Humana Press, Totowa, N.J., 2003), pp. 255-268を参照のこと。
【0245】
宿主細胞は、抗体産生のための上述の発現又はクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された一般的な栄養培地中で培養される。
【0246】
(h)宿主細胞の培養
この発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は様々な培地中で培養されうる。市販の培地、例えばHamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM),(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),Sigma)が宿主細胞の培養に適している。加えて、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4767704号;同第4657866号;同第4927762号;同第4560655号;又は同第5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載の培地の何れもが、宿主細胞の培地として使用できる。これら培地の何れにも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びホスフェート)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばGENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物もまた当業者に既知の適切な濃度で含めることができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と共に以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0247】
(xiv)抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内、細胞膜周辺腔内で産生されるか、又は培地中に直接分泌されうる。抗体が細胞内に産生される場合、最初の工程として、宿主細胞か又は溶解断片の何れかである微粒子状デブリが、例えば遠心分離又は限外濾過により除去される。Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載する。簡潔には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分間にわたって融解される。細胞デブリは遠心分離により除去されうる。抗体が培地中に分泌される場合、一般に、そのような発現系からの上清が先ず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮される。PMSF等のプロテアーゼ阻害剤を、タンパク分解を阻害する前述の工程の何れかに含めることができ、抗生物質を、不定の夾雑物の増殖を防ぐために含めることができる。
【0248】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが典型的には好ましい精製工程の一つである。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に使用することができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプとヒトγ3について推奨される(Guss等, EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、大抵の場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。細孔制御ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスによって、アガロースで達成されうるよりも速い流速及び短い処理時間が可能になる。抗体がC3ドメインを含む場合、精製のためにベーカーボンドABXTM樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, N.J.)が有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えばイオン交換カラムでの断片化、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロースTMでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿もまた回収される抗体に応じて利用可能である。
【0249】
一般に、研究、試験、及び臨床に使用される抗体を調製するための様々な方法が、当該技術分野で確立されており、上記方法に適合し、及び/又は対象となる特定の抗体について当業者により適切とみなされる。
【0250】
(xv)生物学的に活性な抗体の選択
上述のように産生された抗体を一又は複数の「生物学的活性」アッセイに供し、治療的見地から有利な特性を持つ抗体を選択し、又は抗体の生物学的活性を保持する製剤及び条件を選択することができる。抗体は、それが産生された抗原に結合する能力について試験されうる。例えば、当該技術分野で知られている方法(例えばELISA、ウェスタンブロットなど)を使用することができる。
【0251】
例えば、抗PD-L1抗体については、抗体の抗原結合特性を、PD-L1に結合する能力を検出するアッセイにおいて評価することができる。幾つかの実施態様では、抗体の結合は、例えば、飽和結合;ELISA;及び/又は競合アッセイ(例えばRIA)によって決定されうる。また、抗体を、例えば治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイに供してもよい。そのようなアッセイは、当該技術分野で知られており、標的抗原と抗体の意図された目的に依存する。例えば、抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、例えば米国特許第8217149号に記載のように、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデル及び/又は同系腫瘍モデルにおいて評価することができる。
【0252】
対象の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、PD-L1に対する、実施例の抗PD-L1抗体の結合を遮断するもの)をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されたもののような常套的なクロスブロッキングアッセイが実施されうる。あるいは、例えばChampe等, J. Biol. Chem. 270:1388-1394 (1995)に記載のようにエピトープマッピングを実施し、抗体が対象のエピトープに結合するかどうかを決定することができる。
【0253】
IV.薬学的組成物及び製剤
ここにまた提供されるのは、ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト及び/又は抗体(例えば抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)と場合によっては薬学的に許容可能な担体とを含有する薬学的組成物及び製剤である。
【0254】
ここに記載される薬学的組成物及び製剤は、所望の純度を有する活性成分(例えばPD-1軸結合アンタゴニスト)を、一又は複数の任意選択的な薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製することができる。薬学的に許容可能な担体は、用いられる投薬量及び濃度で一般にレシピエントに非毒性であり、限定されないが、緩衝液、例えばホスフェート、シトレート、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含む。ここでの例示的な薬学的に許容可能な担体は、介在性薬物分散剤、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)を更に含む。所定の例示的なsHASEGP及び使用法は、rHuPH20を含み、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの一又は複数の更なるグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0255】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されたものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含む。
【0256】
ここでの組成物及び製剤は、治療される特定の適応症に必要な一を超える活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものをまた含んでもよい。そのような活性成分は、適切には、意図される目的に有効である量の組み合わせで存在する。
【0257】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入することができる。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編 (1980)に開示されている。
【0258】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体、例えば抗PD1抗体又は抗PD-L1抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのようなマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、容易に達成されうる。
【0259】
IV.治療の方法
ここに提供されるものは、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含む、個体におけるがん(例えば、メラノーマ)を治療し又はその進行を遅延させるための方法であり、ここで、患者から得られた血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定されている。幾つかの実施態様では、治療は、治療後の個体に応答をもたらす。幾つかの実施態様では、応答は部分応答である。幾つかの実施態様では、応答は完全寛解である。幾つかの実施態様では、治療は、治療休止後の個体に持続性の応答(例えば、持続性の部分応答又は完全寛解)をもたらす。ここに記載される方法は、免疫原性の増強、例えばがんの治療のための腫瘍免疫原性の増大が望ましい状態の治療に用途を見出しうる。また、ここに提供されるものは、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、ニボルマブ(Nivolomab)、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、又はアベルマブ)を、個体に投与することを含む、メラノーマを有する個体において免疫機能を増強する方法である。当該技術分野で知られているか又はここに記載されているPD-1軸結合アンタゴニストの何れも、本方法において使用することができる。
【0260】
幾つかの例では、ここに提供される方法は、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択されるPD-1軸結合アンタゴニストの有効量を投与することを含む。幾つかの例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体、例えばPD-L1のPD-1及びB7.1への結合を阻害できるがPD-1のPD-L2への結合を妨害しない抗体である。幾つかの例では、PD-L1結合アンタゴニスト抗体はMPDL3280Aであり、これは、2週間毎に約700mgから約900mg(例えば、2週間毎に約750mgから約900mg、例えば、2週間毎に約800mgから約850mg)の用量で投与されうる。幾つかの実施態様では、MPDL3280Aは、2週間毎に約840mgの用量で投与される。
【0261】
一般命題として、ヒトに投与されうるPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)の治療有効量は、投与回数が一回か複数回かを問わず患者の体重1kg当たり約0.01から約50mgの範囲であろう。幾つかの実施態様では、例えば、アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、例えば、毎日約0.01から約45mg/kg、約0.01から約40mg/kg、約0.01から約35mg/kg、約0.01から約30mg/kg、約0.01から約25mg/kg、約0.01から約20mg/kg、約0.01から約15mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.01から約5mg/kg、又は約0.01から約1mg/kgの用量で投与される。幾つかの実施態様では、アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)は15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用でありうる。一実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、ヒトに対し、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、又は約1500mgの用量で投与される。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、約800mgから約850mgの用量で、2週毎に投与される。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、約840mgの用量で2週間毎に投与される。用量は、単回の用量又は複数回の用量(例えば、2又は3回の用量)として、例えば点滴で投与されうる。併用治療において投与される抗体の用量は、単剤の場合と比較して低減されうる。幾つかの実施態様では、例えば、個体において局所進行性又は転移性乳がんを治療するため又はその進行を遅らせるための方法は、治療周期を含む投薬レジメンを含み、個体には、各周期の1日目と15日目に、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)が約840mgの用量で投与され、各周期は28日間である(すなわち、各周期は28日毎に繰り返される)。
【0262】
この治療法の進行は、ここに記載の方法によりモニターされる。幾つかの実施態様では、CD4T細胞集団内の細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞集団のサイズは、応答の持続性を予測するものである。例えば、3ヶ月間無病であると観察された患者は、グランザイムBCD4T細胞とTregの比が4であったが、6ヶ月間無病であると観察された患者は45の比であった。従って、BCD4T細胞のより大きい集団サイズが、より長い無病応答を示した。
【0263】
幾つかの実施態様では、本方法は、有効量の少なくとも一種の更なる治療剤を投与することを更に含む。
【0264】
幾つかの実施態様では、更なる治療剤は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的とする薬剤、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学予防剤である。更なる治療剤は、ここに記載される化学療法剤のうちの一又は複数でありうる。幾つかの例では、化学療法剤はカルボプラチンのような白金ベース化学療法剤である。
【0265】
幾つかの例では、化学療法剤は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、又はドセタキセル)である。幾つかの例では、タキサンは、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。幾つかの例では、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、約100mg/m~約125mg/mの用量で個体に投与される。幾つかの例では、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、約100mg/mの用量で個体に投与される。一般的な提案として、ヒトに投与されるタキサン(例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))の治療有効量は、一又は複数回の投与によるかどうかにかかわらず、約25~約300mg/m(例えば、約25mg/m、約50mg/m、約75mg/m、約100mg/m、約125mg/m、約150mg/m、約175mg/m、約200mg/m、約225mg/m、約250mg/m、約275mg/m、又は約300mg/m)の範囲であろう。例えば、幾つかの実施態様では、約100mg/mのnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))が投与される。幾つかの実施態様では、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、週に1回、100mg/mで投与される。幾つかの実施態様では、約125mg/mのパクリタキセルが投与される。幾つかの実施態様では、パクリタキセルは、3週間毎に200mg/mで投与される。幾つかの実施態様では、タキサン(例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎、各21日サイクルの1、8、及び15日目、又は各28日サイクルの1、8、及び15日目に投与されうる。
【0266】
幾つかの例では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)とタキサン(例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))が、単回投薬レジメンで投与される。これらの薬剤の投与は、投薬レジメンの文脈内で同時又は別個でありうる。例えば、幾つかの例では、ここに提供される方法は、治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、個体には、各サイクルの1及び15日目に約840mgの用量でヒトPD-1軸結合アンタゴニストが、そして各サイクルの1、8、及び15日目に約100mg/mの用量でタキサンが投与され、各サイクルが28日毎に繰り返される。
【0267】
幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、個体は、メラノーマに罹患している。幾つかの実施態様では、個体は肺がん、例えば非小細胞肺がんに罹患している。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、個体は膵臓がんに罹患している。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、個体は胃がんに罹患している。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、個体は結腸直腸がんに罹患している。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、個体は腎細胞がんに罹患している。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。幾つかの実施態様では、個体は膵臓がんに罹患している。幾つかの実施態様では、個体は局所進行性又は転移性乳がんに罹患している。幾つかの実施態様では、転移性乳がんはmTNBCである。幾つかの実施態様では、個体は、がんに対して以前に2回以下の細胞傷害性治療レジメンを受けたことがある。幾つかの実施態様では、個体は以前にがんに対する標的化全身治療を受けたことがない。幾つかの実施態様では、個体は、一又は複数のがん療法に対して耐性があるがんを有する。幾つかの実施態様では、がん療法に対する耐性は、がん又は難治性がんの再発を含む。再発とは、治療後に元の部位又は新しい部位にがんが再出現ることを指しうる。幾つかの実施態様では、がん療法に対する耐性は、抗がん療法での治療中のがんの進行を含む。幾つかの実施態様では、がん療法に対する耐性は、治療に応答しないがんを含む。がんは治療の開始時に耐性になることもあれば、又は治療中に耐性になることもある。幾つかの実施態様では、がんは早期段階又は後期段階にある。
【0268】
PD-1軸結合アンタゴニストと第二治療剤、例えばタキサン(例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、当該技術分野で知られている任意の好適な様式で投与されうる。例えば、PD-1軸結合アンタゴニストと第二治療剤、例えばタキサンは、逐次的に(異なる時点で)又は同時に(同じ時点で)投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、第二治療剤と別個の組成物中に存在する。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、第二治療剤と同じ組成物中に存在する。
【0269】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストと第二治療剤、例えば化学療法剤、例えばタキサンは、同じ投与経路によって、又は異なる投与経路によって投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内投与される。幾つかの実施態様では、タキサンは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内投与される。有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、場合によっては第二治療剤は、疾患の予防又は治療のために投与されうる。PD-1軸結合アンタゴニスト及び/又は第二治療剤の適切な投薬量は、治療される疾患の種類、PD-1軸結合アンタゴニストと第二治療剤の種類、疾患の重症度と経過、個体の臨床状態、個体の臨床歴と治療への応答、及び担当医師の裁量に基づいて決定されうる。
【0270】
幾つかの実施態様では、本方法は、追加の治療法を更に含みうる。追加の治療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植術、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又は前述の組み合わせでありうる。追加の療法は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態でありうる。幾つかの実施態様では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤又は抗転移薬の投与である。幾つかの実施態様では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤など)の投与である。幾つかの実施態様では、追加の療法は、放射線療法である。幾つかの実施態様では、追加の療法は、手術である。幾つかの実施態様では、追加の療法は、放射線療法と手術の組み合わせである。幾つかの実施態様では、追加の療法は、ガンマ照射である。
【0271】
幾つかの実施態様では、本方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンと共に白金系化学療法剤を投与することを更に含む。幾つかの実施態様では、白金系化学療法剤はカルボプラチンである。カルボプラチンの投薬量及び投与は、当該技術分野で周知である。カルボプラチンの例示的な投薬量は、6mg/mlの標的曲線下面積(AUC)で投与される。幾つかの実施態様では、カルボプラチンは、3週間毎に静脈内投与される。
【0272】
理論に束縛されることは望まないが、活性化共刺激分子を促進することによって又は負の共刺激分子を阻害することによってT細胞刺激を増強することで、腫痕細胞死を促進させ得、それによってがんが治療されるか又はがんの進行が遅延されると考えられる。幾つかの実施態様では、活性化共刺激分子に対するアゴニストと併用して、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば抗PD-1、例えばMDX-1106(ニボルマブ,Bristol-Myers Squibb)又はMK-3475(ペンブロリズマブ,Merck)、又は抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A(アテゾリズマブ)又はアベルマブ)が投与されうる。幾つかの実施態様では、活性化共刺激分子には、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127が含まれうる。幾つかの実施態様では、活性化共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127に結合するアゴニスト抗体である。幾つかの実施態様では、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストと併用して、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば抗PD-1、例えばMDX-1106又はMK-3475、又は抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A)が投与されうる。幾つかの実施態様では、阻害性共刺激分子には、CTLA-4(CD152としても知られる)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、又はアルギナーゼが含まれうる。幾つかの実施態様では、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、又はアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0273】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば抗PD-1、例えばMDX-1106又はMK-3475、又は抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A)は、CTLA-4(CD152としてもまた知られている)に対するアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、又はYERVOY(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、トレメリムマブ(チシリムマブ又はCP-675206としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、B7-H3(CD276としても知られている)に対するアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、MGA271と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、TGFベータに対するアンタゴニスト、例えばメテリムマブ(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、又はLY2157299と併用して投与されうる。
【0274】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば細胞傷害性T細胞又はCTL)の養子移植を含む治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えばドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移植を含む治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、HERCREEMプロトコル(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954を参照)を含む治療と併用して投与されうる。
【0275】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、CD137(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られている)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、CD40に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CP-870893と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、OX40(CD-134としても知られている)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、抗OX40抗体(例えばAgonOX)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CD27に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CDX-1127と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対するアンタゴニストと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、IDOアンタゴニストは、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている)である。
【0276】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、抗体-薬剤コンジュゲートと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、抗体-薬剤コンジュゲートは、メルタンシン又はモノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(DNIB0600A又はRG7599としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1、アド-トラスツズマブエムタンシン、又はKADCYLA(登録商標),Genentechとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、DMUC5754Aと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、エンドテリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体-薬剤コンジュゲート、例えばMMAEとコンジュゲートされたEDNBRに対する抗体と併用して投与されうる。
【0277】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、血管形成阻害薬と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、VEGF、例えばVEGF-Aに対する抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A)とタキサン(例えばnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標),Genetechとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、アンジオポイエチン2(Ang2としても知られている)に対する抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、MEDI3617と併用して投与されうる。
【0278】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、抗悪性腫瘍薬と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CSF-1R(M-CSFR又はCD115としても知られている)を標的とする薬剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、抗CSF-1R(IMC-CS4としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ又はインターフェロンガンマと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、ロフェロン-A(組換え型インターフェロンアルファ-2aとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、GM-CSF(組換え型ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、又はLEUKINE(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、IL-2(アルデスロイキン又はPROLEUKIN(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、IL-12と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CD20を標的とする抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(GA101又はGAZYVA(登録商標)としても知られている)又はリツキシマブである。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、GITRを標的とする抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、GITRを標的とする抗体は、TRX518である。
【0279】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、がんワクチンと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、これは幾つかの実施態様では、個別化ペプチドワクチンである。幾つかの実施態様では、ペプチドがんワクチンは、多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド又はペプチドパルス樹状細胞ワクチン(例えばYamada等, Cancer Sci, 104:14-21, 2013を参照)である。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、アジュバントと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、TLRアゴニスト、例えばポリ-ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られている)、LPS、MPL、又はCpG ODNを含む治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、IL-1と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、HMGB1と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、IL-10アンタゴニストと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、IL-4アンタゴニストと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、IL-13アンタゴニストと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、HVEMアンタゴニストと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、例えばICOS-Lの投与によるICOSアゴニスト、又はICOSに対するアゴニスト抗体と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CX3CL1を標的とする治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CXCL9を標的とする治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CXCL10を標的とする治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、CCL5を標的とする治療と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、LFA-1又はICAM1アゴニストと併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、セレクチンアゴニストと併用して投与されうる。
【0280】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、標的療法と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、B-Rafの阻害物質と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、ベムラフェニブ(ZELBORAF(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、ダブラフェニブ(TAFINLAR(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、MEK、例えばMEK1(MAP2K1としても知られている)又はMEK2(MAP2K2としても知られている)の阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、コビメチニブ(GDC-0973又はXL-518としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、トラメチニブ(MEKINIST(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、K-Rasの阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、c-Metの阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、オナルツズマブ(MetMAbとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、Alkの阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、AF802(CH5424802又はアレクチニブとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、BKM120と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、イデラリシブ(GS-1101又はCAL-101としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、ペリフォシン(KRX-0401としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、Aktの阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、MK2206と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、GSK690693と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、GDC-0941と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、mTORの阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、シロリムス(ラパマイシンとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、テムシロリムス(CCI-779又はTORISEL(登録商標)としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、エベロリムス(RAD001としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、リダフォロリムス(AP-23573、MK-8669、又はデフォロリムスとしても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、OSI-027と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、AZD8055と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、INK128と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、二重PI3K/mTOR阻害剤と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、XL765と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、GDC-0980と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、BEZ235(NVP-BEZ235としても知られている)と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、BGT226と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、GSK2126458と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、PF-04691502と併用して投与されうる。幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストとタキサンは、PF-05212384(PKI-587としても知られている)と併用して投与されうる。
【0281】
ここに記載される新規な方法は、腫瘍縮小が検出されうる前に、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療の有効性を判定するために使用することができる。更に、ここに記載の新規な方法を使用して、治療中の進行性疾患と偽性進行(pseudoprogression)とを区別することにより、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療の有効性を判定することができる。幾つかの例では、腫瘍サイズは、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療を伴う治療の後に最初は増加する。この増加は、実際には、腫瘍量の増加によるものではなく、むしろ、腫瘍サイズの一時的な増加は、治療の結果、例えば、一般には「偽性進行」と呼ばれている免疫細胞の流入及び/又は増殖である。ここに記載される方法は、そのような偽性進行と進行性疾患とを区別することができる。
【0282】
VI.製造品又はキット
本発明の別の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)と、個体から得られた血液試料におけるグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上の個体において、又は個体から得られた血液試料におけるグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上の個体の免疫機能を増強するために、PD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含む添付文書とを含む製造品又はキットが提供される。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニストの何れも製造品又はキットに含めることができる。
【0283】
製造品又はキットのための適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグ及びシリンジが含まれる。容器は、ガラス、プラスチック(例えばポリ塩化ビニル又はポリオレフィン)、又は金属合金(例えばステンレス鋼又はハステロイ)等の様々な材料から形成されうる。幾つかの実施態様では、容器は製剤を収容し、容器上の又は容器に付随したラベルは使用のため説明を示しうる。製造品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を伴う添付文書を含む、商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を更に含みうる。幾つかの実施態様では、製造品は、一又は複数の他の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗腫瘍剤)を更に含む。その一又は複数の薬剤のための適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグ及びシリンジが含まれる。
【0284】
本明細書は、当業者が本発明を実施できるようにするために充分なものと考えられる。ここに示され記載されたものに加えて、本発明の様々な変形が、前述の記載から当業者には明らかとなり、添付の特許請求の範囲に入るものである。
【実施例0285】
本発明は、次の実施例を参照することにより更に十分に理解されるであろう。しかしながら、これら実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされてはならない。ここに記載の実施例及び実施態様は、単に例示を目的とするものであること、またそれに照らした様々な変形又は変更が当業者に示唆され、本出願の精神及び範囲並びに添付の特許請求の範囲に含まれるものであることが理解される。
【0286】
実施例1
mMLRアッセイにおけるCD4T細胞及び同種DC
PD-1遮断の根底にある機序を解明するために、我々は、CD4T細胞が同種MHCIIを認識し、検出可能な免疫応答を開始することができる、CD4T細胞に焦点を合わせたインビトロ機能アッセイを開発した。最小MLR(mMLR)と呼ばれるこのアッセイで我々は、健康なドナーから得た選別されたCD4T細胞を、無関係のドナー由来の単球由来成熟樹状細胞と共培養した。
【0287】
[最小混合リンパ球反応]我々は、新鮮に精製されたCD4T細胞を単球由来同種成熟樹状細胞(mDC)の存在下で5日間共培養するアッセイを開発した。プラスチック接着と続く非接着細胞の除去により共培養の1週間前に単球を新鮮なPBMCから単離した。我々はついで単球をGM-CSF(50ng/ml)及びIL-4(100ng/ml)を含む培地中で5日間培養することにより、単球から未成熟DC(iDC)を生成した。iDCの成熟を誘導するために、我々は更に2日間、培養培地にTNF-α、IL-1β及びIL-6(それぞれ50ng/ml)を加えた。我々は、ついで、フローサイトメトリー(LSRFortessa,BD Biosciences)によって主要組織適合抗原クラスII(MHCII,eBioscience)、CD80、CD83及びCD86(全てBD Biosciencesから)のその表面発現を測定することによりDC成熟を評価した。最小混合リンパ球反応(mMLR)の日に、無関係のドナーから得た108のPBMCからマイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)によってCD4T細胞を濃縮した。前の培養では、CD4T細胞を5μMのカルボキシ-フルオレセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。ついで、105のCD4T細胞を、遮断抗PD-1抗体(10μg/mlの濃度の0376又はMDX-1106の何れか)の存在下又は非存在下で成熟同種DC(5:1)と共に96ウェルプレートU底にプレーティングした。mMLRにより、共培養から5日目までに、アロ特異的CD4T細胞のほとんどで高いPD-1発現レベルを誘導することが可能になった(図1)。
[統計]**は、一元配置分散分析(GraphPad Prism)で計算したP<0.01に、***はP<0.001に対応する。
【0288】
実施例2
PD-1遮断はCD4T細胞によるIFN-γ分泌及びグランザイムB産生を増加させる
我々は次に実施例1に記載したmMLR培養物に添加した抗PD-1遮断抗体の効果を決定した 。
[サイトカイン細胞内染色及びELISA]mMLR共培養から5日目に、我々は細胞培養上清を回収し、ELISA(R&Dシステムズ、製造者の指示に従う)によるIFN-γレベルの測定に使用し、細胞を、ゴルジプラグ(ブレフェルジンA,BD Bioscience)及びゴルジストップ(モネンシン,BD Bioscience)の存在下で更に5時間の間37℃に放置した。次に細胞を洗浄し、Fix/Perm緩衝液(BD Bioscience)で固定/透過処理する前に、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead固定化色素Aqua(Invitrogen)で表面を染色した。次に、グランザイムB(BD Bioscience)、IFN-γ及びIL-2(両方ともeBioscienceからの抗体)について細胞内染色を実施した。共培養後1日目に抗PD-1遮断抗体(Roche 0376)を添加することにより、5日目までに上清中に放出されるIFN-γの量を増加させることができ(図2)、驚くべきことに、共培養単独とアイソタイプ対照の存在下と比較した場合、CD4T細胞による有意なグランザイムBの産生を誘導することができた(図3)。
【0289】
【0290】
実施例3
様々な抗PD-1軸遮断抗体に応答した細胞傷害性CD4T細胞の誘導
抗PD-1抗体0376、MDX-1106(ニボルマブ,Bristol-Myers Squibb)及びMK-3475(ペンブロリズマブ,Merck)を、本質的に実施例2に記載の通りに実施したmMLRアッセイにおいて比較した。試験した全ての抗体は最小MLRアッセイにおいてCD4T細胞によるIFN-γ分泌の誘導において同等であったが(図4A)、0376は、細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞の増殖及び/又はその出現の誘導において優れた効果を示した(図4B)。
我々はまた抗PD-L1抗体(表5のPD-L1 mulgG1 DAPG)でPD- 1リガンド、PD-L1を遮断することが、最小MLRアッセイにおいてCD4T細胞に対して同様な効果を有するかどうかを評価した。全ての抗PD-1抗体(0376、MDX-1106及びMK-3475)及び抗PD-L1抗体が、CD4T細胞によるIFN-γ分泌を誘導した(図4A図5A)。抗PD-L1抗体はまた細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞の出現を誘導した(図4B及び図5B)。
【0291】
実施例4
ニボルマブで処置されたメラノーマ患者の末梢血中のCD4T細胞プロファイル
[メラノーマ患者のPBMCのエクスビボ表現型及び機能特徴付け]解凍後、PBMCを、ゴルジプラグ(ブレフェルジンA,BD Bioscience)及びゴルジストップ(モネンシン,BD Bioscience)の存在下で1ml当たり2×10~10の範囲の濃度でRPMI10%FBSに再懸濁し、37℃で12時間インキュベートした。ついでPBMCを洗浄し、表面を抗CD3(BD Horizon,BD Biosciences)、抗CD8(BD Biosciences)及び抗CD4抗体(BioLegend)で染色し、続いてFOXP3/転写因子緩衝液セット(eBioscience)を用いた透過処理/固定を行った。細胞をFOXP3(eBioscience)、グランザイムB(BD Bioscience)、IFN-γ、IL-2(両方ともeBioscienceから)及びKi67(BD Pharmingen)について細胞内染色し、フローサイトメーター(LSRFortessa,BD Biosciences)で取得した。
細胞傷害性CD4T細胞は、健康な個体の末梢血中に非常に低い頻度で存在し、それらが抗ウイルス免疫応答において決定的な役割を果たすウイルス感染の間に数が増加することが記載されている(Appay, Clin. Exp. Immunol. 138(1):10-13 (2004))。
【0292】
我々のインビトロでの知見をインビボで確認するために、我々は、細胞傷害性CD4T細胞(グランザイムBCD4T細胞)を探して抗PD-1抗体(MDX-1106)で処置され又は処置されなかったメラノーマ患者の小コホートからのPBMCの機能及び表現型プロファイルを評価した。サイトカイン分泌を一晩遮断した後、我々は細胞を系列マーカーで染色し、グランザイムBについて細胞内染色を実施した。我々は、最後の処置後最後の2ヶ月で収集されたPBMC中の抗PD-1抗体(MDX-1106)で処置された患者において細胞傷害性CD4T細胞集団を有意に(P=0.04)検出できた。このCD4細胞傷害性T細胞集団は、健康なドナーにおいては実質的に存在しないか又は非常に低い頻度でのみ存在する(図8)。
【0293】
ある特定の場合では、我々は1名のメラノーマ患者(HG15443)で細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞を検出することができたところ、その患者は無増悪であったが、我々は、腫瘍がひとたび免疫監視機構を免れたら後の時点で同患者(HG15952)においてグランザイムBCD4T細胞亜集団を検出することができなかった(図6A及びB)。
【0294】
我々は、抗PD-1抗体で処置した患者における細胞傷害性グランザイムBCD4T細胞集団の増加と平行して、制御性T細胞(Treg、FOXP3CD4T細胞)頻度の減少もまた観察した(図6A)。従って、我々は細胞傷害性CD4T細胞対Tregの比を計算した。我々は、3ヶ月及び5.6ヶ月の無病生存期間を有する2名の抗PD-1抗体処置患者が、それぞれ4及び45のグランザイムB:Treg比を有し、1より大きいグランザイムBCD4T細胞とTregの比と抗PD-1療法の臨床上のベネフィットの間の正の相関を示すことを見出した。対照的に、健康なドナー及び未処置のメラノーマ患者は、1以下のグランザイムB:Treg比を有していた(図7)。また、Treg集団に対するグランザイムBCD4T細胞集団の大きさが、応答の持続性を予測するように思われた。4の比を有する患者は3ヶ月間無病であると観察されたが、6ヶ月の間無病であると観察された患者は45の比を有していた(図7)。従って、グランザイムBCD4T細胞のより大きな集団サイズが、より長い無病応答を予測するものであった。
【0295】
PD-1遮断の機序が明らかにされたのは、出願人の知る限り、これが最初である。ここに提示される知見は、抗PD-1軸結合分子、例えば抗PD1及び抗PD-L1抗体での治療に対して重要な意味を有する。グランザイムBCD4T細胞の評価は、抗PD-1療法に対する患者の応答を長期的にモニターするバイオマーカーとして役立ちうる。重要なことに、細胞は末梢血から単離することができ、侵襲的生検を通して細胞又は組織を単離することを不要にする。グランザイムBCD4T細胞の評価、より具体的には、ここに記載のグランザイムB:Treg比の計算は、患者がPD-1軸結合分子、例えば抗PD-1又は抗PD-L1抗体での治療に応答しているかどうかを迅速にモニターするために医師によって適用されうる。
【0296】
無増悪生存(PFS)期間に対する細胞傷害性CD4T細胞の頻度のプロットは、細胞傷害性CD4T細胞集団のサイズと疾患が安定しているか又は退行する期間との間の有意な相関関係(P=0.0163)を明らかにした(図9)。この知見は、細胞傷害性CD4T細胞の存在と抗PD-1療法の臨床的ベネフィットとの間に正の相関関係があることを示している。
【0297】
意外なことに、抗PD-1抗体で処置した患者において、我々は、細胞傷害性CD4T細胞の増加と並行して、制御性T細胞(Treg)頻度の減少もまた観察できた。従って、我々は、細胞傷害性CD4T細胞とTregの比を計算し、それを無病生存期間との関係で示した。興味深いことに、我々は、細胞傷害性CD4T細胞/Treg比と疾患の進行の遅れとの間に非常に有意な相関関係があることを見出した(P=0.0013)(図10)。
【0298】
処置と処置に対する応答に基づく患者の層別化は、抗PD-1療法が、ベースラインとして示された処置前の時点と比較した場合、細胞傷害性CD4T細胞対Tregにおいて応答者群に対して有意な増加(P=0.02)を誘導することを明らかにした。加えて、抗PD-1療法に応答する患者と進行性疾患を有する患者とでは、Treg損傷に対する細胞傷害性CD4T細胞の増加に明らかな傾向がある(図11)。
【0299】
この知見は、PD-1遮断の根底にある機序に光を当てるだけでなく、少量の末梢血を単に採取することによって抗PD-1療法に対する患者の応答を長期的にモニターする有用なバイオマーカーを提供する。このツールは、最終的に医師が、患者が抗PD-1治療に応答しているかどうかを適時に追跡しかつ推定し、有効な腫瘍特異的免疫応答を開始する患者の可能性を高めるための特別な組み合わせ戦略を選ぶことを可能にする。
【0300】
[他の実施態様]
前述の発明は、理解を明確にする目的で例示及び実施例によってある程度詳細に説明されてきたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。ここに引用された全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が出典明示により明示的に援用される。
図1
図2
図3A-B】
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024147548000001.xml
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-07-17
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0298
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0298】
処置と処置に対する応答に基づく患者の層別化は、抗PD-1療法が、ベースラインとして示された処置前の時点と比較した場合、細胞傷害性CD4T細胞対Tregにおいて応答者群に対して有意な増加(P=0.02)を誘導することを明らかにした。加えて、抗PD-1療法に応答する患者と進行性疾患を有する患者とでは、Treg損失に対する細胞傷害性CD4T細胞の増加に明らかな傾向がある(図11)。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるがんを治療するか又はがんの進行を遅らせるための方法であって、治療有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含み、個体から得られる血液試料中のグランザイムBCD4T細胞とFOXP3CD4T細胞との比が1以上であると決定 されている、方法。
【外国語明細書】