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特開2024-147593ボンド磁石の製造方法およびボンド磁石用コンパウンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147593
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ボンド磁石の製造方法およびボンド磁石用コンパウンド
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20241008BHJP
   H01F 1/059 20060101ALI20241008BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20241008BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241008BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241008BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241008BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241008BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20241008BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241008BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20241008BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20241008BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20241008BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/059 160
H01F1/08 130
C22C38/00 303D
B22F3/00 C
B22F1/00 Y
B22F1/052
B22F3/02 S
C08L101/00
C08L77/00
C08K3/28
C08K3/01
B29C45/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106295
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2021533866の分割
【原出願日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2019134528
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山中 智詞
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用コンパウンドの流動性や、ボンド磁石の機械特性などを改善することができるボンド磁石用添加剤、これらの特性が改善されたボンド磁石用コンパウンドおよびボンド磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用添加剤は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物を含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用添加剤。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である請求項1に記載のボンド磁石用添加剤。
【請求項3】
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程、ならびに、
ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混練する混練工程
を含むボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である請求項3に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
【請求項5】
前記磁性材料は、粒径分布が単分散のものである請求項3または4に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
【請求項6】
前記磁性材料がSm、FeおよびNを含む請求項3~5のいずれか1項に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたボンド磁石用コンパウンド。
【請求項8】
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程、
ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混練する混練工程、
得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程、を含むボンド磁石の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法により得られたボンド磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石用添加剤およびボンド磁石用コンパウンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、熱可塑性樹脂とSmFeN粒子を溶融混練後、圧縮成形してコンパウンドを作製し、射出成形するボンド磁石の製造方法が開示されている。
【0003】
一方、特許文献3には、NdFeB磁性粉末とエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤としてアミン系硬化剤を用いたボンド磁石が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-43804号公報
【特許文献2】特開2004-115921号公報
【特許文献3】特開2010-232468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用コンパウンドの流動性や、ボンド磁石の機械特性などを改善することができるボンド磁石用添加剤と、これらの特性が改善されたボンド磁石用コンパウンドおよびボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用添加剤は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物を含有する。
【0007】
本発明の一態様にかかるボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程、ならびに、ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混練する混練工程を含む。
【0008】
本発明の一態様にかかるボンド磁石の製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程、ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混練する混練工程、得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用コンパウンドの流動性や、ボンド磁石の機械特性などを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用添加剤は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物を含有することを特徴とする。従来、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石を作製する際に、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を混練したものを射出成形すると、熱硬化性樹脂の反応性基(例えばエポキシ樹脂の場合はグリジシル基)と熱可塑性樹脂の反応性基(例えばナイロン12の場合はアミド基)が反応することにより、樹脂の流動性が低下し成形性が悪くなることがあった。本実施形態の熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の当量に対する当量の比が2以上11以下である硬化剤との硬化物は、熱硬化性樹脂の反応性基が硬化剤の反応性基(例えばDDS(ジアミノジフェニルスルホン)の場合はアミノ基)により十分に失活しているため、熱可塑性樹脂の反応性基との反応が起こりにくく樹脂の流動性の低下を抑制できるので、熱可塑性樹脂を含むボンド磁石の添加剤として用いることができる。また、本実施形態の熱可塑性樹脂を含むボンド磁石用添加剤により作製したボンド磁石用コンパウンドを用いてボンド磁石を射出成形により作製する場合、射出圧を下げることができるので、得られたボンド磁石の機械特性が向上する。
【0012】
熱硬化性樹脂は、熱硬化するものであれば特に限定されず、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アクリル樹脂、アリルカーボネート樹脂などが挙げられる。中でも機械特性と耐熱性の点で、エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、室温において液状のもの若しくは溶媒に溶解して液状になる固体が好ましい。
【0013】
硬化剤は、選択した熱硬化性樹脂を熱硬化するものであれば特に限定されず、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、たとえばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、ポリメルカプタン樹脂系硬化剤、ポリスルフィド樹脂系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0014】
硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比(熱硬化性樹脂の当量に対する硬化剤の当量の比)にて調整される。熱硬化性樹脂の反応性基数に対する硬化剤の反応性基数の比は2以上11以下であるが、2以上10以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。また、反応性基数の下限は、2.5を超えることが好ましく、3以上がより好ましい。該比が11を超えると、ボンド磁石の機械特性が低下し、2未満では、熱硬化性樹脂の反応性基に対する硬化剤の反応性基の比が小さいため、熱硬化性樹脂の反応性基が残留する。以降の工程にて熱可塑性樹脂と混練する場合に、熱可塑性樹脂の反応性基と残留した熱硬化性樹脂の反応性基が反応することにより、射出成形時に粘度上昇が起こりボンド磁石の成形性と得られた成形品の機械特性が、熱可塑性樹脂単独での成形性や機械特性よりも悪化する。ここで、熱硬化性樹脂種の当量とは1グラム当量の反応性基を含む樹脂のグラム数をいい、硬化剤種の当量とは、活性水素当量のことをいう。
【0015】
硬化物は、前述の熱硬化性樹脂に硬化剤を配合し熱硬化することにより得ることができる。熱硬化する温度は、使用する熱硬化性樹脂の特性に合わせて設定できるが、磁性材料の熱による磁気劣化を抑制し、熱硬化する点から60℃以上250℃以下が好ましく、180℃以上220℃以下がより好ましい。
【0016】
硬化物は、必要に応じて粉砕することができる。硬化物を粉砕する方法は特に限定されず、サンプルミル、ボールミル、スタンプミル、乳鉢、ミキサー粉砕などを使用することができる。必要であれば、粉砕物を篩等で分級することもできる。粉砕物の平均粒径は、熱可塑性樹脂との相溶性の点より1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0017】
ボンド磁石用添加剤は、熱硬化性樹脂および硬化剤とともに硬化促進剤を配合して硬化させることもできる。硬化促進剤としては、たとえば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1,5ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチル-4メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、スルホニウム塩などが挙げられる。硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、一般的には熱硬化性樹脂と硬化剤の総量に対して、0.01質量%以上10質量%以下を添加する。
【0018】
本実施形態のボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の当量に対する当量の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程、ならびに、ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混練する混練工程を含むことを特徴とする。
【0019】
本実施形態のボンド磁石用添加剤を得る工程については、前述した通りである。
【0020】
混練工程において、ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂と溶融混練して、射出成形に使用するボンド磁石用コンパウンドを作製する。溶融混練機は特に限定されないが、単軸スクリュー混練機、二軸スクリュー混練機、ミキシングロール、ニーダ、バンバリーミキサ、噛み合わせ型二軸スクリュー押出機、非噛み合わせ二軸スクリュー押出機等を用いることができる。溶融混練温度は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂の特性に応じて設定できるが、180℃以上250℃以下が好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂は、射出成形可能な樹脂であれば特に限定されないが、たとえばナイロン樹脂(ポリアミド樹脂);ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン;ポリエステル;ポリカーボネート(PC);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリアセタール(POM);液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。ナイロン樹脂としては、6ナイロン、11ナイロン、12ナイロンのようなポリラクタム類、6,6ナイロン、6,10ナイロン、6,12ナイロンのようなジカルボン酸とジアミンとの縮合物、6ナイロン/6,6ナイロン、6ナイロン/6,10ナイロン、6ナイロン/12ナイロン、6ナイロン/6,12ナイロン、6ナイロン/6,10ナイロン/6,10ナイロン、6ナイロン/6,6ナイロン/6,12ナイロン、6ナイロン/ポリエーテルのような共重合ポリアミド類、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロンMXD6、芳香族ナイロン、非晶質ナイロン等が挙げられる。なかでも、吸水率の低さと成形性、機械特性との兼ね合いから、ナイロン樹脂が好ましく、特に12ナイロンが好ましい。
【0022】
磁性材料は、特に限定されないが、SmFeN系、NdFeB系、SmCo系の希土類磁性材料が挙げられる。なかでも、耐熱性や、希少金属を含有しない点で、SmFeN系が好ましい。SmFeN系磁性材料としては、ThZn17型の結晶構造をもち、一般式がSmFe100-x-yで表される希土類金属Smと鉄Feと窒素Nからなる窒化物である。ここで、xは、8.1原子%以上10原子%以下、yは13.5原子%以上13.9原子%以下、残部が主としてFeとされることが好ましい。
【0023】
SmFeN磁性材料については、特開平11-189811号公報に開示された方法により製造できる。NdFeB系磁性材料については、国際公開2003/85147号公報に開示されたHDDR法により製造できる。SmCo系磁性材料については、特開平08-260083号公報に開示された方法により製造できる。また、磁性材料は、例えば特許文献1に示される方法よりシランカップリング剤で表面処理したものを用いることができる。
【0024】
磁性材料の平均粒径は10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、4μm以下がさらに好ましい。なお、平均粒径は、粒度分布における小粒径側からの体積累積50%に相当する粒径として測定される。ボンド磁石用コンパウンドに使用する磁性材料の粒径分布は、減磁特性の角型性の点から、単分散であることが好ましい。
【0025】
磁性材料は、シランカップリング剤で表面処理することもできる。シランカップリング剤などで表面処理することにより、磁性材料と樹脂との結合性が高まるため、射出成形時の粘度の上昇を抑制することができる。
【0026】
シランカップリング剤としては、一般式;X-Si-(OR)(ただし、Xは末端に極性基を有するアルキル基、Rは炭素数が1以上3以下のアルキル基であり、nは1以上3以下の整数である。)で表され、Xにおける極性基がアミノ基、ウレイド基、エポキシ基、チオール基、メタクリロキシ基を有するものが好ましい。熱可塑性樹脂としてナイロン樹脂を使用する場合、ナイロン樹脂との親和性が高いアミノ基をもつカップリング剤を使用するのが好ましく、特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルトリエトキシシランを使用することが好ましい。
【0027】
混練工程における磁性材料の添加量は、ボンド磁石用コンパウンド中の磁性材料の含有量として、93.2質量%以下が好ましく、75質量%以上92.5質量%以下がより好ましい。93.2質量%を超えると、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下し、75質量%未満では、ボンド磁石の残留磁束密度が低くなる。
【0028】
混練工程におけるボンド磁石用添加剤の添加量は、ボンド磁石用コンパウンド中のボンド磁石用添加剤の含有量として、0.1質量%以上2.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。ボンド磁石用添加剤の含有量が2.5質量%を超えると、機械特性が低下し、0.1質量%未満では、ボンド磁石用添加剤の添加効果が小さくなる。
【0029】
混練工程における熱可塑性樹脂の添加量は、ボンド磁石用コンパウンド中の熱可塑性樹脂の含有量として、6.3質量%以上が好ましく、7.0質量%以上24.5質量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の添加量が24.5質量%を超えると、残留磁束密度が低くなり、6.3質量%未満では、射出成形時の粘度が高くなるため成形性が低下する。
【0030】
本実施形態のボンド磁石用コンパウンドは、前述の製造方法により得られる。
【0031】
本実施形態のボンド磁石の製造方法は、
熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の反応性基数に対する反応性基数の比が2以上11以下である硬化剤とを熱硬化させてボンド磁石用添加剤を得る工程、
ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混練する混練工程、
ならびに、得られたボンド磁石用コンパウンドを射出成形する射出成形工程
を含むことを特徴とする。
【0032】
ボンド磁石用添加剤を得る工程、混練工程は前述した通りである。
【0033】
射出成形工程では、ボンド磁石用コンパウンドを射出成形し、射出成形物を得る。射出成形機のシリンダー温度は、ボンド磁石用コンパウンドが溶融する温度範囲であれば良く、磁性材料の熱による磁気劣化を抑制する点から260℃以下が好ましい。射出圧は溶融したコンパウンドが射出できる圧力であればよいが、例えば射出成形機のシリンダー温度を260℃とし横幅10mm厚み4mm長さ80mmのキャビィティーに射出成形する場合、成形性の観点より162MPa未満で完充填できることが好ましい。
【0034】
本実施形態のボンド磁石は、前述の製造方法により得られる。
【実施例0035】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0036】
実施例および比較例では、下記の材料を使用した。
エポキシ樹脂:ビフェニルタイプ(エポキシ当量186g/eq)
硬化剤:DDS(ジアミノジフェニルスルホン)(活性水素当量62.0g/eq)
硬化促進剤:TPP(トリフェニルホスフィン)
磁性材料:表面処理したSmFeN系磁性材料
(平均粒子径3μm(粒径分布は単分散である)、磁性粉末単独の残留磁束密度Br=1.31T)
【0037】
製造例1
SmFeN系磁性材料100質量部に対して、1.875質量部のエチルシリケートおよび0.4質量部の3-アミノプロピルトリエトキシシランシラン(東レ・ダウ・コーニング株式会社製Z-6011)を用いて表面処理し、表面処理したSmFeN系磁性材料を作製した。
【0038】
実施例1
(ボンド磁石用添加剤の作製)
アセトン100質量部に対して、エポキシ樹脂12質量部、硬化剤8.9質量部、硬化促進剤0.4質量部を溶解し混合した。アセトンを揮発させた後、棚段乾燥機にて窒素雰囲気下200℃で6時間硬化処理した。得られた硬化物をミキサーにより粉砕し、目開き500μmの篩にて分級し、ボンド磁石用添加剤を作製した。
【0039】
(ボンド磁石用コンパウンドの作製)
製造例1で作製した表面処理したSmFeN系磁性材料100質量部に対し、0.5質量部のボンド磁石用添加剤および8.8質量部のポリアミド12を混練し、二軸混練機にて230℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。
【0040】
(ボンド磁石の作製)
ボンド磁石用コンパウンドを、シリンダー温度260℃、金型温度90℃、射出圧152MPaにて射出成形し、横幅10mm、厚み4mm、長さ116mmのボンド磁石強度試験片を得た。
【0041】
比較例1
表面処理したSmFeN系磁性材料100質量部に対し、9.2質量部のポリアミド12を混合し、二軸混練機にて230℃環境下で溶融押出混練し、ボンド磁石用コンパウンドを得た。続いて、得られたボンド磁石用コンパウンドを使用して、実施例1と同様にボンド磁石を作製した。曲げ強度を測定した。射出成形時の射出圧を表1に示す。
【0042】
実施例2、3および比較例2
ボンド磁石用添加剤を作製する際の配合を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ボンド磁石用コンパウンドおよびボンド磁石を得た。
【0043】
実施例および比較例において、ボンド磁石の射出成型時の射出圧を表1に示す。また、ボンド磁石の曲げ強度をインストロン万能試験機で測定した結果を表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1より、実施例1から3の組成物では、比較例1と2の組成物と比較して射出圧が低くなっていることから、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の当量に対する当量の比が特定範囲である硬化剤との硬化物を含有するボンド磁石用添加剤を含む組成物では、ボンド磁石用コンパウンドの流動性が改善することがわかった。
【0046】
【表2】
【0047】
表2より、実施例1から3のボンド磁石では、比較例1と2のボンド磁石と比較して曲げ強度が高くなっていることから、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の当量に対する当量の比が特定範囲である硬化剤との硬化物を含有するボンド磁石用添加剤を含む組成物から作製したボンド磁石では、機械特性も改善することを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のボンド磁石用添加剤によれば、ボンド磁石用コンパウンドの流動性を大きく改善し、得られたボンド磁石の機械特性も改善することができる。得られたボンド磁石は、複合材料及びボンド磁石として、モーター等の用途に好適に適用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を混錬し、射出成形機のシリンダー温度を260℃としたときに横幅10mm厚み4mm長さ80mmのキャビティーに162MPa未満の射出圧で充填可能な流動性を有するボンド磁石用コンパウンドを得る工程、および、
前記ボンド磁石用コンパウンドを射出成形する工程、を含むボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
前記射出成形する工程において、射出成形機のシリンダー温度を260℃以下として射出成形する請求項1に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項3】
前記添加剤がビフェニルタイプのエポキシ樹脂と硬化剤であるジアミノジフェニルスルホンとの硬化物である請求項1又は2に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項5】
前記磁性材料がSmFeN系の希土類磁性材料である請求項1~4のいずれか1項に記載のボンド磁石の製造方法。
【請求項6】
ボンド磁石用添加剤、磁性材料、および、熱可塑性樹脂を含み、
射出成形機のシリンダー温度を260℃としたときに横幅10mm厚み4mm長さ80mmのキャビティーに162MPa未満の射出圧で充填可能な流動性を有するボンド磁石用コンパウンド。
【請求項7】
前記添加剤がビフェニルタイプのエポキシ樹脂と硬化剤であるジアミノジフェニルスルホンとの硬化物である請求項6に記載のボンド磁石用コンパウンド。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂がナイロン樹脂である請求項6又は7に記載のボンド磁石用コンパウンド。
【請求項9】
前記磁性材料がSmFeN系の希土類磁性材料である請求項6~8のいずれか1項に記載のボンド磁石用コンパウンド。