(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147757
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20241008BHJP
G03F 1/54 20120101ALI20241008BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/54
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116779
(22)【出願日】2024-07-22
(62)【分割の表示】P 2021520828の分割
【原出願日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2019095189
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】河原 弘朋
(72)【発明者】
【氏名】羽根川 博
(72)【発明者】
【氏名】宇野 俊之
(72)【発明者】
【氏名】秋田 正文
(57)【要約】
【課題】 吸収層、または、吸収層および低反射層のエッチング条件におけるエッチング選択比が十分高く、かつ塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングプロセスにおいて、十分なエッチング速度を有するハードマスク層を備えたEUVマスクブランクの提供。
【解決手段】 基板上に、EUV光を反射する反射層と、前記反射層の保護層と、EUV光を吸収する吸収層と、ハードマスク層と、が、この順に形成され、前記保護層がルテニウム(Ru)を含有し、前記吸収層がタンタル(Ta)を含有し、前記ハードマスク層がクロム(Cr)と、窒素(N)および酸素(O)の少なくとも一方と、を含有し、前記ハードマスク層の膜密度が3.00~5.40g/cm3である、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、EUV光を反射する反射層と、前記反射層の保護層と、EUV光を吸収する吸収層と、ハードマスク層と、が、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記保護層が、ルテニウム(Ru)を含有し、
前記吸収層が、タンタル(Ta)を含有し、
前記ハードマスク層が、クロム(Cr)と、窒素(N)および酸素(O)の少なくとも一方とを含有し、
前記ハードマスク層の膜密度が3.00~5.40g/cm3である、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項2】
基板上に、EUV光を反射する反射層と、前記反射層の保護層と、EUV光を吸収する吸収層と、マスクパターンの検査光である波長190~260nmの光に対する低反射層と、ハードマスク層と、が、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
前記保護層が、ルテニウム(Ru)を含有し、
前記吸収層が、タンタル(Ta)含有し、
前記低反射層が、タンタル(Ta)および酸素(O)を含有し、
前記ハードマスク層が、クロム(Cr)と、窒素(N)および酸素(O)の少なくとも一方とを含有し、
前記ハードマスク層の膜密度が3.00~5.40g/cm3である、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記ハードマスク層が、さらに炭素(C)およびホウ素(B)の少なくとも一方を含有する、請求項1または2に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記ハードマスク層の膜厚が、2~30nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造等に使用されるEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)リソグラフィ用反射型マスクブランク(以下、本明細書において、「EUVマスクブランク」ということがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体産業において、Si基板等に微細なパターンからなる集積回路を形成する上で必要な微細パターンの転写技術として、可視光や紫外光を用いたフォトリソグラフィ法が使用されてきた。しかし、半導体デバイスの微細化が加速する一方で、従来のフォトリソグラフィ法の限界に近づいてきた。フォトリソグラフィ法の場合、パターンの解像限界は露光波長の1/2程度である。液浸法を用いても露光波長の1/4程度と言われており、露光に波長193nmのArFレーザを用いた液浸法を採用しても、解像限界は20~30nm程度と予想される。そこで20~30nm以降の微細化を目的とした露光技術として、ArFレーザよりさらに短波長のEUV光を用いた露光技術のEUVリソグラフィが有望視されている。本明細書において、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光線を指す。具体的には波長10~20nm程度、特に13.5nm±0.3nm程度の光線を指す。
【0003】
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすく、かつこの波長での物質の屈折率が1に近い。そのため、従来の可視光または紫外光を用いたフォトリソグラフィのような屈折光学系を使用できない。このため、EUV光リソグラフィでは、反射光学系、すなわち反射型フォトマスクとミラーとが使用される。
【0004】
マスクブランクは、フォトマスク製造用に用いられるパターニング前の積層体である。
EUVマスクブランクの場合、ガラス等の基板上にEUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層と、がこの順で形成された構造を有する。吸収層上には、必要に応じて、マスクパターンの検査光に対する低反射層が形成される。検査光の波長域は190~260nmである。
吸収層には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的には、タンタル(Ta)を含有する材料が使用される。低反射層には、パターン検査波長に対して低反射特性を有する材料、具体的には、Taと酸素(O)を含有する材料が使用される。
以下、本明細書において、吸収層上に低反射層が形成されている場合、吸収層を低反射層、もしくは、低反射層および吸収層と読み替える。
【0005】
上記の構造のマスクブランクから、以下の手順でフォトマスクを製造する。
マスクブランクの最上層である吸収層に、レジスト膜を塗布する。該レジスト膜に対して、電子線描画機を用いてパターンを形成する。次に、パターンが形成されたレジスト膜をマスクとして、エッチング工程を実施する。これにより、パターンが吸収層へ転写される。ここで、上記のエッチング工程で、レジスト膜も消耗するため、レジスト膜の膜厚は、十分厚くする。レジストの種類およびエッチング条件にも依存するが、通常、レジストの厚さは100nm程度である。
【0006】
近年、パターンの微細化・高密度化が進む中で、より高解像度のパターンが求められる。高解像度のパターンを得るためには、レジストの膜厚を薄くすることが必要とされる。
しかし、レジストの膜厚を薄くすると、エッチング工程実施中のレジスト膜の消耗により、吸収層へ転写されるパターン精度が低下するおそれがある。
【0007】
上述した問題点を解決するために、一般的に、吸収層のエッチング条件に対して耐性を有する材料の層、すなわちハードマスク層(エッチングマスク膜)を吸収層上に設けることでレジストを薄膜化できることが知られている(特許文献1参照)。すなわち、このようなハードマスク層を形成して、吸収層のエッチング条件における吸収層とハードマスク層とのエッチング選択比、具体的には、吸収層のエッチング条件での吸収層のエッチング速度と、ハードマスク層のエッチング速度と、の比を高めることで、レジストを薄膜化できる。
以下、本明細書において、「吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比」と言った場合、吸収層のエッチング条件における吸収層とハードマスク層とのエッチング選択比を意味し、該エッチング選択比は下記式により求められる。
エッチング選択比=吸収層のエッチング速度/ハードマスク層のエッチング速度
【0008】
特許文献1に記載の反射型マスクブランクは、吸収層(吸収体膜)がタンタルを含有する材料からなり、エッチングマスク膜がクロムを含有する材料からなり、酸素の含有量が40at%以上である。特許文献1におけるエッチングマスク膜は、本明細書におけるハードマスク層に相当する。以下、本明細書において、特許文献1におけるエッチングマスク膜をハードマスク層と記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比が高い材料のハードマスク層を吸収層上に設けることで、レジストを薄膜化できる。
しかし、ハードマスク層を設ける場合、以下の留意点がある。
特許文献1において、
図2を参照して説明するように、ハードマスク層が形成されたマスクブランクにパターン形成する場合、以下の手順で実施する。
(1)マスクブランクのハードマスク層上にレジスト膜を成膜する。
(2)レジスト膜に転写パターン(レジストパターン)を形成する。
(3)レジストパターンをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いるドライエッチングを行い、ハードマスク層に転写パターン(ハードマスクパターン)を形成する。
(4)レジストパターンを除去し、ハードマスクパターンをマスクとして、フッ素系ガスを用いるドライエッチング、および酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いたドライエッチングの順に行い、吸収層に転写パターン(吸収体パターン)を形成する。
(5)吸収体パターンの形成後、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いるドライエッチングを行い、ハードマスクパターンを除去する。
【0011】
一方、上記(4)のドライエッチングプロセスにより、吸収層に転写パターンを形成する際に、反射層を保護する目的で、反射層と吸収層との間に保護層を設ける場合がある。保護層の材料としては、酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いたドライエッチングのエッチング速度が吸収層よりも遅く、かつこのドライエッチングによりダメージを受けにくい材料として、ルテニウム(Ru)を含有する材料が広く用いられている。
【0012】
Ruを含有する材料からなる保護層は、酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いたドライエッチングによりダメージを受けにくい。しかし、日本国特開平11-354407号公報の段落0032に記載されているように、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングだと保護層がエッチングされる。そのため、上記(5)で用いられる塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングによりダメージを受けやすい。
したがって、上記(5)に要する時間が長いと、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、Ruを含有する材料からなる保護層がダメージを受けるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比が十分高く、かつ塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングプロセスにおいて、十分なエッチング速度を有するハードマスク層を備えたEUVマスクブランクの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハードマスク層に用いる材料に加えて、ハードマスク層の膜密度が、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングプロセスにおけるエッチング速度に影響することを見出した。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づき、基板上に、EUV光を反射する反射層と、反射層の保護層と、EUV光を吸収する吸収層と、ハードマスク層と、が、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
保護層が、ルテニウム(Ru)を含有し、
吸収層が、タンタル(Ta)を含有し、
ハードマスク層が、クロム(Cr)と、窒素(N)および酸素(O)の少なくとも一方とを含有し、
ハードマスク層の膜密度が3.00~5.40g/cm3であるEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
【0016】
また、本発明は、基板上に、EUV光を反射する反射層と、反射層の保護層と、EUV光を吸収する吸収層と、マスクパターンの検査光である波長190~260nmの光に対する低反射層と、ハードマスク層と、が、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクであって、
保護層が、ルテニウム(Ru)を含有し、
吸収層が、タンタル(Ta)を含有し、
低反射層が、タンタル(Ta)および酸素(O)を含有し、
ハードマスク層が、クロム(Cr)と、窒素(N)および酸素(O)の少なくとも一方とを含有し、
ハードマスク層の膜密度が3.00~5.40g/cm3であるEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
【0017】
ハードマスク層は、さらに炭素(C)およびホウ素(B)の少なくとも一方を含有してもよい。
【0018】
ハードマスク層の膜厚が、2~30nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクにおけるハードマスク層は、吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比が十分高い。そのため、高解像度のパターンを得る際に求められるレジストの薄膜化を達成できる。
本発明のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクにおけるハードマスク層は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングプロセスにおいて、十分なエッチング速度を有する。そのため、吸収層のパターン形成後、ハードマスク層を除去する際に、Ruを含有する保護層がダメージを受けるおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクにパターン形成する手順を示した概略断面図であり、ハードマスク層上にレジスト膜が形成された図である。
【
図3】
図3は、
図2に続く手順を示した概略断面図であり、レジスト膜にパターン形成された図である。
【
図4】
図4は、
図3に続く手順を示した概略断面図であり、ハードマスク層にパターン形成された図である。
【
図5】
図5は、
図4に続く手順を示した概略断面図であり、吸収層および低反射層にパターン形成された図である。
【
図6】
図6は、
図5に続く手順を示した概略断面図であり、ハードマスク層が除去された図である。
【
図7】
図7は、CrO膜中の酸素含有率と、相対エッチング速度との関係を示したグラフである。
【
図8】
図8は、実施例及び比較例におけるハードマスク層中の酸素含有率と、相対エッチング速度との関係を示したグラフである。
【
図9】
図9は、実施例及び比較例におけるハードマスク層の膜密度と、相対エッチング速度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本実施形態に係るEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを説明する。
図1は、本実施形態に係るEUVマスクブランクの一実施形態を示す概略断面図である。
図1に示すEUVマスクブランク1は、基板11上にEUV光を反射する反射層12と、反射層12の保護層13と、EUV光を吸収する吸収層14と、マスクパターンの検査に使用する検査光に対する低反射層15と、ハードマスク層16と、が、この順に形成されている。但し、本実施形態に係るEUVマスクブランクにおいて、
図1に示す構成中、基板11、反射層12、保護層13、吸収層14およびハードマスク層16のみが必須であり、低反射層15は任意の構成要素である。
なお、反射層12の保護層13とは、吸収層14へのパターン形成時に反射層12を保護する目的で設けられる層である。
以下、EUVマスクブランク1の個々の構成要素を説明する。
【0022】
(基板)
基板11は、EUVマスクブランク用の基板としての特性を満たす。そのため、基板11は、低熱膨張係数を有し、平滑性、平坦度、およびマスクブランクまたはパターン形成後のフォトマスクの洗浄等に用いる洗浄液への耐性に優れる。基板11の20℃における熱膨張係数は、0±0.05×10-7/℃が好ましく、特に好ましくは0±0.03×10-7/℃である。基板11としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO2-TiO2系ガラス等を用いるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラスや石英ガラス、シリコン、金属等の基板も使用できる。
基板11は、表面粗さ(rms)が0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度を有すると、パターン形成後のフォトマスクにおいて高反射率および転写精度が得られるため好ましい。
基板11の大きさや厚さ等はマスクの設計値等により適宜決定される。後で示す実施例では外形6インチ(152mm)角で、厚さ0.25インチ(6.3mm)のSiO2-TiO2系ガラスを使用した。
基板11の反射層12が形成される側の表面には欠点が存在しないことが好ましい。しかし、欠点が存在していても、凹状欠点および/または凸状欠点によって位相欠点が生じなければよい。具体的には、凹状欠点の深さおよび凸状欠点の高さが2nm以下、かつこれら凹状欠点および凸状欠点の半値幅が60nm以下が好ましい。
【0023】
(反射層)
反射層12は、EUVマスクブランクの反射層として所望の特性を有する限り特に限定されない。反射層12に特に要求される特性は、高EUV光線反射率である。具体的には、EUV光の波長領域の光線を入射角6度で反射層12表面に照射した際に、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。反射率の最大値は高いほど好ましく、上限は特に限定されないが、通常75%以下となる。また、反射層12の上に保護層13を設けた場合でも、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値が60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。反射率の最大値は高いほど好ましく、上限は特に限定されないが、通常75%以下となる。
【0024】
反射層12としては、高EUV光線反射率を達成するため、通常は高屈折率層と低屈折率層を交互に複数回積層させた多層反射膜が使用される。反射層12をなす多層反射膜において、高屈折率層には、Moが広く使用され、低屈折率層にはSiが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、例えば、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も使用できる。
【0025】
反射層12をなす多層反射膜を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光線反射率に応じて適宜選択できる。Mo/Si多層反射膜を例にとると、EUV光線反射率の最大値が60%以上の反射層12とするには、多層反射膜は膜厚2.3±0.1nmのMo層と、膜厚4.5±0.1nmのSi層とを繰り返し単位数が30~60になるように積層させればよい。
【0026】
なお、反射層12をなす多層反射膜を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等、周知の成膜方法を用いて所望の厚さに成膜すればよい。好ましい成膜方法としては例えば、イオンビームスパッタリング法を用いてSi/Mo多層反射膜を形成する場合、はじめにターゲットとしてSiターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを、ガス圧1.3×10-2~2.7×10-2Paの範囲で使用して、イオン加速電圧300~1500V、成膜速度0.030~0.300nm/secで厚さ4.5nmになるようにSi層を成膜する。次に、ターゲットとしてMoターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを、ガス圧1.3×10-2~2.7×10-2Paの範囲で使用して、イオン加速電圧300~1500V、成膜速度0.030~0.300nm/secで厚さ2.3nmになるようにMo層を成膜する。これを1周期として、Si層およびMo層を40~50周期積層することにより好適なSi/Mo多層反射膜が成膜される。
【0027】
反射層12表面の酸化を防止するため、反射層12をなす多層反射膜の最上層は酸化されにくい材料の層とすることが好ましい。酸化されにくい材料の層は反射層12のキャップ層として機能する。キャップ層として機能する酸化されにくい材料の層の具体例としては、Si層がある。反射層12をなす多層反射膜がSi/Mo多層反射膜である場合、最上層をSi層とすることにより、該最上層がキャップ層として機能する。その場合キャップ層の膜厚は、11±2nmが好ましい。
【0028】
(保護層)
保護層13は、エッチングプロセス、通常はドライエッチングプロセスにより吸収層14にパターン形成する際に、反射層12がかかるエッチングプロセスでダメージを受けないよう、反射層12の保護を目的として設けられる。したがって保護層の材質としては、吸収層14のエッチングプロセスによる影響を受けにくいものが選択される。具体的には、上記エッチングプロセスにおけるエッチング速度が吸収層14よりも遅く、しかもこのエッチングプロセスによるダメージを受けにくい物質が選択される。
本実施形態に係るEUVマスクブランク1では、保護層13が、ルテニウム(Ru)を含有する材料からなる。具体的には、RuおよびRu化合物が挙げられ、Ru化合物としては、RuB、RuSi、RuNb、RuTi、RuY、RuZr、RuLa等が例示される。Ruを含有する材料としては、当該材料中にRuを40.0at%以上含有する材料がドライエッチング耐久性の観点から好ましく、より好ましくは50.0at%以上、さらに好ましくは55.0at%以上含有する材料である。材料中のRuの含有量は95at%以下が好ましく、90at%以下がより好ましい。
保護層13の厚さは1~20nmが好ましく、1~5nmがより好ましい。
【0029】
保護層13は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等の周知の成膜方法を用いて成膜する。マグネトロンスパッタリング法によりRu膜を成膜する場合、ターゲットとしてRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスをガス圧1.0×10-2~1.0×100Paの範囲で使用し、投入電圧30~1500V、成膜速度0.020~1.000nm/secの条件で厚さ2~5nmとなるように成膜することが好ましい。
【0030】
(吸収層)
吸収層14に特に要求される特性は、EUV光線反射率が極めて低いことである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を吸収層14表面に照射した際に、波長13.5nm付近の最大光線反射率は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。最大光線反射率は小さいほど好ましい。
本実施形態に係るEUVマスクブランク1においては、EUV光の波長領域の光線を低反射層15表面に照射した際にも、波長13.5nm付近の最大光線反射率は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。最大光線反射率は小さいほど好ましい。
【0031】
上記の特性を達成するため、吸収層14は、EUV光の吸収係数が高い材料で構成される。本実施形態に係るEUVマスクブランク1では、吸収層14を構成するEUV光の吸収係数が高い材料として、タンタル(Ta)を含有する材料を用いる。
【0032】
Taを含有する材料は、当該材料中にTaを40.0at%以上含有することがドライエッチング特性や洗浄耐性の点から好ましく、より好ましくは50.0at%以上、さらに好ましくは55.0at%以上含有する。材料中のTaの含有量は100at%以下が好ましく、95at%以下がより好ましく、90at%以下がさらに好ましい。
吸収層14に用いるTaを含有する材料は、Ta以外にハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、錫(Sn)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、炭素(C)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、Nb、Mo、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)および窒素(N)からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素(以下、他の元素と記載する。)を含んでもよい。Taと他の元素とを含有する材料の具体例としては、例えば、TaN、TaNH、TaHf、TaHfN、TaBSi、TaBSiN、TaB、TaBN、TaSi、TaSiN、TaGe、TaGeN、TaZr、TaZrN、TaNb、TaNbN、TaMo、TaMoN、TaPd、TaSn、TaPdN、TaSn、TaCr、TaMn、TaFe、TaCo、TaAg、TaCd、TaIn、TaSb、TaWが挙げられる。なお、吸収層にはさらに酸素を含有してもよいが、ドライエッチング速度、すなわちパターニングの観点から、酸素は少ない方が好ましく、含有しない方が好ましい。
【0033】
上記した構成の吸収層14は、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法またはイオンビームスパッタリング法により形成できる。
例えば、吸収層14として、マグネトロンスパッタリング法を用いてTaNH膜を形成する場合、ターゲットとしてTaターゲットを用い、スパッタガスとして、ArとN2とH2の混合ガスを使用する。混合ガスは例えば、H2ガス濃度1~50vol%、N2ガス濃度1~80vol%、Arガス濃度5~95vol%とし、ガス圧1.0×10-1~5.0×10-1Paの範囲で、投入電力30~3000W、成膜速度0.5~60.0nm/minの条件にて、厚さ10~80nmとなるようにTaNH膜を成膜することが好ましい。
なお、Ar以外の不活性ガスを使用する場合、その不活性ガスの濃度が上記したArガス濃度と同じ濃度範囲にする。また、複数種類の不活性ガスを使用する場合、不活性ガスの合計濃度を上記したArガス濃度と同じ濃度範囲にする。
【0034】
吸収層14は、低反射層15との合計膜厚が10~90nmとなるように膜厚を設定することが好ましく、両者の合計膜厚は15nm以上がより好ましく、また、87nm以下がより好ましく、85nm以下がさらに好ましい。
【0035】
(低反射層)
低反射層15はマスクパターンの検査に使用する検査光に対して低反射となる膜で構成される。EUVマスクを作製する際、吸収層にパターンを形成した後、このパターンが設計通りに形成されているか検査する。このマスクパターンの検査では、検査光として通常波長190~260nm程度の光を使用する。つまり、この波長190~260nmの光の反射率の差、具体的には、吸収層14がパターン形成により除去されて露出した面と、パターン形成により除去されずに残った吸収層14表面と、の反射率の差によって検査される。ここで、前者の面とは保護層13表面である。したがって、検査光の波長に対する保護層13表面と、吸収層14表面と、の反射率の差が小さいと検査時のコントラストが悪くなり、正確な検査ができない。
【0036】
上記した構成の吸収層14は、検査光の波長について見た場合、光線反射率が必ずしも十分低いとは言えない。この結果、検査光の波長での吸収層14表面の反射率と、保護層13表面の反射率と、の差が小さくなり、検査時のコントラストが十分得られない可能性がある。検査時のコントラストが十分得られないと、マスク検査においてパターンの欠陥を十分判別できず、正確な欠陥検査を行えない。ただし、これは欠陥検査の観点から改善の余地があるものであって、EUVマスクブランクとして欠陥があるということではない。
【0037】
本実施形態に係るEUVマスクブランク1では、吸収層14上に検査光に対する低反射層15を形成すれば、検査光の波長での光線反射率が極めて低くなり、検査時のコントラストが良好となることから好ましい。
【0038】
低反射層15は、上記の特性を達成するため、検査光の波長の屈折率が吸収層14よりも低い材料で構成される。
低反射層15の検査光に対する反射率は、保護層13表面の検査光に対する反射率よりも15%以上低いことが好ましく、その差は20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。
【0039】
上記の特性を達成するため、本実施形態に係るEUVマスクブランク1では、Taを含有する材料で構成される吸収層14に対し、低反射層15の構成材料として、Taおよび酸素(O)を含有する材料を用いる。
【0040】
TaおよびOを含有する材料は、当該材料中にTaおよびOを合計含有率で40.0at%以上含有することが好ましく、より好ましくは50.0at%以上、さらに好ましくは55.0at%以上含有する。また、合計含有率の上限は特に限定されず、100at%でもよい。TaおよびOを含有するものとして、TaOが例示される。
【0041】
低反射層15に用いるTaおよびOを含有する材料は、TaおよびO以外に、上記(吸収層)にて例示した他の元素を含有してもよい。TaおよびO以外に上記した他の元素を含有する材料の具体例としては、上記したTaと他の元素とを含有する材料の具体例の酸化物が挙げられる。
【0042】
吸収層14上に低反射層15を形成する場合、両者の合計膜厚は10~90nmが好ましく、15nm以上がより好ましく、また、87nm以下がより好ましく、85nm以下がさらに好ましい。また、低反射層15の膜厚が吸収層14の膜厚より厚いと、吸収層14でのEUV光吸収特性が低下するおそれがある。そのため、低反射層15の膜厚は吸収層14の膜厚よりも薄いことが好ましい。このため、低反射層15の膜厚は1~20nmが好ましく、1~15nmがより好ましく、1~10nmがさらに好ましい。
【0043】
上記した構成の低反射層15は、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法またはイオンビームスパッタリング法により形成できる。
例えば、低反射層15として、マグネトロンスパッタリング法を用いてTaONH膜を形成する場合、ターゲットとしてTaターゲットを用い、スパッタガスとしてArとO2とN2とH2の混合ガスを使用する。混合ガスは例えば、H2ガス濃度1~50vol%、O2ガス濃度1~80vol%、N2ガス濃度1~80vol%、Arガス濃度5~95vol%とし、ガス圧1.0×10-1~5.0×100Paの範囲で、投入電力30~3000W、成膜速度0.01~60nm/minの条件にて、厚さ3~30nmとなるように成膜することが好ましい。
なお、Ar以外の不活性ガスを使用する場合、その不活性ガスの濃度が上記したArガス濃度と同じ濃度範囲にする。
【0044】
なお、本実施形態に係るEUVマスクブランク1において、吸収層14上に低反射層15の形成が好ましいとする理由は、パターンの検査光の波長とEUV光の波長とが異なるからである。したがって、パターンの検査光として波長13.5nm付近のEUV光を使用する場合には、吸収層14上に低反射層15を形成する必要はないと考えられる。検査光の波長は、パターン寸法が小さくなるに伴い短波長側にシフトする傾向があり、将来的には193nm、さらには13.5nmにシフトすると考えられる。検査光の波長が13.5nmの場合、吸収層14上に低反射層15を形成する必要はないと考えられる。
【0045】
(ハードマスク層)
ハードマスク層16は、吸収層14および低反射層15のエッチング条件におけるエッチング選択比が十分高いことが求められる。これを達成するため、吸収層14および低反射層15のエッチング条件に対して、ハードマスク層16が十分なエッチング耐性を有する必要がある。
上述したように、吸収層や低反射層がTaを含有する材料からなる場合、吸収層のエッチングは、フッ素系ガスを用いたドライエッチング、および酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いたドライエッチングの順に行う。そのため、ハードマスク層16は、フッ素系ガスを用いたドライエッチング、および酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いたドライエッチングに対して、高いエッチング耐性を有することが求められる。
一方、ハードマスク層16のエッチングには、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングが使用される。そのため、ハードマスク層16は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおいて、十分なエッチング速度を有することも求められる。
【0046】
上記した2つの要求のうち、前者の高いエッチング耐性を満たすため、本実施形態に係るEUVマスクブランク1のハードマスク層16は、クロム(Cr)と、窒素(N)および酸素(O)の少なくとも一方を含有する。具体的には、例えば、CrおよびNを含有するCrN膜、CrおよびOを含有するCrO膜、CrとOおよびNとを含有するCrON膜が挙げられる。
【0047】
上記した2つの要求のうち、後者の十分なエッチング速度については、ハードマスク層に含まれる元素の組成比で制御できると、特許文献1のような従来技術では考えられていた。例えば、CrO膜の場合、Oの含有量を高めると、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおけるエッチング速度が上昇するため、好ましいと考えられていた。そのため、特許文献1の反射型マスクブランクは、ハードマスク層が、クロムを含有する材料から成り、酸素の含有量が40at%以上である、とされている。
これに対し、
図7は、ハードマスク層となるCrO膜中の酸素含有率と、相対エッチング速度との関係を示したグラフである。図中の相対エッチング速度は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおいて、後述する実施例における例1のエッチング速度を1とした場合の相対速度を示した。
図7に示すように、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおいて、十分なエッチング速度を得る目的で、CrO膜中の酸素含有率を高めていくと、エッチング速度が急激に上昇して、エッチング速度の制御が困難になることが明らかになった。ハードマスク層としてCrN膜やCrON膜を用いた場合も、膜中の窒素含有率や酸素及び窒素含有率に対して、同様の現象が予測される。
【0048】
一方、後述する実施例に示すように、ハードマスク層の膜密度と、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおけるエッチング速度とが、良好な相関があることを新たに見出した。
【0049】
本実施形態に係るEUVマスクブランク1は、上記の知見に基づき、上記した2つの要求のうち、後者の十分なエッチング速度を満たすため、ハードマスク層16の膜密度が3.00~5.40g/cm3である。
ハードマスク層16の膜密度が上記範囲であれば、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおいて、十分なエッチング速度を得られる。
ハードマスク層16の膜密度が5.40g/cm3超だと、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおいて、十分なエッチング速度を得られない。そのため、上記(5)で示したドライエッチングによるハードマスクパターンの除去に要する時間が長くなり、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、Ruを含有する材料からなる保護層12がダメージを受けるおそれがある。
ハードマスク層16の膜密度が3.00g/cm3未満だと、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにおけるエッチング速度が速くなりすぎ、エッチングの制御が困難になる、また、フッ素系ガスを用いたドライエッチング、および酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いたドライエッチングに対するエッチング耐性が低下し、吸収層14および低反射層15のエッチング条件におけるエッチング選択比が低下する、等の課題が生じる。
ハードマスク層16の膜密度は、3.50g/cm3以上が好ましく、4.00g/cm3以上がより好ましく、4.20g/cm3以上がさらに好ましい。また、膜密度は5.00g/cm3以下が好ましく、4.80g/cm3以下がさらに好ましい。
ハードマスク層16の膜密度は、後述する実施例ではX線反射率法を用いて測定したが、これに限定されず、例えば、ラザフォード後方散乱分光法により測定した面密度と透過電子顕微鏡により測定した膜厚との比で密度を算出することも可能である。
【0050】
ハードマスク層16が、Crと、NおよびOの少なくとも一方を含有する場合、Cr、NおよびOのハードマスク層における含有率は好ましくは下記を満たす。
Cr:30.0~50.0at%
N:0.0~50.0at%
O:0.0~70.0at%
【0051】
ハードマスク層16は、Cr、NおよびOに加えて、炭素(C)およびホウ素(B)の少なくとも一方をさらに含有してもよい。CおよびBは、NおよびOに比べて原子量が小さいため、これらを含有させると、ハードマスク層16の膜密度を下げられる。具体的には、例えば、Cr、NおよびCを含有するCrCN膜、Cr、OおよびCを含有するCrCO膜、Cr、O、NおよびCを含有するCrCON膜、Cr、NおよびBを含有するCrBN膜、Cr、OおよびBを含有するCrBO膜、Cr、O、NおよびBを含有するCrBON膜、Cr、N、BおよびCを含有するCrBCN膜、Cr、O、BおよびCを含有するCrBCO膜、Cr、O、N、BおよびCを含有するCrBOCN膜が挙げられる。
【0052】
ハードマスク層16は、Cr、NおよびOに加えて、CおよびBの少なくとも一方をさらに含有する場合、Cr、N、O、CおよびBのハードマスク層における含有率は好ましくは下記を満たす。
Cr:30.0~50.0at%
N:0.0~50.0at%
O:0.0~70.0at%
C:0.0~30.0at%
B:0.0~50.0at%
【0053】
ハードマスク層16は、上記した特性に悪影響を及ぼさない限り、上記以外の元素を含有してもよい。例えば、H、Si、Ge、RuおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種を合計含有率で20.0at%以下含有してもよい。
【0054】
ハードマスク層16の膜厚は、2~30nmが好ましく、2~25nmがより好ましく、2~10nmがさらに好ましい。
【0055】
上記のハードマスク層16は公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法を実施することにより形成できる。
【0056】
スパッタリング法によって、CrO膜を形成する場合、例えば、He、Ar、Ne、Kr、Xeのうち少なくともひとつを含む不活性ガス(以下、単に不活性ガスと記載する。)と、O2ガスとを含む雰囲気中でCrターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2の混合ガスを用い、O2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0057】
スパッタリング法によって、CrN膜を形成する場合、不活性ガスと、窒素(N2)とを含む雰囲気中でCrターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとN2の混合ガスを用い、N2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
なお、CrN膜の形成時、スパッタガスとしてO2を導入していなくても、チャンバー中の残留水分や部材からのデガスによって、意図せず膜中に酸素が混入されることがある。この点については、後述するCrBN膜、CrBCN膜についても同様である。
【0058】
スパッタリング法によって、CrON膜を形成する場合、不活性ガスと、O2と、N2とを含む雰囲気中でCrターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2とN2の混合ガスを用いる。N2ガス濃度は14.9~99.9vol%、好ましくは20.0~80.0vol%であり、O2ガス濃度は0.1~85.0vol%、好ましくは0.5~80.0vol%であり、Arガス濃度は0.0~85.0vol%、好ましくは20.0~80.0vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上であり、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0059】
スパッタリング法によって、CrCN膜を形成する場合、不活性ガスと、N2とを含む雰囲気中で、Crターゲットと、Cターゲットとを用いたスパッタリング法、または、Crと、Cとを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとN2の混合ガスを用い、N2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0060】
スパッタリング法によって、CrCO膜を形成する場合、不活性ガスと、O2とを含む雰囲気中でCrターゲットと、Cターゲットとを用いたスパッタリング法、または、Crと、Cとを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2の混合ガスを用い、O2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上であり、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0061】
スパッタリング法によって、CrCON膜を形成する場合、不活性ガスと、O2と、N2とを含む雰囲気中でCrターゲットと、Cターゲットとを用いたスパッタリング法、または、Crと、Cとを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2とN2の混合ガスを用いる。N2ガス濃度は14.9~99.9vol%、好ましくは20~80vol%であり、O2ガス濃度は0.1~85vol%、好ましくは0.5~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0062】
スパッタリング法によって、CrBN膜を形成する場合、不活性ガスと、N2とを含む雰囲気中で、Crターゲットと、Bターゲットとを用いたスパッタリング法、または、Crと、Bとを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとN2の混合ガスを用い、N2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0063】
スパッタリング法によって、CrBO膜を形成する場合、不活性ガスと、O2とを含む雰囲気中でCrターゲットと、Bターゲットとを用いたスパッタリング法、または、Crと、Bとを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2の混合ガスを用い、O2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0064】
スパッタリング法によって、CrBON膜を形成する場合、不活性ガスと、O2と、N2とを含む雰囲気中でCrターゲットと、Bターゲットとを用いたスパッタリング法、または、Crと、Bとを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2とN2の混合ガスを用いる。N2ガス濃度は14.9~99.9vol%、好ましくは20~80vol%であり、O2ガス濃度は0.1~85vol%、好ましくは0.5~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0065】
スパッタリング法によって、CrBCN膜を形成する場合、不活性ガスと、N2とを含む雰囲気中で、Crターゲットと、Bターゲットと、Cターゲットとを用いたスパッタリング法、Crと、BおよびCのいずれか一方を含むターゲットと、他方のターゲットとを用いたスパッタリング法、Cr、BおよびCを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとN2の混合ガスを用い、N2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0066】
スパッタリング法によって、CrBCO膜を形成する場合、不活性ガスと、O2とを含む雰囲気中でCrターゲットと、Bターゲットと、Cターゲットとを用いたスパッタリング法、Crと、BおよびCのいずれか一方を含むターゲットと、他方のターゲットとを用いたスパッタリング法、Cr、BおよびCを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2の混合ガスを用い、O2ガス濃度は15~100vol%、好ましくは20~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0067】
スパッタリング法によって、CrBOCN膜を形成する場合、不活性ガスと、O2と、N2とを含む雰囲気中でCrターゲットと、Bターゲットと、Cターゲットとを用いたスパッタリング法、Crと、BおよびCのいずれか一方を含むターゲットと、他方のターゲットとを用いたスパッタリング法、Cr、BおよびCを含むターゲットを用いたスパッタリング法を実施すればよい。マグネトロンスパッタリング法を用いる場合、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
スパッタガスはArとO2とN2の混合ガスを用いる。N2ガス濃度は14.9~99.9vol%、好ましくは20~80vol%であり、O2ガス濃度は0.1~85vol%、好ましくは0.5~80vol%であり、Arガス濃度は0~85vol%、好ましくは20~80vol%である。
ガス圧は5.0×10-2~1.0×100Paであり、好ましくは1.0×10-1Pa以上、より好ましくは2.0×10-1Pa以上、また、好ましくは8.0×10-1Pa以下、より好ましくは4.0×10-1Pa以下である。
ターゲット面積当たりの投入電力密度は2.0~13.0W/cm2であり、好ましくは3.0W/cm2以上、より好ましくは4.0W/cm2以上、また、好ましくは12.0W/cm2以下、より好ましくは10.0W/cm2以下である。
成膜速度は0.010~0.400nm/secであり、好ましくは0.015nm/sec以上、より好ましくは0.020nm/sec以上、また、好ましくは0.300nm/sec以下、より好ましくは0.200nm/sec以下である。
ターゲットと基板間距離は50~500mmであり、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、また、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下である。
【0068】
なお、Ar以外の不活性ガスを使用する場合、その不活性ガスの濃度が上記したArガス濃度と同じ濃度範囲にする。また、複数種類の不活性ガスを使用する場合、不活性ガスの合計濃度を上記したArガス濃度と同じ濃度範囲にする。
【0069】
本実施形態におけるハードマスク層の膜密度は、ハードマスク層に使用される組成の成分比だけでなく、スパッタガスのガス圧、ターゲット面積当たりの投入電力密度、ターゲットと基板間距離等の成膜条件によって制御可能である。具体的には、同一の膜組成でも、低密度の膜とするためには、ガス圧をより高くする、ターゲット面積当たりの投入電力密度をより低くする、及び、ターゲットと基板間距離をより長くする、からなる群から選ばれる少なくとも一の条件を実施することで可能となる。逆に、同一組成でも高密度の膜とするためには、ガス圧をより低くする、ターゲット面積当たりの投入電力密度をより高くする、及び、ターゲットと基板間距離をより短くする、からなる群から選ばれる少なくとも一の条件を実施することで可能となる。
【0070】
本実施形態に係るEUVマスクブランク1は、反射層12、保護層13、吸収層14、およびハードマスク層16、ならびに必要に応じて形成される低反射層15やその他の保護層以外に、EUVマスクブランクの分野において公知の機能膜を有していてもよい。このような機能膜の具体例としては、例えば、日本国特表2003-501823号公報に記載されているもののように、基板の静電チャッキングを促すために、基板の裏面側に施される高誘電性コーティングが挙げられる。ここで、基板の裏面とは、
図1の基板11において、反射層12が形成されている側とは反対側の面を指す。このような目的で基板の裏面に施す高誘電性コーティングは、シート抵抗が100Ω/□以下となるように、構成材料の電気伝導率と厚さを選択する。高誘電性コーティングの構成材料としては、公知の文献に記載されているものから広く選択できる。例えば、日本国特表2003-501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、シリコン、TiN、モリブデン、クロム、TaSiからなるコーティングを適用できる。高誘電性コーティングの厚さは、例えば10~1000nmとできる。
高誘電性コーティングは、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD(化学気相蒸着:chemical vapor deposition)法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて形成できる。
【0071】
次に、本実施形態に係るEUVマスクブランクにパターン形成する手順を
図2~
図6を参照して説明する。EUVマスクブランクにパターン形成する場合、
図2に示すように、EUVマスクブランク1のハードマスク層16上にレジスト膜20を形成し、電子線描画機を用いて、
図3に示すようにレジスト膜20にパターン形成する。次に、パターン形成されたレジスト膜をマスクとして、
図4に示すように、ハードマスク層16にパターン形成する。なお、
図4は、ハードマスク層16のパターン形成後、レジスト膜20を除去した状態を示している。ハードマスク層16のパターン形成には、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを実施すればよい。次に、パターン形成されたハードマスク層16をマスクとして、
図5に示すように、吸収層14および低反射層15にパターン形成する。吸収層14および低反射層15のパターン形成には、フッ素系ガスを用いて、低反射層15をドライエッチングした後に、酸素ガスを含まない塩素系ガスを用いてドライエッチングを実施すればよい。次に、
図6に示すように、ハードマスク層16を除去する。ハードマスク層16の除去には、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを実施すればよい。
【実施例0072】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例1~例10のうち、例1~例3、例5、例7が比較例、例4、例6、例8~例10が実施例である。
【0073】
[例1]
例1では、
図1に示す構成のEUVマスクブランク1を作製した。
成膜用の基板11として、SiO
2-TiO
2系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm)を使用した。このガラス基板の20℃における熱膨張係数は0.2×10
-7/℃、ヤング率は67GPa、ポアソン比は0.17、比剛性は3.07×10
7m
2/s
2である。このガラス基板を研磨により、表面粗さ(rms)が0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度に形成した。
【0074】
基板11の裏面側には、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCr膜を成膜することによって、シート抵抗100Ω/□の高誘電性コーティングを施した。
平板形状をした通常の静電チャックに、形成したCr膜を介して基板11(外形6インチ(152mm)角、厚さ6.3mm)を固定して、該基板11の表面上にイオンビームスパッタリング法を用いてSi層(膜厚4.5nm)およびMo層(膜厚2.3nm)を交互に成膜することを40周期繰り返すことにより、合計膜厚272nm(=(4.5nm+2.3nm)×40)のSi/Mo多層反射膜(反射層12)を形成した。
さらに、Si/Mo多層反射膜(反射層12)上に、イオンビームスパッタリング法を用いてRu膜(膜厚2.5nm)と成膜することにより、保護層13を形成した。
【0075】
Si層、Mo層およびRu膜の成膜条件は以下の通りである。
(Si層の成膜条件)
ターゲット:Siターゲット(ホウ素ドープ)
スパッタガス:Arガス(ガス圧2.0×10-2Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.077nm/sec
膜厚:4.5nm
(Mo層の成膜条件)
ターゲット:Moターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧2.0×10-2Pa)
電圧:700V
成膜速度:0.064nm/sec
膜厚:2.3nm
(Ru膜の成膜条件)
ターゲット:Ruターゲット
スパッタガス:Arガス(ガス圧2.0×10-2Pa)
電圧:500V
成膜速度:0.023nm/sec
膜厚:2.5nm
【0076】
次に、保護層13上に、Ta、NおよびHを含有する吸収層14(TaNH膜)を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成した。吸収層14の成膜条件は以下の通りである。(吸収層14(TaNH膜)の成膜条件)
ターゲット:Taターゲット
スパッタガス:ArとN2とH2の混合ガス(Ar:89vol%、N2:8.3vol%、H2:2.7vol%、ガス圧:4.6×10-1Pa)
投入電力:300W
成膜速度:1.5nm/min
膜厚:70nm
【0077】
次に、吸収層14(TaNH膜)上にTa、O、NおよびHを含有する低反射層15(TaONH膜)を形成した。低反射層15(TaONH膜)の成膜条件は以下の通りである。
(低反射層15(TaONH膜)の成膜条件)
ターゲット:Taターゲット
スパッタガス:ArとO2とN2とH2の混合ガス(Ar:48vol%、O2:36vol%、N2:14vol%、H2:2vol%、ガス圧:3.0×10-1Pa)
投入電力:450W
成膜速度:1.5nm/min
膜厚:10nm
【0078】
次に、低反射層15上に、CrおよびOを含有するハードマスク層16(CrO膜)を、マグネトロンスパッタリング法を用いて形成することにより、基板11上に反射層12、保護層13、吸収層14、低反射層15およびハードマスク層16がこの順で形成されたEUVマスクブランク1を得た。
ハードマスク層16の成膜条件は以下の通りである。
(ハードマスク層16(CrO膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:ArとO2の混合ガス(Ar:35vol%、O2:65vol%、ガス圧:1.5×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:4.1W/cm2
成膜速度:0.250nm/sec
ターゲットと基板間距離:300mm
膜厚:10nm
【0079】
上記の手順で得られたEUVマスクブランク1のハードマスク層16(CrO膜)に対し下記の評価(1)~(4)を実施した。
(1)膜組成
ハードマスク層16(CrO膜)の組成を、X線光電子分光装置(X-ray Photoelectron Spectrometer)(PERKIN ELEMER-PHI社製)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectrometer)(PHI-ATOMIKA製)、ラザフォード後方散乱分光装置(Rutherford Back Scattering Spectroscopy)(神戸製鋼社製)を用いて測定した。ハードマスク層16(CrO膜)の組成比(at%)は、Cr:O=75.8:24.2、すなわち、Crの含有率が75.8at%、Oの含有率が24.2at%であった。
【0080】
(2)膜密度
膜密度については、上記手順で作製されたEUVマスクブランク1を用いて評価する代わりに以下の方法で評価した。
試料台である4インチ石英基板上に、試料としてハードマスク層16(CrO膜)を各々上記と同条件で成膜した。上記の試料に対して、X線反射率法(XRR(X-ray Reflectometry))を用いた膜密度の測定を行った。
【0081】
(3)エッチング特性(1)
エッチング特性(1)については、上記手順で作製されたEUVマスクブランク1を用いて評価する代わりに以下の方法で評価した。
ICP(誘導結合方式)プラズマエッチング装置の試料台上に、試料として、ハードマスク層16(CrO膜)が上記と同条件で成膜されたSiチップ(10mm×30mm)を設置した。上記の試料に対して、以下に示す条件でICPプラズマエッチングして、エッチング速度を求め、例1のエッチング速度を1とした場合の相対速度として示した。
ICPアンテナバイアス:200W
基板バイアス:40W
エッチング時間:30sec
トリガー圧力:3.0×100Pa
エッチング圧力:3.0×10-1Pa
エッチングガス:Cl2/O2
ガス流量(Cl2/O2):10/10sccm
【0082】
(4)エッチング特性(2)
エッチング特性(2)については、上記手順で作製されたEUVマスクブランク1を用いて評価する代わりに以下の方法で評価した。
試料として吸収層14(TaNH膜)、ハードマスク層16(CrO膜)が各々上記と同条件で成膜されたSiチップ(10mm×30mm)を設置した。上記の試料に対して、以下に示す酸素ガスを含まない塩素系ガスプロセスでICPプラズマエッチングした。なお、吸収層14(TaNH膜)は下記に示すフッ素系ガスプロセスで表面自然酸化膜を除去したのちに、下記に示す酸素ガスを含まない塩素系ガスプロセスでICPプラズマエッチングした。
(フッ素系ガスプロセス)
ICPアンテナバイアス:100W
基板バイアス:40W
エッチング時間:15sec
トリガー圧力:3.0×100Pa
エッチング圧力:3.0×10-1Pa
エッチングガス:CF4/He
ガス流量(Cl2/He):4/16sccm
(酸素ガスを含まない塩素系ガスプロセス)
ICPアンテナバイアス:100W
基板バイアス:40W
エッチング時間:30sec
トリガー圧力:3.0×100Pa
エッチング圧力:3.0×10-1Pa
エッチングガス:CF4/He
ガス流量(CF4/He):12/12sccm
TaNH膜およびCrO膜のエッチング速度を求めた。下記式に基づき、吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比を算出した。
エッチング選択比=TaNH膜のエッチング速度/CrOのエッチング速度
得られた結果から、吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比を以下の基準で評価した。Aが非常に良好、Bが良好、Cが不良である。
A:TaNH膜のエッチング速度/CrOのエッチング速度>7/1
B:TaNH膜のエッチング速度/CrOのエッチング速度=7/1~3/1
C:TaNH膜のエッチング速度/CrOのエッチング速度<3/1
【0083】
(5)Ru保護層耐久性
EUVマスクブランクは、ハードマスクパターンの除去目的で実施する、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いるドライエッチングによる、Ruを含有する材料からなる保護層(以下、Ru保護層と記載する場合がある。)のダメージを低減する必要がある。各種ハードマスク層に対して当該プロセスの適用条件を鋭意研究した成果として、上記エッチング特性(1)記載の相対速度が1.65~3.5だと、Ru保護層のダメージを低減できることを見い出した。そのため、上記エッチング特性(1)記載の相対速度が1.65~3.5の場合、Ru保護層耐久性が非常に良好であるとして表中ではAと記載し、1.65未満の場合、または3.5超の場合、Ru保護層耐久性が不良であるとして、表中ではCと記載した。
【0084】
[例2]
例2は、ハードマスク層16として、下記条件でCrON膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrON膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(Ar:27vol%、O2:55vol%、N2:18vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:4.1W/cm2
成膜速度:0.270nm/sec
ターゲットと基板間距離:300mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrON膜)の組成比(at%)は、Cr:O:N=45.8:44.2:10.0、すなわち、Crの含有率が45.8at%、Oの含有率が44.2at%、Nの含有率が10.0at%であった。
【0085】
[例3]
例3は、ハードマスク層16として、下記条件でCrON膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrON膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(Ar:16vol%、O2:67vol%、N2:17vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:4.1W/cm2
成膜速度:0.040nm/sec
ターゲットと基板間距離:300mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrON膜)の組成比(at%)は、Cr:O:N=34.9:64.7:0.4、すなわちCrの含有率が34.9at%、Oの含有率が64.7at%、Nの含有率が0.4at%であった。
【0086】
[例4]
例4は、ハードマスク層16として、下記条件でCrON膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrON膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(Ar:33vol%、O2:45vol%、N2:22vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:4.1W/cm2
成膜速度:0.027nm/sec
ターゲットと基板間距離:300mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrON膜)の組成比(at%)は、Cr:O:N=36.5:62.3:1.2、すなわち、Crの含有率が36.5at%、Oの含有率が62.3at%、Nの含有率が1.2at%であった。
【0087】
[例5]
例5は、ハードマスク層16として、下記条件でCrN膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrN膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:N2ガス(Ar:50vol%、N2:50vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:9.9W/cm2
成膜速度:0.053nm/sec
ターゲットと基板間距離:150mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrN膜)の組成比(at%)は、Cr:O:N=49.4:3.0:47.6、すなわち、Crの含有率が49.4at%、Oの含有率が3.0at%、Nの含有率が47.6at%であった。
ハードマスク層16(CrN膜)はOを含有しているが、CrN膜の成膜時にチャンバー中の残留水分や部材からのデガスにより、酸素が混入したと考えられる。
【0088】
[例6]
例6は、ハードマスク層16として、下記条件でCrN膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrN膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:N2ガス(N2:100vol%、ガス圧:8.7×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:9.9W/cm2
成膜速度:0.045nm/sec
ターゲットと基板間距離:150mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrN膜)の組成比(at%)は、Cr:O:N=49.6:9.6:40.8、すなわち、Crの含有率が49.6at%、Oの含有率が9.6at%、Nの含有率が40.8at%であった。
ハードマスク層16(CrN膜)はOを含有しているが、CrN膜の成膜時にチャンバー中の残留水分や部材からのデガスにより、酸素が混入したと考えられる。
【0089】
[例7]
例7は、ハードマスク層16として、下記条件でCrCN膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrCN膜)の成膜条件)
ターゲット:CrターゲットとCターゲットの2元スパッタ
スパッタガス:ArとN2の混合ガス(Ar:78.5vol%、N2:21.5vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
Crターゲット面積あたりの投入電力密度:9.9W/cm2
Cターゲット面積あたりの投入電力密度:12.3W/cm2
成膜速度:0.130nm/sec
ターゲットと基板間距離:150mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrCN膜)の組成比(at%)は、Cr:C:O:N=50.2:19.1:3.6:27.1、すなわち、Crの含有率が50.2at%、Cの含有率が19.1at%、Oの含有率が3.6at%、Nの含有率が27.1at%であった。
ハードマスク層16(CrCN膜)はOを含有しているが、CrN膜の成膜時にチャンバー中の残留水分や部材からのデガスにより、酸素が混入したと考えられる。
【0090】
[例8]
例8は、ハードマスク層16として、下記条件でCrCN膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrCN膜)の成膜条件)
ターゲット:CrターゲットとCターゲットの2元スパッタ
スパッタガス:N2ガス(N2:100vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
Crターゲット面積あたりの投入電力密度:9.9W/cm2
Cターゲット面積あたりの投入電力密度:2.0W/cm2
成膜速度:0.110nm/sec
ターゲットと基板間距離:150mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrCN膜)の組成比(at%)は、Cr:C:O:N=36.9:25.2:0.2:37.7、すなわち、Crの含有率が36.9at%、Cの含有率25.2at%、Oの含有率が0.2at%、Nの含有率が37.7at%であった。
ハードマスク層16(CrCN膜)はOを含有しているが、CrN膜の成膜時にチャンバー中の残留水分や部材からのデガスにより、酸素が混入したと考えられる。
【0091】
[例9]
例9は、ハードマスク層16として、下記条件でCrCON膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrCON膜)の成膜条件)
ターゲット:CrターゲットとCターゲットの2元スパッタ
スパッタガス:ArとO2とN2の混合ガス(Ar:59vol%、O2:1vol%、N2:40vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
Crターゲット面積あたりの投入電力密度:9.9W/cm2
Cターゲット面積あたりの投入電力密度:4.9W/cm2
成膜速度:0.130nm/sec
ターゲットと基板間距離:150mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrCON膜)の組成比(at%)は、Cr:C:O:N=40.9:9.5:15.9:33.7、すなわち、Crの含有率が40.9at%、Cの含有率が9.5at%、Oの含有率が15.9at%、Nの含有率が33.7at%であった。
【0092】
[例10]
例10は、ハードマスク層16として、下記条件でCrO膜を成膜した以外は、例1と同様の手順でEUVマスクブランクを作製した。
(ハードマスク層16(CrO膜)の成膜条件)
ターゲット:Crターゲット
スパッタガス:ArとO2の混合ガス(Ar:10vol%、O2:90vol%、ガス圧:2.6×10-1Pa)
ターゲット面積あたりの投入電力密度:6.5W/cm2
成膜速度:0.038nm/sec
ターゲットと基板間距離:300mm
膜厚:10nm
ハードマスク層16(CrO膜)の組成比(at%)は、Cr:O=33.5:66.5、すなわち、Crの含有率が33.5at%、Oの含有率が66.5at%であった。
【0093】
【0094】
例1~例10について、ハードマスク層の膜組成における酸素含有率と、相対エッチング速度との関係を
図8に示した。
図8中、例4、例6、例8~例10を実施例として△で示し、例1~例3、例5、及び例7を比較例として□で示した。
図から明らかなように、ハードマスク層の膜組成における酸素含有率と、相対エッチング速度との間には有意な相関は認められなかった。
【0095】
例1~例10について、ハードマスク層の膜密度と、相対エッチング速度との関係を
図9に示した。
図9中、例4、例6、例8~例10を実施例として△で示し、例1~例3、例5、及び例7を比較例として□で示した。
図から明らかなように、ハードマスク層の膜密度と、相対エッチング速度との間には良好な相関が認められた。
【0096】
表1から分かるように、ハードマスク層の膜密度が3.00~5.40g/cm3の例4、例6、例8~例10は、いずれもRu保護層耐久性がAと非常に良好であり、吸収層との選択比、すなわちエッチング選択比もA又はBで非常に良好又は良好であった。ハードマスク層の膜密度が5.40g/cm3超の例1、例2、例5、例7は、いずれもRu保護層耐久性がCと不良であった。ハードマスク層の膜密度が3.00g/cm3未満の例3は、Ru保護層耐久性がCと不良であり、エッチング選択比もCと不良であった。
【0097】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年5月21日出願の日本特許出願(特願2019-095189)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。