(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147811
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】EUV光を提供するフォトマスクを備えるシステム
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20241008BHJP
【FI】
G03F1/84
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122255
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2021575284の分割
【原出願日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】62/864,313
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/900,539
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハイフェン
(72)【発明者】
【氏名】クヴァム デーモン
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイ-ファン
(57)【要約】
【課題】インサイチューEUVTDIセンサ直線性校正を実行する効果的且つ利便的なシステムを提供する。
【解決手段】システムは、極端紫外(EUV)ビームによる照射に応答して異なる強度の極端紫外(EUV)光を提供する複数個の別個パターン化領域を含むフォトマスクを備える。複数個の別個パターン化領域が、EUVアブソーバライン及びEUV反射性多層被覆が交番する個別ラインスペース格子パターンを有する複数個の領域を備え、個別ラインスペース格子パターン同士が個々別々のアブソーバデューティ比、但しアブソーバデューティ比は格子ピッチに対するEUVアブソーバライン幅の比、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
極端紫外(EUV)ビームによる照射に応答して異なる強度の極端紫外(EUV)光を提供する複数個の別個パターン化領域を含むフォトマスク
を備えるシステム。
【請求項2】
前記複数個の別個パターン化領域が、EUVアブソーバライン及びEUV反射性多層被覆が交番する個別ラインスペース格子パターンを有する複数個の領域を備え、
前記個別ラインスペース格子パターン同士が個々別々のアブソーバデューティ比、但し前記アブソーバデューティ比は格子ピッチに対する前記EUVアブソーバライン幅の比、を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記個別ラインスペース格子パターンが、個々別々なEUVアブソーバライン幅を有しつつも同一の格子ピッチを有する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記EUVアブソーバラインが窒化タンタル硼素(TaBN)を含有し、
前記EUV反射性多層被覆が、交番するモリブデン(Mo)層及びシリコン(Si)層を備える、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数個の別個パターン化領域が、個別EUV反射性多層被覆を有する複数個の領域を備え、
前記個別EUV反射性多層被覆が個々別々な個数の層を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記個別EUV反射性多層被覆が、個々別々な個数の交番するMo層及びSi層を備える、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数個の別個パターン化領域により傾斜EUV反射性多層被覆が構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記傾斜EUV反射性多層被覆が、複数個の交番するMo層及びSi層を備え、
前記交番するMo層及びSi層が、第1方向沿いでは傾斜厚、その第1方向に対し垂直な第2方向沿いでは均一厚を有し、
前記交番するMo層及びSi層が一定の厚み比率を有する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数個の別個パターン化領域が、個別EUVアブソーバエリア及び個別EUV反射性多層被覆が備わり当該個別EUVアブソーバエリアが当該個別EUV反射性多層被覆より上方にある複数個の領域を備え、
前記個別EUVアブソーバエリアが個々別々な厚みを有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記個別EUVアブソーバエリアが、TaBNと、そのTaBNより上方にあるTaBOキャッピング層と、を備え、
前記個別EUV反射性多層被覆が、同一個数の交番するMo層及びSi層を備える、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
極端紫外(EUV)光を生成するEUV光源と、
時間遅延積分(TDI)センサと、
を有するTDI検査ツールを有し、前記フォトマスクは前記TDI検査ツールに実装され、
前記フォトマスクから集光されるEUV光の強度を計測すべく前記TDI検査ツール内に実装される参照強度検出器と、
をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示はイメージセンサに関し、より具体的には、極端紫外(EUV)における時間遅延積分(TDI)イメージセンサの校正に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願]
本願では、2019年6月20日付米国仮特許出願第60/864313号に基づき優先権を主張し、参照によりその全容をあらゆる目的で本願に繰り入れる。
【0003】
フォトマスク(即ちレティクル)を検査するための光学検査ツールではTDIイメージセンサ(TDIセンサと略称)が用いられている。フォトマスク検査画像を強度歪ほぼ無しで記録するには、TDIセンサの直線性(非直線性でも同様)を画素レベルに至るまで正確に校正しなければならない。193nm光を用いる光学検査ツールのTDIセンサの直線性を校正するのであれば、様々な強度レベルの193nm光を発生させて、それら様々な強度レベルでの画像を記録する。この校正プロセス向けに様々な強度レベルを発生させうる光強度制御がポラライザを用い実現されており、これは193nm光の偏向状態をビームプロファイル変更無しで制御するものである。小さな無パターンマスクエリアを、フルTDIを用い撮像する。校正済の参照強度検出器を強度制御の下流に配置する。そのTDIセンサからの画素毎TDI信号と参照強度検出器からの参照信号とを比較することで、そのTDIセンサの直線性を校正する。この校正プロセスは透過型光学系に依拠している。
【0004】
TDIセンサ直線性校正は、極端紫外(EUV)フォトマスク検査ツール(例.13.5nm波長その他のEUV波長の光を用いるツール)でも求められる。しかしながら、何れの既知素材も(程度の差こそあれ)EUV光を強く吸収するので、193nm検査ツールでのそれに類する透過型の方法では、EUVTDIセンサの直線性校正はうまく実行できない。採りうる方法の一つに、減衰レベルが異なる複数個の中性濃度(ND)フィルタを用い入射EUV光の強度を制御するものがある。そうしたNDフィルタ向けの素材は見出しうるけれども(例.ポリシリコン)、それらNDフィルタの厚みが数十ナノメートルオーダなる極端な薄さになるであろう。この薄さのため、TDIセンサ直線性校正にNDフィルタを用いることは、非現実的となっている。
【0005】
TDIセンサ直線性校正は、旧来、可視波長光源を用いベンチセットアップ上で実行されてきた。ホモジナイジング球により略均一な照明をTDIセンサ上に発生させるものである。その光の強度を変化させること及びよく校正されている参照検出器を用いることで、TDIセンサ直線性(即ちTDI応答非直線性)を校正することができる。しかしながら、この旧来的手法には幾つかの難点がある。第1に、この手法では、センサの非直線性の波長依存性が勘案されない。第2に、TDIセンサ上での照明プロファイルを攪乱させることなく全体的な光強度を変化させることが難しい。第3に、EUVTDIセンサ直線性校正は、インサイチューで(即ち検査ツール内に実装されているTDIセンサで以てその検査ツールの内部で)実行されるべきである。インサイチュー(その場)校正が望まれるのは利便性のためであり、EUV検査システムの複雑さ故にベンチ校正のためTDIセンサを取り外すのは非現実的である。インサイチュー校正は校正コストを低減する上でも望ましく、ベンチ校正では高価なリソース、例えば特別なEUV光源、真空条件及び室内スペースが必要になってしまう。そして、TDIセンサでは、その寿命を通じ数個のデッド画素(即ち欠陥性になり稼働を停止する画素)が累積することがある。これらデッド画素が原因となり、TDIセンサのスキャン平均化非直線性を周期的にインサイチュー校正する必要性が生まれる。ベンチ校正ではこのスキャン平均化非直線性を判別することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0244142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、インサイチューEUVTDIセンサ直線性校正を実行する効果的且つ利便的な方法及びシステムが求められている。この需要は、様々な強度のEUV光のインサイチュー生成を可能にするテスト用フォトマスクで以て、充足させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある種の実施形態に係るイメージセンサ校正用テスト構造は、極端紫外(EUV)ビームでの照明に応じ個々別々な強度のEUV光をもたらす複数個の別個パターン化領域を伴うフォトマスクを有する。
【0009】
ある種の実施形態に係る校正方法では、複数個の別個パターン化領域付のフォトマスクを時間遅延積分(TDI)検査ツール内にロードする。それら複数個の別個パターン化領域をEUV光ビームで以て順次照明する。それら複数個の別個パターン化領域のうちの個別の別個パターン化領域を照明しつつ、そのTDI検査ツール内のTDIセンサを用い当該個別の別個パターン化領域の個別撮像インスタンスを実行する。それら個別撮像インスタンスを実行しつつ、そのフォトマスクから集光されるEUV光の参照強度を、参照強度検出器を用い計測する。個別撮像インスタンスの結果と参照強度検出器により計測されたEUV光の参照強度とに基づきそのTDIセンサの直線性を判別する。
【0010】
ある種の実施形態に係るシステムは、EUV光源及びTDIセンサを有するTDI検査ツールを有する。本システムは、そのTDI検査ツール内にロードされるフォトマスクをも有する。そのフォトマスクは、当該EUV光源により生成されたEUVビームによる照明に応じ個々別々な強度のEUV光をもたらす、複数個の別個パターン化領域を有する。本システムは、更に、そのフォトマスクから集光されるEUV光の強度を計測すべくそのTDI検査ツール内に実装された、参照強度検出器を有する。
【0011】
記載されている様々な実現形態をより良好に理解するには、以下の図面と併せ、後掲の詳細な説明を参照すべきである。図面は一定縮尺でないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ある種の実施形態に従いEUVフォトマスク検査ツールにて検査されているフォトマスクのオフ軸撮像を示す図である。サイズ及び角度は一定縮尺ではない。
【
図2】ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上のある領域内に所在するラインスペース格子パターンの平面図である。
【
図3】ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上のある領域内に所在するラインスペース格子パターンの断面図である。
【
図4】ある種の実施形態に従いテスト用フォトマスクのオフ軸撮像を示す図である。サイズ及び角度は一定縮尺ではない。
【
図5A】ある種の実施形態に係り、テスト用フォトマスクの表面上にてある度合いの反射率を有するEUV反射性エリアとして働く個別多層被覆の断面図である。
【
図5B】ある種の実施形態に係り、テスト用フォトマスクの表面上にて別の度合いの反射率を有するEUV反射性エリアとして働く別の個別多層被覆の断面図である。
【
図6】ある種の実施形態に従い多層被覆の反射率の計算値とそれら被覆内の二重層の個数との関係を示す描線図である。
【
図7】ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上にある傾斜多層被覆の断面図である。
【
図8A】ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上にある個別領域の断面図であり、個別EUV反射性多層被覆上に配置されていてある厚みを有する、個別EUVアブソーバエリアを有している。
【
図8B】ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上にある別の個別領域の断面図であり、個別EUV反射性多層被覆上に配置されていて別の厚みを有する、個別EUVアブソーバエリアを有している。
【
図9】ある種の実施形態に従い
図8A及び
図8Bの構造の反射率の計算値とそのEUVアブソーバの厚みとの関係を示す描線図である。
【
図10】ある種の実施形態に係るEUVフォトマスク検査ツールの校正及び使用方法を示すフローチャートである。
【
図11】ある種の実施形態に係るフォトマスク検査システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面及び明細書を通じ、類似した参照符号は対応する諸部分を指している。
【0014】
以下、添付図面にその例が描かれている様々な実施形態を詳細に参照する。以下の詳細記述では、それら様々な記載諸実施形態の一貫理解をもたらすべく多様な具体的細部を説明している。しかしながら、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には察せられる通り、それら様々な記載諸実施形態をそれら具体的細部抜きで実施することもできる。他方で、周知の方法、手順、部材、回路及びネットワークについては、諸実施形態の諸側面を不必要に曖昧化させないため記述を省いている。
【0015】
極端紫外(EUV)フォトマスク(即ちレティクル)検査ツールは、通常、完全に反射型である。EUVは一般的でよく知られており且つよく理解されている技術用語であり、124nm~10nmの範囲内の波長を有する光のことを指している。例えば、EUVフォトマスク検査ツールにて用いるEUV光を13.5nm光とすることができる。EUVフォトマスク検査ツール内の撮像システムは数個のEUV反射鏡を有するものであり、透過光学系を有していない。その照明路(即ち検査対象フォトマスクにEUV光を供給する光路)と、撮像路(即ち検査対象フォトマスクからの集光用の光路)とが、空間的に分離されている。こうした検査ツールは、従ってオフ軸撮像デザインを有するものとなる。
【0016】
図1に、ある種の実施形態に従いEUVフォトマスク検査ツール(例.
図11の検査ツール1130)にて検査されているフォトマスク100のオフ軸撮像を示す。フォトマスク100は、欠陥に関し検査されるパターン化マスク面102を有している。EUV光源(図示せず)(例.
図4の光源402)により生成された照明EUV光円錐104がそのパターン化マスク面102上に集束され、ある小サイズエリア(例.200μm×200μm)が照明されている。照明されているパターン化マスク面102に発する撮像EUV光円錐108が集光され、TDIセンサ116により撮像されている。照明EUV光円錐104が撮像EUV光円錐108から空間分離されている。照明EUV光円錐104は、パターン化マスク面102の表面法線112(即ち法線方向)に対しある主光線角(CRA)106をなしている。撮像EUV光円錐108は表面法線112に対しあるCRA110をなしている。撮像路の数値開口(NA)が撮像EUV光円錐108のサイズを決めている。撮像路(即ち撮像EUV光円錐108の経路)上にはEUV撮像光学系114があり、それによりその撮像EUV光円錐108がTDIセンサ116上へと集束され、それにより全TDI画素が照明されている。EUV撮像光学系114はEUV鏡を有している。照明路(即ち照明EUV光円錐104の経路)にも、照明EUV光円錐104をパターン化マスク面102に差し向けるのに用いられるEUV鏡付のEUV光学系を、設けることができる。簡略化のため
図1にはこれらの鏡を示していない。
【0017】
EUVフォトマスク検査ツールは、通常は時間遅延積分(TDI)を実行するので、TDIイメージセンサ(TDIセンサと略称)を有している。TDIセンサは、検査結果(例.検査されたフォトマスクの画像)が確と正確になるよう校正されるべきである。TDIセンサを校正する際にはその直線性を判別する。直線性とは、様々な強度レベルに関し入射光強度がそのTDIセンサにてどれだけ正確に計測されるか、のことである。不正確性の定量結果は、そのTDIセンサでの対応する非直線性の度合いを指し示すものとなる。従って、TDIセンサの直線性の判別は、そのTDIセンサに係るあらゆる非直線性の定量を孕んでいる。校正を通じ判別されたTDIセンサ直線性(非直線性でも同様)を格納しておき、後続の検査結果(例.その検査ツールにより後続して検査されたフォトマスクの画像)を補正するのに用いることができる。
【0018】
従って、TDIセンサの校正は、そのTDIセンサ上に入射される様々な強度レベルのEUV光の生成を孕んでいる。そうした校正を、その表面上に複数個の別個パターン化領域があるEUVテスト用フォトマスク(即ち校正用フォトマスク)を用い、EUVビーム(例.照明EUV光円錐104)による個別領域の照明に応じてそのTDIセンサに個々別々な強度のEUV光を供給することにより、EUVフォトマスク検査ツールにてインサイチュー実行することができる。別々の別個パターン化領域が、同じEUVビームで以て照明されたときに(即ち同じEUVビームプロファイルを各パターン化領域上に入射させたときに)、別々の強度のEUV光を発生させる(例.反射する)。
【0019】
ある種の実施形態では、それら別個パターン化領域が、EUVアブソーバライン及びEUV反射性エリアが交番する個別ラインスペース格子パターン(即ち格子)付の領域を有するものとされる。別々の領域のラインスペース格子パターンが、別々のアブソーバデューティ比を有するものとされる。ある種の実施形態では、それら別個パターン化領域が、様々な度合いの反射率を呈するEUV反射性エリアを有するものとされる。ある種の実施形態では、それら別個パターン化領域が、厚みに傾斜があり従って反射率が変動するEUV反射性エリアを構成する。ある種の実施形態では、それら別個パターン化領域が、様々な厚みのEUVアブソーバエリアを有し、各EUVアブソーバエリアがEUV反射性エリアより上方にあるものとされる。
【0020】
[EUVアブソーバライン及びEUV反射性エリアが交番するラインスペース格子パターン]
図2は、ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上のある領域内に所在するラインスペース格子パターン200の平面図である。このラインスペース格子パターン200は、交番するEUV反射性多層被覆202(即ち鏡状被覆)及びEUVアブソーバライン204を有している。EUVアブソーバライン204の周期(即ちEUVアブソーバライン204の始縁からその次のEUVアブソーバライン204の始縁までの間隔)が格子ピッチ206である。そのピッチに対するEUVアブソーバライン204の幅(即ちEUVアブソーバライン幅)の比のことを、アブソーバデューティ比と呼ぶ(この幅は
図2ではx方向沿い)。ある種の実施形態では、校正中に照明路及び撮像路のCRA106及び110(
図1)により形成される平面に対し垂直になるよう、EUVアブソーバライン204の向きが設定される。
【0021】
図3は、ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上のある領域内に所在するラインスペース格子パターン300の断面図である。このラインスペース格子パターン300はラインスペース格子パターン200(
図2)の一例であり、格子ピッチ206で以て交番するEUV反射性多層被覆316及びEUVアブソーバライン318を有している。EUV反射性多層被覆316,EUVアブソーバライン318は、それぞれEUV反射性多層被覆202,EUVアブソーバライン204(
図2)の例である。
【0022】
EUV反射性多層被覆316(実質的には単一多層被覆をEUVアブソーバライン318により様々なEUV反射性エリアに分けたもの)は、基板(例.ブランクフォトマスク)302より上方にあり交番しているモリブデン(Mo)層304及びシリコン(Si)層306を有しており、キャッピング層308によりそれら交番するMo層304及びSi層306が覆われている。キャッピング層308はルテニウム(Ru)か硼素(B)にすればよい。隣り合うMo層304及びSi層306の対それぞれのことをMoSi二重層314と呼ぶ。ある種の実施形態ではMo層304の厚みが2.8nm、Si層306の厚みが4.2nm、キャッピング層308の厚みが2.5nmとされる(厚みは
図3ではz方向沿い)。EUV反射性多層被覆316は、EUV光に関し完全に反射性ではなくて部分的に反射性である(多層被覆316の反射率については
図6との関連で後に論ずる)。MoSi二重層314の個数は、比較的高い度合いの反射率(例.少なくとも60%或いは少なくとも65%の反射率)がもたらされるよう選択される。ある種の実施形態では、ラインスペース格子パターン300におけるMoSi二重層314の個数が40、或いは40~45、或いは35~40、或いは50とされる。
【0023】
EUVアブソーバライン318は多層被覆316より上方に配置されている。EUVアブソーバライン318は、キャッピング層308より上方にある窒化タンタル硼素(TaBN)層310と、そのTaBN層310より上方にある酸化タンタル硼素(TaBO)キャッピング層312とを有している。ある種の実施形態ではTaBOキャッピング層312の厚みが2nmとされる。TaBNはEUV高吸収性素材である。TaBN層310の厚みは可変であり、実質的に全ての入射EUV光を吸収するよう(例.後に論ずる
図9に従い)選択される。ある種の実施形態ではTaBN層310の厚みが70~80nmとされる。
【0024】
テスト用フォトマスクの表面上の様々な領域に個別ラインスペース格子パターン200(
図2)(例.
図3のラインスペース格子パターン300)があり、またそれらが個別のアブソーバデューティ比(即ち個々別々なアブソーバデューティ比)を有している。例えば、テスト用フォトマスクの表面上の個別ラインスペース格子パターン200(
図2)(例.
図3のラインスペース格子パターン300)は個々別々な幅のEUVアブソーバライン318を有しつつも、同一の格子ピッチ206を呈している(幅は
図2及び
図3ではx方向沿い)。即ち、EUVアブソーバライン318の幅が領域間で可変、各領域内で一定である一方、ピッチ206は諸領域を通じ一定にすることができる。
【0025】
図4に、ある種の実施形態に係りその表面402上にラインスペース格子パターン200(
図2)(例.
図3のラインスペース格子パターン300)が備わるテスト用フォトマスク400のオフ軸撮像を示す。格子パターン200は
図4の紙面に対し垂直なxy平面内にあり、
図4では見えていない。その格子パターン200のうちの小エリア(例.200μm×200μm)が、EUV光源402により生成された照明EUV光円錐104(簡略化のため
図4では1本の矢印線で示す)で以て照明されている。格子パターン200は、0次ビーム406(m=0)(即ち格子表面からの照明EUV光円錐104の単純反射)、正の1次回折ビーム408(m=+1)及び負の1次回折ビーム410(m=-1)を含め、複数次の回折ビームを発生させる。撮像路上には不透明アパーチャ412が実装されており、それにより1次回折ビーム408及び410を遮蔽すると共に0次ビーム406を選択している。0次ビーム406はEUV撮像光学系114によりTDIセンサ116上に集束され、そのTDIセンサ116により撮像される。ある種の実施形態では、0次ビーム406がTDIセンサ116内のTDI画素全てを照明し、それら画素を用い撮像される。その撮像路上(例.0次ビーム406の縁又はその付近)には校正済の参照強度検出器416が実装されており、それにより0次ビーム406の強度(即ち0次ビーム406のプロファイルのうち参照強度検出器416上に入射する部分の強度)が検出されている。ある種の実施形態ではその参照強度検出器416がアパーチャ412の縁に配置される。例えば、参照強度検出器416をアパーチャ412に装着することができる(例.アパーチャ412の縁から0次ビーム406内へと延ばす)。
【0026】
実施形態のうちアパーチャ412を検査ツールから着脱可能なものでは、アパーチャ412を検査ツール内に実装して校正を実行することができ、校正完了後には、その検査ツールから取り外した上で、その検査ツールを順次用い生産用フォトマスクを検査することができる。実施形態のうちアパーチャ412が検査ツール内に恒久実装されているものでは、アパーチャ412をその検査ツール内で移動可能とすれば、それを校正中は撮像路上へと移動させること並びに生産用フォトマスクの検査に際してはその撮像路外へと移動させることが可能となる。実施形態のうち参照強度検出器416を検査ツールから着脱可能なものでは、それを検査ツール内に実装して校正を実行することができ、校正完了後には、その検査ツールから取り外した上で、その検査ツールを順次用い生産用フォトマスクを検査することができる。単一の着脱可能な参照強度検出器416を用い複数個の検査ツールを校正することもできる。ある種の実施形態では、参照強度検出器416が、認証又は公的標準化団体(例.米国国立標準技術研究所(NIST)又はそれに類する政府内標準化機関)により校正されたものとされる。
【0027】
様々なアブソーバデューティ比を有する様々なラインスペース格子パターン200(
図2)(例.
図3のラインスペース格子パターン300)を、テスト用フォトマスク400の様々な領域内に配置することができる。TDIセンサ116を校正する際には、それら様々な領域を、
図4に示したオフ軸撮像を用い照明、ひいては撮像すればよい。TDIセンサ116を用い得られた撮像結果を、参照強度検出器416により検出された強度と比較する。この比較を通じTDIセンサ116の直線性が判別される。
【0028】
TDIセンサ116は二通りのモード、即ちフレーム撮像モード及びスキャン(走査)モードで稼働させることができる。フレーム撮像モードでは、そのTDIセンサ116の全画素によりそれらにおける光強度、いわゆるフレームが短時間(例.0.001ミリ秒~数ミリ秒)にて同時捕捉され、画素毎積分は行われない。スキャンモードではスキャン方向(例.x方向)に沿い画素毎光強度が積分される。スキャンモードは生産用フォトマスク検査にて常用されている。TDI直線性校正の際には、諸画素の(例.各画素の)応答直線性を校正すべくフレーム撮像モードが用いられることもある。スキャンモードでのTDI応答直線性は、フレーム撮像モードにて計測された画素レベル直線性をもとに計算することができる。
【0029】
様々なアブソーバデューティ比のラインスペース格子パターン200が照明された場合、ピッチ206が同一な類の実施形態では、1次回折ビーム408及び410それぞれの回折角がどのパターンでも同じになる(但し、一般に、+1次回折ビーム408の角度と-1次回折ビーム410の角度は異なるものとなる)。しかしながら、EUVアブソーバライン204の幅に違いがある(例.多層被覆316のうちEUVアブソーバライン318により覆われている面積に違いがある)ため、0次回折ビーム406の強度が違ってくる。0次回折ビーム406のビームプロファイルは、そのビームが実質的には入射ビーム(即ち照明EUV光円錐104)の単純反射であるため、照明ビームと同一なままである。従って、何れか特定のラインスペース格子パターン200を選択することで、TDIセンサ116に供給されるEUV光の強度を、TDI直線性校正に係る入射ビームプロファイルの変化無しで制御することができる。
【0030】
不透明アパーチャ412によりクリーンな0次回折ビーム406を選択するためには、0次回折ビーム406と二種類の1次回折ビーム408及び410との間の重なり合いも小さくなるよう、照明パラメタσを十分に小さくすべきである。表1に、様々な格子ピッチ206に関しσの最大値の計算結果を示す。これらの計算においては、撮像NAが0.2であると仮定し、また照明路,撮像路双方のCRAを8.15°とした。
【0031】
【0032】
表1の中央にある三列は、三通りの回折次数のCRAを、照明CRAが8.15°であるとし格子式を用いて計算したものである。σの最大値は、m=0のCRAとm=±1のCRAとがなす二通りの半角のうち小さい方を採用し、NAに係る立体角の半角によりそれを除することで、計算されたものである。例えばピッチが80nmである場合、m=0の回折波とm=+1の回折波との間のCRA差は9.7°となり、m=0の回折波とm=-1の回折波との間のCRA差は9.94°となっている。小さい方のCRA差は9.7°であり、これが選択される。照明EUV光円錐104の半角が9.7°/2=4.85°であれば、それら三通りの回折次数間には重なり合いがないこととなる。この条件は、照明σ=4.85°/11.5°=0.42、但し11.5°はNA=0.2に係る立体角の半角、なる条件に相当している。σが0.42よりも大きい場合、純粋な0次回折ビーム406を選択するには、より小さなアパーチャが必要となる。
【0033】
表2においては、ラインスペース格子パターン300(
図3)での0次実効反射率が様々なアブソーバデューティ比及びラインスペース格子ピッチ206に関し計算されている。この実効反射率は、13.5nm波長及び8.15°入射角における純粋な多層被覆316(即ち
図3のEUVアブソーバライン318が全くないためアブソーバデューティ比が0のもの)の反射率を基準にして正規化されている。計算に際しては、EUV光が無偏向であると仮定し、70nmなるアブソーバ厚(即ちTaBN層310の厚み)を用いている。第1列に示されているピッチ206の値毎に、0次正規化実効反射率を、0.8、0.65、0.5、0.35、0.2及び0なるアブソーバデューティ比に関し計算してある。アブソーバデューティ比には二通りの両極端なケース、即ち純粋なアブソーバ(例.
図3の多層被覆316がEUVアブソーバにより完全に覆われているもの)と、純粋なEUV反射性多層被覆(例.
図3の多層被覆316全体が露出していてEUVアブソーバが存在していないもの)とがあり、それらによりそれぞれ光強度の最低値,最高値が与えられる。強度は所与強度の入射光(即ち所与照明EUV光円錐104)に係る反射率に相当するので、表2に示されている様々な反射率は、様々な強度のEUVを発生させる能力を明らかに示している。本件校正に際しては、アブソーバラインデューティ比の違いにより引き起こされる焦点の違いを、TDIセンサ116による撮像中に補正すべきである。
【0034】
【0035】
EUVアブソーバライン204(
図2)(例.
図3のEUVアブソーバライン318)のライン幅が狭くなればなるほど、そのラインスペース格子パターン200(
図2)(例.
図3のラインスペース格子パターン300)の作成が難しくなる。大きめな格子ピッチ206を用いることで作成が容易になるが、表1に示す通り実現可能な最大の照明σが小さめになる。経験的には、EUVフォトマスク上に作成しうる最も細いアブソーバラインは、アブソーバ厚の1/3のものである。アブソーバ厚(即ちアブソーバライン高)(例.TaBN層310の厚み)が70nmである場合、実現しうる最も細いアブソーバラインはその幅が23.3nmのものであり、これは、ピッチ206が80nmである場合、0.29なるデューティ比に相当する。ラインスペース格子パターンが小ピッチである場合、アブソーバ厚(アブソーバライン高)を、0次実効反射率の最適化及び格子パターン作成の容易化のため減らすことができる。
【0036】
[反射率の度合いが異なるEUV反射性エリア]
図5A及び
図5Bは、ある種の実施形態に係り、テスト用フォトマスクの表面上の個別領域にて相異なる度合いの反射率を有する(即ち反射率が相異なる)EUV反射性エリアとして働く個別多層被覆500-1及び500-2の断面図である。多層被覆500-1及び500-2は、多層被覆316(
図3)と同じ構造及び/又は層厚のものとすることができる。多層被覆500-1(
図5A)よりも多層被覆500-2(
図5B)の方が、多くのMo層304及びSi層306、ひいては多くのMoSi二重層314を有している。テスト用フォトマスクの表面上の他の諸領域には、個々別々な(即ち異なる)個数のMo層304及びSi層306、ひいては個々別々な個数のMoSi二重層314を有する多層被覆500を、設けることができる。一般に、テスト用フォトマスクの表面上の個々別々な領域内のEUV反射性多層被覆は、個々別々な個数の層を有している。
【0037】
多層被覆500-1及び500-2のEUV反射率は、MoSi二重層314の個数の関数である。
図6は、多層被覆500の反射率計算値604と二重層314の個数602との関係を示す描線
図600である。この描線
図600の背景にある計算では、入射角8.15°の無偏向13.5nm光と、
図3に関し述べた層厚とを仮定した。
図6に示すところによれば、70%超の理論的反射率を達成することができる。実際には、二重層314を十分な個数602にすること(例.二重層314を40超とすること)で、少なくとも65%の反射率を達成できる。表3は、幾通りかの二重層に関し、40個の二重層を有する多層被覆500の反射率を基準として正規化された反射率計算値をまとめたものである。
【0038】
【0039】
その表面上の個別領域内に様々な個数の層(即ち様々な個数の二重層314)がある多層被覆500を有するテスト用フォトマスクを、
図4のオフ軸撮像配列にて用い、TDIセンサ116を校正することができる。格子がなく従って照明EUV光円錐104の回折が生じないため、そのオフ軸撮像配列からアパーチャ412を省略することができる。そのテスト用フォトマスクの表面上の様々な領域を照明及び撮像用に選択することで、TDIセンサ116に供給されるEUV光の強度を、校正中に所与照明EUV光円錐104に関し被制御的要領で変化させることができる。二重層の個数の違いにより引き起こされる焦点オフセットは、TDIセンサ116による撮像中に補正されるべきである。
【0040】
[傾斜厚を有するEUV反射性エリア]
様々な個数の二重層を有する多層被覆(例.
図5A及び
図5Bの多層被覆500-1及び500-2)の使用の変形例の一つが、テスト用フォトマスクの表面上に傾斜多層被覆を作成することである。各二重層における層間厚み比率を同一(即ち一定)に保ちつつ、この傾斜付けを行うことで、そのテスト用フォトマスクの表面の様々な領域に係る(平均)二重層厚に違いが現れる。傾斜多層被覆における二重層厚の違いはピーク反射率波長の違いに相当する。従って、波長及び入射角が同じであれば、二重層厚の違いにより反射率の違いがもたらされる。傾斜多層被覆の様々なエリアをTDIセンサ116により(例.
図4のオフ軸配置をアパーチャ412抜きで用い)撮像した場合、その被覆により反射されるEUV光の強度に(例.所与照明EUV光円錐104の許で)違いが現れる。
【0041】
図7は、ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上にある傾斜多層被覆700の断面図である。多層被覆700は多層被覆316(
図3)と同じ構造にすることができ、ある特定個数の二重層314(例.40個の二重層314)を有している。ある種の実施形態では、MoSi二重層314(例.交番するMo層304及びSi層306双方)の厚みを、第1方向(例.x方向)に沿い変化させる一方、その第1方向に対し垂直な第2方向(例.
図7の紙面に対し垂直なy方向)に沿い均一にする。Si層306・Mo層304間厚み比率は、多層被覆700全体を通じ(例.
図5A及び
図5Bの多層被覆500-1及び500-2に係るそれと同じ厚み比率で以て)一定に保たれる。
【0042】
傾斜多層被覆700における二重層厚の変化は十分に小さいので、その厚みを、TDIセンサ116に係る視野(FOV)(例.200μm×200μm)内では一定として扱うことができる。即ち、テスト用フォトマスクの表面上の所与領域に関しては、TDIセンサ116の画素毎に反射率(即ち強度スケーリングファクタ)が実質同値となる。傾斜多層被覆700にて厚み変化により引き起こされる焦点オフセットは、TDIセンサ116による撮像中に補正されるべきである。
【0043】
[EUV反射性エリアより上方にあり別々な厚みを有するEUVアブソーバエリア]
もう一つのインサイチューEUV光強度制御技術は、テスト用フォトマスクの表面上の個別領域内で様々なアブソーバ厚の純粋アブソーバエリアを用いることである。それらアブソーバエリアをEUV反射性多層被覆より上方に配置する。
図8A及び
図8Bは、ある種の実施形態に係りテスト用フォトマスクの表面上にある個別領域800-1及び800-2の断面図である。領域800-1及び800-2は個別EUVアブソーバエリア及び個別EUV反射性多層被覆を有しており、各領域800のEUVアブソーバエリアがその領域800のEUV反射性多層被覆エリアよりも上方に配置されている。ある種の実施形態では、領域800-1及び800-2のEUV反射性多層被覆が多層被覆316(
図3)と同じ構造及び/又は層厚を有するもの、即ち一群のMoSi二重層314が基板302上に配置されキャッピング層308により覆われたものとされる。Mo層304の厚みは2.8nm、Si層306の厚みは4.2nm、キャッピング層308の厚みは2.5nmとすることができる(厚みは
図8A及び
図8Bではz方向沿いである)。各領域800(例.領域800-1及び800-2の双方)を、同じ個数のMoSi二重層314(例.40個の二重層314、或いは40~45個の二重層314、或いは35~40個の二重層314)を有するものとすることができる。EUVアブソーバエリアはEUVアブソーバライン318(
図3)と同じ構造を有するもの、即ちTaBN層310がキャッピング層308よりも上方に配置され(例.2nmの厚みを有する)TaBOキャッピング層312により覆われたものとすることができる。別々の領域800ではTaBN層310の厚みが異なる。例えば、領域800-2(
図8B)におけるTaBN層310は領域800-1(
図8A)におけるTaBN層310よりも厚い。TaBN層310の厚みの違いにより構造全体の反射率が違ってくる。
【0044】
図9は、ある種の実施形態に従い
図8A及び
図8Bの構造の反射率計算値904とTaBN層310の厚み902との関係を示す描線
図900である。
図9の背景にある計算では、8.15°の入射角を有する無偏向13.5nm光、40個のMoSi二重層314、並びに固定厚のTaBOキャッピング層312が仮定されている。
図9に描かれている通り、この反射率曲線にはその変化周期が約7.2nm(≒λ/2)のエタロン効果が現れており、その反射率が、厚み902の増大につれ低下した後に幾ばくか上昇した上で再び低下している。表4は、正規化反射率(TaBN層310抜きのEUV反射性多層被覆の反射率を基準として正規化されたもの)とTaBN層310の厚み902との関係をまとめたものである。
【0045】
【0046】
(例.領域800-1及び800-2を初めとする)領域800を有し、それが相異なる厚みの個別EUVアブソーバエリアを有するテスト用フォトマスクは、
図4のオフ軸撮像配列にて、TDIセンサ116を校正するのに用いることができる。格子がなく従って照明EUV光円錐104の回折がないので、そのオフ軸撮像配列からアパーチャ412を省略することができる。照明及び撮像向けに様々な領域を選択することで、TDIセンサ116に供給されるEUV光の強度を、校正向けに被制御的要領にて変化させることができる。アブソーバ厚の違いにより引き起こされる焦点オフセットは、TDIセンサ116を用い領域800を撮像する際に補正されるべきである。
【0047】
[方法フローチャート]
図10は、ある種の実施形態に係るEUVフォトマスク検査ツール(例.
図11の検査ツール1130)の校正及び使用方法1000を示すフローチャートである。本方法1000では、複数個の別個パターン化領域を有するフォトマスク(例.
図4のテスト用フォトマスク400)をTDI検査ツール内にロードする(1002)。ある種の実施形態では、そのフォトマスクが、EUVアブソーバライン及びEUV反射性多層被覆が交番する個別ラインスペース格子パターン(例.
図2のラインスペース格子パターン200や
図3のラインスペース格子パターン300)を呈する複数個の領域を有するものとされる(1004)。それら個別ラインスペース格子パターンは、個々別々なアブソーバデューティ比(即ち格子ピッチに対するEUVアブソーバライン幅の比)を有するものとされる。例えば、それら個別ラインスペース格子パターンを、個々別々なEUVアブソーバライン幅を有する一方で同一の格子ピッチを有するものと、することができる。ある種の実施形態では、そのフォトマスクが、個別EUV反射性多層被覆(例.
図5A及び
図5Bの多層被覆500-1及び500-2)を有する複数個の領域を有するものとされる(1006)。それら個別EUV反射性多層被覆が、個々別々な個数の層(例.
図5A及び
図5Bの個々別々な個数のMoSi二重層314)を有するものとされる。ある種の実施形態では、前記複数個の別個パターン化領域により傾斜EUV反射性多層被覆(例.
図7の傾斜多層被覆700)が構成される(1008)。ある種の実施形態では、そのフォトマスクが、個別EUVアブソーバエリア及び個別EUV反射性多層被覆を有する複数個の領域(例.
図8A及び
図8Bの領域800-1及び800-2)を有するものとされる(1010)。それら個別EUVアブソーバエリアが、それら個別EUV反射性多層被覆よりも上方に配置され、個々別々な厚みを有するものとされる。
【0048】
前記複数個の別個パターン化領域を、EUV光ビーム(例.
図4の照明EUV光円錐104)(例.13.5nm光であり例えば無偏向のもの)で以て順次照明し(1012)、ひいてはそのEUVビームで以て各別個パターン化領域を照明する。それら複数個の別個パターン化領域のうちの個別の別個パターン化領域を照明しつつ、そのTDI検査ツール内のTDIセンサ(例.
図4のTDIセンサ116)を用い当該個別の別個パターン化領域の個別撮像インスタンスを実行する(1012)。それら個別撮像インスタンスをフレーム撮像モードで実行してもよい。個別撮像インスタンスを実行しつつ、そのフォトマスクから集光されるEUV光の参照強度を、参照強度検出器(例.
図4の参照強度検出器416)を用い計測する(1012)。
【0049】
ある種の実施形態(例.そのフォトマスクが、EUVアブソーバライン及びEUV反射性多層被覆が交番する個別ラインスペース格子パターンを伴う複数個の領域を有する(1004)もの)では、そのフォトマスクから集光される光として0次回折ビーム(例.
図4の0次ビーム406)を選択すべくアパーチャ(例.
図4のアパーチャ412)を配置する。
【0050】
個別撮像インスタンスの結果とEUV光の参照強度計測値とに基づき、そのTDIセンサの直線性を判別する(1014)。ある種の実施形態では、個別撮像インスタンスの結果と参照強度計測値とに基づき、TDIセンサの画素毎直線性が判別される(1016)。TDIセンサからの信号と参照強度検出器からの信号との画素毎比較を実行することで、その画素毎直線性を判別することができる。ある種の実施形態では、画素毎校正結果を積分する(例.そのTDIセンサの全二次元画素アレイに係る校正結果をTDIスキャン方向に沿い積分する)ことによって、その画素毎直線性に基づき、そのTDIセンサに係るTDI積分強度直線性(例.スキャン平均化強度直線性)が判別される(1018)。
【0051】
ある種の実施形態では、前記複数個の別個パターン化領域を照明する際にEUVビームがパルス化される(1012)。検査の途上でフォトマスクの動きに従い像が動くので、このパルス化に、そのTDIセンサ内の画素サブセットを選択する効果を持たせることができる。この画素サブセットの直線性をステップ1014にて判別すればよい。
【0052】
本方法1000では、この時点でTDIセンサの校正が済み、TDI検査ツールの使用準備が整う。生産用フォトマスク(例.作成済だがまだ半導体デバイスの製造に用いられていないレティクル)を、そのTDI検査ツールを用い検査する(1020)。この検査を実行することで、欠陥に関しその生産用フォトマスクを点検することができる。TDIセンサの直線性の判別結果に基づき、その生産用フォトマスクの検査結果を補正する(1022)。例えば、検査ステップ1020にて生成された画像を、TDIセンサの直線性の判別結果に基づき補正する。TDIセンサの校正が済んだ後に、ステップ1020及び1022を反復実行することで、複数枚の生産用フォトマスクを検査することができる。ステップ1002~1014からなる校正プロセスを定期的に反復することで、そのTDI検査ツールの正確な動作を確保することができる。
【0053】
[システムブロック図]
図11はある種の実施形態に係るフォトマスク検査システム1100(即ちレティクル検査システム)のブロック図である。本フォトマスク検査システム1100はEUVフォトマスク検査ツール1130及びコンピュータシステムを有しており、後者は1個又は複数個のプロセッサ1102(例.CPU)、ユーザインタフェース1106、メモリ1110、並びにそれら部材間を相互接続する通信バス(群)1104を有している。これに代え、そのコンピュータシステムを、1個又は複数個のネットワークを介しEUVフォトマスク検査ツール1130と可通信結合させてもよい。そのコンピュータシステムが、更に、EUVフォトマスク検査ツール1130及び/又はリモートコンピュータシステムとの通信用に、1個又は複数個のネットワークインタフェース(有線及び/又は無線、図示せず)を有していてもよい。
【0054】
ある種の実施形態によれば、フォトマスク検査システム1100を、
図4のオフ軸撮像を実行するよう構成することができる。アパーチャ412を検査ツール1130内に(例.恒久的に又は校正のため一時的に)実装することができる。参照強度検出器416を検査ツール1130内に(例.校正のため一時的に)実装することができる。テスト用フォトマスクを検査ツール1130内にロードして校正を実行することができる。生産用フォトマスクを校正済検査ツール1130内にロードし検査に供することができる。
【0055】
ユーザインタフェース1106のなかに、ディスプレイ1107と、1個又は複数個の入力デバイス1108(例.キーボード、マウス、ディスプレイ1107の接触感知面等々)とを含めることができる。ディスプレイ1107により方法1000(
図10)の結果を表示することができる。
【0056】
メモリ1110には揮発性及び/又は不揮発性メモリが含まれる。メモリ1110(例.メモリ1110内不揮発性メモリ)には非一時的コンピュータ可読格納媒体が含まれる。メモリ1110には、オプション的に、プロセッサ1102から見てリモート配置されている1個又は複数個の格納デバイス、及び/又は、システム1100内に挿抜される非一時的コンピュータ可読格納媒体が含まれる。ある種の実施形態では、メモリ1110(例.メモリ1110のうち非一時的コンピュータ可読格納媒体)に、以下のモジュール及びデータ或いはそのサブセット又はスーパセットが格納される:様々な基本システムサービスをハンドリングしハードウェア依存タスクを実行する手順が組み込まれたオペレーティングシステム1112、パターン化テスト用フォトマスク(例.
図2、
図3、
図5A、
図5B、
図7、
図8A及び/又は
図8Bに従いパターン化されたもの)(例.
図4のテスト用フォトマスク400)を用い検査ツール1130を校正するための校正モジュール1114、フォトマスクを検査するためのTDI検査モジュール1116、校正を通じ判別されたTDIセンサ直線性に基づき検査結果(例.画像)を補正するための結果補正モジュール1118、並びに校正及び/又は検査結果を通知するための通知モジュール1120である。メモリ1110(例.メモリ1110のうちの非一時的コンピュータ可読格納媒体)には、従って、方法1000(
図10)の全体又は一部分を実行するための命令群が組み込まれる。
【0057】
メモリ1110に格納されている各モジュールは、本願記載の機能1個又は複数個を実行するための命令の集合に相当する。別々のモジュールが別々のソフトウェアプログラムとして実施される必要はない。諸モジュール及びそれらモジュールの様々なサブセットを組み合わせる等、再構成してもよい。ある種の実施形態では、メモリ1110に、上述したモジュール及び/又はデータ構造のサブセット又はスーパセットが格納される。
【0058】
図11は、構造的概要よりは、フォトマスク検査システム内に現れうる様々な特徴の機能的記述の方を意図している。例えば、フォトマスク検査システム1100内コンピュータシステムの機能を、複数個のデバイス間で分担してもよい。メモリ1110内に格納されているモジュールのうち一部分を、そうするのに代えて、1個又は複数個のネットワークを介しフォトマスク検査システム1100のコンピュータシステムと可通信結合されている他の1個又は複数個のコンピュータシステム内に、格納してもよい。
【0059】
以上の記述は説明目的のものであり、具体的諸実施形態を参照して記述されている。とはいえ、上掲の例証的議論は、開示されている諸形態そのものに諸請求項の技術的範囲を限定することや排他することを意図するものではない。上掲の教示に鑑み多様な修正及び改変をなすことができる。それら実施形態が選択されたのは諸請求項の下地をなす諸原理及びそれらの実際的用途を最もよく説明することで、いわゆる当業者が諸実施形態を、想定されている具体的用途に見合う様々な改変付で、最もよく用いうるようにするためである。