(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147840
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/06 20060101AFI20241009BHJP
C08G 59/66 20060101ALI20241009BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20241009BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20241009BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241009BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C08G59/06
C08G59/66
C09J163/00
C09J11/00
C09K3/10 L
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137963
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】根岸 裕太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 篤志
【テーマコード(参考)】
4H017
4J036
4J040
4M118
【Fターム(参考)】
4H017AB08
4H017AC03
4H017AC17
4H017AE05
4J036AA01
4J036DA01
4J036DA10
4J036DD02
4J036FA11
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA07
4J040DB032
4J040DF002
4J040EC021
4J040EC031
4J040EC051
4J040EC071
4J040EK032
4J040HA116
4J040HA196
4J040HA206
4J040HA296
4J040HA306
4J040HA316
4J040HC01
4J040HC23
4J040HD03
4J040JB02
4J040KA03
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA02
4J040NA20
4J040PA30
4J040PA42
4M118AB01
4M118HA19
4M118HA24
(57)【要約】
【課題】部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有する硬化物を付与する樹脂組成物、接着剤又は封止剤を提供する。
【解決手段】(A)3官能以上のチオール化合物、
(B)多官能エポキシ化合物、
(C)単官能エポキシ化合物、及び
(D)硬化触媒
を含み、
成分(A)が、エステル結合を有しない多官能チオール化合物を含み、
成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比([成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])が、0.50超0.60未満である、
エポキシ樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3官能以上のチオール化合物、
(B)多官能エポキシ化合物、
(C)単官能エポキシ化合物、及び
(D)硬化触媒
を含み、
成分(A)が、エステル結合を有しない多官能チオール化合物を含み、
成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比([成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])が、0.50超0.60未満である、
エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)が、芳香族多官能エポキシ化合物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)フィラーを含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
25℃での粘度が4Pa・s以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含む接着剤又は封止材。
【請求項6】
イメージセンサー又はカメラモジュールを構成する部品の固定、接着又は保護に用いられる、請求項5に記載の接着剤又は封止材。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、もしくは請求項5又は6に記載の接着剤又は封止材が硬化された硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を含む半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置を含む電子部品。
【請求項10】
イメージセンサー又はカメラモジュールである、請求項9に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、それを含む接着剤又は封止材、それらの硬化物、その硬化物を含む半導体装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置に用いられる電子部品、例えば半導体チップの組み立てや装着には、部品の固定や接着、信頼性の保持等を目的として、硬化性樹脂組成物、特にエポキシ樹脂組成物を含む接着剤、封止材等がしばしば用いられる。中でも、携帯電話やスマートフォンのカメラモジュールとして使用されるイメージセンサーモジュール等の、高温条件下で劣化する部品を含む半導体装置の場合、その製造工程はいずれも低温条件下で行う必要があるため、比較的低温、具体的には80℃程度の温度で熱硬化するエポキシ系接着剤が使用される(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-211969号公報
【特許文献2】特開平6-211970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スマートフォンに要求されるカメラ機能の高性能化に伴い、カメラモジュール組み立て時において、高い正確さ、精密さが要求される。モジュール一個あたりに使用される材料も多く、完成品は非常に高価な部材となる一方で、ある工程で接着剤の塗布や組み立てを失敗すると、現状ではモジュールごと廃棄となっている。
【0005】
そこで、本発明者らは、使用される接着剤にリワーク性を持たせることで、モジュール部品の再利用が可能となると考えた。リワーク性とは、接着剤の分野では、接着後に剥がすことができる性質をいう。硬化後の接着剤が剥離された後、部品は再利用可能であり、製造プロセスの歩留まり向上につながる。
【0006】
カメラモジュールやイメージセンサーモジュールは、それらを構成する部品が熱の影響を受けやすく、高温条件化では劣化してしまう。そのため、モジュールの組み立てに用いられる接着剤のリワーク性としては、周囲温度以上かつモジュール部品に熱影響を与えない温度、例えば60℃~80℃程度において、硬化された接着剤の弾性率が低くなる性質が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有する硬化物を付与する樹脂組成物、接着剤又は封止剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の第一の実施形態は、以下のエポキシ樹脂組成物である。
(1)(A)3官能以上のチオール化合物、
(B)多官能エポキシ化合物、
(C)単官能エポキシ化合物、及び
(D)硬化触媒
を含み、
成分(A)が、エステル結合を有しない多官能チオール化合物を含み、
成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比([成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])が、0.50超0.60未満である、
エポキシ樹脂組成物。
(2)成分(B)が、芳香属多官能エポキシ化合物を含む、上記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)さらに、(E)フィラーを含む、上記(1)又は(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4)25℃での粘度が4Pa・s以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0009】
本発明の第二の実施形態は、以下の接着剤又は封止剤である。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含む接着剤又は封止材。
(6)イメージセンサー又はカメラモジュールを構成する部品の固定、接着又は保護に用いられる、上記(5)に記載の接着剤又は封止材。
【0010】
本発明の第三の実施形態は、(7)上記(1)~(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、もしくは上記(5)又は(6)に記載の接着剤又は封止材が硬化された硬化物である。
本発明の第四の実施形態は、(8)上記(7)に記載の硬化物を含む半導体装置である。
【0011】
本発明の第五の実施形態は、以下の電子部品である。
(9)上記(8)に記載の半導体装置を含む電子部品。
(10)イメージセンサー又はカメラモジュールである、上記(9)に記載の電子部品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第一の実施態様によれば、周囲温度においては高い接着強度を示すのに対し、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有し、かつ耐湿信頼性が高い硬化物を提供するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の第二の実施態様によれば、周囲温度においては高い接着強度を示すのに対し、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有し、かつ耐湿信頼性が高い硬化物を提供する接着剤又は封止剤を得ることができる。さらに、本発明の第三の実施態様によれば、周囲温度においては高い接着強度を示すのに対し、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有し、かつ耐湿信頼性が高い硬化物を得ることができる。本発明の第四の実施態様によれば、接着強度及び耐湿信頼性が高い硬化物を含む半導体装置を得ることができる。本発明の第五の実施態様によれば、接着強度及び耐湿信頼性が高い硬化物を含む半導体装置を含む電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[エポキシ樹脂組成物]
本発明の第一の実施形態であるエポキシ樹脂組成物は、
(A)3官能以上のチオール化合物、
(B)多官能エポキシ化合物、
(C)単官能エポキシ化合物、及び
(D)硬化触媒
を含む。本実施形態のエポキシ樹脂においては、
成分(A)が、エステル結合を有しない多官能チオール化合物を含み、
成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比([成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])が、0.50超0.60未満である。
本実施形態によれば、周囲温度においては高い接着強度を示すのに対し、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有し、かつ耐湿信頼性が高い硬化物を提供するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0014】
(A)3官能以上のチオール化合物
本実施形態の樹脂組成物は、(A)3官能以上のチオール化合物(以下、「成分(A)」又は「多官能チオール化合物」とも言う)を含む。(A)3官能以上のチオール化合物は、後述の(B)多官能エポキシ化合物や(C)単官能エポキシ化合物と反応し、樹脂組成物に、弾性及び耐湿信頼性を付与する。成分(A)は、3官能以上、すなわち3以上のチオール基を有していれば、特に限定されない。成分(A)は、3官能及び/又は4官能のチオール化合物を含むことが好ましい。なお、3官能及び4官能のチオール化合物とは、それぞれ、チオール基を3つ及び4つ有するチオール化合物のことである。
【0015】
本実施形態において、成分(A)は、エステル結合を有しない多官能チオール化合物(以下、「非加水分解性多官能チオール化合物」ともいう)を含む。エステル結合等の加水分解性の部分構造を有しない、非加水分解性多官能チオール化合物を含む成分(A)を用いることにより、硬化物の耐湿信頼性を向上させることができる。非加水分解性多官能チオール化合物は、高温多湿環境下においても加水分解が起こりにくい。
【0016】
本実施形態の別の態様においては、成分(A)は、非加水分解性多官能チオール化合物と、分子中にエステル結合等の加水分解性の部分構造を有する、加水分解性の多官能チオール化合物とを含む。
【0017】
ある態様においては、成分(A)100質量部に対して、70~100質量部のエステル結合を有しない多官能チオール化合物を含んでいることが、樹脂組成物の硬化後の高湿下におけるシェア強度を長期間維持する観点から好ましい。成分(A)におけるエステル結合を有しない多官能チオール化合物の含有量は、成分(A)100質量部に対して、80~100質量部であることがより好ましく、90~100質量部であることがさらに好ましい。また、ある態様においては、長期間での耐湿信頼性の観点から、成分(A)は、エステル結合を有する多官能チオール化合物を含まないことが好ましい。
【0018】
成分(A)のチオール当量は、90~150g/eqであることが好ましく、90~140g/eqであることがより好ましく、90~130g/eqであることがさらに好ましい。
また、リワーク性の観点から、成分(A)は、尿素結合の無い多官能チオール化合物を含むことが好ましい。
【0019】
加水分解性の多官能チオール化合物の例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:TMMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学株式会社製:TEMPIC)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:PEMP)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:EGMP-4)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:DPMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製:カレンズMT(登録商標)PE1)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製:カレンズMT(登録商標)NR1)等を挙げることができる。
【0020】
本実施形態において、好ましい非加水分解性多官能チオール化合物は、グリコールウリル骨格を有する4官能のチオール化合物であり、特に、下記式(1):
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はフェニル基からなる群より選択され、
R
3、R
4、R
5及びR
6は、各々独立に、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基及びメルカプトプロピル基からなる群より選択される)
で表される化合物である。式(1)で表される化合物の例としては、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル(品名:TS-G、四国化成工業株式会社製)、(1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル(品名:C3 TS-G、四国化成工業株式会社製)、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル等が挙げられる。これらは、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル及び1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリルが特に好ましい。
【0021】
本実施形態において、他の好ましい非加水分解性多官能チオール化合物は、イソシアヌル骨格を有する3官能のチオール化合物であり、特に、下記式(2):
【化2】
(式中、n1は6~11の整数を表す。)又は下記式(3):
【化3】
で表される化合物である。式(2)の化合物は、例えば、特開2019-137666号公報に記載されている。式(3)の化合物は、例えば、特開2021-004229号公報に記載されている。
【0022】
本実施形態において、他の好ましい非加水分解性多官能チオール化合物は、下記式(4):
(R8)m-A-(R7-SH)n (4)
(式中、
Aは、n+m個の水酸基を有する多価アルコールの残基であって、前記水酸基に由来するn+m個の酸素原子を含み、
各々のR7は独立に、炭素数1~10のアルキレン基であり、
各々のR8は独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であり、
mは、0以上の整数であり、
nは、3以上の整数であり、
前記R7及びR8は各々、前記酸素原子を介して前記Aと結合している)
で表される化合物である。式(4)で表される化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。式(4)で表される化合物の例としては、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(品名:PEPT、SC有機化学製)、ペンタエリスリトールテトラプロパンチオール等が挙げられる。これらのうち、ペンタエリスリトールトリプロパンチオールが特に好ましい。
【0023】
非加水分解性多官能チオール化合物としては、分子内にスルフィド結合を2つ以上有する3官能以上のポリチオール化合物を使用することもできる。このようなチオール化合物の例としては、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,1,5,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3-チアペンタン、1,1,6,6-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3,4-ジチアヘキサン、2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、3-メルカプトメチルチオ-1,7-ジメルカプト-2,6-ジチアヘプタン、3,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,9-ジメルカプト-2,5,8-トリチアノナン、3-メルカプトメチルチオ-1,6-ジメルカプト-2,5-ジチアヘキサン、1,1,9,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-5-(3,3-ビス(メルカプトメチルチオ)-1-チアプロピル)3,7-ジチアノナン、トリス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、テトラキス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、3,5,9,11-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,13-ジメルカプト-2,6,8,12-テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,19-ジメルカプト-2,6,8,12,14,18-ヘキサチアノナデカン、9-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,16-ジメルカプト-2,5,7,10,12,15-ヘキサチアヘキサデカン、8-[ビス(メルカプトメチルチオ)メチル]-3,4,12,13-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,15-ジメルカプト-2,5,7,9,11,14-ヘキサチアペンタデカン、4,6-ビス[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7‐メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-6-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチアン、1,1-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル]-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、9-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,4,6,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン等の脂肪族ポリチオール化合物;4,6-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-6-[4-(6‐メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,4,8,9‐テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4,5-ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-1,3-ジチオラン、4-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、2-{ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メチル}-1,3-ジチエタン、2-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、4-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-5-[1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)-4-メルカプト-3-チアブチルチオ]-1,3-ジチオラン等の環式構造を有するポリチオール化合物が挙げられる。
【0024】
(B)多官能エポキシ化合物
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(B)多官能エポキシ化合物(以下、「成分(B)」とも言う)を含む。(B)多官能エポキシ化合物は、2官能以上、すなわち2以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されず、従来常用されているエポキシ樹脂を、成分(B)として用いることができる。なお、エポキシ樹脂とは、分子内に存在するエポキシ基で架橋ネットワーク化させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂の総称であり、硬化前のプレポリマー化合物を含む。本実施形態のある態様においては、成分(B)は2官能エポキシ化合物を含む。
(B)多官能エポキシ化合物は、脂肪族多官能エポキシ化合物と芳香族多官能エポキシ化合物に大別される。本実施形態において、(B)多官能エポキシ化合物は、芳香族多官能エポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0025】
脂肪族多官能エポキシ化合物の例としては、
-(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテルのようなジエポキシ化合物;
-トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシ化合物;
-ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,1-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサンのような脂環式エポキシ化合物;
-テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ化合物;
-1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ化合物;及び
-1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格を有するエポキシ化合物
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
前記の例のうち、「シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル」とは、2個のグリシジル基が、各々エーテル結合を介して、1個のシクロヘキサン環を母体構造として有する2価の飽和炭化水素基に結合した構造を有する化合物を意味する。「ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテル」とは、2個のグリシジル基が、各々エーテル結合を介して、ジシクロペンタジエン骨格を母体構造として有する2価の飽和炭化水素基に結合した構造を有する化合物を意味する。脂肪族多官能エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が90~450g/eqであるものが好ましい。また、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテルとしては、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0027】
芳香族多官能エポキシ化合物は、ベンゼン環等の芳香環を含む構造を有する多官能エポキシ化合物である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂など、従来頻用されているエポキシ樹脂にはこの種のものが多い。芳香族多官能エポキシ化合物の例としては、
-ビスフェノールA型エポキシ化合物;
-p-グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ化合物;
-ビスフェノールF型エポキシ化合物;
-ノボラック型エポキシ化合物;
-テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物;
-フルオレン型エポキシ化合物;
-ビフェニルアラルキルエポキシ化合物;
-1,4-フェニルジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシ化合物;
-3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ化合物;
-ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ化合物;及び
-ナフタレン環含有エポキシ化合物
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本実施形態において、チオール化合物との相溶性の観点からは、成分(B)は、脂肪族多官能エポキシ化合物よりも、芳香族多官能エポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びグリシジルアミン型エポキシ化合物が好ましく、中でもそのエポキシ当量が90~200g/eqであるものが特に好ましく、エポキシ当量が110~190g/eqであるものが最も好ましい。
【0028】
成分(B)として芳香族多官能エポキシ化合物を使用する場合、組み合わせる成分(A)としては、グリコールウリル骨格を有する4官能チオール化合物又はイソシアヌル骨格を有する3官能チオール化合物を含むことが好ましい。グリコールウリル骨格又はイソシアヌル骨格を有するチオール化合物のチオール基当量数に対する、芳香族多官能エポキシ化合物のエポキシ基当量数の比([エポキシ基当量数]/[チオール基当量数])は、0.40~0.85であることが好ましい。また、成分(A)が、グリコールウリル骨格を有する4官能チオール化合物又はイソシアヌル骨格を有する3官能チオール化合物を含む場合、成分(B)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物およびナフタレン環含有エポキシ化合物の少なくとも一つを含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物、分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ化合物及びビスフェノールF型エポキシ化合物の少なくとも一つを含むことがより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びビスフェノールF型エポキシ化合物の少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。
【0029】
また、リワーク性の観点から、成分(A)としてのグリコールウリル骨格を有する4官能チオール化合物又はイソシアヌル骨格を有する3官能チオール化合物と、成分(B)としての芳香族多官能エポキシ化合物と、以下の成分(C)としての芳香族単官能エポキシ化合物との総量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、75質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
(C)単官能エポキシ化合物
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(C)単官能エポキシ化合物(以下、「成分(C)」とも言う)を含む。(C)単官能エポキシ化合物は、単官能、すなわちエポキシ基を1個有するエポキシ化合物である限り、特に限定されず、従来常用されている単官能エポキシ化合物を、成分(C)として用いることができる。例えば、従来常用されている単官能エポキシ化合物は、反応性希釈剤としてエポキシ樹脂組成物の粘度調整に用いられている。
【0031】
揮発性の観点から、成分(C)は、エポキシ当量が180~400g/eqであることが好ましい。
【0032】
単官能エポキシ化合物は、脂肪族単官能エポキシ化合物と芳香族単官能エポキシ化合物に大別される。本実施形態では、粘度と低揮発性の観点から、成分(C)は、芳香族単官能エポキシ化合物を含むことが好ましい。さらに、成分(C)は、実質的に芳香族単官能エポキシ化合物であることが好ましい。
【0033】
芳香族単官能エポキシ化合物の例としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-s-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル、p-フェニルフェノールグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテルが好ましく、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0034】
脂肪族単官能エポキシ化合物の例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、α-ピネンオキシド、アリルグリシジルエーテル、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-4-(2-メチルオキシラニル)-1-メチルシクロヘキサン、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ネオデカン酸グリシジルエステル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
成分(C)としては、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(D)硬化触媒
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(D)硬化触媒(以下、「成分(D)」とも言う)を含む。成分(D)を用いることにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を低温条件下でも短時間で硬化させることができる。本実施形態において用いる硬化触媒は、(B)多官能エポキシ化合物の硬化触媒であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0037】
成分(D)は、潜在性硬化触媒であることが好ましい。潜在性硬化触媒とは、室温では不活性の状態で、加熱することにより活性化されて、硬化触媒として機能する化合物であり、例えば、常温で固体のイミダゾール化合物;アミン化合物とエポキシ化合物の反応生成物(アミン-エポキシアダクト系)等の固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒;アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物の反応生成物(尿素型アダクト系)等が挙げられる。成分(D)としては、ポットライフ、硬化性の観点から、固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒が好ましい。
【0038】
常温で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-メチルイミダゾリル-(1)′)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N′-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒(アミン-エポキシアダクト系)の製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、又はグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4′-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;さらに、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの単官能性エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒のもう一つの製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1個以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基の中から選ばれた官能基を少なくとも分子内に1個以上有するものであればよい。このような、アミン化合物の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4′-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン類;4,4′-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、この中で特に分子内に3級アミノ基を有する化合物は、優れた硬化促進能を有する潜在性硬化触媒を与える原料であり、そのような化合物の例としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキ
シ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類及びヒドラジド類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒に、さらに、もう一つの製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物;さらに、これら多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物等も用いることができる。このような末端イソシアネート基含有化合物の例としては、トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トルイレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
また、尿素化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本実施形態に用いることのできる固体分散型潜在性硬化触媒は、例えば、上記の(a)アミン化合物とエポキシ化合物の2成分、(b)この2成分と活性水素化合物の3成分、又は(c)アミン化合物とイソシアネート化合物及び/又は尿素化合物の2成分もしくは3成分の組合せである。これらは、各成分を採って混合し、室温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕するか、あるいは、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することにより容易に作製することが出来る。
【0045】
潜在性硬化触媒の市販品の代表的な例としては、アミン-エポキシアダクト系(アミンアダクト系)としては、「アミキュアPN-23」(味の素ファインテクノ(株)品名)、「アミキュアPN-40」(味の素ファインテクノ(株)品名)、「アミキュアPN-50」(味の素ファインテクノ(株)品名)、「ハードナーX-3661S」(エー・シー・アール(株)品名)、「ハードナーX-3670S」(エー・シー・アール(株)品名)、「ノバキュアHX-3742」(旭化成(株)品名)、「ノバキュアHX-3721」(旭化成(株)品名)、「ノバキュアHXA9322HP」(旭化成(株)品名)、「ノバキュアHXA3922HP」(旭化成(株)品名)、「ノバキュアHXA3932HP」(旭化成(株)品名)、「ノバキュアHXA5945HP」(旭化成(株)品名)、「ノバキュアHXA9382HP」(旭化成(株)品名)、「フジキュアーFXR1121」(T&K TOKA(株)品名)などが挙げられ、また、尿素型アダクト系としては、「フジキュアーFXE-1000」(T&K TOKA(株)品名)、「フジキュアーFXR-1030」(T&K TOKA(株)品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。成分(D)は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
成分(D)は、エポキシ樹脂組成物の総質量に対し0.1~30質量%含まれることが好ましく、0.5~20質量%含まれることがより好ましい。
【0047】
なお、成分(D)には、多官能エポキシ化合物に分散された分散液の形態で提供されるものがある。そのような形態の成分(D)を使用する場合、それが分散している多官能エポキシ化合物の量も、本実施形態のエポキシ樹脂組成物における成分(B)の量に含まれることに注意すべきである。
【0048】
本実施形態において、成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比([成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])は、0.50超0.60未満であり、好ましくは0.51~0.59であり、より好ましくは0.52~0.58であり、さらに好ましくは0.53~0.57である。[成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数]を0.50超0.60未満の範囲とすることにより、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0049】
カメラモジュールやイメージセンサーモジュールは、熱の影響を受けやすく、高温条件化では劣化してしまう。そのため、モジュールの組み立てに用いられる接着剤のリワーク性としては、周囲温度以上かつモジュールに熱影響を与えない温度、例えば60℃~80℃程度において、硬化された接着剤の弾性率が低くなる性質が必要である。本発明者らは、エポキシ樹脂組成物が成分(C)を含み、かつ、[成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数]を上記の範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物を硬化することにより得られた硬化物は、周囲温度においては高い弾性率を有し優れた接着強度を示すのに対し、60℃~80℃程度の温度においては、弾性率が低くなり、優れたリワーク性を有することを見出した。
【0050】
さらに、成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比が、上記の範囲より大きくなると、硬化物をプレッシャークッカー試験(Pressure Cooker Test;以下、PCT)(2atm、121℃、100%RH、20時間)に供すると、硬化物が溶解することがわかった。すなわち、[成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数]を上記の範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物より得られた硬化物は、優れた耐湿信頼性を得ることができる。
【0051】
本実施形態のある態様において、成分(A)のチオール基当量数に対する成分(B)のエポキシ基当量数の比([(成分(B)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])は、0.40以上0.70以下であることが好ましく、0.40以上0.60以下であることが好ましい。成分(A)のチオール基当量数に対する成分(B)のエポキシ基当量数の比をこの範囲とすることにより、(A)多官能チオール化合物と(B)多官能エポキシ化合物とが適度に架橋し、得られた硬化物は周囲温度において高い弾性率を有し優れた接着強度を示すことができる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化後、硬化物中に残る未反応のチオール基及び/又はエポキシ基を減らすことができ、リワーク性がより向上する。
【0052】
本明細書中において、チオール当量やエポキシ当量などの官能基当量とは、官能基1個当たりの化合物の分子量を表し、チオール基当量数やエポキシ基当量数などの官能基当量数とは、化合物質量(仕込み量)当たりの官能基の個数(当量数)を表す。
【0053】
成分(A)のチオール当量は、理論的には、成分(A)の分子量を、1分子中のチオール基の数で割った数になる。実際のチオール当量は、例えば電位差測定によってチオール価を求めることで、決定できる。この方法は広く知られており、例えば、特開2012-153794号の段落0079に開示されている。(A)成分のチオール基当量数は、(A)成分の質量(仕込み量)当たりのチオール基の個数(当量数)であり、(A)3官能以上のチオール化合物の質量(g)を、そのチオール化合物のチオール当量で割った商(チオール化合物が複数含まれる場合は、各チオール化合物についてのそのような商の合計)である。
【0054】
成分(B)又は成分(C)のエポキシ当量は、理論的には、成分(B)又は成分(C)の分子量を、1分子中のエポキシ基の数で割った数になる。実際のエポキシ当量は、JIS K7236に記載されている方法により求めることができる。成分(B)又は成分(C)のエポキシ基当量数は、成分(B)又は成分(C)の質量(仕込み量)当たりのエポキシ基の個数(当量数)であり、成分(B)又は成分(C)のエポキシ化合物の質量(g)を、そのエポキシ化合物のエポキシ当量で割った商(エポキシ化合物が複数含まれる場合は、各エポキシ化合物についてのそのような商の合計)である。
【0055】
(E)フィラー
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、さらに、(E)フィラー(以下、「成分(E)」とも言う)を含有することができる。(E)フィラーをエポキシ樹脂組成物に含有することによって、エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の線膨張係数を下げることができ、耐サーマルサイクル性が向上する。(E)フィラーは、無機フィラー及び有機フィラーに大別される。
【0056】
無機フィラーは、無機材料によって形成された粒状体からなり、添加により線膨張係数を下げる効果を有するものであれば、特に限定されない。無機材料としては、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸石灰、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等を用いることができる。無機フィラーは、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。無機フィラーとしては、充填量を高くできることから、シリカフィラーを用いることが好ましい。シリカは、非晶質シリカが好ましい。
【0057】
無機フィラーは、その表面がシランカップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものが好ましい。それにより、エポキシ樹脂組成物の温度インデックス(TI:Thermal Index)を適正な範囲とすることができる。
【0058】
有機フィラーの例としては、タルクフィラー、炭酸カルシウムフィラー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラー、シリコーンフィラー、アクリルフィラー、スチレンフィラー等が挙げられる。有機フィラーは、表面処理されていてもよい。
【0059】
フィラーの形状は、特に限定されず、球状、りん片状、針状、不定形等のいずれであってもよい。
【0060】
フィラーの平均粒径は、5.0μm以下であることが好ましく、4.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、ISO-13320(2009)に準拠してレーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径(d50)を指す。フィラーの平均粒径を上限以下とすることにより、フィラーの沈降を抑制することができ、また、粗粒の形成を抑制し、ジェットディスペンサーのノズルの摩耗や、ジェットディスペンサーのノズルから吐出される樹脂組成物の所望の領域外への飛散を抑制することができる。フィラーの平均粒径の下限は特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物の粘度の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。本実施形態のある態様において、(E)フィラーの平均粒径は、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上3.0μm以下である。
【0061】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、15~50質量%であることが好ましく、20~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、耐サーマルサイクル性が向上し、また、エポキシ樹脂組成物の粘度を適切な範囲とし、ジェットディスペンサーでの適用性が向上する。
【0062】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、所望であれば、上記(A)~(E)成分以外の任意成分、例えば以下に述べるものを必要に応じて含有してもよい。
【0063】
(F)安定剤
本実施形態の樹脂組成物は、所望であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、(F)安定剤(以下、「(F)成分」とも言う)を含んでもよい。安定剤は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物に、その貯蔵安定性を向上させ、ポットライフを長くすることができる。安定剤として公知の種々の安定剤を使用することができるが、貯蔵安定性を向上させる効果の高さから、液状ホウ酸エステル化合物、アルミキレート及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0064】
液状ホウ酸エステル化合物の例としては、2,2'-オキシビス(5,5'-ジメチル-1,3,2-オキサボリナン)、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ-o-トリルボレート、トリ-m-トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。液状ホウ酸エステル化合物は常温(25℃)で液状であるため、配合物粘度を低く抑えられるため好ましい。アルミキレートとしては、例えばアルミキレートA(川研ファインケミカル株式会社製)を用いることができる。有機酸としては、例えばバルビツール酸を用いることができる。
安定剤は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
安定剤を添加する場合、その添加量は、成分(A)~(D)の総質量又は成分(E)を含む場合は成分(A)~(E)の総質量に対して、0.01~30質量%であることが好ましく、0.05~25質量%であることがより好ましく、0.1~20質量%であることが更に好ましい。
【0066】
(G)カップリング剤
本実施形態の樹脂組成物は、所望であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、(G)カップリング剤(以下、「成分(G)」とも言う)を含んでもよい。カップリング剤は、分子中に2つ以上の異なった官能基を有しており、その一つは、無機質材料と化学結合する官能基であり、他の一つは、有機質材料と化学結合する官能基である。樹脂組成物がカップリング剤を含有することによって、樹脂組成物の基板等への接着強度が向上する。
【0067】
(G)カップリング剤の例として、無機質材料と化学結合する官能基の種類に応じて、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
カップリング剤の例としては、有機質材料と化学結合する官能基の種類に応じて、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系等の各種カップリング剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、エポキシ基を含むエポキシ系カップリング剤が、耐湿信頼性の観点から、好ましい。
【0069】
エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM403、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(品名:KBE-403、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(品名:KBE-402、信越化学株式会社製)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(品名:KBM402、信越化学株式会社製)、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン(品名:KBM-4803、信越化学工業株式会社)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(品名:サイラエース S530、JNC株式会社)等が挙げられる。
【0070】
メタクリル系シランカップリング剤の具体例としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM503、信越化学株式会社製)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(品名:KBM502、信越化学株式会社製)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(品名:KBE502、信越化学株式会社製)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(品名:KBE503、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0071】
アクリル系シランカップリング剤の具体例としては、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-5103、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
メルカプト系シランカップリング剤の具体例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(品名KBM803、信越化学工業株式会社製)、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(品名KBM802、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0073】
カップリング剤は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
カップリング剤を添加する場合、カップリング剤の添加量は、接着強度向上の観点から、成分(A)~(D)の総質量又は成分(E)を含む場合は成分(A)~(E)の総質量に対して0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0075】
(H)その他の添加剤
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、所望であれば、本実施形態の趣旨を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えばカーボンブラック、チタンブラック、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、揺変剤、粘度調整剤、難燃剤、着色剤、溶剤等をさらに含有してもよい。各添加剤の種類、添加量は常法通りである。
【0076】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、25℃における粘度が低く、典型的には4Pa・s以下であることが好ましく、3Pa・s以下であることがより好ましく、2Pa・s以下であることがさらに好ましく、1Pa・s以下であることが特に好ましい。また、取り扱いの観点から、0.01Pa・s以上であることが好ましい。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、一定量の成分(C)を含むため、低粘度化できる。本明細書において、粘度は、別段の断りがない限り、日本工業規格JIS K6833に従って測定した値で表記する。具体的には、E型粘度計を用いて、回転数10rpmで測定することにより求めることができる。使用する機器やローターや測定レンジに特に制限はない。
【0077】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、成分(A)~成分(D)、必要に応じて成分(E)、成分(F)及び/又は成分(G)、及び必要に応じて(H)その他添加剤等を、適切な混合機に同時に、または別々に導入して、必要であれば加熱により溶融しながら撹拌して混合し、均一な組成物とすることにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を得ることができる。この混合機は特に限定されないが、撹拌装置及び加熱装置を備えた、ライカイ機、ヘンシェルミキサー、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、及びビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0078】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物は、熱硬化性であり、温度80℃の条件下では、5時間以内に硬化することが好ましく、1時間以内に硬化することがより好ましい。また、温度150℃で数秒といった、高温・超短時間での硬化も可能である。本発明の硬化性組成物を、高温条件下で劣化する部品を含むイメージセンサモジュールやカメラモジュールの製造に使用する場合、同組成物を60~90℃の温度で、30~120分熱硬化させる、あるいは120~200℃の温度で1~300秒熱硬化させることが好ましい。
【0079】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、例えば、半導体装置又は電子部品を構成する部品同士を固定、接合又は保護するための接着剤又は封止剤、もしくはその原料として用いられることができる。
【0080】
[接着剤又は封止剤]
本発明の第二の実施形態である接着剤又は封止剤は、上述の第一の実施形態のエポキシ樹脂組成物を含む。この接着剤又は封止剤は、エンジニアリングプラスチック、セラミックス、及び金属に対して、良好な固定、接合又は保護を可能にし、半導体装置又は電子部品を構成する部品同士を固定、接合又は保護するために使用することができる。
特に、本実施形態の接着剤又は封止剤は、イメージセンサー又はカメラモジュールを構成する部品の固定、接着又は保護に用いることができる。本実施形態の接着剤又は封止剤は、60℃~80℃程度の部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有し、かつ耐湿信頼性が高い硬化物を提供することができるため、例えば、組み立て時において高い正確さ、精密さが要求され、またそれを構成する部品が非常に高価である、イメージセンサー又はカメラモジュール製造時の使用に適している。例えば、イメージセンサー又はカメラモジュール製造のある工程で接着剤の塗布や組み立てを失敗した場合、60℃~80℃程度の温度にて接着剤又は封止剤の硬化物を剥がすことができ、部品を再利用可能であり、製造プロセスの歩留まり向上につながる。
【0081】
[エポキシ樹脂組成物もしくは接着剤又は封止剤の硬化物]
本発明の第三の実施形態の硬化物は、上述の第一実施形態の樹脂組成物もしくは第二実施形態の接着剤又は封止剤が硬化された硬化物である。
【0082】
[半導体装置、電子部品]
本発明の第四の実施形態の半導体装置は、上述の第三実施形態の硬化物を含むため、高い耐湿信頼性を有する。本発明の第五の実施形態の電子部品は、この第四実施形態の半導体装置を含むため、高い耐湿信頼性を有する。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0084】
[実施例1~8、比較例1~3]
表1に示す配合に従って、3本ロールミルを用いて所定の量の各成分を混合することにより、エポキシ樹脂組成物を調製した。表1において、各成分の量は質量部(単位:g)で表されている。実施例及び比較例において用いた成分は、以下の通りである。
【0085】
・多官能チオール化合物(成分(A))
(A-1):1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル(品名:TS-G、四国化成工業株式会社製、チオール当量:100g/eq)(エステル結合を有しない多官能チオール化合物)
(A-2):(1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル(品名:C3 TS-G、四国化成工業製、チオール当量:114g/eq)(エステル結合を有しない多官能チオール化合物)
(A-3):ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(品名:PEMP、SC有機化学株式会社製、チオール当量:122g/eq)(エステル結合を有する多官能チオール化合物)
【0086】
・多官能エポキシ化合物(成分(B))
(B-1):ビスフェノールF型エポキシ化合物(品名:YDF-8170、新日鐵住金株式会社製、エポキシ当量:159g/eq)
(B-2):ビスフェノールA型・PO変性エポキシ化合物(品名:EP-4003S、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:470g/eq)
(B-3):(D-1)アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒(品名:ノバキュアHXA9322HP、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)中の、ビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノールF型エポキシ化合物の混合物(エポキシ当量:170g/eq)
【0087】
・単官能エポキシ化合物(成分(C))
(C-1):p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(品名:ED509S、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:205g/eq)
【0088】
・硬化触媒(成分(D))
(D-1)アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒(品名:ノバキュアHXA9322HP、旭化成株式会社製)
【0089】
前記潜在性硬化触媒(D-1)は、微粒子状の潜在性硬化触媒が、エポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノールF型エポキシ化合物の混合物(エポキシ当量:170g/eq))に分散されてなる分散液(潜在性硬化触媒/ビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノールF型エポキシ化合物の混合物=33/67(質量比))の形態で提供される。表1の(D-1)の質量部は、分散液の質量部からエポキシ化合物混合物の質量部を除いた潜在性硬化触媒の質量部である。この分散液を構成するエポキシ化合物は、成分(B)の一部をなすものとして扱われ、成分(B-3)とする。表1の(B-3)の質量部は、エポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノールF型エポキシ化合物の混合物(エポキシ当量:170g/eq)の質量部である。
【0090】
・フィラー(成分(E))
(E-1)シリカフィラー(品名:SE2300、平均粒径0.6μm、株式会社アドマテックス製)
【0091】
実施例及び比較例においては、エポキシ樹脂組成物及び硬化物の特性を以下のようにして測定した。
【0092】
[エポキシ樹脂組成物の粘度]
日本工業規格JIS K6833に準じて測定した。東機産業社製E型粘度計(型番:
TVE-22H、ローター名:1°34’×R24)(適切な測定レンジ(H、Rまたは
U)に設定)を用い、エポキシ樹脂組成物の粘度(単位:mPa・s)を、その調製から
1時間以内に、ローター回転数10rpmで測定した。測定温度は25℃とした。結果を
表1に示す。粘度は、4Pa・s以下であることが好ましい。
【0093】
(硬化物の作製)
実施例1~8及び比較例1~3の樹脂組成物を、各々80℃で60分間加熱することにより、硬化物を得た。
【0094】
[リワーク性評価]
SUS基板上に樹脂組成物を直径約1.5mmの大きさの円となるようにたらした。このSUS基板上の樹脂組成物を、80℃で60分間硬化させて硬化物を得た。ホットプレート上に、硬化物が接着したSUS基板を載せ、60℃で30秒間~1分間加温した。その後、SUS基板上の硬化物をスパーテルを用いてSUS基板から剥がれるかどうか確認した。硬化物が基板からきれいにはがれた場合を、リワーク性が良好である(〇)とし、はがれなかった場合を、リワーク性が不良である(×)とした。結果を表1に示す。
【0095】
[耐湿信頼性評価]
実施例1~8、比較例1~3について、表面にテフロン(登録商標)シートを張り付けた2枚のガラス板の一方に樹脂組成物をたらし、もう一方のガラス板で挟み込んだ後、80℃で60分間硬化させて硬化膜を得た。作製した硬化処理後の硬化膜を、スライドガラスに載せ、プレッシャークッカー試験(Pressure Cooker Test;以下、PCT)(2atm、121℃、100%RH、20時間)に供した。硬化膜が溶解しなかった場合を耐湿信頼性が良好である(〇)とし、硬化膜が溶解した場合を耐湿信頼性が不良である(×)とした。結果を表1に示す。PCT試験とは、硬化後の樹脂組成物を、121℃、2気圧、100%相対湿度に保持する信頼性試験である。
【0096】
[硬化物のシェア強度]
ニッケルメッキ基板上に、樹脂組成物をφ2mmの大きさ、125μmの厚さで孔版印刷により塗布し、塗布した樹脂組成物の上に、3.2mm×1.6mm×0.45mm厚のアルミナチップを積層し、軽く荷重をかけた状態で樹脂組成物を硬化させて、試験片を作製した。このときの硬化条件は、送風乾燥機中で80℃、60分とした。このニッケルメッキ基板上のアルミナチップを、23℃において、ボンドテスター(Dage社製、シリーズ4000)で側面から突き、アルミナチップが剥がれた時の応力(N)を測定した。この測定を10つの試験片について行い、得られた応力の平均値を算出した。この平均値を、硬化物のシェア強度(単位:N/Chip)とした。シェア強度は、好ましくは30N/Chip以上、さらに好ましくは50N/Chip以上である。実施例1~8の樹脂組成物の硬化物はいずれも、そのシェア強度は50N/Chip以上であった。
【0097】
【0098】
表1において、官能基当量数の比は、成分(A)、(B)及び(C)の質量及び対応するチオール当量又はエポキシ当量より算出した値である。これらの官能基当量数の比は、端数処理されている表中の成分(A)、(B)及び(C)のチオール当量又はエポキシ当量から求めた官能基当量数の比よりも正確である。
【0099】
実施例1~3、比較例1及び比較例2の比較から、成分(A)のチオール基当量数に対する成分(C)のエポキシ基当量数の比([成分(C)のエポキシ基当量数]/[成分(A)のチオール基当量数])が、0.50超0.60未満であることにより、樹脂組成物の硬化物は、リワーク性と耐湿信頼性とを併せ持つことがわかる。
実施例4~7は、実施例1に対し、成分(A)及び/又は成分(B)の種類及び/又は配合を変えた実施例であり、いずれもリワーク性と耐湿信頼性とを併せ持つことがわかる。
実施例8と比較例3との比較から、成分(A)が、エステル結合を有しない多官能チオール化合物を含むことにより、樹脂組成物の硬化物は、耐湿信頼性を有することがわかる。
本発明は、周囲温度においては高い接着強度を示すのに対し、部品に熱影響を与えない特定温度においてリワーク性を有し、かつ耐湿信頼性が高い硬化物を提供するエポキシ樹脂組成物であり、半導体装置や電子部品、特に、イメージセンサー又はカメラモジュールを構成する部品の固定、接着又は保護に用いられる接着剤又は封止剤として、非常に有用である。