(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147868
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241009BHJP
C23C 16/511 20060101ALI20241009BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241009BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H05H1/46 B
C23C16/511
H01L21/302 101D
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060562
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】金子 和史
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084AA07
2G084BB02
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2G084DD25
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2G084DD62
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2G084HH28
4K030AA09
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5F004BB13
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5F004DA25
5F004DA26
5F045AA09
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5F045EK07
(57)【要約】
【課題】高密度プラズマの特性を安定させることができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、処理空間を提供する処理容器と、処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、第1面を処理空間に対向させて設けられた誘電体と、誘電体を介して電磁波を処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、処理容器内において誘電体の第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、を備え、共振器配列構造体は、導体からなる部材が誘電体板の一面上に積層された構造を有するとともに、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を含むよう構成され、複数の共振器は、それぞれの誘電体板が電磁波供給部の中心軸を起点として放射状となるように配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、
第1面を前記処理空間に対向させて設けられた誘電体と、
前記誘電体を介して前記電磁波を前記処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、
前記処理容器内において前記誘電体の前記第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、
を備え、
前記共振器配列構造体は、導体からなる部材が誘電体板の一面上に積層された構造を有するとともに、前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を含むよう構成され、
前記複数の共振器は、それぞれの前記誘電体板が前記電磁波供給部の中心軸を起点として放射状となるように配置される、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記共振器の前記部材は、2枚以上のC字状のリング部材である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記共振器配列構造体は、前記放射状に配置された前記複数の共振器のうち、前記中心軸を中心とする円の周方向において前記中心軸から最も遠い前記共振器同士の間隔が、前記電磁波の半波長の長さを超えないように、前記複数の共振器が配置される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記複数の共振器は、前記共振器それぞれが、前記部材である2枚以上のC字状のリング部材の組を有し、複数の前記組を接続した短冊形状に形成され、前記短冊形状の前記複数の共振器が、前記放射状となるように配置される、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記共振器配列構造体は、前記処理空間側の面に前記放射状の溝を有するベースプレートを含むよう構成され、
前記短冊形状の前記複数の共振器は、前記リング部材が積層された面が前記ベースプレートの面に対して垂直となるように、前記溝に嵌め込まれる、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記短冊形状の前記複数の共振器は、両端部にノッチが設けられ、前記ノッチが押さえ部材によって前記ベースプレート側に押さえられることにより、前記ベースプレートに固定される、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記短冊形状の前記複数の共振器は、含まれる前記組の数が異なる2種類以上の前記短冊形状の前記複数の共振器である、
請求項4~6のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記電磁波供給部は、モノポールアンテナであり、
前記モノポールアンテナは、前記中心軸に配置され、前記誘電体の前記第1面から突出している、
請求項1~6のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記電磁波供給部は、複数設けられる、
請求項1~6のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記共振器配列構造体は、前記電磁波供給部ごとに複数設けられる、
請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
複数の前記電磁波供給部は、それぞれ供給する前記電磁波の周波数が異なる、
請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記複数の共振器は、前記放射状の各方向において、共振周波数が異なる、
請求項1~6のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理容器の天壁部に複数のマイクロ波放射機構を有するプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高密度プラズマの特性を安定させることができるプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、処理空間を提供する処理容器と、処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、第1面を処理空間に対向させて設けられた誘電体と、誘電体を介して電磁波を処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、処理容器内において誘電体の第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、を備え、共振器配列構造体は、導体からなる部材が誘電体板の一面上に積層された構造を有するとともに、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を含むよう構成され、複数の共振器は、それぞれの誘電体板が電磁波供給部の中心軸を起点として放射状となるように配置される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高密度プラズマの特性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るマイクロ波導入装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るマイクロ波放射機構の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る処理容器の天壁部の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を斜め下方向から見た構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る共振器の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る共振器の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る共振器の構成の他の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る共振器の断面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、共振器のS21値とマイクロ波の周波数との関係の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、処理容器の天壁部における磁場の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る共振器配列構造体の磁場分布の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る放射状に配列された共振器同士の間隔の一例について説明する図である。
【
図14】
図14は、変形例1に係る誘電体窓および共振器配列構造体を斜め下方向から見た構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例2に係る放射状に配列された共振器同士の間隔の一例について説明する図である。
【
図16】
図16は、変形例3に係る共振器配列構造体の断面を斜め下方向から見た構成の一例を示す斜視断面図である。
【
図18】
図18は、変形例3に係る短冊形状の共振器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
ところで、プラズマ励起用のマイクロ波を用いたプラズマ処理装置では、プラズマの電子密度を高めるために処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させることがある。処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させるほど、プラズマの電子密度を高めることができる。
【0010】
ここで、処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させることによりプラズマの電子密度がある上限値に到達すると、処理容器内の空間の誘電率が負となることが知られている。この電子密度の上限値を適宜「遮断密度」と呼ぶ。また、マイクロ波が空間を伝搬するか否かを示す指標として、屈折率が知られている。屈折率Nは、以下の式(1)により表される。
N=√ε√μ ・・・(1)
ただし、ε:誘電率、μ:透磁率
【0011】
透磁率は一般に正であるので、処理容器内の空間の誘電率が負となると、上記の式(1)により、処理容器内の空間の屈折率が純虚数となる。これにより、マイクロ波が減衰して処理容器内の空間を伝搬することができなくなる。このように、プラズマの電子密度が遮断密度に到達すると、処理容器内の空間においては、マイクロ波が伝搬できないため、マイクロ波の電力がプラズマに十分に吸収されない。結果として、処理容器内に生成されるプラズマの広範囲での高密度化が阻害されるという問題がある。また、円形の処理容器内では、一般的に磁場の方向が定まっておらず、高密度化されたプラズマの安定性が低い場合がある。そこで、プラズマの広範囲での高密度化を実現できるとともに、高密度プラズマの特性を安定させることができる技術が期待されている。
【0012】
[プラズマ処理装置の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すプラズマ処理装置100は、処理容器101と、載置台102と、ガス供給機構103と、排気装置104と、マイクロ波導入装置105と、制御部106とを有する。処理容器101は、基板Wを収容する。載置台102は、基板Wを載置する。ガス供給機構103は、処理容器101内にガスを供給する。排気装置104は、処理容器101内を排気する。マイクロ波導入装置105は、処理容器101内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させるとともに、処理容器101内にマイクロ波を導入する。制御部106は、プラズマ処理装置100の各部の動作を制御する。なお、プラズマ処理装置100で実行されるプラズマ処理としては、成膜処理、エッチング処理、アッシング処理および改質処理等が例示される。
【0013】
処理容器101は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって形成されており、内部に略円筒形状の処理空間Sを提供している。処理容器101は、板状の天壁部111および底壁部113と、これらを連結する側壁部112とを有している。マイクロ波導入装置105は、処理容器101の上部に設けられ、処理容器101内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。マイクロ波導入装置105については後で詳細に説明する。
【0014】
天壁部111には、マイクロ波導入装置105の後述するマイクロ波放射機構、共振器配列構造体およびガス導入部が嵌め込まれる複数の開口部を有している。側壁部112は、処理容器101に隣接する搬送室(図示せず)との間で被処理体である基板Wの搬入出を行うための搬入出口114を有している。搬入出口114はゲートバルブ115により開閉されるようになっている。底壁部113には排気装置104が設けられている。排気装置104は底壁部113に接続された排気管116に設けられ、真空ポンプと圧力制御バルブを備えている。排気装置104の真空ポンプにより排気管116を介して処理容器101内が排気される。処理容器101内の圧力は圧力制御バルブにより制御される。
【0015】
載置台102は、円盤状をなしており、AlN等のセラミックスからなっている。載置台102は、処理容器101の底部中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材120により支持されている。載置台102の外縁部には基板Wをガイドするためのガイドリング181が設けられている。また、載置台102の内部には、基板Wを昇降するための昇降ピン(図示せず)が載置台102の上面に対して突没可能に設けられている。さらに、載置台102の内部には抵抗加熱型のヒータ182が埋め込まれており、このヒータ182はヒータ電源183から給電されることにより載置台102を介してその上の基板Wを加熱する。また、載置台102には、熱電対(図示せず)が挿入されており、熱電対からの信号に基づいて、基板Wの加熱温度を、例えば300~1000℃の範囲の所定の温度に制御可能となっている。さらに、載置台102内のヒータ182の上方には、基板Wと同程度の大きさの電極184が埋設されており、この電極184には、高周波バイアス電源122が電気的に接続されている。この高周波バイアス電源122から載置台102にイオンを引き込むための高周波バイアスが、電極184に印加される。なお、高周波バイアス電源122はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0016】
ガス供給機構103は、プラズマ生成ガス、およびカーボン膜等の成膜対象の膜を形成するための原料ガスを処理容器101内に導入するためのものであり、複数のガス導入ノズル123を有している。ガス導入ノズル123は、処理容器101の天壁部111に形成された開口部に嵌め込まれている。ガス導入ノズル123には、ガス供給配管191が接続されている。このガス供給配管191は、分岐管191a、191b、191c、191d、191eの5つに分岐している。これら分岐管191a、191b、191c、191d、191eには、Arガス供給源192、O2ガス供給源193、N2ガス供給源194、H2ガス供給源195、C2H2ガス供給源196が接続されている。Arガス供給源192は、プラズマ生成ガスである貴ガス(希ガス)としてのArガスを供給する。O2ガス供給源193は、クリーニングガスである酸化ガスとしてのO2ガスを供給する。N2ガス供給源194は、パージガス等として用いられるN2ガスを供給する。H2ガス供給源195は、還元性ガスとしてのH2ガスを供給する。C2H2ガス供給源196は、成膜原料ガスである炭素含有ガスとしてのアセチレン(C2H2)ガスを供給する。なお、C2H2ガス供給源196は、エチレン(C2H4)等の他の炭素含有ガスを供給してもよい。
【0017】
なお、分岐管191a、191b、191c、191d、191eには、図示してはいないが、流量制御用のマスフローコントローラおよびその前後のバルブが設けられている。なお、シャワープレートを設けてC2H2ガスおよびH2ガスを基板Wに近い位置に供給するようにしてガスの解離を調整することもできる。また、これらのガスを供給するノズルを下方に延ばすことにより同様の効果を得ることができる。
【0018】
マイクロ波導入装置105は、前述のように、処理容器101の上方に設けられ、処理容器101内に電磁波(マイクロ波)を導入してプラズマを生成するプラズマ生成手段として機能する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るマイクロ波導入装置の構成の一例を示す図である。
図1および
図2に示すように、マイクロ波導入装置105は、処理容器101の天壁部111と、マイクロ波出力部130と、アンテナユニット140とを有する。天壁部111は、天板として機能する。マイクロ波出力部130は、マイクロ波を生成するとともに、マイクロ波を複数の経路に分配して出力する。アンテナユニット140は、マイクロ波出力部130から出力されたマイクロ波を、後述する共振器配列構造体200を介して、処理容器101に導入する。
【0020】
マイクロ波出力部130は、マイクロ波電源131と、マイクロ波発振器132と、アンプ133と、分配器134とを有している。マイクロ波発振器132はソリッドステートであり、例えば、2.45GHzでマイクロ波を発振(例えば、PLL発振)させる。なお、マイクロ波の周波数は、2.45GHzに限らず、860MHz、8.35GHz、5.8GHz、1.98GHz等、700MHzから10GHzの範囲のものを用いることができる。アンプ133は、マイクロ波発振器132によって発振されたマイクロ波を増幅する。分配器134は、アンプ133によって増幅されたマイクロ波を複数の経路に分配する。分配器134は、入力側と出力側のインピーダンスを整合させながらマイクロ波を分配する。
【0021】
また、マイクロ波出力部130は、マイクロ波の周波数、電力および帯域幅等の調整が可能である。マイクロ波出力部130は、例えば、マイクロ波の帯域幅を略0に設定することによって、単一周波数のマイクロ波を発生することができる。また、マイクロ波出力部130は、所定の周波数帯域幅に属する複数の周波数成分を含むマイクロ波(以下、適宜「広帯域マイクロ波」と呼ぶ。)を発生することができる。これら複数の周波数成分の電力は同一の電力であってもよく、帯域内の中央周波数成分のみが他の周波数成分の電力よりも大きい電力を有していてもよい。マイクロ波出力部130は、マイクロ波の電力を、例えば0W~5000Wの範囲内で調整することができる。マイクロ波出力部130は、マイクロ波の周波数または広帯域マイクロ波の中央周波数を、例えば2.3GHz~2.5GHzの範囲内で調整することができ、広帯域マイクロ波の帯域幅を例えば0MHz~100MHzの範囲で調整することができる。また、マイクロ波出力部130は、広帯域マイクロ波の複数の周波数成分の周波数のピッチ(キャリアピッチ)を、例えば0~25kHzの範囲内で調整することができる。なお、マイクロ波出力部130は、電磁波発生器の一例である。
【0022】
アンテナユニット140は、複数のアンテナモジュール141を含んでいる。複数のアンテナモジュール141は、それぞれ、分配器134によって分配されたマイクロ波を処理容器101内に導入する。複数のアンテナモジュール141の構成は全て同一である。各アンテナモジュール141は、分配されたマイクロ波を主に増幅して出力するアンプ部142と、アンプ部142から出力されたマイクロ波を処理容器101内に放射するマイクロ波放射機構143とを有する。
【0023】
アンプ部142は、位相器145と、可変ゲインアンプ146と、メインアンプ147と、アイソレータ148とを有する。位相器145は、マイクロ波の位相を変化させる。可変ゲインアンプ146は、メインアンプ147に入力されるマイクロ波の電力レベルを調整する。メインアンプ147は、ソリッドステートアンプとして構成されている。アイソレータ148は、後述するマイクロ波放射機構143のアンテナ部で反射されてメインアンプ147に向かう反射マイクロ波を分離する。
【0024】
ここで、
図3を用いてマイクロ波放射機構143について説明する。
図3は、本実施形態に係るマイクロ波放射機構の一例を模式的に示す図である。複数のマイクロ波放射機構143は、
図1に示すように、天壁部111に設けられている。また、
図3に示すように、マイクロ波放射機構143は、筒状をなす外側導体152および外側導体152内に外側導体152と同軸状に設けられた内側導体153を有する。マイクロ波放射機構143は、外側導体152と内側導体153との間にマイクロ波伝送路を有する同軸管151と、チューナ154と、給電部155と、アンテナ部156とを有する。チューナ154は、負荷のインピーダンスをマイクロ波電源131の特性インピーダンスに整合させる。給電部155は、アンプ部142からの増幅されたマイクロ波をマイクロ波伝送路に給電する。アンテナ部156は、同軸管151からのマイクロ波を処理容器101内に放射する。なお、マイクロ波放射機構143は、電磁波供給部の一例である。
【0025】
給電部155は、外側導体152の上端部の側方から同軸ケーブルによりアンプ部142で増幅されたマイクロ波が導入され、例えば、給電アンテナによりマイクロ波を放射する。このマイクロ波の放射により、外側導体152と内側導体153との間のマイクロ波伝送路にマイクロ波電力が給電され、マイクロ波電力がアンテナ部156に向かって伝播する。
【0026】
アンテナ部156は、同軸管151の下端部に設けられている。アンテナ部156は、内側導体153の下端部に接続された円盤状をなす平面アンテナ161と、平面アンテナ161の上面側に配置された遅波材162と、平面アンテナ161の下面側に配置されたマイクロ波透過板163とを有している。なお、マイクロ波透過板163は、処理空間Sに対向させて設けられた誘電体の一例である。マイクロ波透過板163は天壁部111に嵌め込まれており、その下面は後述する共振器配列構造体200と対向するとともに、処理容器101の内部空間に露出している。平面アンテナ161は、貫通するように形成されたスロット161aを有している。スロット161aの形状は、マイクロ波が効率良く放射されるように適宜設定される。スロット161aには誘電体が挿入されていてもよい。
【0027】
遅波材162は、真空よりも大きい誘電率を有する材料によって形成されており、その厚さによりマイクロ波の位相を調整することができ、マイクロ波の放射エネルギーが最大となるようにすることができる。マイクロ波透過板163も誘電体で構成されマイクロ波をTEモードで効率的に放射することができるような形状をなしている。そして、マイクロ波透過板163を透過したマイクロ波は、後述する共振器配列構造体200を介して、処理容器101内の空間にプラズマを生成する。遅波材162およびマイクロ波透過板163を構成する材料としては、例えば、石英やセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0028】
チューナ154は、スラグチューナを構成している。チューナ154は、
図3に示すように、スラグ171a,171bと、アクチュエータ172と、チューナコントローラ173とを有している。スラグ171a,171bは、同軸管151のアンテナ部156よりも基端部側(上端部側)の部分に配置された2つのスラグである。アクチュエータ172は、これら2つのスラグをそれぞれ独立して駆動する。チューナコントローラ173は、アクチュエータ172を制御する。
【0029】
スラグ171a,171bは、板状かつ環状をなし、セラミックス等の誘電体材料で構成され、同軸管151の外側導体152と内側導体153の間に配置されている。また、アクチュエータ172は、例えば、内側導体153の内部に設けられた、それぞれスラグ171a,171bが螺合する2本のねじを回転させることによりスラグ171a,171bを個別に駆動する。そして、チューナコントローラ173からの指令に基づいて、アクチュエータ172によって、スラグ171a,171bを上下方向に移動させる。チューナコントローラ173は、終端部のインピーダンスが50Ωになるように、スラグ171a,171bの位置を調整する。
【0030】
メインアンプ147と、チューナ154と、平面アンテナ161とは近接配置している。そして、チューナ154と平面アンテナ161とは集中定数回路を構成し、かつ共振器として機能する。平面アンテナ161の取り付け部分には、インピーダンス不整合が存在する。しかしながら、チューナ154によりプラズマ負荷に対して直接チューニングするので、プラズマを含めて高精度でチューニングすることができ、平面アンテナ161における反射の影響を解消することができる。
【0031】
図4は、本実施形態に係る処理容器の天壁部の一例を模式的に示す図である。
図4は、
図1のA-A断面のうち、側壁部112より内側の処理空間Sの部分に対応する。また、処理容器101の上方向をZ軸方向として表している。
図4に示すように、本実施形態では、マイクロ波放射機構143は7本設けられており、これらに対応するマイクロ波透過板163は、均等に六方最密配置になるように配置されている。すなわち、7つのマイクロ波透過板163のうち1つは、天壁部111の中央に配置され、その周囲に、他の6つのマイクロ波透過板163が配置されている。これら7つのマイクロ波透過板163は、隣接するマイクロ波透過板163が等間隔になるように配置されている。また、ガス供給機構103の複数のガス導入ノズル123は、中央のマイクロ波透過板163の周囲を囲むように配置されている。なお、マイクロ波放射機構143の本数は7本に限るものではない。
【0032】
マイクロ波透過板163の下面、つまり、天壁部111の複数のマイクロ波放射機構143に対応する位置には、それぞれ共振器配列構造体200が設けられている。共振器配列構造体200は、マイクロ波の磁界成分と共振可能であり且つサイズがマイクロ波の波長よりも小さい複数の共振器を含むように形成され、処理容器101内に位置する。なお、共振器配列構造体はメタマテリアルとも称され、共振器はメタアトムとも称される。また、複数の共振器は、共振器が横に複数連結された短冊形状の共振器220を複数形成する。なお、以下の説明では、短冊形状の共振器220を短冊形共振器220と表す場合がある。複数の短冊形共振器220は、短冊形状の短辺がZ軸方向となるように、且つ、マイクロ波放射機構143それぞれの中心軸を起点として放射状となるように配置される。なお、マイクロ波透過板163の下面は、共振器配列構造体200と接していても、離間していてもよい。
【0033】
共振器配列構造体200が処理容器101内に位置することにより、マイクロ波放射機構143によって処理空間Sに供給されるマイクロ波と共振器配列構造体200の複数の共振器とを共振させることができる。マイクロ波と複数の共振器との共振により、処理容器101の処理空間Sにマイクロ波を効率よく供給することができ且つ処理空間Sの透磁率を負にすることができる。処理空間Sの透磁率が負である場合、処理空間S内で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達し且つ処理空間Sの誘電率が負である場合であっても、上記の式(1)により屈折率が実数となるため、処理空間Sにおいてマイクロ波が伝搬することができる。これにより、処理空間S内で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、プラズマの表皮深さを超えてマイクロ波の伝搬が可能でありプラズマにマイクロ波の電力が効率よく吸収される。結果として、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置100によれば、共振器配列構造体200が処理容器101内に位置することにより、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができる。
【0034】
ここで、
図1および
図5を参照して、共振器配列構造体200の詳細な構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を斜め下方向から見た構成の一例を示す概略斜視図である。
図5には、誘電体窓である複数のマイクロ波透過板163のうち、1つのマイクロ波透過板163の下面が円盤状に示されている。
【0035】
共振器配列構造体200は、マイクロ波の磁界成分と共振可能であり且つサイズがマイクロ波の波長よりも小さい複数の共振器201を含むように形成される。また、複数の共振器201は、共振器201が横に複数連結された短冊形共振器220を複数形成している。
図5の例では、短冊形共振器220は、共振器201が3つ連結されている。複数の短冊形共振器220は、短冊形状の短辺がZ軸方向となるように、且つ、マイクロ波透過板163の中心軸であるZ1軸を起点として放射状となるように配置される。また、具体的には、複数の共振器201は、
図6および
図7に示す共振器201Aおよび共振器201Bの少なくともいずれか一つ共振器を含む。複数の共振器201の各々は、コンデンサ等価素子およびコイル等価素子からなる直列共振回路を構成する。直列共振回路は、平面上に導体をパターニングすることで、実現される。また、複数の共振器201の各々は、サイズがマイクロ波の波長の1/10未満のサイズである。
【0036】
図6は、本実施形態に係る共振器の構成の一例を示す図である。
図6に示す共振器201Aは、導体からなる互いに逆向き且つ同心円状の2枚のC字状のリング部材211Aが誘電体板212Aの一面上に積層された構造を有する。内側のリング部材211Aと外側のリング部材211Aの対向面や、各リング部材211Aの両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、各リング部材211Aに沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、共振器201Aは、直列共振回路を構成することができる。
【0037】
図7は、本実施形態に係る共振器の構成の一例を示す図である。
図7に示す共振器201Bは、導体からなる2枚のC字状のリング部材211Bであって、互いに逆向きに隣接して配置されるリング部材211Bの間に誘電体板212Bが配置された構造を有する。すなわち、共振器201Bにおいては、互いに逆向きの2枚のC字状のリング部材211Bによって誘電体板212Bが挟まれている。2枚のC字状のリング部材211Bの対向面や、各リング部材211Bの両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、各リング部材211Bに沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、共振器201Bは、直列共振回路を構成することができる。なお、共振器201Bは、2枚のC字状のリング部材211Bの組ごとに形成されているとも表すことができる。また、本実施形態では、C字状のリング部材211A,211Bとして、円リングの一部に切り欠きがある形状で説明しているが、これに限定されない。リング部材の形状は、円リングに限られず、例えば、楕円リング、三角形リング、方形リング、および、多角形リング等のいずれかのリングに切り欠きがある形状であってもよい。
【0038】
なお、
図7に示す共振器201Bにおいては、リング部材211Bの配置数(以下、適宜「積層数」とも言う。)が2であるが、リング部材211Bの積層数が2よりも大きくてもよい。
図8は、本実施形態に係る共振器の構成の他の一例を示す図である。
図8に示す共振器201Bは、導体からなるN(N≧2)枚のC字状のリング部材211Bであって、互いに逆向きに隣接して配置されるリング部材211Bの間に誘電体板212Bが配置された構造を有する。このような構造によっても、共振器201Bは、直列共振回路を構成することができる。
【0039】
また、複数の共振器201の各々には、絶縁性の被膜が形成されてもよい。
図9は、本実施形態に係る共振器の断面の一例を示す図である。
図9には、
図7に示す共振器201Bの側断面が示されている。共振器201Bの表面には、絶縁性の被膜(誘電体膜の一例)213が形成されている。被膜213の材質は、例えば、セラミックである。被膜213の厚さは、例えば0.001mm~2mmの範囲内である。複数の共振器201の各々に絶縁性の被膜213が形成されることにより、複数の共振器201の各々での異常放電を抑制することができる。また、複数の共振器201の各々に絶縁性の被膜213が形成されることにより、リング部材211Bがプラズマに曝されることを抑制できる。
【0040】
制御部106は、プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プログラムおよびプロセスレシピ等が記憶されている。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出して実行することにより、メモリ内に記憶されたプロセスレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、プラズマ処理装置100の各部を統括制御する。
【0041】
制御部106は、例えば、処理空間Sにプラズマが生成される際、複数の共振器201の共振周波数よりも高い目標周波数帯において、マイクロ波放射機構143によって処理空間Sに供給されるマイクロ波と複数の共振器201とが共振するように制御する。ここで、共振周波数とは、例えば、複数の共振器201の透過特性値(例えば、S21値)が極小値となる周波数である。
【0042】
図10は、共振器のS21値とマイクロ波の周波数との関係の一例を示す図である。マイクロ波放射機構143によって処理空間Sに供給されるマイクロ波の周波数が複数の共振器201の共振周波数fr(=約2.35GHz)と一致する場合に、複数の共振器201のS21値が極小値となり、マイクロ波と複数の共振器201との共振が発生する。マイクロ波と複数の共振器201との共振は、複数の共振器201の共振周波数frよりも高い所定の周波数帯(例えば、約0.1GHz)においても、維持される。複数の共振器201の共振周波数frよりも高い所定の周波数帯においては、マイクロ波と複数の共振器201との共振により処理空間Sの誘電率と透磁率をともに負にすることができ、上記の式(1)から分かる通り、処理空間Sでのマイクロ波の伝搬が可能となる。本実施形態の目標周波数帯は、複数の共振器201の共振周波数frよりも高い所定の周波数帯(例えば、約0.1GHz)に設定される。目標周波数帯は、例えば、複数の共振器201の共振周波数frの0.05倍以内であることが好ましい。
【0043】
なお、複数の共振器に対する電磁波の伝搬については共振周波数と屈折率、誘電率および透磁率との関係は、たとえば、「PHYSICAL REVIEW E 71,036617(2005)」の「Electromagnetic parameter retrieval from inhomogeneous metamaterials」により、D.R.Smith,D.C.Vier,Th.Koschny and C.M.Soukoulisらにより報告されている。
【0044】
このように、複数の共振器201の共振周波数frよりも高い目標周波数帯においてマイクロ波と複数の共振器201とを共振させることにより、プラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、マイクロ波の伝搬がプラズマの表皮深さを越えて可能となる。このため、プラズマにマイクロ波の電力を効率よく吸収できる。結果として、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置100によれば、複数の共振器201の共振周波数frよりも高い目標周波数帯において、マイクロ波と複数の共振器201とを共振させることにより、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができる。
【0045】
[共振器配列構造体における磁場分布]
次に、
図11および
図12を用いて共振器配列構造体200における磁場分布について説明する。
図11は、処理容器の天壁部における磁場の一例を示す図である。
図11は、処理容器101の天壁部111のうち、マイクロ波放射機構143のマイクロ波透過板163における磁場分布のシミュレーション結果を斜め上方向から見た状態である。
図11に示すように、マイクロ波透過板163内では、平面アンテナ161から供給されるマイクロ波230によって、マイクロ波透過板163の中心軸であるZ1軸を中心とした矢印231に示す回転磁場が形成されている。このような回転磁場は、マイクロ波放射機構143における電力導入構造、つまり、同軸管151をマイクロ波がTEMモードで伝播することに起因する。
【0046】
図12は、本実施形態に係る共振器配列構造体の磁場分布の一例を示す図である。
図12は、共振器配列構造体200における磁場分布のシミュレーション結果を斜め上方向から見た状態である。なお、
図12の磁場分布は、マイクロ波透過板163を透過した状態で見ているものとする。
図12に示すように、共振器配列構造体200では、各短冊形共振器220の各共振器201において、リング部材211Bを貫くようにZ1軸を中心とした回転磁場232が形成されている。すなわち、共振器配列構造体200が配置されるマイクロ波透過板163の下面では、アンテナ部156の平面アンテナ161から供給されるマイクロ波がTM01モードであるので、磁場の方向を回転磁場と見なすことができる。このため、各共振器201は、平面アンテナ161から供給されるマイクロ波と共振可能である。このように、共振器配列構造体200では、供給される磁場の方向が定まっているので、生成された高密度プラズマの特性を安定させることができる。すなわち、本実施形態は、プラズマの広範囲での高密度化を実現できるとともに、高密度プラズマの特性を安定させることができる。
【0047】
また、例えば、共振器配列構造体として各共振器を
図4のX軸方向およびY軸方向に格子状に配列した場合、格子状配列のX軸方向およびY軸方向において全ての方向の磁場と共振可能であるが、共振器配列構造体の構造が複雑になる。これに対し、本実施形態の共振器配列構造体200では、回転磁場の方向に応じた各共振器201の配列となっているので、共振器配列構造体200の構造を簡略化することができる。また、共振器配列構造体200では、構造を簡略化できるので、製作時の寸法誤差やコストを抑制することができる。
【0048】
[放射状の共振器と波長との関係]
続いて、
図13を用いて放射状に配置された短冊形共振器220の間隔と供給されるマイクロ波の波長との関係について説明する。
図13は、本実施形態に係る放射状に配列された共振器同士の間隔の一例について説明する図である。
図13は、共振器配列構造体200をZ軸の下方向から見ている状態である。
図13に示すように、共振器配列構造体200では、短冊形共振器220が放射状に配置されているので、共振器配列構造体200の半径を大きくしていくと、最外周部で短冊形共振器220の共振器201同士の円周方向の間隔250が大きくなっていく。このとき、間隔250が供給されるマイクロ波の半波長(λ/2)を超えると、共振器配列構造体200の効率が低下することが考えられる。従って、間隔250は、供給されるマイクロ波の半波長を超えないことが好ましい。すなわち、共振器配列構造体200は、放射状に配置された複数の共振器201のうち、共振器配列構造体200の円周方向(中心軸を中心とする円の周方向)において中心軸から最も遠い共振器201同士の間隔250が、電磁波の半波長の長さを超えないように、複数の共振器201が配置される。これにより、共振器配列構造体200におけるプラズマ生成の効率を向上させることができる。
【0049】
(変形例1~3)
次に、
図14から
図18を用いて本実施形態の変形例1~3について説明する。
図14は、変形例1に係る誘電体窓および共振器配列構造体を斜め下方向から見た構成の一例を示す概略斜視図である。
図14では、変形例1として、マイクロ波放射機構143のうち、平面アンテナ161に代えて、モノポールアンテナ301を用いた場合におけるマイクロ波透過板363および共振器配列構造体300を示している。なお、
図14には、
図5と同様に、誘電体窓である複数のマイクロ波透過板363のうち、1つのマイクロ波透過板363の下面が円盤状に示されている。
【0050】
共振器配列構造体300は、共振器配列構造体200と同様に、複数の共振器201を含む短冊形共振器220を複数有する。複数の短冊形共振器220は、短冊形状の短辺がZ軸方向となるように、且つ、マイクロ波透過板363の中心軸であるZ1軸を起点として放射状となるように配置される。マイクロ波透過板363の中心軸には、同軸管151の内側導体153と電気的に接続されるモノポールアンテナ301が配置される。モノポールアンテナ301は、例えば、マイクロ波透過板363を貫通して内側導体153と接続される。また、モノポールアンテナ301は、マイクロ波透過板363の処理空間S側の面から突出している。モノポールアンテナ301は、平面アンテナ161と同様に、処理空間Sにマイクロ波を供給することができる。つまり、モノポールアンテナ301を含むマイクロ波放射機構は、電磁波供給部の一例である。
【0051】
このように、モノポールアンテナ301を用いた場合であっても、
図12に示す回転磁場232を形成できるので、プラズマの広範囲での高密度化を実現できるとともに、高密度プラズマの特性を安定させることができる。すなわち、処理空間Sへのマイクロ波の供給は、平面アンテナ161に限定されず、モノポールアンテナ301を用いてもよい。また、処理空間Sへのマイクロ波の供給は、回転磁場を発生させることが出来れば、ダイポールアンテナ、マルチポールアンテナ、同軸導波管および円形導波管等を用いてもよい。
【0052】
図15は、変形例2に係る放射状に配列された共振器同士の間隔の一例について説明する図である。
図15では、変形例2の共振器配列構造体310について説明する。
図15は、共振器配列構造体310をZ軸の下方向から見ている状態である。
図15に示す共振器配列構造体310は、半径が大きいため、最外周部における短冊形共振器220の共振器201同士の円周方向の間隔が供給されるマイクロ波の半波長(λ/2)を超える場合に、各短冊形共振器220間に各共振器221を配置した例である。共振器配列構造体310では、各短冊形共振器220と各共振器221との間隔251が半波長(λ/2)以下となるように、各短冊形共振器220間に各共振器221が配置される。なお、共振器221は、1つの共振器201であってもよいし、複数の共振器201を有する短冊形共振器であってもよい。
【0053】
これにより、共振器配列構造体310は、間隔251が供給されるマイクロ波の半波長を超えないので、プラズマ生成の効率を向上させることができる。また、共振器配列構造体310は、マイクロ波放射機構143のマイクロ波透過板163の直径が処理容器101の内径に近い大きさであっても、プラズマ生成の効率を向上させることができる。つまり、共振器配列構造体310は、マイクロ波放射機構143を1つ有するプラズマ処理装置において適用することが好ましい。
【0054】
図16は、変形例3に係る共振器配列構造体の断面を斜め下方向から見た構成の一例を示す斜視断面図である。
図17は、
図16の矢視Bにおけるベースプレートの一例を示す斜視図である。
図18は、変形例3に係る短冊形状の共振器の構成の一例を示す図である。
図16に示す変形例3の共振器配列構造体500は、ベースプレート501が、天壁部411の上部から嵌め込まれる構成の共振器配列構造体の一例である。なお、
図16には、複数のマイクロ波透過板163に対応する共振器配列構造体500のうち、1つの共振器配列構造体500の斜め下方向から見た断面が示されている。また、
図16では、マイクロ波透過板163の中心軸、つまり、共振器配列構造体500の中心軸をZ1軸としている。なお、変形例3では、共振器配列構造体500のベースプレート501をマイクロ波透過板163の代わりとして用いてもよい。
【0055】
共振器配列構造体500は、ベースプレート501と、短冊形共振器510とを有する。
図17に示すように、ベースプレート501は、処理空間S側の面に放射状の溝502とネジ穴503,504とを有する。なお、溝502は、深さ方向が、例えばZ1軸の方向(垂直方向)の溝である。また、、
図17は、
図16の矢視Bの方向から見たベースプレート501を表している。さらに、
図18に示すように、短冊形共振器510は、共振器511が2つ横に連結され、両端部にノッチ512を設けている。共振器511は、例えば、互いに逆向きの2枚のC字状のリング部材511Bを有する共振器であり、共振器201Bと同様の構成の共振器である。なお、短冊形共振器510において、連結される共振器511の数は限定されない。短冊形共振器510は、例えば、変形例2の短冊形共振器220および共振器221のように、含まれる共振器511の数、つまり、リング部材511Bの組の数が異なる2種類以上の短冊形状の複数の共振器であってもよい。
【0056】
図16に示すように、短冊形共振器510は、各溝502に各短冊形共振器510が嵌め込まれ、ノッチ512がワッシャ505を介してネジ穴503,504に螺合されるネジ506によってベースプレート501側に押さえられる。このとき、各短冊形共振器510は、外周側の各ノッチ512が各ネジ穴503に螺合される各ネジ506、および、各ネジ506によって押さえられる各ワッシャ505によって押さえられる。同様に、各短冊形共振器510は、中心側のノッチ512がネジ穴504に螺合されるネジ506、および、ネジ506によって押さえられるワッシャ505によって押さえられる。ワッシャ505およびネジ506は、押さえ部材の一例である。また、ワッシャ505およびネジ506は、誘電体部材であるアルミナ等のセラミックスで形成されている。すなわち、短冊形共振器510は、リング部材511Bが積層された面がベースプレート501の面に対して垂直となるように、溝502に嵌め込まれる。このように、共振器配列構造体500では、共振器511を含む短冊形共振器510を容易に放射状に配置することができる。
【0057】
なお、上記した実施形態では、電磁波供給部であるマイクロ波放射機構143を複数設けたプラズマ処理装置100を説明したが、これに限定されない。例えば、電磁波供給部であるマイクロ波放射機構を1つ有するタイプのプラズマ処理装置に対して適用してもよい。この場合、1つのマイクロ波放射機構に対応する処理容器内の処理空間に、共振器配列構造体が設けられる。
【0058】
また、上記した実施形態では、マイクロ波出力部130において、同一の周波数成分を含むマイクロ波が分配器134により各マイクロ波放射機構143に分配されたが、これに限定されない。例えば、マイクロ波出力部130内に異なる周波数を出力するマイクロ波発振器132を複数設け、各マイクロ波放射機構143のうち、供給するマイクロ波の周波数が異なるマイクロ波放射機構143を含むようにしてもよい。例えば、7つのマイクロ波放射機構143がそれぞれ供給するマイクロ波(電磁波)の周波数が異なるようにしてもよい。これにより、各マイクロ波放射機構143によって供給されるマイクロ波の干渉を抑制することができる。
【0059】
また、上記した実施形態では、1つの共振器配列構造体200内における、各短冊形共振器220に含まれる各共振器201の共振周波数を同一としたが、これに限定されない。例えば、放射状の各方向における各短冊形共振器220ごとに、各共振器201の共振周波数が異なるようにしてもよい。これにより、1つの共振器配列構造体200内において、プラズマ密度を制御することができる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、プラズマ処理装置100は、処理空間Sを提供する処理容器101と、処理空間Sに供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器(マイクロ波出力部130)と、第1面を処理空間Sに対向させて設けられた誘電体(マイクロ波透過板163)と、誘電体を介して電磁波を処理空間Sに供給するように構成される電磁波供給部(マイクロ波放射機構143)と、処理容器101内において誘電体の第1面に沿って位置する共振器配列構造体(200,300,310,500)と、を備える。共振器配列構造体は、導体からなる部材(リング部材211A,211B)が誘電体板(212A,212B)の一面上に積層された構造を有するとともに、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器(201,221,511)を含むよう構成される。複数の共振器は、それぞれの誘電体板が電磁波供給部の中心軸(Z1軸)を起点として放射状となるように配置される。その結果、プラズマの広範囲での高密度化を実現できるとともに、高密度プラズマの特性を安定させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、共振器の部材は、2枚以上のC字状のリング部材である。その結果、共振器がマイクロ波と共振できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、共振器配列構造体は、放射状に配置された複数の共振器のうち、中心軸を中心とする円の周方向において中心軸から最も遠い共振器同士の間隔が、電磁波の半波長の長さを超えないように、複数の共振器が配置される。その結果、プラズマ生成の効率を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、複数の共振器は、共振器それぞれが、部材である2枚以上のC字状のリング部材の組を有し、複数の組を接続した短冊形状に形成され、短冊形状の複数の共振器(短冊形共振器220)が、放射状となるように配置される。その結果、高密度プラズマの特性を安定させることができる。
【0064】
また、変形例3によれば、共振器配列構造体500は、処理空間S側の面に放射状の溝502を有するベースプレート501を含むよう構成され、短冊形状の複数の共振器(短冊形共振器510)は、リング部材511Bが積層された面がベースプレート501の面に対して垂直となるように、溝502に嵌め込まれる。その結果、共振器を容易に放射状に配置することができる。
【0065】
また、変形例3によれば、短冊形状の複数の共振器は、両端部にノッチ512が設けられ、ノッチ512が押さえ部材(ワッシャ505およびネジ506)によってベースプレート501側に押さえられることにより、ベースプレート501に固定される。その結果、共振器を容易に放射状に配置することができる。
【0066】
また、変形例2によれば、短冊形状の複数の共振器は、含まれる組の数が異なる2種類以上の短冊形状の複数の共振器である。その結果、プラズマ生成の効率を向上させることができる。
【0067】
また、変形例1によれば、電磁波供給部は、モノポールアンテナ301であり、モノポールアンテナ301は、中心軸に配置され、マイクロ波透過板363の処理空間S側の面(誘電体の第1面)から突出している。その結果、処理空間Sにマイクロ波を供給することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、電磁波供給部は、複数設けられる。その結果、より均等に処理空間Sにマイクロ波を供給することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、共振器配列構造体は、電磁波供給部ごとに複数設けられる。その結果、高密度プラズマの特性をより安定させることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、複数の電磁波供給部は、それぞれ供給する電磁波の周波数が異なる。その結果、各電磁波供給部によって供給されるマイクロ波の干渉を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、複数の共振器は、放射状の各方向において、共振周波数が異なる。その結果、1つの共振器配列構造体内において、プラズマ密度を制御することができる。
【0072】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0073】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、
第1面を前記処理空間に対向させて設けられた誘電体と、
前記誘電体を介して前記電磁波を前記処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、
前記処理容器内において前記誘電体の前記第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、
を備え、
前記共振器配列構造体は、導体からなる部材が誘電体板の一面上に積層された構造を有するとともに、前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を含むよう構成され、
前記複数の共振器は、それぞれの前記誘電体板が前記電磁波供給部の中心軸を起点として放射状となるように配置される、
プラズマ処理装置。
(2)
前記共振器の前記部材は、2枚以上のC字状のリング部材である、
前記(1)に記載のプラズマ処理装置。
(3)
前記共振器配列構造体は、前記放射状に配置された前記複数の共振器のうち、前記中心軸を中心とする円の周方向において前記中心軸から最も遠い前記共振器同士の間隔が、前記電磁波の半波長の長さを超えないように、前記複数の共振器が配置される、
前記(1)または(2)に記載のプラズマ処理装置。
(4)
前記複数の共振器は、前記共振器それぞれが、前記部材である2枚以上のC字状のリング部材の組を有し、複数の前記組を接続した短冊形状に形成され、前記短冊形状の前記複数の共振器が、前記放射状となるように配置される、
前記(3)に記載のプラズマ処理装置。
(5)
前記共振器配列構造体は、前記処理空間側の面に前記放射状の溝を有するベースプレートを含むよう構成され、
前記短冊形状の前記複数の共振器は、前記リング部材が積層された面が前記ベースプレートの面に対して垂直となるように、前記溝に嵌め込まれる、
前記(4)に記載のプラズマ処理装置。
(6)
前記短冊形状の前記複数の共振器は、両端部にノッチが設けられ、前記ノッチが押さえ部材によって前記ベースプレート側に押さえられることにより、前記ベースプレートに固定される、
前記(5)に記載のプラズマ処理装置。
(7)
前記短冊形状の前記複数の共振器は、含まれる前記組の数が異なる2種類以上の前記短冊形状の前記複数の共振器である、
前記(4)~(6)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(8)
前記電磁波供給部は、モノポールアンテナであり、
前記モノポールアンテナは、前記中心軸に配置され、前記誘電体の前記第1面から突出している、
前記(1)~(7)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(9)
前記電磁波供給部は、複数設けられる、
前記(1)~(8)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(10)
前記共振器配列構造体は、前記電磁波供給部ごとに複数設けられる、
前記(9)に記載のプラズマ処理装置。
(11)
複数の前記電磁波供給部は、それぞれ供給する前記電磁波の周波数が異なる、
前記(10)に記載のプラズマ処理装置。
(12)
前記複数の共振器は、前記放射状の各方向において、共振周波数が異なる、
前記(1)~(11)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【符号の説明】
【0074】
100 プラズマ処理装置
101 処理容器
111 天壁部
130 マイクロ波出力部
143 マイクロ波放射機構
163 マイクロ波透過板
200,300,310,500 共振器配列構造体
201,221,511 共振器
211A,211B,511B リング部材
212A,212B 誘電体板
220,510 短冊形共振器
301 モノポールアンテナ
501 ベースプレート
502 溝
505 ワッシャ
506 ネジ
512 ノッチ
S 処理空間
W 基板