(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147876
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060577
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 和史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 道
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB02
2G084BB27
2G084CC05
2G084CC06
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD25
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084HH19
2G084HH24
(57)【要約】
【課題】共振器配列構造体の構造を簡略化できるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、処理空間を提供する処理容器と、処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、第1面を処理空間に対向させて設けられた誘電体と、誘電体を介して電磁波を処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、処理容器内において誘電体の第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、を備え、共振器配列構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さく、誘電体の第1面に沿う方向に配置される複数の共振器を含み、電磁波供給部は、複数の共振器が配置される平面に垂直な磁界成分を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、
第1面を前記処理空間に対向させて設けられた誘電体と、
前記誘電体を介して前記電磁波を前記処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、
前記処理容器内において前記誘電体の前記第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、
を備え、
前記共振器配列構造体は、前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さく、前記誘電体の前記第1面に沿う方向に配置される複数の共振器を含み、
前記電磁波供給部は、前記複数の共振器が配置される平面に垂直な磁界成分を供給する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記共振器配列構造体は、前記誘電体の前記第1面と平行になるように位置し、
前記複数の共振器は、前記誘電体の前記第1面と平行な平面の方向に配置される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電磁波供給部は、前記処理容器の外部に設けられたコイルである、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記コイルは、前記コイルの開口部が前記共振器配列構造体と平行になるように配置される、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記コイルは、ループ状に巻かれている、
請求項3または4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記コイルは、ソレノイド状に巻かれている、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記コイルは、高透磁率材料のコアを有する、
請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記コイルは、平面スパイラル状に巻かれている、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記コイルは、複数設けられる、
請求項3または4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記共振器配列構造体は、前記誘電体の前記第1面と接するように設けられる、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記共振器配列構造体は、前記処理空間において、前記誘電体の前記第1面と離れるように設けられる、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記共振器配列構造体は、前記誘電体と一体化されるように設けられる、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記複数の共振器は、共振周波数が異なる2種類以上の共振器を含む、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記複数の共振器は、格子状に配列され、該格子状の配列の中心部と外周部とで前記共振周波数が異なる、
請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記共振器配列構造体は、複数の層を有する構造であり、
前記複数の共振器は、前記中心部と前記外周部とで異なる前記層に配置される、
請求項14に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記共振器配列構造体は、複数の層を有する構造であり、
前記複数の共振器は、前記層ごとに配置される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記複数の共振器は、前記層ごとに異なる配置である、
請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記複数の共振器は、前記層ごとの共振周波数が同じ周波数である、
請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
前記複数の共振器は、前記層ごとの共振周波数が異なる周波数である、
請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
前記共振器配列構造体は、上面と下面とを貫通する貫通孔を有する、
請求項10または11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項21】
前記電磁波の波長は、前記処理容器のサイズより1桁以上長く、分布定数回路として扱われる範囲の高周波とみなせる波長である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラズマ励起用のマイクロ波を処理容器内に供給してプラズマを生成するプラズマ処理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、共振器配列構造体の構造を簡略化できるプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、処理空間を提供する処理容器と、処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、第1面を処理空間に対向させて設けられた誘電体と、誘電体を介して電磁波を処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、処理容器内において誘電体の第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、を備え、共振器配列構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さく、誘電体の第1面に沿う方向に配置される複数の共振器を含み、電磁波供給部は、複数の共振器が配置される平面に垂直な磁界成分を供給する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、共振器配列構造体の構造を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る共振器単体の平面およびB-B断面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る共振器の共振周波数の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、変形例3に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、変形例4に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、変形例5に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、変形例5に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
【
図16】
図16は、変形例5に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、変形例6に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
【
図18】
図18は、変形例6に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、変形例6に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、変形例7に係る共振器配列構造体の層構造の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、変形例7に係る共振器配列構造体の層構造の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、第4実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
【
図24】
図24は、第4実施形態に係る共振器単体の平面およびJ-J断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
ところで、プラズマ励起用のマイクロ波を用いたプラズマ処理装置では、プラズマの電子密度を高めるために処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させることがある。処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させるほど、プラズマの電子密度を高めることができる。
【0010】
ここで、処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させることによりプラズマの電子密度がある上限値に到達すると、処理容器内の空間の誘電率が負となることが知られている。この電子密度の上限値を適宜「遮断密度」と呼ぶ。また、マイクロ波が空間を伝搬するか否かを示す指標として、屈折率が知られている。屈折率Nは、以下の式(1)により表される。
N=√ε√μ ・・・(1)
ただし、ε:誘電率、μ:透磁率
【0011】
透磁率は一般に正であるので、処理容器内の空間の誘電率が負となると、上記の式(1)により、処理容器内の空間の屈折率が純虚数となる。これにより、マイクロ波が減衰して処理容器内の空間を伝搬することができなくなる。このように、プラズマの電子密度が遮断密度に到達すると、処理容器内の空間においては、マイクロ波が伝搬できないため、マイクロ波の電力がプラズマに十分に吸収されない。結果として、処理容器内に生成されるプラズマの広範囲での高密度化が阻害されるという問題がある。なお、上記ではマイクロ波を一例として説明したが、超短波(VHF:Very High Frequency)~極超短波(UHF:Ultra High Frequency)帯の電磁波を用いたプラズマ処理装置においても同様の問題がある。
【0012】
そこで、プラズマの広範囲での高密度化を実現することができるとともに、共振器配列構造体の構造を簡略化できる技術が期待されている。
【0013】
(第1実施形態)
[プラズマ処理装置の構成]
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。プラズマ処理装置1は、装置本体10および制御装置(制御部の一例)11を備える。
図1に示すプラズマ処理装置1は、例えば、誘導結合型のプラズマ処理装置として構成される。装置本体10は、処理容器12、ステージ14、RF(Radio Frequency)電源(電磁波発生器の一例)16、誘電体窓20、アンテナ30、ガス供給部38および共振器配列構造体100を備える。また、装置本体10は、中央ガス注入部13を含む。中央ガス注入部13は、ステージ14の上方に配置され、誘電体窓20の中央開口部に取り付けられる。アンテナ30は、処理容器12(誘電体窓20)の上部または上方(外部)に配置される。
【0014】
処理容器12は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等によって略円筒状に形成されており、内部に略円筒形状の処理空間Sを提供している。処理容器12は、保安接地されている。また、処理容器12は、側壁12aおよび底部12bを有する。側壁12aの中心軸線を、軸線Zと定義する。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられている。底部12bには、排気用の排気口12hが設けられている。また、側壁12aの上端部は開口している。また、側壁12aの内壁面は、処理空間Sに対向している。すなわち、側壁12aは、内壁面を処理空間Sに対向させて設けられる。
【0015】
側壁12aには、被処理体WPの搬入/搬出を行うための開口12cが形成されている。開口12cは、ゲートバルブGBによって開閉される。
【0016】
側壁12aの上端部には誘電体窓20が設けられており、側壁12aの上端部の開口を上方から塞ぐ。誘電体窓(誘電体の一例)20の下面(第1面の一例)20aは、処理空間Sに対向している。すなわち、誘電体窓20は、下面20aを処理空間Sに対向させて設けられる。
【0017】
ステージ14は、処理容器12内に収容される。ステージ14は、軸線Zの方向において誘電体窓20と対面するように設けられている。ステージ14と誘電体窓20の間の空間が処理空間Sである。ステージ14の上には、被処理体WPが載置される。
【0018】
ステージ14は、基台14aおよび静電チャック14cを有する。基台14aは、アルミニウム等の導電性の材料により略円盤状に形成されている。基台14aは、基台14aの中心軸線が軸線Zに略一致するように処理容器12内に配置されている。
【0019】
基台14aは、絶縁性の材料により形成され且つ軸線Z方向に延伸する筒状支持部48によって支持されている。筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられている。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿って処理容器12の底部12bから誘電体窓20へ向かって延びている。筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成されている。
【0020】
排気路51の上部には、厚さ方向に複数の貫通穴が形成された環状のバッフル板52が設けられている。バッフル板52の下方には上述した排気口12hが設けられている。排気口12hには、排気管54を介して、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプや自動圧力制御弁等を有する排気装置56が接続されている。排気装置56により、処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
【0021】
基台14aは、高周波電極として機能する。基台14aには、給電棒62およびマッチングユニット60を介して、RFバイアス用の高周波電源58が電気的に接続されている。高周波電源58は、被処理体WPに引き込まれるイオンのエネルギーを制御するのに適した所定周波数(例えば、13.56MHz)のバイアス電力をマッチングユニット60および給電棒62を介して基台14aに供給する。
【0022】
マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。整合器の中には自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0023】
基台14aの上面には、静電チャック14cが設けられている。静電チャック14cは、被処理体WPを静電気力によって吸着保持する。静電チャック14cは、略円盤状の外形を有し、電極14d、絶縁膜(誘電体膜)14e、および絶縁膜(誘電体膜)14fを有する。静電チャック14cは、静電チャック14cの中心軸線が軸線Zに略一致するように、基台14aの上面に配置されている。静電チャック14cの電極14dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜14eと絶縁膜14fの間に設けられている。電極14dには、被覆線68およびスイッチ66を介して直流電源64が電気的に接続されている。静電チャック14cは、直流電源64から印加される直流電圧により発生する静電気力によって、被処理体WPを上面に吸着保持することができる。静電チャック14cの上面は、被処理体WPが載置される載置面であり、処理空間Sに対向している。すなわち、静電チャック14cは、載置面である上面を処理空間Sに対向させて設けられる。また、基台14a上には、エッジリング14bが設けられている。エッジリング14bは、被処理体WPおよび静電チャック14cを囲むように配置されている。エッジリング14bは、フォーカスリングと呼ばれることもある。
【0024】
基台14aの内部には、流路14gが設けられている。流路14gには、図示しないチラーユニットから配管70を介して冷媒が供給される。流路14gに供給された冷媒は、配管72を介してチラーユニットに戻される。チラーユニットによって温度が制御された冷媒が基台14aの流路14g内を循環することにより、基台14aの温度が制御される。基台14aの温度が制御されることにより、基台14a上の静電チャック14cを介して、静電チャック14c上の被処理体WPの温度が制御される。
【0025】
また、ステージ14には、Heガス等の伝熱ガスを、静電チャック14cの上面と被処理体WPの裏面との間に供給するための配管74が形成されている。
【0026】
RF(Radio Frequency)電源16は、アンテナ30に結合され、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~3000MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、RF電源16は、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のソースRF信号は、アンテナ30に供給される。なお、RF電源16は、上述のように電磁波発生器の一例であり、高周波電源の一例である。また、アンテナ30は、電磁波供給部の一例である。
【0027】
アンテナ30は、1または複数のコイルを含む。一実施形態において、アンテナ30は、同軸上に配置された外側コイルおよび内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電源16は、外側コイルおよび内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイルおよび内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、RF電源16内の同一のRF生成部が外側コイルおよび内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイルおよび内側コイルに別々に接続されてもよい。一実施形態において、アンテナ30は、平面コイルであり、略円形の渦巻き状(平面スパイラル状)に形成される。つまり、アンテナ30は、ループ状に巻かれている。なお、アンテナ30によって生成される磁界は、軸線Zの方向となる。また、アンテナ30の開口部は、円形、楕円形および多角形(方形、三角形等)等のうち、いずれの形状であっても構わない。
【0028】
また、アンテナ30が外側コイルおよび内側コイルを含む場合、外側コイルは、RF電源16が接続された一次コイルとして機能する。一実施形態において、外側コイルは、平面コイルであり、略円形の渦巻き状に形成される。内側コイルは、一次コイルと誘導結合する二次コイルとして機能する。すなわち、内側コイルは、RF電源16に接続されていない。一実施形態において、内側コイルは、平面コイルであり、略円形のリング状に形成される。一実施形態において、内側コイルは、可変コンデンサに接続され、可変コンデンサの容量を制御することによって、内側コイルに流れる電流の向きや大きさが制御される。外側コイルおよび内側コイルは、同じ高さに配置されてもよく、異なる高さに配置されてもよい。一実施形態において、内側コイルは、外側コイルより低い位置に配置される。
【0029】
ガス導入部は、ガス供給部38からの少なくとも1つの処理ガスを処理空間S内に導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部13は、ステージ14の上方に配置され、誘電体窓20に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス流路13b、および少なくとも1つのガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス流路13bを通過してガス導入口13cから処理空間S内に導入され、アンテナ30から誘電体窓20および共振器配列構造体100を介して処理空間Sに供給される電磁波によって励起される。これにより、処理空間S内で処理ガスがプラズマ化され、プラズマに含まれるイオンおよびラジカル等により、被処理体WPが処理される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部13に加えてまたはその代わりに、側壁12aに形成された1または複数の開口部に取り付けられる1または複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0030】
ガス供給部38は、少なくとも1つのガスソース38aおよび少なくとも1つの流量制御器38bを含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部38は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース38aからそれぞれに対応の流量制御器38bを介してガス導入部に供給するように構成される。各流量制御器38bは、例えばマスフローコントローラまたは圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部38は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調またはパルス化する1またはそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0031】
共振器配列構造体100は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、処理容器12内に位置する。
【0032】
共振器配列構造体100が処理容器12内に位置することにより、アンテナ30によって処理空間Sに供給される電磁波と共振器配列構造体100の複数の共振器とを共振させることができる。電磁波と複数の共振器との共振により、処理容器12の処理空間Sに電磁波を効率よく供給することができ且つ処理空間Sの透磁率を負にすることができる。処理空間Sの透磁率が負である場合、処理空間S内で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達し且つ処理空間Sの誘電率が負である場合であっても、上記の式(1)により屈折率が実数となるため、処理空間Sにおいて電磁波が伝搬することができる。これにより、処理空間S内で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、プラズマの表皮深さを超えて電磁波の伝搬が可能でありプラズマに電磁波の電力が効率よく吸収される。結果として、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置1によれば、共振器配列構造体100が処理容器12内に位置することにより、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができる。
【0033】
ここで、
図1および
図2を参照して、共振器配列構造体100の詳細な構成について説明する。
図2は、第1実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
図2には、誘電体窓20の下面20aが円盤状に示されている。
【0034】
図1および
図2に示すように、共振器配列構造体100は、誘電体窓20の下面20aに沿って配置される。
【0035】
共振器配列構造体100は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器101を格子状に配列して形成される。具体的には、
図2に示すように、複数の共振器101は、平板状の共振器配列構造体100において、誘電体窓20の下面20aに沿う方向(下面20aと平行な平面の方向)に配置される。つまり、下面20a側から見ると、透過して表すC字状のリング部材111が、C字が見えるように格子状に並ぶ配置となる。共振器配列構造体100には、例えば、8行8列の共振器101が配列される。このとき、複数の共振器101それぞれの境界は、境界105として表しているが、実際には、複数の共振器101が共振器配列構造体100として一体として形成されている。なお、複数の共振器101が別体として形成され、格子状の枠に嵌められたり、互いに接着されたりして共振器配列構造体100が構成されるようにしてもよい。複数の共振器101の各々は、コンデンサ等価素子およびコイル等価素子からなる直列共振回路を構成する。直列共振回路は、平面上に導体をパターニングすることで、実現される。なお、共振器配列構造体100の中心には、ガス導入口13cが位置する。また、アンテナ30で生成される磁界は、C字状のリング部材111を貫く方向となる。
【0036】
図3は、
図2のA-A断面の一例を示す断面図である。
図3に示すように、共振器配列構造体100のA-A断面では、複数の共振器101の断面が並んで現れることになる。また、
図2と同様に、複数の共振器101それぞれの境界は、境界105で表される。
【0037】
図4は、第1実施形態に係る共振器単体の平面およびB-B断面の一例を示す図である。
図4では、一体として形成された複数の共振器101のうち、ある共振器101を一例として、共振器101単体の平面
図150と、平面
図150のB-B断面の断面
図151とを表している。平面
図150および断面
図151に示すように、単体の共振器101は、境界105に囲まれた領域内にある。つまり、本実施形態では、共振器101は、2枚のC字状のリング部材111がそれぞれ誘電体112によって囲まれている状態である。
【0038】
図5は、
図4のC-C断面の一例を示す断面図である。
図6は、
図4のD-D断面の一例を示す断面図である。
図4の断面
図151、
図5および
図6に示すように、単体の共振器101は、導体からなる2枚のC字状のリング部材111であって、互いに逆向きに隣接して配置されるリング部材111の間に誘電体112が配置された構造を有する。すなわち、共振器101においては、互いに逆向きの2枚のC字状のリング部材111によって誘電体112が挟まれている状態である。2枚のC字状のリング部材111の対向面や、各リング部材111の両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、各リング部材111に沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、共振器101は、直列共振回路を構成することができる。なお、
図4から
図6に示す共振器101においては、C字状のリング部材111の配置数(以下、適宜「積層数」とも言う。)が2であるが、C字状のリング部材111の積層数が2より大きくてもよい。この場合、共振器101は、C字状のリング部材111は、互いに逆向きに隣接して配置され、C字状のリング部材111の間に誘電体112が配置された構造を有する。
【0039】
ここで、
図7を用いて共振器101の共振周波数について説明する。
図7は、第1実施形態に係る共振器の共振周波数の一例を示す説明図である。
図7の断面
図152に示すように、共振器101は、2枚のC字状のリング部材111で誘電体112を挟んだ構造と捉えることができる。このとき、共振器101のC字状のリング部材111を貫く磁界Hpが生じると、C字状のリング部材111に誘導電流Ieが発生する。なお、
図7では、C字状のリング部材111の外側を囲む誘電体112は省略している。
【0040】
一方、共振器101の共振周波数は、
図7の断面
図152および平面
図153における各寸法から求められる。つまり、共振器101の共振周波数は、C字状のリング部材111の寸法と、2枚のC字状のリング部材111に挟まれる誘電体112の厚さとから、下記の式(2)~(5)に示すように、求めることができる。式(2)は、共振器101のインダクタンスL
MAを求める式である。式(3)は、共振器101のキャパシタンスC
MAのうち、平面
図153の上半分または下半分に相当するキャパシタンスC
halfを求める式である。式(4)は、共振器101としてのキャパシタンスC
MAを求める式である。式(5)は、共振器101の共振周波数Frを求める式である。
【0041】
【0042】
式(2)において、rはC字状のリング部材111の中心からC字の幅の中心までの半径を表し、μ
0は真空の透磁率を表す。式(3)において、C
halfは、共振器101のキャパシタンスのうち、平面
図153の上半分または下半分に相当するキャパシタンスを表す。また、式(3)において、εは誘電率、ε
0は真空の誘電率(電気定数)、SはC字状のリング部材111の上半分または下半分の面積、dは2枚のC字状のリング部材111の間隔を表す。また、式(3)において、r
outはC字状のリング部材111の外側の半径を表し、r
inはC字状のリング部材111の内側の半径を表し、S
splitはC字状のリング部材111のC字の間隙の面積を表す。なお、S
splitは、平面
図153に示すC字状のリング部材111の幅Wと、C字の間隙gとから、長方形の面積として近似的に求められる。また、式(3)において、d
PTFEは誘電体112としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた場合の2枚のC字状のリング部材111の間隔を表す。なお、断面
図152に示すように、2枚のC字状のリング部材111の厚さd1は、同じ厚さであるのが好ましい。
【0043】
式(5)では、式(2)および式(4)で求めたインダクタンスLMAおよびキャパシタンスCMAに基づいて、共振器101の共振周波数Frを求めている。なお、共振周波数Frは、C字状のリング部材111の外側の半径routおよび内側の半径rinが大きいほど低くなるとともに、2枚のC字状のリング部材111に挟まれる誘電体112の厚さdが薄いほど低くなる。また、共振周波数Frは、C字状のリング部材111を積層する枚数が増加するほど低くなる。なお、後述するように、リング部材111の外側の半径routおよび内側の半径rinや誘電体112の厚さdを調整することで、異なる共振周波数を有する共振器101,102を用いてもよい。また、本実施形態では、C字状のリング部材111として、円リングの一部に切り欠きがある形状で説明しているが、これに限定されない。リング部材の形状は、円リングに限られず、例えば、楕円リング、三角形リング、方形リング、および、多角形リング等のいずれかのリングに切り欠き(間隙gに相当)がある形状であってもよい。
【0044】
このように、本実施形態の共振器配列構造体100は、複数の共振器101が誘電体窓20の下面20aに沿う方向に配置されるので、磁界Hpが共振器101のC字状のリング部材111を貫いて磁界共鳴が可能となる。従って、共振器配列構造体100の各共振器101は、共振周波数Frで共振することができる。
【0045】
図1を再び参照する。制御装置11は、プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プログラムおよびプロセスレシピ等が記憶されている。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出して実行することにより、メモリ内に記憶されたプロセスレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、装置本体10の各部を統括制御する。
【0046】
制御装置11は、例えば、処理空間Sにプラズマが生成される際、複数の共振器101の共振周波数よりも高い目標周波数帯において、アンテナ30によって処理空間Sに供給される電磁波と複数の共振器101とが共振するように制御する。ここで、共振周波数とは、例えば、複数の共振器101の透過特性値(例えば、S21値)が極小値となる周波数である。
【0047】
アンテナ30によって処理空間Sに供給される電磁波の周波数が複数の共振器101の共振周波数Fr(=約60MHz)と一致する場合に、複数の共振器101のS21値が極小値となり、電磁波と複数の共振器101との共振が発生する。電磁波と複数の共振器101との共振は、複数の共振器101の共振周波数Frよりも高い所定の周波数帯(例えば、約2.4MHz)においても、維持される。複数の共振器101の共振周波数Frよりも高い所定の周波数帯においては、電磁波と複数の共振器101との共振により処理空間Sの誘電率と透磁率をともに負にすることができ、上記の式(1)から分かる通り、処理空間Sでの電磁波の伝搬が可能となる。本実施形態の目標周波数帯は、複数の共振器101の共振周波数Frよりも高い所定の周波数帯(例えば、約2.4MHz)に設定される。目標周波数帯は、例えば、複数の共振器101の共振周波数Frの0.05倍以内であることが好ましい。
【0048】
なお、複数の共振器に対する電磁波の伝搬については共振周波数と屈折率、誘電率および透磁率との関係は、たとえば、「PHYSICAL REVIEW E 71,036617(2005)」の「Electromagnetic parameter retrieval from inhomogeneous metamaterials」により、D.R.Smith,D.C.Vier,Th.Koschny and C.M.Soukoulisらにより報告されている。
【0049】
このように、複数の共振器101の共振周波数Frよりも高い目標周波数帯において電磁波と複数の共振器101とを共振させることにより、プラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、電磁波の伝搬がプラズマの表皮深さを越えて可能となる。このため、プラズマに電磁波の電力を効率よく吸収できる。結果として、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置1によれば、複数の共振器101の共振周波数Frよりも高い目標周波数帯において、電磁波と複数の共振器101とを共振させることにより、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができる。また、本実施形態の共振器配列構造体100は、複数の共振器101が誘電体窓20の下面20aに沿う方向に配置されるので、共振器配列構造体100の構造を簡略化できる。また、共振器配列構造体100が誘電体窓20の下面20aと接してるため放熱しやすく、共振器配列構造体100の割れ等の変形を抑制することができる。また、共振器配列構造体100の複数の共振器101が一体化しているので、共振器配列構造体100へのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0050】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、アンテナ30として、平面スパイラル状に形成されたコイルを用いるとともに、共振器配列構造体100が誘電体窓20の下面20aに沿って配置されたが、それぞれ変更してもよい。例えば、アンテナとしてソレノイド状のコイルを用いるとともに、共振器配列構造体100を処理空間Sにおいて、誘電体窓20の下面20aと離れるように配置されてもよく、この場合の実施の形態につき、第2実施形態として説明する。なお、第2実施形態におけるプラズマ処理装置は、アンテナの形状および共振器配列構造体100の配置を除いて上述の第1実施形態と同様であるので、その重複する構成および動作の説明については省略する。また、第2実施形態では、誘電体窓20、アンテナ、共振器配列構造体100、および、被処理体WPが載置されたステージ14の位置関係の説明を主とするので、
図1よりも簡略化した図を用いて説明する。
【0051】
図8は、第2実施形態に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
図8に示すように、第2実施形態の装置本体10aは、第1実施形態のアンテナ30に代えて、アンテナ31を有する。また、共振器配列構造体100は、支持部材19を介して処理容器12の側壁12aに固定され、誘電体窓20の下面20aと離れるように配置されている。
【0052】
アンテナ31は、ソレノイド状のコイルを含む。つまり、アンテナ31は、ループ状に巻かれている。なお、アンテナ31の開口部は、円形、楕円形および多角形(方形、三角形等)等のうち、いずれの形状であっても構わない。アンテナ31には、RF電源16が接続され、ソースRF信号が供給される。アンテナ31によって生成される磁界は、第1実施形態のアンテナ30と同様に軸線Zの方向である。
【0053】
支持部材19は、非磁性体で形成された部材であり、共振器配列構造体100を支持する。支持部材19は、非磁性体として、例えばアルミニウムまたは絶縁体で形成される。また、支持部材19は、処理空間Sにおいて、共振器配列構造体100の上側と下側とで処理ガスが自在に通過可能な開口を有する。例えば、支持部材19は、側壁12aと共振器配列構造体100の側面との間で、2箇所以上を支持する棒状の部材であってもよい。
【0054】
第2実施形態では、アンテナ31にソースRF信号が供給されると、磁界が誘電体窓20を通過して共振器配列構造体100に到達する。共振器配列構造体100では、到達した磁界により各共振器101が共振し、
図8に示すように、共振器配列構造体100の下部にプラズマPが発生する。すなわち、第2実施形態では、共振器配列構造体100の配置を変更することで、より被処理体WPに近い位置にプラズマPを発生させることができる。また、第2実施形態では、支持部材19の側壁12aへの取り付け位置を調整可能とすることで、共振器配列構造体100と被処理体WPとのギャップ制御が可能である。
【0055】
さらに、共振器配列構造体100の下部にプラズマPを発生させるにあたり、C字状のリング部材111の外側を囲む誘電体112の寸法によって、プラズマPの発生位置を制御することができる。例えば、C字状のリング部材111から上側(誘電体窓20側)の誘電体112の厚みと、下側(ステージ14側)の誘電体112の厚みとについて、上側の誘電体112の厚み>下側の誘電体112の厚みとする。ここで、処理空間SにてプラズマPが発生する際に、C字状のリング部材111は電極となり、C字状のリング部材111および誘電体112は、コンデンサとみなすことができる。このとき、上側のC字状のリング部材111を含むコンデンサに対して、下側のC字状のリング部材111を含むコンデンサは、誘電体112の厚みが薄いため静電容量が大きくなり、静電エネルギーが大きくなる。従って、共振器配列構造体100の下側(ステージ14側)にプラズマPが発生しやすくなる。すなわち、C字状のリング部材111の外側を囲む誘電体112の寸法を変更することで、プラズマPの発生位置を制御することができる。
【0056】
(変形例1~4)
次に、
図9から
図12を用いて、第2実施形態の変形例1~4について説明する。
図9は、変形例1に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
図9に示す装置本体10bは、第2実施形態において共振器配列構造体100が誘電体窓20の下面20aに沿って配置された場合の一例である。つまり、装置本体10bは、第1実施形態において、アンテナ30に代えて、第2実施形態のアンテナ31を用いた場合に対応する。変形例1では、アンテナ31と共振器配列構造体100との距離が第2実施形態の装置本体10aよりも近いため、効率よく共振器配列構造体100の下部にプラズマPを発生させることができる。
【0057】
図10は、変形例2に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
図10に示す装置本体10cは、第2実施形態における共振器配列構造体100が、共振器配列構造体100aとして誘電体窓20bに埋め込まれた場合の一例である。変形例2では、アンテナ31と共振器配列構造体100aとの距離を変形例1よりも近づけることができるため、より効率よく共振器配列構造体100aの下部にプラズマPを発生させることができる。また、変形例2では、誘電体窓20bと共振器配列構造体100aが一体化されるため、共振器配列構造体100aの構造をより簡略化できる。なお、共振器配列構造体100aは、誘電体窓20bの内部や外部(大気側)に冷媒流路等を設けて冷却してもよい。
【0058】
図11は、変形例3に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
図11に示す装置本体10dは、変形例1のアンテナ31に代えてコア入りのコイルであるアンテナ32を有する。アンテナ32は、ソレノイド状のコイルであり、その中央部分にコア32aが挿入されている。コア32aは、例えば鉄心であるが、高透磁率材料のコアであれば、フェライト等の他の材料であってもよい。なお、アンテナ32の開口部は、円形、楕円形および多角形(方形、三角形等)等のうち、いずれの形状であっても構わない。アンテナ32は、アンテナ31よりも、より強い磁界を発生させることができる。つまり、変形例3では、プラズマPの密度を向上させることができる。また、変形例3では、変形例1と同じ磁界を発生させる場合では、アンテナ32を小型化することができる。
【0059】
図12は、変形例4に係る装置本体の構成の一例を示す概略断面図である。
図12に示す装置本体10eは、変形例3のアンテナ32に代えて複数のコア入りのコイルであるアンテナ33を有する。各アンテナ33は、ソレノイド状のコイルであり、その中央部分にそれぞれコア33aが挿入されている。コア33aは、例えば鉄心であるが、高透磁率材料のコアであれば、フェライト等の他の材料であってもよい。なお、アンテナ33の開口部は、円形、楕円形および多角形(方形、三角形等)等のうち、いずれの形状であっても構わない。各アンテナ33は、共振器配列構造体100の共振器101ごとに対応するように設けられている。つまり、変形例4では、各アンテナ33により対応する各共振器101の直下に発生するプラズマPのプラズマ密度を制御することができる。すなわち、変形例4では、プラズマPのより緻密な制御を行うことができる。なお、アンテナ33は、コア33aを設けない空芯コイルとしてもよい。さらに、アンテナ33は、1つのアンテナ33に対して複数個の共振器101を対応付けるようにしてもよい。
【0060】
(第3実施形態)
上記の各実施形態では、共振器101の共振周波数が1種類である共振器配列構造体100を用いて説明したが、共振周波数が異なる共振器を含む共振器配列構造体を用いてもよく、この場合の実施の形態につき、第3実施形態として説明する。なお、第3実施形態におけるプラズマ処理装置は、共振器配列構造体100の構造を除いて上述の第1実施形態と同様であるので、その重複する構成および動作の説明については省略する。
【0061】
図13は、第3実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
図13に示すように、第3実施形態では、第1実施形態の共振器配列構造体100に代えて、共振器配列構造体100bを有する。
図13に示すように、共振器配列構造体100bは、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器101,102を格子状に配列して形成される。共振器101と共振器102とは、共振周波数が異なる共振器である。例えば、共振器101の共振周波数が60MHzであった場合、共振器102の共振周波数は、4%以上離れた周波数、例えば62.4MHzとすることができる。なお、第3実施形態では、リング部材111について、共振器101と共振器102とで区別する場合、共振器101のものをリング部材111a、共振器102のものをリング部材111bとする。
【0062】
共振器配列構造体100bは、例えば、
図13に示すように、8行8列の共振器101,102が配列される。このとき、内側の領域102a(中心の4行4列分)には、共振器102が配置される。一方、領域102aの外側には、共振器101が配置される。すなわち、共振器配列構造体100bは、中心部と外周部とで共振周波数が異なる複数の共振器101,102が配置される。例えば、A’-A’断面においては、中心部には共振器102の断面が現れ、外周部には共振器101の断面が現れる。
【0063】
複数の共振器101,102は、第1実施形態と同様に、平板状の共振器配列構造体100bにおいて、誘電体窓20の下面20aに沿う方向(下面20aと平行な平面の方向)に配置される。つまり、下面20a側から見ると、透過して表すリング部材111a,111bが、C字が見えるように格子状に並ぶ配置となる。このとき、複数の共振器101,102それぞれの境界は、境界105として表しているが、実際には、複数の共振器101,102が共振器配列構造体100bとして一体として形成されている。なお、共振器配列構造体100bの中心には、第1実施形態と同様に、ガス導入口13cが位置する。また、アンテナ30で生成される磁界は、リング部材111a,111bを貫く方向となる。このように、共振器配列構造体100bの外側と内側(格子状に配列された共振器101,102の外周部と中心部)とで共振器101,102の共振周波数が異なるので、処理空間Sにおけるプラズマの分布を外側と内側とで変更することができる。
【0064】
(変形例5~7)
次に、
図14から
図21を用いて、第3実施形態の変形例5~7について説明する。第3実施形態では、共振器配列構造体100bの1つの層内において、共振周波数が異なる共振器101,102を配置したが、共振器配列構造体を複数の層を有する構造としてもよい。
図14から
図16は、変形例5に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
図14に示す共振器配列構造体100cは、第1層100c1と、第2層100c2とを有する。例えば、
図13の共振器配列構造体100bにおけるA’-A’断面に相当する位置における共振器配列構造体100cの断面を
図14中、共振器配列構造体100cとして示す。共振器配列構造体100cの断面には、第1層100c1且つ外周部に共振器101の断面が現れ、第2層100c2且つ中心部に共振器102の断面が現れる。また、
図15および
図16には、それぞれ共振器配列構造体100cの断面におけるE-E断面およびF-F断面を示す。E-E断面には、第1層100c1に配置された共振器101が現れ、F-F断面には、第2層100c2に配置された共振器102が現れる。
【0065】
第1層100c1には、例えば、8行8列の共振器のうち、外周部の2行2列分(後述する第2層100c2の4行4列を囲む部分)の共振器101が配置される。共振器101には、リング部材111aが含まれる。第1層100c1に配置される共振器101は、第3実施形態の共振器配列構造体100bにおける領域102aの外側に配置される共振器101に対応する。
【0066】
第2層100c2には、例えば、8行8列の共振器のうち、中心部の4行4列分の共振器102が配置される。共振器102には、リング部材111bが含まれる。第2層100c2に配置される共振器102は、第3実施形態の共振器配列構造体100bにおける領域102aの内側に配置される共振器102に対応する。つまり、共振器配列構造体100cは、第3実施形態の共振器配列構造体100bについて、共振器101,102ごとに層を分けた構造である。なお、第1層100c1および第2層100c2に配置される複数の共振器101,102は、誘電体窓20の下面20a(下面20aと平行な平面の方向)に沿う方向に配置される。また、共振器配列構造体100cは、第1層100c1と第2層100c2とを一体として成形してもよいし、別々に成形後に接着して一体化するようにしてもよい。このように、共振器配列構造体100cにおいても、外側と内側とで共振器101,102の共振周波数が異なるので、処理空間Sにおけるプラズマの分布を外側と内側とで変更することができる。
【0067】
図17から
図19は、変形例6に係る共振器配列構造体の一例を示す断面図である。
図17に示す共振器配列構造体100dは、第1層100d1と、第2層100d2とを有する。例えば、
図13の共振器配列構造体100bにおけるA’-A’断面に相当する位置における共振器配列構造体100dの断面を
図17中、共振器配列構造体100dとして示す。共振器配列構造体100dの断面には、第1層100d1に共振器101の断面が現れ、第2層100d2に共振器102の断面が現れる。また、
図18および
図19には、それぞれ共振器配列構造体100dの断面におけるG-G断面およびH-H断面を示す。G-G断面には、第1層100d1に配置された共振器101が現れ、H-H断面には、第2層100d2に配置された共振器102が現れる。
【0068】
第1層100d1には、例えば、8行8列の共振器101が配置される。共振器101には、リング部材111aが含まれる。第1層100d1に配置される共振器101は、第1実施形態の共振器配列構造体100における共振器101に対応する。
【0069】
第2層100d2には、例えば、7行7列の共振器102が配置される。共振器102には、リング部材111bが含まれる。第2層100d2に配置される共振器102は、第1層100d1の境界105の交点にリング部材111bの中心が位置するように、第1層100d1の共振器101と千鳥配置となっている。なお、
図19では、煩雑となるために、共振器102の境界は図示していない。また、第1層100d1および第2層100d2に配置される複数の共振器101,102は、誘電体窓20の下面20aに沿う方向(下面20aと平行な平面の方向)に配置される。さらに、共振器配列構造体100dは、第1層100d1と第2層100d2とを一体として成形してもよいし、別々に成形後に接着して一体化するようにしてもよい。このように、共振器配列構造体100dでは、共振周波数が異なる共振器101,102を千鳥配置するので、磁界が貫く共振器101,102の数を増やすことができるとともに、プラズマの分布の制御性やプラズマの密度を向上させることができる。
【0070】
図20および
図21は、変形例7に係る共振器配列構造体の層構造の一例を示す図である。
図20および
図21に示す変形例7では、共振器配列構造体の層構造を3層以上とした場合の共振器の配置例として、共振器配列構造体100eと、共振器配列構造体100fとを例示している。なお、
図20および
図21では、共振器配列構造体の共振器が配置される部分の一部を抜き出している。
【0071】
共振器配列構造体100eは、第1層100e1と、第2層100e2と、第3層100e3とを有する。第1層100e1は、変形例6の第1層100d1と同様の配置であり、リング部材111が境界105で区切られた領域内(つまり、共振器101)に配置される。第2層100e2は、変形例6の第2層100d2と同様の配置であり、リング部材111の中心が境界105の交点に位置するように配置される。なお、図示はしないが、第2層100e2においても、各リング部材111を含む領域が共振器101を形成している。第3層100e3は、第1層100e1と同様の配置であり、リング部材111が境界105で区切られた領域内(つまり、共振器101)に配置される。なお、
図20では、煩雑となるために、第2層100e2の共振器101の境界は図示していない。
【0072】
共振器配列構造体100fは、第1層100f1と、第2層100f2と、第3層100f3とを有する。第1層100f1は、共振器配列構造体100eの第1層100e1と同様の配置であり、リング部材111が境界105で区切られた領域内(つまり、共振器101)に配置される。第2層100f2は、第1層100f1の配置から半行ずらした配置、つまり、
図21中、横方向の境界105上にリング部材111の中心が位置するように配置される。第3層100f3は、第1層100f1の配置から半列ずらした配置、つまり、
図21中、縦方向の境界105上にリング部材111の中心が位置するように配置される。なお、図示はしないが、第2層100f2および第3層100f3においても、各リング部材111を含む領域が共振器101を形成している。
【0073】
また、第3実施形態および変形例5~7の共振器配列構造体100c~100fに示すように、複数の層構造を有する場合、各共振器101,102は、層ごとに異なる配置であってもよいし、同じ配置であってもよい。さらに、各共振器101,102は、層ごとの共振周波数が同じ周波数であってもよいし、異なる周波数であってもよい。また、各共振器101,102は、各層内で共振周波数が同じ周波数であってもよいし、異なる周波数であってもよい。すなわち、各層の共振器101,102の共振周波数と、各層の共振器の配置とは、自由に組み合わせてよい。
【0074】
(第4実施形態)
上記の第1実施形態では、共振器配列構造体100の上下方向に貫通孔を設けていないが、共振器配列構造体に貫通孔を設けてもよく、この場合の実施の形態につき、第4実施形態として説明する。なお、第4実施形態におけるプラズマ処理装置は、共振器配列構造体100の構造を除いて上述の第1実施形態と同様であるので、その重複する構成および動作の説明については省略する。
【0075】
図22は、第4実施形態に係る誘電体窓および共振器配列構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
図22に示すように、第4実施形態では、第1実施形態の共振器配列構造体100に代えて、共振器配列構造体100gを有する。
図22に示すように、共振器配列構造体100gは、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器103を格子状に配列して形成される。共振器配列構造体100gは、例えば、
図22に示すように、8行8列の共振器103が配列される。
【0076】
複数の共振器103は、第1実施形態と同様に、平板状の共振器配列構造体100gにおいて、誘電体窓20の下面20aに沿う方向(下面20aと平行な平面の方向)に配置される。つまり、下面20a側から見ると、透過して表すC字状のリング部材111が、C字が見えるように格子状に並ぶ配置となる。このとき、複数の共振器103それぞれの境界は、境界105として表しているが、実際には、複数の共振器103が共振器配列構造体100gとして一体として形成されている。なお、共振器配列構造体100gの中心には、第1実施形態と同様に、ガス導入口13cが位置する。
【0077】
図23は、
図22のI-I断面の一例を示す断面図である。
図23に示すように、共振器配列構造体100gのI-I断面では、複数の共振器103の断面が並んで現れることになる。また、各共振器103は、中央にそれぞれ貫通孔106を有する。なお、
図22と同様に、複数の共振器103それぞれの境界は、境界105で表される。
【0078】
図24は、第4実施形態に係る共振器単体の平面およびJ-J断面の一例を示す図である。
図24では、一体として形成された複数の共振器103のうち、ある共振器103を一例として、共振器103単体の平面
図154と、平面
図154のJ-J断面の断面
図155とを表している。平面
図154および断面
図155に示すように、単体の共振器103は、境界105に囲まれた領域内にある。つまり、本実施形態では、共振器103は、2枚のC字状のリング部材111がそれぞれ誘電体112によって囲まれている状態である。また、2枚のC字状のリング部材111の中央には、誘電体112を貫通する貫通孔106が形成されている。つまり、貫通孔106は、共振器配列構造体100gの上面と下面とを貫通している。
【0079】
図25は、
図24のK-K断面の一例を示す断面図である。
図26は、
図24のL-L断面の一例を示す断面図である。
図24の断面
図155、
図25および
図26に示すように、単体の共振器103は、導体からなる2枚のC字状のリング部材111であって、互いに逆向きに隣接して配置されるリング部材111の間に誘電体112が配置された構造を有する。すなわち、共振器103においては、互いに逆向きの2枚のC字状のリング部材111によって誘電体112が挟まれている状態である。このとき、貫通孔106は、2枚のC字状のリング部材111との間に誘電体112が存在するような直径としている。つまり、2枚のC字状のリング部材111は、いずれも貫通孔106に露出していない。共振器103は、第1実施形態の共振器101と同様に、2枚のC字状のリング部材111の対向面や、各リング部材111の両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、各リング部材111に沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、共振器103は、直列共振回路を構成することができる。なお、共振器103におけるC字状のリング部材111の積層数は、第1実施形態の共振器101と同様に、2より大きくてもよい。また、共振器配列構造体100gは、第2実施形態の装置本体10aと同様に、支持部材19を介して処理容器12の側壁12aに固定され、誘電体窓20の下面20aと離れるように配置されてもよい。この場合、処理空間Sにおいて、共振器配列構造体100gの上側と下側とで処理ガスがより自在に通過可能となる。なお、貫通孔106の位置は、リング部材111と重ならない位置であれば、リング部材111の中央でなくても構わない。
【0080】
なお、上記の各実施形態では、処理容器12内の処理空間Sに供給される電磁波の周波数として、VHF帯の電磁波を一例として説明したが、より低い周波数であってもよい。電磁波の周波数をより低くし(例えば、13MHz)、波としての伝搬がほとんど観測されない領域の電磁波を処理容器12内の処理空間Sに供給するようにしてもよい。この場合、アンテナ30等から放射される電磁界としては、波動特性をほとんど示さないものの、その磁界成分は、共振器101等のコイル成分を通じて共振を起こすことができる。このような振る舞いは、高周波回路または分布定数回路と呼ばれる範疇で議論されるものである。つまり、換算波長が装置寸法(処理容器12のサイズ)より1桁以上長くなり、波としての特性が現れない波長の電磁波においても、共振器101等を共振させることができる。すなわち、処理容器12内の処理空間Sに供給される電磁波の波長は、処理容器12のサイズより1桁以上長く、分布定数回路として扱われる範囲の高周波とみなせる波長である場合であっても、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができる。
【0081】
以上、各実施形態によれば、プラズマ処理装置1は、処理空間Sを提供する処理容器12と、処理空間Sに供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器(RF電源16)と、第1面を処理空間に対向させて設けられた誘電体(誘電体窓20)と、誘電体を介して電磁波を処理空間Sに供給するように構成される電磁波供給部(アンテナ30~33)と、処理容器12内において誘電体の第1面に沿って位置する共振器配列構造体(共振器配列構造体100,100a~100g)と、を備える。共振器配列構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さく、誘電体の第1面に沿う方向に配置される複数の共振器(共振器101~103)を含み、電磁波供給部は、複数の共振器が配置される平面に垂直な磁界成分を供給する。その結果、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができるとともに、共振器配列構造体の構造を簡略化できる。
【0082】
また、各実施形態によれば、共振器配列構造体は、誘電体の第1面と平行になるように位置し、複数の共振器は、誘電体の第1面と平行な平面の方向に配置される。その結果、水平方向に配置された共振器を共振させることができる。
【0083】
また、各実施形態によれば、電磁波供給部は、処理容器12の外部に設けられたコイルである。その結果、水平方向に配置された共振器を共振させることができる。
【0084】
また、各実施形態によれば、コイルは、該コイルの開口部が共振器配列構造体と平行になるように配置される。その結果、水平方向に配置された共振器を共振させることができる。
【0085】
また、各実施形態によれば、コイルは、ループ状に巻かれている。その結果、水平方向に配置された共振器に磁界を供給することができる。
【0086】
また、第2実施形態によれば、コイルは、ソレノイド状に巻かれている。その結果、より強い磁界を供給することができる。
【0087】
また、変形例3,4によれば、コイルは、高透磁率材料のコア(コア32a,33a)を有する。その結果、より強い磁界を供給することができる。
【0088】
また、第1実施形態によれば、コイルは、平面スパイラル状に巻かれている。その結果、水平方向に配置された共振器に磁界を供給することができる。
【0089】
また、変形例4によれば、コイルは、複数設けられる。その結果、より強い磁界を供給することができる。
【0090】
また、第1,第3,第4実施形態、変形例1~4によれば、共振器配列構造体は、誘電体の第1面と接するように設けられる。その結果、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができるとともに、共振器配列構造体の構造を簡略化できる。
【0091】
また、第2実施形態によれば、共振器配列構造体100は、処理空間Sにおいて、誘電体の第1面と離れるように設けられる。その結果、より被処理体に近い位置にプラズマを発生させることができる。
【0092】
また、変形例2によれば、共振器配列構造体100aは、誘電体と一体化されるように設けられる。その結果、共振器配列構造体の構造をより簡略化できる。
【0093】
また、第3実施形態によれば、複数の共振器は、共振周波数が異なる2種類以上の共振器を含む。その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を変更することができる。
【0094】
また、第3実施形態によれば、複数の共振器は、格子状に配列され、該格子状の配列の中心部と外周部とで共振周波数が異なる。その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を外側と内側とで変更することができる。
【0095】
また、変形例5によれば、共振器配列構造体100cは、複数の層を有する構造であり、複数の共振器は、中心部と外周部とで異なる層に配置される。その結果、その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を外側と内側とで変更することができる。
【0096】
また、変形例5~7によれば、共振器配列構造体は、複数の層を有する構造であり、複数の共振器は、層ごとに配置される。その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を変更することができる。
【0097】
また、変形例5~7によれば、複数の共振器は、層ごとに異なる配置である。その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を変更することができる。
【0098】
また、変形例7によれば、複数の共振器は、層ごとの共振周波数が同じ周波数である。その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を変更することができる。
【0099】
また、変形例7によれば、複数の共振器は、層ごとの共振周波数が異なる周波数である。その結果、処理空間Sにおけるプラズマの分布を変更することができる。
【0100】
また、第4実施形態によれば、共振器配列構造体100gは、上面と下面とを貫通する貫通孔106を有する。その結果、処理空間Sにおいて、共振器配列構造体100gの上側と下側とで処理ガスがより自在に通過可能となる。
【0101】
また、各実施形態によれば、電磁波の波長は、処理容器12のサイズより1桁以上長く、分布定数回路として扱われる範囲の高周波とみなせる波長である。その結果、波としての特性が現れない波長の電磁波においても、共振器を共振させることができる。
【0102】
今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の各実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0103】
上記各実施形態では、共振器配列構造体100,100a~100gは、誘電体窓20の下面20aに沿って配置される、誘電体窓20bに埋め込まれる、または、誘電体窓20の下面20aから離隔して配置される場合を例に説明した。これに限らず、共振器配列構造体100,100a~100gは、上面を処理空間Sに対向させて設けられた静電チャック14cの上面に沿って配置されてもよく、または、静電チャック14cの上面から離隔して配置されてもよい。また、共振器配列構造体100,100a~100gは、処理容器12の側壁12aの内壁面に沿って配置されてもよく、または、処理容器12の側壁12aの内壁面から離隔して配置されてもよい。要するに、共振器配列構造体100,100a~100gは、一面(第1面)を処理空間Sに対向させて設けられた部材の第1面に沿って配置されてもよく、または、当該部材の第1面から離隔して配置されてもよい。
【0104】
また、上記各実施形態において、RF電源16の出力部を高周波電極である基台14aに接続してもよい。この場合、基台14aは、RF電源16から出力される電磁波を静電チャック14cを介して処理空間Sに供給する。また、かかる構成においては、共振器配列構造体100,100a~100gは、静電チャック14cに埋め込まれてもよい。
【0105】
また、上記各実施形態において、共振器配列構造体100,100a~100gは、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器101~103を誘電体の第1面に沿う方向に格子状に配列して形成される場合を例に説明した。これに限らず、複数の共振器101~103の配列は、誘電体の第1面に沿う方向の任意の配列であってもよい。例えば、複数の共振器101~103は、一つの方向に沿って所定間隔で配列されてもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、電磁波を投入するアンテナとして誘導結合型コイルを用いたが、共振器配列構造体100,100a~100gの複数の共振器101~103のリング部材111を貫く方向に磁界を発生させることができれば、これに限定されない。この様な電磁波を投入するアンテナとしては、誘導結合型コイルに限られず、例えば、スロットアンテナ、モノポールアンテナ、容量結合型電極、マグネトロン等、任意の電磁波を投入するアンテナや機構を用いることができる。
【0107】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給されるプラズマ励起用の電磁波を発生させるように構成される電磁波発生器と、
第1面を前記処理空間に対向させて設けられた誘電体と、
前記誘電体を介して前記電磁波を前記処理空間に供給するように構成される電磁波供給部と、
前記処理容器内において前記誘電体の前記第1面に沿って位置する共振器配列構造体と、
を備え、
前記共振器配列構造体は、前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さく、前記誘電体の前記第1面に沿う方向に配置される複数の共振器を含み、
前記電磁波供給部は、前記複数の共振器が配置される平面に垂直な磁界成分を供給する、
プラズマ処理装置。
(2)
前記共振器配列構造体は、前記誘電体の前記第1面と平行になるように位置し、
前記複数の共振器は、前記誘電体の前記第1面と平行な平面の方向に配置される、
前記(1)に記載のプラズマ処理装置。
(3)
前記電磁波供給部は、前記処理容器の外部に設けられたコイルである、
前記(1)または(2)に記載のプラズマ処理装置。
(4)
前記コイルは、前記コイルの開口部が前記共振器配列構造体と平行になるように配置される、
前記(3)に記載のプラズマ処理装置。
(5)
前記コイルは、ループ状に巻かれている、
前記(3)または(4)に記載のプラズマ処理装置。
(6)
前記コイルは、ソレノイド状に巻かれている、
前記(5)に記載のプラズマ処理装置。
(7)
前記コイルは、高透磁率材料のコアを有する、
前記(6)に記載のプラズマ処理装置。
(8)
前記コイルは、平面スパイラル状に巻かれている、
前記(5)に記載のプラズマ処理装置。
(9)
前記コイルは、複数設けられる、
前記(3)~(8)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(10)
前記共振器配列構造体は、前記誘電体の前記第1面と接するように設けられる、
前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(11)
前記共振器配列構造体は、前記処理空間において、前記誘電体の前記第1面と離れるように設けられる、
前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(12)
前記共振器配列構造体は、前記誘電体と一体化されるように設けられる、
前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(13)
前記複数の共振器は、共振周波数が異なる2種類以上の共振器を含む、
前記(1)~(12)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(14)
前記複数の共振器は、格子状に配列され、該格子状の配列の中心部と外周部とで前記共振周波数が異なる、
前記(13)に記載のプラズマ処理装置。
(15)
前記共振器配列構造体は、複数の層を有する構造であり、
前記複数の共振器は、前記中心部と前記外周部とで異なる前記層に配置される、
前記(14)に記載のプラズマ処理装置。
(16)
前記共振器配列構造体は、複数の層を有する構造であり、
前記複数の共振器は、前記層ごとに配置される、
前記(1)~(14)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
(17)
前記複数の共振器は、前記層ごとに異なる配置である、
前記(16)に記載のプラズマ処理装置。
(18)
前記複数の共振器は、前記層ごとの共振周波数が同じ周波数である、
前記(16)または(17)に記載のプラズマ処理装置。
(19)
前記複数の共振器は、前記層ごとの共振周波数が異なる周波数である、
前記(16)または(17)に記載のプラズマ処理装置。
(20)
前記共振器配列構造体は、上面と下面とを貫通する貫通孔を有する、
前記(10)または(11)に記載のプラズマ処理装置。
(21)
前記電磁波の波長は、前記処理容器のサイズより1桁以上長く、分布定数回路として扱われる範囲の高周波とみなせる波長である、
前記(1)~(20)のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【符号の説明】
【0108】
1 プラズマ処理装置
10,10a~10e 装置本体
11 制御装置
12 処理容器
12a 側壁
14 ステージ
16 RF電源
19 支持部材
20,20b 誘電体窓
20a 下面
30~33 アンテナ
32a,33a コア
38 ガス供給部
100,100a~100g 共振器配列構造体
100c1,100d1,100e1,100f1 第1層
100c2,100d2,100e2,100f2 第2層
100e3,100f3 第3層
101~103 共振器
106 貫通孔
111,111a,111b リング部材
112 誘電体
S 処理空間
WP 被処理体