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特開2024-147881感光性樹脂組成物、硬化物、及び半導体素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147881
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20241009BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241009BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241009BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G03F7/038
G03F7/004 501
C08G73/10
C08L79/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060587
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】河内 史彦
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ギジェルモ
(72)【発明者】
【氏名】牧野 竜也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
2H225AC01
2H225AC23
2H225AC38
2H225AD06
2H225AD26
2H225AE04P
2H225AM39P
2H225AN10P
2H225AN82P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225CA11
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
2H225CD05
4J002CM041
4J002EE027
4J002EK018
4J002EK038
4J002EK048
4J002EK058
4J002EK068
4J002EK078
4J002EK088
4J002EU106
4J002EU196
4J002FD146
4J002FD207
4J002FD208
4J043PB03
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA43
4J043SA44
4J043SA45
4J043SA46
4J043TA68
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA041
4J043UA042
4J043UA051
4J043UA081
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA142
4J043UA151
4J043UA152
4J043UA232
4J043UA762
4J043UB011
4J043UB012
4J043UB021
4J043UB022
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB102
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB152
4J043UB162
4J043UB302
4J043UB402
(57)【要約】
【課題】微細加工性及び誘電特性を十分に維持しつつ、高伸び率を有する絶縁膜を形成することができる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本開示に係る感光性樹脂組成物は、マレイミド化合物と、架橋剤と、光重合開始剤と、を含有し、マレイミド化合物が、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び無水マレイン酸の反応物であり、ジアミンが、ダイマージアミンと、ダイマージアミン以外の第2のアミンとを含み、架橋剤が、アリル基を有する重合性架橋剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド化合物と、架橋剤と、光重合開始剤と、を含有し、
前記マレイミド化合物が、テトラカルボン酸二無水物、アミン、及び無水マレイン酸の反応物であり、前記アミンが、ダイマージアミンと、前記ダイマージアミン以外の第2のアミンとを含み、
前記架橋剤が、アリル基を有する重合性架橋剤を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記テトラカルボン酸二無水物が、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第2のアミンが、メタキシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,3-ジアミノプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及びノルボルナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アリル基を有する重合性架橋剤が、1,3,4,6-テトラアリルグリコールウリル、トリアリルイソシアヌレート、及びジアリルイソシアヌレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記架橋剤が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤を更に含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
熱重合開始剤を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む再配線層を有する、半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、硬化物、及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の高集積化、小型化、及び微細化に伴い、半導体素子の表面保護層、層間絶縁層、再配線層等に用いられる絶縁膜には、より優れた電気特性、耐熱性、機械特性等を有することが求められている。このような特性を併せ持つ絶縁膜を形成するための材料として、アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。これらの感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を露光及び現像することでパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)が得られる。そして、上記パターン樹脂膜を加熱硬化することでパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成でき、該パターン硬化膜は絶縁膜として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-309885号公報
【特許文献2】特開2007-057595号公報
【特許文献3】国際公開第2010/073948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再配線層等の絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物には、微細加工性及び誘電特性を十分に維持しつつ、絶縁膜の柔軟性(特に伸び)を高めることが求められている。そこで、本開示は、微細加工性及び誘電特性を十分に維持しつつ、高伸び率を有する絶縁膜を形成することができる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、以下の感光性樹脂組成物、硬化物、及び半導体素子に関する。
[1]マレイミド化合物と、架橋剤と、光重合開始剤と、を含有し、前記マレイミド化合物が、テトラカルボン酸二無水物、アミン、及び無水マレイン酸の反応物であり、前記アミンが、ダイマージアミンと、前記ダイマージアミン以外の第2のアミンとを含み、前記架橋剤が、アリル基を有する重合性架橋剤を含む、感光性樹脂組成物。
[2]前記テトラカルボン酸二無水物が、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記第2のアミンが、メタキシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,3-ジアミノプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及びノルボルナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記アリル基を有する重合性架橋剤が、1,3,4,6-テトラアリルグリコールウリル、トリアリルイソシアヌレート、及びジアリルイソシアヌレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記架橋剤が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤を更に含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]熱重合開始剤を更に含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む再配線層を有する、半導体素子。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、微細加工性及び誘電特性を十分に維持しつつ、高伸び率を有する絶縁膜を形成することができる感光性樹脂組成物、低誘電特性を有する感光性樹脂組成物の硬化物、及び該硬化物を含む再配線層を有する半導体素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0008】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0009】
本明細書において、「層」及び「膜」は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート等の他の類似表現についても同様である。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる揮発する物質(水、溶剤等)を除いた不揮発分を指し、室温(25℃付近)で液状、水飴状、又はワックス状の成分も含む。
【0011】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、マレイミド化合物と、架橋剤と、光重合開始剤とを必須成分として含有し、マレイミド化合物が、テトラカルボン酸二無水物、アミン、及び無水マレイン酸の反応物であり、アミンが、ダイマージアミンと、前記ダイマージアミン以外の第2のアミンとを含み、架橋剤が、アリル基を有する重合性架橋剤を含む。
【0012】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、熱重合開始剤、カップリング剤、防錆剤、重合禁止剤等を更に含有してもよい。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性樹脂組成物であり、感光性樹脂組成物の硬化物は、再配線層用の絶縁膜として好適に用いることができる。以下、本実施形態の感光性樹脂組成物で用いられる各成分についてより詳細に説明する。
【0013】
(マレイミド化合物)
本実施形態に係るマレイミド化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)は、テトラカルボン酸二無水物(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう。)と、アミン(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)と、無水マレイン酸(a3)(以下、「(a3)成分」ともいう。)との反応物である。すなわち、(A)成分は、(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分を反応させてなるマレイミド化合物である。
【0014】
(a1)成分としては、例えば、無水ピロメリット酸、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、及び3,4’-ビフタル酸無水物が挙げられる。(a1)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
低誘電特性の観点から、(a1)成分は、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン(TDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよく、誘電特性、微細加工性、及び耐熱性の観点から、TDAを含んでもよい。
【0016】
(a2)成分は、ダイマージアミン(第1のアミン)と、ダイマージアミン以外の第2のアミンとを含む。(a2)成分としてダイマージアミンを用いることで、誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。一方で、(a2)成分としてダイマージアミンのみを用いた場合、硬化物の弾性率及びTgが低下することとなる。これに対し、第2のアミンをダイマージアミンと併用することで、硬化物の弾性率及びTgを向上させることができる。
【0017】
ダイマージアミンは、例えば、特開平9-12712号公報に記載されているように、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導される化合物である。本実施形態では、公知のダイマージアミンを特に制限なく使用できる。ダイマージアミンは、分岐状の脂肪族ジアミンであってよい。
【0018】
ダイマージアミンとして、下記式(1)で表されるジアミンを用いてもよい。
【化1】
【0019】
式(1)中、R及びRは各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、Rは炭素数4~50のアルキル基を示し、Rは炭素数2~50のアルキル基を示す。
【0020】
柔軟性の向上及び合成容易性の観点から、R及びRは各々独立に、炭素数5~25のアルキレン基であることが好ましく、炭素数6~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルキレン基であることが更に好ましい。同様の観点から、Rは炭素数5~25のアルキル基であることが好ましく、炭素数6~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルキル基であることが更に好ましい。同様の観点から、Rは炭素数3~25のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数5~8のアルキル基であることが更に好ましい。
【0021】
ダイマージアミンの市販品としては、例えば、PRIAMINE 1075、PRIAMINE 1074(いずれもクローダジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
第2のアミンは、上述したダイマージアミンに該当しないアミンである。第2のアミンは、ジアミンであってもよく、直鎖状のジアミンであってもよい。第2のアミンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
第2のアミンとしては、例えば、1,3-ジアミノプロパン、ノルボルナンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0024】
硬化物のガラス転移温度(Tg)を向上する観点から、第2のアミンは、ノルボルナンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよく、誘電特性、微細加工性、及び耐熱性の観点から、ノルボルナンジアミンを含んでもよい。
【0025】
(a2)成分中、第2のアミンのモル比(第2のアミンのモル数/(ダイマージアミンのモル数+第2のアミンのモル数))は、5~90モル%、10~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、又は30~50モル%であってもよい。この比が5モル%以上であると、硬化物の弾性率及びTgを高め易くなり、90モル%以下であると、より低誘電特性を有する硬化物を形成することができる。
【0026】
(A)成分を製造する方法は限定されない。(A)成分は、例えば、(a1)成分と(a2)成分とを反応させてアミン末端化合物を合成した後、該アミン末端化合物を過剰の(a3)成分と反応させることで作製してもよい。
【0027】
(A)成分は、各種公知の方法により製造できる。例えば、先ず、(a1)成分と(a2)成分とを60~120℃程度、好ましくは70~90℃の温度において、通常0.1~2時間程度、好ましくは0.1~1.0時間重付加反応させる。次いで、得られた重付加物を更に80~250℃程度、好ましくは100~200℃の温度において、0.5~30時間程度、好ましくは0.5~10時間イミド化反応、即ち脱水閉環反応させる。続いて、脱水閉環反応させた物と(a3)成分とを60~250℃程度、好ましくは80~200℃の温度において、0.5~30時間程度、好ましくは0.5~10時間マレイミド化反応、即ち脱水閉環反応させることにより、目的とする(A)成分が得られる。
【0028】
イミド化反応又はマレイミド化反応において、各種公知の反応触媒、脱水剤、及び有機溶剤を使用できる。
【0029】
反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類、及びメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸一水和物等の有機酸が挙げられる。反応触媒は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、及び、無水安息香酸等の芳香族酸無水物が挙げられる。
【0030】
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテ等のグリコールエーテル系溶剤;及びN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等の含窒素化合物が挙げられる。有機溶剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
(A)成分は各種公知の方法により精製でき、純度を上げることができる。例えば、先ず、有機溶剤に溶かした(A)成分と純水とを分液ロートに入れる。次いで、分液ロートを振り、静置させる。続いて、水層と有機層とが分離した後、有機層のみを回収することで、(A)成分を精製できる。
【0032】
(A)成分の分子量は、(a1)成分と(a2)成分のモル数で制御することができ、(a1)成分のモル数が(a2)成分のモル数より小さいほど、分子量を小さくすることができる。本開示の効果を達成し易くする目的において、通常、〔(a1)成分のモル数〕/〔(a2)成分のモル数〕が0.30~0.85程度、好ましくは0.50~0.80の範囲である。
【0033】
(A)成分の分子量としては、溶剤への溶解性及び耐熱性の観点から、重量平均分子量(Mw)で3000~100000、4000~80000、5000~60000、6000~40000、又は7000~20000であってもよい。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することができる。
【0034】
(架橋剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、架橋剤(以下「(B)成分」ともいう。)として、柔軟性及び耐熱性の観点から、アリル基を有する重合性架橋剤を含有する。(B)成分は、例えば、感光層の露光時に架橋剤同士だけでなく、(A)成分とも架橋することができる。また、架橋剤は、例えば、パターン形成後の樹脂膜の加熱時に重合性架橋剤同士で架橋することができる。アリル基を有する重合性架橋剤は、例えば、パターン形成後の樹脂膜の加熱時に重合性架橋剤同士で架橋することができる。
【0035】
アリル基を有する重合性架橋剤としては、例えば、アリル基を2以上有する化合物であってよい。アリル基の数は、2~8、2~6、2~4、又は3~4であってもよい。
【0036】
アリル基を有する重合性架橋剤としては、例えば、1,3,4,6-テトラアリルグリコールウリル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、及びオルトギ酸トリアリルが挙げられる。
【0037】
アリル基を有する重合性架橋剤は、感光性樹脂組成物の硬化物の伸びをより高める観点から、1,3,4,6-テトラアリルグリコールウリル、トリアリルイソシアヌレート、及びジアリルイソシアヌレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0038】
(B)成分は、微細加工性の観点から、架橋剤として(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤を更に含んでもよい。(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤は、例えば、感光層の露光時に架橋剤同士だけでなく、(A)成分とも架橋することができる。(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤は、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物であってもよい。(B)成分は、誘電特性の観点から、メタクリレート化合物を含んでもよい。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリロイル基を有する重合性架橋剤は、耐熱性、誘電特性、及び微細加工性の観点から、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、及びジオキサングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよく、耐熱性及び誘電特性の観点から、トリス-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを含んでもよい。
【0041】
低誘電特性と微細加工性とのバランスをより高める観点から、(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量を100質量部としたときに、50質量部未満が好ましく、1~45質量部、5~40質量部、8~30質量部、又は10~20質量部であってもよい。
【0042】
(光重合開始剤)
光重合開始剤(以下「(C)成分」ともいう。)としては、活性光線(紫外線等)の照射によって重合を開始させる化合物であれば特に制限はないが、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、分子内水素引き抜き型光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
【0043】
アルキルフェノン系光重合開始剤は、例えば、IGM Resins B.V.製のOmnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 379EG等として購入可能である。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば、IGM Resins B.V.製のOmnirad 819、Omnirad TPO H等として購入可能である。分子内水素引き抜き型光重合開始剤は、例えば、IGM Resins B.V.製のOmnirad MBF、Omnirad 754等として購入可能である。オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、Irgacure OXE02等として購入可能である。光反応を促進するために、チタノセン系の光重合開始剤(例えば、BASFジャパン株式会社製のIrgacure 784)を併用してもよい。
【0044】
(C)成分の含有量は、優れた微細加工性が得られ易いことから、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.1~10質量部、0.5~8質量部、又は1~5質量部であってもよい。
【0045】
(熱重合開始剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、熱重合性架橋剤の重合反応を促進する観点から、(D)成分として熱重合開始剤を更に含有してもよい。(D)成分としては、硬化時の加熱により分解してラジカルを発生し、(A)成分及び(B)成分の重合反応を促進する化合物が好ましい。(D)成分として、例えば、有機過酸化物が挙げられる。
【0046】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、及び3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1~10.0質量部、0.5~5.0質量部、又は0.7~3.0質量部であってもよい。
【0048】
(カップリング剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、カップリング剤を更に含有してもよい。カップリング剤は、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤は、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、メルカプト基等の基を有していてよい。
【0049】
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-1003、KBE-1003(信越化学工業株式会社製の商品名。以下同様。)等が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、KBM-303、402、403、KBE-402、403、X-12-981S、X-12-984S等が挙げられる。スチリル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-1403等が挙げられる。メタクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-502、503、KBE-502、503等が挙げられる。アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、KBM-5103、X-12-1048、X-12-1050等が挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、KBM-602、603、903、573、575、KBE-903、9103P、X-12-972F等が挙げられる。ウレイド基を有するシランカップリング剤としては、KBE-585等が挙げられる。イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、KBE-9007、X-12-1159L等が挙げられる。イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤としては、KBM-9659等が挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、KBM-802、803、X-12-1154、X-12-1156等が挙げられる。シランカップリング剤は、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤であってもよい。シランカップリング剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
シランカップリング剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部、0.1~8質量部、又は0.5~5質量部であってもよい。
【0051】
(防錆剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、銅配線の腐食を抑制又は変色を防止する観点から、防錆剤を更に含有してもよい。防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体などが挙げられる。防錆剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
防錆剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部、0.1~5質量部、又は0.5~3質量部であってよい。
【0053】
(重合禁止剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、保存安定性の観点から、重合禁止剤を更に含有してもよい。
【0054】
重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル、p-メトキシフェノール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、2,5-トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、及びニトロソアミン類が挙げられる。重合禁止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0055】
重合禁止剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部、0.05~5質量部、又は0.10~2質量部であってもよい。
【0056】
(溶剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、各成分を溶解・分散させるための溶剤を含有することにより、基板上への塗布を容易にし、均一な厚さの塗膜を形成できる。溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0057】
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン;トルエン、キシレン、メシチレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル;及びN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等の含窒素化合物が挙げられる。
【0058】
溶剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物中の固形分量が5~60質量%、10~50質量%、又は15~40質量%となるような量であってもよい。
【0059】
感光性樹脂組成物の調製手段、条件等は、特に限定されない。例えば、所定配合量の各主成分をミキサー等によって十分に均一に撹拌及び混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等を用いて混練する方法が挙げられる。混練方法は、特に限定されない。
【0060】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率は、2.80以下、2.70以下、2.65以下、又は2.60以下であってもよい。感光性樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電正接は、0.0050以下、0.0045以下、0.0040以下、又は0.0030以下であってもよい。比誘電率及び誘電正接は、感光性樹脂組成物の硬化膜を用いて、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0061】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、微細なパターンを形成することが可能である。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、低誘電特性を示すと共に絶縁信頼性に優れる絶縁膜を形成可能である。上述の感光性樹脂組成物の硬化物から形成された層間絶縁層を備える半導体素子、該半導体素子を含む電子デバイスを作製することができる。半導体素子は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を含む再配線層を有することで、高周波特性を向上することができる。半導体素子は、例えば、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等であってよい。電子デバイスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、及びハードディスクサスペンションが挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜を備えることで、信頼性に優れた半導体素子及び電子デバイスを提供することができる。
【実施例0062】
以下、実施例により本開示を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
(合成例1)
冷却器、窒素導入管、熱伝対、及び攪拌機を備えた1Lのフラスコ容器に、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン(新日本理化株式会社製、商品名「TDA-100」)24.35質量部、T-SOL100(ENEOS株式会社製、芳香族系高沸点溶剤)132.69質量部、及びソルミックスA-11(日本アルコール販売株式会社製、アルコール系溶剤)29.33質量部を投入した。投入後、80℃に昇温し、0.5時間保温し、ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE 1075」、クローダジャパン株式会社製)40.68質量部を滴下した。滴下後、ノルボルナンジアミン(三井化学ファイン株式会社製)5.01質量部を添加した。添加後、メタンスルホン酸水溶液(BASF社製、商品名「Lutropur MSA」)2.08質量部を加え、160℃に昇温した。昇温後にトルエン(山一化学工業株式会社製)40.00質量部を添加し、160℃で1時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水とアルコールを除去し、中間体のポリイミドを得た。続いて、得られたポリイミドを130℃に冷却し、無水マレイン酸(扶桑化学工業株式会社製)7.96質量部を加え、160℃に昇温し、160℃で4時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水を除去し、マレイミド化合物を得た。
【0064】
得られたマレイミド化合物を分液ロートに入れ、純水500質量部を投入し、分液ロートを振り混ぜ、静置させた。静置後、水層と有機層が分離した後、有機層のみを回収した。回収した有機層を冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機、及び真空ポンプを備えた1Lのガラス製容器に投入し、88~93℃に昇温し、水を除去した後、100℃に昇温し、大気圧から0.1MPa減圧した状態で0.5時間溶剤を除去し、(A)成分のマレイミド化合物(A-1)を得た。
【0065】
マレイミド化合物(A-1)の分子量は、GPCにより測定した。テトラヒドロフラン(THF)にマレイミド化合物を濃度3質量%となるように溶解させたサンプルを、30℃に加温されたカラム(GL-R420(株式会社日立ハイテクフィールディング製)×1本、GL-R430(株式会社日立ハイテクフィールディング製)×1本、GL-R440(株式会社日立ハイテクフィールディング製)×1本)に50μL注入し、展開溶媒としてTHFを用い、流速1.6mL/分の条件で測定を行った。検出器には、L-3350 RI検出器(株式会社日立製作所製)を用い、溶出時間から標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて作成した分子量/溶出時間曲線により重量平均分子量(Mw)を換算した。(A-1)のMwは10900であった。
【0066】
(B)成分として、以下の化合物を準備した。
TA-G:1,3,4,6-テトラアリルグリコールウリル(四国化成工業株式会社製、商品名、アリル基の数:4)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名、アリル基の数:3)
L-DAIC:アリル基を有するイソシアヌレート(四国化成工業株式会社製、商品名、アリル基の数:2以上)
A-9300:トリス-(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業株式会社製、商品名、アクリロイル基の数:3)
【0067】
(C)成分、(D)成分、カップリング剤、重合禁止剤、防錆剤、及び溶剤として、以下の化合物を準備した。
(C)成分:オキシムエステル系光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Irgacure OXE01」)
(D)成分:α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製、商品名「パーブチルP」)
カップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社社製、商品名「KBM-503」)
重合禁止剤:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPOL)(東京化成工業株式会社製)
防錆剤:1,2,3-ベンゾトリアゾール(城北化学工業株式会社製、商品名「BT-120」)
溶剤:メシチレン(東洋合成株式会社製)
【0068】
[感光性樹脂組成物]
表1に示す配合量(質量部、固形分)の各成分と溶剤210質量部を混合し、25℃で30分間以上攪拌した後、#200のナイロンメッシュ(目開き:75μm)でろ過して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0069】
(誘電特性)
感光性樹脂組成物を銅箔上にナイフコーターを用いて塗工した後、15分風乾し、乾燥機で90℃、15分間乾燥して塗膜を形成した。塗膜に対して、高圧水銀灯で露光(露光量:1000mJ/cm)及びホットプレートで露光後ベーク(100℃、1分間)を行い、100μmの厚みを有する樹脂膜を形成した。その後、樹脂膜を窒素雰囲気下、クリーンオーブンを用いて200℃で2時間硬化させた。続いて、銅箔を過硫酸アンモニウムにて溶解除去して硬化膜を得た。
【0070】
硬化膜を長さ80mm、幅80mmに切り出し評価サンプルを作製した。評価サンプルについて、SPDR誘電体共振器(QWED社製)及びアナライザ(Agilent Technologies製、商品名「PNA Network Analyzer N5227A」)を用い、室温で10GHzの比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
【0071】
(5%重量減少温度)
硬化膜をオープン型試料容器(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名「GCA-0055」)に6.0~10.0mg計りとり、窒素流量300mL/分、開始温度40℃、昇温速度10℃/分の条件で、5%重量減少温度(Td5)を測定した。測定装置は、NEXTA STA200RV(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を使用した。
【0072】
(破断伸び)
Cuスパッタ膜付きのシリコンウェハ上に、感光性樹脂組成物をスピンコートして、ホットプレートを用いて90℃で5分加熱乾燥し、厚さ14μmの樹脂膜を形成した。次いで、マスクアライナ―露光機(株式会社ミカサ製、商品名「MA-20」)を用いて露光量1000mJ/cmの条件で10mm幅の樹脂膜になるようにパターン露光した後、ホットプレートを用いて100℃で1分間の条件で加熱した。その後、現像液(シクロペンタノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合液)に25℃で30秒間浸漬し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し、パターン樹脂膜をシリコンウェハ上に形成した。パターン樹脂膜が形成されたシリコンウェハを、窒素雰囲気下、200℃、2時間の条件で加熱し、パターン硬化膜付きシリコンウェハを得た。パターン硬化膜付きシリコンウェハを過硫酸アンモニウム水溶液に浸漬し、剥離した硬化膜を純水で洗浄し、幅10mmの評価サンプルを作製した。評価サンプルについて、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名「EZ-S」)を用いて、室温でチャック間距離20mm、引張速度5mm/分の条件で破断伸びを測定した。
【0073】
(微細加工性)
シリコンウェハ上に、感光性樹脂組成物をスピンコートして、ホットプレートを用いて90℃で5分加熱乾燥して、厚さ8μmの樹脂膜を形成した。次いで、i線ステッパ露光機(株式会社サーマプレシジョン製、商品名「Sc6k」)を用いて露光量300mJ/cmの条件で樹脂膜をパターン露光した後、ホットプレートを用いて100℃で1分間の条件で加熱した。その後、現像液(シクロペンタノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合液)を用いて25℃で20秒間浸漬し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄した。現像後の樹脂膜のシリコンウェハからの剥離、樹脂膜のひび割れ、パターン端部の荒れの有無、及び樹脂膜を現像したパターン底部の残渣の有無を金属顕微鏡で確認した。これらの不具合が確認できなかった最小のビア径が20μm以下の場合を「A」とし、最小のビア径が20μm超の場合を「B」として評価した。
【0074】
【表1】