(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148042
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ジオポリマー硬化体の製造方法、及びジオポリマー硬化体
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20241009BHJP
C04B 18/04 20060101ALI20241009BHJP
C04B 12/04 20060101ALI20241009BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20241009BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20241009BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C04B28/26 ZAB
C04B18/04
C04B12/04
C04B22/08 Z
C04B40/02
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060923
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 道生
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA02
4G112MB00
4G112PA02
4G112PA29
4G112PB05
4G112PC04
4G112PE07
4G112RA05
4G112RB03
(57)【要約】
【課題】ジオポリマー硬化体を高強度化すること。
【解決手段】ジオポリマー硬化体の製造方法は、無機粉体、水酸化物、水及び骨材を含む原料を練り混ぜて混練物を得る混練工程と、混練物を養生する養生工程と、を含む。無機粉体は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体、水酸化物、水及び骨材を含む原料を練り混ぜて混練物を得る混練工程と、
前記混練物を養生する養生工程と、
を含み、
前記無機粉体は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末を含む
ことを特徴とするジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項2】
前記カルシウムアルミネート系粉末は、アルミナセメントである
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化物は、ケイ酸ナトリウム以外の水酸化物である
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項4】
前記水酸化物は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項5】
前記養生工程では、前記混練物に対して常温養生、蒸気養生、又は常温養生を行った後に蒸気養生を行う
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項6】
前記フライアッシュは、フライアッシュ原粉である
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項7】
前記シリカ系粉末は、シリカフュームである
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項8】
前記骨材は、砕砂、砂利、石炭ガス化スラグ細骨材、およびそれらを混合した骨材である
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項9】
前記無機粉体は、フライアッシュ100質量部に対して、高炉スラグ微粉末を30~140質量部、カルシウムアルミネート系粉末を4~25質量部、シリカ系粉末を4~25質量部を含む
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項10】
前記骨材は、砕砂と石炭ガス化スラグ細骨材を含む
請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1つに記載のジオポリマー硬化体の製造方法によって製造したジオポリマー硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー硬化体の製造方法、及びジオポリマー硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュを主原料とするジオポリマコンクリートなどのジオポリマー硬化体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フライアッシュ、アルカリ溶液および骨材を含有するジオポリマー組成物に、カルシウムアルミネート類を有効成分として含有する硬化促進剤を添加するジオポリマー組成物の硬化促進方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、構造物等に使用されるため、ジオポリマー硬化体を高強度化する技術が求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ジオポリマー硬化体を高強度化する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法は、無機粉体、水酸化物、水及び骨材を含む原料を練り混ぜて混練物を得る混練工程と、混練物を養生する養生工程と、を含む。無機粉体は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法によれば、ジオポリマー硬化体を高強度化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法の流れの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例に係るジオポリマー硬化体の製造時の配合割合の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係るジオポリマー硬化体の養生時間による強度の変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例2に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例3に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例3に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例4に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例5に係るフライアッシュの比表面積によるジオポリマー硬化体の強度の変化の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例6に係るジオポリマー硬化体の製造時の配合割合の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例6に係るジオポリマー硬化体の強度の変化の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例7に係るジオポリマー硬化体の製造時の配合割合の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例7に係るジオポリマー硬化体のフロー値の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例7に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るジオポリマー硬化体の製造方法、及びジオポリマー硬化体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。そして、実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
図1は、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法の流れの一例を示す図である。
【0012】
実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、混練工程(S1)と、養生工程(S2)と、を含む。
【0013】
混練工程(S1)では、原料として、無機粉体、水酸化物、水及び骨材を練り混ぜて混練物を得る。無機粉体は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末を含む。このように無機粉体に、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末の4種類を用いてジオポリマー硬化体を製造することによって、ジオポリマー硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)を増進でき、ジオポリマー硬化体を高強度化できる。
【0014】
養生工程(S2)では、混練物に対して常温養生、蒸気養生、又は常温養生を行った後に蒸気養生を行う。特に、養生工程(S2)では、常温養生を行った後に蒸気養生を行うことにより、ジオポリマー硬化体の強度をより増進させることができ、ジオポリマー硬化体を高強度化できる。
【0015】
フライアッシュとしては、JIS A 6201に規定されているコンクリート用フライアッシュI種~IV種品を用いることができる。また、フライアッシュとしては、フライアッシュ原粉(即ち、非JIS品)を用いることもできる。また、フライアッシュとしては、JIS-I種~IV種品及び非JIS品のうちの2種以上を組み合わせて用いることもできる。フライアッシュ原粉は、石炭火力発電所から発生したフライアッシュに対して分級処理等が一切施されていないことから、構成粒子の粒度分布が広く、粗い粒をも含んでいる。このため、フライアッシュ原粉は、JIS-I種~IV種品と比較して反応性が劣る傾向にあり、現在その多くはセメント原料としての利用にとどまっている。セメント原料として利用されないものの大半は埋立処分されている。ここで、フライアッシュ発生量のうち、JIS品は約2%程度に過ぎず、残りの約98%は非JIS品である。非JIS品であるフライアッシュ原粉の発生量は将来的にさらなる増大が見込まれる。しかし、セメント原料としてのフライアッシュ原粉の利用量は頭打ちになることが予想される。したがって、非JIS品であるフライアッシュ原粉の新たな有効利用方法の確立が急務である。実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、原料として、フライアッシュ原粉を利用することが可能であることから、非JIS品であるフライアッシュ原粉を用いながらも、セメントを使用することなく、環境に優しい建築資材等の製造に資することができる。
【0016】
高炉スラグ微粉末についても、JIS品及び非JIS品のいずれを用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。高炉スラグ微粉末の非JIS品は市場に殆ど流通しておらず、ブレーン値が小さすぎる非JIS品については強度増進効果が小さくなることもある。このことから、高炉スラグ微粉末としては、入手容易なJIS品を用いることが好適である。具体的には、高炉スラグ微粉末としては、JIS A 6206に規定されている高炉スラグ微粉末(ブレーン値3000cm2/gクラス、4000cm2/gクラス、6000cm2/gクラス、8000cm2/gクラス)を用いることができ、特にブレーン値4000cm2/gクラス適合品を好適に使用できる。また、高炉スラグ微粉末としては、これら4種のJIS品のうちの2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0017】
カルシウムアルミネート系粉末としては、CaOをCで表示し、Al2O3をAで表示し、Na2OをNで表示し、Fe2O3をFで表示した場合、C3A,C2A,CA,CA2等と表される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、C2AF,C4AF等と表されるカルシウムアルミノフェライト、C3N2A5等と表されるカルシウムナトリウムアルミネート、アルミナセメント等が挙げられる。
【0018】
シリカ系粉末は、化学組成としてSiO2を主に含有する粉末であり、例えば、シリカフューム、ポルトランドセメント、下水汚泥スラグ焼成粉末、都市ごみ溶融スラグ粉末、廃ガラス粉末、珪石微粉末、タルク粉末、メタカオリン、火山灰、シリカゲル等が挙げられる。ここで、ポルトランドセメントは、石灰等の原料を焼成して製造され、製造時などにCO2が多く排出される。一方、シリカフュームは、フェロシリコンや、シリコンメタルをアーク式電気炉で製造する際に副生される産業副産物である。例えば、シリカ系粉末として、シリカフュームを用いる場合、ポルトランドセメントを用いる場合と比較して、ジオポリマー硬化体の製造でのCO2原単位を減らすことができ、低炭素社会の構築に資することが可能である。また、ジオポリマー硬化体の原料として、シリカフューム、フライアッシュ等産業副産物を使用することで、循環型社会の構築に資することが可能である。
【0019】
シリカフュームとしては、JIS品及び非JIS品のいずれを用いることもできるし、これらを組み合わせて用いることもできる。なお、JIS品とは、JIS A 6207
に規定されるコンクリート用シリカフュームである。
【0020】
無機粉体においてのフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末の配合割合は、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、無機粉体は、無機粉体中のフライアッシュを100質量部とした場合、高炉スラグ微粉末を30~140質量部、カルシウムアルミネート系粉末を4~25質量部、シリカ系粉末を4~25質量部を含むことが好適である。また、無機粉体は、無機粉体の全質量に対して、カルシウムアルミネート系粉末及びシリカ系粉末を合計で5質量%以上とすることが好適であり、5~20質量%とすることがより好適であり、5~10質量%とすることがさらに好適である。一例として、カルシウムアルミネート系粉末をアルミナセメントとし、シリカ系粉末をシリカフュームとする。無機粉体の全質量に対してフライアッシュを40質量%とした場合、アルミナセメント及びシリカフュームは、無機粉体の全質量に対して合計で5~20質量%の範囲が好ましい。また、無機粉体の全質量に対してフライアッシュを60質量%とした場合、アルミナセメント及びシリカフュームは、無機粉体の全質量に対して合計で5~10質量%の範囲が好ましい。
【0021】
水酸化物としては、ケイ酸ナトリウム以外の水酸化物を用いることができる。例えば、水酸化物としては、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが挙げられる。水酸化ナトリウムは、予め水(練り混ぜ水)に溶解させて水酸化ナトリウム水溶液とした後、練り混ぜ工程に供することが好適である。なお、水としては、例えばイオン交換水等を用いることが好適であるが、蒸留水や水道水を用いてもよい。
【0022】
ここで、従来のジオポリマー硬化体の製造方法では、無機粉体などの原料と、ケイ酸ナトリウム水溶液とを練り混ぜてジオポリマー硬化体を製造する。しかし、ケイ酸ナトリウム水溶液を用いると、原料の練り混ぜを開始してから凝結するまでの時間が非常に短く、練り混ぜ中に凝結してしまうことがある。したがって、可使時間の確保が困難であるという問題がある。
【0023】
一方、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、ケイ酸ナトリウム以外の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いてジオポリマー硬化体を製造する。この場合、ケイ酸ナトリウム水溶液を用いた場合のように、原料の練り混ぜを開始してから凝結するまでの時間が非常に短く、可使時間の確保が困難であるという問題は生じなくなる。
【0024】
骨材としては、コンクリートやモルタルに一般的に用いられる粗骨材(例えば、砂利等)や細骨材(例えば、砂、石炭ガス化スラグ細骨材等)等を適宜用いることができる。なお、骨材以外の原料に対する骨材の配合割合は、特に限定されるものではなく、例えばコンクリートやモルタルにおいて一般的に採用される条件を適宜選択すればよい。
【0025】
混練工程(S1)は、原料を二軸式ミキサー等の攪拌装置に投入し練り混ぜることにより行われる。なお、骨材の投入について、モルタル(ペスト+細骨材)を製造する場合は、原料と細骨材を共に練り混ぜるのが好ましい。コンクリート(ペースト+細骨材+粗骨材)を製造する場合は、原料と細骨材で練り混ぜて、モルタルを作製した後に粗骨材を投入することが好ましい。
【0026】
混練工程(S1)により得られた混練物は、型枠に打設され、次工程の養生工程(S2)に供される。養生工程(S2)は、混練物に対して常温養生、蒸気養生、又は常温養生を行った後に蒸気養生を行う。
【0027】
常温養生は、常温(10℃~30℃)で実施される。蒸気養生は、蒸気中に混練物を保持して養生する。蒸気養生の条件については、特に限定されるものではなく、ジオポリマー硬化体の製造方法において採用される一般的な条件が採用される。例えば、蒸気養生は、60℃~90℃の温度範囲を蒸気養生の条件として採用することができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
養生工程(S2)での養生時間は、例えばコンクリートやモルタルにおいて一般的に採用される範囲であれば特に限定されるものではない。養生時間は、例えば、6時間以上とすればよく、12時間以上とすることが好適であり、24時間以上とすることがより好適であり、48時間以上とすることがさらに好適である。養生時間が短すぎる養生を施すことによる強度増強効果が十分に奏されないことがある。なお、養生は、混練物からの水分逸散を防ぎながら実施することが好ましい。例えば、打設面をシート等で覆うこと等によって、混練物からの水分逸散を防ぎながら養生を実施することができる。
【実施例0029】
実施形態に係る製造方法により製造したジオポリマー硬化体の実施例を以下に説明する。なお、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法はこれら実施例に限られるものではない。
【0030】
以降の説明及び図では、無機粉体の配合条件について、以下のように略記することがある。
F:フライアッシュ
G:高炉スラグ微粉末
A:アルミナセメント
S:シリカフューム
CGS:石炭ガス化スラグ細骨材
【0031】
[実施例1]
実施例1では、無機粉体をフライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びアルミナセメントの3種類とした場合と、無機粉体をフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフュームの3種類とした場合と、無機粉体をフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、アルミナセメント、シリカフュームの4種類とした場合のそれぞれでジオポリマー硬化体の強度を比較して検討した。
【0032】
図2は、実施例に係るジオポリマー硬化体の製造時の配合割合の一例を示す図である。なお、
図2は、骨材以外の原料である無機粉体と水酸化ナトリウム水溶液を混合したペーストでの配合割合を示している。
【0033】
配合表記には、製造した各ジオポリマー硬化体の名称を、無機粉体の配合割合を用いて表記している。F60-G-A10は、無機粉体を、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びアルミナセメントの3種類とした場合である。F60-G-A10は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%(mass%)とし、高炉スラグ微粉末(G)を40質量%とし、アルミナセメント(A)を10質量%としている。F60-G-S10は、無機粉体を、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びシリカフュームの3種類とした場合である。F60-G-S10は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を40質量%とし、シリカフューム(S)を10質量%としている。F60-G-AS10は、無機粉体を、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、アルミナセメント及びシリカフュームの4種類とした場合である。F60-G-AS10は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を40質量%とし、アルミナセメント(A)を5質量%及びシリカフューム(S)を5質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで10質量%としている。
【0034】
また、
図2に示す何れの配合割合でも、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、7mol/kgとし、水分/粉体比は、36質量%とした。
【0035】
図3は、実施例1に係るジオポリマー硬化体の養生時間による強度の変化の一例を示す図である。
図3には、F60-G-A10、F60-G-S10、及びF60-G-AS10について、打設後、20℃にて常温養生を行った場合の材齢(日)ごとの圧縮強度の変化がそれぞれ示されている。
図3に示すように、F60-G-AS10は、F60-G-A10及びF60-G-S10と比較して、材齢3~7日にかけ大幅に強度増進しており、材齢28日の圧縮強度が約1.8倍程度高くなっている。
【0036】
このように、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、無機粉体をフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、アルミナセメント、シリカフュームの4種類とすることによって、無機粉体をフライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びアルミナセメントの3種類とした場合や、無機粉体をフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフュームの3種類とした場合と比較して、ジオポリマー硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)を増進でき、ジオポリマー硬化体を高強度化できる。
【0037】
[実施例2]
実施例2では、養生工程(S2)を蒸気養生とした場合のジオポリマー硬化体の強度を比較して検討した。
【0038】
図4は、実施例2に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
図4には、F60-G-A10、F60-G-S10、及びF60-G-AS10について、打設後、85℃にて1日、蒸気養生を行った場合の圧縮強度がそれぞれ示されている。
図4に示すように、F60-G-AS10は、F60-G-A10及びF60-G-S10と比較して、強度増進しており、圧縮強度が高くなっている。
【0039】
このように、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、養生工程(S2)を蒸気養生とした場合でも、ジオポリマー硬化体を高強度化することができる。
【0040】
[実施例3]
実施例3では、養生工程(S2)を、常温養生を行った後に蒸気養生を行うものとし、また、常温養生及び蒸気養生の時間を変えた場合のジオポリマー硬化体の強度を比較して検討した。
【0041】
図5は、実施例3に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
図5には、F60-G-A10、F60-G-S10、及びF60-G-AS10について、打設後、20℃にて24時間、常温養生を行った後、85℃にて24時間、蒸気養生を行い、その後、20℃にて常温養生った場合の材齢3日での圧縮強度がそれぞれ示されている。
図5に示すように、F60-G-AS10は、F60-G-A10及びF60-G-S10と比較して、強度増進しており、圧縮強度が高くなっている。
【0042】
図6は、実施例3に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
図6には、F60-G-A10、F60-G-S10、及びF60-G-AS10について、打設後、20℃にて6時間、常温養生を行った後、85℃にて8時間、蒸気養生を行い、その後、20℃にて常温養生った場合の材齢3日での圧縮強度がそれぞれ示されている。
【0043】
図5及び
図6は、どちらも養生工程(S2)において、常温養生を行った後に蒸気養生を行っている。
図5及び
図6とも、F60-G-AS10は、F60-G-A10及びF60-G-S10と比較して、強度増進しており、圧縮強度が高くなっている。また、
図6では、
図5よりも常温養生及び蒸気養生の時間を短縮しているが、F60-G-AS10は、F60-G-A10及びF60-G-S10と比較して、強度増進しており、圧縮強度が高くなっている。
【0044】
このように、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、養生工程(S2)において、常温養生を行った後に蒸気養生を行った場合でも、ジオポリマー硬化体を高強度化することができる。
【0045】
[実施例4]
実施例4では、養生工程(S2)を、常温養生とした場合と、常温養生を行った後に蒸気養生を行うものとした場合のジオポリマー硬化体の強度を比較して検討した。
【0046】
図7は、実施例4に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
図7には、F60-G-A10について、打設後、20℃にて3日、常温養生を行った場合と、打設後、20℃にて24時間、常温養生を行った後、85℃にて24時間、蒸気養生を行い、その後、20℃にて常温養生った場合について、それぞれ材齢3日での圧縮強度がそれぞれ示されている。
図7に示すように、F60-G-AS10は、常温養生を行った後に蒸気養生を行った場合の方が、強度増進しており、圧縮強度が高くなっている。
【0047】
このように、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、養生工程(S2)において、常温養生を行った後に蒸気養生を行うことにより、ジオポリマー硬化体をより高強度化することができる。
【0048】
[実施例5]
実施例5では、フライアッシュの比表面積によるジオポリマー硬化体の強度の変化を検討した。
【0049】
図8は、実施例5に係るフライアッシュの比表面積によるジオポリマー硬化体の強度の変化の一例を示す図である。
図8には、F60-G-A10、F60-G-S10、F60-G-AS10について、それぞれ使用するフライアッシュの比表面積を変えた場のジオポリマー硬化体の圧縮強度の変化が示されている。なお、
図8は、打設後、20℃にて24時間、常温養生を行った後、85℃にて24時間、蒸気養生を行い、その後、20℃にて常温養生った場合の材齢3日での圧縮強度を示している。フライアッシュは、比表面積が小さいと粒度が粗く、品質が低い。
図8に示すように、F60-G-A10及びF60-G-S10は、比表面積が小さい低品質のフライアッシュを使用すると圧縮強度が低下する傾向がある。一方、F60-G-AS10は、フライアッシュの比表面積による強度変動が小さく、低品質のフライアッシュでも十分な圧縮強度が生じている。
【0050】
このことから、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、低品質のフライアッシュでも十分な圧縮強度を生じさせることができる。例えば、フライアッシュは、JIS A 6201にI種~IV種品が規定されている。I種は、比表面積が5000cm2/g以上と規定され、II種及びIII種は、比表面積が2500cm2/g以上と規定され、IV種は、比表面積が1500cm2/g以上と規定されている。実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、フライアッシュI種~IV種品や、非JIS品であるフライアッシュ原粉を用いた場合でも十分な圧縮強度を生じさせることができる。
【0051】
このように、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、フライアッシュの品質に依らずに、ジオポリマー硬化体を高強度化することができる。例えば、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、フライアッシュ原粉を用いた場合でも、ジオポリマー硬化体を高強度化することができる。
【0052】
[実施例6]
実施例6では、無機粉体に配合するフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、カルシウムアルミネート系粉末、及びシリカ系粉末の配合割合を変えた場合のジオポリマー硬化体の強度を比較して検討した。
【0053】
図9は、実施例6に係るジオポリマー硬化体の製造時の配合割合の一例を示す図である。なお、
図9は、骨材以外の原料である無機粉体と水酸化ナトリウム水溶液を混合したペーストでの配合割合を示している。
【0054】
配合表記には、製造した各ジオポリマー硬化体の名称を、無機粉体の配合割合を用いて表記している。F60-G、及び、F40-Gは、無機粉体を、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末の2種類とした場合である。F60-Gは、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%、高炉スラグ微粉末(G)を40質量%としている。F40-Gは、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を40質量%、高炉スラグ微粉末(G)を60質量%としている。
【0055】
F60-G-AS5、F60-G-AS10、F60-G-AS20、F40-G-AS5、F40-G-AS10、及び、F40-G-AS20は、無機粉体を、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、アルミナセメント及びシリカフュームの4種類とした場合である。F60-G-AS5は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を35質量%とし、アルミナセメント(A)を2.5質量%及びシリカフューム(S)を2.5質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで5質量%としている。F60-G-AS10は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を30質量%とし、アルミナセメント(A)を5質量%及びシリカフューム(S)を5質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで10質量%としている。F60-G-AS20は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を20質量%とし、アルミナセメント(A)を10質量%及びシリカフューム(S)を10質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで20質量%としている。F40-G-AS5は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を40質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を55質量%とし、アルミナセメント(A)を2.5質量%及びシリカフューム(S)を2.5質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで5質量%としている。F40-G-AS10は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を40質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を50質量%とし、アルミナセメント(A)を5質量%及びシリカフューム(S)を5質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで10質量%としている。F40-G-AS20は、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を40質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を40質量%とし、アルミナセメント(A)を10質量%及びシリカフューム(S)を10質量%としてアルミナセメント及びシリカフュームで20質量%としている。
【0056】
また、
図9に示す何れの配合割合でも、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、7mol/kgとし、水分/粉体比は、36質量%とした。
【0057】
図10は、実施例6に係るジオポリマー硬化体の強度の変化の一例を示す図である。
図10には、フライアッシュ(F)を60質量%としたF60-G、F60-G-AS5、F60-G-AS10、及び、F60-G-AS20について、アルミナセメント及びシリカフュームの質量%(A+S)に対応させて、ジオポリマー硬化体の圧縮強度の変化が「F60%」として示されている。また、
図10には、フライアッシュ(F)を40質量%としたF40-G、F40-G-AS5、F40-G-AS10、及び、F40-G-AS20について、アルミナセメント及びシリカフュームの質量%(A+S)に対応させて、ジオポリマー硬化体の圧縮強度の変化が「F40%」として示されている。なお、
図10は、打設後、20℃にて6時間、常温養生を行った後、85℃にて8時間、蒸気養生を行い、その後、20℃にて常温養生した場合の材齢3日での圧縮強度を示している。
【0058】
図10に示すように、フライアッシュを60質量%としたF60では、アルミナセメント及びシリカフューム(A+S)の比率の増大に伴い強度が増大しており、アルミナセメント及びシリカフュームが5質量%でも優位な強度が増進している。よって、無機粉体の全質量に対してフライアッシュを60質量%とした場合、アルミナセメント及びシリカフュームは、無機粉体の全質量に対して合計で5~20質量%の範囲が好ましい。
【0059】
また、フライアッシュを40質量%としたF40では、アルミナセメント及びシリカフューム(A+S)の比率の増大に応じて強度が増大しているものの、アルミナセメント及びシリカフューム(A+S)が20質量%となると強度が低下する。よって、機粉体の全質量に対してフライアッシュを40質量%とした場合、アルミナセメント及びシリカフュームは、無機粉体の全質量に対して合計で5~10質量%の範囲が好ましい。
【0060】
[実施例7]
実施例7では、骨材の配合割合によるジオポリマー硬化体の強度の変化を検討した。
【0061】
図11は、実施例7に係るジオポリマー硬化体の製造時の配合割合の一例を示す図である。
図11は、骨材として、砕砂、石炭ガス化スラグ細骨材(CGS)を配合した場合を示している。
【0062】
配合表記には、製造した各ジオポリマー硬化体の名称を、骨材の配合割合を用いて表記している。「砕砂」は、骨材の構成比率を、砕砂を100質量%とし、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を30質量%とし、アルミナセメント(A)を5質量%及びシリカフューム(S)を5質量%としている。「砕砂+GCS」は、骨材の構成比率を、砕砂を50質量%とし、石炭ガス化スラグ細骨材(CGS)を50質量%とし、無機粉体の構成比率を、フライアッシュ(F)を60質量%とし、高炉スラグ微粉末(G)を30質量%とし、アルミナセメント(A)を5質量%及びシリカフューム(S)を5質量%としている。
【0063】
また、
図11に示す何れの配合割合でも、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、7mol/kgとし、水分/粉体比は、36質量%とした。
【0064】
図12は、実施例7に係るジオポリマー硬化体のフロー値の一例を示す図である。
図12には、
図11に示す「砕砂」及び「砕砂+GCS」の配合の混練物のフロー値が示されている。
図13は、実施例7に係るジオポリマー硬化体の強度の一例を示す図である。
図13には、
図11に示す「砕砂」及び「砕砂+GCS」について、打設後、20℃にて6時間、常温養生を行った後、85℃にて8時間、蒸気養生を行い、その後、20℃にて常温養生った場合の材齢3日での圧縮強度が示されている。
【0065】
図12に示すように、「砕砂+GCS」は、「砕砂」よりもフロー値が高く流動性が高い。また、
図13に示すように、「砕砂+GCS」は、「砕砂」に近い圧縮強度が得らえている。よって、石炭ガス化スラグ細骨材(CGS)を一般の砕砂に混合し使用した場合、流動性を向上しつつ、実利用可能な強度レベルが確保可能である。
【0066】
このように、実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、骨材として、砕砂と石炭ガス化スラグ細骨材を混合することで、混練物の流動性を向上させつつ、ジオポリマー硬化体の強度を確保できる。
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法により得られるジオポリマー硬化体は、歩車道分離ブロック等の各種ブロック、電柱、カルバートといった既存の一般プレキャストコンクリート製品と同様の蒸気養生装置及び施設において製造することが可能であり、一般的なプレキャストコンクリート製品全般への利用可能性を有している。また、優れた耐酸性を有することから、微生物の活動に由来し生じる硫酸による劣化が問題となる下水道資材、酸性温泉水による酸劣化が問題となる温泉地における建設資材(U字溝や護岸ブロック等)としての利用可能性を有している。さらに、優れた陽イオン交換能を有することから、水環境中における悪臭の一要因であるアンモニウムイオン等を吸着する環境浄化材用途としての利用可能性を有している。