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特開2024-148157Sm-Fe-N系磁性粉体の製造方法およびSm-Fe-N系磁性粉体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148157
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】Sm-Fe-N系磁性粉体の製造方法およびSm-Fe-N系磁性粉体
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/04 20060101AFI20241009BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20241009BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241009BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241009BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20241009BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241009BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241009BHJP
   H01F 1/059 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B22F9/04 E
B22F9/08 A
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F1/052
B22F1/00 Y
B22F1/14 100
B22F1/14 200
C22C38/00 303D
H01F41/02 G
H01F1/059 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052420
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023061046
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100129470
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 高
(72)【発明者】
【氏名】山田 智也
(72)【発明者】
【氏名】公文 翔一
(72)【発明者】
【氏名】道明 良幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 王高
(72)【発明者】
【氏名】山口 渡
(72)【発明者】
【氏名】細川 明秀
(72)【発明者】
【氏名】高木 健太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 公洋
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB12
4K017BB13
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA03
4K017EA08
4K017EB00
4K017FA14
4K017FA15
4K018BA18
4K018BB04
4K018BC01
4K018BC08
4K018BC19
4K018KA46
5E040AA03
5E040AA19
5E040CA01
5E040HB11
5E040NN01
5E040NN06
5E040NN14
5E040NN18
5E062CC05
5E062CG03
(57)【要約】
【課題】高い最大エネルギー積(BH)maxを呈し、かつ不純物が少ない、ボンド磁石の性能向上、製造性向上に有用なSm-Fe-N系磁性粉体を提供する。
【解決手段】ガスアトマイズ法による凝固過程で形成されたSm/Feモル比が0.09以上0.25以下であるSm-Fe系合金の粉体を、900℃以上1200℃以下の温度に加熱することにより、その粉体の粒子の結晶粒を粗大化させる熱処理工程と、
前記熱処理工程によって結晶粒が粗大化したSm-Fe系合金の粉体を粉砕することにより、その粉体の粒子を、結晶粒内破壊を含む破断により微細化する粉砕工程と、
前記粉砕工程により微細化したSm-Fe系合金の粉体を、窒素化合物または窒素を含有する非酸化性ガス雰囲気中で500℃以下の温度範囲に加熱保持することにより、その粉体の粒子に窒素を導入する窒化工程と、
を有するSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスアトマイズ法による凝固過程で形成されたSm/Feモル比が0.09以上0.25以下であるSm-Fe系合金の粉体を、900℃以上1200℃以下の温度に加熱することにより、その粉体の粒子の結晶粒を粗大化させる熱処理工程と、
前記熱処理工程によって結晶粒が粗大化したSm-Fe系合金の粉体を粉砕することにより、その粉体の粒子を、結晶粒内破壊を含む破断により微細化する粉砕工程と、
前記粉砕工程によって微細化したSm-Fe系合金の粉体を、窒素化合物または窒素を含有する非酸化性ガス雰囲気中で500℃以下の温度範囲に加熱保持することにより、その粉体の粒子に窒素を導入する窒化工程と、
を有するSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項2】
前記粉砕工程で粉砕に供するSm-Fe系合金の粉体は、前記熱処理工程後に、水素雰囲気中で加熱保持する水素処理が施されたものである、請求項1に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程において、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下である粉体を得る、請求項1または2に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項4】
前記粉砕工程において、Sm-Fe系合金の粉体を、ジェットミルを用いて粉砕する、請求項1または2に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項5】
前記窒化工程における非酸化性ガス雰囲気が窒素ガス雰囲気である、請求項1または2に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項6】
前記Sm-Fe-N系磁性粉体は、最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上である、請求項1または2に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項7】
前記Sm-Fe-N系磁性粉体は、ThZn17型結晶構造を有するものである、請求項1または2に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項8】
前記Sm-Fe-N系磁性粉体は、N/Feモル比が0.06以上0.30以下である、請求項1または2に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
【請求項9】
Sm、Fe、Nを主成分とする粒子からなる粉体であって、Feに対するSmのモル比Sm/Feが0.09以上0.25以下、かつ当該粉体中のCa含有量が0.005質量%以下である組成を有し、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下であり、最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上である、Sm-Fe-N系磁性粉体。
【請求項10】
角形比σ/σが0.760以上である、請求項9に記載のSm-Fe-N系磁性粉体。
【請求項11】
ThZn17型結晶構造を有する、請求項9に記載のSm-Fe-N系磁性粉体。
【請求項12】
Feに対するNのモル比N/Feが0.06以上0.30以下である組成を有する、請求項9に記載のSm-Fe-N系磁性粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sm-Fe-N系磁性粉体の製造方法およびSm-Fe-N系磁性粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
SmFe17金属間化合物に窒素を導入した物質(代表的な組成式はSmFe17)は優れた硬磁性を呈する強磁性体であることが知られている。本明細書では、SmFe17の化学量論組成またはその周辺組成におけるSm-Fe系合金に窒素を導入した物質の粉体であって、強磁性体であるものを「Sm-Fe-N系磁性粉体」と呼ぶ。Sm-Fe-N系磁性粉体は、ボンド磁石の素材として有用である。
【0003】
Sm-Fe-N系磁性粉体の製造技術として、アトマイズ法、単ロール法などの凝固プロセスを利用する方法や、Caなどを還元剤に用いた還元拡散法を利用する方法が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、ガスアトマイズ法によりSmFe17合金の球状粒子を合成し、得られた粉体を管状炉で窒化処理して、SmFe17組成の合金粉末を得たことが記載されている。ガスアトマイズ法で得られた粒子の平均粒径は110μm(段落0012)あるいは80μm(段落0014)である。
【0005】
特許文献2には、ガス噴霧、ガス-水噴霧および水噴霧によるアトマイズ法で、Sm-Fe系あるいはSm-Fe-C系にSi等の元素を添加した組成の磁性粉を合成した例が記載されている。粒子径は80~110μm程度である(段落0019)。得られた粒子を窒化処理することによりSm-Fe-(C)-Si-N系の粉体が得られている。窒化後の磁性粉は、最大エネルギー積(BH)maxが6~13MGOe(48~103kJ/m)程度であるものが多く、最大でも18.2MGOe(145kJ/m)(表5)である。
【0006】
特許文献3には、単ロール法で得られた薄板状の急冷合金を750℃で熱処理したのち450℃で2時間窒化処理し、その後、粉砕する方法で、粒径106μm以下のSm-Fe-N系磁性粉体を得た例が示されている(実施例1)。その粉体の最大エネルギー積(BH)maxは102kJ/mである(表2)。
【0007】
特許文献4には、Caを用いた還元拡散法および窒化処理を利用してSm-Fe-N系などの磁性粉体を得るに際し、還元反応を2回に分けて行う工程を採用することにより、粉砕工程を一切用いないで平均粒子径5μm以下の粉体を得る技術が開示されている。第二還元工程を終えた粉末について、「水洗の後に酢酸等の弱酸を使用してカルシウムの分離を徹底する。」と記載されている。それでも実施例で得られた粉末には0.01wt%のCaが残存している(段落0034、0037、0047、0050、0060)。
【0008】
特許文献5には、Caを用いた還元拡散法で得られた粒子に、水素処理と解砕処理を施したのち窒化処理を施す方法を利用して、コアシェル構造のSm-Fe-N系磁性粉体を得る技術が開示されている。実施例で得られているSm-Fe-N系磁性粉体の粒子径はD50が2.8~9.1μmであり(段落0122、0131、0136、0139、0144、0151、0158、0165、0172)、残留磁化σは101~102Am/kg程度である(段落0123、0133)。粒子にはCaが例えば0.01質量%未満で含まれる(段落0114)。外層と内層からなるシェルの内層にはCaが含まれないとされるが、特許文献5でいう「Caを含有しない」とは、Ca含有量が1.0原子%未満であることを意味する(段落0043)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7-11307号公報
【特許文献2】特開2001-68315号公報
【特許文献3】特開2002-246212号公報
【特許文献4】特開平11-310807号公報
【特許文献5】特開2022-177699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、自動車モーターやセンサーの高性能化に対応すべく、Sm-Fe-N系磁性粉体を用いたボンド磁石には、磁気特性のより一層の向上が期待されている。特に、異方性ボンド磁石の特性向上には、最大エネルギー積(BH)maxができるだけ高い磁性粉体を適用することが有利となる。アトマイズ法、単ロール法などの急冷凝固プロセスで得られる凝固金属は微結晶からなる多結晶組織となるのが一般的である。そのような微細多結晶の凝固金属に由来する磁性粉体において、高い(BH)maxを実現することは容易でない。特許文献2、3には上述のようにSmを用いた磁性粉体の(BH)max値が示されているが、異方性ボンド磁石の特性改善に寄与するためには(BH)maxの更なる向上が望まれる。
【0011】
一方、Caなどを還元剤に用いた還元拡散法は、工程が複雑であり、アルカリ性排液が発生するなど環境に対する負荷も大きい。また、還元拡散法を利用したプロセスによって得られるSm-Fe-N系磁性粉体には、Caその他のアルカリ土類金属やアルカリ金属などの還元剤成分の残存は避けられない。磁性粉体中に残存するアルカリ土類金属やアルカリ金属は、その粉体を素材に用いてボンド磁石を作製する際に樹脂をゲル化させやすく、ボンド磁石の製造性を低下させる要因となりうる。
【0012】
本発明は、高い最大エネルギー積(BH)maxを呈し、かつ不純物が少ない、ボンド磁石の性能向上、製造性向上に有用なSm-Fe-N系磁性粉体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
Caの存在量が極めて少ないSm-Fe系合金の粉体を得るためには、ガスアトマイズ法の採用が有効である。本明細書では、ガスアトマイズ法によって合成された後に物理的あるいは化学的な処理(例えば外力付与、磁力付与、熱処理、表面処理など)を受けていない粒子で構成される粉体を「ガスアトマイズ粉」と呼ぶ。ガスアトマイズ粉の粒子は、急冷凝固によって形成されるので、非常に微細な結晶粒からなる多結晶粒子となる。多結晶粒子のままでは高い最大エネルギー積(BH)maxを得ることは困難である。また、発明者らの研究によると、微細結晶粒からなる多結晶粒子を機械的な粉砕により小粒子化した場合、き裂が伝播しやすい結晶粒界が多く存在するため粒界での破壊が優先的に進行し、小粒子化された個々の粒子は内部に結晶粒界を残した複数の結晶粒からなる粒子となりやすいことがわかった。すなわち、粉砕によって、微細結晶粒からなる粒子を単一の結晶粒からなる粒子に分断することは、非常に難しい。そこで発明者らは、ガスアトマイズ粉を原料に用いて単一の結晶粒からなる粒子が多く含まれる粉体を得ることができる有効な手段について、検討を進めた。その結果、Sm-Fe系合金のガスアトマイズ粉を高温で熱処理すると、微細結晶粒の成長が起こり、粒子の断面組織における円相当径での平均結晶粒径が例えば3~15μm程度といったサイズにまで、結晶粒の粗大化が可能であることを見出した。そして、そのように結晶粒が粗大化した粒子で構成されるSm-Fe系合金の粉体に対して機械的な粉砕を施したとき、個々の粒子は、結晶粒界での破壊(粒界破壊)に加えて、結晶粒内での破壊(粒内破壊)が生じることによって破断され、結果的に単一の結晶粒からなる粒子の割合が多い微細なSm-Fe系合金の粉体が得られることがわかった。また、その粉体を窒化させて得られたSm-Fe-N系磁性粉体では、最大エネルギー積(BH)maxが顕著に改善されることも確認された。本発明はこのような知見に基づく。
【0014】
上記目的は、以下の発明により達成される。
[1]ガスアトマイズ法による凝固過程で形成されたSm/Feモル比が0.09以上0.25以下であるSm-Fe系合金の粉体を、900℃以上1200℃以下の温度に加熱することにより、その粉体の粒子の結晶粒を粗大化させる熱処理工程と、
前記熱処理工程によって結晶粒が粗大化したSm-Fe系合金の粉体を粉砕することにより、その粉体の粒子を、結晶粒内破壊を含む破断により微細化する粉砕工程と、
前記粉砕工程によって微細化したSm-Fe系合金の粉体を、窒素化合物または窒素を含有する非酸化性ガス雰囲気中で500℃以下の温度範囲に加熱保持することにより、その粉体の粒子に窒素を導入する窒化工程と、
を有するSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[2]前記粉砕工程で粉砕に供するSm-Fe系合金の粉体は、前記熱処理工程後に、水素雰囲気中で加熱保持する水素処理が施されたものである、上記[1]に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[3]前記粉砕工程において、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下である粉体を得る、上記[1]または[2]に記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[4]前記粉砕工程において、Sm-Fe系合金の粉体を、ジェットミルを用いて粉砕する、上記[1]~[3]のいずれかに記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[5]前記窒化工程における非酸化性ガス雰囲気が窒素ガス雰囲気である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[6]前記Sm-Fe-N系磁性粉体は、最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[7]前記Sm-Fe-N系磁性粉体は、ThZn17型結晶構造を有するものである、上記[1]~[6]のいずれかに記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[8]前記Sm-Fe-N系磁性粉体は、N/Feモル比が0.06以上0.30以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のSm-Fe-N系磁性粉体の製造方法。
[9]Sm、Fe、Nを主成分とする粒子からなる粉体であって、Feに対するSmのモル比Sm/Feが0.09以上0.25以下、かつ当該粉体中のCa含有量が0.005質量%以下である組成を有し、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下であり、最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上である、Sm-Fe-N系磁性粉体。
[10]角形比σ/σが0.760以上である、上記[9]に記載のSm-Fe-N系磁性粉体。
[11]ThZn17型結晶構造を有する、上記[9]または[10]に記載のSm-Fe-N系磁性粉体。
[12]Feに対するNのモル比N/Feが0.06以上0.30以下である組成を有する、上記[9]~[11]のいずれかに記載のSm-Fe-N系磁性粉体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アルカリ廃液による環境負荷が生じないプロセスにより最大エネルギー積(BH)maxが高いSm-Fe-N系磁性粉体を得ることができる。このSm-Fe-N系磁性粉体はCaの存在量が極めて低いため、樹脂を用いてボンド磁石を作製する際にCaによる樹脂のゲル化促進の問題が回避され、例えば磁場配向の工程などにおいて生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】Sm-Fe系ガスアトマイズ粉を700℃で1分加熱して得られた粒子の断面についてのEBSDによるIPFマップを例示した図。
図2】Sm-Fe系ガスアトマイズ粉を1000℃で1分加熱して得られた粒子の断面についてのEBSDによるIPFマップを例示した図。
図3】実施例、比較例で使用したガスアトマイズ装置の構成を模式的に示した図。
図4】実施例、比較例で使用したガスアトマイズ装置の坩堝底部付近の断面構造を模式的に示した図。
図5】実施例2で得られたSm-Fe-N系磁性粉体の粒子断面についてのEBSDによるIPFマップを例示した図。
図6】比較例1で得られたSm-Fe-N系磁性粉体の粒子断面についてのEBSDによるIPFマップを例示した図。
図7】実施例1で得られたSm-Fe-N系磁性粉体についてのCo-Kα線によるX線回折パターンを例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従うSm-Fe-N系磁性粉体の代表的な製造プロセスは、「ガスアトマイズ→熱処理→水素処理→粉砕→窒化処理」である。
【0018】
[ガスアトマイズ]
本発明では、ガスアトマイズ法により凝固させたSm-Fe系合金の粉体を使用する。ガスアトマイズ法は、気相空間に吐出された金属溶湯にガスを高速で吹き付けることにより前記の金属溶湯を微細な液相粒子に分断し、その液相粒子を気相空間の飛行中に急冷凝固させる粉体形成手法である。ガスアトマイズに供する金属溶湯を生成させるための金属原料としては、予め溶製された組成が既知であるSm-Fe系母合金、金属Sm、金属Feなどが使用できる。SmFe17の化学量論的なSm/Feモル比は0.118である。金属溶湯の組成は、SmFe17の化学量論組成に比較的近い値、具体的にはSm/Feモル比が0.09以上0.25以下の範囲となるように調整することが望ましい。最終的に得られる磁性粉体の要求特性を阻害しない範囲でSm、Fe以外の金属元素の混入を許容することができるが、金属溶湯中のSmとFeの合計含有量は95.0質量%以上であることが好ましく、98.0質量%以上であることがより好ましい。窒素を除く不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で金属溶湯を生成させることが望ましい。
【0019】
所定温度に保持され十分に均一化された金属溶湯をノズルから気相空間に吐出させるとともに、吐出直後の金属溶湯に冷却ガスを勢いよく吹き付ける。これにより金属溶湯は微細な液相粒子となって気相空間を飛行し、凝固する。吐出時の溶湯温度は1400~1900℃の範囲内で設定すればよい。粒子サイズはアトマイズ条件によって制御できるが、必要に応じて篩などにより分級を行って粒度調整されたガスアトマイズ粉を後工程に供してもよい。後工程で平均粒子径が数μm以下の微細な粒子に粉砕することを考慮すると、ガスアトマイズ粉の粒子サイズは、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50で例えば70.0μm以下であることが好ましく、50.0μm以下であることがより好ましく、25.0μm以下であることが更に好ましい。ガスアトマイズ粉の粒子サイズの下限については特に制限されないが、上記D50が5.0μm未満の粒子を工業的に合成するには現時点で非常に困難を伴うことから、上記D50が5.0μm以上の範囲で調整すればよく、10.0μm以上の範囲に管理してもよい。
【0020】
ガスアトマイズ工程では、溶湯を吐出させるための加圧用ガス、金属溶湯に吹き付ける噴射ガス、および液相粒子が飛行する気相空間の雰囲気ガスは、いずれも窒素を除く不活性ガスとすることが望まれる。これらのガスに窒素が含まれるとガスアトマイズ粉が不完全に窒化され、後工程の窒化処理によって均一性の高い窒化を実現することが難しくなる。
【0021】
[熱処理]
Sm-Fe系合金のガスアトマイズ粉(以下、これを「Sm-Fe系ガスアトマイズ粉」と言うことがある。)に高温での熱処理を施すことによって、結晶粒の粗大化を図る。具体的には、900℃以上に加熱することによって、粒子の断面組織における円相当径での平均結晶粒径が例えば3~15μm程度といったサイズにまで、結晶粒を粗大化させることができる。この結晶粒の粗大化によって、後工程での粉砕において、単一の結晶粒からなる粒子の割合が多い微細なSm-Fe系合金の粉体を得やすくなる。結晶粒内破壊が生じ易くなる。930℃以上に加熱することがより好ましい。過度の昇温は不経済となるので、加熱温度は1200℃以下の範囲で設定することが好ましく1100℃以下、あるいは1000℃以下の範囲に管理してもよい。900℃以上1200℃以下の温度域での保持時間は例えば10秒以上10分以下とすることができ、30秒以上5分以下の範囲で設定してもよい。加熱雰囲気は、窒素を除く不活性ガス雰囲気、あるいは真空とすることが望ましい。
【0022】
図1および図2に、後述の実施例1と同様の方法で得たSm-Fe系ガスアトマイズ粉を、それぞれ700℃および1000℃で加熱して得られた粒子の断面についての、EBSD(電子線後方散乱回折法)によるIPFマップ(逆極点図結晶方位マップ)を例示する。いずれも加熱時の雰囲気はアルゴンガスであり、それぞれの温度での加熱保持時間は1分である。これらのIPFマップは、粉体粒子を埋め込んだ樹脂を研磨したのちイオンミリングによって調製した、粒子の断面が現れた試料表面について、EBSD測定により得られたIPFマップのカラー画像をモノクロ化して表示したものである。モノクロ化したIPFマップでは、個々の結晶粒が、結晶方位差に基づく輝度差として表されている。図1図2の対比から、高温に加熱することにより結晶粒の粗大化がより進行していることがわかる。
【0023】
Sm-Fe系ガスアトマイズ粉では、条件によってTbCu型結晶構造のSm-Fe系金属相が生成することも考えられる。TbCu型のSm-Fe系金属相はThZn17型に比べて窒化処理後の異方性磁界が小さく高保磁力を得にくいため、TbCu型のSm-Fe系金属相の存在量ができるだけ少ない状態であることが望ましい。上記温度域への昇温によってTbCu型の結晶相はThZn17型に変化するため、当該熱処理は組織の均質化にも有効である。
【0024】
[水素処理]
後工程での粉砕において、結晶粒内破壊を生じ易くするためには、粉砕の前に水素ガス雰囲気中で加熱する水素処理を施しておくことが有効である。水素処理によりSm-Fe系合金の結晶粒内に水素が侵入し、いわゆる水素脆化の現象により、粒内破壊が生じ易くなる。したがって、必要に応じて水素処理を施すことができる。水素処理の加熱温度は200℃以上600℃以下の範囲で設定することが好ましく、その温度域での保持時間は例えば30分以上600分以下の範囲で設定すればよい。
【0025】
[粉砕]
上記の熱処理によって結晶粒が粗大化したSm-Fe系合金の粉体に対して機械的な粉砕を施したとき、個々の粒子は、結晶粒界での破壊(粒界破壊)に加えて、結晶粒内での破壊(粒内破壊)が生じることによって破断する。このような「結晶粒内破壊を含む破断」によって粉体粒子を微細化したとき、単一の結晶粒からなる粒子の割合が多い微細なSm-Fe系合金の粉体を得ることができる。本発明に好適な粉砕手段として、例えば湿式ボールミルを挙げることができる。この場合、容器内に例えばわずかな気相空間が残る程度に多量の溶媒を投入することによって、結晶粒界で破断して生成した微細粒子が溶媒中に分散されやすくなるようにし、破断した粒子に対する外力の付与機会(過度の粉砕機会)を減少させることが効果的である。また、本発明に好適な別の粉砕手段として、ジェットミルを挙げることができる。ジェットミル粉砕は、最大エネルギー積(BH)maxの向上に有利である。
【0026】
結晶粒内破壊を含む破断によって粒子を分断する観点から、粉砕後の粒子径は、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が5.0μm以下となるように調整することが好ましく、3.0μm以下となるように調整することがより好ましい。過度に微細化を図ると、過剰な外力付与によって結晶格子歪が増加し、磁気特性に悪影響を及ぼす恐れがある。通常、上記粒子径D50が0.5μm以上となる範囲で粉砕を行うことが望ましく、1.0μm以上となる範囲で粉砕してもよい。
【0027】
なお、粉砕によって得られた粉体を分級し、粗大な粒子、あるいは必要に応じて過小な微細粒子を除外することによって粒度分布を適正化してもよい。
【0028】
[窒化処理]
次いで窒化処理を施し、Sm-Fe-N系磁性粉体を得る。窒化処理は、上記粉砕で微細化されたSm-Fe系合金の粉体を、窒素化合物または窒素を含有する非酸化性ガス雰囲気中で加熱保持することにより行うことができる。加熱温度が高すぎると、SmFe17結晶に窒素原子が侵入したSmFe17を基本とする構造が不安定となるため、窒化が困難になる。窒化処理の加熱温度は500℃以下とすることが望ましい。あまり低温では窒化の進行に長時間を要し、粒子の内部まで均一に窒素原子を拡散させるうえで不利となる。加熱温度は300℃以上とすることが効果的である。窒化処理の雰囲気ガスとしては、アンモニア(NH)と水素(H)の混合ガスからなる還元性雰囲気とすることが実用的である。例えばアンモニアと水素の混合比NH:Hを10:90~60:40の範囲とすることができる。その他、窒化処理に用いる雰囲気ガスとしては、水素とアンモニアと窒素(N)の混合ガス、水素とアンモニアとアルゴン(Ar)の混合ガス、アンモニアのみ、アンモニアと窒素の混合ガス、アンモニアとアルゴンの混合ガス、窒素ガス、窒素と水素の混合ガス、を挙げることができ、これらを使用して非酸化性雰囲気とする。例えば窒素ガスからなる非酸化性雰囲気(すなわち「窒素ガス雰囲気」)は、飽和磁化σおよび最大エネルギー積(BH)maxの向上に有効である。窒化処理の最適時間は、粉体の平均粒子径、雰囲気ガスの組成、温度によって多少変動するが、通常、15~240分の範囲で最適時間を見出すことができる。
【0029】
窒素原子はThZn17型結晶構造であるSmFe17結晶格子の侵入型の位置に入ると考えられ、窒素が導入された後もThZn17型結晶構造は維持される。SmFe17に窒素原子が導入されると結晶磁気異方性が面内型から一軸型に変化するとともにキューリー点が上昇し、実用的な磁石材料とすることができる。磁気特性に優れるSm-Fe-N系磁性粉体の代表的組成はSmFe17である。Feに対するSmのモル比を意味するSm/Feモル比およびFeに対するNのモル比を意味するN/Feモル比がSmFe17の化学量論組成に近いほど磁気特性の点で有利であると考えられるが、その周辺の組成域においても硬磁性を呈する。SmFe17の化学量論的なSm/Feモル比は0.118、N/Feモル比は0.176である。本発明では、ボンド磁石の素材として有効な保磁力が、常温を含む温度域で安定して得られることを考慮して、Sm/Feモル比が0.09以上0.25以下の範囲にあることが好ましい。Sm/Feモル比はガスアトマイズ粉の組成を反映したものとなる。また、Sm-Fe系合金の粉体に上述の条件で窒化処理を施すと、SmFe17結晶に窒素が導入され、N/Feモル比が0.06以上0.30以下の範囲にあるSm-Fe-N系磁性粉体が得られ、優れた磁気特性を呈するものとなる。なお、上述の粉砕前に窒化処理を行ってもSmFe17に近い組成のSm-Fe-N系磁性粉体を得ることはできるが、より均質な窒素分布を有するSm-Fe-N系磁性粉体を得る観点から、本発明では粉砕により微細化されたSm-Fe系合金の粉体に対して窒化処理を施す。窒化処理後に分級を行って、用途に応じた適正な粒度分布に調整してもよい。
【0030】
以上のようにして、Sm、Fe、Nを主成分とする粒子からなる粉体であって、Feに対するSmのモル比Sm/Feが0.09以上0.25以下、かつ当該粉体中のCa含有量が0.005質量%以下である組成を有し、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.5μm以上5.0μm以下であり、最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上である、Sm-Fe-N系磁性粉体を得ることができる。
【0031】
「Sm、Fe、Nを主成分とする粒子」とは、粒子に含有される元素を質量割合での含有量が多い順に並べた序列において、上位3番目までを、Sm、Fe、Nの3元素が占める粒子をいう。Ca含有量が0.005質量%以下であれば、樹脂を用いてボンド磁石を作製する際の一般的なプロセスにおいて、Caによる樹脂のゲル化促進の問題はほぼ解消されると考えられる。Ca含有量は0.002質量%以下であることがより好ましい。上述した製造工程に従って不純物元素の混入を厳しく管理すれば、Ca含有量が0.001質量%未満であるSm-Fe-N系磁性粉体を得ることができる。なお、「Ca含有量が0.005質量%以下」、「Ca含有量が0.002質量%以下」、あるいは「Ca含有量が0.001質量%未満」という組成範囲には、Ca含有量が0質量%である場合が含まれる。
【0032】
最大エネルギー積(BH)maxが150kJ/m以上であるSm-Fe-N系磁性粉体は、優れた磁気特性が要求される異方性ボンド磁石の素材として極めて有用である。上述した製造工程において製造条件を調整することによって(BH)maxが200kJ/m以上であるSm-Fe-N系磁性粉体を得ることもできる。(BH)maxの上限は特に制限されないが、通常、350kJ/m以下の範囲で調整すればよい。飽和磁化σは140Am/kg以上であることが好ましく、残留磁化σは115Am/kg以上であることが好ましい。角形比σ/σは0.760以上であることが、高い(BH)maxを実現する上で効果的であり、0.790以上であることがより効果的である。保磁力Hは700kA/m以上であることが好ましい。
【実施例0033】
以下の各例において、元素分析、粉体の粒度分布測定、粉体の磁気測定、X線回折測定は、以下の方法によって行った。
【0034】
(元素分析)
アルゴン(Ar)ガスで満たされたグローブボックス内で分析試料を塩酸で加熱溶解、希釈して、分析用の試料溶液を作製した。この溶液をICP発光分光分析装置(アジレントテクノロジー製、Agilent720)により分析した。
【0035】
(粉体の粒度分布測定)
粉体の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec社製、Helos/Rodos)により測定した。得られたレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布において、累積50%粒子径D50を求めた。
【0036】
(粉体の磁気測定)
粉体の磁気特性は、VSM(カンタムデザイン社製、PPMS DynaCool)により以下の方法で測定した。試料粉体10mgと低分子量ポリエチレン粉体(三井化学株式会社製、ハイワックス100P)10mgをアルミニウム製の専用セルに充填し、1.59MA/mの磁場中にて170℃に加熱してポリエチレンを溶かして磁性粒子を配向させた後、室温まで冷却して、飽和磁化σ、残留磁化σ、保磁力H、最大エネルギー積(BH)maxを測定した。測定条件は、最大印加磁場7.16MA/m、掃引速度12kA/m・秒、時定数1秒、振幅2mm、周波数40kHzとした。また、上記の測定結果から、角形比σ/σを算出した。
【0037】
(X線回折測定)
粉体試料について、Co-Kα線を用いて、管電圧45kV、管電流40mAにてX線回折パターンを測定した。
【0038】
[実施例1]
(ガスアトマイズ法によるSm-Fe系粉体の合成)
図3に、本例で使用したガスアトマイズ装置の構成を模式的に示す。チャンバー内に、真空排気装置10により真空引きが可能な上下2つの独立した空間があり、それらの空間は、雰囲気ガス供給源11a、11bからガスを導入することにより、それぞれ所定のガス雰囲気を有する気相空間とすることができる。上部の空間には坩堝1があり、その中で高周波コイル4による誘導加熱によって原料を溶融させ、金属溶湯5を形成させる。坩堝1の底部には、金属溶湯5を下部の気相空間へ吐出させるための溶湯吐出ノズル部材2が取り付けられている。金属溶湯5を吐出させるまで、ストッパー3を溶湯吐出ノズル部材2に押し当てることにより溶湯流路を塞いでおく。金属溶湯5が十分に均一化され、所定温度の溶湯が得られたのち、溶湯吐出用ガス供給装置13から坩堝1内の溶湯の湯面に所定圧力のガスを供給した状態で、ストッパー3を引き上げて、金属溶湯5を溶湯吐出ノズル部材2の先端から下部の気相空間へ吐出する。下部の気相空間には、吐出された金属溶湯5にガスを吹き付けるためのガス噴射ノズル6が装備されている。吐出開始前に、ガス供給装置12からガス噴射ノズル6へガスの送給を開始し、ガス噴射ノズル6からガスを高い圧力で噴射させておく。この噴射ガスの強い噴流を金属溶湯5に当てることにより、金属溶湯5の微細粒子を形成させるとともに、その微細粒子を急冷凝固させる。凝固した金属粒子7は下部の気相空間の底部に堆積する。
【0039】
図4に、ガスアトマイズ装置の坩堝底部付近の断面構造の一例を模式的に示す。坩堝1の底部に取り付けられた溶湯吐出ノズル部材2は、ノズル先端の開口部である吐出口21と、ストッパー当接面22を有する。ストッパー3は上下方向に動く可動式であり、溶湯吐出ノズル部材2のストッパー当接面22と当接することによりノズルの流路を塞ぎ、溶湯吐出時にストッパー当接面22から離間することによりノズルの流路を開く機能を有する。本例では、坩堝1の全体を窒化ホウ素(BN)、溶湯吐出ノズル部材2の全体を窒化ホウ素(BN)、ストッパー3の少なくとも金属溶湯5に浸漬させる部分の全体を酸化イットリウム(Y)でそれぞれ構成した。溶湯吐出ノズル部材2のノズル内径は3.0mmとした。
【0040】
原料として、予め溶製したSm-Fe合金を使用した。元素分析の結果、この原料合金のSm/Feモル比は0.16であり、原料中のCa含有量は0.002質量%であった。この原料996.7gを坩堝に入れ、Ar雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解させた。原料合金が完全に溶融状態となった後、加熱開始からの経過時間が27分の時点で、1637℃の金属溶湯の全量をノズルから下部の気相空間に吐出させた。溶湯吐出用ガスの最大供給圧力は、雰囲気ガス圧力との差圧において、65kPaとした。噴射ガスにはArを使用した。また、下部の気相空間もAr雰囲気とした。生成した粉体を回収し、窒素雰囲気下のグローブボックス内で目開き16μmの篩により過小な粒子を除去した。このようにしてガスアトマイズ粉を得た。
【0041】
ガスアトマイズ粉の元素分析を行った結果、Sm/Feモル比は0.16であり、原料合金と同等であった。Ca含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。また、ガスアトマイズ粉のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は22.8μmであった。
得られたSm-Fe系ガスアトマイズ粉を使用して、以下の工程を実施した。
【0042】
(熱処理)
熱処理炉として、アルゴン(Ar)ガスを満たしたグローブボックスに連結された電気加熱方式の管状炉を用いた。上記のSm-Fe系ガスアトマイズ粉を、アルゴンガスを満たした密閉容器に入れて前記グローブボックス内へ移送し、大気に曝すことなく管状炉内へ装入した。管状炉にアルゴンガスを流しながら室温から950℃まで150℃/分の速度で昇温した後、950℃で1分保持し、その後、アルゴンガスを流しながら50℃以下まで冷却して熱処理粉を得た。
【0043】
(水素処理)
得られた熱処理粉を別の管状炉内に移送し、水素(H)ガスを流しながら300℃まで10℃/分の速度で昇温した後、300℃で180分保持した。次に、水素ガスを流したまま50℃以下まで冷却した後、炉内をアルゴンガスで置換した。このようにして水素処理粉を得た。
【0044】
(粉砕)
得られた水素処理粉を、アルゴンガスで満たされた気密容器に入れて、管状炉からアルゴンガスで満たされた別のグローブボックス内へ移送した。この移送先のグローブボックス内で粉砕を行った。ミルポットとして容量50mLのスクリューキャップ付きガラス瓶を使用し、湿式ボールミルを模した粉砕実験を以下のようにして行った。上記のガラス瓶に、水素処理粉1.0g、直径2.5mmのステンレス鋼製ボール75g、および溶媒としてアセトニトリル38mLを入れた。回転式混合機(アズワン社製ミックスローターバリアブル、ローラー3本タイプ、型番VMR-3R)を用い、水素処理粉が入っている前記のガラス瓶を2本のローラー間に設置し、回転数110rpm、運転時間8時間として粉砕処理を行った。粉砕処理後にガラス瓶中の内容物を篩に通すことによりステンレス鋼製ボールを除去し、次いで篩を通過したスラリーを静置したのち、上澄み液を捨て、残ったスラリーを真空乾燥させることによって、粉砕後の粉体を得た。以上の粉砕から乾燥までの操作は、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で実施した。
【0045】
(窒化処理)
上記のようにして得られた粉砕後の粉体を、アルゴンガス雰囲気下で電気加熱方式の管状炉内に移送したのち、管状炉内にアンモニア(NH)ガス35体積%、水素(H)ガス65体積%組成の混合ガスを流し、管状炉内のガスを置換した。その後、前記の混合ガスを流しながら、5℃/分の速度で430℃まで昇温し、430℃で30分保持して窒化処理を行った。次に、管状炉に流すガスを水素(H)ガスに変更して430℃でさらに120分保持し、その後、管状炉に流すガスをアルゴンガスに変更して430℃で90分保持した。その後、加熱を停止してアルゴンガスを流しながら室温付近の温度まで冷却し、窒化処理粉を得た。
【0046】
次に、得られた窒化処理粉を、管状炉からアルゴンガスで満たされたグローブボックス内に移送したのち、容積20mLのスクリューキャップ付きガラス瓶に入れ、溶媒としてヘプタン15mLを加えた。次に、このガラス瓶を超音波分散機(エスエムテー株式会社製、UH-150型)に入れ、出力条件20kHz、0.3秒発信、0.7秒休止のサイクルで、100分間運転した。次いで、ガラス瓶内の上澄みを除去し、残ったヘプタンを真空乾燥により除去することにより、実施例1に係るSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0047】
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.46μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは143Am/kg、残留磁化σは117Am/kg、角形比σ/σは0.818、保磁力Hは716kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは162kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
以上の結果を製造条件と併せて表1に示してある(以下の各例についても同様)。
【0048】
[実施例2]
実施例1の粉砕における回転式混合機の運転時間を8時間から10時間に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。ここで、粉砕に供する水素処理粉は、実施例1で得られたものを分取して使用した(以下の実施例3、4において同様)。
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.39μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは155Am/kg、残留磁化σは131Am/kg、角形比σ/σは0.845、保磁力Hは780kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは210kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0049】
[実施例3]
実施例1の粉砕における回転式混合機の運転時間を8時間から12時間に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.37μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは146Am/kg、残留磁化σは126Am/kg、角形比σ/σは0.863、保磁力Hは812kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは209kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0050】
[実施例4]
実施例1の粉砕における回転式混合機の運転時間を8時間から14時間に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.21μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは141Am/kg、残留磁化σは119Am/kg、角形比σ/σは0.844、保磁力Hは875kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは189kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0051】
[実施例5]
実施例1の熱処理における保持時間を1分から120分に変更したこと、粉砕における回転式混合機の運転時間を8時間から2時間に変更したこと、および窒化処理における保持温度を420℃としたことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.77μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは138Am/kg、残留磁化σは120Am/kg、角形比σ/σは0.870、保磁力Hは770kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは211kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0052】
また、本実施例で得られた熱処理粉のEBSD観察において、結晶粒の大きさは3μm以上であり、粉砕において結晶粒内破壊を含む破断が起こっていることが確認された(以下の実施例6~10についても同様)。
【0053】
[実施例6]
実施例1の熱処理における保持時間を1分から120分に変更したこと、粉砕において以下に示すジェットミルでの粉砕を行ったこと、および窒化処理において以下に示す窒素ガス置換を行う条件を採用したことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0054】
(粉砕)
ジェットミル装置として、サンレックス工業株式会社製、ナノグラインディングミル、型式NJ-50を使用した。運転条件は粉砕圧1MPaとし、1パスで処理を行った。
(窒化処理)
上記のようにして得られた粉砕後の粉体を、アルゴンガス雰囲気下で電気加熱方式の管状炉内に移送したのち、管状炉内に窒素ガス(100体積%N)を流し、管状炉内のガスを置換した。その後、前記の窒素ガスを流しながら、5℃/分の速度で460℃まで昇温し、460℃で360分保持して窒化処理を行った。
その後の処理は実施例1と同様にしてSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0055】
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.77μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは147Am/kg、残留磁化σは133Am/kg、角形比σ/σは0.905、保磁力Hは768kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは251kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0056】
[実施例7]
ガスアトマイズ法によるSm-Fe系粉体の合成において、Sm/Feモル比が0.14であるSm-Fe合金を原料に使用してガスアトマイズ粉を得た。得られたガスアトマイズ粉の元素分析を行った結果、Sm/Feモル比は0.14であり、原料合金と同等であった。Ca含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。また、ガスアトマイズ粉のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は25.9μmであった。
このようにして得られたSm-Fe系ガスアトマイズ粉を使用したこと、粉砕における回転式混合機の運転時間を4時間としたこと、および窒化処理において保持温度を420℃としたことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0057】
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.41μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは153Am/kg、残留磁化σは129Am/kg、角形比σ/σは0.843、保磁力Hは724kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは219kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0058】
[実施例8]
実施例7の粉砕における回転式混合機の運転時間を4時間から6時間に変更したことを除き、実施例7と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.17μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは153Am/kg、残留磁化σは121Am/kg、角形比σ/σは0.791、保磁力Hは817kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは188kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0059】
[実施例9]
実施例1において、熱処理の温度を950℃から900℃、時間を1分間から10分間に変更したこと、水素処理を実施しなかったこと、粉砕において以下に示すように振動ミルを使用したこと、および窒化処理において保持温度を430℃から400℃に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0060】
(粉砕)
窒素ガスで満たされたグローブボックス内において、振動ミル(ユーラステクノ株式会社製、YAMP-2SND)を用い、容積1.2LのステンレスポットにSm-Fe-N系粗粉体200gと直径1.6mmのクロム鋼製ボール4500gとエタノール2.1gを投入して密封した後、振幅±2.5mm、振動数29.1Hzの条件で2.8時間の粉砕処理を実施した。粉砕後の試料を窒素ガスで満たされたグローブボックス内でボールと分離した。得られた粉体を上記の窒化処理に供し、Sm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0061】
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.61μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは140Am/kg、残留磁化σは117Am/kg、角形比σ/σは0.836、保磁力Hは692kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは181kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0062】
[実施例10]
実施例9において、窒化処理を以下のように窒素ガス雰囲気で行ったことを除き、実施例9と同様の方法でSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0063】
(窒化処理)
粉砕後の粉体を、アルゴンガス雰囲気下で電気加熱方式の管状炉内に移送したのち、管状炉内に窒素ガス(100体積%N)を流し、管状炉内のガスを置換した。その後、前記の窒素ガスを流しながら、5℃/分の速度で460℃まで昇温し、460℃で60分保持して窒化処理を行った。
その後の処理は実施例1と同様である。
【0064】
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.64μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは142Am/kg、残留磁化σは119Am/kg、角形比σ/σは0.838、保磁力Hは764kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは191kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0065】
[比較例1]
実施例1で得られたSm-Fe系ガスアトマイズ粉を使用して、以下の工程を実施した。
【0066】
(熱処理)
加熱条件を、管状炉にアルゴンガスを流しながら室温から850℃まで150℃/分の速度で昇温した後、850℃で1分間保持し、その後、アルゴンガスを流しながら50℃以下まで冷却する条件としたことを除き、実施例1と同様の方法で熱処理を行い、熱処理粉を得た。
【0067】
(窒化処理)
熱処理を終えて50℃以下になったことが確認されたのち、管状炉内に流すフローガスを、アルゴンガスから、アンモニア(NH)ガス35体積%、水素(H)ガス65体積%組成の混合ガスに変更し、管状炉内のガスを置換した。その後、前記の混合ガスを流しながら、5℃/分の速度で420℃まで昇温し、420℃で60分保持して窒化処理を行った。次に、管状炉に流すガスを水素(H)ガスに変更して420℃でさらに60分保持し、その後、管状炉に流すガスをアルゴンガスに変更して420℃で60分保持した。その後、加熱を停止してアルゴンガスを流しながら室温付近の温度まで冷却し、窒化処理粉を得た。冷却後の粉体を管状炉からアルゴンガスで満たされたグローブボックス内に移送した。
窒化処理粉の元素分析を行った結果、Sm/Feモル比は0.15、N/Feモル比は0.19であった。
【0068】
(粉砕)
得られた窒化処理粉を、アルゴンガスで満たされた気密容器に入れて、管状炉からアルゴンガスで満たされた別のグローブボックス内へ移送した。この移送先のグローブボックス内で粉砕を行った。粉砕の方法は、実施例1の水素処理粉の粉砕手法において、粉砕対象物を上記の窒化処理粉とし、回転式混合機の運転時間を8時間から22時間に変更したことを除き、実施例1と同様の方法とした。
このようにして比較例1に係るSm-Fe-N系磁性粉体を得た。
【0069】
得られたSm-Fe-N系磁性粉体のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50は1.53μmであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体の飽和磁化σは146Am/kg、残留磁化σは109Am/kg、角形比σ/σは0.747、保磁力Hは629kA/m、最大エネルギー積(BH)maxは95kJ/mであった。また、このSm-Fe-N系磁性粉体のCa含有量は0.001%未満(測定限界以下)であった。
【0070】
【表1】
【0071】
各実施例では、高い最大エネルギー積(BH)maxを呈するSm-Fe-N系磁性粉体が得られた。これは、熱処理によって粗大化させた結晶粒を粉砕によって粒界破壊および粒内破壊を生じさせることで、最終的に単一の結晶粒からなる粒子の割合が多いSm-Fe-N系磁性粉体が得られたことによると考えられる。
これに対し、比較例1で得られたSm-Fe-N系磁性粉体は、最大エネルギー積(BH)maxが上記実施例と比べ低かった。これは、粉砕によって粒界破壊による粒子の微細化が進行するが結晶粒が小さいため完全に単分散化できず、結果的に複数の結晶粒からなる粒子を多く含むSm-Fe-N系磁性粉体が得られたことによると考えられる。
【0072】
図5に、実施例2で得られたSm-Fe-N系磁性粉体の粒子についてのEBSD(電子線後方散乱回折法)によるIPFマップ(逆極点図結晶方位マップ)を例示する。また、図6に、比較例1で得られたSm-Fe-N系磁性粉体の粒子についてのEBSD(電子線後方散乱回折法)によるIPFマップ(逆極点図結晶方位マップ)を例示する。これらのIPFマップは、粉体粒子を埋め込んだ樹脂を研磨したのちイオンミリングによって調製した、粒子の断面が現れた試料表面について、EBSD測定により得られたIPFマップのカラー画像をモノクロ化して表示したものである。モノクロ化したIPFマップでは、個々の結晶粒が、結晶方位差に基づく輝度差として表されている。本発明に従うSm-Fe-N系磁性粉体(図5)は、比較例のSm-Fe-N系磁性粉体(図6)と比べ、単一の結晶粒からなる粒子の割合が多い。
【0073】
図7に、実施例1で得られたSm-Fe-N系磁性粉体についてのCo-Kα線によるX線回折パターンを例示する。図中にはThZn17型結晶構造を有するSmFe17についての理論上のピーク位置およびピーク高さを付記してある。実施例1で得られたSm-Fe-N系磁性粉体はThZn17型結晶構造を有するものであることがわかる。実施例2~4で得られたSm-Fe-N系磁性粉体についても同様に、ThZn17型結晶構造を有するものであることが確認された。
【0074】
実施例9および10の結果から、窒化処理の非酸化性ガス雰囲気をアンモニアガスと水素ガスの混合ガス雰囲気から窒素ガス雰囲気に変更することによって飽和磁化および最大エネルギー積が向上したことがわかる。また、実施例6においては特に高い最大エネルギー積が得られており、ジェットミル粉砕が最大エネルギー積の向上に有利であることがわかる。
【符号の説明】
【0075】
1 坩堝
2 溶湯吐出ノズル部材
3 ストッパー
4 高周波コイル
5 金属溶湯
6 ガス噴射ノズル
7 凝固した金属粒子
10 真空排気装置
11a、11b 雰囲気ガス供給源
12 噴射用ガス供給装置
13 溶湯吐出用ガス供給装置
21 吐出口
22 ストッパー当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7