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特開2024-148214マウントフランジの交換要否判定方法及び切削装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148214
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】マウントフランジの交換要否判定方法及び切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/10 20060101AFI20241010BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20241010BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20241010BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B27/06 M
B24B45/00 Z
B24B7/00 Z
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061137
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 悟志
(72)【発明者】
【氏名】安田 信哉
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA11
3C034CB18
3C034CB20
3C034DD10
3C034DD18
3C043CC02
3C043DD06
3C158AA03
3C158AC02
3C158BA01
3C158BA07
3C158BB02
3C158BB06
3C158BB08
3C158CB06
3C158DA17
5F063AA23
5F063AA29
5F063DD02
5F063DD03
5F063DD17
5F063DD22
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE31
5F063FF04
5F063FF11
(57)【要約】
【課題】マウントフランジの交換の要否を判定する際の所要時間を短くするとともにマウントフランジの適時な交換を可能にするマウントフランジの交換要否判定方法と、この方法を実施可能な切削装置と、を提供する。
【解決手段】研削砥石とマウントフランジとの接触が検知されるまでスピンドル及びマウントフランジを移動させることによって、マウントフランジの端面の位置と凹部の底面の位置とを特定する。この場合、オペレータが手作業で測定することなく、マウントフランジの端面の位置と凹部の底面の位置との間隔を把握できる。その結果、マウントフランジの交換の要否を判定する際の所要時間を短くするとともにマウントフランジの適時な交換が可能になる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に取り付けられ、かつ、切削ブレードが装着される際に該切削ブレードと接触する円環状の端面と該端面の内側に位置する凹部の底面とを有する導電性のマウントフランジの交換の要否を、該切削ブレードとの接触に起因して粗くなった該端面を平坦化する研削面を含む導電性の研削砥石と、保持テーブルによって保持される支持基台と、を有する整形工具を利用して判定するマウントフランジの交換要否判定方法であって、
該支持基台を該保持テーブルによって保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該研削面と該端面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該端面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって、該端面の該所定の方向における位置を特定する第1特定ステップと、
該保持ステップの後に、該研削面と該底面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該底面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって、該底面の該所定の方向における位置を特定する第2特定ステップと、
該第1特定ステップ及び該第2特定ステップの後に、該端面の該所定の方向における位置と該底面の該所定の方向における位置との間隔が予め設定された閾値を下回った場合に、該マウントフランジの交換が必要であると判定する判定ステップと、
を備えるマウントフランジの交換要否判定方法。
【請求項2】
切削ブレードによって被加工物を切削するための切削装置であって、
所定の方向に沿って延在し、かつ、該切削ブレードが装着される際に該切削ブレードと接触する円環状の端面と該端面の内側に位置する凹部の底面とを有する導電性のマウントフランジが先端部に取り付けられるスピンドルと、
該被加工物、又は、該切削ブレードとの接触に起因して粗くなった該端面を平坦化する研削面を含む導電性の研削砥石を有する整形工具に含まれる支持基台を保持する保持テーブルと、
該マウントフランジの交換の要否を判定するコントローラと、を備え、
該コントローラは、
閾値を記憶するメモリと、
該支持基台が該保持テーブルによって保持された状態でそれぞれが特定される該端面の該所定の方向における位置と該底面の該所定の方向における位置との間隔が該閾値を下回った場合に、該マウントフランジの交換が必要であると判定するプロセッサと、を有し、
該端面の該所定の方向における位置は、該研削面と該端面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該端面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって特定され、
該底面の該所定の方向における位置は、該研削面と該底面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該底面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって特定される切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に取り付けられ、かつ、切削ブレードが装着されるマウントフランジの交換の要否を判定するマウントフランジの交換要否判定方法と、切削ブレードによって被加工物を切削するための切削装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このチップは、例えば、複数のデバイスが形成されているウェーハ等の被加工物を複数のデバイスの境界に沿って分割することで製造される。
【0003】
被加工物は、例えば、被加工物を保持する保持テーブルと、その先端部に取り付けられるマウントフランジを介して切削ブレードが装着されるスピンドルと、を備える切削装置において分割される。具体的には、この切削装置においては、保持テーブルによって保持された被加工物にスピンドルとともに回転する切削ブレードを切り込ませることによって被加工物が分割される。
【0004】
このような被加工物の分割が繰り返されると、マウントフランジのうち切削ブレードと接触する円環状の端面が切削ブレードとの接触に起因して粗くなることがある。そして、マウントフランジの端面が粗くなると、被加工物を分割中に切削ブレードが揺れて、被加工物の加工品質が悪化するおそれがある。
【0005】
そのため、切削装置においては、適時に、研削砥石を利用してマウントフランジの端面が平坦化されることがある(例えば、特許文献1及び2参照)。これにより、切削装置において分割される被加工物の加工品質の悪化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-11299号公報
【特許文献2】特開2017-221994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
研削砥石を利用したマウントフランジの端面の平坦化が繰り返されると、端面が後退して、マウントフランジを介してスピンドルの先端部に切削ブレードを装着することが困難になるおそれがある。そのため、切削装置においては、スピンドルの先端部に取り付けられるマウントフランジが交換されることがある。
【0008】
例えば、マウントフランジの端面と端面の内側に位置する凹部の底面との間隔をオペレータが手作業で測定し、この間隔が所定の長さ未満になった場合にマウントフランジが交換されることがある。しかしながら、このような作業の所要時間は長く、また、オペレータの練度が低い場合にはマウントフランジが適時に交換されないおそれがある。
【0009】
この点に鑑み、本発明の目的は、マウントフランジの交換の要否を判定する際の所要時間を短くするとともにマウントフランジの適時な交換を可能にするマウントフランジの交換要否判定方法と、この方法を実施可能な切削装置と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に取り付けられ、かつ、切削ブレードが装着される際に該切削ブレードと接触する円環状の端面と該端面の内側に位置する凹部の底面とを有する導電性のマウントフランジの交換の要否を、該切削ブレードとの接触に起因して粗くなった該端面を平坦化する研削面を含む導電性の研削砥石と、保持テーブルによって保持される支持基台と、を有する整形工具を利用して判定するマウントフランジの交換要否判定方法であって、該支持基台を該保持テーブルによって保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該研削面と該端面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該端面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって、該端面の該所定の方向における位置を特定する第1特定ステップと、該保持ステップの後に、該研削面と該底面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該底面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって、該底面の該所定の方向における位置を特定する第2特定ステップと、該第1特定ステップ及び該第2特定ステップの後に、該端面の該所定の方向における位置と該底面の該所定の方向における位置との間隔が予め設定された閾値を下回った場合に、該マウントフランジの交換が必要であると判定する判定ステップと、を備えるマウントフランジの交換要否判定方法が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、切削ブレードによって被加工物を切削するための切削装置であって、所定の方向に沿って延在し、かつ、該切削ブレードが装着される際に該切削ブレードと接触する円環状の端面と該端面の内側に位置する凹部の底面とを有する導電性のマウントフランジが先端部に取り付けられるスピンドルと、該被加工物、又は、該切削ブレードとの接触に起因して粗くなった該端面を平坦化する研削面を含む導電性の研削砥石を有する整形工具に含まれる支持基台を保持する保持テーブルと、該マウントフランジの交換の要否を判定するコントローラと、を備え、該コントローラは、閾値を記憶するメモリと、該支持基台が該保持テーブルによって保持された状態でそれぞれが特定される該端面の該所定の方向における位置と該底面の該所定の方向における位置との間隔が該閾値を下回った場合に、該マウントフランジの交換が必要であると判定するプロセッサと、を有し、該端面の該所定の方向における位置は、該研削面と該端面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該端面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって特定され、該底面の該所定の方向における位置は、該研削面と該底面とが該所定の方向において離隔した状態から該研削面と該底面との接触が検知されるまで該スピンドル及び該マウントフランジを該所定の方向に沿って移動させることによって特定される切削装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、研削砥石とマウントフランジとの接触が検知されるまでスピンドル及びマウントフランジを移動させることによって、マウントフランジの端面の位置と凹部の底面の位置とが特定される。
【0013】
この場合、オペレータが手作業で測定することなく、マウントフランジの端面の位置と凹部の底面の位置との間隔を把握できる。その結果、本発明においては、マウントフランジの交換の要否を判定する際の所要時間を短くするとともにマウントフランジの適時な交換が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、整形工具の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、切削ユニットのうちスピンドルハウジングから露出した構成要素を模式的に示す分解斜視図である。
図4図4は、整形工具の研削砥石とマウントフランジとの接触を検知するための構成要素を模式的に示す回路図である。
図5図5は、コントローラの一例を模式的に示すブロック図である。
図6図6は、マウントフランジの交換要否判定方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図1に示されるX軸方向及びY軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)である。
【0016】
図1に示される切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する窪み4aが形成されている。そして、窪み4aの内側には、平板状のテーブルカバー6と、テーブルカバー6の移動に伴って伸縮する蛇腹状の防塵防滴カバー8と、が設けられている。
【0017】
また、テーブルカバー6の上方には、保持テーブル10が設けられている。この保持テーブル10は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなる導電性の枠体10aを有する。また、枠体10aは、円盤状の底壁と底壁の外周領域から立設する円筒状の側壁とを含む。
【0018】
すなわち、枠体10aの側壁の内側には、凹部が存在する。そして、この凹部には、例えば、多孔質セラミックスからなり、かつ、枠体10aの側壁の内径と概ね等しい直径を有する円盤状のポーラス板10bが固定されている。さらに、ポーラス板10bは、枠体10aの底壁に形成されている貫通孔等を介して、窪み4aの内側に設けられているエジェクタ等の吸引源(不図示)と連通する。
【0019】
また、保持テーブル10はZ軸方向と直交する上面を有し、この上面はチップの製造に利用される被加工物、又は、後述するマウントフランジの端面を平坦化するための整形工具を保持するための保持面として機能する。
【0020】
図2は、保持テーブル10によって保持される整形工具の一例を模式的に示す斜視図である。図2に示される整形工具12は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなる導電性の支持基台14を有する。
【0021】
この支持基台14は、互いに概ね平行な円状の上面14a及び円状の下面14bと、この上面14aの中央に設けられている直方体状の凸部14cと、を含む。また、上面14a及び下面14bのそれぞれは、その直径がポーラス板10bの側壁の内径よりも大きく、かつ、この側壁の外径よりも小さい。
【0022】
さらに、凸部14cの一側面には、導電性の研削砥石15が固定されている。この研削砥石15は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなる直方体状のコア(台金)と、このコアの表面に設けられている砥層と、を含む。
【0023】
また、この砥層は、ニッケルめっき等からなる導電性の結合剤と、この結合剤によって固定されたダイヤモンド等の砥粒と、を含む。そして、この研削砥石15においては、その先端面、すなわち、凸部14cから最も遠くに位置する面が後述するマウントフランジの端面を平坦化するための研削面として機能する。
【0024】
そして、図1に示される保持テーブル10の保持面の中心と支持基台14の下面14bの中心とを一致させるように整形工具12を保持テーブル10に置いた状態でポーラス板10bと連通する吸引源を動作させると、支持基台14の下面14b側に吸引力が作用する。これにより、整形工具12が保持テーブル10によって保持される。
【0025】
また、保持テーブル10は、窪み4aの内側に設けられているX軸方向移動機構(不図示)と連結されている。このX軸方向移動機構は、例えば、ボールねじと、このボールねじに連結されているモータと、を含む。そして、このX軸方向移動機構を動作させると、保持テーブル10がX軸方向に沿って移動する。さらに、この移動に伴って、テーブルカバー6がX軸方向に沿って移動するとともに防塵防滴カバー8が伸縮する。
【0026】
また、保持テーブル10は、窪み4aの内側に設けられている回転駆動源(不図示)と連結されている。この回転駆動源は、例えば、プーリと、このプーリに連結されているモータと、を含む。そして、この回転駆動源を動作させると、ポーラス板10bの上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸として保持テーブル10が回転する。
【0027】
基台4の上面のうち窪み4a近傍の領域には、支持構造16が設けられている。この支持構造16は、基台4の上面から立設する立設部16aと、窪み4aを渡るように立設部16aの上端部からY軸方向に沿って延在する腕部16bと、を有する。そして、腕部16bの前面側には、Y軸方向移動機構18が設けられている。
【0028】
このY軸方向移動機構18は、腕部16bの前面に固定され、かつ、Y軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール20を有する。そして、一対のY軸ガイドレール20の前面側には、一対のY軸ガイドレール20に沿ってスライド可能な態様でY軸移動プレート22が連結されている。
【0029】
また、一対のY軸ガイドレール20の間には、Y軸方向に沿って延在するねじ軸24が配置されている。このねじ軸24の一端部には、ねじ軸24を回転させるためのモータ(不図示)が連結されている。そして、ねじ軸24の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸24の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0030】
すなわち、ねじ軸24が回転すると、多数のボールがナット内を循環して、ナットがY軸方向に沿って移動する。また、このナットは、Y軸移動プレート22の後面側に固定されている。そのため、ねじ軸24の一端部に連結されているモータでねじ軸24を回転させれば、ナットとともにY軸移動プレート22がY軸方向に沿って移動する。
【0031】
Y軸移動プレート22の前面側には、Z軸方向移動機構26が設けられている。このZ軸方向移動機構26は、Y軸移動プレート22の前面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール28を有する。そして、一対のZ軸ガイドレール28の前面側には、一対のZ軸ガイドレール28に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート30が連結されている。
【0032】
また、一対のZ軸ガイドレール28の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸32が配置されている。このねじ軸32の一端部(上端部)には、ねじ軸32を回転させるためのモータ34が連結されている。そして、ねじ軸32の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸32の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0033】
すなわち、ねじ軸32が回転すると、多数のボールがナット内を循環して、ナットがZ軸方向に沿って移動する。また、このナットは、Z軸移動プレート30の後面側に固定されている。そのため、モータ34でねじ軸32を回転させれば、ナットとともにZ軸移動プレート30がZ軸方向に沿って移動する。
【0034】
Z軸移動プレート30の下部には、切削ユニット36が固定されている。この切削ユニット36は、Y軸方向に沿って延在する筒状のスピンドルハウジング38を有する。さらに、切削ユニット36は、スピンドルハウジング38に収容される構成要素と、それから露出した構成要素と、を有する。
【0035】
図3は、切削ユニット36のうちスピンドルハウジング38から露出した構成要素を模式的に示す分解斜視図である。この切削ユニット36は、Y軸方向に沿って延在し、かつ、回転可能な態様でスピンドルハウジング38に支持されるスピンドル40を有する。そして、このスピンドル40の先端部には、マウントフランジ42及びナット52を利用して切削ブレード50が装着される。
【0036】
スピンドル40は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなり、導電性を有する。また、スピンドル40の基端部はスピンドルハウジング38に収容されたモータ等の回転駆動源に連結され、その先端部はスピンドルハウジング38から露出している。さらに、スピンドル40の先端部の外周面には、マウントフランジ42をスピンドル40に取り付ける際に利用されるねじ部40aが形成されている。
【0037】
マウントフランジ42は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなり、導電性を有する。また、マウントフランジ42は、その中央にスピンドル40の径と概ね等しい径を有する円柱状の貫通孔が形成されている基台部44を含む。この基台部44の一面44aには、この貫通孔を囲んで立設するように円筒状の支持軸46が設けられている。
【0038】
また、支持軸46の内周面にはスピンドル40のねじ部40aと螺合するねじ部46aが形成され、その外周面にはナット52をマウントフランジ42に取り付ける際に利用されるねじ部46bが形成されている。さらに、基台部44の一面44aの外周領域には、フランジ部48が設けられている。
【0039】
このフランジ部48は、基台部44の径方向に沿って拡がるように設けられている円環状の底壁48aと底壁48aの外周領域から立設する円筒状の側壁48bとを含む。すなわち、フランジ部48の側壁48bの内側には、凹部が存在する。
【0040】
切削ブレード50は、その中央にマウントフランジ42の支持軸46の外径と概ね等しい径を有する円柱状の貫通孔が形成されている基台部50aを含む。また、基台部50aの外縁には、円環状の切刃50bが設けられている。この切刃50bは、例えば、レジンボンド又はビトリファイドボンド等の結合材と、この結合材に分散されたダイヤモンド等の砥粒と、を含む。
【0041】
ナット52は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなり、導電性を有する。また、ナット52の内周面には、マウントフランジ42の支持軸46のねじ部46bと螺合するねじ部52aが形成されている。
【0042】
そして、マウントフランジ42及びナット52を利用してスピンドル40の先端部に切削ブレード50を装着する際には、まず、支持軸46のねじ部46aをスピンドル40のねじ部40aに螺合させるようにスピンドル40の先端部を基台部44の貫通孔及び支持軸46の内側に挿入する。これにより、マウントフランジ42がスピンドル40の先端部に取り付けられる。
【0043】
次いで、切削ブレード50の基台部50aに形成されている貫通孔にマウントフランジ42の支持軸46を挿入する。次いで、この基台部50aがマウントフランジ42のフランジ部48とナット52とによって挟持されるように、ナット52のねじ部52aをマウントフランジ42の支持軸46のねじ部46bに螺合する。これにより、スピンドル40の先端部に切削ブレード50が装着される。
【0044】
なお、このようにスピンドル40の先端部に切削ブレード50が装着される場合には、フランジ部48のうち側壁48b、すなわち、マウントフランジ42の端面のみが切削ブレード50に接触する。すなわち、この場合には、フランジ部48の底壁48a、すなわち、マウントフランジ42の端面の内側に位置する凹部の底面は切削ブレード50に接触しない。
【0045】
また、図1に示されるように、切削ユニット36の側方には撮像ユニット54が設けられている。この撮像ユニット54は、例えば、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子とを含み、その下方に存在する構造物を撮像する。
【0046】
さらに、基台4の上側には、カバー(不図示)が設けられている。そして、このカバーの側面には、ユーザーインターフェースとして機能するタッチパネル55が設けられている。このタッチパネル55は、例えば、ディスプレイ(表示ユニット)と、タッチセンサ(入力ユニット)とによって構成される。
【0047】
このタッチセンサは、例えば、静電容量方式のタッチセンサ又は抵抗膜方式のタッチセンサ等である。また、このディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。そして、オペレータは、タッチパネル55の表面に触れることによって切削装置2を操作できる。
【0048】
なお、タッチパネル55は、互いに独立した出力ユニット及び入力ユニットに置換されていてもよい。例えば、タッチパネル55は、キーボード、マウス、タッチパッド又はマイクロフォン等の少なくとも一つを含む入力ユニットと、ディスプレイ、プリンタ又はスピーカ等の少なくとも一つを含む出力ユニットと、に置換されてもよい。
【0049】
加えて、切削装置2には、その支持基台14が保持テーブル10によって保持された整形工具12の研削砥石15とスピンドル40の先端部に取り付けられたマウントフランジ42との接触を検知するための構成要素が設けられている。図4は、このような構成要素を模式的に示す回路図である。
【0050】
具体的には、切削装置2には、保持テーブル10の枠体10aとスピンドル40との間で直列接続される直流電源56及び抵抗器58が設けられている。また、抵抗器58には、抵抗器58に印加される電圧を測定するための電圧計60が並列接続されている。
【0051】
そして、切削装置2においては、この電圧計60によって測定される電圧の値に応じて研削砥石15とマウントフランジ42との接触が検知される。具体的には、両者が離隔している場合には、抵抗器58の抵抗の値と比較して、研削砥石15とマウントフランジ42との間の抵抗の値が大きくなる。この場合、抵抗分圧によって抵抗器58に印加される電圧が小さくなる。
【0052】
他方、両者が接触している場合には、抵抗器58の抵抗の値と比較して、研削砥石15とマウントフランジ42との間の抵抗の値が小さくなる。この場合、抵抗分圧によって抵抗器58に印加される電圧が大きくなる。そのため、切削装置2においては、電圧計60によって測定された電圧の値の変化を参照することで研削砥石15とマウントフランジ42との接触を検知することができる。
【0053】
さらに、切削装置2には、上述した構成要素を制御するためのコントローラが設けられている。図5は、このコントローラの一例を模式的に示すブロック図である。図2に示されるコントローラ62は、プロセッサ62aとメモリ62bとを有する。
【0054】
プロセッサ62aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を含む。メモリ62bは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリと、SSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリと、を含む。
【0055】
そして、メモリ62bは、プロセッサ62aにおいて用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、メモリ62bは、マウントフランジ42の交換の要否を判定する際に利用される閾値を記憶する。具体的には、この閾値としては、利用可能なマウントフランジ42の端面と端面の内側に位置する凹部の底面との間隔の下限値が挙げられる。
【0056】
また、プロセッサ62aは、メモリ62bに記憶された各種のプログラムを読みだして実行するように切削装置2の構成要素を制御する。例えば、プロセッサ62aは、整形工具12を利用してマウントフランジ42の交換の要否を判定するマウントフランジの交換要否判定方法を実施するためのプログラムをメモリ62bから読み出して実行する。
【0057】
図6は、この方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、整形工具12の支持基台14を保持テーブル10によって保持する(保持ステップS1)。具体的には、この保持ステップS1においては、保持テーブル10の保持面の中心と支持基台14の下面14bの中心とを一致させるように整形工具12を保持テーブル10に置いてから、ポーラス板10bと連通する吸引源を動作させる。
【0058】
次いで、マウントフランジ42の端面のY軸方向における位置を特定する(第1特定ステップS2)。具体的には、この第1特定ステップS2においては、まず、切削ブレード50及びナット52をマウントフランジ42から取り外す。なお、この取り外しは、保持ステップS1よりも前に行われてもよい。
【0059】
次いで、研削砥石15からみて支持基台14の凸部14cがY軸方向に位置付けられるように、保持テーブル10を回転させる。次いで、平面視において、スピンドル40からみて研削砥石15がY軸方向に位置付けられるように、スピンドル40及びマウントフランジ42のY軸方向における位置を調整し、かつ、保持テーブル10のX軸方向における位置を調整する。
【0060】
次いで、マウントフランジ42の端面のうちスピンドル40の先端部の下方に位置する部分(下部)が研削砥石15に対応する高さに位置付けられるように、スピンドル40及びマウントフランジ42のZ軸方向における位置を調整する。これにより、研削砥石15の研削面とマウントフランジ42の端面の下部とがY軸方向において離隔した状態で対向する。
【0061】
次いで、研削砥石15の研削面とマウントフランジ42の端面との接触が検知されるまで、スピンドル40及びマウントフランジ42をY軸方向に沿って移動させる。すなわち、電圧計60によって測定される電圧が十分に大きくなるまでスピンドル40及びマウントフランジ42をY軸方向に沿って移動させる。
【0062】
そして、研削砥石15の研削面とマウントフランジ42の端面との接触が検知された時のスピンドル40及びマウントフランジ42のY軸方向における位置をマウントフランジ42の端面のY軸方向における位置として特定する。さらに、マウントフランジ42の端面のY軸方向における位置を示すデータは、メモリ62bに記憶される。
【0063】
次いで、マウントフランジ42の端面の内側に位置する凹部の底面のY軸方向における位置を特定する(第2特定ステップS3)。具体的には、この第2特定ステップS3においては、まず、研削砥石15の研削面とマウントフランジ42の端面とを離隔させるように、スピンドル40及びマウントフランジ42をY軸方向に沿って移動させる。
【0064】
次いで、凹部の底面のうちスピンドル40の先端部の下方に位置する部分(下部)が研削砥石15に対応する高さに位置付けられるように、スピンドル40及びマウントフランジ42のZ軸方向における位置を調整する。これにより、研削砥石15の研削面とマウントフランジ42の端面の内側に位置する凹部の底面の下部とがY軸方向において離隔した状態で対向する。
【0065】
次いで、研削砥石15の研削面と凹部の底面との接触が検知されるまで、スピンドル40及びマウントフランジ42をY軸方向に沿って移動させる。すなわち、電圧計60によって測定される電圧が十分に大きくなるまでスピンドル40及びマウントフランジ42をY軸方向に沿って移動させる。
【0066】
そして、研削砥石15の研削面と凹部の底面との接触が検知された時のスピンドル40及びマウントフランジ42のY軸方向における位置を凹部の底面のY軸方向における位置として特定する。さらに、凹部の底面のY軸方向における位置を示すデータは、メモリ62bに記憶される。
【0067】
次いで、マウントフランジ42の端面のY軸方向における位置と凹部の底面のY軸方向における位置との間隔と、メモリ62bに記憶された閾値と、をプロセッサ62aが比較する。そして、この間隔が閾値を下回った場合に、マウントフランジ42の交換が必要であるとプロセッサ62aが判定する(判定ステップS4)。
【0068】
さらに、このように判定された場合には、例えば、マウントフランジ42の交換が必要である旨を報知するようにプロセッサ62aがタッチパネル55を制御する(報知ステップS5)。この報知ステップS5においては、例えば、その旨を示すテキストが表示されるようにプロセッサ62aがタッチパネル55を制御する。
【0069】
図6に示されるマウントフランジの交換要否判定方法においては、研削砥石15とマウントフランジ42との接触が検知されるまでスピンドル40及びマウントフランジ42を移動させることによって、マウントフランジ42の端面の位置と凹部の底面の位置とが特定される。
【0070】
この場合、オペレータが手作業で測定することなく、マウントフランジ42の端面の位置と凹部の底面の位置との間隔を把握できる。その結果、この方法においては、マウントフランジ42の交換の要否を判定する際の所要時間を短くするとともにマウントフランジ42の適時な交換が可能になる。
【0071】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、本発明においては、第2特定ステップS3の後に第1特定ステップS2が実施されてもよい。また、本発明においては、報知ステップS5に換えて又は加えて、切削装置2においてマウントフランジ42の交換が自動的に行われる交換ステップが実施されてもよい。
【0072】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0073】
2 :切削装置
4 :基台(4a:窪み)
6 :テーブルカバー
8 :防塵防滴カバー
10 :保持テーブル(10a:枠体、10b:ポーラス板)
12 :整形工具
14 :支持基台(14a:上面、14b:下面、14c:凸部)
15 :研削砥石
16 :支持構造(16a:立設部、16b:腕部)
18 :Y軸方向移動機構
20 :Y軸ガイドレール
22 :Y軸移動プレート
24 :ねじ軸
26 :Z軸方向移動機構
28 :Z軸ガイドレール
30 :Z軸移動プレート
32 :ねじ軸
34 :モータ
36 :切削ユニット
38 :スピンドルハウジング
40 :スピンドル(40a:ねじ部)
42 :マウントフランジ
44 :基台部(44a:一面)
46 :支持軸(46a,46b:ねじ部)
48 :フランジ部(48a:底壁、48b:側壁)
50 :切削ブレード(50a:基台部、50b:切刃)
52 :ナット(52a:ねじ部)
54 :撮像ユニット
55 :タッチパネル
56 :直流電源
58 :抵抗器
60 :電圧計
62 :コントローラ(60a:プロセッサ、60b:メモリ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6