(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148280
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】純水製造装置及び純水製造装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20241010BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20241010BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241010BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20241010BHJP
【FI】
C02F1/44 H
C02F1/44 A
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/32
C02F9/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061285
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸也
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA17
4D006HA47
4D006JA30C
4D006KA02
4D006KA03
4D006KA31
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA71
4D006KA72
4D006KB04
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4D006KB13
4D006KB14
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4D006KE15P
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4D025AA04
4D025AB34
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4D025DA05
4D037AA03
4D037AB01
4D037BA18
4D037BB02
4D037CA03
4D037CA14
4D037CA15
(57)【要約】
【課題】 TOC(全有機体炭素)の除去を目的とした紫外線酸化装置を効率よく作用させることの可能な純水製造装置を提供する。
【解決手段】 逆浸透膜装置5と紫外線酸化装置6と再生式イオン交換装置7がこの順に設けられていて、逆浸透膜装置5の前段にNaOH添加機構8を設けるとともに紫外線酸化装置6の前段に中和機構9を有する。本実施形態において中和機構9は酸添加手段であり、酸(中和剤)としての塩酸を添加する。そして、NaOH添加機構8の後段で逆浸透膜装置5の前段と、中和機構9の後段で紫外線酸化装置6の前段にはそれぞれ図示しないpH計測手段が設けられていて、このpH計測手段は図示しない制御手段にその計測値を送信し、このpHの計測値に基づいてNaOH添加機構8におけるNaOH溶液の添加量及び中和機構9における塩酸の添加量を制御可能となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜装置と、この逆浸透膜装置の後段に設けられた紫外線酸化装置とを備える純水製造装置であって、前記逆浸透膜装置の前段に該逆浸透膜装置の給水のpHを8以上に調整するアルカリ添加手段を有するとともに、前記逆浸透膜装置の後段で前記紫外線酸化装置の前段に添加されたアルカリの中和手段を備える、純水製造装置。
【請求項2】
前記中和手段が、酸添加手段又はカチオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置であり、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記紫外線酸化装置の後段に再生式イオン交換装置を有する請求項1又は2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
pH9以上の給水を逆浸透膜装置に供給するとともに逆浸透膜の透過水をpH9未満に中和した後、紫外線酸化装置で酸化処理を行う純水製造装置の運転方法。
【請求項5】
前記逆浸透膜の透過水に酸を添加するか、前記透過水をカチオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置で処理して中和化する、請求項4に記載の純水製造装置の運転方法。
【請求項6】
前記逆浸透膜装置の給水をpH9以上に調整する、請求項5に記載の純水製造装置の運転方法。
【請求項7】
前記紫外線酸化装置での酸化処理の後、再生式イオン交換装置で処理する、請求項4~6に記載の純水製造装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造装置及びこの純水製造装置の運転方法に関し、特にTOC(全有機体炭素)の除去を目的とした紫外線酸化装置を効率よく作用させることの可能な純水製造装置及びこの純水製造装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水製造装置及び一次純水を処理するサブシステム(二次純水製造装置)で構成される超純水製造システムで原水を処理することにより製造されている。
【0003】
例えば、
図1に示すように超純水製造システム1は、前処理装置2と一次純水製造装置(純水製造装置)3とサブシステム4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造システム1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水製造装置3は、前処理水W1を処理する逆浸透膜装置5と、紫外線酸化装置6と、再生式イオン交換装置7とを有する。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解して、一次純水(純水)W2を得る。
【0005】
そして、サブシステム4は、サブタンク10と供給ポンプ11と紫外線酸化装置12と非再生型混床式イオン交換装置13と限外ろ過膜(UF膜)14とを有し、限外ろ過膜(UF膜)14からユースポイント15を経由してサブタンク10に還流する構成となっている。このサブシステム4では、一次純水製造装置3で製造された一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質を除去し、最後に限外濾過(UF)膜14で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント15に供給して、未使用の超純水W3はサブタンク10に還流する。
【0006】
上述したような超純水製造システム1の一次純水製造装置3では、
図5に示すように逆浸透膜装置5の前段にアルカリ添加手段としての水酸化ナトリウム溶液(NaOH)添加機構8を設けて、逆浸透膜装置5の給水のpHを9~11程度に調整して、逆浸透膜装置5におけるホウ素の濃度低減や各種成分のイオン化を促進して処理することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しなしながら、
図5に示すような純水製造装置では、紫外線酸化装置6の後段に再生式イオン交換装置7が存在するので、紫外線酸化装置6でTOCの分解により生成したイオン成分も同時に処理できる。しかしながら、紫外線酸化装置6の給水である逆浸透膜装置5の処理水は、pHが高いので、紫外線酸化装置6でのTOC分解効率が低下する懸念があり、紫外線酸化装置6の処理能力をその分増加させなければならない、という問題点があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、TOC(全有機体炭素)の除去を目的とした紫外線酸化装置を効率よく作用させることの可能な純水製造装置及びこの純水製造装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、逆浸透膜装置と、この逆浸透膜装置の後段に設けられた紫外線酸化装置とを備える純水製造装置であって、前記逆浸透膜装置の前段に該逆浸透膜装置の給水のpHを9以上に調整するアルカリ添加手段を有するとともに、前記逆浸透膜装置の後段で前記紫外線酸化装置の前段に前記紫外線酸化装置のpHを9未満に調整する中和手段を備える、純水製造装置を提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、紫外線酸化装置の給水のpHを9未満とすることにより、紫外線酸化装置でのTOCの分解効率の低下を抑制し、純水の水質、特にTOC濃度の低く純水を製造することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記中和手段が、酸添加手段又はカチオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置であることが好ましい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、アルカリを添加された給水の浸透膜装置の透過水を酸添加手段又はカチオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置で処理すると、pHが低下するので、pHが9未満となるように調整することで、紫外線酸化装置でのTOCの分解効率の低下を抑制し、純水の水質、特にTOC濃度の低い純水を製造することができる。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、前記紫外線酸化装置の後段に再生式イオン交換装置を有することがこの好ましい(発明3)。
【0014】
かかる発明(発明3)によれば、紫外線酸化装置で分解した成分に起因するイオン性の不純物を除去することができるので、純水製造装置で製造される純水を高水質とすることができる。
【0015】
また、本発明は第二に、pH9以上の給水を逆浸透膜装置に供給するとともに逆浸透膜の透過水をpH9未満に中和した後、紫外線酸化装置で酸化処理を行う純水製造装置の運転方法を提供する(発明4)。
【0016】
かかる発明(発明4)によれば、紫外線酸化装置の給水のpHを9未満とすることにより、紫外線酸化装置でのTOCの分解効率の低下を抑制し、純水の水質、特にTOC濃度の低く純水を製造することができる。
【0017】
上記発明(発明4)においては、前記逆浸透膜の透過水に酸を添加するか、前記透過水をカチオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置で処理して中和化することが好ましい(発明5)。
【0018】
かかる発明(発明5)によれば、アルカリを添加された給水の浸透膜装置の透過水を酸添加手段又はカチオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置で処理すると、pHが低下するので、pHが9未満となるように調整することで、紫外線酸化装置でのTOCの分解効率の低下を抑制し、純水の水質、特にTOC濃度の低い純水を製造することができる。
【0019】
上記発明(発明5)においては、前記逆浸透膜装置の給水をpH9以上に調整することが好ましい(発明6)。
【0020】
上記発明(発明6)によれば、逆浸透膜装置の給水をpH9以上に調整することで、逆浸透膜装置5におけるホウ素の濃度低減や各種成分のイオン化を促進して、逆浸透膜装置での不純物の除去率を向上させることができる。
【0021】
上記発明(発明4~6)においては、前記紫外線酸化装置での酸化処理の後、再生式イオン交換装置で処理することが好ましい(発明7)。
【0022】
上記発明(発明7)によれば、紫外線酸化装置で分解した成分に起因するイオン性の不純物を除去することができるので、純水製造装置で製造される純水を高水質とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の純水製造装置によれば、逆浸透膜装置と、この逆浸透膜装置の後段に設けられた紫外線酸化装置とを備える純水製造装置において、逆浸透膜装置の前段に該逆浸透膜装置の給水のpHを9以上に調整するアルカリ添加手段を有するとともに、逆浸透膜装置の後段で紫外線酸化装置の前段に紫外線酸化装置のpHを9未満に調整する中和手段を備えるので、紫外線酸化装置の給水のpHを9未満とすることにより、紫外線酸化装置でのTOCの分解効率の低下を抑制し、純水の水質、特にTOC濃度の低く純水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明を適用可能な超純水製造装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による純水製造装置の要部を示す概略図である。
【
図3】実施例1における被処理液のpHとアニオン交換樹脂通液後のTOC除去率を示すグラフである。
【
図4】実施例1における被処理液のpHとUV酸化装置通液後のTOC除去率を示すグラフである。
【
図5】超純水製造装置における従来の純水製造装置の要部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の純水製造装置の一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0026】
(純水製造装置)
本発明は、超純水製造装置などに用いる純水製造装置(一次純水装置)において、紫外線酸化装置を効率的に作用させる方法に特徴を有するものである。ここで、純水製造装置(一次純水装置)としては、特に制限はなく、逆浸透膜装置とこの後段に紫外線酸化装置とを有するものであれば、種々の純水製造装置を適用することができる。例えば、
図1に示すような超純水製造装置1における一次純水装置3に好適に適用することができる。
【0027】
図1に示す一次純水装置3において、逆浸透膜装置5と紫外線酸化装置6を中心とする要部は、以下のような構成を有する。すなわち、
図2においては、逆浸透膜装置5と紫外線酸化装置6と再生式イオン交換装置7がこの順に設けられていて、逆浸透膜装置5の前段にアルカリ添加手段としてのNaOH添加機構8を設けるとともに紫外線酸化装置6の前段に中和手段としての中和機構9を有する。本実施形態において中和機構9は酸添加手段であり、酸(中和剤)として例えば塩酸を添加する。そして、NaOH添加機構8の後段で逆浸透膜装置5の前段と、中和機構9の後段で紫外線酸化装置6の前段にはそれぞれ図示しないpH計測手段が設けられていて、このpH計測手段は図示しない制御手段にその計測値を送信し、このpHの計測値に基づいて制御手段はNaOH添加機構8におけるNaOH溶液の添加量及び中和機構9における塩酸の添加量を制御可能となっている。なお、再生式イオン交換装置7は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床式、または複層式のものを用いることができる。
【0028】
(純水製造装置の運転方法)
次に上述したような構成を有する本実施形態の純水製造装置の運転方法について
図1及び
図2に基づいて説明する。
【0029】
まず、原水Wを前処理装置2に供給すると、凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置などにより、原水W中の懸濁物質やコロイド物質の除去を行い、処理原水としての前処理水W1を得る。この過程では高分子系有機物、疎水性有機物などもある程度除去される。
【0030】
この前処理水W1を一次純水装置3に供給して一旦タンクに貯留した後、図示しないポンプにより送水し、逆浸透膜装置5と、紫外線酸化装置6と、再生式イオン交換装置7とで処理する。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解して、一次純水(純水)W2を得る。
【0031】
上述したような一次純水装置3における一次純水(純水)W2の製造工程において、逆浸透膜装置5の給水にNaOH添加機構8からNaOH溶液を添加する。これは、逆浸透膜装置5において、前処理水W1に含まれるホウ素を除去したり、その他各種成分のイオン化を促進して除去したりするためである。上記効果の観点からこの給水のpHは9以上とする。給水pHの上限については、pH11以上とすると使用する薬品量が増加し、薬品にかかる費用が増加するばかりか、それに見合う効果の向上が得られず、費用対効果が低下することから、pH11程度とすることが望ましい。
【0032】
このようなpH9以上の給水を逆浸透膜装置5で処理した透過水は、依然pHが高い状態であるので、そのまま紫外線酸化装置6に供給すると紫外線酸化装置6において有機物の分解能が低下する、という問題点がある。そこで、本実施形態においては、紫外線酸化装置6の前段で中和機構9から塩酸を添加し、紫外線酸化装置6の被処理水がpHを9未満、特にpH6.5~8程度となるように制御手段により制御する。このような被処理水を紫外線酸化装置6で処理することにより。被処理水(逆浸透膜装置5の透過水)に残存するTOCを効率良く分解することができる。
【0033】
この紫外線酸化装置6の処理水には、分解した有機物などに起因したイオン性の不純物やその他微量の不純物イオンが含まれるので、これを再生式イオン交換装置7で処理することで、一次純水(純水)W2を得ることができる。
【0034】
以上、本発明の純水装置及びその運橙方法について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、前記実施形態においては、中和機構9として酸添加手段を採用したが、これに限らず少なくともカチオン交換樹脂を含む(好ましくは50容積%以上含む)再生式イオン交換装置を紫外線酸化装置6の前段に設置して中和機構9としてもよい。また、再生式イオン交換装置7としては、電気再生式イオン交換装置を採用してもよい。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1〕
超純水(抵抗率18.1MΩ・cm以上)にpH調整剤として水酸化ナトリウム溶液又は塩酸と、TOC源としてIPA(イソプロピルアルコール)を添加したものをメスフラスコで1000mLに調整し、pHの異なる複数種の試験用試料液を作成した。この試験用試料液を100mL採取し、pH、TOC濃度及びIC(無機炭酸)濃度を測定した。
【0037】
次に、この試験用試料液900mLを撹拌しながらに酸化紫外線を10分及び15分照射した後、紫外線照射後の試験用試料液を100mL採取し、pH、TOC濃度及びIC(無機炭酸)濃度を測定した。
【0038】
続いて紫外線照射後の試験用試料液を500mL採取し、アニオン交換樹脂(AR)樹脂に通液し、通水後の試験用試料液を廃棄した。さらに、このアニオン交換樹脂(AR)に紫外線照射後の試験用試料液200mLを通液し、10分及び15分経過後のpH、TOC濃度及びIC(無機炭酸)濃度を測定した。
【0039】
この試験におけるIPA濃度、紫外線(UV)照射時間及び試験用試料液のpHを表1及び表2に、アニオン交換樹脂(AR)通液後のTOC除去率を
図3に、紫外線照射後のTOC除去率を
図4にそれぞれ示す。
【0040】
図3及び
図4から明らかなとおり、試験用試料液のpHを9以上にした場合に、TOCの除去理が低下していることが確認された。特にアニオン交換樹脂に通水した場合の低下が顕著であり、アニオン交換樹脂で除去できないレベルの分解が不十分なTOC
が存在していることがわかる。これらにより紫外線酸化装置6に供給するTOC含有被処理水のpHを9未満、特に8以下とすることで、TOCの除去できることがわかる。