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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148312
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】加工装置、及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241010BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/304 643Z
H01L21/304 651L
H01L21/304 651Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
H01L21/304 622L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061346
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】星野 涼
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F057AA42
5F057BA12
5F057DA03
5F057FA13
5F057FA34
5F057FA36
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA37
5F131BA43
5F131CA37
5F131DB02
5F131DB22
5F131DB62
5F131DB76
5F131DB82
5F131KA12
5F131KA52
5F131KB22
5F131KB58
5F157AA03
5F157AA28
5F157AA70
5F157AA96
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB22
5F157BD22
5F157BD26
5F157BG63
5F157CB13
5F157CB15
5F157CC31
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】ロボットハンドを低コストに洗浄する。
【解決手段】被加工物を加工できる加工装置であって、被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットで加工された後の該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、該被加工物を搬送する搬送ロボットと、を備え、該洗浄ユニットは、スピンナテーブルに保持された該被加工物に洗浄流体を供給して該被加工物を洗浄できる洗浄ノズルを備え、該搬送ロボットは、該被加工物を吸引保持する吸引面を含むロボットハンドと、該ロボットハンドを移動させる移動機構と、を備え、該洗浄ユニットは、該ロボットハンドに該洗浄ノズルから該洗浄流体を供給して該ロボットハンドを洗浄できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工できる加工装置であって、
複数の収容領域が上下方向に沿って配置されたカセットが載置されるカセットステージと、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルで保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該加工ユニットで加工された後の該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、
該被加工物を搬送する搬送ロボットと、を備え、
該洗浄ユニットは、
該被加工物を保持して回転できるスピンナテーブルと、
該スピンナテーブルに保持された該被加工物に洗浄流体を供給して該被加工物を洗浄できる洗浄ノズルと、
該スピンナテーブル及び該洗浄ノズルを収容する洗浄領域と、を備え、
該搬送ロボットは、
該被加工物を吸引保持する吸引面を含むロボットハンドと、
該ロボットハンドを移動させる移動機構と、を備え、
該移動機構を作動させることにより、該ロボットハンドを該カセットステージに載置された該カセットに挿入できるとともに該ロボットハンドを該洗浄ユニットの該洗浄領域に挿入でき、
該カセットの該収容領域に収容された該被加工物を該ロボットハンドで吸引保持して取り出して搬送する機能と、該加工ユニットで加工され該洗浄ユニットで洗浄された該被加工物を該カセットの該収容領域に搬送して収容する機能と、を有し、
該洗浄ユニットは、該洗浄領域に挿入された該ロボットハンドに該洗浄ノズルから該洗浄流体を供給して該ロボットハンドを洗浄できることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該搬送ロボットは、
該ロボットハンドを回転させて該吸引面が向く方向を変更できる回転機構をさらに備え、
該ロボットハンドの該吸引面が該洗浄ノズルに対面するように該ロボットハンドを該洗浄領域に挿入できるとともに、該ロボットハンドの該吸引面が該洗浄ノズルに対面しないように該ロボットハンドを該洗浄領域に挿入でき、
該洗浄ユニットは、該洗浄領域に挿入された該ロボットハンドの該吸引面を洗浄できるとともに、該洗浄領域に挿入された該ロボットハンドの該吸引面ではない面を洗浄できることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該洗浄ユニットは、
液体と、液体及び高圧気体の混合流体と、の一方又は両方を該洗浄流体として該洗浄ノズルから該ロボットハンドに供給可能であるとともに、該高圧気体を該洗浄ノズルから該ロボットハンドに供給可能であり、
該洗浄ノズルから該ロボットハンドに該洗浄流体を供給して該ロボットハンドを洗浄した後、該洗浄ノズルから該ロボットハンドに該高圧気体を供給して該ロボットハンドを乾燥できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
該洗浄ユニットは、該搬送ロボットによる該被加工物の搬送前と、搬送後と、の一方または両方において、該ロボットハンドを洗浄できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加工装置。
【請求項5】
被加工物を加工する加工ユニットと、該被加工物を吸引保持するロボットハンドを有しカセットに収容された該被加工物を搬送できる搬送ロボットと、該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、を備える加工装置において該加工ユニットで該被加工物を加工する加工方法であって、
該カセットに収容された該被加工物を該搬送ロボットの該ロボットハンドで吸引保持して搬送する第1搬送ステップと、
該第1搬送ステップの後、該被加工物を該加工ユニットで加工する加工ステップと、
該加工ステップの後、該洗浄ユニットで該被加工物を洗浄する被加工物洗浄ステップと、
該被加工物洗浄ステップの後、該被加工物を該ロボットハンドで吸引保持して該カセットに搬送して該被加工物を該カセットに収容する第2搬送ステップと、
該搬送ロボットの該ロボットハンドを該洗浄ユニットで洗浄するロボットハンド洗浄ステップと、備え、
該搬送ロボットの該ロボットハンドは、該被加工物を吸引保持する吸引面を備え、
該ロボットハンド洗浄ステップでは該ロボットハンドの該吸引面が洗浄され、
該ロボットハンド洗浄ステップは、該第1搬送ステップの前と、該第1搬送ステップと該第2搬送ステップの間と、該第2搬送ステップの後と、のうち一つまたは複数において実施されることを特徴とする加工方法。
【請求項6】
該ロボットハンド洗浄ステップでは、さらに、該ロボットハンドの該吸引面ではない面が洗浄されることを特徴とする請求項5に記載の加工方法。
【請求項7】
該ロボットハンド洗浄ステップでは、洗浄流体を該ロボットハンドに供給して該ロボットハンドを洗浄した後、該ロボットハンドに高圧気体を供給して該ロボットハンドを乾燥することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を加工する加工装置と、加工装置において被加工物を加工する加工方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体ウエーハの表面にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイスを形成する。次に、ウエーハを裏面側から研削して所定の厚みに薄化し、ウエーハをデバイス毎に分割して個々のデバイスチップを形成する。
【0003】
ウエーハの裏面側を研削すると、被研削面には研削痕として微小な凹凸形状が形成される。そのため、ウエーハを分割して形成されるデバイスチップにも、微小な凹凸形状が残る。この微小な凹凸形状は、デバイスチップの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、研削を実施した後、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等によりウエーハの裏面を研磨することが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ウエーハ等の被加工物を加工する各種の加工装置は、ロボットハンドを備える搬送ユニットを有し、ロボットハンドで被加工物を吸引保持して被加工物を移動している。また、加工装置は、加工される被加工物を保持する保持テーブルと、保持テーブルで保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備える。加工ユニットは、被加工物を加工する加工具を備える。加工装置で加工される被加工物には、一部の面を保護するための保護テープが貼着されることがある。
【0005】
加工装置に搬入される被加工物には、保護テープの貼着に伴いテープ屑が付着することがある。また、被加工物が加工されたときに被加工物や加工具から加工屑が発生し、被加工物に加工屑が付着することがある。被加工物を洗浄するとほぼすべての加工屑を除去できるが、稀な事態として僅かに加工屑が被加工物に残ることも考えられる。
【0006】
加工屑等の各種の屑が付着した被加工物をロボットハンドで保持して搬送すると、被加工物に付着していた屑がロボットハンドに移ることがある。屑が付着したロボットハンドを使用して洗浄済みの被加工物を搬送する場合や、加工前の被加工物を搬送する場合に、ロボットハンドから被加工物に屑が移るという問題が生じることがある。
【0007】
そこで、ロボットハンドに付着した屑を除去するために、ロボットハンドに高圧のエアーを吹き付けてロボットハンドを清掃する加工装置が開発された(特許文献2参照)。この加工装置では、加工される被加工物が一時的に置かれる位置決めテーブルからエアーを噴出させ、ロボットハンドを清掃する。ロボットハンドを清掃する際には、ロボットハンドを位置決めテーブルの上方に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-99265号公報
【特許文献2】特開2021-82647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ロボットハンドにエアーを下方から吹き付けるだけでは、ロボットハンドに付着した屑を十分に除去できない場合があった。また、ロボットハンドに付着していた屑がエアーにより除去されたとき、屑が加工装置のロボットハンド以外の要素に付着して汚染源となることがあり、当該要素の洗浄のためにコストがかかっていた。そこで、ロボットハンドの洗浄用に専用の洗浄機構を加工装置に組み込むことも考えられるが、加工装置の製造及び運用にかかるコストが上昇するとの問題が生じてしまう。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロボットハンドを低コストに洗浄できる加工装置、及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、被加工物を加工できる加工装置であって、複数の収容領域が上下方向に沿って配置されたカセットが載置されるカセットステージと、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットで加工された後の該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、該被加工物を搬送する搬送ロボットと、を備え、該洗浄ユニットは、該被加工物を保持して回転できるスピンナテーブルと、該スピンナテーブルに保持された該被加工物に洗浄流体を供給して該被加工物を洗浄できる洗浄ノズルと、該スピンナテーブル及び該洗浄ノズルを収容する洗浄領域と、を備え、該搬送ロボットは、該被加工物を吸引保持する吸引面を含むロボットハンドと、該ロボットハンドを移動させる移動機構と、を備え、該移動機構を作動させることにより、該ロボットハンドを該カセットステージに載置された該カセットに挿入できるとともに該ロボットハンドを該洗浄ユニットの該洗浄領域に挿入でき、該カセットの該収容領域に収容された該被加工物を該ロボットハンドで吸引保持して取り出して搬送する機能と、該加工ユニットで加工され該洗浄ユニットで洗浄された該被加工物を該カセットの該収容領域に搬送して収容する機能と、を有し、該洗浄ユニットは、該洗浄領域に挿入された該ロボットハンドに該洗浄ノズルから該洗浄流体を供給して該ロボットハンドを洗浄できることを特徴とする加工装置が提供される。
【0012】
好ましくは、該搬送ロボットは、該ロボットハンドを回転させて該吸引面が向く方向を変更できる回転機構をさらに備え、該ロボットハンドの該吸引面が該洗浄ノズルに対面するように該ロボットハンドを該洗浄領域に挿入できるとともに、該ロボットハンドの該吸引面が該洗浄ノズルに対面しないように該ロボットハンドを該洗浄領域に挿入でき、該洗浄ユニットは、該洗浄領域に挿入された該ロボットハンドの該吸引面を洗浄できるとともに、該洗浄領域に挿入された該ロボットハンドの該吸引面ではない面を洗浄できる。
【0013】
より好ましくは、該洗浄ユニットは、液体と、液体及び高圧気体の混合流体と、の一方又は両方を該洗浄流体として該洗浄ノズルから該ロボットハンドに供給可能であるとともに、該高圧気体を該洗浄ノズルから該ロボットハンドに供給可能であり、該洗浄ノズルから該ロボットハンドに該洗浄流体を供給して該ロボットハンドを洗浄した後、該洗浄ノズルから該ロボットハンドに該高圧気体を供給して該ロボットハンドを乾燥できる。
【0014】
さらに好ましくは、該洗浄ユニットは、該搬送ロボットによる該被加工物の搬送前と、搬送後と、の一方または両方において、該ロボットハンドを洗浄できる。
【0015】
本発明の他の一態様によると、被加工物を加工する加工ユニットと、該被加工物を吸引保持するロボットハンドを有しカセットに収容された該被加工物を搬送できる搬送ロボットと、該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、を備える加工装置において該加工ユニットで該被加工物を加工する加工方法であって、該カセットに収容された該被加工物を該搬送ロボットの該ロボットハンドで吸引保持して搬送する第1搬送ステップと、該第1搬送ステップの後、該被加工物を該加工ユニットで加工する加工ステップと、該加工ステップの後、該洗浄ユニットで該被加工物を洗浄する被加工物洗浄ステップと、該被加工物洗浄ステップの後、該被加工物を該ロボットハンドで吸引保持して該カセットに搬送して該被加工物を該カセットに収容する第2搬送ステップと、該搬送ロボットの該ロボットハンドを該洗浄ユニットで洗浄するロボットハンド洗浄ステップと、備え、該搬送ロボットの該ロボットハンドは、該被加工物を吸引保持する吸引面を備え、該ロボットハンド洗浄ステップでは該ロボットハンドの該吸引面が洗浄され、該ロボットハンド洗浄ステップは、該第1搬送ステップの前と、該第1搬送ステップと該第2搬送ステップの間と、該第2搬送ステップの後と、のうち一つまたは複数において実施されることを特徴とする加工方法が提供される。
【0016】
好ましくは、該ロボットハンド洗浄ステップでは、さらに、該ロボットハンドの該吸引面ではない面が洗浄される。
【0017】
より好ましくは、該ロボットハンド洗浄ステップでは、洗浄流体を該ロボットハンドに供給して該ロボットハンドを洗浄した後、該ロボットハンドに高圧気体を供給して該ロボットハンドを乾燥する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る加工装置及び加工方法では、被加工物を搬送する搬送ロボットのロボットハンドを被加工物の洗浄に使用される洗浄ユニットで洗浄する。ロボットハンドは、被加工物を洗浄するための洗浄流体により洗浄ユニットにおいて十分に洗浄される。そのため、ロボットハンドを洗浄するための専用の洗浄機構を加工装置に組み込む必要がない。
【0019】
また、被加工物を洗浄する洗浄ユニットでは、被加工物に付着した屑等が洗浄流体に取り込まれるため、屑が周囲に飛散して問題となることがない。そして、洗浄ユニットは被加工物と同様にロボットハンドを洗浄でき、ロボットハンドに付着した屑等も洗浄流体に取り込まれる。そのため、ロボットハンドから除去された屑が加工装置に再付着して問題となることがない。
【0020】
したがって、本発明の一態様によると、ロボットハンドを低コストに洗浄できる加工装置、及び加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】加工装置を模式的に示す斜視図である。
図2】搬送ロボットを模式的に示す斜視図である。
図3】搬送ロボットのロボットハンドが洗浄ユニットで洗浄される様子を模式的に示す斜視図である。
図4】搬送ロボットのロボットハンドが洗浄ユニットで洗浄される様子を模式的に示す平面図である。
図5図5(A)は、被加工物の加工方法の各ステップの流れを示すフローチャートであり、図5(B)は、同じ被加工物の加工方法の各ステップの流れを他の観点から示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る加工装置及び加工方法で加工される被加工物について説明する。図1には、被加工物1を模式的に示す斜視図が含まれている。
【0023】
被加工物1は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料で形成されたウエーハ、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円盤状の基板である。被加工物1の表面は格子状に配列された複数の分割予定ライン(不図示)により複数の領域に区画されており、この各領域にはICやLSI等のデバイス(不図示)が形成されている。最終的に、被加工物1が分割予定ラインに沿って分割されることで、個々のデバイスチップが形成される。
【0024】
被加工物1は、裏面が研削されることで薄化される。研削された被加工物1の裏面には、研削痕と呼ばれる微小な凹凸形状が形成される。このまま被加工物1が分割予定ラインに沿って分割されてデバイスチップが製造されると、デバイスチップに微小な凹凸形状が残り、デバイスチップの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、裏面が研削された被加工物1の裏面側を研磨し、裏面の微小な凹凸を除去して平坦化する。すると、デバイスチップに微小な凹凸形状が残らない。
【0025】
被加工物1の裏面側を研削、研磨する際、被加工物1の表面側を保護するために保護テープ3が予め貼着される。保護テープ3は、被加工物1の裏面に対する加工や被加工物1の搬送等の際に加わる力または衝撃から被加工物1の表面側を保護し、デバイスに損傷が生じるのを防止する。
【0026】
保護テープ3は、可撓性を有するフィルム状の基材と、基材の一方の面に形成された糊層(接着剤層)と、を有する。例えば、基材にはポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、または、ポリスチレン等が用いられる。また、糊層(接着剤層)には、例えば、シリコーンゴム、アクリル系材料、エポキシ系材料等が用いられる。保護テープ3は、被加工物1に対応した大きさ及び形状に切断されて使用される。そして、切断に伴って発生した屑が被加工物1に付着することがある。
【0027】
次に、被加工物1を加工する本実施形態に係る加工装置について説明する。本実施形態に係る加工装置は、被加工物1に切削加工、レーザ加工、研削加工、または、研磨加工等の加工を実施する。加工装置は、複数の被加工物を次々に加工する。以下、被加工物1の裏面側を研磨加工する研磨装置である場合を例に本実施形態に係る加工装置について説明する。ただし、本実施形態に係る加工装置は研磨装置に限定されない。
【0028】
図1は、加工装置(研磨装置)2を模式的に示す斜視図である。加工装置2は、各構成を支持する基台4を有する。基台4の前側部分の上面には、カセットステージ6a,6bが設けられている。カセットステージ6a,6bは、それぞれ、被加工物1が収容されたカセット8a,8bが載置された状態で昇降可能である。
【0029】
カセット8a,8bでは、例えば、複数の収容領域が上下方向に沿って並べて配置されている。例えば、各収容領域は、カセット8a,8bの両側壁の内面に同じ高さで設けられた一対のレールにより規定され、被加工物1は一対のレールに載置されてカセット8a,8bに収容される。
【0030】
例えば、カセットステージ6a上には加工前の被加工物1を収容したカセット8aが載置され、カセットステージ6bには加工後の被加工物1を収容するためのカセット8bが載置される。カセット8aに収容された被加工物1は、加工装置2で加工され、カセット8bに収容される。
【0031】
または、例えば、カセットステージ6aに載置されたカセット8aから次々に被加工物1が搬出され、加工装置2で加工され、カセット8aに戻される。その間に、カセットステージ6bに別のカセット8bが載置される。そして、カセット8aに収容された被加工物1の加工が完了し、すべての被加工物1がカセット8aに戻された後、カセット8bに収容された被加工物1が同様に次々に加工される。その間、カセット8aがカセットステージ6aから搬出され、次のカセット8aがカセットステージ6aに載置される。
【0032】
基台4上には、被加工物1を搬送する搬送ロボット10がカセットステージ6a,6bに隣接して据え付けられている。搬送ロボット10は、カセットステージ6a,6bに載置されたカセット8a,8bに収容されている被加工物1を搬出する機能と、被加工物1をカセット8a,8bに搬送して収容する機能と、を有する。搬送ロボット10について、詳細は後述する。
【0033】
基台4の前側部分の上面には更に、複数の位置決めピンで被加工物1を挟んで被加工物1の位置を調整する位置決めテーブル12と、被加工物1をチャックテーブル20に載せる被加工物搬入機構(ローディングアーム)14と、が配設されている。さらに、被加工物1をチャックテーブル20から搬出する被加工物搬出機構(アンローディングアーム)16と、加工された被加工物1を洗浄及び乾燥する洗浄ユニット(スピンナ洗浄装置)48と、が配設されている。
【0034】
基台4の後側部分の上面には、開口4aが設けられている。開口4a内には、被加工物1を吸引保持するチャックテーブル20が上面に載るX軸移動テーブル18が配設されている。X軸移動テーブル18は、図示しないX軸方向移動機構によりX軸方向に移動可能である。X軸移動テーブル18は、X軸方向移動機構の機能により、チャックテーブル20上で被加工物1が着脱される搬出入領域22と、チャックテーブル20で吸引保持される被加工物1が加工される加工領域24と、に位置付けられる。
【0035】
チャックテーブル20の上面には、被加工物1と同等の径の円板状の多孔質部材が露出している。チャックテーブル20の上面は、被加工物1を保持する保持面20aとなる。チャックテーブル20は、一端が多孔質部材に通じ他端が図示しない吸引源に接続された吸引路(不図示)を内部に備える。吸引源を作動させると、保持面20a上に載せられた被加工物1に負圧が作用して、被加工物1がチャックテーブル20に吸引保持される。また、チャックテーブル20は、保持面20aに垂直な軸の周りに回転できる。
【0036】
加工領域24の上方には、チャックテーブル20で保持された被加工物1を加工する加工ユニット26が配設される。加工装置2の基台4の後方端部には支持部28が立設されており、この支持部28により加工ユニット26が支持されている。支持部28の前面には、Z軸方向に伸長する一対のZ軸ガイドレール30が設けられ、それぞれのZ軸ガイドレール30には、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0037】
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール30に平行なZ軸ボールねじ34が螺合されている。Z軸ボールねじ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸移動プレート32の前面側下部には、加工ユニット26が固定されている。
【0038】
Z軸パルスモータ36でZ軸ボールねじ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート32をZ軸方向に移動させれば、加工ユニット26をZ軸方向に移動できる。
【0039】
被加工物1を加工する加工ユニット26が被加工物1を研磨加工する研磨ユニットである場合、加工ユニット26は、基端側に連結されたモータにより回転するスピンドル40と、スピンドル40の先端側に配設されたマウント42に固定具46により固定された加工具(研磨ホイール)44と、を備える。モータはスピンドルハウジング38内に備えられおり、モータを作動させると、加工具44がスピンドル40の回転に従って回転する。
【0040】
加工具44が研磨ホイールである場合、加工具44は、被加工物1の裏面より径の大きいポリウレタン、不織布等で形成された研磨パッドと、該研磨パッドが固定されたホイールベースと、を備える。ホイールベースには、研磨パッドが固定されている側の面とは反対側の面に固定具46が進入する複数の固定穴(不図示)が設けられている。
【0041】
研磨ホイールのホイールベースと、研磨パッドと、には、中央を厚さ方向に貫く貫通孔(不図示)が形成されており、この貫通孔の研磨パッド側の端部が研磨液供給口となり、この研磨液供給口からはスラリーと呼ばれる研磨液が供給される。スラリーは、砥粒(遊離砥粒)が分散された薬液であり、砥粒の材質、砥粒の粒径、分散媒の種別等は、被加工物1の材質等に応じて適宜選択される。
【0042】
砥粒としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、二酸化マンガン、セリア、クロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ベーマイト、バイヤライト、ダイヤモンド等を使用できる。分散媒としては、例えば、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、イミダゾール、ピラゾール、ピラジンが溶解したアルカリ水溶液を使用できる。ただし、スラリーに含まれる部材はこれに限定されず、その他の添加剤等が添加されてもよい。
【0043】
加工領域24に位置付けられたチャックテーブル20に保持された被加工物1を研磨加工する際には、研磨パッドを被加工物1の上方に配設する。そして、加工具(研磨ホイール)44と、チャックテーブル20と、をZ軸方向に沿ったそれぞれの軸の周りに回転させ、加工具44を下降させて研磨パッドを被加工物1に当接させる。このとき、被加工物1と、研磨パッドと、の間にスラリーを供給する。
【0044】
研磨パッドで被加工物1が研磨加工されると、被加工物1の被加工面である裏面から研磨屑が生じる。研磨屑は、スラリーに取り込まれて研磨パッドの外側に向けて排出される。研磨屑を取り込んだスラリーは、やがて被加工物1の裏面の外周部に達し、チャックテーブル20の保持面の外周部に落下する。その後、一部のスラリーは、チャックテーブル20から脱落して加工装置2の基台4の開口4aに形成された排水口4bから排出される。また、他の一部のスラリーは、被加工物1に付着して残る。
【0045】
加工装置2が研磨装置ではない場合においても、チャックテーブル20で保持された被加工物1が加工ユニット26により加工されると、被加工物1や加工具から屑が生じる。そして、一部の屑が被加工物1に付着して残る場合がある。
【0046】
加工装置2では、チャックテーブル20で保持された被加工物1が加工ユニット26により加工された後、被加工物搬出機構(アンローディングアーム)16でチャックテーブル20から搬出され、洗浄ユニット48に搬送される。そして、洗浄ユニット48により被加工物1が洗浄される。
【0047】
図3には、洗浄ユニット(スピンナ洗浄装置)48の構成物を模式的に示す斜視図が含まれている。洗浄ユニット48は、被加工物1を保持して回転できるスピンナテーブル74と、スピンナテーブル74に保持された被加工物1に洗浄流体86を供給して被加工物1を洗浄できる洗浄ノズル84と、を備える。また、洗浄ユニット48は、スピンナテーブル74と、洗浄ノズル84と、を収容する洗浄領域48a(図1参照)を備える。
【0048】
スピンナテーブル74は、スピンナテーブル74を上面に垂直な方向に沿った軸の周りに回転させるモータ(不図示)と、スピンナテーブル74を上下方向に移動可能に支持する支持機構(不図示)と、に接続されている。モータを作動させるとスピンナテーブル74を回転でき、支持機構を作動させるとスピンナテーブル74を昇降できる。
【0049】
スピンナテーブル74の上部には、上方に露出する多孔質部材76が配設されている。スピンナテーブル74の内部には一端が図示しない吸引源に接続され、他端が多孔質部材76に接続された吸引路(不図示)が配設されている。スピンナテーブル74の上に被加工物1を載せ、この吸引源を作動させて吸引路及び多孔質部材76を通して被加工物1に負圧を作用させると、被加工物1がスピンナテーブル74に吸引保持される。すなわち、多孔質部材76の上面が保持面となる。
【0050】
洗浄ノズル84は、被加工物1を洗浄する洗浄機構78を構成する。洗浄機構78は、スピンナテーブル74の外側で立設された洗浄軸部80を備える。洗浄軸部80は、スピンナテーブル74の外側においてスピンナテーブル74の上面に垂直な方向に沿って伸長したパイプ状の部材であり、スピンナテーブル74の上面の高さよりも高い位置に達し、上端に洗浄腕部82が接続されている。洗浄軸部80の基端側には洗浄軸部80を回転させるモータ(不図示)が接続されており、洗浄軸部80はモータにより回転される。
【0051】
洗浄腕部82は、洗浄軸部80からスピンナテーブル74の中央までの距離に相当する長さで洗浄軸部80の伸長方向に垂直な方向に伸長したパイプ状の部材であり、洗浄ノズル84は、洗浄腕部82の先端に下方に向いた状態で配設される。洗浄機構78は、図示しない洗浄流体供給源を備え、洗浄軸部80及び洗浄腕部82を経て洗浄ノズル84からスピンナテーブル74に保持された被加工物1に向け洗浄流体86を噴出させる。
【0052】
加工された被加工物1をスピンナテーブル74で保持し、スピンナテーブル74を回転させながら洗浄ノズル84から洗浄流体86を噴射させると、被加工物1の上面(被加工面)が洗浄される。すなわち、加工により被加工物1の表面に付着した屑等が除去される。なお、洗浄ノズル84から被加工物1に供給される洗浄流体86は、純水等の液体である。または、純水等の液体に窒素ガスまたは空気等で構成される高圧気体が混合された混合流体(二流体)である。
【0053】
洗浄ユニット48は、洗浄流体86で被加工物1を洗浄した後、被加工物1を乾燥させる。例えば、スピンナテーブル74の回転を継続した状態で洗浄ノズル84から被加工物1への洗浄流体86の供給を停止する。すると、被加工物1に付着した洗浄流体86がスピンナテーブル74の回転により除去されて、被加工物1が乾燥される。
【0054】
また、洗浄ノズル84は、洗浄流体86の他に、液体が混合されていない高圧気体を噴出してもよい。そして、洗浄ノズル84から高圧気体を被加工物1に供給しつつ洗浄ノズル84を被加工物1の上方で移動させると、被加工物1に付着した洗浄流体86を除去でき、被加工物1を乾燥できる。
【0055】
なお、洗浄ユニット48は、スピンナテーブル74及び洗浄ノズル84が収容された洗浄領域(洗浄室)48aを閉じる開閉可能なカバー(不図示)を備えてもよい。そして、被加工物1の洗浄が実施される間、カバーが閉じられて洗浄領域48aが外部の空間から隔離されてもよい。これにより、洗浄領域48aで飛散した洗浄流体86が洗浄領域48aから漏出しにくくなる。
【0056】
ただし、洗浄ユニット48はカバーを備えなくてもよく、洗浄領域48aは外部の空間から隔離されなくてもよい。すなわち、洗浄領域48aは外部の空間に対して開かれていてもよく、開かれた洗浄領域48aおいて被加工物1が洗浄されてもよい。
【0057】
洗浄ユニット48で洗浄された被加工物1は、搬送ロボット10により洗浄ユニット48からカセット8a,8bに搬送され、カセット8a,8bの一つの収容領域に収容される。加工装置2では、カセット8a,8bに収容された複数の被加工物1が次々に搬出されてチャックテーブル20に載せられ、加工ユニット26で加工され、チャックテーブル20から搬出され、洗浄ユニット48で洗浄されてカセット8a,8bに収容される。
【0058】
次に、加工装置2の搬送ロボット10について説明する。図2は、搬送ロボット10を模式的に示す斜視図である。また、図3には、搬送ロボット10を模式的に示す斜視図が含まれており、図4には、搬送ロボット10のロボットハンド66を模式的に示す平面図が含まれている。なお、以下の説明で用いられる第1方向A、第2方向B及び第3方向Cは、互いに垂直である。第3方向Cは、搬送ロボット10の高さ方向である。
【0059】
搬送ロボット10は、いわゆる多関節型ロボットである。搬送ロボット10は、オープンループ構造の多節リンクである移動機構50を備える。移動機構50は、ロボットハンド66を移動させる。
【0060】
移動機構50は、円筒状の第1支持回転部52を有する。第1支持回転部52は、円筒状の筐体を有する。筐体の底部には、第3方向C(高さ方向)に上下移動可能な移動機構(不図示)が連結されており、第1支持回転部52は、この移動機構により第3方向Cに沿って移動可能である。
【0061】
第1支持回転部52の筐体の内部には、第3方向Cと略平行な第1回転軸(不図示)が収容されている。第1回転軸の底部には、モータ等の第1駆動源(不図示)が連結されており、第1回転軸の上部には、第1リンク54の一端側に位置する第1リンク54の底部側が連結されている。
【0062】
第1駆動源を動作させることにより、第1リンク54は、第1リンク54の一端側に位置する第1回転軸を支点として、第1方向A及び第2方向Bで規定される平面(以下、AB平面)と平行な平面内で回転する。
【0063】
第1リンク54の一端側には第1のプーリー(不図示)が設けられている。また、第1リンク54の他端側には、第1のプーリーとベルト(不図示)を介して接続された第2のプーリー(不図示)が設けられている。第1のプーリー、ベルト及び第2のプーリーは、第1リンク54の筐体の内部に収容されている。
【0064】
第2のプーリーには、第3方向Cと略平行に設けられた第2回転軸(不図示)が連結されている。第2回転軸の上部には、第2リンク56の一端側に位置する第2リンク56の底部側が連結されている。それゆえ、第1のプーリーを回転させると、ベルトを介して第2のプーリー及び第2リンク56が回転し、第2リンク56はAB平面と平行な平面内で回転する。
【0065】
第2リンク56の他端側に位置する第2リンク56の上部側には、第3方向Cと略平行に設けられた第3回転軸(不図示)が連結されている。第3回転軸は、円筒筐体58の内部に収容されている。第3回転軸の底部には、モータ等の第2駆動源(不図示)が連結されている。
【0066】
また、第3回転軸の上部には、第3リンク60の底部側が連結されている。第2駆動源を動作させることにより、第3リンク60は、第3回転軸を支点として、AB平面と平行な平面内で回転する。第3リンク60の側部には、AB平面と平行な直線に沿うアーム回転軸62が設けられている。
【0067】
アーム回転軸62の一端側には、第3リンク60の筐体内に設けられたモータ等の第3駆動源(不図示)が連結されている。第3駆動源を動作させることで、アーム回転軸62は、AB平面と平行な直線を回転軸として回転する。このモータ及びアーム回転軸62が、ロボットハンド66を回転させて向きを変更する回転機構として機能する。回転機構は、ロボットハンド66を回転させて後述の吸引面68dが向く方向を変更できる。
【0068】
アーム回転軸62の他端側には、直方体状のアーム64の一端側が固定されている。アーム64の他端側には、エンドエフェクタとしてのロボットハンド66が接続されている。ロボットハンド66は、金属、セラミックス等で形成された保持板68を有する。
【0069】
保持板68は、ロボットハンド66の一端側(即ち、アーム64側)に位置する矩形状のリスト部68aを有する。また、リスト部68aに対してアーム64とは反対側には、リスト部68aよりも幅広の接続部68bが設けられている。
【0070】
接続部68bに対してリスト部68aと反対側には、接続部68bの幅方向の中心に対して左右対称な態様で2個のフィンガー部68cが設けられている。各フィンガー部68cは、アーム回転軸62の軸方向と略平行な方向(即ち、保持板68の長さ方向)に沿って延伸している。また、2個のフィンガー部68cは、保持板68の長さ方向に直交する保持板68の幅方向において互いに離間している。
【0071】
保持板68の表面には、複数のパッド70が設けられている。各パッド70は、被加工物1を吸引するための吸引保持部を構成する。保持板68のこのパッド70が設けられた面がロボットハンド66の吸引面68dとなる。
【0072】
接続部68bには2個のパッド70が設けられており、この2個のパッド70は、保持板68の幅方向において互いに離れる態様で配置されている。また、各フィンガー部68cには2個のパッド70が設けられており、この2個のパッド70は、保持板68の長さ方向に沿って互いに離れるように配置されている。但し、パッド70の数、配置等は上述の例に限定されない。
【0073】
各パッド70は略円盤状であり、各パッド70の露出面側には、環状の凹部が設けられている。この環状の凹部の内周側の側部には、エアー等の流体を噴射するための複数のノズル(不図示)が、凹部の周方向に沿って離散的に設けられている。例えば、凹部の周方向に沿って、等距離だけ離れるように4つのノズルが設けられている。
【0074】
各ノズルには、エアー供給源(不図示)からエアーが供給される。各パッド70の露出面側からエアーが噴射された状態で、各パッド70に対面するように被加工物1の一面(例えば、裏面)が位置付けられると、エアーは、被加工物1の一面とパッド70との隙間を流れる。
【0075】
隙間を流れるエアーの流速が高まると、隙間の圧力はベルヌーイの定理に従って低下する。これにより、パッド70の露出面側には、大気圧よりも所定の圧力だけ低い負圧が発生する。この負圧により、被加工物1は、吸引面68d及びパッド70に接触することなく、非接触で吸引面68dに吸引保持される。このように、ロボットハンド66は被加工物1に接触せずに被加工物1を保持できる非接触保持ユニットとして機能できる。
【0076】
パッド70の露出面側から噴射されるエアーは、例えば、サイクロン状に噴射されるが、放射状に噴射されてもよい。なお、噴射されるエアーにより、被加工物1の一面と平行な平面内で被加工物1が回転しないように、エアーの噴射の向き、流量等は適宜調整される。
【0077】
ただし、ロボットハンド66のパッド70からはエアーが噴射されなくてもよく、ロボットハンド66の吸着機構はベルヌーイの定理を利用した吸着機構に限定されない。すなわち、ロボットハンド66は、非接触保持ユニットでなくてもよい。例えば、パッド70からはエアーが吸引されてもよく、ロボットハンド66は吸引面68dに接触する被加工物1に負圧を作用して被加工物1を吸引保持してもよい。すなわち、ロボットハンド66は接触保持ユニットとして機能してもよい。
【0078】
なお、ロボットハンド66の吸着機構がベルヌーイの定理を利用した吸着機構である場合、被加工物1に噴射されたエアーにより、被加工物1に付着した屑がロボットハンド66に転移することがある。また、ロボットハンド66が被加工物1に負圧を作用させて吸着する場合、被加工物1に付着した屑が直接的にロボットハンド66に転移することがある。
【0079】
ロボットハンド66には、複数のパッド70で吸引保持された被加工物1の一面と平行な方向で、被加工物1の移動を規制する3個以上のローラークランプ(規制部材)72が設けられている。なお、被加工物1の一面に平行な方向での被加工物1の移動とは、第1方向A、第2方向B等の直線方向を意味し、所定の軸を中心とした被加工物1の回転を意味するものではない。
【0080】
ローラークランプ72は、各フィンガー部68cの先端部に1個設けられている。更に、リスト部68aの側方には、1対のローラークランプ72が設けられている。つまり、搬送ロボット10には、合計4個のローラークランプ72が設けられている。リスト部68aの側方に設けられる1対のローラークランプ72は、保持板68の長さ方向に沿って移動可能である。
【0081】
次に、搬送ロボット10の動作態様について説明する。搬送ロボット10は、移動機構50を作動させることにより、ロボットハンド66を移動できる。それぞれ被加工物1が収容された複数の収容領域を含むカセット8a,8bがカセットステージ6a,6bに載置されたとき、搬送ロボット10は被加工物1をカセット8a,8bから搬出し、位置決めテーブル12に搬送する。
【0082】
搬送ロボット10は、搬送作業を実施するため、移動機構50を作動させることによりロボットハンド66をカセットステージ6a,6bに載置されたカセット8a,8bに挿入できる。ロボットハンド66がカセット8a,8bに挿入される際、予めカセットステージ6a,6bを昇降させ、搬送対象となる被加工物1が収容された収容領域の高さと、ロボットハンド66の高さと、を対応させる。
【0083】
そして、搬送ロボット10は、ロボットハンド66をカセット8a,8bに挿入させ、吸引面68dを被加工物1の一面に対面させ、ロボットハンド66の吸引機構を作動させて被加工物1を吸引保持する。その後、ロボットハンド66がカセット8a,8bから引き出されると、カセット8a,8bから被加工物1が搬出される。
【0084】
そして、搬送ロボット10は、ロボットハンド66を位置決めテーブル12に移動させ、ロボットハンド66による被加工物1の吸引保持を解除する。すると、位置決めテーブル12に被加工物1が載置され、被加工物1の搬送が完了する。
【0085】
また、被加工物1の加工が完了して被加工物1が洗浄ユニット48で洗浄されたとき、搬送ロボット10は被加工物1を洗浄ユニット48から搬出し、カセット8a,8bに搬送する。
【0086】
搬送ロボット10は、ロボットハンド66を洗浄ユニット48に移動させ、吸引面68dを被加工物1の一面に対面させ、ロボットハンド66の吸引機構を作動させて被加工物1を吸引保持する。その後、ロボットハンド66が洗浄ユニット48から引き出されると、洗浄ユニット48から被加工物1が搬出される。
【0087】
そして、搬送ロボット10は、ロボットハンド66を被加工物1の収容先となるカセット8a,8bの収容領域に移動させ、ロボットハンド66による被加工物1の吸引保持を解除する。すると、被加工物1のカセット8a,8bへの収容が完了する。
【0088】
このように、搬送ロボット10は、カセット8a,8bの収容領域に収容された被加工物1をロボットハンド66で吸引保持して取り出して搬送する機能を有する。また、加工ユニット26で加工され洗浄ユニット48で洗浄された被加工物1をカセット8a,8bの収容領域に搬送して収容する機能を有する。
【0089】
保護テープ3が貼着されてカセット8a,8bに収容されている被加工物1には、テープ屑等の屑が付着していることがある。また、加工ユニット26により加工された被加工物1には加工屑等の屑が付着することがあり、洗浄ユニット48で被加工物1を洗浄しても極僅かな屑が被加工物1に残ることがある。
【0090】
屑が付着した被加工物1をロボットハンド66で吸引保持して搬送すると、ロボットハンド66に被加工物1に付着していた屑が移ることがある。屑が付着したロボットハンド66を使用して別の被加工物1を搬送するとき、ロボットハンド66からこの別の被加工物1に屑が移るという問題が生じることがある。そこで、本実施形態に係る加工装置2は、洗浄ユニット48を利用してロボットハンド66を洗浄する。
【0091】
搬送ロボット10は、ロボットハンド66を洗浄ユニット48の洗浄領域(洗浄室)48aに挿入できる。そして、洗浄ユニット48は、洗浄領域48aに挿入されたロボットハンド66に洗浄ノズル84から洗浄流体86を供給してロボットハンド66を洗浄できる。
【0092】
ロボットハンド66の洗浄について詳細に説明する。図3は、搬送ロボット10と、ロボットハンド66を洗浄する洗浄ユニット48と、を模式的に示す斜視図である。ロボットハンド66の洗浄を実施する際、回転機構を作動させてアーム回転軸62の周りにロボットハンド66を回転させ、洗浄の対象となる面を上方に向ける。
【0093】
そして、移動機構50を作動させて、ロボットハンド66を洗浄ユニット48の洗浄領域48aに挿入する。このとき、ロボットハンド66はスピンナテーブル74と重なる位置まで進入させることが好ましい。これは、洗浄ノズル84を容易にロボットハンド66の上方に移動できるようにするためである。次に、洗浄機構78の洗浄軸部80を回転させて洗浄ノズル84をロボットハンド66の上方に移動させる。すると、洗浄ノズル84がロボットハンド66の被洗浄面に対面する。
【0094】
そして、洗浄ノズル84から洗浄流体86を噴出させながら洗浄軸部80を回転させ、洗浄ノズル84を移動させる。また、搬送ロボット10の移動機構50を作動させてロボットハンド66を洗浄ノズル84の下方で移動させる。これにより、ロボットハンド66における洗浄流体86の当たる位置を切り替えつつ、ロボットハンド66の被洗浄面の全域を洗浄流体86で洗浄できる。このとき、ロボットハンド66に付着していた屑等は洗浄流体86に取り込まれて排除されるため、屑等の飛散が問題となることはない。
【0095】
なお、洗浄ノズル84からロボットハンド66に供給される洗浄流体86は、洗浄ユニット48で被加工物1が洗浄される際に被加工物1に供給される洗浄流体と同様に構成されるとよい。例えば、洗浄ノズル84からロボットハンド66には、液体及び高圧気体の混合流体や、液体が供給される。例えば、液体は純水であり、高圧気体は空気(エアー)又は窒素ガス等である、ただし、洗浄流体86はこれに限定されず、被加工物1に供給されるものとは別種の洗浄流体86がロボットハンド66に供給されてもよい。
【0096】
また、洗浄ユニット48は、液体と、液体及び高圧気体の混合流体と、の一方又は両方を洗浄流体86として洗浄ノズル84からロボットハンド66に供給可能であるとともに、高圧気体を洗浄ノズル84からロボットハンド66に供給可能でもよい。この場合、洗浄ノズル84からロボットハンド66に洗浄流体86を供給してロボットハンド66を洗浄した後、洗浄ノズル84からロボットハンド66に高圧気体を供給してロボットハンド66を乾燥できる。
【0097】
さらに、洗浄ユニット48で洗浄されるロボットハンド66の被洗浄面は切り替え可能でもよく、ロボットハンド66の各面が洗浄ユニット48で洗浄されてもよい。搬送ロボット10は、ロボットハンド66を回転させて吸引面68dが向く方向を変更できる回転機構を利用して被洗浄面を切り替える。
【0098】
例えば、搬送ロボット10は、ロボットハンド66の吸引面68dが洗浄ノズル84に対面するようにロボットハンド66を洗浄領域48aに挿入できる。そして、洗浄ユニット48は、洗浄領域48aに挿入されたロボットハンド66の吸引面68dを洗浄できる。
【0099】
また、搬送ロボット10は、ロボットハンド66の吸引面68dが洗浄ノズル84に対面しないようにロボットハンド66を洗浄領域48aに挿入できる。そして、洗浄ユニット48は、洗浄領域48aに挿入されたロボットハンド66の吸引面68dではない面を洗浄できる。
【0100】
このように、本実施形態に係る加工装置2では、ロボットハンド66の向きを予め調整して洗浄領域48aにロボットハンド66が挿入されることで、ロボットハンド66の任意の面が洗浄される。また、ロボットハンド66を回転させることで、ロボットハンド66の被洗浄面を切り替えられる。なお、被洗浄面を切り替える際には、ロボットハンド66が他の要素等に衝突しないように、ロボットハンド66が一時的に洗浄領域48aから出されてもよい。
【0101】
以上に説明する通り、本実施形態に係る加工装置2では、洗浄ユニット48を利用してロボットハンド66を洗浄できる。そのため、ロボットハンド66に付着した屑等が洗浄により洗い流されるため、ロボットハンド66に付着した屑が被加工物1等に付着して問題を起こすことがない。そして、本実施形態に係る加工装置2では、被加工物1の洗浄に利用される洗浄ユニット48を利用して加工装置2を停止することなくロボットハンド66を十分に洗浄できるため、ロボットハンド66を低コストに洗浄できる。
【0102】
ここで、本実施形態に係る加工装置2で洗浄ユニット48を利用したロボットハンド66の洗浄が実施されるタイミングについて説明する。洗浄ユニット48を利用したロボットハンド66の洗浄は、洗浄ユニット48において被加工物1の洗浄が実施されている際には実施できない。また、洗浄ユニット48を利用したロボットハンド66の洗浄は、洗浄対象であるロボットハンド66が使用される間、すなわち、ロボットハンド66が被加工物1を吸引保持する間には実施できない。そして、その他のタイミングでロボットハンド66の洗浄が実施可能となる。
【0103】
洗浄ユニット48は、搬送ロボット10による被加工物1の搬送前と、搬送後と、の一方または両方において、ロボットハンド66を洗浄できる。より詳細には、カセット8a,8bから位置決めテーブル12への被加工物1の搬送作業を実施する前に、洗浄ユニット48によるロボットハンド66の洗浄が実施されるとよい。または、位置決めテーブル12への搬送が完了した後にロボットハンド66の洗浄が実施されるとよい。
【0104】
位置決めテーブル12への搬送が完了した後にロボットハンド66の洗浄が実施される場合、位置決めテーブル12による被加工物1の位置決め工程や、加工ユニット26による被加工物1の加工が実施される間に洗浄が実施されてもよい。
【0105】
また、洗浄ユニット48からカセット8a,8bへの被加工物1の搬送作業を実施する前に、洗浄ユニット48によるロボットハンド66の洗浄が実施されるとよい。または、カセット8a,8bへの被加工物1の搬送が完了した後にロボットハンド66の洗浄が実施されるとよい。洗浄ユニット48からカセット8a,8bへの被加工物1の搬送を実施する前にロボットハンド66の洗浄が実施される場合、加工後の被加工物1が洗浄のために洗浄ユニット48に搬送される前にロボットハンド66の洗浄が実施されるとよい。
【0106】
なお、加工装置2では、すべての被加工物1の加工の前後において洗浄ユニット48によるロボットハンド66の洗浄が実施される必要はない。すなわち、複数の被加工物1が加工された後、所定のタイミングでロボットハンド66の洗浄が実施されてもよい。例えば、所定の数の被加工物1が加工された後にロボットハンド66の洗浄が実施されてもよい。
【0107】
この場合においても、洗浄ユニット48によるロボットハンド66の洗浄が加工装置2で実施されると、ロボットハンド66の清掃のためのメンテナンスの頻度を低減できるため、加工装置2の停止時間を削減できる。すなわち、加工装置2の稼働効率を高めることができ、加工装置2で加工されるすべての被加工物1において加工に要する時間や加工までに待機する時間を短縮できるとの利点がある。したがって、洗浄が実施されてから時間が経過したロボットハンド66により扱われる被加工物1にも、利点がある。
【0108】
次に、加工装置2の使用方法として、加工装置2で実施される被加工物1の加工方法について説明する。図5(A)は、被加工物1の加工方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。加工装置2における被加工物1の加工方法では、まず、カセット8a,8bに収容された被加工物1を搬送ロボット10のロボットハンド66で吸引保持して搬送する第1搬送ステップS10を実施する。
【0109】
第1搬送ステップS10では、搬送ロボット10の移動機構50を作動させて、カセット8a,8bの収容領域に向けてロボットハンド66を挿し入れ、ロボットハンド66の吸引面68dを被加工物1に対面させる。このとき、予めカセットステージ6a,6bを昇降させて、搬出の対象となる被加工物1が収容された収容領域の高さをロボットハンド66の高さに合わせておく。
【0110】
そして、ロボットハンド66で被加工物1を吸引保持し、移動機構50を作動させてロボットハンド66をカセット8a,8bから引き抜くと、被加工物1がカセット8a,8bから搬出される。その後、ロボットハンド66を位置決めテーブル12に移動させ、ロボットハンド66による被加工物1の吸引保持を解除させると、位置決めテーブル12に被加工物1が載置され、搬送ロボット10による被加工物1の搬送作業が完了する。
【0111】
第1搬送ステップの後、被加工物1を加工ユニット26で加工する加工ステップS20を実施する。加工ステップS20では、チャックテーブル20に被加工物1を保持させる。すなわち、X軸移動テーブル18を搬出入領域22に位置付けておき、位置決めテーブル12で所定の位置に位置付けられた被加工物1を被加工物搬入機構14で保持面20a上に搬入する。
【0112】
このとき、保護テープ3が貼着された被加工物1の表面を保持面20aに向け、被加工面となる裏面を上方に向ける。そして、チャックテーブル20の吸引源を作動させて、チャックテーブル20で被加工物1を吸引保持する。そして、X軸移動テーブル18を加工領域24に移動させる。
【0113】
次に、チャックテーブル20で保持された被加工物1にスラリーを供給しながら被加工物1を加工具(研磨ホイール)44で加工(研磨)する。より詳細には、チャックテーブル20及び加工具44をそれぞれの軸の周りに回転させる。そして、スラリーを被加工物1に供給しつつ、加工ユニット26を下降させて研磨パッドを被加工物1の被加工面に接触させる。すると、被加工面が平坦化される。
【0114】
加工ステップS20の後、洗浄ユニット48で被加工物1を洗浄する被加工物洗浄ステップS30を実施する。洗浄ユニット48で被加工物1を洗浄するために、X軸移動テーブル18を搬出入領域22に移動させ、チャックテーブル20による被加工物1の吸引保持を解除し、被加工物1を被加工物搬出機構16で洗浄ユニット48に搬送する。
【0115】
洗浄ユニット48では、スピンナテーブル74に被加工物1が載せられる。そして、スピンナテーブル74で被加工物1を吸引保持する。洗浄ユニット48が洗浄領域48aを外部空間から隔離するためのカバーを備える場合、洗浄領域48aに被加工物1が搬入された後、カバーで洗浄領域48aを閉じる。
【0116】
その後、洗浄機構78の洗浄ノズル84を被加工物1の上方に位置付け、スピンナテーブル74の回転を開始する。そして、洗浄ノズル84から被加工物1への洗浄流体86の供給を開始すると、被加工物1に付着した加工屑やスラリー等の屑が洗浄流体86により除去されて、被加工物1が洗浄される。
【0117】
そして、スピンナテーブル74の回転を継続した状態で被加工物1への洗浄流体86の供給を停止すると、被加工物1に付着した洗浄流体86が遠心力により除去されるとともに、被加工物1が乾燥される。なお、被加工物1を乾燥する際には、洗浄ノズル84から水分を含まない空気、または、窒素ガス等の高圧気体を被加工物1に噴射させてもよい。なお、洗浄領域48aがカバーにより閉じられている場合、被加工物1の乾燥が完了した後、カバーが開けられる。
【0118】
加工装置2における被加工物1の加工方法では、被加工物洗浄ステップS30の後、被加工物1をロボットハンド66で吸引保持してカセット8a,8bに搬送して被加工物1をカセットに収容する第2搬送ステップS40を実施する。第2搬送ステップS40では、まず、搬送ロボット10の移動機構50を作動させて、洗浄ユニット48の洗浄領域48aに向けてロボットハンド66を挿し入れ、ロボットハンド66の吸引面68dを被加工物1に対面させる。
【0119】
そして、ロボットハンド66で被加工物1を吸引保持し、移動機構50を作動させてロボットハンド66を洗浄領域48aから引き抜くと、被加工物1が洗浄ユニット48から搬出される。その後、被加工物1の収容先となるカセット8a,8bにロボットハンド66を移動させる。このとき、予めカセットステージ6a,6bを昇降させて、被加工物1の搬入の対象となる収容領域の高さをロボットハンド66の高さに合わせておく。
【0120】
そして、ロボットハンド66を収容領域に挿し入れさせ、ロボットハンド66による被加工物1の吸引保持を解除させると、カセット8a,8bの収容領域に被加工物1が収容される。これにより、第2搬送ステップS40が終了する。そして、カセット8a,8bに収容された各被加工物1がカセット8a,8bから搬出され、加工され、洗浄され、再びカセット8a,8bに戻されたとき、カセット8a,8bがカセットステージ6a,6bから搬出される。すなわち、加工装置2から被加工物1が搬出される。
【0121】
カセット8a,8bに収容されて加工装置2に搬送された被加工物1には、保護テープ3の貼着に伴い発生したテープ屑等の屑が付着していることがある。また、洗浄ユニット48で加工後の被加工物1を洗浄すると、被加工物1に付着した屑等の大部分が除去される。しかしながら、被加工物1に僅かに屑が残ることがある。屑が付着した被加工物1をロボットハンド66で吸引保持すると、この屑がロボットハンド66に転移することがある。
【0122】
そこで、本実施形態に係る加工装置2では、搬送ロボット10のロボットハンド66を洗浄ユニット48で洗浄するロボットハンド洗浄ステップS50が実施される。ロボットハンド洗浄ステップS50では、例えば、ロボットハンド66の吸引面68dが洗浄される。図3には、洗浄ユニット48で洗浄されるロボットハンド66を模式的に示す斜視図が含まれている。また、図4は、洗浄されるロボットハンド66と、洗浄機構78と、を模式的に示す平面図である。
【0123】
ロボットハンド洗浄ステップS50では、洗浄領域48aに被加工物1が収容されていない状態で、ロボットハンド66が洗浄領域48aに挿し入れられる。そして、洗浄軸部80を回転させて洗浄ノズル84をロボットハンド66の上方で往復移動させながら、洗浄ノズル84から洗浄流体86をロボットハンド66に供給させる。すると、ロボットハンド66が洗浄流体86により洗浄される。
【0124】
ロボットハンド66の吸引面68dを洗浄する際には、吸引面68dを上方に向ける。すなわち、吸引面68dを洗浄ノズル84に向ける。ただし、ロボットハンド66の被洗浄面は、吸引面68dに限定されない。すなわち、ロボットハンド洗浄ステップS50では、さらに、ロボットハンド66の吸引面68dではない面が洗浄されてもよい。
【0125】
例えば、ロボットハンド洗浄ステップS50では、吸引面68dの洗浄を実施した後に吸引面68dとは反対側の面が洗浄される。または、吸引面68dとは反対側の面が洗浄された後に吸引面68dが洗浄される。ロボットハンド66の被洗浄面を切り替える際には、アーム回転軸62を中心軸としてロボットハンド66を180°回転させる。
【0126】
ただし、スピンナテーブル74及び洗浄ノズル84の間でロボットハンド66を回転させると、ロボットハンド66がこれらに衝突するおそれがある。そこで、ロボットハンド66の被洗浄面を切り替える際には、洗浄領域48aからロボットハンド66を一時的に引き抜いておくとよい。そして、ロボットハンド66の回転を洗浄ユニット48の外部で実施するとよい。
【0127】
なお、洗浄流体86でロボットハンド66を洗浄する際には、洗浄ノズル84のみならずロボットハンド66自体も移動するとよい。例えば、移動機構50を作動させてロボットハンド66を前後左右に移動させる。これにより、ロボットハンド66の被洗浄面を全面的に洗浄できる。
【0128】
また、ロボットハンド洗浄ステップS50では、洗浄流体86をロボットハンド66に供給してロボットハンド66を洗浄した後、ロボットハンド66に高圧気体を供給してロボットハンド66を乾燥してもよい。ロボットハンド66を高圧気体で乾燥すると、ロボットハンド66に残る洗浄流体86がロボットハンド66に保持される被加工物1に付着することがない。
【0129】
なお、ロボットハンド洗浄ステップS50は、第1搬送ステップS10の前と、第1搬送ステップS10と第2搬送ステップS40の間と、第2搬送ステップS40の後と、のうち一つまたは複数において実施される。次に、ロボットハンド洗浄ステップS50が実施されるタイミングについて説明する。
【0130】
例えば、ロボットハンド洗浄ステップS50は、第1搬送ステップS10が実施される前に実施される。図5(B)は、この場合における各ステップの流れを示すフローチャートである。この場合、第1搬送ステップS10で搬送の対象となる被加工物1の搬送が実施される前に実施された他の被加工物1の搬送によりロボットハンド66に付着した屑等がロボットハンド洗浄ステップS50において洗浄される。そのため、第1搬送ステップS10において被加工物1に屑等が付着することがない。
【0131】
また、例えば、ロボットハンド洗浄ステップS50は、第1搬送ステップS10と第2搬送ステップS40の間に実施される。この場合、第1搬送ステップS10において被加工物1からロボットハンド66に転移した屑等がロボットハンド洗浄ステップS50でロボットハンド66から除去される。そのため、加工され洗浄された被加工物1が搬送ロボット10によりカセット8a,8bに搬送される際、屑等が被加工物1に再付着することがない。
【0132】
さらに、例えば、ロボットハンド洗浄ステップS50は、第2搬送ステップS40が実施された後に実施される。図5(A)は、この場合における各ステップの流れを示すフローチャートである。この場合、ここまで説明した被加工物1の加工方法で加工された被加工物1の搬送によりロボットハンド66に付着した屑等がロボットハンド洗浄ステップS50でロボットハンド66から除去される。そのため、次に加工装置2で加工される被加工物1を加工装置2で加工する際、当該被加工物1にロボットハンド66から屑等が転移することがない。
【0133】
そして、ロボットハンド洗浄ステップS50が実施されるタイミングについて3通り説明したが、ロボットハンド洗浄ステップS50はそのうちいずれか一つのタイミングで実施されてもよく、いずれか二つのタイミングで実施されてもよい。さらに、ロボットハンド洗浄ステップS50は、上述のすべてのタイミングで実施されてもよい。
【0134】
また、ロボットハンド洗浄ステップS50が第2搬送ステップS40の後に実施される場合、ロボットハンド洗浄ステップS50は、第2搬送ステップS40が実施された後、すぐ直後に実施される必要はない。例えば、第2搬送ステップS40が実施された後、ロボットハンド洗浄ステップS50が実施されるまでの間、第2搬送ステップS40で搬送対象となった被加工物1ではない他の単数または複数の被加工物1の加工が加工装置2で実施されてもよい。
【0135】
そして、加工装置2で複数の被加工物1の加工及び洗浄が実施された後、ロボットハンド洗浄ステップS50が実施されてもよい。この場合においても、この被加工物1の加工方法ではロボットハンド66の洗浄が定期的に実施されるため、ロボットハンド66から被加工物1への屑の転移が抑制される。また、ロボットハンド66の洗浄のために加工装置2を止めてメンテナンスを実施する必要がなく、高効率な加工という利益をすべての被加工物1が享受する。
【0136】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、搬送ロボット10がカセット8a,8bと、位置決めテーブル12若しくは洗浄ユニット48と、の間で被加工物1を搬送する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0137】
例えば、加工装置2は、位置決めテーブル12からチャックテーブル20へ被加工物1を搬送する被加工物搬入機構(ローディングアーム)14を備えなくてもよい。さらに、加工装置2は、被加工物1をチャックテーブル20から搬出する被加工物搬出機構(アンローディングアーム)16を備えなくてもよい。そして、チャックテーブル20への被加工物1の搬出入が搬送ロボット10により実施されてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、加工装置2で被加工物1が研磨される場合について説明した。すなわち、加工装置2が研磨装置である場合を例に説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。加工装置2は、被加工物1を切削する切削装置でもよく、被加工物1をレーザ加工するレーザ加工装置でもよく、被加工物1を研削する研削装置でもよい。
【0139】
例えば、加工装置2が被加工物1を研削する研削装置である場合、加工ユニット26には、加工具44として研削ホイールが装着される。研削ホイールは、マウント42に対して固定される円環状ホイールベースと、ホイールベースの下面に円環状に配設された複数の研削砥石と、を含む。研削ホイールを回転させて円環軌道上で研削砥石を移動させつつ研削砥石の下面を被加工物1の被加工面に接触させると、被加工物1が研削され薄化される。
【0140】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0141】
1 被加工物
3 保護テープ
2 加工装置
4 基台
4a 開口
4b 排水口
6a,6b カセットステージ
8a,8b カセット
10 搬送ロボット
12 位置決めテーブル
14 被加工物搬入機構
16 被加工物搬出機構
18 X軸移動テーブル
20 チャックテーブル
20a 保持面
22 搬出入領域
24 加工領域
26 加工ユニット
28 支持部
30 Z軸ガイドレール
32 Z軸移動プレート
34 Z軸ボールねじ
36 Z軸パルスモータ
38 スピンドルハウジング
40 スピンドル
42 マウント
44 加工具
46 固定具
48 洗浄ユニット
48a 洗浄領域
50 移動機構
52 第1支持回転部
54 第1リンク
56 第2リンク
58 円筒筐体
60 第3リンク
62 アーム回転軸
64 アーム
66 ロボットハンド
68 保持板
68a リスト部
68b 接続部
68c フィンガー部
68d 吸引面
70 パッド
72 ローラークランプ
74 スピンナテーブル
76 多孔質部材
78 洗浄機構
80 洗浄軸部
82 洗浄腕部
84 洗浄ノズル
86 洗浄流体
図1
図2
図3
図4
図5