(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148335
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カボチャペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20241010BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20241010BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20241010BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L23/00
A23L7/109 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061388
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】原口 麻紀
【テーマコード(参考)】
4B016
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LC03
4B016LE04
4B016LG05
4B016LK18
4B016LP01
4B016LP05
4B016LP13
4B036LC01
4B036LE02
4B036LF03
4B036LH04
4B036LH12
4B036LH14
4B036LH25
4B036LH29
4B036LH39
4B036LH41
4B036LH44
4B036LH48
4B036LH49
4B036LH50
4B036LK01
4B036LP01
4B046LA06
4B046LB04
4B046LC17
4B046LE15
4B046LG33
4B046LG46
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】本発明は、畜乳や卵様のコクのある風味を有し、しかもなめらかな舌触りがあるソースを得ることができるカボチャペーストの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】カボチャペーストに特定の条件でαアミラーゼを作用させることにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カボチャペーストにαアミラーゼを作用させる工程を含み、下記条件i及びiiを満たす、カボチャペーストの製造方法。
条件i:αアミラーゼの量がカボチャペースト100gに対して180ユニット以上である。
条件ii:αアミラーゼの作用条件が4℃~12℃で11時間以上である。
【請求項2】
前記工程の前に、下記工程1及び2を含む、請求項1に記載の方法。
工程1:カボチャ原料を加熱処理する工程
工程2:工程1で加熱処理したカボチャ原料をペースト化する工程
【請求項3】
工程1と工程2との間に、加熱処理したカボチャ原料を急速冷却する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ソース原料全量に対して請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により得られるカボチャペーストを2~10質量%使用する、ソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カボチャペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵や畜乳製品を含んだカルボナーラソースは卵や畜乳独特の舌触りやコク深い風味、及び鮮やかな色彩等から、好んで食されてきた。一方で、近年は、健康や環境への配慮や、植物性食品への嗜好の高まり等から、卵や畜乳を使用せずに植物性食品を使用した様々な卵や畜乳の代替組成物が開発されている。
【0003】
卵は、卵黄の色に似せたるため、人参やカボチャで代用されることがあり、畜乳は、プラントベースミルクといわれる豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ライスミルク、ココナッツミルクで代用されることがある。卵や畜乳を植物性食品で代用する料理が増えているが、舌触りや風味にさらなる改善が求められている。
【0004】
カボチャソースの風味や口当たり、色調を改善するために種々検討されている。
【0005】
特許文献1には、カボチャの裏ごし、スライスマッシュルーム、乳類及びタマネギを含み、カボチャの裏ごしの含有量が10~45重量%、乳類の含有量が5~40重量%であるパンプキンソースのレトルト食品が記載されている。特許文献2には、カボチャペースト、香味野菜ペースト及び乳類を含み、乳類の含有量が1~3質量%に抑えられたパンプキンソースが記載されている。特許文献3には、カボチャピューレを固形分量として0.5~15質量%、乳原料を固形分量として5~20質量%、及びリン酸架橋澱粉を0.1~2質量含有するカボチャソースの製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献1及び2に記載のパンプキンソースは、長期保存が可能であることを特徴とするものであるが、コクが不十分で、舌触りの点でも改善の余地があった。特許文献3に記載のカボチャソースはなめらかさが改善されてはいるが、コクが不十分であった。また、特許文献1~3のいずれも、畜乳類を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60-49774号公報
【特許文献2】特開昭63-157961号公報
【特許文献3】特開2020-18223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、畜乳や卵様のコクのある風味を有し、しかもなめらかな舌触りがあるソースを得ることができるカボチャペーストの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、カボチャペーストに特定の条件でαアミラーゼを作用させることで、畜乳や卵様のコクのある風味を有し、しかもなめらかな舌触りがあるソースを得ることができるカボチャペーストを製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕カボチャペーストにαアミラーゼを作用させる工程を含み、下記条件i及びiiを満たす、カボチャペーストの製造方法。
条件i:αアミラーゼの量がカボチャペースト100gに対して180ユニット以上である。
条件ii:αアミラーゼの作用条件が4℃~12℃で11時間以上である。
〔2〕前記工程の前に、下記工程1及び2を含む、〔1〕に記載の方法。
工程1:カボチャ原料を加熱処理する工程
工程2:工程1で加熱処理したカボチャ原料をペースト化する工程
〔3〕工程1と工程2との間に、加熱処理したカボチャ原料を急速冷却する工程を含む、〔2〕に記載の方法。
〔4〕ソース原料全量に対して〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法により得られるカボチャペーストを2~10質量%使用する、ソースの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、畜乳や卵を使用しないにも関わらず、畜乳や卵様のコクのある風味を有し、しかもなめらかな舌触りがあるソースを得ることができる。また、加熱したカボチャ原料を急速冷却することにより、より鮮やかな黄味色のソースを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、カボチャペーストにαアミラーゼを作用させる工程を含み、下記条件i及びiiを満たす、カボチャペーストの製造方法に関する。
条件i:αアミラーゼの量がペースト100gに対して180ユニット以上である。
条件ii:αアミラーゼの作用条件が4℃~12℃で11時間以上である。
【0013】
(1)ペーストにαアミラーゼを作用させる工程
(1-1)αアミラーゼ
「αアミラーゼ」とは、澱粉のα-1,4結合を加水分解する酵素である。食品加工用に通常使用されるαアミラーゼであれば、起源や分解型に制限なく本発明に使用することができる。αアミラーゼとしては、市販品を用いることができ、例えば、ビオザイムA(天野エンザイム社製、Aspergillus属起源)、クライスターゼE5CC(天野エンザイム社製、Bacillus属起源)、クライスターゼT10S(天野エンザイム社製、Bacillus属起源)等を挙げることができる。
【0014】
なお、αアミラーゼ活性は、食品添加物天野法によりでんぷん糊を基質として27℃でpH5.0の条件下で測定した場合の活性単位(u/g)として表記される。
【0015】
(1-2)αアミラーゼを作用させる工程
カボチャペーストにαアミラーゼを添加して混合する。その際、カボチャペーストを20℃以下に冷却しておくことで、αアミラーゼの失活、カボチャペーストの色調の変化、および微生物の増加を抑制することができる。αアミラーゼは、粉体として添加してもよいし、少量の水に溶かして添加してもよい。混合は、カボチャペーストにαアミラーゼが均一に分散すればよい。αアミラーゼと混合したカボチャペーストを密閉容器に入れ、温度を一定に保って酵素を作用させる。
【0016】
(1-3)αアミラーゼの添加量(条件i)
カボチャペースト100gに対し、αアミラーゼを180ユニット以上、好ましくは190ユニット以上、より好ましくは200ユニット以上添加する。αアミラーゼの添加量が上記範囲内であれば、なめらかでコク味のあるカボチャペーストを得ることができる。一定の添加量を超えてもそれ以上は食感や風味の向上はみられず、製造コストを抑える観点から、αアミラーゼの添加量は、カボチャペースト100gに対し、1000ユニット以下が好ましく、900ユニット以下がより好ましく、800ユニット以下がさらに好ましい。例えば、カボチャペーストに対してビオザイムA(天野エンザイム社製、αアミラーゼ)を0.03~0.1質量%添加すればよい。
【0017】
(1-4)αアミラーゼの反応温度および反応時間(条件ii)
本発明では、酵素反応温度は4℃~12℃、好ましくは5~10℃である。上記範囲内でαアミラーゼを作用させれば、適度に酵素反応が進み、なめらかな食感とコク味を有するカボチャペーストを得ることができる。また、微生物制御の観点からも、12℃以下に保つことが好ましい。酵素反応時間は11時間以上、好ましくは12時間以上、さらに好ましくは24時間以上である。11時間以上であれば、αアミラーゼが十分に作用し、カポチャペーストがなめらかになりコク味がでる。一定の反応時間を超えてもそれ以上食感や風味の向上はみられず、製造効率の観点から、酵素反応時間は50時間以下であることが好ましく、45時間以下であることがより好ましく、40時間以下であることがさらに好ましい。
【0018】
酵素反応を止めるために、酵素失活処理を行ってもよい。具体的には、所定時間の酵素反応後にカボチャペーストを加熱してαアミラーゼを熱変性させ、その触媒作用を失わせる。αアミラーゼを失活させるには、例えば90~100℃で10~30分間加熱処理すればよい。
【0019】
本発明において、αアミラーゼを作用させるカボチャペーストを、カボチャ原料を加熱処理する工程(工程1)及び加熱処理したカボチャ原料をペースト化する工程(工程2)により調製してもよい。
【0020】
(2)カボチャ原料を加熱処理する工程(工程1)
(2-1)カボチャ原料
本発明において「カボチャ原料」は、ウリ科カボチャ属に属する果菜の果実を指し、生鮮、冷凍、品種、産地など特に限定されない。カボチャ原料は、収穫したものをそのまま使用することもできるが、加熱処理の前に洗浄、皮むき、不要なヘタや種やワタの除去などの前処理を行ったものであることが好ましい。
【0021】
(2-2)加熱処理
「加熱処理」とは、カボチャ原料を加熱により喫食可能にすることをいう。加熱方法は、茹で、蒸し、電子レンジ、過熱水蒸気など、喫食可能にできれば特に限定されない。加熱温度や加熱時間は、加熱方法やカボチャ原料のサイズ等に応じて適宜調節できる。
【0022】
(3)加熱処理したカボチャ原料をペースト化する工程(工程2)
ペースト化には、野菜をペースト化できる公知の装置であれば制限無く使用可能である。磨石式(砥石式)、切刃式、胴搗式、媒体攪拌式、圧縮式、衝撃式、すり潰式等の装置及びそれらの組合せを例示することができる。好ましくは磨石式又は切り刃式装置であり、最も好ましくは切刃式装置である。切刃式装置としては、市販されているカッターミキサーを使用することができる。ペースト化の条件はカボチャ原料やペースト化装置によって適宜変更することが可能である。例えば、フードチョッパーで1000~2500rpm、30秒~3分間処理し、粒感がなくなるまで裁断・撹拌する事によりペースト化することが出来る。2.4mmメッシュスルー(通過)する程度までペースト化することが好ましい。
【0023】
(4)加熱処理したカボチャ原料を急速冷却する工程
本発明のカボチャペーストの製造方法は、工程1と工程2との間に、加熱処理したカボチャ原料を急速冷却する工程を含んでもよい。
【0024】
本発明において、「急速冷却」とは、加熱処理したカボチャを10分以内に20℃以下に冷却することである。急速冷却は冷却装置を用いて行うことができる。冷却装置は野菜を冷却できる公知の装置であれば制限無く使用可能である。好ましくは真空冷却器、ブラストチラーである。急速冷却の条件はカボチャ原料や冷却装置によって適宜変更することが可能である。急速冷却することで、より鮮やかな色のペーストになる。
【0025】
(5)ソースの製造方法
本発明の製造方法により得られるソースは、好ましくはカルボナーラソースの代用品として使用できる。一般的に、カルボナーラソースとは、卵黄又は全卵、畜乳やチーズ及びクリーム類、更に必要に応じて添加される調味料等を含む原料混合物を加熱処理してクリーム状に調製されたソースである。本発明の製造方法により、畜乳や卵を使用しなくても、畜乳や卵様のコクのある風味を有し、しかもなめらかな舌触りがあるソースを得ることができる。また、本発明の製造方法により、鮮やかな黄味色のソースを得ることができる。
【0026】
ソースの製造方法は、本発明のカボチャペーストを使用する。本発明のカボチャペーストを使用することで、従来のカルボナーラソースに使用されている卵黄又は全卵を使用せず、畜乳やチーズ及びクリーム類を豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ライスミルク、ココナッツミルクのうち1種または2種以上を組み合わせてなるプラントベースミルクに代替しても、カルボナーラソースと同様になめらかでコクのある風味を有するソースが得られる。
【0027】
本発明のソースの製造方法において、カボチャペーストの使用量は、ソース原料の全量に対して2~10質量%、好ましくは3~9質量%、より好ましくは3~6質量%である。カボチャペースト以外の原料としては、従来のカボチャソースやそれ以外のソース(カルボナーラソース等)に使用される原料を特に制限無く使用できる。本発明のソースの製造方法において、卵及び/又は畜乳を使用する必要はないが、さらにコクをだすために使用してもよい。
【実施例0028】
以下、本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
<製造例1 カボチャペーストの製造>
(1)カボチャの前処理
カボチャを洗浄し、皮を剥き、ヘタ・種・ワタを取り除き、5mmダイスにカットした。
(2)カボチャの加熱
前記カットしたカボチャを過熱水蒸気コンベヤーオーブン(東研工業社製)で過熱水蒸気処理(135℃、15分)した。
(3)カボチャの急速冷却
前記加熱したカボチャを真空冷却器(三浦工業社製)で中心温度20℃まで10分で急速冷却した。
(4)カボチャのペースト化
前記急冷したカボチャをカッターミキサー(AC-50S、愛工舎製作所製)で1500rpm、2分30秒間処理し、2.4mmメッシュの裏ごし器で裏ごしした。
(5)カボチャの酵素処理
カボチャペースト100質量部に対してαアミラーゼ(天野エンザイム社製 ビオザイムA)を0.1質量部(700ユニット)添加し、十分に混合攪拌した。
αアミラーゼと混合したカボチャペーストを密閉容器に入れて蓋をした後、10℃の冷蔵庫に保管し、12時間酵素反応させた。
(6)加熱による酵素失活処理
酵素反応後のカボチャペーストを樹脂製の包装袋に500gずつ充填して密封し、湯温度96℃の鍋で包装袋ごと30分加熱し、殺菌・酵素失活処理を行い、カボチャペーストを得た。
【0030】
<評価例1 カボチャペーストの官能評価>
製造例1の工程(6)で得られたカボチャペーストを10名の専門パネラーにより下記評価表1に従って官能評価を行った。工程(5)でαアミラーゼを添加しなかった以外は製造例1と同様にして得られたカボチャペーストを対照とした。
【0031】
評価表1
【表1】
◎ : 極めて良好 平均値3.5 以上
○ : 良好 平均値2.5 以上、3.5 未満
△ : やや悪い 平均値1.5 以上、2.5 未満
× : 悪い 平均値1.5 未満
【0032】
<試験例1 酵素反応温度の検討>
適切な酵素反応温度を検討するため、反応温度を表2の通りに変更した以外は、製造例1に従ってカボチャペーストを製造し、評価例1に従ってカボチャペーストのなめらかさとコク味を評価した。結果を表2に示す。
【0033】
【0034】
反応温度5℃の実施例1及び10℃の実施例2では、評価が非常に良かった。反応温度3℃の比較例1では、参考例1よりはなめらかさとコク味が向上していたものの、実施例1及び2と比較するとなめらかさに劣り、コク味がなく、好ましくなかった。反応温度15℃の比較例2では、なめらかな食感であり、参考例1と比べるとややコク味が感じられたが、それに加えて酸味も感じられ、全体的な味としては好ましくなかった。反応温度50℃の比較例3は、なめらかな食感ではあるがコク味は参考例1とほとんど差が無く、酸味が比較例2よりもさらに強く感じられ、好ましくなかった。
【0035】
<試験例2 酵素反応時間の検討>
適切な酵素反応時間を検討するため、反応時間(比較例8については反応時間及び反応温度)を表3の通りに変更した以外は、製造例1に従ってカボチャペーストを製造し、評価例1に従ってカボチャペーストのなめらかさとコク味を評価した。結果を表3に示す。
【0036】
【0037】
反応時間が6時間以下の比較例4~6では、なめらかさとコク味が対照とほとんど差はなかった。反応時間が10時間の比較例7では、対照や比較例4~6よりはなめらかさとコク味が向上したものの、好ましくなかった。反応時間が12~36時間の実施例2~4では、極めて良好な評価であった。酵素の反応温度を高くして反応時間を短くした比較例8では、なめらかな食感であるが、やや酸味を感じコク味がなく、好ましくなかった。
【0038】
<試験例3 酵素添加量の検討>
適切な酵素添加量を検討するため、酵素の添加量を表4の通りに変更した以外は、製造例1に従ってカボチャペーストを製造し、評価例1に従ってカボチャペーストのなめらかさとコク味を評価した。結果を表4に示す。
【0039】
【0040】
カボチャペースト100gに対するαアミラーゼ添加量が210~700Uの実施例2、5、6では、コク味もなめらかさも極めて良好な評価であった。
【0041】
<試験例4 酵素の種類の検討>
添加酵素を表5に記載した酵素に変更した以外は、製造例1に従って添加酵素の種類が異なるカボチャペーストを製造し、評価例1に従ってなめらかさとコク味を評価した結果を表5に示す。
【0042】
【0043】
起源の異なるαアミラーゼを添加した実施例2、7、8では、いずれもなめらかでコク味が良好であった。αアミラーゼ以外の酵素を添加した比較例11~14では、いずれも酵素添加なしの参考例1と差が無かった。
【0044】
<製造例2 ソースの製造>
下記配合表の原料を鍋に投入し、混合しながら中心温度が85℃になるまで昇温し、85℃で10分間混合加熱して、対照のカルボナーラソース及び本発明のソースを得た。カボチャペーストは、製造例1の工程(6)で得られたものを使用した。
【0045】
【0046】
<評価例2>
製造例2で得られたソースを皿に盛り付けた茹でスパゲッティーにかけて十分に混合し、10名の専門パネラーにより下記評価表2に従って官能評価を行った。
【0047】
評価表2
【表7】
〇 : 合格 平均値3.0 以上
× : 不合格 平均値3.0 未満
【0048】
<試験例5 カボチャペースト添加量の検討>
適切なカボチャペーストの添加量を検討するため、カボチャペーストの、ソース中における添加量を表8の通りに変更した以外は製造例2に従って、実施例9~12ならびに比較例15および16のソースを製造した。また、カボチャペーストを製造例1の工程(5)でαアミラーゼを添加しなかった以外は製造例1と同様にして得られたものに変更した以外は製造例2に従って、参考例2のソースを製造した。評価例2に従ってソースのコク味と食感を評価した結果を表8に示す。
【0049】
【0050】
カボチャペーストの添加量が3~9質量%の実施例9~12では、コク味もなめらかさも良好で対照のカルボナーラソースに近い評価であった。添加量が1質量%の比較例15では、コク味やなめらかさが足りず、好ましくなかった。添加量が12質量%の比較例16では、対照と比較してコク味やなめらかさが劣り、カボチャの風味が強くなりすぎたため、カルボナーラソースの代用品としては不適であった。αアミラーゼを作用させずに製造したカボチャペーストを実施例9と同じ量で使用した参考例2では、コク味も食感のなめらかさも評価が低く、不適であった。
【0051】
<試験例6 カボチャペースト製造における冷却工程の検討>
ソースの色をより鮮やかにするカボチャペーストの製造条件を検討するため、カボチャの冷却およびペースト化工程を表10の通りに変更した以外は、製造例1に従ってカボチャペーストを製造した。製造したカボチャペーストを使用して、製造例2に従って実施例9および13~15のソースを製造した。また、カボチャペーストを製造例1の工程(5)でαアミラーゼを添加しなかった以外は製造例1と同様にして得られたものに変更した以外は製造例2に従って、参考例2のソースを製造した。評価例1に従ってカボチャペーストのコク味と食感を、評価例2に従ってソースのコク味と食感を、評価例3に従ってソースの色を、それぞれ評価した。結果を表10に示す。
【0052】
<評価例3 ソースの色の官能評価>
試験例6で得られたソースを10名の専門パネラーにより下記評価表3に従って官能評価を行った。工程(3)の急速冷却を室温で90分放置する緩慢冷却に変更した以外は製造例1に従って製造したカボチャペーストを使用して製造例2に従って製造した実施例13のソースを対照とした。
【0053】
【0054】
【0055】
酵素添加の有無にかかわらず、真空冷却(急速冷却)後にペースト化した実施例9および参考例2では、カボチャペーストの色が鮮やかでソースの色の評価も極めて高かった。実施例14~15から、ペースト化後に急速冷却や緩慢冷却(放冷)を行った場合には、カボチャペーストの色は対照と大差なく、ソースの色調が鮮やかになる効果も認められなかった。