(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014925
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240125BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20240125BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240125BHJP
H04N 25/53 20230101ALI20240125BHJP
H04N 25/705 20230101ALI20240125BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N23/60
G01S7/4863
G01S17/931
H04N25/53
H04N25/705
H04N25/76
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191611
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2021533059の分割
【原出願日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019131448
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 洋二郎
(57)【要約】
【課題】測定範囲内に存在する複数の物体のそれぞれを特定する。
【解決手段】本実施形態に係る撮像装置500によれば、光を射出する発光部10、発光部10から射出された光の反射光を受光する複数の受光素子104を有する受光部20、複数の受光素子104ごと、または、少なくとも2つの受光素子104をそれぞれが有する複数の単位グループ131~135ごとに、露光時間を制御する制御部30を備え、複数の受光素子104及び複数のグループ131~135は、それぞれの露光時間に対応する信号を出力する。さらに、出力された信号に基づいて、露光時間に対応する距離における像を複数の受光素子104ごと又は複数のグループ131~135ごとに生成する処理部40をさらに備える。それにより、各単位グループの露光時間に応じた複数の距離ごとに分解して各距離に位置する物体をそれぞれ撮像することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する発光部と、
前記発光部から射出された光の反射光を受光する複数の受光素子をそれぞれが有する複数のグループと、
前記複数の受光素子ごとまたは前記複数のグループごとに、前記反射光を受光するタイミングおよび露光時間の少なくとも一方をそれぞれ異なる撮像範囲に対応するように制御する制御部と、
前記複数のグループごとにそれぞれのグループに対応する前記撮像範囲の対象物の像を生成する処理部と、を備え、
前記発光部及び前記複数の受光素子は、移動体に設けられ、前記制御部は、前記移動体が左前方に移動する場合に前記複数の受光素子が配列された受光面上の右部領域に位置する受光素子の露光時間を前にシフトし、前記移動体が右前方に移動する場合に前記受光面上の左部領域に位置する受光素子の露光時間を前にシフトする、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定範囲に向けて赤外線又はレーザ光を射出し、測定範囲内に存在する被写体から戻る光を検出することで、光の射出から検出までの検出時間(いわゆる飛行時間)より測定範囲内に存在する物体までの距離を測定することができる。斯かるTOF(Time of Flight)方式の測距方法では、測定範囲内に複数の物体が存在する場合、それぞれの距離を決定することもできる。しかし、それぞれの物体を特定することはできない。
特許文献1 国際公開第2018/101187号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(項目1)
撮像装置は、光を射出する発光部を備えてよい。
撮像装置は、発光部から射出された光の反射光を受光する複数の受光素子をそれぞれが有する複数のグループを備えてよい。
撮像装置は、グループごとに像を生成する処理部を備えてよい。
複数のグループの反射光を受光するタイミングおよび露光時間の少なくとも一方は、それぞれ異なる撮像範囲に対応して設定されてよい。
処理部は、複数のグループのそれぞれに対応する撮像範囲の対象物の像を生成してよい。
(項目2)
撮像範囲は、複数の受光素子から前記対象部までの距離範囲、および、発光部から光が射出されてから複数の受光素子で受光するまでの時間範囲の少なくとも一方を含んでよい。
(項目3)
撮像装置は、受光素子ごとまたはグループごとに、タイミングおよび露光時間の少なくとも一方を制御する制御部を備えてよい。
(項目4)
撮像装置は、複数の受光素子が配列された受光面を備えてよい。
複数のグループは、それぞれ、受光面上の異なる領域に位置する受光素子を有してよい。
(項目5)
複数のグループのうちの少なくとも1つのグループは、それぞれが少なくとも1つの受光素子を含む受光面上の複数のブロックを含んでよい。
(項目6)
受光面上の下部領域に位置する受光素子のタイミングは、受光面上の上部領域に位置する受光素子のタイミングより先であってよい。
(項目7)
発光部及び複数の受光素子は、移動体に設けられてよい。
制御部は、移動体が左前方に移動する場合に受光面上の右部領域に位置する受光素子の露光時間を前にシフトし、移動体が右前方に移動する場合に受光面上の左部領域に位置する受光素子の露光時間を前にシフトしてよい。
(項目8)
制御部は、複数のグループの露光時間が複数のグループ間で連続するように、複数の受光素子の露光時間を制御してよい。
(項目9)
制御部は、複数のグループのうちの露光時間が前のグループに含まれる受光素子の数が、露光時間が後のグループに含まれる受光素子の数より多くなるように、複数の受光素子の露光時間を制御してよい。
(項目10)
制御部は、複数のグループのそれぞれの露光時間が同じ時刻から開始して互いに異なる時刻で終了するように、複数の受光素子の露光時間を制御してよい。
(項目11)
制御部は、複数のグループのうちの少なくとも1つのグループの露光が光の射出前に行われるように、複数の受光素子の露光時間を制御し、
処理部は、複数のグループのうちの残りのグループのそれぞれに含まれる受光素子の出力信号の強度から少なくとも1つのグループに含まれる受光素子の出力信号の強度を減算してよい。
(項目12)
処理部は、生成した前記像に含まれる物体を特定してよい。
(項目13)
処理部は、複数のグループごとに特定される物体及び複数のグループのそれぞれの露光時間に基づいて、物体の移動を検知してよい。
(項目14)
発光部及び複数の受光素子は、移動体に設けられてよい。
制御部は、移動体の速度に応じて複数の受光素子の露光時間を制御してよい。
(項目15)
制御部は、移動体の速度が速いほど複数の受光素子のうちの少なくも一部の受光素子の露光時間を後にシフトしてよい。
(項目16)
複数の受光素子または複数のグループは、ベイヤー配列された別の受光素子の間に配置されてよい。
【0004】
(項目17)
移動体は、項目1から16のいずれか一項に記載の撮像装置を備えてよい。
移動体は、移動体の速度を検出する速度センサを備えてよい。
移動体は、移動体の移動方向を検出する移動方向センサを備えてよい。
【0005】
(項目18)
撮像方法は、光を射出する段階を含んでよい。
撮像方法は、複数の受光素子を用いて、射出された光の反射光を受光する段階を含んでよい。
撮像方法は、複数の受光素子ごと、または、少なくとも2つの受光素子をそれぞれが有する複数のグループごとに、露光時間を制御する段階を含んでよい。
撮像方法は、露光時間に対応する測定対象範囲内の対象物までの距離、および、対象物の像の少なくとも一方を、複数の受光素子ごとまたは複数のグループごとに生成する段階を含んでよい。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る裏面照射型の受光装置の断面構成を示す。
【
図2A】撮像チップの受光素子のグループ配列の一例を示す。
【
図2B】撮像チップの受光素子のグループ配列の別の例を示す。
【
図2C】撮像チップの受光素子のグループ配列の別の例を示す。
【
図2D】撮像チップの受光素子のグループ配列の別の例を示す。
【
図4】単位グループに含まれるブロックにおける画素の接続関係を示す回路図である。
【
図5】撮像素子の機能的構成を示すブロック図である。
【
図7A】撮像範囲内に存在する物体及びそれらの距離の一例を示す。
【
図7B】受光素子の各グループの露光時間の一例を示す。
【
図7C】受光素子の各グループの露光時間の別の例を示す。
【
図7D】受光素子の各グループの露光時間の別の例を示す。
【
図7E】受光素子の各グループの露光時間の別の例を示す。
【
図8】本実施形態に係る撮像装置を車両に搭載した場合の撮像システムの構成の一例を示す。
【
図9】車両に搭載された撮像装置による撮像処理のフローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1に、本実施形態に係る裏面照射型の受光装置100の断面構成を示す。受光装置100は、撮像チップと113、信号処理チップ111、及びメモリチップ112を含む。これらのチップは積層され、各チップに形成されたCu等の導電性を有するバンプ109同士の接合と、各チップ上面に形成される酸化膜層同士の接合とにより、各チップ間が接合されている。ここで、バンプ109同士の接合により、各チップ間が互いに電気的に接続されている。なお、入射光は、白抜き矢印を用いて示すように、+Z方向に入射する。本実施形態では、撮像チップ113の入射光が入る側の面を裏面、その逆側の面を表面と称する。また、図面上下方向をZ軸方向、左右方向をX軸方向、これらに直交する方向をY軸方向とする。また、本実施形態では、後述する撮像装置500により撮像する対象範囲を撮像範囲とも呼ぶ。
【0010】
撮像チップ113は、入射光を受光し、露光量に応じた画素信号を出力する。撮像チップ113として、例えば、裏面照射型MOSイメージセンサを採用してよい。撮像チップ113は、PD層106及び配線層108を有する。
【0011】
PD層106は、受光装置100が有する受光面上に二次元配列された複数の受光素子104を有する。受光素子104は、フォトダイオード(PD)等の光電変換素子である。
【0012】
なお、PD層106の裏面側に、パッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有し、各受光素子104に対応して特定の配列を有する。各1つのカラーフィルタ102、受光素子104、及び後述するトランジスタ105より1つの画素が形成される。なお、単色撮像の場合には、カラーフィルタ102を設けなくてよい。
【0013】
また、カラーフィルタ102の裏面側に、複数のマイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、それぞれ、対応する受光素子104に向けて入射光を集光する。
【0014】
配線層108は、PD層106のおもて面側に設けられ、PD層106内の各受光素子104に対応して設けられたトランジスタ105及び受光素子104からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は、多層であってよく、また受動素子及び能動素子が設けられてもよい。配線層108のおもて面に、複数のバンプ109が設けられている。
【0015】
信号処理チップ111は、PD層106からの画素信号を処理するデバイスを含む。それらのデバイスはチップの両面に設けられてよく、TSV(シリコン貫通電極)110により接続されてよい。信号処理チップ111は、複数のバンプ109を有し、撮像チップ113の複数のバンプ109と電気的に接続される。
【0016】
メモリチップ112は、画素信号を記憶するデバイスを含む。メモリチップ112は、複数のバンプ109を有し、信号処理チップ111の複数のバンプ109と電気的に接続される。
【0017】
図2Aから
図2Dに、撮像チップ113の受光素子104のグループ配列を示す。撮像チップ113は受光面上に画素領域を有し、2000万個以上もの画素、すなわち受光素子104がマトリックス状に配列されている。一例として、隣接する3画素×3画素の9画素が1つのブロック131b~135bを構成し、任意に配列された複数のブロック131b~135bをそれぞれ含んで複数の単位グループ131~135が構成される。なお、1つのブロック131b~135bに含まれる画素(受光素子104)の数はこれに限られず、1つのブロック131b~135bに1画素のみが含まれてもよい。また、任意の数のブロック131b~135bが1つの単位グループ131~135に含まれてよい。
【0018】
複数の受光素子104は、後述するように、単位グループ131~135ごとに露光時間、すなわち電荷蓄積が制御される。例えば、単位グループ131~135に属する受光素子104は、それぞれ、照明光が射出された時点を基準にして、0~100ナノ秒の露光時間、100~200ナノ秒の露光時間、200~300ナノ秒の露光時間、300~400ナノ秒の露光時間、400~500ナノ秒の露光時間の間、シャッタ(特に断らない限り、
図3を用いて説明する電子シャッタを意味する)を開いて電荷を蓄積する。
【0019】
複数の単位グループ131~135は、それぞれ、受光面上の異なる領域に位置する受光素子104の複数のブロック131b~135bを有する。
図2Aに示すグループ配列の例では、2行2列に配列された4つのブロック131b~134bの組が行方向及び列方向に繰り返し配列されている。4つのブロック131b~134bに含まれる受光素子104は、それぞれ、単位グループ131~134に属する。それにより、各単位グループ131~134に属する受光素子104のブロック131b~134bは、行方向及び列方向のそれぞれについて1ブロック分の距離を隔ててマトリックス状に配列される。従って、単位グループ131~134に属する受光素子104により、撮像範囲を複数の距離に分解してそれぞれ等しい解像度で撮像することができる。
【0020】
図2Bに示すグループ配列の例では、それぞれ列方向に連続して配列された4つのブロック131b~134bの列が行方向に順に配列されており、この4つの列が行方向に繰り返し配列されている。4つのブロック131b~134bに含まれる受光素子104は、それぞれ、単位グループ131~134に属する。それにより、各単位グループ131~134に属する受光素子104のブロック131b~134bは、列方向に連続に、行方向に3ブロック分の距離を隔ててストライプ状に配列される。従って、単位グループ131~134に属する受光素子104により、撮像範囲を複数の距離に分解して、行方向に対して列方向に高い解像度で撮像することができる。なお、それぞれ行方向に連続して配列された4つのブロック131b~134bが列方向に順に繰り返し配列されてもよい。それにより、列方向に対して行方向に高い解像度で撮像することができる。
【0021】
図2Cに示すグループ配列の例では、
図2Aに示したグループ配列に対して単位グループ134に属するブロック134bの一部が単位グループ135に属するブロック135bに置き換えられている。これにより、単位グループ131~133に属する多くの受光素子104によりそれぞれ高い解像度で、単位グループ134に属する少ない受光素子104により幾らか低い解像度で、単位グループ134に属するさらに少ない受光素子104によりさらに低い解像度で、撮像することができる。
【0022】
図2Dに示すグループ配列の例では、2行2列に配列された緑色画素Gb、Gr、青色画素B、及び赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列が行方向及び列方向に繰り返し配列されている。なお、この例では、1ブロックは1画素のみを含む。緑色画素Gb、Grは、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有し、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。青色画素Bは、カラーフィルタ102として青色フィルタを有し、青色波長帯の光を受光する。赤色画素Rは、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有し、赤色波長帯の光を受光する。さらに、ベイヤー配列の列方向の配列の間に行方向に配列された単位グループ131~133にそれぞれ属する受光素子104が含まれる。これにより、ベイヤー配列された画素により撮像範囲全体をカラー撮像しつつ、単位グループ131~133にそれぞれ属する画素(受光素子104)により撮像範囲全体を複数の距離に分解して撮像することができる。
【0023】
なお、
図2Aから
図2Cに示したグループ配列の例において、単位グループ131~135にそれぞれ属するブロック131b~135bはベイヤー配列を含んでもよい。
【0024】
図3に、画素150の等価回路を示す。各画素150は、PD104、転送トランジスタ152、リセットトランジスタ154、増幅トランジスタ156、選択トランジスタ158、及び負荷電流源309を有する。これらのトランジスタは、
図1において、トランジスタ105と総称されている。さらに、画素150には、リセットトランジスタ154のオン信号が供給されるリセット配線300、転送トランジスタ152のオン信号が供給される転送配線302、電源Vddから電力の供給を受ける電源配線304、選択トランジスタ158のオン信号が供給される選択配線306、及び画素信号を出力する出力配線308が設けられている。
【0025】
画素150において、転送トランジスタ152のソース、ゲート、及びドレインは、それぞれ、PD104の一端、転送配線302、増幅トランジスタ156のゲートに接続される。リセットトランジスタ154のソース、ゲート、及びドレインは、それぞれ、増幅トランジスタ156のゲート、リセット配線300、及び電源配線304に接続される。転送トランジスタ152のドレインとリセットトランジスタ154のソース間は、いわゆるフローティングディフュージョンFDを形成する。増幅トランジスタ156のソース及びドレインは、それぞれ、選択トランジスタ158のドレイン及び電源配線304に接続される。選択トランジスタ158のゲート及びソースは、それぞれ、選択配線306及び出力配線308に接続される。
【0026】
負荷電流源309は、出力配線308に電流を供給する。これにより、選択トランジスタ158に対する出力配線308はソースフォロアにより形成される。なお、負荷電流源309は、撮像チップ113側に設けてもよいし、信号処理チップ111側に設けてもよい。
【0027】
画素150における、電荷の蓄積から画素出力までのフローを説明する。リセット配線300を通じてリセットパルスをリセットトランジスタ154に印加し、同時に転送配線302を通じて転送パルスを転送トランジスタ152に印加することで、PD104及びフローティングディフュージョンFDの電位がリセットされる。PD104は、転送パルスの印加が解除されると、入射光の受光量に応じた電荷を蓄積する。その後、リセットパルスが印加されていない状態で再び転送パルスが印加されると、蓄積された電荷はフローティングディフュージョンFDへ転送され、フローティングディフュージョンFDの電位はリセット電位から電荷蓄積後の信号電位になる。転送パルスの印加解除から再度の転送パルスの印加までの動作をシャッタを開くとも呼び、その期間をシャッタ時間或いは露光時間と呼ぶ。そして、選択配線306を通じて選択パルスが選択トランジスタ158に印加されると、フローティングディフュージョンFDの信号電位の変動が、増幅トランジスタ156及び選択トランジスタ158を介して出力配線308に伝わる。これにより、リセット電位と信号電位とに対応する画素信号は、単位画素から出力配線308に出力される。
【0028】
なお、
図3に示した画素150の回路構成に限らず、例えば、画素150の回路構成において転送トランジスタ152とフローティングディフュージョンFDとの間にグローバル電子シャッタ専用容量が設けられ、PD104と電源配線304との間に追加のトランジスタが設けられ、任意で選択トランジスタ158が省かれた回路構成を採用してもよい。
【0029】
図4に、単位グループ131~135に含まれる各ブロック131b~135bにおける画素150の接続関係を示す。なお、図面を見やすくする目的で各トランジスタの参照番号を省略したが、
図4の各画素の各トランジスタは、
図3の画素150における対応する位置に配された各トランジスタと同じ構成及び機能を有する。ブロック131b~135bは、一例として、隣接する3画素×3画素の9画素AからIにより形成される。なお、ブロック131b~135bに含まれる画素の数はこれに限られない。
【0030】
ブロック131b~135bに含まれる画素のリセットトランジスタはブロック単位で共通にオンオフされる。画素Aのリセットトランジスタをオンオフするリセット配線300、画素Bのリセットトランジスタをオンオフするリセット配線310、画素Cのリセットトランジスタをオンオフするリセット配線320、さらに他の画素DからIのリセットトランジスタをオンオフする専用線路が共通のドライバ(不図示)に接続される。
【0031】
ブロック131b~135bに含まれる画素の転送トランジスタもブロック単位で共通にオンオフされる。画素Aの転送トランジスタをオンオフする転送配線302、画素Bの転送トランジスタをオンオフする転送配線312、画素Cの転送トランジスタをオンオフする転送配線322、さらに他の画素DからIの転送トランジスタをオンオフする専用線路が共通の制御回路(不図示)に接続される。
【0032】
ブロック131b~135bに含まれる画素の選択トランジスタも画素ごとに個別にオンオフされる。画素Aの選択トランジスタをオンオフする選択配線306、画素Bの選択トランジスタをオンオフする選択配線316、画素Cの選択トランジスタをオンオフする選択配線326、さらに他の画素DからIの選択トランジスタをオンオフする専用線路が別個にドライバ(不図示)に接続される。
【0033】
なお、電源配線304は、ブロック131b~135bに含まる各画素AからIで共通に接続されている。同様に、出力配線308は、ブロック131b~135bに含まる各画素AからIで共通に接続されている。さらに、電源配線304は複数のブロック間で共通に接続されるが、出力配線308はブロックごとに設けられる。
【0034】
ブロック131b~135bのリセットトランジスタ及び転送トランジスタを共通にオンオフすることにより、ブロック131b~135bに含まれる各画素AからIに対して同期して、電荷の蓄積開始時間、蓄積終了時間、転送タイミングを含む電荷蓄積を制御することができる。また、ブロック131b~135bの選択トランジスタを個別にオンオフすることにより、各画素AからIの画素信号を共通の出力配線308を介して個別に出力することができる。
【0035】
ブロック131b~135bに含まれる各画素AからIの電荷蓄積は、ローリングシャッタ方式又はグローバルシャッタ方式により制御される。ローリングシャッタ方式では、画素の電荷蓄積は、行及び列に対して規則的な順序で制御される、例えば行ごとに画素を選択してから列を指定することで
図4の例において「ABCDEFGHI」の順序で画素信号が出力される。しかし、ローリングシャッタ方式では動体を撮像した場合に、ブロック131b~135b内の画素について当該動体が斜めに歪んだ画像が生成される。グローバルシャッタ方式では、画素の電荷蓄積は、すべての画素AからIについて同時タイミングで制御される。
【0036】
図5に、受光装置100の機能構成を示す。受光装置100は、マルチプレクサ411、信号処理回路412、デマルチプレクサ413、及び画素メモリ414を含む。ここで、マルチプレクサ411は、撮像チップ113に形成される。信号処理回路412は、信号処理チップ111に形成される。デマルチプレクサ413及び画素メモリ414は、メモリチップ112に形成される。
【0037】
マルチプレクサ411は、ブロック131b~135bの各画素AからIを順番に選択して、それぞれの画素信号を出力配線308を介して信号処理回路412に送信する。なお、マルチプレクサ411の後段に増幅器を設け、それぞれの画素信号を予め定められた増幅率(ゲイン)で増幅して、信号処理回路412に送信してもよい。
【0038】
信号処理回路412は、画素信号(アナログ信号)を相関二重サンプリング(CDS)・アナログ/デジタル(A/D)変換して、デジタル化された画素信号を出力配線330を介してデマルチプレクサ413に送信する。
【0039】
デマルチプレクサ413は、信号処理回路412によりデジタル化された画素信号を、画素AからIにそれぞれ対応して画素メモリ414のメモリAからIに送信する。
【0040】
画素メモリ414は、画素信号を格納するメモリAからIを有し、画素AからIの画素信号をそれぞれメモリAからIに格納する。
【0041】
なお、画素AからIごとに信号処理回路412を設け、それらからの画素信号を並列にCDS・A/D変換してメモリAからIに格納してもよい。
【0042】
演算回路415は、画素メモリ414に格納された画素信号を処理して後段の処理部40に引き渡す。演算回路415は、信号処理チップ111に設けられてもよいし、メモリチップ112に設けられてもよい。なお、演算回路415をグループごとに設けてもよいし、複数のグループに対して共通に設けてもよい。
【0043】
図6に、本実施形態に係る撮像装置500の構成を示す。撮像装置500は、撮像範囲を複数の距離ごとに分解して撮像する装置であり、発光部10、受光部20、制御部30、及び処理部40を備える。
【0044】
発光部10は、撮像範囲に向けて光、すなわち照明光を射出するユニットである。発光部10は、赤外線又は可視光領域の光を生成する光源を有し、これを用いてパルス光等の変調光を生成し、照明光として射出することで撮像範囲を照明する。
【0045】
受光部20は、撮像範囲からの反射光を受光するユニットである。受光部20は、光学系21及び受光装置100を含む。
【0046】
光学系21は、複数のレンズ素子から構成され、光軸OAに沿って撮像範囲から入ってくる光を受光装置100の受光面上に導き、被写体像を結像させる。光学系21は、受光装置100に着脱できるように構成されてもよい。
【0047】
受光装置100は、先述のとおり、受光面上に配列された複数の受光素子104を有する。複数の受光素子104は、それぞれが画素をなし、光学系21によって結像された光(被写体像)を露光時間の間、受光し、光電変換して電荷を蓄積する。複数の受光素子104は、複数の単位グループ131~135にグループ化され、単位グループ131~135ごとに露光時間、すなわち電荷蓄積が制御される。複数の受光素子104から出力される画素信号は、処理部40に送信される。
【0048】
制御部30は、受光装置100の複数の受光素子104の露光時間、すなわち電荷蓄積を、複数の受光素子104ごと又は複数の単位グループ131~135ごとに制御するユニットである。制御部30は、例えばマイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、不揮発性メモリ(不図示)に格納されている制御プログラムを実行することによりその機能を発現する。なお、制御部30の一部機能をタイミングジェネレータ等の電子回路によって構成してもよい。
【0049】
処理部40は、複数の受光素子104から出力される画素信号に基づいて、複数の単位グループ131~135のそれぞれの露光時間に対応する撮像範囲内の距離における像、すなわち画像データを複数の受光素子104ごと又は複数の単位グループ131~135ごとに生成する。ここで、バッファメモリ(不図示)を、画像処理のワークスペースとして使用することができる。画像データは、例えば、JPEGファイル形式で生成されてよく、斯かる場合、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に圧縮処理を実行する。また、処理部40は、感度を改善するために、ビニング処理を実行してもよい。生成された画像データは、不揮発性フラッシュメモリ等の記憶装置(不図示)に記録されるとともに、表示信号に変換して液晶モニタ等の表示装置(不図示)上に表示されてもよい。
【0050】
図7Aに、撮像範囲内に存在する物体1~3及びそれらの距離の一例を示す。撮像装置500の受光面の位置(0m)から距離15~30mの範囲内に物体1、距離30~45mの範囲内に物体2、距離45~60mの範囲内に物体3が存在するものとする。
【0051】
図7Bに、受光素子104の各単位グループの露光時間の一例を示す。この例では、受光素子104は、
図2A又は
図2Bに示したグループ配列の4つの単位グループ131~134にグループ化されているとする。制御部30は、受光素子104の単位グループ131~134の露光時間が単位グループ131~134間で連続するように、複数の受光素子104の露光時間を制御する。一例として、制御部30は、単位グループ131~134に属する受光素子104について、それぞれ、発光部10による照明光が射出された時点を基準にして、0~100ナノ秒の露光時間、100~200ナノ秒の露光時間、200~300ナノ秒の露光時間、300~400ナノ秒の露光時間の間、シャッタを開く。なお、単位グループ131~134の露光時間の終了後又は複数回露光を繰り返した後にそれぞれの単位グループの受光素子104の出力信号(画素信号)を読み出し、処理部40により単位グループごとに処理してよい。
【0052】
なお、露光時間が単位グループ131~134間で連続するとは、先の単位グループの露光時間の終了と同時に次の単位グループの露光時間が開始するよう露光時間を連続させるに限らず、単位グループ131~134間で露光時間を一部重複して連続させてもよいし、間隔を開けて連続させてもよい。
【0053】
ここで、光は10ナノ秒で約3メートルの距離を進む。受光素子104の単位グループ131は、距離0~15mの範囲内に存在する物体からの反射光を受光するから、その範囲内に存在する物体が撮像される。
図7Aの例では、物体は撮像されない。受光素子104の単位グループ132は、距離15~30mの範囲内に存在する物体からの反射光を受光するから、その範囲内に存在する物体1が撮像される。受光素子104の単位グループ133は、距離30~45mの範囲内に存在する物体からの反射光を受光するから、その範囲内に存在する物体2が撮像される。受光素子104の単位グループ134は、距離45~60mの範囲内に存在する物体からの反射光を受光するから、その範囲内に存在する物体3が撮像される。このように、各単位グループの露光時間に応じて連続する複数の距離範囲にそれぞれ位置する物体を互いに分離して撮像することができる。
【0054】
なお、
図2Cに示したグループ配列の5つの単位グループ131~135にグループ化された受光素子104に対して、
図7Bの例のように露光時間が連続するように制御してもよい。また、制御部30により、単位グループ131~135のうちの露光時間が前のグループ131~133に含まれる受光素子104の数が、露光時間が後のグループ134~135に含まれる受光素子104の数より多くなるように、受光素子104の露光時間を制御してもよい。それにより、近くに位置する物体(
図7Aの例では物体1、さらに物体2)ほど高い解像度で撮像することができる。
【0055】
図7Cに、受光素子104の各単位グループの露光時間の別の例を示す。この例では、受光素子104は、
図2A又は
図2Bに示したグループ配列の4つの単位グループ131~134にグループ化されているとする。制御部30は、単位グループ131~134のそれぞれの露光時間が同じ開始時刻から開始して互いに異なる終了時刻で終了するように、複数の受光素子104の露光時間を制御する。一例として、制御部30は、単位グループ131~134に属する受光素子104のすべてについて発光部10による照明光の射出と同時にシャッタを開いて露光を開始し、単位グループ131~134に属する受光素子104に対して、それぞれ、100ナノ秒経過時、200ナノ秒経過時、300ナノ秒経過時、400ナノ秒経過時にシャッタを閉じて露光を順に終了する。なお、単位グループ131~134の露光時間の終了後又は複数回露光を繰り返した後にそれぞれのグループの受光素子104の出力信号(画素信号)を読み出し、処理部40によりグループごとに処理する。
【0056】
ここで、処理部40は、単位グループ132に属する受光素子104からの画素信号に対して単位グループ131に属する受光素子104からの画素信号の強度を減算する。単位グループ133に属する受光素子104からの画素信号に対して単位グループ132に属する受光素子104からの画素信号の強度を減算する。単位グループ134に属する受光素子104からの画素信号に対して単位グループ133に属する受光素子104からの画素信号の強度を減算する。ただし、例えば、減算対象の受光素子104が属するブロックに隣接する別のグループの1又は複数のブロックに含まれる受光素子104の画素信号の平均強度を減算する。それにより、単位グループ131に属する受光素子104の画素信号より、距離0~15mの範囲内に存在する物体の像が得られる。
図7Aの例では、いずれの物体の像も得られない。単位グループ131~132に属する受光素子104の画素信号より、距離15~30mの範囲内に存在する物体1の像が得られる。単位グループ132~133に属する受光素子104の画素信号より、距離30~45mの範囲内に存在する物体2の像が得られる。単位グループ133~134に属する受光素子104の画素信号より、距離45~60mの範囲内に存在する物体3の像が得られる。このように、近くに位置する物体ほど高い解像度で像を得ることができる。
【0057】
図7Dに、受光素子104の各単位グループの露光時間の別の例を示す。この例では、受光素子104は、
図2A又は
図2Bに示したグループ配列の4つの単位グループ131~134にグループ化されているとする。制御部30は、単位グループ131~134のうちの少なくとも1つの単位グループの露光が照明光の射出前に行われるように、複数の受光素子104の露光時間を制御する。一例として、制御部30は、単位グループ131~134に属する受光素子104について、それぞれ、発光部10による照明光が射出された時点を基準にして、0~100ナノ秒の露光時間、100~200ナノ秒の露光時間、200~300ナノ秒の露光時間、-100~0ナノ秒の露光時間の間、シャッタを開く。なお、単位グループ131~134の露光時間の終了後又は複数回露光を繰り返した後にそれぞれの単位グループの受光素子104の出力信号(画素信号)を読み出し、処理部40により単位グループごとに処理する。
【0058】
ここで、処理部40は、単位グループ131~133のそれぞれに含まれる受光素子104の画素信号の強度から単位グループ134に含まれる受光素子104の画素信号の強度を減算する。ただし、例えば、減算対象の受光素子104が属するブロックに隣接する単位グループ134の1又は複数のブロックに含まれる受光素子104の画素信号の平均強度を減算する。ここで、単位グループ134に含まれる受光素子104は、照明光の射出前にシャッタが開かれているから背景光のみを受光している。それにより、単位グループ131~133のそれぞれに属する受光素子104の画素信号から、背景光等に由来するノイズを除去することができる。
【0059】
なお、制御部30は、単位グループ131~135の露光時間の一サイクルが終了した後、さらに、1又は複数回の露光時間のサイクルを繰り返してもよい。例えば、
図7Bに示した例において、制御部30は、1回目のサイクル(0~400ナノ秒)が終了した後、2回目のサイクル(400~800ナノ秒)を実行する。すなわち、制御部30は、単位グループ131~134に属する受光素子104について、それぞれ、400~500ナノ秒の露光時間、500~600ナノ秒の露光時間、600~700ナノ秒の露光時間、700~800ナノ秒の露光時間の間、シャッタを開く。
図7Cに示した例において、制御部30は、1回目のサイクル(0~400ナノ秒)が終了した後、2回目のサイクル(400~800ナノ秒)を実行する。すなわち、制御部30は、単位グループ131~134に属する受光素子104について、それぞれ、400~500ナノ秒の露光時間、400~600ナノ秒の露光時間、400~700ナノ秒の露光時間、400~800ナノ秒の露光時間の間、シャッタを開く。
図7Dに示した例において、制御部30は、1回目のサイクル(0~300ナノ秒)が終了した後、2回目のサイクル(300~600ナノ秒)を実行する。すなわち、制御部30は、単位グループ131~133に属する受光素子104について、それぞれ、300~400ナノ秒の露光時間、400~500ナノ秒の露光時間、500~600ナノ秒の露光時間の間、シャッタを開く。なお、単位グループ131~134の露光時間の終了後又は複数回露光を繰り返した後にそれぞれの単位グループの受光素子104の出力信号(画素信号)を読み出し、処理部40により単位グループごとに処理してよい。これにより、より広範な距離範囲に存在する物体の像を得ることができる。
【0060】
図7Eに、受光素子104の各単位グループの露光時間の別の例を示す。この例では、受光素子104は、
図2A又は
図2Bに示したグループ配列の4つの単位グループ131~134にグループ化されているとする。さらに、制御部30により、受光素子104の単位グループ131~134のそれぞれの露光時間が一例として10ナノ秒に設定され且つ単位グループ131~134間で連続するように複数の受光素子104の露光時間が制御されるとする。このように露光時間が短い場合に、各受光素子104において十分な光量を得る(すなわち十分な電荷を蓄積する)ために、制御部30は、1フレーム内で発光部10による照明光の射出及びこれに続く受光素子104の露光を繰り返し行ってよい。例えば、制御部30は、単位グループ131~134に属する受光素子104について、それぞれ、発光部10による照明光が射出された時点を基準にして、0~10ナノ秒の露光時間、10~20ナノ秒の露光時間、20~30ナノ秒の露光時間、30~40ナノ秒の露光時間の間、シャッタを開いて、それぞれの受光素子104において受光する。制御部30は、この露光動作を1フレーム内で複数回、例えば100~100,000回繰り返し、それぞれの受光素子104において受光量を蓄積する。1フレーム内での照明光の射出及び受光素子104の露光動作を繰り返した後に、それぞれの単位グループの受光素子104の出力信号(画素信号)を読み出し、処理部40により単位グループごとに出力信号を処理してよい。この方法により、距離分解能を維持しつつ、各受光素子104において十分な光量を得ることができる。
【0061】
さらに、各受光素子104における受光量が不十分な場合に、処理部40により、画像積算及び/又は画素加算を行ってよい。画像積算は、複数フレームで画素値を積算平均することであり、例えば1000fpsで撮影した場合に、33フレームにわたって画素値を積算平均することで30fpsで距離画像を得ることができる。画素加算(平均)は、いわゆるビニングであり、隣接する複数の画素の画素値を加算(又は平均)して1つの画素の画素値とすることである。
【0062】
図8に、本実施形態に係る撮像装置500を車両600に搭載した場合の撮像システムの構成の一例を示す。車両600は、移動体の一例であり、電車、自動車、自動二輪車等であってよい。車両600は、撮像装置500、速度センサ610、及び移動方向センサ620を備える。撮像装置500(少なくとも発光部10及び受光部20)は、前方を撮像するよう車両600に搭載される。つまり、発光部10により車両600の前方に向けて照明光を射出し、車両600の前方から戻ってくる反射光を受光部20により受光する。速度センサ610は、車両600の速度を検出するセンサであり、車両600に搭載されたものであってよい。移動方向センサ620は、車両600の移動方向を検出するセンサである。移動方向センサ620は、例えば、車両600に加わる加速度を検出するセンサ、車両600のハンドルの回転角を検出するセンサ等であってよい。速度センサ610及び移動方向センサ620の検出結果は、撮像装置500に送信される。
【0063】
撮像装置500の処理部40は、受光面上の下部領域に位置する受光素子104の露光時間が受光面上の上部領域に位置する受光素子104の露光時間より先に開始するよう制御する。それにより、遠方の状況を把握しつつ、地面の上の移動する車両600の前方近くの路上に位置する物体を高解像度で撮像することができる。
【0064】
撮像装置500の処理部40は、速度センサ610の検出結果に応じて、複数の受光素子104の露光時間を制御する。
【0065】
車両600の速度が上がった場合、制御部30は、車両600の速度が上がるほど複数の受光素子104のうちのより多くの受光素子104の露光時間を後にシフトする。例えば、
図2Aに示したグループ配列の受光素子104の単位グループ131~134に対して、露光時間をそれぞれ速度に応じた時間(例えば、1~100ナノ秒)、後にシフトする。或いは、単位グループ131~132に属する受光素子104の少なくとも一部をそれぞれ単位グループ133~134に変更して、露光時間が前の受光素子104を減らし、露光時間が後の受光素子104を増やす。
【0066】
車両600の速度が下がった場合、制御部30は、車両600の速度が下がるほど複数の受光素子104のうちのより多くの受光素子104の露光時間を前にシフトする。例えば、
図2Aに示したグループ配列の受光素子104の単位グループ131~134に対して、露光時間をそれぞれ速度に応じた時間(例えば、1~100ナノ秒)、前にシフトする。或いは、単位グループ133~134に属する受光素子104の少なくとも一部をそれぞれ単位グループ131~132に変更して、露光時間が後の受光素子104を減らし、露光時間が前の受光素子104を増やす。
【0067】
それにより、車両600の速度が高いほど受光素子104の露光時間を後にシフトし、車両600の速度が低いほど受光素子104の露光時間を前にシフトすることで、車両600の速度によらず、物体を、それが車両600に最接近する一定時間前に検知することができる。
【0068】
また、車両600が左前方に移動する場合、制御部30は、受光面上の右部領域に位置するより多くの受光素子104の露光時間を(例えば、1~100ナノ秒)前にシフトする。或いは、受光面上の右部領域内の単位グループ133~134に属する受光素子104の少なくとも一部をそれぞれ単位グループ131~132に変更して、露光時間が前の受光素子104を増やす。車両600が右前方に移動する場合、制御部30は、受光面上の左部領域に位置するより多くの受光素子104の露光時間を(例えば、1~100ナノ秒)前にシフトする。或いは、受光面上の左部領域内の単位グループ133~134に属する受光素子104の少なくとも一部をそれぞれ単位グループ131~132に変更して、露光時間が前の受光素子104を増やす。それにより、車両600が左折するときなど左前方に移動する場合に左前方近くに位置する物体を高解像度で撮像することができる。また、車両600が右折するときなど右前方に移動する場合に右前方近くに位置する物体を高解像度で撮像することができる。
【0069】
図9に、車両600に搭載された撮像装置500による撮像処理のフローの一例を示す。撮像装置500は、車両600のエンジンの始動に応じてオンされ、エンジンが停止されるまで撮像処理を実行する。なお、撮像装置500において、受光装置100の受光素子104の露光時間は、例えば
図2Aから
図2Dに示したグループ配列に従って、予め標準の露光時間に設定されているものとする。
【0070】
ステップS102では、車両600に搭載された速度センサ610及び移動方向センサ620により、それぞれ、車両600の速度及び移動方向が検出される。それらの検出結果は、撮像装置500(制御部30)に送信される。
【0071】
ステップS104では、撮像装置500の制御部30により、車両600の速度及び移動方向が変化したか否か判断される。変化があった場合、ステップS106に進み、制御部30は受光素子104の露光時間の設定を変更する。変化がなかった場合、ステップS108に進み、制御部30は受光素子104の露光時間の設定を維持する。
【0072】
ステップS106では、制御部30により、受光素子104の露光時間が単位グループごとに制御される。車両600の速度が上がった場合、制御部30は、先述のとおり、車両600の速度が上がるほど複数の受光素子104のうちのより多くの受光素子104の露光時間を後にシフトする。車両600の速度が下がった場合、制御部30は、先述のとおり、車両600の速度が下がるほど複数の受光素子104のうちのより多くの受光素子104の露光時間を前にシフトする。それにより、車両600の速度によらず、物体を、それが車両600に最接近する一定時間前に検知することができる。
【0073】
また、車両600が左前方に移動する場合、制御部30は、先述のとおり、受光面上の右部領域に位置するより多くの受光素子104の露光時間を前にシフトし、車両600が右前方に移動する場合、制御部30は、先述のとおり、受光面上の左部領域に位置するより多くの受光素子104の露光時間を前にシフトする。
【0074】
ステップS108では、制御部30は、発光部10を制御して、車両600の前方(すなわち、撮像範囲)に向けて照明光を射出する。
【0075】
ステップS110では、制御部30は、受光部20を制御して、車両の前方(すなわち、撮像範囲)からの反射光を、複数の単位グループにグループ化された複数の受光素子104を用いて受光する。ここで、受光素子104の露光時間は、予め又はステップS106において単位グループごとに制御されている。
【0076】
ステップS112では、処理部40が、受光素子104の画素信号に基づいて、単位グループのそれぞれの露光時間に対応する撮像範囲内の距離における像(すなわち、画像データ)を単位グループごとに生成する。例えば、
図2A又は
図2Bに示した単位グループ131~134にグループ化された受光素子104により
図7Aに示した撮像範囲内に存在する物体1~3を撮像した場合、受光素子104の単位グループ131の画素信号から得られる画像データには、距離0~15mの範囲内に物体は存在しないから、何も現れない。受光素子104の単位グループ132の画素信号から得られる画像データには、距離15~30mの範囲内に存在する物体1が現れる。受光素子104の単位グループ133の画素信号から得られる画像データには、距離30~45mの範囲内に存在する物体2が現れる。受光素子104の単位グループ134は、距離45~60mの範囲内に存在する物体3が現れる。このように、各単位グループの露光時間に応じて撮像範囲内の複数の距離範囲にそれぞれ位置する物体を互いに分離して撮像することができる。
【0077】
ステップS114では、処理部40が、ステップS112で得られた像(すなわち、画像データ)を処理して、それに含まれる物体を特定する。上記の例では、処理部40は、単位グループ132の画像データから距離15~30mの範囲内に存在する物体1が歩行者であることを特定し、単位グループ133の画像データから距離30~45mの範囲内に存在する物体2が街路樹であることを特定し、単位グループ134の画像データから距離45~60mの範囲内に存在する物体3が車両であることを特定する。
【0078】
なお、本実施形態では、車両600の速度に応じて受光素子104の露光時間を前後にシフトすることとしたが、これに代えて、または、これに加えて、車両600の速度に応じて警告又は車両600を自動停止するタイミングを制御することとしてもよい。例えば、制御部30は、車両600の速度が上がるほど、警告又は自動停止すべきか否かを判断するための単位グループを露光時間が遅い単位グループに変更する。車両600の速度が低い場合、処理部40は、単位グループ132の画像データから距離15~30mの範囲内に歩行者が存在することを特定した場合、運転手に警告する又は車両600を自動停止する。車両600の速度が高い場合、処理部40は、単位グループ134の画像データから距離45~60mの範囲内に歩行者が存在することを特定した場合、運転手に警告する又は車両600を自動停止する。
【0079】
斯かる場合に、処理部40は、予め、画像データから特定された際に警告又は車両600を自動停止すべき対象物体を決定しておくとともに、画像と物体の種類との関係を示すデータテーブルを保持しておく。処理部40は、受光素子104の画素信号に基づいて単位グループごとに画像データを生成し、画像データから撮像された物体が何なのかをデータテーブルを用いて画像と物体とを比較することにより特定し、特定された物体が対象物体である場合に警告又は自動停止の処理を実行してよい。
【0080】
ステップS114を終了するとステップS102に戻り、ステップS102~S114を繰り返す。つまり、ステップS108にて発光部10により撮像範囲に向けて照明光を繰り返し射出し、ステップS110にて受光部20により発光部10が照明光を射出する度に撮像範囲からの反射光を受光し、ステップS112にて処理部40により受光部20が反射光を受光する度に受光素子104の画素信号を単位グループごとに処理して撮像範囲内の複数の距離にそれぞれ対応する複数の像を生成し、ステップS114にて各像に含まれる物体を特定する。
【0081】
なお、ステップS114では、処理部40は、ステップS102~S114を繰り返す度に、受光素子104の単位グループごとに特定される物体及び受光素子104の単位グループのそれぞれの露光時間(すなわち、撮像装置500からの距離)に基づいて、物体の移動を検知することができる。例えば、処理部40は、最初のサイクルにおいて単位グループ134の画像データから距離45~60mの範囲内に車両(物体3)を特定し、次のサイクルにおいても単位グループ134の画像データから距離45~60mの範囲内に車両(物体3)を特定した場合、車両(物体3)は、車両600の前方を等しい速度で同方向に走行していると検知する。また、処理部40は、最初のサイクルにおいて単位グループ134の画像データから距離45~60mの範囲内に車両(物体3)を特定し、次のサイクル(周期Tとする)において単位グループ133の画像データから距離30~45mの範囲内に車両(物体3)を特定した場合、車両(物体3)は、車両600の前方から相対速度(約15m/T)で接近していることを検知する。さらに続くサイクルにおいて、単位グループ132の画像データから距離15~30mの範囲内に車両(物体3)を特定すると、処理部40は車両(物体3)との衝突を、警告音を発する又は警告灯を点滅するなどにより運転手に警告してよい。
【0082】
本実施形態に係る撮像装置500によれば、光を射出する発光部10、発光部10から射出された光の反射光を受光する複数の受光素子104を有する受光部20、複数の受光素子104ごと、または、少なくとも2つの受光素子104をそれぞれが有する複数の単位グループ131~135ごとに、露光時間を制御する制御部30を備え、複数の受光素子104及び複数のグループ131~135は、それぞれの露光時間に対応する信号を出力する。さらに、出力された信号に基づいて、露光時間に対応する距離における像を複数の受光素子104ごと又は複数のグループ131~135ごとに生成する処理部40をさらに備える。制御部30により、複数の受光素子104ごと、または、少なくとも2つの受光素子104をそれぞれが有する複数のグループ131~135ごとに、露光時間を制御することにより、発光部10により光を射出し、受光部20により反射光を複数の受光素子104を用いて受光し、処理部40により、出力された信号に基づいて、露光時間に対応する距離における像を複数の受光素子104ごと又は複数のグループ131~135ごとに生成することで、各単位グループの露光時間に応じた複数の距離ごとに分解して各距離に位置する物体をそれぞれ撮像することができる。
【0083】
なお、本実施形態に係る撮像装置500では、1又は隣接する複数の受光素子104が1つのブロック131b~135bを構成し、任意に配列された複数のブロック131b~135bをそれぞれ含んで複数の単位グループ131~135を構成し、単位グループ131~135ごとに露光時間を制御することとしたが、これに代えて、受光素子104のブロック又は単位グループを構成せず、複数の受光素子104ごとに露光時間を制御することとしてもよい。また、本実施形態に係る撮像装置500では、複数の受光素子104ごとまたは複数の単位グループ131~135ごとに露光時間を制御し、露光時間に対応した距離における画像を取得した例を示したが、これに代えて、または、これに加えて、それぞれの露光時間に対応した距離を計測してもよい。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0085】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0086】
10…発光部、20…受光部、21…光学系、30…制御部、40…処理部、100…受光装置、101…マイクロレンズ、102…カラーフィルタ、103…パッシベーション膜、104…受光素子、105…トランジスタ、106…PD層、107…配線、108…配線層、109…バンプ、110…シリコン貫通電極、111…信号処理チップ、112…メモリチップ、113…撮像チップ、131~135…単位グループ、150…画素、152…転送トランジスタ、154…リセットトランジスタ、156…増幅トランジスタ、158…選択トランジスタ、300,310,320…リセット配線、302,312,322…転送配線、304…電源配線、306,316,326…選択配線、308,330…出力配線、309…負荷電流源、411…マルチプレクサ、412…信号処理回路、413…デマルチプレクサ、414…画素メモリ、415…演算回路、500…撮像装置、600…車両、610…速度センサ、620…移動方向センサ。