IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明治の特許一覧

<>
  • 特開-包餡型ナチュラルチーズ 図1
  • 特開-包餡型ナチュラルチーズ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149472
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】包餡型ナチュラルチーズ
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/09 20060101AFI20241010BHJP
   A01J 25/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A23C19/09
A01J25/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061729
(22)【出願日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2023063077
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅大
(72)【発明者】
【氏名】生部 さとり
(57)【要約】
【課題】包餡型ナチュラルチーズにおいて、良好な味わいと、切断時の食べやすさとを同時に付与する新たな技術的手段を提供する。
【解決手段】ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズであって、上記包餡型ナチュラルチーズの比重は1.0未満であり、かつ上記内容物は、比重0.89未満の含気泡乳化物を含む、包餡型ナチュラルチーズ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズであって、
前記包餡型ナチュラルチーズの比重は、1.0未満であり、かつ
前記内容物は、比重0.89未満の含気泡乳化物を含む、包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項2】
前記ナチュラルチーズの比重が0.8~1.2である、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項3】
前記外層のナチュラルチーズの量が、前記包餡型ナチュラルチーズ全量に対して30~60質量%である、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項4】
前記ナチュラルチーズがパスタフィラータチーズである、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項5】
前記内容物が、ナチュラルチーズ断片をさらに含む、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項6】
前記内容物におけるナチュラルチーズ断片と、外層のナチュラルチーズとが同種のナチュラルチーズである、請求項5に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項7】
前記内容物中のナチュラルチーズ断片の合計量が前記包餡型ナチュラルチーズ全量に対して10~70質量%である、請求項5に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項8】
前記外層のナチュラルチーズと、前記内容物中のナチュラルチーズ断片の合計量との質量比(外層のナチュラルチーズ/内容物中のナチュラルチーズ断片の合計)が0.4~3.0である、請求項5に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項9】
前記含気泡乳化物の量が、前記包餡型ナチュラルチーズ全量に対して10~50質量%である、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項10】
前記含気泡乳化物の量が、前記内容物全量に対して10~80質量%である、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項11】
前記含気泡乳化物が、ホイップクリーム、またはホイップクリームと液状乳性食品との混合物である、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項12】
前記含気泡乳化物におけるホイップクリームの量が、前記含気泡乳化物全量に対して10~100質量%である、請求項11に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項13】
前記液状乳性食品が、生乳、殺菌乳、脱塩乳、脱脂乳、部分脱脂乳、脱塩脱脂乳、成分調整乳、ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、れん乳、生クリーム、乳原料由来のパーミエイト、還元乳、還元脱脂乳および還元ホエイからなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項11に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項14】
前記外層と、前記内容物との質量比(外層/内容物)が0.5~3.0である、請求項1記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項15】
前記包餡型ナチュラルチーズの質量が10~250gである、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項16】
前記包餡型ナチュラルチーズの体積が10~250cmである、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項17】
ブッラータチーズである、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項18】
包装形態である、請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項19】
請求項1に記載の包餡型ナチュラルチーズと保存液とを収容してなる、容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項20】
前記包餡型ナチュラルチーズの全部または一部が前記保存液に浸漬している、請求項19に記載の容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項21】
前記容器が、保存液の入っていないヘッドスペースを有している、請求項19に記載の容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
【請求項22】
前記保存液の水分活性が0.99以上である、請求項19に記載の容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包餡型ナチュラルチーズに関する。より詳細には、良好な味わいと食べやすさとを備えた包餡型ナチュラルチーズに関する。
【背景技術】
【0002】
日本におけるナチュラルチーズの消費量は増加傾向にあり、ナチュラルチーズの普及とともに多様な風味・食感のナチュラルチーズが市場に出回るようになってきている。ナチュラルチーズには、熟成の程度により、乳成分の熟成の風味を楽しめる、いわゆる熟成型ナチュラルチーズ、および新鮮な乳風味を味わえる、いわゆる非熟成型ナチュラルチーズに分類することができる。また、ナチュラルチーズには、その硬さから、特別硬質ナチュラルチーズ、硬質ナチュラルチーズ、半硬質ナチュラルチーズ、軟質ナチュラルチーズに分類することができる。このように、ナチュラルチーズには、熟成の程度(有無)や物性(食感)の違い等により、多くの種類が存在する。
【0003】
ナチュラルチーズでは、そのまま食べる場合が多い一方で、外食産業では、単一の風味や食感による飽きが来ないようにするために、様々な風味や食感を楽しめる形態にチーズを加工してしばしば提供している。
【0004】
近年、外層と、外層に被覆される内容物から構成される包餡型食品の形態としてチーズを提供する種々の技術が報告されている。例えば、特許文献1には、モッツァレラチーズを外層として、液体または半液体の乳製品に浸漬された小型モッツァレラチーズを内容物として含む、モッツァレラベース食品が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、チーズの内部に多数の気泡を形成させた後に、これら気泡に生クリームを注入させて得られるチーズ製品が開示されている。
【0006】
また、包餡型ナチュラルチーズとしては、イタリア原産のフレッシュチーズにブッラータ(Burrata)チーズが挙げられる。ブッラータチーズは、内容物であるストラッチャテッラ(引裂いたパスタフィラータチーズと液体のクリームを和えたもの)を外層のパスタフィラータチーズで包んで構成されており、喫食時に外層を切り開くと内容物のクリームが流れ出る特徴を有している。市場において、ブッラータチーズは通常、保存液に浸漬された状態で容器と共に提供されるか、アスフォデルの葉やプラスチックの袋に包んだ状態で提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第3679802号公報
【特許文献2】特開平4-11836号公報
【発明の概要】
【0008】
ブッラータチーズのような包餡型ナチュラルチーズは、喫食時にクリーム等の内容物が流れ出るため、内容物を掬って食べる必要があり喫食に手間がかかり、また、内容物のクリーム量が多くなると、べたつきや脂っこさ等の好ましくない食感が強くなる場合がある。一方で、食べやすくするために内容物中のクリーム等の含有量を少なくすると、クリーム由来のミルク風味が感じにくくなることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0009】
したがって、本発明は、包餡型ナチュラルチーズにおいて、良好な味わいと、切断した際の食べやすさとを同時に付与する新たな技術的手段を提供することを一つの目的としている。
【0010】
本発明者らは、今般、鋭意検討した結果、特定の内容物を用いると、包餡型ナチュラルチーズに良好な味わいを保持させつつ、切断した際の食べやすさも付与しうることを見出した。さらに、本発明者らは、上記包餡型ナチュラルチーズを特定の保管条件下で保管すると、包餡型ナチュラルチーズの表面または形態を良好な状態に保持しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズであって、
上記包餡型ナチュラルチーズの比重は、1.0未満であり、かつ
上記内容物は、比重0.89未満の含気泡乳化物を含む包餡型ナチュラルチーズが提供される。
【0012】
また、本発明の別の実施態様によれば、上記包餡型ナチュラルチーズと保存液とを収容してなる包餡型ナチュラルチーズ用容器が提供される。
【0013】
本発明によれば、包餡型ナチュラルチーズにおいて、良好な味わいを保持しつつ、切断した際の食べやすさを効果的に付与することができる。また、本発明によれば、包餡型ナチュラルチーズを保存液中で保管して、包餡型ナチュラルチーズの表面または形態を良好な状態に保持することができる。また、本発明は、包餡型ナチュラルチーズを切断して喫食する際に、クリームをはじめとする内容物の流出を防止し、良好な食べやすさを実現する上で有利に利用することができる。また、本発明は、包餡型ナチュラルチーズを喫食した際のミルク感を保持しつつ、べたつきや脂っぽさを抑制する上で有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例1の試験区1、参考区1および参考区2において、ブッラータチーズ(包餡型ナチュラルチーズ)を切断したときの状態を示す写真である。試験区1では、内容物はほとんど流出していない一方で、参考区1および参考区2では、内容物の流出が認められる。
図2】試験例1の試験区1および参考区1のブッラータチーズを水に浸漬したときの写真である。試験区1のブッラータチーズは水に浮いている一方、参考区1のブッラータチーズは水中に沈んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施態様によれば、包餡型ナチュラルチーズは、ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなり、上記包餡型ナチュラルチーズの比重は、1.0未満であり、かつ上記内容物は、比重0.89未満の含気泡乳化物を含む。外層となるナチュラルチーズで上記内容物を被覆した包餡型ナチュラルチーズが、ミルク感を保持し、べたつきや脂っぽさを抑制しつつ、切断した際の内容物の流出を防止して食べやすさを備えることは意外な事実である。
【0016】
(ナチュラルチーズ)
本発明の一実施態様によれば、ナチュラルチーズは、外層として内容物の包餡に使用することから、可塑性(ストレッチ性)があるナチュラルチーズであることが好ましい。かかるナチュラルチーズとしては、例えば、パスタフィラータチーズ(モッツァレラチーズ、カチョカバロチーズ、スカモルツァチーズ、プロバローネチーズ、ストリングチーズ等)等が挙げられるが、これらに限定されない。また、可塑性があるナチュラルチーズとは、その製造中において、風味(例えば、熟成の風味等)や食感(例えば、クリーミーで、滑らかな食感等)を調節するために、伸縮可能なナチュラルチーズをいう。なお、パスタフィラータチーズとは、その製造中において、パスタフィラータ(pasta filata)プロセスを必要とするチーズであり、パスタフィラータプロセスとは、適切なpHで、チーズカードを加熱しながら、大きな塊がなくなるまで捏ね上げて、物性が滑らかになるまで混練や展延することである。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、ナチュラルチーズは、例えば、以下の方法で製造される。すなわち、原料乳をレンネット等の凝乳酵素等で凝固させ、乳酸菌や酸味料(乳酸等)等を添加して、pHを所定値の4~7に調整してから、ホエイを排出して、チーズカードを得る。得られたチーズカードを緩やかに加熱しながら混練し、可塑性を持たせる。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、上記原料乳とは、未殺菌の生乳のことをいい、牛乳、羊乳、水牛乳、山羊乳等の獣乳であればよい。そして、本発明の原料乳では、その組成を調整することができる。例えば、クリームセパレーター等を用いて、未殺菌の生乳から脱脂乳およびクリームを分離し、これら脱脂乳およびクリームを様々な混合比率で配合して、乳脂肪の含量を調整することができる。また、公知の分離膜等を用いて、ミネラル、ビタミン、乳糖、乳タンパク質、乳脂肪等を分離し、これらの成分を混合比率で配合して、これらの成分の含量を調整することもできる。とくに、フレッシュ感およびミルク感を付与する場合には、これらの付与につながるよう、生乳のタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルからなる群から選択される1種または2種以上の濃度を所定の値に調整することもできる。例えば、ミルク感を高めるためには、原料乳中の乳タンパク質、脂質(乳脂肪)、炭水化物(乳糖)の濃度を高めることができる。また、フレッシュ感を高めるためには、原料乳の濃度を調整する際に、加熱臭等を発生させないよう、冷蔵状態等で十分に冷却された状態で前記の方法等で調整すること、および/または凍結濃縮された乳原料を添加して調整すること等ができる。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、原料乳は、その乳脂肪の含量を調整することができる。原料乳中の乳脂肪分の含量は、全固形分中の乳脂肪分の割合で表すことができる。例えば、全固形分中の乳脂肪分の割合が低ければ、いわゆる低脂肪タイプのナチュラルチーズとなり、全固形分中の乳脂肪分の割合が高ければ、いわゆる高脂肪タイプのナチュラルチーズとなる上で好ましい。低脂肪タイプの包餡型ナチュラルチーズでは食感が硬めであり、高脂肪タイプの包餡型ナチュラルチーズでは軟らかい食感となる上で好ましい。本発明の原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合は特に制限はないが、例えば、0~80質量%、0~70質量%、0.5~65質量%、0.5~60質量%、1~55質量%、2~55質量%、5~55質量%、10~55質量%、15~55質量%、20~55質量%、25~55質量%、30~55質量%、または35~55質量%である。またここで、本発明の原料乳の全固形分中の乳脂肪分の割合は、好ましくは20~50質量%、より好ましくは25~45質量%、さらに好ましくは30~40質量%としてもよい。ここで、本明細書において、例えば、「0~80質量%」とは、「0質量%以上80質量%以下」を意味する。
【0020】
本発明の一実施態様によれば、原料乳は、その乳タンパク質の含量を調整することができる。原料乳中の乳タンパク質の含量は、例えば、1~10質量%、1.5~9質量%、1.75~8質量%、2~7質量%、2.25~6質量%、2.5~5.5質量%、2.75~5質量%、3~4.5質量%、または3.5~4.5質量%である。このとき、好ましくは1.5~9質量%、より好ましくは2~7質量%、さらに好ましくは2.5~5.5質量%、さらに好ましくは3~4.5質量%、さらに好ましくは3.5~4.5質量%である。包餡するための組織の強さや伸張のためには上記の範囲が好ましい。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、原料乳を凝乳する方法では、公知の方法を使用することができる。例えば、原料乳を乳酸菌で発酵させてレンネット等の凝乳酵素を添加(配合)する方法、原料乳のpHを調整してから加熱する方法、原料乳のpHを調整してレンネット等の凝乳酵素を添加(配合)する方法等を使用することができる。原料乳のpHを調整してレンネット等の凝乳酵素を添加(配合)する方法は、包餡型ナチュラルチーズにミルク風味を付与しやすい観点で好ましい。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、乳酸菌による発酵、および/または酸の添加により、原料乳を凝乳するpHに調整することができる。ここで、本発明の乳酸菌では、ナチュラルチーズで使用することができる乳酸菌であればよく、その属および種は任意であり、例えば、ラクチス菌、クレモリス菌、ブルガリア菌、サーモフィラス菌等の公知の乳酸菌を挙げることができる。酸による添加の場合、乳酸、酢酸、クエン酸、リン酸等の、食品および/または食品添加物で使用している公知の酸を原料乳に直接添加することもできる。凝乳酵素レンネットは、例えば、動物由来のレンネットや微生物由来のレンネット、遺伝子組み換えのレンネット等が挙げられる。またレンネットの濃度は適宜調整されるが、1~20ppmの範囲であることが好ましい。本発明において、凝乳されたチーズカードでは、例えば、pHが4~7、pHが4.2~6.8、pHが4.4~6.7、pHが4.6~6.4、pHが4.8~6.2、pHが5~6、pHが5.0~5.6、pHが5.2~5.8、またはpHが5.3~5.7である。またここで、チーズカードでは、好ましくはpHが4~7、より好ましくはpHが4.4~6.7、さらに好ましくはpHが4.8~6.2、さらに好ましくはpHが5~6としてもよい。なお、本発明において、原料ナチュラルチーズでは、特に、pHを5.3~5.7程度に調整すると、包餡機を用いて、外層となるナチュラルチーズを切り分ける際に、加工調理特性が良好となり、包餡型ナチュラルチーズを定量的かつ連続的に製造する観点から好ましい。
【0023】
凝乳した後、カッティングしてホエイを除いてチーズカードを得ることができる。チーズカードを直ちに用いて次工程に進んでもよい。また、チーズカードを冷却して凍結してもよい。なお、本発明の包餡型チーズは市販のチーズカードを用いてもよい。市販チーズカードは凍結していることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、チーズカードを緩やかに加熱し、混練することにより、フレッシュ感およびミルク感を付与した、可塑性があるナチュラルチーズを調製することができる。なお、本発明において、チーズカードを従来の温水(熱水)中で混練する公知の方法に準じて、チーズカードを加熱・混錬することができる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、原料ナチュラルチーズを加熱して混練することにより、可塑性があるナチュラルチーズを製造(調製)することができる。本発明において、原料ナチュラルチーズを加熱して混練する方法では、公知の方法を使用することができる。例えば、チーズカードを温水中または熱水中で混練する方法、チーズカードを水蒸気の雰囲気中で混練する方法等に準じて行うことができる。そして、チーズカード等を混練する温度は、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、80℃および84℃のいずれか1つを下限値とし、120℃、110℃、100℃、95℃、90℃、86℃および85℃のいずれか1つを上限値とする温度範囲でとしてもよく、例えば、50~100℃、55~100℃、60~100℃、65~100℃、70~100℃、70~95℃、70~85℃等である。またここで、チーズカード等を混練する温度は、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~95℃、さらに好ましくは70~90℃であり、さらに好ましくは80~90℃、さらに好ましくは84~86℃である。
【0026】
本発明において、チーズカード等を混練することにより、弾力性がある食感となり、本発明でいう可塑性があるナチュラルチーズになる。本発明において、ナチュラルチーズは、実際に包餡されるときに、所定の条件で加温されていればよく、必要に応じて、チーズカード等を混練した直後に、所定の条件で冷却してもよい。つまり、チーズカード等を加温しながら混練して一旦10℃以下に冷却してから、実際に包餡するときに再度、所定の条件で加温することもできる。
【0027】
本発明において、チーズカードを緩やかに加熱する方法では、極度の焦げ臭、および/または褐変化を防ぐ方法であれば、その方法や条件は特に制限されない。チーズカードを緩やかに加熱する方法として、例えば、内部加熱方式(ジュール加熱方式、マイクロウエーブ加熱方式)、高温でない温水をジャケット等に通水しながら加熱する間接加熱方式等がある。例えば、ジュール加熱方式を用いて、チーズカードを液状乳性食品と共に加熱して混練する場合、チーズカードに電気を通電することにより、迅速で均一に加熱することができ、フレッシュ感およびミルク感を向上させた、可塑性があるナチュラルチーズを調製することができる。ここでいう、ジュール加熱方式とは、通電加熱、オーミックヒーティング等とも称されているが、対象物に電気を通電して加熱する方法であれば、加熱方式の名称に関係なく、本発明でいう内部加熱方式に該当することは言うまでもない。また、例えば、マイクロウエーブ加熱方式を用いて、チーズカードを液状乳性食品と共に加熱して混練する場合にも、同様にして、フレッシュ感およびミルク感を向上させた、可塑性があるナチュラルチーズを調製することができる。ここでいう、マイクロウエーブ加熱方式とは、電磁加熱、電子レンジ加熱等とも称されているが、対象物にマイクロ波を当てて対象物質を加熱する方法であれば、加熱方式の名称に関係なく、本発明でいう内部加熱方式に該当することは言うまでもない。
【0028】
本発明において、チーズカードを加熱して混練する方法では、極度の焦げ臭、および/または褐変化を防ぐ方法であれば、その温度は特に制限されない。本発明において、チーズカードを加熱して混練する温度は、チーズカードの温度として、50℃、55℃および57℃のいずれか1つを下限値とし、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、63℃および60℃のいずれか1つを上限値とする温度範囲としてもよく、例えば、50~90℃、50~85℃、55~75℃、55~70℃、57~70℃、57~65℃である。好ましくは57~63℃である。上記温度に調整することはチーズカードを混練しやすくする上で好ましい。
【0029】
本発明において、チーズカードを混練することにより、弾力性がある食感となり、本発明でいう可塑性があるナチュラルチーズになる。例えば、ジュール加熱方式を用いて、チーズカードを加熱して混練する場合、過度な加熱とならないよう、その通電量(電力、電圧等)は適宜調節することができる。また、例えば、マイクロウエーブ加熱方式を用いて、チーズカードを液状乳性食品と共に加熱して混練する場合にも、同様にして、過度な加熱とならないよう、その出力等は適宜調節することができる。
【0030】
本発明において、風味(例えば、熟成の風味等)や食感(例えば、クリーミーで、滑らかな食感等)を調整するために、可塑性がないナチュラルチーズ(可塑性がないナチュラルチーズを製造するためのチーズカードを含む)を添加(配合)することができる。例えば、チーズカード(可塑性があるナチュラルチーズを製造するためのチーズカード)等を混練する前に、可塑性がないナチュラルチーズを添加して、チーズカード等と共に混練する方法、チーズカード等を混練した後に、可塑性がないナチュラルチーズを添加する方法等がある。
【0031】
本発明のナチュラルチーズでは、前記の混練後に、塩分を調整することができる。このとき、塩分の調整方法として、例えば、混練後のナチュラルチーズに食塩等を添加して加塩する方法、前記の液状乳性食品に加塩して混練すると同時に加塩する方法、混練後のナチュラルチーズを塩水に浸漬する方法等があるが、どの工程においても塩分を調整することができる。
【0032】
本発明のナチュラルチーズは、包餡型ナチュラルチーズの製造前に、例えば、フレッシュモッツァレラのように、公知の保存液に浸漬した状態で保存をしてもよい。このとき、その保存性が確保できれば、その保存液は特に制限されない。なお、公知の保存液として、包餡型ナチュラルチーズについて後述する通り、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等を添加した水(塩水)が代表的であるが、その他の原料も添加することができる。
【0033】
本発明のナチュラルチーズには、上記の通りに調製して得たものを使用すること以外に、市販のパスタフィラータチーズ(モッツァレラチーズ、カチョカバロチーズ、スカモルツァチーズ、プロバローネチーズ、ストリングチーズ等)等をそのまま使用してもよい。また、本発明の可塑性があるナチュラルチーズには、可塑性がない市販のフレッシュチーズを、上記の通りに加熱して混練して得たものを使用することができる。さらに、可塑性がない熟成型ナチュラルチーズの未熟成な状態にあるナチュラルチーズを、前記の通りに加熱して混練して得たものを使用することができる。なお、本発明のナチュラルチーズは、フレッシュチーズおよび熟成させたチーズのいずれも用いることができるが、好ましくはフレッシュチーズである。
【0034】
本発明のナチュラルチーズナチュラルチーズの比重は、特に限定されないが、軽く喫食しやすい食感を付与する観点から、例えば、0.8~1.2であり、好ましくは0.9~1.1であり、より好ましくは0.95~1.05である。
【0035】
(外層/包餡)
本発明の一実施態様によれば、ナチュラルチーズは、包餡型ナチュラルチーズの外層として使用される。外層のナチュラルチーズの量は、包餡型ナチュラルチーズの保形性を確保して内容物を安定的に封入する観点から、包餡型ナチュラルチーズ全量に対して、通常30~60質量%であり、好ましくは35~55質量%であり、より好ましくは35~50質量%である。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、包餡型ナチュラルチーズの外層として使用するときに、原料ナチュラルチーズ等を加温して包餡に使用することができる。本発明において、ナチュラルチーズを外層として包餡する温度では、実際に包餡できる状態であれば、特に限定されないが、50℃、55℃、58℃、57℃、60℃、61℃および63℃のいずれか1つを下限値とし、80℃、75℃、70℃、68℃、67℃、65℃、63℃および60℃のいずれか1つを上限値とする温度範囲としてもよく、例えば、50~80℃、55~70℃、58~70℃、60~68℃、61~68℃、または63~67℃が挙げられる。またここで、ナチュラルチーズを外層として包餡する温度は、好ましくは57~65℃、57~63℃、さらに好ましくは57℃~60℃である。
【0037】
本発明の包餡型ナチュラルチーズは、ナチュラルチーズを包餡する装置を用いて連続製造することができる。本発明において、ナチュラルチーズを包餡する装置では、実際に包餡できる状態であれば、特に限定されないが、ナチュラルチーズを加温して、定量的かつ連続的で機械的に包餡する装置を使用することができる。ここで、ナチュラルチーズを加温して、定量的かつ連続的に包餡する装置とは、一個または二個以上の装置で構成され、例えば、包餡型ナチュラルチーズの外層を構成するナチュラルチーズを供給する装置、包餡型ナチュラルチーズの内容物を供給する装置、および、これら外層で内容物を包餡する装置が独立していてもよいし、一部の装置が一体化していてもよいし、全部の装置が一体化していてもよい。なお、全部の装置が一体化した、定量的かつ連続的に包餡する装置として、例えば、汎用の包餡機がある。
【0038】
本発明のナチュラルチーズを包餡する具体的な方法としては、例えば、可塑性のある外層ナチュラルチーズを球状、シート状、巾着袋状に成型し、内部に内容物を注入する方法や、外層ナチュラルチーズをシート状または袋状に成型し、冷却した後に内容物を包み込むように成型する方法等が挙げられる。
【0039】
また、本発明において、ナチュラルチーズを包餡する方法では、実際に包餡できる状態であれば、特に限定されないが、ナチュラルチーズを加温して、定量的かつ連続的で機械的に包餡する装置に供給してもよい。ナチュラルチーズを加温して、定量的かつ連続的で機械的に供給する装置には、公知の定量ポンプを使用することができる。例えば、モーノポンプ、サインポンプ、2軸のスクリューポンプ、ロータリーポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を使用することができる。もちろん、ナチュラルチーズが同様な特性を持ったままで、ナチュラルチーズを加温して、定量的かつ連続的で機械的に供給できれば、定量ポンプに限定されない。
【0040】
本発明の包餡型ナチュラルチーズでは、実際に包餡できる状態であれば、外層ナチュラルチーズに他の食品素材を含有させることができる。例えば、外層のナチュラルチーズ基材に別のチーズを含有させることにより、複数の食感を楽しめる、チーズ(ナチュラルチーズ)を提供することができる。例えば、かかる別のチーズとしては、フレッシュチーズ、硬質ナチュラルチーズ、半硬質ナチュラルチーズ、軟質ナチュラルチーズ、カビ熟成型ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフードが挙げられる。また、外層ナチュラルチーズに含有させる食品素材として、香辛料、菓子、果実加工品、果実、畜肉類、肉加工品、野菜、魚介類、水産加工品、フィリング、卵加工品、大豆加工品、調味料、健康機能性素材を使用することにより、外層(外側)の食感に特徴があり、複数の食感を楽しめる、包餡型ナチュラルチーズを提供することができる。また、外層ナチュラルチーズに含有させる食品素材として、健康機能性成分を使用することにより、風味や食感を楽しみながら、健康の維持・増進させる機能を包餡型ナチュラルチーズに付与ができる。
【0041】
(内容物)
本発明の包餡型ナチュラルチーズにおける上記外層に包餡される内容物は、比重0.89未満の含気泡乳化物を含む。かかる内容物を使用することは、ミルク感を保持し、べたつきや脂っぽさを抑制しつつ、切断した際の流出を防止する観点から好ましい。
【0042】
上記内容物中の含気泡乳化物の比重は、上記の通り、通常0.89未満であり、好ましくは0.2~0.88であり、より好ましくは0.23~0.88であり、さらに好ましくは0.25~0.85である。
【0043】
また、本発明の含気泡乳化物の量は、包餡型ナチュラルチーズ全量に対して、例えば、10~50質量%であり、好ましくは10~40質量%であり、より好ましくは10~35質量%である。
【0044】
また、本発明の含気泡乳化物の量は、上記内容物全量に対して、例えば、10~80質量%であり、好ましくは10~70質量%であり、より好ましくは10~65質量%である。
【0045】
また、本発明の含気泡乳化物における脂肪含量は、例えば、10~70質量%であり、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、上記含気泡乳化物は、ホイップクリームを含んでなる。ホイップクリームは、生クリームを公知の攪拌装置により処理することにより製造することができる。
【0047】
また、含気泡乳化物におけるホイップクリームの量は、特に限定されないが、含気泡乳化物全量に対して、例えば、10~100質量%であり、好ましくは15~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%である。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、上記含気泡乳化物は、ホイップクリームと液状乳性食品との混合物であってもよい。本発明において、液状乳性食品とは、乳成分の含まれている液状の食品、すなわち、乳原料の含まれている液状の食品、であれば、特に制限はない。例えば、生乳、脱脂乳、部分脱脂乳、脱塩脱脂乳、成分調整乳、ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、れん乳、生クリーム、乳原料由来のパーミエイト、還元乳、還元脱脂乳、還元ホエイ等があるが、これに限られない。これらは1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、加工された原料(粉乳、バター、濃縮乳、れん乳、乳糖、乳清ミネラル等)を改めて還元して液状化した還元乳も使用することができる。
【0049】
また、本発明の一実施態様によれば、包餡型ナチュラルチーズの内容物は、ナチュラルチーズ断片をさらに含む。ここで、ナチュラルチーズ断片は、外層となるナチュラルチーズと同種のチーズを包餡型ナチュラルチーズに封入できる程度のサイズに切断し、上記含気泡乳化物中に混合することが好ましい。
【0050】
上記内容物中にナチュラルチーズ断片を混合する場合、上記内容物中のナチュラルチーズ断片の合計量は、包餡型ナチュラルチーズ全量に対して、例えば、10~70質量%であり、好ましくは15~65質量%であり、より好ましくは20~55質量%である。
【0051】
また、上記外層のナチュラルチーズと、上記内容物中のナチュラルチーズ断片の合計量との質量比(外層のナチュラルチーズ/内容物中のナチュラルチーズ断片の合計)は、例えば、0.4~3.0であり、好ましくは0.3~2.5であり、より好ましくは0.5~2.4である。
【0052】
本発明の包餡型ナチュラルチーズでは、実際に包餡できる状態であれば、内容物中の上記含気泡乳化物に他の食品素材を含有させることができる。他の食品素材として、香辛料、菓子、果実加工品、果実、畜肉類、肉加工品、野菜、魚介類、水産加工品、フィリング、卵加工品、大豆加工品、調味料、健康機能性素材を使用することにより、内容物の食感に特徴があり、複数の食感を楽しめる、包餡型ナチュラルチーズを提供することができる。なお、代表的な可塑性があるナチュラルチーズであるモッツァレラチーズでは、トマトや桃等と合わせたカプレーゼという料理があるが、本発明を応用すれば、モッツァレラチーズでトマトや桃をいれる、カプレーゼを手軽に供給することができる。また、内容物に含有させる食品素材として、健康機能性成分を使用することにより、風味や食感を楽しみながら、健康の維持・増進させる機能を包餡型ナチュラルチーズに付与ができる。
【0053】
(包餡型ナチュラルチーズ)
本発明の包餡型ナチュラルチーズの比重は、上記の通り、通常1.0未満であり、好ましくは0.5~0.99であり、より好ましくは0.7~0.98である。上記比重となるように、包餡型ナチュラルチーズを調製することは、喫食の容易さを確保し、さらには後述する保管容器内での視認のしやすさを確保する観点から好ましい。
【0054】
また、本発明の包餡型ナチュラルチーズでは、実際に包餡できる状態であれば、外層となるナチュラルチーズと内容物の質量比(外層/内容物)は、特に限定されないが、例えば、0.5~3.0であり、好ましくは0.6~2.5であり、より好ましくは0.7~2.4である。
【0055】
本発明の包餡型ナチュラルチーズでは、実際に包餡できる状態であれば、この質量は、特に限定されないが、製品の食べやすさ等の観点から、10g、11g、12g、13g、14g、15g、16g、17g、18g、19g、20g、25g、30g、35g、40g、50g、60g、70g、80gのいずれか1つを下限値とし、製造装置の能力等の観点から、1000g、900g、800g、700g、600g、500g、400g、300g、200g、150g、125g、100g、80g、75g、70g、65gおよび60gのいずれか1つを上限値とする質量範囲としてもよく、例えば、10~1000g、10~250g、11~800g、12~700g、13~600g、14~500g、15~400g、16~300g、17~200g、18~250g、19~125g、20~100g、80~100g、20~80g、25~75g、30~70g、35~65g、または40~60gである。
【0056】
また、本発明の包餡型ナチュラルチーズのサイズは、特に限定されず、上記質量に応じたサイズとしてよいが、例えば、10~250cm、好適には90~250cmとすることができる。
【0057】
本発明の包餡型ナチュラルチーズでは、実際に包餡できる状態であれば、任意の食品原料および/または食品添加物を内容物中に任意に添加することができる。ここで、本発明によれば、外層となるナチュラルチーズを特定の温度で扱うことにより、外層となるナチュラルチーズの加工調理特性が良好となることから、包餡機を用いても、個々に供給されるナチュラルチーズの質量が大きく変化することなく、定量的かつ連続的に包餡型ナチュラルチーズを製造することができる。さらに、本発明によれば、外層となるナチュラルチーズの加工調理特性が良好となることから、包餡機を用いても、品質を均一に制御や管理して、包餡型ナチュラルチーズを定量的かつ連続的に大量生産することができる。
【0058】
(製品/保管形態)
また、包餡型ナチュラルチーズの製品形態は、特に限定されないが、一つの実施態様によれば、包餡型ナチュラルチーズは、ブッラータチーズとして提供される。また、包餡型ナチュラルチーズは、容器入り包餡型ナチュラルチーズとして提供されることが好ましい。また、本発明の一つの実施態様によれば、容器入り包餡型包餡型ナチュラルチーズは、アスフォデルの葉やプラスチック、アルミ蒸着フィルム等の袋に包まれた包装形態で提供される。
【0059】
また、本発明の一実施態様によれば、容器入り包餡型ナチュラルチーズ包装体は、包餡型ナチュラルチーズの形態を保持し、乾燥を防止する観点から、保存液と、保存液中に浸漬する包餡型ナチュラルチーズとを収容した容器として提供される。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、保存液は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを含んでなる。保存液の塩化ナトリウム濃度または塩化カリウムは、例えば、0.1~2.0質量%、0.15~1.8質量%、0.2~1.6質量%、0.25~1.4質量%、0.3~1.2質量%、0.35~1.0質量%、0.4~0.8質量%、0.4~0.6質量%、または0.45~0.55質量%である。塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを上記濃度範囲とすることは、弾力性がありかつ味わいの良い容器入り包餡型ナチュラルチーズを提供する上で好ましい。
【0061】
また、保存液の水分活性は、包餡型ナチュラルチーズの乾燥を防止する観点から、例えば、0.98以上であり、好ましくは0.99以上であり、より好ましくは0.995~0.999である。保存液の水分活性は、チルドミラー露点式により測定することができる。
【0062】
また、保存液には、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムの他、本発明の効果が損なわれない限り、本発明で規定していない食品原料および/または食品添加物を任意に添加することができる。例えば、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、L-グルタミン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、フェロシアン化カルシウム、サッカリンカルシウム、ソルビン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウムニナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄等の二価塩類、硬水、砂糖およびホエイの中から選ばれる1種または2種以上をさらに含めることができる。これらを添加することで、後述する容器詰めのナチュラルチーズの保存中での風味や品質の向上が期待でき、好ましい。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、保存液は殺菌後速やかに冷却し、包餡型ナチュラルチーズを投入する前に15℃以下とすることが好ましく、-3~10℃とすることがより好ましい。このような無菌的な操作や環境で包餡型ナチュラルチーズを保存液に投入することは、包餡型ナチュラルチーズに存在する汚染の原因となる微生物の増殖を抑制する上で有利である。また、当該保存液に浸漬する際の加熱された包餡型ナチュラルチーズの温度は、3~49℃、4~40℃、5~30℃、または5~15℃であってもよい。可塑性のあるナチュラルチーズの温度を50℃未満とすることは、包餡型ナチュラルチーズのホイップの食感が維持され、加熱臭も少なく風味上好ましい。
【0064】
また、本発明の別の実施態様によれば、保存液の温度は、50~100℃、50~90℃、55~85℃、60~80℃、または65~85℃であってもよい。当該保存液の温度が50℃以上であれば、包餡型ナチュラルチーズに存在する汚染の原因となる微生物の増殖が抑制され、好ましい。また、当該保存液の温度が100℃以下であれば、包餡型ナチュラルチーズの加熱による溶解が抑制され、好ましい。したがって、保存液の温度は、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃、さらに好ましくは65~88℃である。また、当該保存液に浸漬する際の加熱された包餡型ナチュラルチーズの温度は、50~100℃、50~90℃、55~85℃、60~80℃、または65~85℃であってもよい。可塑性のあるナチュラルチーズの温度が50℃以上であれば、包餡型ナチュラルチーズに寄生する汚染の原因となる微生物の増殖が抑制され、好ましい。また、可塑性のあるナチュラルチーズの温度が100℃以下であれば、包餡型ナチュラルチーズの加熱による溶解が抑制され、好ましい。したがって、一実施態様によれば、包餡型ナチュラルチーズの温度は、好ましくは50~100℃、より好ましくは50~80℃、さらに好ましくは55~60℃である。
【0065】
本発明の容器入り包餡型ナチュラルチーズは、良好な味わいを保持しつつ乾燥を回避する観点から、保管容器内において、その全部または一部が保存液に浸漬していることが好ましい。また、容器入り包餡型ナチュラルチーズは、包餡型ナチュラルチーズを視認しやすくして需要者に安心感や購買意欲を喚起する観点から、保管容器において保存液の入っていないヘッドスペースを有していることが好ましい。
【0066】
本発明の容器入り包餡型ナチュラルチーズの容器は、その材質および形状に制限はない。容器として、例えば、プラスチックカップ、ペットボトル、ソフトバッグ、缶、ビン等が挙げられる。本発明の包餡型ナチュラルチーズは、容器詰めしてホットパック処理することにより、その保存性はさらに良くなり、より長期間の保存が可能となるため、好ましいことは言うまでもない。
【0067】
本発明の包餡型ナチュラルチーズは、冷蔵(10℃以下)条件下では、例えば6ヶ月間、5ヶ月間、4ヶ月間、3ヶ月間、2ヶ月間、1.5ヶ月間、1ヶ月間、0.9ヶ月間、0.8ヶ月間、0.7ヶ月間、0.6ヶ月間、または0.5ヶ月間の保存をすることができる。
【0068】
また、本発明の一実施態様によれば、以下の[1]~[22]が提供される。
[1]ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズであって、
上記包餡型ナチュラルチーズの比重は、1.0未満であり、かつ
上記内容物は、比重0.89未満の含気泡乳化物を含む、包餡型ナチュラルチーズ。
[2]上記ナチュラルチーズの比重が0.8~1.2である、[1]に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[3]上記外層のナチュラルチーズの量が、上記包餡型ナチュラルチーズ全量に対して30~60質量%である、[1]または[2]に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[4]上記ナチュラルチーズがパスタフィラータチーズである、[1]~[3]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[5]上記内容物が、ナチュラルチーズ断片をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[6]上記内容物におけるナチュラルチーズ断片と、外層のナチュラルチーズとが同種のナチュラルチーズである、[1]~[5]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[7]上記内容物中のナチュラルチーズ断片の合計量が上記包餡型ナチュラルチーズ全量に対して10~70質量%である、[5]または[6]に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[8]上記外層のナチュラルチーズと、上記内容物中のナチュラルチーズ断片の合計量との質量比(外層のナチュラルチーズ/内容物中のナチュラルチーズ断片の合計)が0.4~3.0である、[5]~[7]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[9]上記含気泡乳化物の量が、上記包餡型ナチュラルチーズ全量に対して10~50質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[10]上記含気泡乳化物の量が、上記内容物全量に対して10~80質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[11]上記含気泡乳化物が、ホイップクリーム、またはホイップクリームと液状乳性食品との混合物である、[1]~[10]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[12]上記含気泡乳化物におけるホイップクリームの量が、上記含気泡乳化物全量に対して10~100質量%である、[11]に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[13]上記液状乳性食品が、生乳、殺菌乳、脱塩乳、脱脂乳、部分脱脂乳、脱塩脱脂乳、成分調整乳、ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、れん乳、生クリーム、乳原料由来のパーミエイト、還元乳、還元脱脂乳および還元ホエイからなる群から選択される1種または2種以上を含む、[11]または[12]に記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[14]上記外層と、上記内容物との質量比(外層/内容物)が0.5~3.0である、[1]~[13]のいずれか記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[15]上記包餡型ナチュラルチーズの質量が10~250gである、[1]~[14]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[16]上記包餡型ナチュラルチーズの体積が10~250cmである、[1]~[15]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[17]ブッラータチーズである、[1]~[16]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[18]包装形態である、[1]~[17]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズ。
[19][1]~[18]のいずれかに記載の包餡型ナチュラルチーズと保存液とを収容してなる、容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
[20]上記包餡型ナチュラルチーズの全部または一部が上記保存液に浸漬している、[19]に記載の容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
[21]上記容器が、保存液の入っていないヘッドスペースを有している、[19]または[20]に記載の容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
[22]上記保存液の水分活性が0.99以上である、[19]~[21]のいずれかに記載の容器入り包餡型ナチュラルチーズ。
【実施例0069】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を限定するものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書における測定方法および単位は、JIS(日本工業規格)に従う。また、以下に記載の官能評価は、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練されたパネルにより実施した。
【0070】
試験例1
<サンプルの調整方法>
生乳(脂肪/タンパク質=1.15)を殺菌(63℃・30分間)して36℃に冷却して得られた仕込み乳に10%乳酸を滴下しpHを6.2にした。pHが6.2になった時点で、凍結乳酸菌スターター(クリスチャンハンセン社)を所定量添加して混合しながら、インキュベーター内で20分間攪拌した。さらに、得られた混合物にレンネット(クリスチャンハンセン社)を50ppm添加し、保持して凝固させ、1cm角にカッティングして緩やかに攪拌した。36℃にしながら30分間攪拌した後カードとホエイを分離した。その後、36℃恒温室でマチュレーションしてホエイを除きFDM52%、pH5.2のチーズカードを得た。
次に75℃の熱水中でチーズカードを62~64℃に加温して混練することで、可塑性のあるナチュラルチーズを得た。
【0071】
上記可塑性のあるナチュラルチーズを3mmの厚さのシート状に引き延ばして成型し、冷水に浸漬した後、シートを長さ約2cm×幅約3mmの短冊状に切断し、内容物用のナチュラルチーズ断片(「内容物チーズ」ともいう)を得た。得られた内容物チーズは水分含量57%、脂肪含量22.4%であった。
【0072】
内容物チーズを脂肪含量45%の生クリーム(「45%液状クリーム」ともいう)、脂肪含量40%の生クリーム(「40%液状クリーム」ともいう)、および脂肪含量40%の生クリームをホイップしたホイップクリーム(「ホイップクリーム1」ともいう)と所定の比率で混合し、内容物チーズと上記各クリームとの混合物を得た。ここで、ホイップクリーム1(比重0.5)は、5℃に調整した脂肪含量40%の生クリーム800mLをケンミックスアイコーシェフPRO(KPL9000S、(株)愛工舎製作所)のメモリ3で処理することにより作製した(ホイッピング時間=3分、オーバーラン(空気含有率)=100%)。
【0073】
次に、可塑性のあるナチュラルチーズを用いて、内容物チーズと上記各クリームとの混合物を包み、冷却して、内容物チーズと上記各クリームとの混合物から構成される内容物と、可塑性のあるナチュラルチーズから構成される外層(以下、「外層チーズ」ともいう)からなるブッラータチーズ(包餡型ナチュラルチーズ)を得た。
【0074】
<切断して喫食するときの食べやすさの確認方法>
ブッラータチーズを4等分し、3分間静置した後、各切断片をカレー用スプーン(カレー賢人 『キャリ』山崎金属工業株式会社)で4回に分けて掬い、掬い取れたチーズ量を下記の基準で評価した。
○:掬い取れたチーズ量が内容物チーズ質量の90%以上
△:掬い取れたチーズ量が内容物チーズ質量の80%以上90%未満
×:掬い取れたチーズ量が内容物チーズ質量の80%未満
【0075】
<「べたつき・脂っぽさ」「クリーム様のミルク感」の程度の評価方法>
10名の訓練されたパネルにより、以下のスコアを基準として、「べたつき・脂っぽさ」「クリーム様のミルク感」を5段階で評価し平均点を算出した。
【0076】
「べたつき・脂っぽさ」スコア
1点:非常に強い
2点:強い
3点:普通
4点:弱い
5点:非常に弱い
【0077】
「クリーム由来のミルク風味」スコア
1点:非常に弱い
2点:弱い
3点:適度
4点:強い
5点:非常に強い
【0078】
<保管時の視認性の評価方法>
500mLビーカー中でブッラータチーズを水400mL中に浸漬させ、ビーカーの上面側よりブッラータチーズを目視により確認できるか評価した。
結果は、表1に示される通りであった。
【0079】
【表1】
【0080】
切断して喫食するときの食べやすさについては、試験区1はスプーンで掬いやすく、ほぼすべての内容物を掬い取れた。また、参考区2は90%以上の内容物を掬いとれた。一方で、参考区1は流れ出た液体クリームをスプーンですくうことができず、掬い取れた内容物の量は80%未満であった。
図1の写真では、試験区1、参考区1および参考区2において、ブッラータチーズを切断したときの状態を示す。試験区1では、内容物はほとんど液状物質が流出していなかった。一方で、参考区1および参考区2では、内容物の流出が認められた。
【0081】
また、試験区1と参考区1および参考区2の風味・食感を比較すると、試験区1および参考区1ではいずれも良好なクリーム由来のミルク感が強く感じられた。一方で、参考区2ではクリーム由来のミルク感が非常に弱くなった。
試験区1ではクリーム由来のミルク感が強く感じられる一方で、べたつき・脂っぽさの程度が軽減されていた。
以上の結果から、試験区1では、切断して喫食するときの食べやすさ、クリーム由来のミルク感および、べたつき・脂っぽさの程度がいずれも良好でバランスが取れていることが示唆された。
【0082】
また、試験区1および参考区1のブッラータチーズを水に浸漬した結果、図2に示される通りであった。試験区1のブッラータチーズは、水に浮いている一方、試験区1のブッラータチーズは水中に沈んでいた。このことから、試験区1のブッラータチーズは、透明度の低い水溶液中で保管する場合であっても、容器の上面側から視覚的に認識できることが示唆される。
【0083】
試験例2
内容物の質量を46.9~47.8gに調整し、試験例1と同様の方法によりブッラータチーズを作製した。内容物は、内容物チーズ、脂肪含量45%の生クリーム(45%液状クリーム)、および脂肪含量40%の生クリーム(40%液状クリーム)をホイップしかつ比重を調整したホイップクリーム(「ホイップクレーム2」ともいう)とを所定の比率で混合した。ここで、ホイップクリーム2(比重0.8)は、5℃に調整した脂肪含量40%の生クリーム800mLをケンミックスアイコーシェフPRO(KPL9000S、(株)愛工舎製作所)のメモリ3で処理することにより作製した(ホイッピング時間=2分30秒、オーバーラン(空気含有率)=25%)。
【0084】
それぞれのブッラータチーズについて試験例1と同様に「切断して喫食するときの食べやすさの確認方法」および「「べたつき・脂っぽさ」「クリーム様のミルク感」の程度の評価方法」の基準に基づいて判定した。
結果は表2に示される通りであった。
【0085】
【表2】
【0086】
参考区3、参考区4では内容物に使用した液状クリーム量が多くなる程、クリーム由来のミルク感は上昇するものの、切断して喫食するときの食べやすさの程度は低下した。
一方で、試験区2~5では、内容物に使用したホイップクリームの量が多くなる程、クリーム由来のミルク感が上昇し、いずれも切断して喫食するときの食べやすさの程度は高かった。
また、参考区および試験区の比較から、ホイップクリームを使用すると、当量の液状クリームを使用したときと比較して、クリーム由来のミルク感が強く感じられ、べたつき・脂っぽさの程度が低くなり、品質が良化することが確認された。
【0087】
試験例3
ブッラータチーズの全体積が100ccとなるように、内容物チーズと混合する液状クリームおよびホイップクリームの比率を調整し、試験例1の方法に準じてブッラータチーズを作製した。そして、それぞれのブッラータチーズについて試験例1と同様に「切断して喫食するときの食べやすさの確認方法」に準じて評価した。
結果は表3に示される通りであった。
【0088】
【表3】
【0089】
液状クリームおよびホイップクリームを混合して得られる内容物中の含気泡クリームの比重が0.86以下であるときにスプーンで掬いやすく、80%以上の内容物を掬い取れた。食べやすいブッラータを調整する上で、上記混合して得られる含気泡クリームの比重を0.86以下にすることが望ましいと考えられる。
【0090】
試験例4
塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムの量を変更することにより水分活性を調整して得られた保存液(塩化カルシウムまたは塩化ナトリウム、食塩および砂糖を含む水溶液)とともに試験例1で作製したブッラータチーズをカップ容器(容量300mL)に充填した。
カップ容器へのチーズの充填の際には、保存液100mLをブッラータチーズとともに充填してカップ容器内にヘッドスペースを設けたサンプルと、保存液200mLをブッラータチーズとともに充填してカップ容器内にヘッドスペースカップを設けないサンプルを用意した。
次に、カップ容器に充填したそれぞれのブッラータチーズを10℃に調整した恒温庫で7日間保管し、ブッラータチーズの表面の乾燥状態を以下の基準に基づいて評価した。
【0091】
<10℃7日間保管後のブッラータ表面状態の評価基準>
○:表面が乾燥せず、良好な状態である。
△:表面が僅かに乾燥し、僅かに黄変しているが許容できる状態である。
×:表面が乾燥・黄変し、許容できない状態である。
【0092】
また、ヘッドスペースの相対湿度(%RH)は、相対湿度測定器(佐藤計量製作所製)を用いて静電気要領式法により測定した。
また、保存液の水分活性は、水分活性測定器(Meter製)を用いてチルドミラー露点測定法により測定した。結果は、表4に示される通りであった。
【0093】
【表4】
【0094】
ヘッドスペースを設けたサンプルでは、保存液の水分活性を0.995以上に調整した場合にブッラータチーズの表面は非常に良好な状態に保たれた。保存液の水分活性を0.99に調整した場合には僅かにチーズの表面に乾燥が認められたが許容できる状態であった。一方、保存液の水分活性を0.98以下に調整した場合には許容できない表面の乾燥と黄変が認められた。
ヘッドスペースを設けないサンプルでは、保存液の水分活性を0.98に調整しても表面に乾燥は認められなかった。なお、ブッラータチーズは浮いてカップ上部の蓋に押し当てられて形状が僅かに変形したが許容できる状態であった。
【0095】
試験例5
ブッラータチーズの全体積が30~200ccとなるように、内容物チーズと混合する液状クリームおよびホイップクリームの比率を調整し、試験例1の方法に準じて包餡型ナチュラルチーズを作製した。そして、それぞれの包餡型ナチュラルチーズについて試験例1と同様に「切断して喫食するときの食べやすさの確認方法」に準じて評価した。全体積が200ccのチーズについては8等分し、3分間静置した後、各切断片をカレー用スプーン(カレー賢人 『キャリ』山崎金属工業株式会社)で8回に分けて掬い、掬い取れたチーズ量を同一の基準で評価した。
結果は表5に示される通りであった。
【0096】
【表5】
図1
図2