(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149662
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】低CTE、低パッフィングニードルコークス
(51)【国際特許分類】
C10C 3/02 20060101AFI20241010BHJP
C10B 57/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C10C3/02 B
C10B57/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024128644
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2021546589の分割
【原出願日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2019168292
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】秦 恭兵
(57)【要約】
【課題】 原料油の性状変化に対応しながら、より安定的に低CTE、低パッフィングニードルコークスを得ること。
【解決手段】 式(1)で示されるPDQI値が5.0未満の水素供与性の小さいコールタール系重質油あるいは石油系重質油のニードルコークス主原料油に、式(1)で示されるPDQI値が5.0以上の水素供与性の大きな副原料油を混合してコーキングし、得られた生コークスをか焼することを特徴とする低CTE、低パッフィングニードルコークス。
[式(1)]
PDQI=H%×10×(HNβ/H)
ここで、H%は元素分析で求められる水素量(重量%)であり、HNβ/Hは1H-NMRで測定されるβナフテン水素と全水素の比である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)にて示されるCTEに関する構造指標(NCSIC)が25.0を超え、式(3)にて示されるパッフィングに関する構造指標(NCSIP)が5.0よりも大きいことを特徴とする低CTE、低パッフィングニードルコークス。
[式(2)]
NCSIC=((Lc/d002)+(開気孔比率))/(σ(θ))
ここで、Lc:結晶子サイズ、d002:面間隔、σ(θ):平均配向角度の標準偏差を示す。
[式(3)]
NCSIP=(開気孔量/閉気孔量)+(HIT/1000)/EIT
ここで、HIT:押込み硬さ、EIT:押込み弾性率を示す。
【請求項2】
結晶子サイズLcが4.0~10.0nmであり、面間隔d002が0.340~0.350nmであり、開気孔比率が0.15~0.40であり、平均配向角度の標準偏差σ(θ)が0.01~0.85である請求項1に記載の低CTE、低パッフィングニードルコークス。
【請求項3】
開気孔量が0.040~0.070cm3/gであり、閉気孔量が0.001~0.015cm3/gであり、押込み硬さHITが800~1500MPaであり、押込み弾性率EITが5.0~15.0GPaである請求項1に記載の低CTE、低パッフィングニードルコークス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低CTE、低パッフィング用ニードルコークス及び電気製鋼用人造黒鉛電極に関する。
【背景技術】
【0002】
ニードルコークスは、一般的に、石油系重質油やコールタール系重質油を原料として製造され、電気製鋼用人造黒鉛電極の骨材として用いられている。この黒鉛電極は、ニードルコークスを所定粒度に調整後、バインダーピッチと捏合し、次いで、押出成型し、その後、一次焼成、含浸、二次焼成及び黒鉛化処理することにより製造される。
【0003】
黒鉛電極は、高温雰囲気での過酷な使用環境に耐えるため、熱膨張係数(CTE)が低いことが望まれている。CTEが低いと、電気製鋼時の電極消耗が少なくなり、電気製鋼のコスト削減に寄与する。
【0004】
黒鉛電極製造工程の黒鉛化処理は、3000℃前後の高温で熱処理する工程であり、LWG炉(直接通電方式の炉)を用いる方法が一般的である。このLWG炉で黒鉛化すると昇温速度が速いため、黒鉛電極材料からのガスの発生速度が速く、パッフィングと称される異常膨張現象が起きやすくなる。このパッフィングにより、電極が低密度となり、場合により電極が破損してしまう。このため、パッフィングを小さくするためのニードルコークスの製造法や電極製造時に添加するパッフィングインヒビターが検討されてきた。
【0005】
CTEは、一般的にニードルコークスの組織配向性が揃っているほど、微細なクラックが多いほど低いとされている。ニードルコークスを構成する結晶構造である黒鉛構造の炭素六角網面方向は、積層方向よりも熱膨張が小さいため、面方向が電極の長手方向に並ぶことで低CTEの電極になると考えられる。また、微細なクラックがあることで、熱膨張を緩和する働きをして低CTEとなると考えられる。
パッフィングは、一般的にニードルコークス中の窒素や硫黄に由来する化合物が高温条件で気化することによるガス圧によって生じると考えられている。
【0006】
人造黒鉛電極用ニードルコークスに求められるのは、電極使用時の低CTE、電極製造時の低パッフィングであり、従来、低CTE、低パッフィングニードルコークスを製造する方法としては、以下のような技術が挙げられる。
【0007】
特許文献1には、原料油を水素化し、原料油中の窒素、硫黄分を除去することによるパッフィング原因物質除去によるパッフィング低減、酸素、ナトリウムの低減とナフテン環増加による高温時の粘度低下による好ましい炭素化挙動を示すことによるCTEを低減する方法が記載されている。特許文献2には、キノリン不溶分を除去したコールタールピッチに特定の性状に調整した石油系重質油を混合してコークス化することで、パッフィング原因物質の窒素、硫黄分の希釈により、パッフィングを低減し、低CTEを示す異方性組織を生成するような炭素化速度とガス発生のバランスが得られることによりCTEを低減する共炭素化方法が記載されている。また、特許文献3には、2種以上の原料油を混合することで良好なバルクメソフェーズの生成と固化時の結晶配向のためのガス発生により低CTE、低パッフィングのニードルコークスが得られる方法が記載されている。特許文献4及び非特許文献1には、2段階でか焼することでか焼の際に起こるコークス構造変化により、低CTE、低パッフィングとなることが記載されている。特許文献5には、一度か焼したコークスを酸化性雰囲気下で再か焼することで微細気孔を増加させることで低CTE、低パッフィングのニードルコークスを製造できることが記載されている。特許文献6には、キノリン不溶分を除去したコールタール系重質油と石油系重質油を混合してコーキングし、さらに、2段階でか焼することで低CTE、低パッフィングであるニードルコークスを製造する方法が記載されている。
【0008】
以上のように、水素化による原料油改質、2種以上の原料油を混合してコーキングする共炭素化、2段階か焼、酸化雰囲気での再か焼及びこれらの組み合わせにより、低CTE、低パッフィングニードルコークスが得られることは知られている。
CTE、パッフィングを低下するための方法ではないが、特許文献7には、低温タールピッチに水素供与性溶剤を加え、加熱処理し熱改質するとニードルコークス用原料油として適する品質に改質できるとの記載がある。
水素供与性の評価として、非特許文献2には、PDQI(Proton Donor Quality Index)が提案されているが、石炭水添液化反応における循環溶剤の評価であり、ニードルコークスの品質を改善するための指標として有用であることを教えるものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60-149690号公報
【特許文献2】特開平4-145193号公報
【特許文献3】WO2009/1610号
【特許文献4】特開昭52-29801号公報
【特許文献5】特開昭61-218686号公報
【特許文献6】特開平5-163491号公報
【特許文献7】WO2011/48920号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Carbon Vol.19No.5 pp.347-352
【非特許文献2】燃料協会誌,65,12,p.1012-1019,1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
改質原料油の使用、2種以上の原料油の使用による共炭素化、か焼条件の変更により、低CTE、低パッフィングニードルコークスが得られることは知られているが、原料油の性状変化に対応しながら、より安定的に低CTE、低パッフィングニードルコークスを得ることが求められている。
人造黒鉛電極において低CTE、低パッフィングを発現しているのはニードルコークスであり、どういったニードルコークス構造が低CTE、低パッフィングに寄与しているかを明確にすることで、原料油の選定、コーキング条件、か焼条件を組み合わせて、より安定した低CTE、低パッフィングを製造することが可能になると考えられる。
本発明は、2種以上の原料油を混合してコーキングして低CTE、低パッフィングニードルコークスを製造する方法に際して、主原料油と副原料油の特性を限定することで低CTE、低パッフィングに―ドールコークスを提供する。
また、本発明は、コーキング、か焼後により得られるニードルコークス構造を制御して特定構造とすることで低CTE、低パッフィングニードルコークスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、CTE、パッフィングを低減するために、水素供与性の小さいニードルコークス主原料油に水素供与性の大きい副原料油を混合して得られる混合油をコーキング、か焼することにより、低CTE、低パッフィングニードルコークスが得らえること、また、原料選定、コーキング条件、か焼条件により、得られるニードルコークスを特定の構造とするように制御することで低CTE、低パッフィングニードルコークスが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、式(1)で計算されるPDQI値が5.0未満の水素供与性の小さいコールタール系重質油あるいは石油系重質油のニードルコークス主原料油100重量部に、式(1)で示されるPDQI値が5.0以上の水素供与性の大きな副原料油10~80重量部を混合してコーキングし、得られた生コークスをか焼することを特徴とする低CTE、低パッフィングニードルコークスである。
[式(1)]
PDQI=H%×10×(HNβ/H)
ここで、H%は元素分析で求められる水素量(重量%)であり、HNβ/Hは1H-NMRで測定されるβナフテン水素と全水素の比である。
【0014】
本発明の低CTE、低パッフィングニードルコークスは、式(2)にて示されるCTEに関する構造指標(NCSIC:Needle Coke Structure Index for CTE)が25.0より大きく、式(3)にて示されるパッフィングに関する構造指標(NCSIP:Needle Coke Structure Index for Puffing)が5.0よりも大きいことが好適である。
[式(2)]
NCSIC=((Lc/d002)+(開気孔比率))/(σ(θ))
ここで、Lc:結晶子サイズ、d002:面間隔、σ(θ):平均配向角度の標準偏差を示す。
[式(3)]
NCSIP=(開気孔量/閉気孔量)+(HIT/1000)/EIT
ここで、HIT:押込み硬さ、EIT:押込み弾性率を示す。
【0015】
本発明の低CTE、低パッフィングニードルコークスは、主原料油が、コールタールを蒸留、脱QIして得られた水素供与性の小さい脱QIピッチであることが好適である。特に、主原料油が、コールタールを蒸留して脱QIした式(1)で計算されるPDQI値が2未満の水素供与性の小さい脱QIピッチであることが好適である。
【0016】
本発明の低CTE、低パッフィングニードルコークスは、結晶子サイズLcが4.0~10.0nmであり、面間隔d002が0.340~0.350nmであり、開気孔比率が0.15~0.40であり、平均配向角度の標準偏差σ(θ)が0.01~0.85であることが好適である。
開気孔量が0.040~0.070cm3/gであり、閉気孔量が0.001~0.015cm3/gであり、押込み硬さHITが800~1500MPaであり、押込み弾性率EITが5.0~15.0GPaであることが好適である。
【0017】
本発明において、式(2)の結晶子サイズLc及び面間隔d002は、XRDにて測定し、学振法にて解析して得られ、開気孔比率は水銀ポロシメトリーにて測定される直径120μm以下の細孔容積に対する直径1~10μmの細孔容積の割合として算出され、平均配向角度の標準偏差σ(θ)は、複屈折率計を用いて測定される配向角度のバラつきの指標である標準偏差として算出される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水素供与性の小さいニードルコークス主原料油に水素供与性の大きい副原料油をコーキングし、得られた生コークスをか焼すること、また、細孔構造及び組織構造を制御して特定のコークス構造とすることで、低CTE、低パッフィングニードルコークスを安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】微小硬度計の測定での変位―荷重曲線である。
【
図2】実施例1のニードルコークスの変位―荷重曲線である。
【
図3】比較例1のニードルコークスの変位―荷重曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ニードルコークスのCTEに対するニードルコークス構造の重要因子は、結晶性、細孔量、組織配向性等であると考えられている。いずれも多くはコーキング過程で形成される。原料油を加熱してコーキングする過程では、有機分子が脱水素重縮合反応を繰り返し、それらが積層する過程で光学的に異方性を有するメソフェーズ球晶が生成し、それらが成長・合体を経て光学的異方性組織を持つことが知られている。コーキング過程でのメソフェーズの成長・合体の進行に伴い、系の粘度が上昇することは知られているが、系の粘度上昇とメソフェーズの成長・合体のバランスが崩れ、粘度上昇が先に起これば、十分にメソフェーズの成長ができず、低結晶性となり、メソフェーズの成長・合体が十分に起こるよう低粘度域が継続することで結晶性が発達する。また、コーキング終了直前に発生ガス、導入ガスによるせん断力により、一軸方向に組織が配向することで光学的異方性組織の配向性が向上する。これらのCTE影響因子に対して、有効な原料油は、水素化された原料油である。
水素化原料油と非水素化原料油の違いについて検討した結果、水素化原料油は、式(1)で示されるPDQI値が非水素化原料油よりも大きい、つまり、水素化原料油は、水素供与性が大きいことが特徴であることが判明した。水素化された原料油のうち、特に水素供与性の大きい原料油を調製することで、より低CTEのニードルコークスを製造できることが判明した。水素供与性の大きい原料油を使用することで低CTEのニードルコークスが得られる要因は明確ではないが、水素供与性の大きな原料油を使用すると、ナフテン水素がコーキング中に水素移行することで、コーキング中の低粘度領域が継続し、十分なメソフェーズの成長・合体が進行し、発生ガスも多くなり、コーキング終了直前にそれらのガスのせん断により光学的異方性組織の配向性も向上する。
しかしながら、水素供与性の大きな原料油を単体で原料油として用いると、沸点が水素供与性の小さい主原料油よりも低く、ガス発生量が多くなりすぎるため、生コークスが得られない、得られても低い収率となることが想定される。一方、通常使用している水素供与性の小さい原料油を主原料油として、水素供与性の大きな原料油を副原料油とした混合原料油を使用することで、副原料油が持つナフテン水素が主原料油の芳香環にも移行し、単体ではメソフェーズの成長・合体が十分でなかった主原料油も十分に発達できる低粘度領域を継続することが可能となり、水素供与性の大きな副原料油から発生するガスにより配向性も向上すると考えられる。また、水素供与性の大きな副原料油は、反応調整剤の役割を果たし、その量を増減させることで、特性改善の調整が可能となる。そのため、水素供与性の小さい主原料油100重量部に対して混合する水素供与性の大きい副原料油は、10重量部以上80重量部以下であることが好ましい。より好ましくは20重量部以上50重量部以下、さらに好ましくは、25重量部以上45重量部以下である。
ニードルコークス原料油を選定すると同時に、コーキング条件、か焼条件を適宜変更し、ニードルコークス構造を調製し、低CTE、低パッフィングに適した構造とすることで、原料油による特性改善に加えて更なる特性改善が見込める。
【0021】
原料選定、コーキング、か焼を経て得られるニードルコークスの構造は、CTE、パッフィング特性に最も関係していると考えられる。コークス構造評価は、XRDから結晶性の発達度合、複屈折率から光学的異方性組織の配向性、水銀ポロシメトリーから細孔量について実施し、それぞれの評価結果から得られるCTEに関するニードルコークス構造指標(式(2))を用いることで低CTEニードルコークスの構造を数値化することが可能になると考えられる。結晶性が発達していると、結晶子サイズLcは大きく、面間隔d002は狭くなることから、Lc/d002が大きいと、結晶性が発達していると考えることができる。結晶子サイズLcは好ましくは5.5nm以上、より好ましくは6.0nm以上である。
複屈折率から測定される平均配向角度θavの標準偏差σ(θ)は、配向性が高いと数値は小さくなり、配向が揃っていることを示すため、σ(θ)が小さいほど、配向性が揃っているコークスであると考えられる。標準偏差σ(θ)は好ましくは0.80未満、より好ましくは0.70未満である。
細孔量は、120μm以下の細孔量に対する1~10μm細孔量の割合が多いと、膨張時の緩和箇所として働き、低CTEに寄与すると考えられる。120μm以下の細孔量に対する1~10μm細孔量の割合を開気孔比率という。開気孔比率は好ましくは0.15~0.40の範囲であり、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.33以上である。
【0022】
結晶性、配向性、細孔量のコークス構造を用いて低CTEに適したコークス構造を数値化したものがNCSICであり、この数値が大きい(結晶性が発達している、配向性が高い、細孔量が多い)ほど低CTEニードルコークスであると考えられる。
【0023】
ニードルコークスのパッフィングにおける重要な因子は、原因物質であるニードルコークス中の窒素、硫黄である。ガスの原因物質である窒素、硫黄を低減することで、パッフィングを低減可能なことは知られているが、どういったニードルコークス構造がパッフィング低減に有効であるかについては、細孔量が多いことが有用であることは知られているものの、他の構造については明確ではなかった。本発明者は、発生したガスが逃げるための逃げ道となる細孔量、ガス圧に耐えられるコークス強度が重要であり、低パッフィング用ニードルコークスのコークス構造として、パッフィング時に発生するガスが外へ逃げるための細孔構造とガス圧に耐えられる強度に関する組織構造の両方が最適である必要があることを見出した。
【0024】
窒素、硫黄量は、原料油由来であるため、低窒素、低硫黄量の原料油が求められるが、近年は、原料油中の窒素、硫黄量が多くなり、原料油選定にも苦労している。水素供与性の高い副原料油を添加することでコーキング中に軽度の水素化脱硫・脱窒素が期待できるため、副原料油の水素供与性は、副原料油選定のための重要な因子である。
【0025】
細孔量及び強度は、コーキングあるいはか焼条件により適宜変更可能である。低パッフィングに適したコークス構造指標(式(3))について、水銀ポロシメトリーから得られる開気孔量、真密度と見かけ密度から算出される閉気孔量の2つの細孔量と微小硬度計から得られる印加した荷重と圧子が押し込まれた深さから算出される押し込み硬さHITと、除荷後の回復度合いである押し込み弾性率EITから算出されるコークス強度を用いることでパッフィングに適したコークス構造を数値化できると考えられる。
本発明において、押込み硬さHITは好ましくは800~1500MPa、より好ましくは900~1400MPaである。押込み弾性率EITは好ましくは5.0~15.0GPa、より好ましくは8.0~13.0GPaである。
【0026】
細孔構造と強度に関する組織構造の最適化により低パッフィング用ニードルコークスとなるが、細孔構造として、コークスの外とつながる開気孔量が多いこと、外とのつながりがない閉気孔量が少ないこと、ガス圧に耐えられる強度に関する組織構造として、外力による変形に対する抵抗力が高く(硬い組織)、外力による変形を受けた後も容易に復元できる柔軟性がある(弾性率が低い)ようなコークス構造、具体的には、ミクロンサイズでは光学的異方性組織の配向性が乱れているが、サブミクロンからナノサイズでは光学的異方性組織の配向性が揃っているようなコークス構造であると考えられる。細孔構造については、黒鉛化時に窒素、硫黄がガスとして揮散する際にガスの逃げ道となる細孔量が多いことでパッフィングを低減することが可能と考えられる。閉気孔量が少ないことで、コークス内に留まるガスを低減でき、パッフィングも低減できると考えられる。一方、強度が高いコークス組織構造であると黒鉛化時のガス圧に耐える、あるいはガス圧による変形を受けても容易に復元できることでパッフィングを低減できると考えられる。コーキングでは、サブミクロンからナノサイズの光学的異方性が発達するように、コーキング初期では、低温でコーキングするあるいは水素化原料を用いて低粘度状態を維持しながらメソフェーズを発達させ、コーキング後期では、ミクロンサイズの光学的異方性組織の配向性を乱すように、温度、圧力、スチーム量を上げるあるいはこれらの組み合わせで系内を乱すようにコーキング条件をコーキング途中で変化させることによる方法などが挙げられる。途中で温度、圧力、スチーム量等のコーキング条件を変更することで、サブミクロンからナノサイズの光学的異方性とミクロンからミリサイズの光学的異方性組織をそれぞれ変更することにより、組織構造の配向により得られるコークスの閉気孔量を増減することにつながる。か焼では、開気孔量を増加させるために、2段階以上でのか焼、高温か焼、酸化か焼などの方法が挙げられる。2段階以上でのか焼では、1回目に低温でか焼し、一旦冷却後に、2回目以降のか焼を実施することで、冷却、加熱により微細なクラックが発生し、開気孔の増加と閉気孔の減少が達成できる。また、高温か焼については、通常よりも高温での温度でか焼することで、通常のか焼よりも収縮が大きくなり、応力によりクラックが発生し、開気孔量が大きくなる。酸化か焼については、酸化性ガスを導入してか焼することでニードルコークス表面が酸化されることにより細孔が生成し、開気孔量が多くなる。
開気孔量は0.040~0.070cm3/gの範囲にあり、好ましくは0.050~0.065cm3/gである。一方、閉気孔量は0.001~0.015cm3/gの範囲であり、好ましくは0.005~0.009cm3/gの範囲である。
【0027】
本発明のニードルコークスは、水素供与性の小さい主原料油と水素供与性の大きい副原料油を混合した混合原料油をコーキングし、得られた生コークスをか焼して得られる。
【0028】
ニードルコークスの主原料油としては、コールタール系重質油や石油系重質油などが挙げられる。
【0029】
コールタール系重質油としては、例えば、コークス製造時に副生するコールタール、コールタールを蒸留したコールタールピッチ、石炭を液化した石炭液化油が挙げられる。コールタールピッチは、キノリン不溶分を除去し、通常、キノリン不溶分が0.1%以下のものを使用することが好ましい。キノリン不溶分を除去したコールタールピッチを蒸留、熱改質したピッチを原料油としても良い。
石油系重質油としては、例えば、接触分解油、熱分解油、常圧残油、減圧残油、エチレンボトム油が挙げられるが、特に、接触分解油の重質成分であるデカント油(FCC-DO)が好ましい。
コールタール系重質油と石油系重質油の混合油、あるいはコーキング過程で得られる副生油を混合したもの、混合油を熱改質したものを原料油としても良い。
これらの主原料油は、水素供与性を示すPDQI値が、5.0未満、好ましくは1.0未満、通常0.001程度であり、水素供与性が低い。
【0030】
本発明は、主原料油とともに、水素供与性の大きい副原料油を使用し、主原料油と副原料油を混合して使用する。この副原料油は、上述のとおり、PDQI値が大きいものを使用する。PDQI値は、好ましくは5.0以上、より好ましくは8.0以上、さらに好ましくは10.0以上である。
副原料油としては、主原料油であるコールタール系重質油や石油系重質油を水素化処理したものを使用できる。好ましい重質油は、コールタール又はその蒸留分である。より好ましくは、主原料油を蒸留して得られた300~600℃留分を部分水素化したものである。また、ニードルコークスの主原料油が出発原料油でなくても、水素供与性が5以上、好ましくは、10以上となるように調整した油であれば、副原料油に適する。
水素化処理条件としては、100℃以上、300℃未満、水素分圧が5MPa未満で水素化触媒を使用した水素化反応装置を用いることが好ましいが、PDQI値を満足する調整方法であれば、これに限らない。
【0031】
主原料油と副原料油との配合割合は、好ましくは、主原料油100重量部に対して、副原料油10~80重量部である。より好ましくは、副原料油20~50重量部、より好ましくは、25重量部~45重量部である。副原料油が少ないと、水素供与性が低く、目的とする低CTE、低パフィングのニードルコークスを得ることができない。一方、副原料油が多くなり過ぎると、主原料油と副原料油の反応よりも副原料油の分解反応が優勢となり、副原料油の水素を使用して主原料油のメソフェーズの成長・合体を促進できないため、目的とする低CTE、低パッフィングのニードルコークスを得ることができない。
【0032】
混合原料油のコーキングは、公知のディレードコーキング法を採用することができる。例えば、450~550℃、圧力0.2~0.8MPaで18~48時間コーキングして生コークスを得る。コーキング方法としては、原料装入開始から終了までコーキング条件を一定とするのではなく、コーキング中に装入温度を段階的に変える、コーキング圧力を段階的に変える、コーキング時装入水蒸気量を段階的に変える、原料油を2つに分け、一方の原料油は、コーカー下部から低温で、もう一方の原料油は、コーカー側面から高温で、コーカー内へ供給する、コーキング時の圧力を上げてかつ通常よりも水蒸気量を多くする、それらの組み合わせなどのコーキング方法が採用できる。
【0033】
生コークスをか焼する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、ロータリーキルン、シャフト炉、シリコニット炉を使用して、800~1600℃でか焼する方法が挙げられる。か焼は1段で行ってもよく、2段以上で行ってもよい。高温でか焼しても良いし、酸化性ガスを吹き込んでか焼しても良い。
【0034】
上記低CTE、低パッフィングニードルコークスから、電気製鋼用人造黒鉛電極を製造する方法は公知の方法でよく、例えばバインダーピッチと混練し、成型、一次焼成、含浸、二次焼成、及び黒鉛化するなどの工程を経て得ることができる。
【0035】
次に、測定条件について説明する。
ニードルコークスの副原料油は、ナフテン環構造を有する縮合多環芳香族炭化水素を含むが、ナフテン環の水素には芳香族環の炭素に対しα位の炭素に結合する水素(HNα)と、β位以上の炭素に結合する水素(HNβ)がある。また、縮合多環芳香族に置換基として結合するアルキル基等に由来する水素があり、これにもα位の炭素に結合する水素(Hα)やβ位以降の炭素に結合する水素(Hβ等)がある。その他、芳香族環の炭素に結合する水素(Ha)がある。
【0036】
これらの水素の同定等は1H-NMRの測定により行う。
1H-NMRの測定は、溶媒としてクロロホルムを使用し、標準物質をTMS(テトラメチルシラン)とし、日本電子株式会社製JNM-LA400を用いて測定し、得られた1H-NMRスペクトルにおける積分値より水素分率を算出した。
Hα、HNα、HNβは、得られた1H-NMRのスペクトルのケミカルシフト2.0~4.2、3.0~4.2、1.5~2.0をそれぞれ積分して算出した。
【0037】
主原料油及び副原料油の炭素及び水素の分析(元素分析)は、JIS M 8819により、窒素は、JIS K 2609により、酸素は、JIS M 8813により、硫黄は、JIS K 2541に準拠して算出した。
【0038】
PDQIは、式(1)で算出される。H%は元素分析で求められる水素量(重量%)であり、HNβ/Hは1H-NMRで測定されるβナフテン水素と全水素の比である。
PDQIは、溶剤1gに含まれるナフテン環の最大供与可能水素量(mg)を表すものであり、単位はmg/gである。
【0039】
XRDから得られる結晶子サイズLc、面間隔d002は、リガク社製XRD装置を用いて、20~30°の角度を測定し、学振法を使った結晶子サイズ解析により、算出した。
【0040】
複屈折率計を用いた測定から得られる配向角度の標準偏差σ(θ)は、1~2cmの大きさのニードルコークス粒子を樹脂に埋め込み、研磨機で研磨し、ニードルコークスを表面に露出させた状態で8mmの厚さにしたものを試験片として、露出したニードルコークスの表面をフォトニックラティス社製複屈折率計PI-microを用いて、1画素あたり、0.9μmまたは2.7μmとし、1画素ごとのリタデーションReと配向角度θの値から1視野分のRe、平均配向角度θav、平均配向角度の標準偏差σ(θ)を求め、複数視野を測定した。測定した全視野に対して平均化した数値を評価値とした。
【0041】
ニードルコークスの水銀ポロシメトリーの測定は、ニードルコークスを2~5mmに縮分し、micromeritics社製オートポアIVを用いて圧力1.9~14400psi(細孔直径換算0.017~120μm)まで測定し、得られた圧力と水銀量から細孔直径に対する細孔容積を算出し、1~10μmの細孔容積を算出し、ニードルコークスの開気孔量とした。また、開気孔比率としては、1~10μm細孔容積を120μm以下の細孔容積で割って算出した。表1、表2において、細孔容積の値は、全気孔量を意味し、開気孔比率を算出するための120μm以下の細孔容積である。
【0042】
ニードルコークスの真密度は、JIS K 2151に準拠して測定した。
見かけ密度は、ニードルコークスをジョークラッシャーで粉砕後、8-16Meshを篩とり、真密度と同様の測定手順にて測定した。閉気孔量は、以下の式(4)で算出する。
[式(4)]
閉気孔量(cm3/g)=
(1/見かけ密度(g/cm3)―(1/真密度(g/cm3))
【0043】
微小硬度計での測定は、1~2cmの大きさのニードルコークス粒子を樹脂に埋め込み、研磨機で研磨し、ニードルコークスを表面に露出させた状態で8mmの厚さにしたものを試験片として、露出したニードルコークスの表面に対して行った。
具体的な試験条件は、フィッシャー・インストルメンツ製FISHERSCOPE、HM2000を用いて、ビッカース圧子を測定子として、最大荷重2000mN、負荷速度300mN/s、クリープ時間2秒、除荷は負荷と同速度で実施した。各試験片について、10ケ所測定し、その平均値をその試験片の値として採用した。
図1にその典型的な変位-荷重曲線を示す。
ニードルコークスの組織構造を測定するため、ニードルコークスが塑性変形(破壊)しない領域(弾性変形領域)で測定する必要があり、試験にて得られる変位-荷重曲線において、変位は
図1に示すように除荷後に原点まで戻っていることが必要である。
押込み深さは、押込み試験の最大荷重時の変位量であり、試験条件、測定物質により異なり、ニードルコークスが破壊される直前の深さが良いが、今回の試験条件で本発明のニードルコークスを測定した場合、8~15μmが望ましい。
【0044】
押込み硬さHITは、ISO14577に準拠し、押込み試験の最大荷重と押込み深さから以下の式(5)で装置に付属の解析ソフトにて算出される。HITは、コークスが硬いと試験時に押し込まれないため、圧子に対して抵抗力が高いコークス構造を示していると考えられ、硬いコークス構造の例としては、コークス組織の光学的異方性組織の配向性が乱れることに起因すると考えられる。
[式(5)]
押込み硬さHIT(MPa)=Fmax/Ap
ここで、Fmax:最大荷重、Ap:圧子と試験片が接している投影面積を示す。
【0045】
押込み弾性率EITは、ISO14577に準拠し、押込み試験の最大荷重からの除荷初期の傾きを基にして以下の式(6)で装置に付属の解析ソフトにて算出される。このEITは、コークスの弾性率が低いと除荷後に復元しやすく、弾性率の低いコークス構造の例として、コークス組織の光学的異方性組織が良く発達していることに起因すると考えられる。
[式(6)]
押込み弾性率EIT(GPa)=
(1-(Vs)2)/(1/Er-1-(Vi)2/(Ei)
ここで、Vs:サンプルのポアソン比、Vi:圧子のポアソン比、Er:押込み接点の減少弾性率、Ei:圧子の弾性率を示す。
【0046】
CTEに関する構造指標NCSICは、ニードルコークスの黒鉛結晶性が発達しているほど、開気孔量の割合が多いほど、配向性が揃っているほど、大きくなり、より低CTEに適したニードルコークスであることを示す指標である。
NCSICは、上述のとおり、25.0より大きいことが好ましく、より好ましくは27.0以上、さらに好ましくは29.0以上である。
【0047】
パッフィングに関する構造指標NCSIPは、ニードルコークスの開気孔が多いほど、閉気孔が少ないほど、組織が硬いほど、弾性率が低いほど大きくなり、より低パッフィングに適したニードルコークスであることを示す指標である。
NCSIPは、上述のとおり、5.0より大きいことが好ましく、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは7.0以上である。
【0048】
生コークス、及びニードルコークス中窒素分は、JIS M 8819に準拠して測定した。
生コークス及びニードルコークス中の硫黄分は、JIS M 8813に準拠して測定した。
【0049】
CTE、パッフィング試験片の調製は、ニードルコークスをジョークラッシャーで粉砕し、8-16Meshを篩とった後、篩上と下を混合し、ハンマークラッシャーで粉砕し、48-200Meshと200Mesh以下に篩分けした。それぞれを40wt%、35wt%、25wt%で粒度配合した後、バインダーピッチ((株)シーケム製BP97)と混練した。混練は、ニーダーを使用して、ニードルコークス100wt%に対してバインダーピッチを30wt%配合し、160℃で20分の混練を行い、混練物とした。
【0050】
パッフィング用は、混練物をモールド成型にて、直径20mm、長さ100mmの成型体を得て、この成型体を900℃で焼成後、含浸ピッチ((株)シーケム製IP78)を含浸し、再度、900℃で焼成し、パッフィング測定用の試験片とした。
パッフィングの測定は、試験片をタンマン炉にて、アルゴン雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から2550℃まで加熱し、1500℃と2500℃での試験片の長さ方向の伸びを測定し、以下の式(7)からパッフィングを算出した。
[式(7)]
パッフィング(%)=(L2500-L1500)/L×100
ここで、L:試験片初期長さ、L1500:温度1500℃における長さ、L2500:温度2500℃における長さを示す。
【0051】
CTE用は、混練物を押出成型し、直径20mm、長さ100mmの大きさに調整した成型体を900℃で焼成後、タンマン炉を用いて、アルゴン雰囲気下、2550℃で黒鉛化を行ない、試験片とした。
CTEの測定は、調整した試験片の室温から500℃の平均熱膨張係数を測定した。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
コールタールを蒸留し、得られた重質成分であるコールタールピッチを溶剤分離法にてキノリン不溶分を除去したピッチを主原料油とし、同様な方法で調整したキノリン不溶分が除去されたコールタールピッチを常圧蒸留して得た300~600℃留分を200℃、4.5MPaの条件で水素化触媒(安定化Ni)の存在下、バッチ水素化処理したものを副原料油とした。主原料油100重量部に対して、副原料油を35重量部混合し、混合原料油を、0.6MPaにて、コーキング装入温度を470℃から段階的に530℃まで上げ、スチーム比(水蒸気量(g)/原料油量(g))を0.15から段階的に0.30としてコーキングし、生コークスを得た。得られた生コークスを窒素雰囲気下、700℃でか焼し、一旦、冷却した後、1400℃で再度か焼し、ニードルコークスを得た。このニードルコークスからCTE、パッフィング用試験片を調製した。
また、得られたニードルコークス、試験片の特性値は、表1に示す。
【0054】
実施例2
実施例1と同じコールタールピッチを主原料油として用い、コールタールを常圧蒸留して得た300~600℃留分を200℃、4.5MPaの条件で水素化触媒(安定化Ni)の存在下、バッチ水素化処理したものを副原料油とした。主原料油100重量部に対して、副原料油を43重量部混合し、混合原料油をコーキング装入温度460℃から段階的に550℃まで上げ、圧力を0.5MPaから段階的に0.65MPaまで上げ、スチーム比を0.10から段階的に0.35まで上げてコーキングし、生コークスを得た。それ以降は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0055】
実施例3
実施例1と同じコールタールピッチを主原料油として用い、流動接触分解油を常圧蒸留して得た沸点300~600℃留分を温度250℃、圧力4.5MPaの条件で水素化触媒(安定化Ni)の存在下、バッチ水素化したものを副原料油とした。主原料油100重量部と副原料油45重量部を混合し、圧力0.5MPaとし、コーキング装入温度を470℃から段階的に500℃まで上げながら、スチーム比を0.15から0.35まで段階的に上げてコーキングし、生コークスを得た。それ以降は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0056】
比較例1
実施例1のコールタールピッチを主原料油として用い、コールタールを常圧蒸留して得た300~600℃留分を副原料油とした。主原料油100重量部と副原料油45重量部を混合し、500℃、0.4MPa、スチーム比0.12で条件一定でコーキングして生コークスを得た。それ以降は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0057】
比較例2
実施例1と同じ主原料油を用い、副原料油として、実施例1で主原料油として使用したコールタールピッチ70重量%に流動接触分解油30重量%を混合したものを常圧蒸留して得た300~600℃の留分を用いた。これら主原料油100重量部と副原料油45重量部を混合し、490℃、0.4MPa、スチーム比0.12で条件一定でコーキングして生コークスを得た。それ以降は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0058】
比較例3
実施例1で使用した主原料油100重量部に実施例1で使用した副原料油を100重量部混合し、混合原料油を530℃、0.5MPa、スチーム比0.10で条件一定でコーキングして生コークスを得た。それ以降は、実施例1と同様の操作を行なった。
【0059】
表1、表2に、原料油の種類、性状、生コークスの及びニードルコークスの特性を示す。
【0060】
【0061】