(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149708
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】基板保持体、基板搬送装置及び基板保持体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130696
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2020184955の分割
【原出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松本 航
(57)【要約】
【課題】基板の搬送装置において基板保持体の温度を適切に調節する。
【解決手段】基板を搬送する装置に設けられ、当該基板を保持する基板保持体であって、本体部と、前記本体部の内部に形成されたヒートパイプと、を有し、前記ヒートパイプは、前記本体部に形成された流路によって形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する装置に設けられ、当該基板を保持する基板保持体であって、
本体部と、
前記本体部の内部に形成されたヒートパイプと、を有し、
前記ヒートパイプは、前記本体部に形成された流路によって形成される、基板保持体。
【請求項2】
前記本体部は、セラミック製である、請求項1に記載の基板保持体。
【請求項3】
前記ヒートパイプは、前記流路の内部に形成されたセラミック製のウィックを備える、請求項1又は2に記載の基板保持体。
【請求項4】
前記ウィックの空隙率は、前記本体部の空隙率より高い、請求項3に記載の基板保持体。
【請求項5】
前記ヒートパイプは、前記流路の開口端部に設けられた封止部材を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板保持体。
【請求項6】
前記ヒートパイプは、前記本体部の先端から基端まで延伸している、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板保持体。
【請求項7】
基板を搬送する装置に設けられ、当該基板を保持する基板保持体であって、
本体部と、
前記本体部における1層に形成された作業流体の流路を備えるヒートパイプと、を有する、基板保持体。
【請求項8】
複数の処理装置に対して減圧雰囲気下で基板を搬送する基板搬送装置であって、
基板を保持する基板保持体と、
前記基板保持体を少なくとも水平方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記基板保持体は、
本体部と、
前記本体部の内部に形成されたヒートパイプと、を有し、
前記ヒートパイプは、前記本体部に形成された流路によって形成される、基板搬送装置。
【請求項9】
前記本体部は、セラミック製である、請求項8に記載の基板搬送装置。
【請求項10】
前記移動機構には、温度調節機構が設けられている、請求項8又は9に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記ヒートパイプは、前記本体部の先端から基端まで延伸し、
前記ヒートパイプの基端には、前記温度調節機構の熱が伝導する、請求項10に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
基板を搬送する装置に設けられ、当該基板を保持する基板保持体の製造方法であって、
(a)積層構造を有する本体部を形成する工程と、
(b)前記本体部の1層に作動流体の流路を形成して、当該流路を備えるヒートパイプを形成する工程と、を有する、基板保持体の製造方法。
【請求項13】
前記本体部は、セラミック製である、請求項12に記載の基板保持体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板保持体、基板搬送装置及び基板保持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理容器内でウェハに熱処理を施す処理装置に対してウェハを搬出入させる搬送機構が開示されている。搬送機構は、複数のアームを有して屈伸及び旋回が可能になされたアーム部と、アーム部の先端に連結されてウェハを保持するフォーク部とを備える。フォーク部は、セラミック材よりなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板の搬送装置において基板保持体の温度を適切に調節する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を搬送する装置に設けられ、当該基板を保持する基板保持体であって、本体部と、前記本体部の内部に形成されたヒートパイプと、を有し、前記ヒートパイプは、前記本体部に形成された流路によって形成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の搬送装置において基板保持体の温度を適切に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【
図2】ウェハ搬送装置の構成の概略を示す斜視図である。
【
図3】フォークの内部構成の概略を示す横断面図である。
【
図4】フォークの内部構成の概略を示す縦断面図である。
【
図5】フォークを製造する方法を示す説明図である。
【
図6】フォークの製造方法においてヒートパイプを形成する方法を示す説明図である。
【
図7】他の実施形態においてヒートパイプを形成する方法を示す説明図である。
【
図8】他の実施形態においてヒートパイプを形成する方法を示す説明図である。
【
図9】他の実施形態においてヒートパイプを形成する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(基板;以下、「ウェハ」という。)に対して、例えば減圧雰囲気下(真空雰囲気下)で成膜処理やエッチング処理などの各種処理が行われる。例えば枚葉式の処理モジュールで複数種類の処理を行う場合には、内部に搬送装置を備えたトランスファモジュールの周囲に、複数の処理モジュールをゲートバルブを介して連結した、いわゆるクラスター型のウェハ処理システムが用いられる。そして、トランスファモジュール内の搬送装置を用いて、ウェハを各処理モジュールに向けて順に搬送し、ウェハに対して順次所望の処理を行うようになっている。
【0009】
ここで、一のウェハ処理システムにおいて複数の処理を行う場合、各処理の処理温度が異なる場合がある。例えば成膜処理は高温処理であるのに対し、エッチング処理は低温処理である。そして、例えば特許文献1に開示された搬送機構(搬送装置)では、高温処理及び低温処理のいずれの処理も行われたウェハを支持できるように、当該ウェハを支持するフォーク部(フォーク)には、高温処理に合わせた耐熱性を備えたセラミック材が用いられる。
【0010】
しかしながら、このように処理温度の異なる処理を行う場合、搬送装置によってウェハを適切な温度で搬送するのが困難であるため、様々な影響が起こり得る。例えば、高温処理の処理モジュール(高温チャンバ)に対してウェハを搬入出すると、ウェハからの温度や処理モジュールからの輻射熱によって、搬送装置においてウェハを保持するフォークの温度が上昇する。この状態で、低温処理の処理モジュール(低温チャンバ)に対してウェハを搬入出する場合、低温処理前のウェハが過剰に加熱された状態で低温チャンバに搬入されるため、プロセスレートが所望のレートから乖離するおそれがある。また、低温処理前のウェハと低温処理後のウェハにおいて温度差が生じるため、ウェハに対するダメージや割れなどが発生するおそれがある。
【0011】
したがって、従来の搬送装置には改善の余地があり、搬送装置のフォークを適切に温度調節することが所望されている。
【0012】
本開示にかかる技術は、基板の搬送装置において基板保持体の温度を適切に調節する。以下、本実施形態にかかる基板搬送装置としてのウェハ搬送装置、基板保持体としてのフォーク、及びフォークの製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<ウェハ処理システムの構成>
先ず、本実施形態にかかるウェハ搬送装置を備えたウェハ処理システムの構成について説明する。
図1は、ウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。本実施形態においては、ウェハ処理システム1が、基板としてのウェハWに成膜処理とエッチング処理を行うための各種処理モジュールを備える場合について説明する。なお、本開示のウェハ処理システム1の構成はこれに限られず、任意に選択され得る。
【0014】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、常圧部10と、減圧部11とがロードロックモジュール20a、20bを介して一体に接続された構成を有している。常圧部10では、常圧雰囲気下(大気雰囲気下)において複数のウェハWを収容可能な後述のフープ31の搬入出が行われ、さらにロードロックモジュール20a、20bに対してウェハWが搬送される。減圧部11では、減圧雰囲気下(真空雰囲気下)においてウェハWに所望の処理が行われ、さらにロードロックモジュール20a、20bに対してウェハWが搬送される。
【0015】
ロードロックモジュール20aは、常圧部10の後述するローダーモジュール30から搬送されたウェハWを、減圧部11の後述するトランスファモジュール40に引き渡すため、ウェハWを一時的に保持する。
【0016】
ロードロックモジュール20aは、ゲートバルブ21aを介して後述するローダーモジュール30に接続されている。また、ロードロックモジュール20aは、ゲートバルブ22aを介して後述するトランスファモジュール40に接続されている。このゲートバルブ21a、22aにより、ロードロックモジュール20aと、ローダーモジュール30及びトランスファモジュール40との間の気密性の確保と互いの連通を両立する。
【0017】
ロードロックモジュール20aにはガスを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続され、当該給気部と排気部によって内部が常圧雰囲気と減圧雰囲気に切り替え可能に構成されている。すなわちロードロックモジュール20aは、常圧雰囲気の常圧部10と、減圧雰囲気の減圧部11との間で、適切にウェハWの受け渡しができるように構成されている。
【0018】
なお、ロードロックモジュール20bはロードロックモジュール20aと同様の構成を有している。すなわち、ロードロックモジュール20bは、ローダーモジュール30側のゲートバルブ21b、トランスファモジュール40側のゲートバルブ22bを有している。
【0019】
なお、ロードロックモジュール20a、20bの数や配置は、本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0020】
常圧部10は、ウェハ搬送装置(図示せず)を備えたローダーモジュール30と、複数のウェハWを保管可能なフープ31を載置するロードポート32とを有している。なお、ローダーモジュール30は、EFEM(Epuipment Front End Module)とも称される。
【0021】
ローダーモジュール30は内部が矩形の筐体からなり、筐体の内部は常圧雰囲気に維持されている。ローダーモジュール30の筐体の長辺を構成する一側面には、複数、例えば3つのロードポート32が並設されている。ローダーモジュール30の筐体の長辺を構成する他側面には、ロードロックモジュール20a、20bが並設されている。また、ローダーモジュール30は、筐体の内部においてその長手方向に移動可能なウェハ搬送装置(図示せず)を有している。ウェハ搬送装置はロードポート32に載置されたフープ31とロードロックモジュール20a、20bとの間でウェハWを搬送できる。
【0022】
なお、ロードポート32の数や配置は、本実施形態に限定されるものではなく、任意に設計できる。また、常圧部10には、常圧雰囲気下でウェハWに所望の処理を行う処理モジュール、例えばウェハWの水平方向の向きを調節する処理を行うモジュールが設けられていてもよい。
【0023】
フープ31は複数、例えば1ロット25枚のウェハWを等間隔で多段に重なるようにして収容する。また、ロードポート32に載置されたフープ31の内部は、例えば、大気や窒素ガスなどで満たされて密閉されている。
【0024】
減圧部11は、ウェハWを各種処理モジュールに搬送するトランスファモジュール40と、ウェハWに成膜処理を行う処理装置としての成膜モジュール41と、ウェハWにエッチング処理を行う処理装置としてのエッチングモジュール42とを有している。トランスファモジュール40、成膜モジュール41、及びエッチングモジュール42の内部は、それぞれ減圧雰囲気に維持される。トランスファモジュール40に対し、成膜モジュール41及びエッチングモジュール42は複数、例えば2つずつ設けられている。なお、トランスファモジュール40は、VTM(Vacuum Transfer Module)とも称される。
【0025】
また、成膜モジュール41及びエッチングモジュール42はそれぞれ、ゲートバルブ43、44を介して、トランスファモジュール40に接続されている。このゲートバルブ43、44により、トランスファモジュール40と成膜モジュール41及びエッチングモジュール42の間の気密性の確保と互いの連通を両立する。
【0026】
なお、トランスファモジュール40に設けられる処理モジュールの数や配置、及び処理の種類は本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0027】
トランスファモジュール40は内部が矩形の筐体からなり、上述したようにゲートバルブ22a、22bを介してロードロックモジュール20a、20bに接続されている。トランスファモジュール40は、ロードロックモジュール20aに搬入されたウェハWを一の成膜モジュール41、一のエッチングモジュール42に順次搬送して成膜処理とエッチング処理を行った後、ロードロックモジュール20bを介して常圧部10に搬出する。
【0028】
トランスファモジュール40の内部には、ウェハWを搬送するウェハ搬送装置50が設けられている。なお、ウェハ搬送装置50の詳細な構成については後述する。
【0029】
以上のウェハ処理システム1には、制御部60が設けられている。制御部60は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部60にインストールされたものであってもよい。
【0030】
<ウェハ処理システムにおけるウェハ処理>
本実施形態にかかるウェハ処理システム1は以上のように構成されている。次に、ウェハ処理システム1におけるウェハ処理について説明する。
【0031】
先ず、複数のウェハWを収納したフープ31がロードポート32に載置される。
【0032】
次に、ウェハ搬送装置(図示せず)によって、フープ31からウェハWが取り出され、ロードロックモジュール20aに搬入される。ロードロックモジュール20aにウェハWが搬入されると、ゲートバルブ21aが閉じられ、ロードロックモジュール20a内が密閉され、減圧される。その後、ゲートバルブ22aが開放され、ロードロックモジュール20aの内部とトランスファモジュール40の内部が連通される。
【0033】
次に、ロードロックモジュール20aとトランスファモジュール40が連通すると、ウェハ搬送装置50によってウェハWが取り出され、ロードロックモジュール20aからトランスファモジュール40に搬入される。
【0034】
次に、ゲートバルブ43が開放され、ウェハ搬送装置50によってウェハWが成膜モジュール41に搬入される。続いて、ゲートバルブ43が閉じられ、ウェハWに対して成膜処理が行われる。成膜処理が終了すると、ゲートバルブ43が開放され、ウェハ搬送装置50によってウェハWが成膜モジュール41から搬出される。そして、ゲートバルブ43が閉じられる。
【0035】
次に、ゲートバルブ44が開放され、ウェハ搬送装置50によってウェハWがエッチングモジュール42に搬入される。続いて、ゲートバルブ44が閉じられ、ウェハWに対してエッチング処理が行われる。エッチング処理が終了すると、ゲートバルブ44が開放され、ウェハ搬送装置50によってウェハWがエッチングモジュール42から搬出される。そして、ゲートバルブ44が閉じられる。
【0036】
次に、ゲートバルブ22bが開放され、ウェハ搬送装置50によってウェハWがロードロックモジュール20bに搬入される。ロードロックモジュール20b内にウェハWが搬入されると、ゲートバルブ22bが閉じられ、ロードロックモジュール20b内が密閉され、大気開放される。
【0037】
次に、ウェハ搬送装置(図示せず)によって、2枚のウェハWがフープ31に戻されて収容される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0038】
<ウェハ搬送装置の構成>
次に、上述したウェハ搬送装置50の構成について説明する。
図2は、ウェハ搬送装置50の構成の概略を示す斜視図である。
【0039】
図2に示すようにウェハ搬送装置50は、多関節型のロボットであり、複数、例えば3つのアーム101、102、103を有している。アーム101、102、103は、搬送基台104に支持されている。
【0040】
第1アーム101は、基端が搬送基台104に接続され、先端が第2アーム102に接続されている。第2アーム102は、基端が第1アーム101に接続され、先端が第3アーム103に接続されている。第3アーム103は、基端が第2アーム102に接続されている。
【0041】
第1アーム101の基端と搬送基台104の間には、第1関節111が設けられている。第2アーム102の基端と第1アーム101の先端の間には、第2関節112が設けられている。第3アーム103の基端と第2アーム102の先端の間には、第3関節113が設けられている。これら関節111、112、113の内部にはそれぞれ、駆動機構(図示せず)が設けられている。この駆動機構により、各アーム101、102、103はそれぞれ、関節111、112、113を中心に回動自在(旋回自在)に構成されている。
【0042】
第1アーム101及び第2アーム102のそれぞれの内部には、常圧雰囲気の中空部が形成されている。各中空部には、第1アーム101、第2アーム102のそれぞれを所望の温度に調節するための温度調節機構(図示せず)が収容されている。温度調節機構には、公知の機構を任意に選択して用いることができ、例えば中空部にドライエアを供給することで温度調節が可能となる。
【0043】
なお、各中空部には、温度調節機構以外にも種々の部品が収容される。例えば、上記関節111、112、113の駆動機構に動力を伝えるためのケーブル(図示せず)が収容される。
【0044】
第3アーム103は、基板保持部としてのフォーク120(エンドエフェクタ)と、フォーク120を支持するハンド部121とを有している。フォーク120は、第3アーム103の先端側に設けられ、ウェハWを保持する。ハンド部121は、第3アーム103の基端側に設けられ、第3関節113に取り付けられる。
【0045】
なお、本実施形態においてフォーク120は、搬送基台104の駆動機構によって鉛直方向に昇降自在に構成され、さらに関節111、112、113の駆動機構によって水平方向に移動自在に構成されている。すなわち、本実施形態では、搬送基台104及び関節111、112、113が、本開示における移動機構を構成している。
【0046】
<フォークの構成>
次に、フォーク120の構成について説明する。
図3は、フォーク120の内部構成の概略を示す横断面図である。
図4は、フォーク120の内部構成の概略を示す縦断面図である。
【0047】
図3及び
図4に示すようにフォーク120は、本体部130と、本体部130の内部に形成されたヒートパイプ140とを有している。
【0048】
図3に示すように本体部130は、2股状に形成されており、2本の分岐部131と、2本の分岐部131を支持する支持部132とが一体に形成されている。本体部130は、セラミック材からなる。本体部130は薄く、その厚みは例えば2mm~3mmである。なお、本体部130の上面には複数のパッド(図示せず)が設けられ、フォーク120はこれら複数のパッドでウェハWを吸着保持する。
【0049】
ヒートパイプ140は、本体部130の内部において、複数、例えば2本形成されている。2本のヒートパイプ140は、2本の分岐部131の内部のそれぞれに形成され、さらに支持部132の内部にも形成されている。各ヒートパイプ140は、本体部130の先端から基端まで、すなわち分岐部131の先端から支持部132の基端まで延伸している。
【0050】
なお、ヒートパイプ140の幅や数、配置形状は、本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。但し、ヒートパイプ140がフォーク120の全体に設けられていると、フォーク120全体を均一に温度調節することができる。
【0051】
図3及び
図4に示すようにヒートパイプ140は、作業流体の流路141と、ウィック142(毛細管構造)と、流路141の開口端部を封止する封止部材143とを有している。
【0052】
流路141は、本体部130の内部において、中空に形成される。流路141は、上述したように分岐部131の先端から支持部132の基端まで延伸している。
【0053】
ウィック142は、流路141の内部(側面視において内側)に形成され、流路141と同様に分岐部131の先端から支持部132の基端まで延伸している。ウィック142は、本体部130の同種のセラミック材からなる。本実施形態において、ウィック142の空隙率は本体部130の空隙率より高く、これによりウィック142は毛細管構造の役割を果たすことができる。但し、本体部130の空隙率が十分に高い場合には、ウィック142の空隙率を本体部130の空隙率と同じにしてもよい。
【0054】
封止部材143は、流路141の先端の開口端部と基端の開口端部の両端部に設けられる。封止部材143は、流路141の内部に作業流体を封入するものであれば限定されるものではないが、例えばセラミック部品が用いられる。
【0055】
ここで上述したように、本実施形態のウェハ処理システム1では、成膜モジュール41においてウェハWに成膜処理が行われた後、エッチングモジュール42においてウェハWにエッチング処理が行われる。かかる場合、高温処理の成膜処理を行う成膜モジュール41に対してウェハWを搬入出すると、フォーク120の温度が上昇する。この状態で、低温処理のエッチング処理を行うエッチングモジュール42に対してウェハWを搬入出すると、エッチング処理前のウェハWが過剰に加熱された状態でエッチングモジュール42に搬入されるため、エッチングレートが所望のレートから乖離するおそれがある。また、エッチング処理前のウェハWとエッチング処理後のウェハWにおいて温度差が生じるため、ウェハWに対するダメージや割れなどが発生するおそれがある。
【0056】
この点、本実施形態では、第1アーム101及び第2アーム102に温度調節機構が設けられており、この温度調節機構によって、第1アーム101及び第2アーム102の温度が調節され、さらにハンド部121の温度も調節される。そして、フォーク120の内部にはヒートパイプ140が形成されているので、ヒートパイプ140を介してフォーク120がハンド部121と熱交換可能となる。この際、フォーク120は、加熱も冷却も可能である。そして、フォーク120の温度をハンド部121の温度に近づけることができ、当該フォーク120を所望の温度に制御して調節することができる。特にヒートパイプ140は熱伝達性能が高いため、基端を所望の温度に調整することで、先端までも所望の温度に調整することができる。またかかる場合、冷却液の循環部などを外部に設ける必要なく、フォーク120全体を目的の温度に制御して調整することが可能になる。
【0057】
また、ヒートパイプ140は、本体部130の先端から支持部132の基端まで延伸しているので、ヒートパイプ140の基端に温度調節機構の熱が伝導しやすく、フォーク120とハンド部121との熱交換をより効率よく行うことができる。したがって、フォーク120の温度をさらにハンド部121の温度に近づけることができ、フォーク120の温度をより適切に調節することができる。
【0058】
そして、このようにフォーク120の温度を調節できるので、一のウェハ処理システム1において処理温度の異なる複数の処理を行う場合であっても、フォーク120の温度を調節して、フォーク120に保持されるウェハWの温度を適切に調節することができる。その結果、当該ウェハWに対する各処理を適切に行うことができる。また、ウェハWに温度差が生じることに起因する、ウェハWの損傷を抑制することも可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、第1アーム101及び第2アーム102に温度調節機構が設けられていたが、ハンド部121にも温度調節機構が設けられていてもよい。いずれにしても、ヒートパイプ140の基端部を温度調節機構、すなわち熱源に近づけて配置することで、フォーク120を適切な温度に調節することができる。なお、従来、ハンド部のみに温度調節機構、例えば放熱板を設けることが提案されている。しかしなら、ハンド部のみではフォークの温度調節効果は限定的である。本実施形態のように本体部130の内部にヒートパイプ140を設けることで、フォーク120の温度調節を適切に行うことができる。
【0060】
また、フォーク120の本体部130はセラミック材からなるので、高温処理に加えて低温処理にも耐え、フォーク120は広い温度帯に対応することができる。しかも、セラミック材は発塵が少なく、パーティクル等による周囲への汚染を抑制することもできる。
【0061】
<フォークの製造方法>
次に、フォーク120の製造方法について説明する。
図5は、フォーク120を製造する方法を示す説明図である。
図6は、フォーク120の製造方法においてヒートパイプ140を形成する方法を示す説明図である。
【0062】
[工程S1:素体成形工程]
先ず、工程S1において、セラミック材200の内部にサポート材210が設けられたセラミック素体220を成形する。セラミック素体220の成形方法は任意であるが、本実施形態では、例えばセラミックの3Dプリント技術を利用して、セラミック材200とサポート材210を積層してセラミック素体220を成形する。
【0063】
セラミック材200には、セラミック粉体を媒体となる液体中に分散させた流動体スラリーを用いる。また、セラミック材200は、本体部130として機能する本体部用セラミック材201と、ウィック142として機能するウィック用セラミック材202とを含む。サポート材210の材料は任意であるが、後述する工程S4において除去される材料が用いられる。
【0064】
セラミック素体220の成形には、公知の加工装置が用いられる。例えば加工装置は、セラミック材200とサポート材210を吐出可能なインクジェットヘッドを備える。そして、これらセラミック材200とサポート材210を1層ずつ積層して、立体構造を形成する。
【0065】
工程S1では、先ず、
図5(a)に示すように本体部用セラミック材201を積層する。
【0066】
次に、
図5(b)に示すように本体部用セラミック材201、ウィック用セラミック材202、及びサポート材210をさらに積層する。サポート材210は後述する工程S4において除去され、ヒートパイプ140の流路141が形成される。このため、サポート材210は、本体部用セラミック材201の側面視内側において、流路141を形成する位置に形成される。
【0067】
ウィック用セラミック材202はウィック142として機能するため、サポート材210の側面視内側に形成される。また、ウィック用セラミック材202は、本体部用セラミック材201の空隙率より高い空隙率を有する。例えば、本体部用セラミック材201とウィック用セラミック材202に用いられるスラリーの配合を調整することで、それぞれのセラミック材201、202の空隙率を調整することができる。このように、ウィック用セラミック材202の空隙率が本体部用セラミック材201の空隙率より高いので、ウィック142は毛細管構造の役割を果たすことができる。但し、上述したように、本体部用セラミック材201の空隙率が十分に高い場合には、ウィック用セラミック材202の空隙率を本体部用セラミック材201の空隙率と同じにしてもよい。
【0068】
次に、
図5(c)及び
図6(a)に示すように本体部用セラミック材201をさらに積層する。そうすると、セラミック素体220が成形される。すなわち、セラミック素体220は、本体部用セラミック材201の内部に、サポート材210とウィック用セラミック材202を備えた構成を有している。
【0069】
ここで、フォーク120(本体部130)の厚みは例えば2mm~3mmと薄い。このようなセラミック薄板は焼成後に内部を切削して微細構造を形成することは難しく、従来の方法では、フォークの内部に温度調節のためのヒートパイプを形成することは困難であった。換言すれば、フォークの内部にヒートパイプを形成しようとすると、フォークの厚みが大きくなる。
【0070】
この点、本実施形態では、工程S1において、本体部用セラミック材201の内部に、サポート材210とウィック用セラミック材202の微細構造を形成することができる。すなわち、フォーク120の本体部130の厚みを薄く維持したまま、当該本体部130の内部にヒートパイプ140を構成するための微細構造を形成することができる。
【0071】
また、セラミック薄板に金属製のヒートパイプや冷媒配管を埋め込むことも考えられるが、このような場合と比較して、本実施形態のようにセラミック材からなる本体部130に微細構造を形成する場合、セラミック材の機械的強度の低下を抑制することができる。さらに、セラミック薄板に金属製のヒートパイプや冷媒配管を埋め込む場合、セラミックと金属の熱膨張差によるクラックの発生や発塵のおそれ、また接合部での熱抵抗による温度制御性の低下といった事態が発生し得るが、本実施形態ではこのような事態の発生も抑制することができる。
【0072】
なお、工程S1においてセラミック素体220を成形する方法は、上記実施形態に限定されない。例えば、液中で立体形状を形成させながら重合させたポリマーを焼成することでセラミック素体220を成形してもよい。あるいは、セラミックスラリーをインクジェット印刷してセラミック素体220を成形してもよい。
【0073】
[工程S2:焼成工程]
次に、工程S2において、セラミック素体220を焼成する。この際、セラミック材201のスラリーに応じた湿度や焼成条件で、セラミック素体220を焼成する。このセラミック素体220の焼成には、公知の加熱装置が用いられる。
【0074】
[工程S3:外形仕上加工工程]
次に、工程S3において、セラミック素体220の外形を切削し、表面を研磨して仕上げ加工する。このセラミック素体220の外形の仕上げ加工には、公知の研削装置が用いられる。こうして、セラミック素体220が形成される。
【0075】
[工程S4:本体部形成工程(流路形成工程)]
次に、工程S4において、本体部130を形成する。
図5(d)及び
図6(b)に示すようにセラミック素体220において、サポート材210を除去する。サポート材210の除去方法は、任意に選択され得る。例えばサポート材210が樹脂の場合、減圧雰囲気でサポート材210を昇温し昇華させることで、サポート材210を除去する。あるいは、酸性ガスを供給して、サポート材210を溶解させてもよい。そして、本体部用セラミック材201の内部に流路141が形成され、本体部130が形成される。
【0076】
[工程S5:作動流体封入工程]
次に、工程S5において、流路141の内部に作動流体を供給して、封入する。この作動流体の供給方法は、任意に選択され得る。
【0077】
[工程S6:封止工程]
次に、工程S6において、流路141の開口端部に封止部材143を設けて、当該流路141を封止する。例えば、セラミック部品である封止部材143を開口端部にろうづけ等で取り付ける。こうして、本体部130の内部にヒートパイプ140が形成され、フォーク120が製造される。
【0078】
本実施形態によれば、フォーク120の本体部130が薄いセラミック材であっても、本体部130の内部にヒートパイプ140を形成することができる。
【0079】
ここで、従来、例えば特許第4057158号公報に開示されているように、金属製のフォーク(搬送アーム)の内部に、冷媒の封入された冷却流路としてヒートパイプを設ける技術は存在する。この技術では、フォークが金属製であるが故に、フォークを加工しやすく、またフォークとヒートパイプの間に熱膨張差がない。このため、フォークが薄くても、その内部にヒートパイプを設けられる。
【0080】
しかしながら、金属製のフォークは使用温度帯に制限がある。この点、本実施形態ではフォーク120の本体部130にセラミック材を用いており、高温処理に加えて低温処理にも耐え、広い温度帯でフォーク120を使用することができる。なお、そもそも特許第4057158号公報に開示されるフォークは常圧雰囲気下で用いられるものであって、本実施形態のようにフォークを減圧雰囲気下の広い温度帯で用いることは想定されていない。
【0081】
一方、本実施形態のように本体部130に薄いセラミック材を用いる場合、上述したように従来の方法では、セラミック薄板の焼成後に内部を切削して微細構造を形成することは難しく、当該微細構造からなるヒートパイプを形成することは困難である。また、セラミック薄板に金属製のヒートパイプを埋め込む場合、セラミックと金属の熱膨張差が生じ、クラックの発生や発塵等が生じ得る。この点、本実施形態では、フォーク120の本体部130が薄いセラミック材であっても、上記工程S1~S6を実施することで本体部130の内部に微細構造を形成してヒートパイプ140を形成することができる。
【0082】
<他の実施形態>
ここで、ヒートパイプ140において流路141の内側面は、本体部130であるセラミック材であり、セラミック材は多孔体であるため、封入された作業流体が流路141の外部、すなわち本体部130の内部に浸透するおそれがある。例えば、本体部130の空隙率が高い場合には、作業流体が本体部130の内部に浸透し、ヒートパイプ140の機能が低下するおそれがある。そこで、対策として下記の3つが挙げられる。
【0083】
[対策1]
作動流体の漏洩を抑制する1つ目の対策としては、流路141の外壁の空隙率を低くすることである。
図7は、対策1におけるヒートパイプ140を形成する方法を示す説明図である。
【0084】
工程S1においてセラミック素体220を成形する際、
図7(a)に示すように本体部用セラミック材201として、内側本体部用セラミック材201aと外側本体部用セラミック材201bとを積層する。内側本体部用セラミック材201aは、ウィック用セラミック材202及びサポート材210の周囲に積層され、流路141の外壁として機能する。外側本体部用セラミック材201bは、内側本体部用セラミック材201aのさらに周囲に積層する。
【0085】
内側本体部用セラミック材201aの空隙率は、外側本体部用セラミック材201bの空隙率より低い。例えば内側本体部用セラミック材201aと外側本体部用セラミック材201bに用いられるスラリーの配合を調整することで、それぞれの本体部用セラミック材201a、201bの空隙率を調整することができる。
【0086】
その後、工程S2におけるセラミック素体220の焼成、工程S3におけるセラミック素体220の外形の仕上げ加工を順次行った後、工程S4において、
図7(b)に示すようにサポート材210を除去する。そうすると、本体部用セラミック材201の内部に流路141が形成され、本体部130が形成される。本体部130は、流路141の外壁を構成する内側本体部130aと、内側本体部130aの外側にある外側本体部130bとを含む。
【0087】
かかる場合、内側本体部130aの空隙率が外側本体部130bの空隙率より低いので、ヒートパイプ140において流路141からの作動流体の漏洩を抑制することができる。
【0088】
[対策2]
作動流体の漏洩を抑制する2つ目の対策としては、流路141の外壁部にセラミック材とは異なる材料を用いることである。
図8は、対策2におけるヒートパイプ140を形成する方法を示す説明図である。
【0089】
工程S1においてセラミック素体220を成形する際、
図8(a)に示すようにウィック用セラミック材202及びサポート材210の周囲に外壁材250を積層し、さらに外壁材250の周囲に本体部用セラミック材201を積層する。外壁材250には、本体部用セラミック材201より空隙率の低い材料、例えば石英が用いられ、流路141の外壁部として機能する。
【0090】
その後、工程S2におけるセラミック素体220の焼成、工程S3におけるセラミック素体220の外形の仕上げ加工を順次行った後、工程S4において、
図8(b)に示すようにサポート材210を除去する。そうすると、本体部用セラミック材201の内部に外壁部251(外壁材250)を備えた流路141が形成され、本体部130が形成される。
【0091】
かかる場合、外壁部251の空隙率が低いので、ヒートパイプ140において流路141からの作動流体の漏洩を抑制することができる。
【0092】
[対策3]
作動流体の漏洩を抑制する3つ目の対策としては、流路141の内側面に金属膜を形成することである。
図9は、対策3におけるヒートパイプ140を形成する方法を示す説明図である。
【0093】
工程S1~S3を順次行って、
図9(a)に示すようにセラミック素体220を形成する。その後、工程S4において、
図9(b)に示すようにサポート材210を除去した後、流路141の内側面に金属膜260を形成する。金属膜260の形成方法は任意であるが、例えば流路141の内側面に金属材料を蒸着させて、金属膜260を形成する。
【0094】
かかる場合、金属膜260によって、ヒートパイプ140において流路141からの作動流体の漏洩を抑制することができる。
【0095】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、ウェハ処理システム1で高温処理の成膜処理と低温処理のエッチング処理を順次行う際に、フォーク120の温度調節を行う場合について説明したが、低温処理から高温処理を順次行う場合にも、フォーク120を適切な温度に調節することができる。
【0096】
また、フォーク120は、単一の処理を行うウェハ処理システムのウェハ搬送装置にも適用できる。単一の処理であっても、処理開始時と処理終了時の温度は異なるため、やはり複数の処理を行う場合と同様の課題がある。この点、本実施形態では、フォーク120の温度調節を行い、ウェハWの温度を適切に調節することができるので、当該単一の処理を安定して行うことができる。
【0097】
また、以上の実施形態においてフォーク120は、減圧雰囲気下で用いられるウェハ搬送装置50に用いられたが、常圧雰囲気下で用いられるウェハ搬送装置に適用してもよい。
【0098】
以上の実施形態のフォーク120において、本体部130の内部に形成されるヒートパイプ140は作業流体を封止したクローズタイプであったが、ヒートパイプ140のタイプはこれに限定されるものではない。例えばヒートパイプ140は、作業流体を外部と循環させるタイプであってもよい。
【0099】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
50 ウェハ搬送装置
104 搬送基台
111 第1関節
112 第2関節
113 第3関節
120 フォーク
130 本体部
140 ヒートパイプ
141 流路
W ウェハ