(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149753
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】表面処理シリカ含有無機酸化物粒子分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/149 20060101AFI20241010BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C01B33/149
C01B33/141
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134471
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2023545531の分割
【原出願日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2021141201
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 智
(72)【発明者】
【氏名】安部 誠志
(72)【発明者】
【氏名】北川 裕丈
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴広
(72)【発明者】
【氏名】柏原 雅也
(57)【要約】
【課題】 高温や高塩分下で分散安定性の高い無機酸化物粒子の分散液を提供。
【解決手段】 加水分解性シランで表面修飾したシラン結合無機酸化物粒子を分散質として含み液状媒体を分散媒とする分散体であって、該分散媒は上記加水分解性シランの加水分解物を含み、(分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中のケイ素原子モル数)/(無機酸化物粒子表面に結合したシランのケイ素原子モル数)の割合が0.2~30であり、Si-NMR観測でシリカ粒子のケイ素原子間の架橋酸素がケイ素原子1個に対して4/2個であるQ4が該シランの表面修飾前より増加しているものである該シリカ粒子を含む上記分散体。無機酸化物が、平均粒子径5nm~100nmのシリカ、アルミナ、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化アンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸化物。単独金属酸化物、複合金属酸化物又はコアシェル構造を有する複合酸化物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シランで表面修飾したシラン結合シリカ含有無機酸化物粒子を分散質として含み液状媒体を分散媒とする分散体であって、該分散媒は上記加水分解性シランの加水分解物を含み、(分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中のケイ素原子モル数)/(無機酸化物粒子表面に結合したシランのケイ素原子モル数)の割合が0.2~30である該シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子を含む分散体。
【請求項2】
上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子が、平均粒子径5nm~100nmのシリカ粒子又は平均粒子径5nm~100nmの無機酸化物粒子であって、
該無機酸化物粒子は、シリカとアルミナ、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化アンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物との複合金属酸化物粒子、又はシリカとアルミナ、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化アンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物とのコアシェル構造を有する複合酸化物粒子である、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
上記加水分解性シランが式(1)乃至式(3):
【化1】
(式(1)中、R
3はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、R
4はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R
5及びR
7は炭素原子数1~3のアルキル基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R
6及びR
8はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、該R
5及びR
7は少なくとも一つが炭素原子数1~3のアルキル基であってSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数であり、eは1~3の整数である。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物である、請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
分散媒中の上記加水分解性シランの加水分解物には、式(1)のaが1の整数であるシラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個、及び3/2個を示すT0、T1、T2、及びT3構造について、(T2+T3)/(T0+T1)が特定の値(2~15)、又は(T1+T2+T3)/(T0)比が特定の値(5~100)であるシラン化合物が含まれる、請求項3に記載の分散体。
【請求項5】
分散媒中の加水分解性シランの加水分解物には、式(1)のaが2の整数であるシラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個を示すD0、D1及びD2構造について、(D1+D2)/(D0)比が0.1~10、又は(D2)/(D0+D1)比が0.01~10であるシラン化合物が含まれる、請求項3に記載の分散体。
【請求項6】
Si-NMR観測でシリカ粒子のケイ素原子間の架橋酸素がケイ素原子1個に対して4/2個であるQ4において、Q4が76%~92%である、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子の結合シラン量が0.3~5.9個/nm2である、請求項1に記載の分散体。
【請求項8】
上記分散媒中の加水分解性シランの加水分解物であるフリーシラン量が0.1~40.3個/nm2である、請求項1に記載の分散体。
【請求項9】
上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子への水蒸気吸着量を窒素ガス吸着量で割った値である(水蒸気吸着量から算出した比表面積)/(窒素ガス吸着量から算出した比表面積)がシラン化合物添加前のシリカ含有無機酸化物粒子に比較して0.15~0.95であり、該シリカ含有無機酸化物粒子は、シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子及び/又はシラン結合していないシリカ含有無機酸化物粒子を含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子の水分散体とブライン溶液とを混合してシリカ濃度0.5質量%及び塩濃度4質量%とした混合液を20℃で10時間保持する室温耐塩性評価にて、耐塩性試験(保管)後のDLS平均粒子径/耐塩性試験(保管)前のDLS平均粒子径の比が2.4以下である、請求項1に記載の分散体。
【請求項11】
下記(A)工程乃至(B)工程:
(A)工程:上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子及び/又はシラン結合していないシリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体を得る工程、
(B)工程:上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子及び/又はシラン結合していないシリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体に加水分解性シランを該粒子表面積当たりの該シランの個数の割合として、0.3~100個/nm2の範囲で添加して、室温で攪拌後に20~99℃以内の温度に昇温し、室温の攪拌時間に対して昇温後の攪拌時間が1~100倍以内の時間で行われる工程を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の分散体の製造方法。
【請求項12】
上記(B)工程の前に、上記シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体をpH2.0~6.5に調整する工程を含む、請求項11に記載の分散体の製造方法。
【請求項13】
上記(B)工程の後に更に(C)工程:
(C)工程:(B)工程で得られた分散体の水性媒体を有機溶媒に置換する工程、を含む請求項11に記載の有機溶媒を分散媒とする分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面をシラン処理したシラン結合シリカ含有無機酸化物粒子の分散液及びそれらの製造方法に関する。なお、以下「シラン結合シリカ含有無機酸化物粒子」を「シリカ含有無機酸化物粒子」と称することもある。
【背景技術】
【0002】
シリカ含有無機酸化物粒子の分散液、特にシリカゾルは分散媒中にシリカ粒子が分散した液体であるが、シリカ粒子を高度に分散する方法としてシリカ粒子間のゼータ電位の絶対値を高くしてシリカ粒子間の反発力を高める方法がある。その方法の一つとして分散媒が水溶液である場合にはカチオン性やアニオン性の官能基を有するシランカップリング剤でシリカ粒子の表面を修飾する方法や、分散媒が有機溶媒であれば疎水性有機基を有するシランカップリング剤でシリカ粒子の表面を修飾する方法がある。
例えば親水性無機酸化物ゾルにケイ素原子に結合したアルコキシド基を2個以上有するケイ素アルコキシド、又は1個以上のケイ素原子に結合したヒドロキシル基と1個以上のケイ素原子に結合したアルコキシド基を有するケイ素アルコキシドを添加して表面処理する工程、炭素数3~12の1級アルコールの共存下に、分散媒を非アルコール系有機溶媒に置換する工程を含む有機溶媒分散シリカゾルの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
屈折率が1.65以上の金属酸化物粒子の表面に第一有機珪素化合物が結合した表面処理粒子と、前記金属酸化物粒子には結合していない第二有機珪素化合物と、有機溶媒とを含み、(第一有機珪素化合物)/(第二有機珪素化合物)が0.1~9.0である表面処理粒子の分散液が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-200294
【特許文献2】特開2020-164374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は高温や高塩分下でも分散安定性の高いシリカ含有無機酸化物粒子の分散液、特にはシリカ粒子の分散液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は第1観点として、加水分解性シランで表面修飾したシラン結合シリカ含有無機酸化物粒子を分散質として含み液状媒体を分散媒とする分散体であって、該分散媒は上記加水分解性シランの加水分解物を含み、(分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中のケイ素原子モル数)/(無機酸化物粒子表面に結合したシランのケイ素原子モル数)の割合が0.2~30であり、Si-NMR観測でシリカ粒子のケイ素原子間の架橋酸素がケイ素原子1個に対して4/2個であるQ4が該シランの表面修飾前より増加しているものである該シリカ含有無機酸化物粒子を含む上記分散体、
第2観点として、シリカ含有無機酸化物粒子が、平均粒子径5nm~100nmのシリカ粒子、又はシリカとアルミナ、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化アンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸化物粒子であって、該シリカ含有無機酸化物粒子はシリカ粒子、シリカとその他の金属酸化物との複合金属酸化物、又はシリカとその他の金属酸化物とのコアシェル構造を有する複合酸化物粒子である第1観点に記載の分散体、
第3観点として、加水分解性シランが式(1)乃至式(3):
【化1】
(式(1)中、R
3はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、R
4はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R
5及びR
7は炭素原子数1~3のアルキル基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R
6及びR
8はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、該R
5及びR
7は少なくとも一つが炭素原子数1~3のアルキル基であってSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数であり、eは1~3の整数である。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物である第1観点又は第2観点に記載の分散体、
第4観点として、分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中には、式(1)のaが1の整数であるシラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個、及び3/2個を示すT0、T1、T2、及びT3構造について、(T2+T3)/(T0+T1)が特定の値(2~15)、又は(T1+T2+T3)/(T0)比が特定の値(5~100)であるシラン化合物を含んでいる第3観点に記載の分散体、
第5観点として、分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中には、式(1)のaが2の整数であるシラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個を示すD0、D1及びD2構造について、(D1+D2)/(D0)比が0.1~10、又は(D2)/(D0+D1)比が0.01~10であるシラン化合物を含んでいる第3観点に記載の分散体、
第6観点として、上記シリカ含有無機酸化物粒子への水蒸気吸着量を窒素ガス吸着量で割った値である(水蒸気吸着量から算出した比表面積)/(窒素ガス吸着量から算出した比表面積)がシラン化合物添加前のシリカ含有無機酸化物粒子に比較して0.15~0.95である第1観点乃至第5観点の何れか一つに記載の分散体、
第7観点として、下記(A)工程乃至(B)工程:
(A)工程:上記シリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体を得る工程、
(B)工程:上記シリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体にpH2.0~6.5で加水分解性シランを該粒子表面積当たりの該シランの個数の割合として、0.3~100個/nm
2の範囲で添加して、室温で攪拌後に50~99℃以内の温度に昇温し、室温の攪拌時間に対して昇温後の攪拌時間が1~7倍以内の時間で行われる工程、を含む第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の分散体の製造方法、及び
第8観点として、(B)工程の後に更に(C)工程:
(C)工程:(B)工程で得られた分散体の水性媒体を有機溶媒に置換する工程、を含む
第7観点に記載の有機溶媒を分散媒とする分散体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
シリカ含有無機酸化物粒子、特にシリカ等の無機粒子分散液は、粒子間の反発力により分散安定性を確保している。例えばシリカ粒子を例にすれば、シリカ粒子の表面にはシラノール基が存在し、シラノール基が有するマイナスの電荷により粒子間の反発が生じる。分散液中のpHや塩類の影響により電荷の絶対値の大小は変化する。pHや塩類から影響を受け難い表面処理粒子が存在する。例えばシリカ粒子においてはシリカ粒子表面にプラスの電荷を有するカチオン性官能基を有する加水分解性シラン化合物で表面処理する方法や、マイナスの電荷を有するアニオン性官能基を有する加水分解性シラン化合物で表面処理する方法が挙げられている。これらはそれぞれカチオン性やアニオン性の官能基同士が電気的な斥力で粒子間の反発力を有するものである。
【0007】
シリカ粒子の表面に結合した上記官能基のその密度にもよるが粒子表面全体に渡り、上記官能基で修飾することは難しく、粒子同士の反発力はpH条件や塩濃度条件では必ずしも十分とは言えない。
ところで、シリカ粒子の分散液に添加した官能基を有するシラン化合物は、シリカ粒子表面に結合した官能基を有するシラン(結合シラン)と、シリカ粒子に結合せずに分散媒中に溶解している官能基を有するシランとが存在する(以下フリーシランと呼ぶ。)。分散媒中の官能基を有するシランは、シリカ粒子間に存在し、同一官能基を有するために結合シランとフリーシラン間でも斥力を生じ、シリカ粒子は粒子間だけでなく、それらシランモノマーとの間でも反発力が生じ分散安定性の高い分散液となる。
【0008】
本発明では(分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中のケイ素原子モル数)/(無機酸化物粒子表面に結合したシランのケイ素原子モル数)の割合が特定の値(0.2~30)である事が、分散安定性の高いシリカ粒子の分散液を与える事が判った。
また、分散媒が有機溶媒系ではシリカ粒子はシラノールに基づく親水性を有し、有機溶媒の液性とは異なるため、シリカ粒子のシラノール基を、疎水性官能基を有するシランで表面処理する事で有機溶媒に相溶性の高いものとする。疎水性官能基を有するシランは粒子全体に渡り、上記官能基で修飾する事は難しく、シリカ粒子の疎水性官能基で修飾されていない部分は疎水性官能基を有するシランモノマーで相溶性を確保する事で有機溶媒へも分散性の高い分散液とする事ができる。
【0009】
本発明では分散媒中の加水分解性シランの加水分解物が、シリカ粒子とシランモノマーとの斥力が分散媒全体で非局在化して存在する事が好ましく、そのためにはフリーシランの重合が極端に進行しないことが好ましい。例えば、加水分解性シランの加水分解基が3個であるシランを用いる場合には、シラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個、及び3/2個を示すT0、T1、T2、及びT3構造について、(T2+T3)/(T0+T1)が特定の値(2~15、好ましくは2~10)、又は(T1+T2+T3)/(T0)比が特定の値(5~100、好ましくは5~50)であることが好ましい。これらはどちらか一方を満たすことでも良いが、両方満たすことがより好ましい。
また、加水分解性シランの加水分解基が2個であるシランを用いる場合には、シラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個を示すD0、D1及びD2構造について、(D1+D2)/(D0)比が特定の値(0.1~10)、又は(D2)/(D0+D1)比が特定の値(0.01~10)である事が好ましい。これらはどちらか一方を満たすことでも良いが、両方満たすことがより好ましい。
【0010】
シリカ含有無機酸化物粒子、特にシリカ粒子ではシリカ粒子への水蒸気吸着量を窒素ガ
ス吸着量で割った値である(水蒸気吸着量から算出した比表面積)/(窒素ガス吸着量から算出した比表面積)がシラン化合物添加前のシリカ粒子に比較して0.15~0.95である範囲とする事で、無機酸化物粒子が水性媒体から有機溶媒まで広範囲にわたり相性が高い粒子とする事ができる。
これらの結合シランとフリーシランを満たしているシリカ粒子は、Si-NMR観測でシリカ粒子のケイ素原子間の架橋酸素がケイ素原子1個に対して4/2個であるQ4が該シランの表面修飾前より増加しているものである。例えばそれらの増加比が1.01~1.5、又は1.01~1.15の範囲とする事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は加水分解性シランで表面修飾したシラン結合シリカ含有無機酸化物粒子を分散質として含み液状媒体を分散媒とする分散体であって、該分散媒は上記加水分解性シランの加水分解物を含み、(分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中のケイ素原子モル数)/(無機酸化物粒子表面に結合したシランのケイ素原子モル数)の割合が0.2~30、好ましくは0.2~15であり、Si-NMR観測でシリカ粒子のケイ素原子間の架橋酸素がケイ素原子1個に対して4/2個であるQ4が該シランの表面修飾前より増加しているものである該シリカ含有無機酸化物粒子を含む上記分散体である。
【0012】
本発明において無機物質、例えば水性シリカゾル(コロイダルシリカ粒子)の平均粒子径は、特に断りのない限り、窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径をいう。窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径(平均粒子径(比表面積径)D(nm))は、窒素吸着法で測定される比表面積S(m2/g)から、D(nm)=2720/Sの式によって与えられる。シリカ含有無機酸化物粒子が、BET法による測定で平均粒子径5nm~100nm、好ましくは5~60nmのシリカ粒子、又はシリカとアルミナ、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、及び酸化アンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸化物粒子であって、該シリカ含有無機酸化物粒子はシリカ粒子、シリカとその他の金属酸化物との複合金属酸化物、又はシリカとその他の金属酸化物とのコアシェル構造を有する複合酸化物粒子が挙げられる。例えば、単独金属酸化物としてはシリカ粒子が好ましく用いられ、複合金属酸化物としてはシリカとアルミナの複合金属酸化物粒子、酸化スズとシリカの複合金属酸化物粒子が挙げられる。またコアシェル構造を有する複合酸化物粒子としては、酸化チタンや酸化チタンと酸化ジルコニウムをコアとして、酸化スズとシリカをシェルとするコアシェル構造の複合酸化物粒子が挙げられる。
【0013】
本発明では上記シリカ含有無機酸化物粒子が分散媒中で例えば1~50質量%濃度の分散液として得られる。
本発明の分散体は下記(A)工程乃至(B)工程:
(A)工程:上記シリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体を得る工程、
(B)工程:上記シリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体にpH2.0~6.5で加水分解性シランを該粒子表面積当たりの該シランの個数の割合として、0.3~100個/nm2の範囲で添加して、室温で攪拌後に50~99℃以内の温度に昇温し、室温の攪拌時間に対して昇温後の攪拌時間が1~7倍以内の時間で行われる工程、を含むものである。
(A)工程で得られるシリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体は、シリカ含有無機酸化物粒子が水性媒体中で例えば1~50質量%濃度の分散液として得られる。例えば水性シリカゾルを例とすれば、水性シリカゾルは水ガラスを出発原料として、a)水ガラスを陽イオン交換して活性珪酸を得る工程、b)活性珪酸を加熱してシリカ粒子を得る工程からなる。a)工程では活性珪酸を高純度化するために鉱酸(例えば、塩酸、硝酸、又は硫酸)を添加して、シリカ以外の金属不純物を溶出させた陽イオン交換及び陰イオン交換で金属不純物や不要なアニオンを除去した活性珪酸を用いる事ができる。b)工程では活性珪酸にアルカリ成分(例えばNaOH、KOH)を添加してシリカ粒子の粒子成長を行う。
シリカ粒子の粒子成長を促進させるために、a)工程で得られた活性珪酸にアルカリを添加したシード液とフィード液を準備して、シード液を加熱しながらフィード液を供給してシリカ粒子径を増大させることによって任意の粒子径とする水性シリカゾルを得る事ができる。
(B)工程では(A)工程で得られた上記シリカ含有無機酸化物粒子の水性分散体のpHを2.0~6.5に調整して加水分解性シランを添加する事ができる。pH調整には酸又はアルカリを用いる事ができる。
【0014】
酸としては塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酪酸、フマル酸、プロピオン酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。
アルカリとしてはアンモニア、アミン、水酸化第4級アンモニウム、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、及び脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
アミンとしては第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンが挙げられる。
第1級アミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、i-プロピルアミン等が挙げられる。
第2級アミンとしては例えばエチルnプロピルアミン、エチルiプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジi-プロピルアミン、エチルブチルアミン、nプロピルブチルアミン、ジブチルアミン、エチルペンチルアミン、nプロピルペンチルアミン、iプロピルペンチルアミン、ジペンチルアミン、エチルオクチルアミン、iプロピルオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジオクチルアミン等が挙げられる。
上記第3級アミンとしては例えばトリエチルアミン、エチルジnプロピルアミン、ジエチルnプロピルアミン、トリnプロピルアミン、トリiプロピルアミン、エチルジブチルアミン、ジエチルブチルアミン、iプロピルジブチルアミン、ジiプロピルブチルアミン、トリブチルアミン、エチルジペンチルアミン、ジエチルペンチルアミン、トリペンチルアミン、メチルジオクチルアミン、ジメチルオクチルアミン、エチルジオクチルアミン、ジエチルオクチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
水酸化第4級アンモニウムとしては、総炭素原子数が4~40の水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラnプロピルアンモニウム、水酸化テトラiプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としては、炭素原子数10~30の飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、不飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属はナトリウム、カリウムが挙げられる。飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としてはラウリン酸アルカリ金属塩、ミリスチン酸アルカリ金属塩、パルミチン酸アルカリ金属塩、ステアリン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
不飽和脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としてはオレイン酸アルカリ金属塩、リノール酸アルカリ金属塩、リノレン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0015】
(B)工程で用いられる加水分解性シランとしては上記式(1)乃至式(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を用いる事ができる。
式(1)中、R3はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、又はエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、R4はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R5及びR7は炭素原子数1~3のアルキル基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R6及びR8はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、該R5及びR7は少なくとも一つが炭素原子数1~3のアルキル基であってSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数であり、eは1~3の整数である。
【0016】
上記アルキル基は炭素原子数1~18のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等があげられるが、これらに限定されない。
また、アルキレン基は上述のアルキル基から誘導されるアルキレン基を上げる事ができる。
【0017】
アルケニル基としては炭素数2~10のアルケニル基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペン
テニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
上記アルコキシ基は炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
上記アシルオキシ基は炭素原子数2~10のアシルオキシ基は、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記ハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方をあらわす。
上記式(2)及び式(3)はトリメチルシリル基をシリカ粒子の表面に形成できる化合物が好ましい。
それら化合物としては以下に例示することができる。
【化2】
上記式中、R
12はアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。シリカ粒子の表面にヒドロキシル基、例えばシリカ粒子であればシラノール基と上記シラン化合物が反応してシロキサン結合によりシリカ粒子の表面に上記シラン化合物を被覆する工程である。
【0020】
反応温度は20℃からその分散媒の沸点の範囲までの温度で行うことができるが、例えば20℃~100℃の範囲で行うことができる。反応時間は0.1~6時間程度で行うことができる。
【0021】
好ましい官能基としてアミノ基、エポキシ基、アルキル基、フェニル基等であり、例えばアミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、メチル基、フェニル基、グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
それらに対応するシラン化合物としてアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
上記シラン化合物はシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数が0.1個/nm2~4.0個/nm2の被覆量に相当するシラン化合物をシリカゾルに添加してシリカ粒子表面の被覆を行う事ができる。
上記シラン化合物の加水分解には水が必要であるが、水性溶媒のゾルであればそれら水性溶媒が用いられる。
また、加水分解は触媒を用いて行うことも、触媒なしで行う事もできる。
触媒なしで行う場合はシリカ粒子表面が触媒となり、pH2.0~6.5のシリカゾルを用いる事ができる。
【0023】
触媒を用いる場合は、加水分解触媒として金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が挙げられる。加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、シュウ酸等が挙げられる。加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げられる。加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、第4級アンモニウム塩が挙げられる。加水分解触媒としての無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0024】
上記(B)工程では(A)工程で得られた無機酸化物粒子の水性分散体に加水分解性シランを添加するが、室温(例えば15~25℃程度)で0.01~2時間の攪拌後に50~99℃以内の温度に昇温し0.01~14時間の攪拌を行い、室温の攪拌時間に対して、50~99℃への昇温後の攪拌時間が1~100倍、又は1~7倍以内の範囲で行われる事が好ましい。上記割合が1倍以内では十分な無機酸化物粒子(例えばシリカ粒子)への加水分解性シランの加水分解物の被覆が行われずに分散媒中に存在する該シラン化合物が後に局所的に被覆され、均一な被覆を達成できない。また、7倍以上ではT1、T2、T3、D1、D2構造の割合が減少し、粒子の反発力という点で好ましくない。
【0025】
本発明では加水分解性シランの加水分解物がシリカ粒子上に結合した状態と、加水分解性シランの加水分解物が分散媒中に存在している状態が共存している。両者が(分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中のケイ素原子モル数)/(無機酸化物粒子表面に結合したシランのケイ素原子モル数)の割合が0.2~30の割合の時に無機酸化物ゾル(シリカゾル)の安定性に貢献する。
【0026】
本発明の加水分解性シランの加水分解物がシリカ粒子上に結合した状態ではシリカ粒子は、シラノール量が減少し、それはSi-NMR観測でシリカ粒子のケイ素原子間の架橋酸素がケイ素原子1個に対して4/2個であるQ4が該シランの表面修飾前より増加している事が特徴である。
【0027】
そして、加水分解性シランの加水分解物がシリカ粒子上に結合した状態ではシリカ粒子は、シリカ粒子への水蒸気吸着量から算出した比表面積を窒素ガス吸着量から算出した比表面積で割った値である(水蒸気吸着量から算出した比表面積)/(窒素ガス吸着量から算出した比表面積)がシラン化合物添加前のシリカ粒子に比較して0.15~0.95の状態である。
【0028】
これはシリカ粒子表面がシラノール基から官能基を有するシラン化合物に置き換わっている事を示す数値である。
また、分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中には、式(1)のaが1の整数であるシラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個、及び3/2個を示すT0、T1、T2、及びT3構造について、(T2+T3)/(T0+T1)比が2~10、又は(T1+T2+T3)/(T0)比が5~100であるシラン化合物を含んでいる事が特徴である。これらはどちらか一方を満たすことでも良いが、両方満たすことがより好ましい。
また、分散媒中の加水分解性シランの加水分解物中には、式(1)のaが2の整数であるシラン化合物の加水分解化合物がSi-NMR観測でケイ素原子間の架橋酸素の割合がケイ素原子1個に対して0/2個、1/2個、2/2個を示すD0、D1及びD2構造について、(D1+D2)/(D0)比が0.1~10、又は(D2)/(D0+D1)比が0.01~10であるシラン化合物を含んでいる事が特徴である。これらはどちらか一方を満たすことでも良いが、両方満たすことがより好ましい。
【0029】
このように得られた本発明の分散体は、(B)工程の後に更に(C)工程:
(C)工程:(B)工程で得られた分散体の水性媒体を有機溶媒に置換する工程、を含み有機溶媒を分散媒とする分散体が得られる。
【0030】
有機溶媒としてはアルコール、ケトン、エーテル、エステル、アミド、及び炭化水素等の有機溶媒が挙げられる。アルコールとしては炭素原子数1~10のアルコールであり、例えばメタノール、エタノール、i-プロパノール、n-プロパノール、ブタノール等が挙げられる。ケトンは炭素原子数3~30の直鎖又は環状の脂肪族ケトンであり、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エーテルは炭素原子数3~30の直鎖又は環状の脂肪族エーテルであり、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。エステルは炭素原子数2~30の直鎖又は環状のエステルであり、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸secブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、酢酸フェニル、乳酸フェニル、プロピオン酸フェニル等が挙げられる。アミドは炭素原子数3~30の脂肪族アミドであり、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等が挙げられる。炭化水素は炭素原子数6~30の直鎖又は環状の脂肪族又は芳香族炭化水素であり、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0031】
本願発明のシリカ含有無機酸化物ゾル(例えばシリカゾル)は、高塩類分散媒ゾル、接着剤、離型剤、半導体封止材、LED封止材、塗料、フィルム内添材、ハードコート剤、フォトレジスト材、印刷インキ、洗浄剤、クリーナー、各種樹脂用添加剤、絶縁用組成物、防錆剤、潤滑油、金属加工油、フィルム用塗布剤、剥離剤、坑井処理剤等に使用する事ができる。
【実施例0032】
(測定装置)
水性シリカゾルの分析(pH値、電気伝導率、粘度、DLS平均粒子径、シラン結合量)、該水性シリカゾルを用いて調製したサンプルの室温耐塩性試験後又は高温耐塩性試験後のサンプルの分析は、以下の装置を用いて行なった。
・DLS平均粒子径(動的光散乱法による平均粒子径):動的光散乱法粒子径測定装置 ゼーターサイザー ナノ(スペクトリス(株)マルバーン事業部製)を用いた。
・pH:pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製)を用いた。
・電気伝導率:電気伝導率計(東亞ディーケーケー(株)製)を用いた。
・粘度:BMII型粘度計((株)東京計器製)を用いた。
・シラン結合量:有機微量元素分析装置 CHNS/Oアナライザ((株)パーキンエルマージャパン)または、TN測定装置 TN―2100V Total Nitrogen Analyzer((株)三菱化学アナリテック)を用いた。
・Si-NMR:AVANCED NEO(Bruker(株)製)を用いた。
・窒素ガス吸着量:MONOSORB(Quantachrome INSTRUMENTS製)を用いた。
・水蒸気吸着量:Q5000SA 吸着分析器(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いた。
【0033】
〔シリカゾルの評価〕
(シリカ粒子に結合していないシラン(フリーシラン)の除去)
15mlの遠心式フィルターユニットである商品名アミコンウルトラー15(メルク(株))に水性シリカゾル2gと純水4gを投入し、2770Gの遠心力で20分遠心処理した。遠心後、ユニット下部に排出された液体を廃棄し、廃棄した液体と同質量の純水をフィルター上に濃縮された水性シリカゾルに投入して再分散させた後、再び2770Gの遠心力で20分遠心処理した。上記の作業を合計4回繰り返して、フリーシランを除去した水性シリカゾルを得た。
【0034】
(炭素量の測定)
フリーシランを除去した水性シリカゾルを100℃で加熱乾燥させ、乳鉢で粉砕することでシリカゾル粉末を得た。得られたシリカゾル粉末の炭素量は有機微量元素金属分析装置にて測定し、得られた炭素量から次式にてシラン結合量を算出した。
表面処理量=(Cm÷Cn÷Sc×A)/(Ct×Cs)
ただしCmは炭素含有量、Cnは炭素分子量、Scはシラン中の炭素原子数、Aはアボガドロ数、Ctはシリカ粒子質量、Csはシリカ比表面積である。
炭素量の測定で得られたシラン結合量の単位は(個/nm2)である。
【0035】
(窒素量の測定)
フリーシランを除去した水性シリカゾルの窒素量はTN測定装置にて測定し、得られた窒素量から次式にてシラン結合量を算出した。
表面処理量=(Nm÷Nn÷Sn×A)/(Ct×Cs)
ただしNmは窒素含有量、Nnは窒素分子量、Snはシラン中の窒素原子数、Aはアボガドロ数、Ctはシリカ粒子質量、Csはシリカ比表面積である。
窒素量の測定で得られたシラン結合量の単位は(個/nm2)である。
【0036】
(水蒸気吸着量の測定)
上記フリーシランの除去で得られた水性シリカゾルを、80℃ホットプレートで乾燥して得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、さらに150℃で3時間乾燥してシリカ乾燥粉末を得た。BET理論に基づいてこの粉末の水蒸気吸着法による比表面積(m2/g)を測定した(水蒸気BET法)。
【0037】
(窒素ガス吸着量の測定)
上記フリーシランの除去で得られた水性シリカゾルを、80℃ホットプレートで乾燥して得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、さらに150℃で3時間乾燥してシリカ乾燥粉末を得た。BET理論に基づいてこの粉末の窒素吸着法による比表面積(m2/g)を測定した(BET法、即ち、窒素ガスBET法)。
【0038】
(耐塩性評価)
(耐塩性テストサンプルの調製)
200mlのスチロール瓶に撹拌子を投入後、実施例又は比較例で製造した各シリカゾル3.6gを投入しマグネットスターラーで撹拌した。マグネットスターラーで撹拌しながら、純水46.4gと塩濃度6質量%のブライン溶液100gを投入し、1時間撹拌した。これを、4質量%の塩濃度下で、前記シリカゾルをシリカ濃度0.5質量%となる濃度とした際の、耐熱性及び耐塩性を評価する耐塩性テストサンプルとした。得られた耐塩性テストサンプルのpH、電気伝導率、サンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
【0039】
(室温耐塩性評価)
200mlのスチロール製の密閉できる容器に、前記耐塩性テストサンプル150gを入れ、密閉後、スチロール容器を20℃で静置し、所定時間保持した後、耐塩性テストサンプルの外観、pH、電気伝導率、サンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
なお耐塩性の評価は、20℃で所定時間保持後(10時間後)、サンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径の測定結果に基づく耐塩性の判定(下記耐塩性の判定参照)並びに外観の評価により行った。
【0040】
(耐塩性の判定)
A:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が1.1以下。
B:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が1.2~1.5。
C:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が1.6~2.4。
D:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が2.5~20.0。
E:耐塩性試験後のDLS平均粒子径/試験前のDLS平均粒子径の比が20.1以上または白濁し固液分離。
耐塩性試験結果はAが最も好ましく、B、C、D、Eの順で好ましい結果であることを示す。
【0041】
(高温耐塩性評価-1)
120mlのテフロン(登録商標)製の密閉できる容器に、前記耐塩性テストサンプル65gを入れ、密閉後、テフロン(登録商標)容器を100℃の乾燥機内に置き、100℃で所定時間保持(10時間)した後、耐塩性テストサンプルの外観、pH、電気伝導率
、サンプル中の水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。上記室温耐塩性評価の耐塩性の判定と同じ判定基準により、高温耐塩性の判定を行った。
【0042】
(高温耐塩性評価-2)
乾燥機の温度を120℃とし、保持時間を10時間とした以外は、上記(高温耐塩性評価-1)と同じ操作により、高温耐塩性の判定を行った。
【0043】
(水性シリカゾルの調製)
(実施例1)
2000mlのガラス製ナスフラスコに水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、シリカ濃度は20.5質量%、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)1000gとマグネット撹拌子を投入した後、マグネットスターラーで撹拌しながら、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が0.5個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を9.4g投入した。続いて、水道水を流した冷却管をナスフラスコの上部に設置し、還流しながら水性ゾルを60℃に昇温し、60℃で昇温時間を含めて4時間保持した後、冷却した。室温での攪拌時間に対して60℃昇温後の攪拌時間は1~7倍以内で行われた。室温まで冷却後、水性ゾルを取り出し、シラン化合物で表面処理された水性シリカゾルを含む水性ゾル1009.4gを得た。
実施例1の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例1の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
〈耐塩性テストサンプルの調製〉に従い耐塩性テストサンプルを調製し、〈室温耐塩性評価〉に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0044】
(実施例2)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を149.7g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1149.7gを得た。
実施例2の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例2の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―1)に従って100℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0045】
(実施例3)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が30.8個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を576.2g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1576.2gを得た。
実施例3の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例3の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―1)に従って100℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0046】
(実施例4)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が46.2個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を864.3g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1864.3gを得た。
実施例4の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例4の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―1)に従って100℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0047】
(実施例5)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が0.5個/nm2になるようにメチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-13)を5.4g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1005.4gを得た。
実施例5の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例5の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0048】
(実施例6)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による
平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が0.5個/nm2になるようにジメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-22)を4.8g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1004.8gを得た。
実施例6の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例6の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0049】
(実施例7)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が0.5個/nm2になる
ように2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-303)を9.8g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1009.8gを得た。
実施例7の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例7の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0050】
(実施例8)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が0.5個/nm2になるようにトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-7103)を8.6g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1008.6gを得た。実施例8の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例8の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0051】
(実施例9)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように、乳酸114.1gとアミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE-903)140.2gとを事前に混合して30分撹拌した液を投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1254.3gを得た。
実施例9の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例9の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0052】
(実施例10)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、乳酸114.1gを投入してマグネットスターラーで撹拌し、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように、アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-903)113.6gを投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1227.7gを得た。
実施例10の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例10の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した
。
【0053】
(実施例11)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、乳酸228.2gを投入してマグネットスターラーで撹拌し、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-603)140.9gを投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1369.1gを得た。
実施例11の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例11の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―2)に従って120℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0054】
(実施例12)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、乳酸228.2gを投入してマグネットスターラーで攪拌し、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-602)130.7gを投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1358.9gを得た。
実施例12の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例12の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―2)に従って120℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0055】
(実施例13)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-OXS、シリカ濃度は10.5質量%、BET法による平均粒子径5.0nm、DLS法による平均粒子径8.1nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を179.4g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1179.4gを得た。
実施例13の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例13の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―1)に従って100℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0056】
(実施例14)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-OL、シリカ濃度は20.5質量%、BET法による平均粒子径45.0nm、DLS法による平均粒子径7
8.0nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が32.7個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を159.0g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1159.0gを得た。
実施例14の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って実施例14の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―1)に従って100℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0057】
(比較例1)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O)を、比較例1の水性シリカゾルとした。
比較例1の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例1の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0058】
(比較例2)
実施例2と同じ操作により水性シリカゾル1149.7gを得た。
実施例2の水性シリカゾル200gに純水800gを投入し、限外濾過にて200g排出されるまで濾過し、再び純水800gを投入して同様の操作を4回繰り返し、フリーシランを除去した水性シリカゾル200gを得た。
比較例2の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例2の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(高温耐塩性評価―1)に従って100℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し高温耐塩性を評価した。
【0059】
(比較例3)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、BET法による平均粒子径11.7nm、DLS法による平均粒子径18.6nm)中のシリカに対して、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が2.0個/nm2になるようにメチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-13)を35.1g投入した以外は、実施例1と同じ操作により水性ゾル1035.1gを得た。
比較例3の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例3の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0060】
(比較例4)
2000mlのガラス製ナスフラスコに水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-O、シリカ濃度=20.5質量%、BET法平均粒子径11.7n
m、DLS平均粒子径18.6nm)1000gとマグネット撹拌子を投入した後、マグネットスターラーで撹拌しながら、水性シリカゾル中のシリカの表面積に対してシラン化合物が8.0個/nm2になるように3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エボニック社製Dynasylan GLYMO)を149.7g投入して水性ゾル1149.7gを得た。
比較例4の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例4の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0061】
(比較例5)
実施例9と同じ操作により水性シリカゾル1254.3gを得た。
実施例9の水性シリカゾル200gに純水800gを投入し、限外濾過にて200g排出されるまで濾過し、再び純水800gを投入して同様の操作を4回繰り返し、フリーシランを除去した水性シリカゾル200gを得た。
比較例5の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例5の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0062】
(比較例6)
実施例10と同じ操作により水性シリカゾル1227.7gを得た。
実施例10の水性シリカゾル200gに純水800gを投入し、限外濾過にて200g排出されるまで濾過し、再び純水800gを投入して同様の操作を4回繰り返し、フリーシランを除去した水性シリカゾル200gを得た。
比較例6の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、DLS法による平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例6の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
【0063】
(比較例7)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-OXS)を、比較例7の水性シリカゾルとした。
比較例7の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例7の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
【0064】
(比較例8)
水性シリカゾル(日産化学(株)製スノーテックス(商品名)ST-OL)を、比較例8の水性シリカゾルとした。
比較例8の水性シリカゾルのpH、電気伝導率、粘度、水性シリカゾル(シリカ粒子)のDLS平均粒子径を評価した。
(シラン結合量の評価)に従って比較例8の水性シリカゾルのシラン結合量を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従い耐塩性テストサンプルを調製し、(室温耐塩性
評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
(耐塩性テストサンプルの調製)に従いブラインテストサンプルを調製し、(室温耐塩性評価)に従って20℃で10時間保持した後、サンプルを取り出し室温耐塩性を評価した。
表1~6に実施例の水性シリカゾルの組成(成分濃度)及び耐塩性試験結果を、表7及び表8に比較例の水性シリカゾルの組成(成分濃度)及び耐塩性試験結果を示す。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【表8】
なお表中のシラン化合物の種類(符号)は以下を表す。
・LTAC:ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド「商品名カチオーゲンTML」、有効成分30.0%、第一工業製薬(株)製
・GPS:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「商品名Dynasylan GLYMO」、Evonik(株)製
・MTMS:メチルトリメトキシシラン「商品名KBM-13」、信越化学工業(株)製・DMS:ジメチルジメトキシシラン「商品名KBM-22」、信越化学工業(株)製
・EPCHS:(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「商品名KBM-303」、信越化学工業(株)製
・TFPS:トリフルオロプロピルトリメトキシシラン「商品名KBM-7103」、信越化学工業(株)製
・APTES:3-アミノプロピルトリエトキシシラン「商品名KBE-903」、信越化学工業(株)(株)製
・APTMS:3-アミノプロピルトリメトキシシラン「商品名KBM-903」、信越化学工業(株)製
・AEAPTMS:N-2-(アミノエチル)―3-アミノプロピルトリメトキシシラン「商品名KBM-603」、信越化学工業(株)製
・AEAPMDMS:N-2-(アミノエチル)―3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン「商品名KBM-602」、信越化学工業(株)製
【0073】
(フリーシランの結合状態の測定)
本発明の水性シリカゾルは、含有するフリーシランの形態によりシリカ粒子の安定性向上効果がより期待できる。フリーシランの形態は15mlの遠心式フィルターユニット 商品名アミコンウルトラー15(メルク(株))に水性シリカゾル6gを投入し、2770Gの遠心力で20分遠心処理し、ユニット下部に排出されたフリーシランを含む液体をSi-NMRにより分析し、T構造またはD構造の含有割合を算出することで解析した。
実施例2、9、10、13、14についてT構造を測定し表9に測定結果を示した。実施例12についてD構造を測定し表10に測定結果を示した。
【0074】
【0075】
(結合シランの結合状態の測定)
本発明の水性シリカゾルは、シラン化合物の一部がシリカ粒子の表面に結合することでシリカ粒子の安定性向上効果がより期待できる。結合シランの形態は(フリーシランの除去)で得られた液体をSi-NMRにより分析し、Q構造の割合を算出することで解析した。
実施例2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および比較例1、7、8についてQ構造を測定し表11に測定結果を示した。
【0076】
【0077】
(水蒸気吸着量から算出した比表面積/窒素ガス吸着量から算出した比表面積)
本発明の水性シリカゾルは、シリカ粒子表面がシラノール基から官能基を有するシラン化合物に置き換わっている事でシリカ粒子の安定性向上効果がより期待できる。シリカ粒子への水蒸気吸着量から算出した比表面積を窒素ガス吸着量から算出した比表面積で割った値、(水蒸気吸着量から算出した比表面積)/(窒素ガス吸着量から算出した比表面積)はシリカ粒子表面がシラノール基から官能基を有するシラン化合物に置き換わっていることを示す。(水蒸気吸着量の測定)および(窒素ガス吸着量の測定)の手順に沿って、水蒸気吸着量および窒素ガス吸着量を分析した。
実施例1、2、5、7、8、13、14、および比較例1、3、7、8について水蒸気吸着量、窒素ガス吸着量を測定し、(水蒸気吸着量から算出した比表面積)/(窒素ガス吸着量から算出した比表面積)にてシラン化合物処理後の値をシラン化合物処理前の値で割った値について、表12に測定結果を示した。
【0078】