(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149785
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135321
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2019106566の分割
【原出願日】2019-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】石川 悠湖
(57)【要約】
【課題】歯茎への優しい当たり心地を確保しつつ、清掃力も清掃実感も損なわない歯ブラシを提供する。
【解決手段】歯ブラシは、植毛面に植毛された複数の毛束を備える。複数の毛束は、植毛面上において、軸方向及び軸方向に直交する幅方向に配列される。植毛面は、中央領域と、幅方向に沿って中央領域の一方の側に配置される第1外側領域と、幅方向に沿って中央領域の他方の側に配置される第2外側領域とを含む。複数の毛束には、より硬い毛からなる第1毛束と、より柔らかい毛からなる第2毛束とが含まれる。第1外側領域及び第2外側領域では、いずれにおいても、第1毛束及び第2毛束の合計に対する第2毛束の割合が、中央領域においてよりも高い。第1外側領域及び第2外側領域では、いずれにおいても、第1毛束が少なくとも1つ配置され、軸方向の両端部には、第2毛束が配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のハンドル部と、
前記ハンドル部の軸方向の先端部に連結され、植毛面を有するヘッド部と、
前記植毛面に植毛された複数の毛束と、
を備え、
前記複数の毛束は、前記植毛面上において、前記軸方向及び前記軸方向に直交する幅方向に配列され、
前記植毛面は、略矩形状の第1中央領域と、前記第1中央領域の前側に隣接する略台形状の前側領域と、前記第1中央領域の後側に隣接する略逆台形状の後側領域とを有し、
前記第1中央領域は、
前記幅方向に沿って前記略矩形状の第2中央領域と、
前記幅方向に沿って前記第2中央領域の一方の側に配置される第1外側領域と、
前記幅方向に沿って前記第2中央領域の他方の側に配置される第2外側領域とを含み、
前記複数の毛束には、硬い毛からなる第1毛束と、柔らかい毛からなる第2毛束とが含まれ、
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束及び前記第2毛束の合計に対する前記第2毛束の割合が、前記第2中央領域においてよりも高く、
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束が少なくとも1つ配置され、
前記前側領域及び前記後側領域には、前記第2毛束が配置される、
歯ブラシ。
【請求項2】
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束及び前記第2毛束の合計に対する前記第1毛束の割合は、50%以下である、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束が、前記軸方向の中央部に配置される、
請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、少なくとも2列の毛束列が配置され、当該少なくとも2列の毛束列は、前記幅方向に並び、各々、前記軸方向に並ぶ複数の毛束から構成される、
請求項1から3のいずれかに記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記幅方向に最も外側の前記毛束列には、前記第1毛束が含まれない、
請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、毛束列が2列のみ配置され、当該2列の毛束列は、前記幅方向に並び、各々、前記軸方向に並ぶ複数の毛束から構成される、
請求項1から5のいずれかに記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束が1つのみ配置される、
請求項1から6のいずれかに記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯槽膿漏等により歯茎が炎症を起こしている場合等には、歯茎の損傷を避けるため、柔らかい毛を有する歯ブラシが好ましく使用される。しかし、このような歯ブラシでは、毛腰が弱いため、歯垢を除去する清掃力が不十分となり、さらには清掃実感も十分に得られない。
【0003】
特許文献1は、歯ブラシのヘッド部の植毛面の中央領域に、より硬い毛からなる毛束を配列するとともに、中央領域よりも左右方向に外側の領域に、柔らかい毛からなる毛束を配列した歯ブラシを開示している。この歯ブラシによれば、外側の毛束列で歯面や歯茎のマッサージ効果を確保しつつ、内側の毛束列で清掃力を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の歯ブラシでは、外側の毛束列を歯面や歯茎に沿ってスライドさせるように動かしたとき、外側の毛束列は柔らかいため、スライド方向に沿って倒れてしまう。これでは、外側の毛束列により、歯茎への優しい当たり心地を確保できたとしても、歯面や歯茎に毛束がしっかりと接触せずに清掃力が低下し、さらには清掃実感も損なわれ得る。
【0006】
本発明は、歯茎への優しい当たり心地を確保しつつ、清掃力も清掃実感も損なわない歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る歯ブラシは、棒状のハンドル部と、前記ハンドル部の軸方向の先端部に連結され、植毛面を有するヘッド部と、前記植毛面に植毛された複数の毛束と、を備える。前記複数の毛束は、前記植毛面上において、前記軸方向及び前記軸方向に直交する幅方向に配列される。前記植毛面は、中央領域と、前記幅方向に沿って前記中央領域の一方の側に配置される第1外側領域と、前記幅方向に沿って前記中央領域の他方の側に配置される第2外側領域とを含む。前記複数の毛束には、より硬い毛からなる第1毛束と、より柔らかい毛からなる第2毛束とが含まれる。前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束及び前記第2毛束の合計に対する前記第2毛束の割合が、前記中央領域においてよりも高い。前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束が少なくとも1つ配置され、前記軸方向の両端部には、前記第2毛束が配置される。
【0008】
本発明の第2観点に係る歯ブラシは、第1観点に係る歯ブラシであって、前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束及び前記第2毛束の合計に対する前記第1毛束の割合は、50%以下である。
【0009】
本発明の第3観点に係る歯ブラシは、第1観点又は第2観点に係る歯ブラシであって、前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束が、前記軸方向の中央部に配置される。
【0010】
本発明の第4観点に係る歯ブラシは、第1観点から第3観点のいずれかに係る歯ブラシであって、前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、少なくとも2列の毛束列が配置され、当該少なくとも2列の毛束列は、前記幅方向に並び、各々、前記軸方向に並ぶ複数の毛束から構成される。
【0011】
本発明の第5観点に係る歯ブラシは、第4観点に係る歯ブラシであって、前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記幅方向に最も外側の前記毛束列には、前記第1毛束が含まれない。
【0012】
本発明の第6観点に係る歯ブラシは、第1観点から第5観点のいずれかに係る歯ブラシであって、前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、毛束列が2列のみ配置され、当該2列の毛束列は、前記幅方向に並び、各々、前記軸方向に並ぶ複数の毛束から構成される。
【0013】
本発明の第7観点に係る歯ブラシは、第1観点から第6観点のいずれかに係る歯ブラシであって、前記第1外側領域及び前記第2外側領域では、いずれにおいても、前記第1毛束が1つのみ配置される。
【発明の効果】
【0014】
上記観点によれば、植毛面に、より硬い毛からなる第1毛束と、より柔らかい毛からなる第2毛束とが植毛される。また、植毛面上の幅方向に両側の外側領域(第1外側領域及び第2外側領域)では、いずれにおいても、中央領域に比べ、第1毛束及び第2毛束の合計に対する第2毛束の割合が高い。そのため、外側領域の毛束は全体として、比較的柔らかく構成される。また、外側領域の軸方向の両端部には、第2毛束が配置される。よって、外側領域の毛束列が、歯面(歯頚部を含む。以下、同様。)や歯茎に沿ってスライドするようにブラッシングするとき、まず、当該毛束列に含まれる、スライド方向の先端に位置するより柔らかい第2毛束が優しく歯面や歯茎に接触する。そのため、その後、当該毛束列全体が、滑らかにスライドを開始する。よって、このようなブラッシング中、歯茎に過度の力が加えられることがない。また、第1外側領域及び第2外側領域のいずれにおいても、より硬い第1毛束が少なくとも1つ配置される。その結果、外側領域の毛束列が歯面や歯茎に沿ってスライドするようにブラッシングするとき、より硬い第1毛束が抵抗となり、より柔らかい第2毛束がスライド方向に倒れにくくなり、起立状態を保ちやすくなる。よって、外側領域の毛束列により、歯面や歯茎をしっかりと磨くことができる。以上より、歯茎への優しい当たり心地を確保しつつ、清掃力も清掃実感も損なわない歯ブラシが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯ブラシの斜視図。
【
図2】
図1の歯ブラシに含まれるヘッド部及びこれに取り付けられた複数の毛束の平面図。
【
図6A】変形例に係るヘッド部及びこれに取り付けられた複数の毛束の平面図。
【
図6B】別の変形例に係るヘッド部及びこれに取り付けられた複数の毛束の平面図。
【
図6C】さらに別の変形例に係るヘッド部及びこれに取り付けられた複数の毛束の平面図。
【
図6D】さらに別の変形例に係るヘッド部及びこれに取り付けられた複数の毛束の平面図。
【
図6E】さらに別の変形例に係るヘッド部及びこれに取り付けられた複数の毛束の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る歯ブラシについて説明する。
【0017】
<1.歯ブラシの概要>
図1に示すように、本実施形態に係る歯ブラシ100は、棒状のハンドル部1と、ハンドル部1の軸方向の先端部に連結されたヘッド部2と、ヘッド部2の植毛面A1に植毛された複数の毛束3とを備える。なお、特に断らない限り、本明細書の説明において、前後、左右及び上下は、
図1及び
図2の通りに定義される。前後方向は、ハンドル部1の軸方向に一致し、ヘッド部2が連結されている先端部側が「前」であり、その反対側が「後」である。左右方向は、植毛面A1に平行で、かつ、ハンドル部1の軸方向に直交する方向であり、植毛面A1に向かって左側が「左」であり、右側が「右」である。上下方向は、前後方向及び左右方向に直交する方向であり、毛束3の根元側が「下」であり、毛束3の先端側が「上」である。以下、各部位1、2及び3について、詳細に説明する。
【0018】
<1-1.ハンドル部>
ハンドル部1は、使用者が手で握るための棒状の基部11と、基部11とヘッド部2とを連結する連結部12とを備えており、これらの部11及び12は、一体的に形成されている。連結部12は、基部11よりも細い棒状に形成されている。基部11の先端部の上面、下面及び側面には、使用者が指を載せるための載置部13が形成されている。載置部13は、指の滑り止め効果を発揮するように凹凸状に形成することができ、この部分には、ゴム等を配置することができる。
【0019】
ハンドル部1の材質は、特に限定されないが、典型的には、上述したゴム等が配置される部分を除き、合成樹脂により形成することができる。
【0020】
<1-2.ヘッド部>
図2は、ヘッド部2及びこれに取り付けられた複数の毛束3の平面図であり、
図3はその側面図であり、
図4はその正面図である。これらの図に示すように、ヘッド部2は、上下方向に薄い板状に形成されており、その上面側に植毛面A1を有する。植毛面A1は、本実施形態では、実質的に平面状である。ヘッド部2の上面である植毛面A1は、前後方向に長い略八角形状である。植毛面A1の輪郭は、先端辺21、第1右側辺22、第1左側辺23、第2右側辺24、第2左側辺25、第3右側辺26、及び第3左側辺27を有する。
【0021】
先端辺21は、ヘッド部2の最も先端の短い辺であり、やや丸みを帯びつつ、左右方向に延びている。先端辺21の両端には、それぞれ、第1右側辺22及び第1左側辺23が連結されており、これらの辺22及び23は、先端辺21から後方に向かうにつれて互いに離れるように延びている。第2右側辺24及び第2左側辺25は、それぞれ、第1右側辺22及び第1左側辺23の後端に連結されており、互いに平行に、前後方向に平行に延びている。第3右側辺26及び第3左側辺27は、それぞれ、第2右側辺24及び第2左側辺25の後端に連結されている。これらの辺27及び26は、後方に向かうにつれて互いに近接するように延びており、それぞれ、ハンドル部1の先端の左右方向の両端に連結されている。
【0022】
以上により、植毛面A1は、略矩形状の中央領域A11と、中央領域A11の前側に隣接する略台形状の前側領域A12と、中央領域A11の後側に隣接する略逆台形状の後側領域A13とを有する。また、別の観点から植毛面A1を分割すると、植毛面A1は、左右方向の中央領域A21と、左右方向に沿って中央領域A21の一方の側に配置される第1外側領域A22と、左右方向に沿って中央領域A21の他方の側に配置される第2外側領域A23とを含む。
図2には、これらの領域A21~A23の境界線が、一点鎖線で示されている。第1外側領域A22は、中央領域A21の左側に隣接し、植毛面A1の左端縁に接する。第2外側領域A23は、中央領域A21の右側に隣接し、植毛面A1の右端縁に接する。
【0023】
ヘッド部2の植毛面A1には、毛束3が植毛される複数の植毛穴28が形成されている(
図3参照)。なお、
図3の側面視において、本来、植毛穴28は視認できないが、同図では便宜上、植毛穴28の位置が点線で示されている。植毛穴28は、植毛面A1上において前後方向及び左右方向に配列されている。植毛穴28の形状は、特に限定されず、例えば、真円形、楕円形、多角形等とすることができる。本実施形態では、植毛面A1上の複数の植毛穴28の形状及び径は、いずれも実質的に同一である。各植毛穴28の径は、例えば、0.5mm~2mmとすることができる。なお、ここでいう植毛穴28の形状とは、平面視における形状であり、ここでいう植毛穴28の径とは、平面視における植毛穴28の輪郭の最大径である。
【0024】
ヘッド部2の幅Wは、口腔内でのヘッド部2の取り回しにおいて不具合が生じない限り、特に限定されないが、好ましくは、10mm~20mmであり、より好ましくは、13mm~17mmであり、さらに好ましくは、14mm~16mmである。ヘッド部2の幅Wが大きくなる程、植毛面A1上において左右方向に並べて植毛できる毛束の列が多くなり、一度に大きい面積の清掃を行うことができる。例えば、植毛面A1上において、左右方向に好ましくは5列以上、より好ましくは6列以上の毛束3を配置することができる。なお、ヘッド部2の幅とは、ヘッド部2の左右方向の最大幅を意味し、本実施形態では、第2右側辺24及び第2左側辺25との間隔に相当する。
【0025】
ヘッド部2の材質は、特に限定されないが、典型的には、合成樹脂により形成することができる。ヘッド部2は、ハンドル部1と同じ材料から一体的に形成することができる。
【0026】
<1-3.毛束>
ヘッド部2の植毛面A1には、複数の毛束3が植毛されている。各毛束3は、多数本の毛の集合体である。これらの毛束3は、植毛面A1上の複数の植毛穴28に1束ずつ植毛されている。
【0027】
図2に示すように、植毛面A1上では、複数の毛束3が前後方向及び左右方向に二次元状に配列され、それにより、左右方向に並ぶ複数の毛束列を形成している。ここでいう「列」は、前後方向に並ぶ要素の列を意味し、各毛束列は、前後方向に並ぶ複数の毛束3から構成される。なお、毛束列は必ずしも前後方向に一直線であるとは限らず、視覚的に列と認識できるものまでを含む。
【0028】
本実施形態では、
図2に示すように、植毛面A1に6列の毛束列が配列されている。より具体的には、植毛面A1の左右方向の中央領域A21において、2列の毛束列(以下、内側毛束列ということがある)L1が前後方向に延びている。また、これらの2列の内側毛束列L1を左右方向の両側から挟むように、別の毛束列(以下、中間毛束列ということがある)L2が前後方向に延びている。中間毛束列L2は、内側毛束列L1の左右に1列ずつ、計2列配置される。また、これらの2列の中間毛束列L2を左右方向の両側から挟むように、さらに別の毛束列(以下、外側毛束列という)L3が前後方向に延びている。外側毛束列L3は、中間毛束列L2の左右に1列ずつ、計2列配置される。外側毛束列L3は、全ての毛束列の中で左右方向の最も外側に配置されている。よって、2列の外側毛束列L3は、それぞれ、第2右側辺24及び第2左側辺25の近傍においてこれらに沿って延びている。第1外側領域A22には、中間毛束列L2及び外側毛束列L3が1列ずつ配置されており、第2外側領域A23にも、中間毛束列L2及び外側毛束列L3が1列ずつ配置されている。
【0029】
本実施形態では、上述の通り、植毛面A1が前後方向に長い略八角形状であるため、内側毛束列L1及び中間毛束列L2は、前後方向の全長に亘って、前後方向に平行には延びていない。より具体的には、植毛面A1上において、略矩形状の中央領域A11では、内側毛束列L1、中間毛束列L2及び外側毛束列L3は、全て前後方向に平行に延びている。しかし、内側毛束列L1及び中間毛束列L2は、前側領域A12においては、中央領域A11の前端から左右方向に外側に折れ曲がっており、後側領域A13においては、中央領域A11の後端から左右方向に外側にシフトしている。また、このようにして、前側領域A12及び後側領域A13において形成される2列の内側毛束列L1の隙間には、当該隙間を埋めるように、別の複数の毛束3が配置されている。
【0030】
図5は、毛束3に含まれる1本の毛の側面図である。同図に示す通り、本実施形態では、植毛面A1に植毛されている各毛は、先端部(上端部)32が多数本の分岐毛により構成される。すなわち、毛束3に含まれる各毛は、植毛面A1から起立する1本の基部31と、基部31の上端から分岐するように延びる多数本の分岐毛からなる先端部32とを有する。これに限定されないが、1本の基部31から分岐する分岐毛の本数は、典型的には、2本~7本であり、より好ましくは、3本~5本である。先端部32における各分岐毛は、基部31よりも細いため、歯間や歯周ポケット等の狭い隙間に入り込み、口内の清掃力を高めることができる。また、先端部32が多数の分岐毛を有する構造の場合、分岐していない場合と比べ、歯面に当たる毛の面積が大きくなるため、清掃力が高くなる。さらに、分岐毛は、歯磨き粉を保持する機能も発揮し得る。
【0031】
本実施形態では、植毛面A1に植毛されている全ての毛の長さHは、概ね均一である。ただし、ばらつきは存在する。毛の長さHは、特に限定されないが、その平均値は、好ましくは、8mm~13mm、より好ましくは9mm~13mm、さらに好ましくは10mm~12mである。なお、毛の長さHは、植毛面A1から毛の先端までの長さである。
【0032】
植毛面A1に植毛されている毛束3には、複数の種類の毛束が含まれる。本実施形態では、毛束3には、2種類の毛束が含まれ、より具体的には、より硬い毛束である第1毛束3aと、より柔らかい毛束である第2毛束3bとが含まれる。
図2においては、第1毛束3aは白で、第2毛束3bはこれよりも濃い色で示されている。後述する
図6A~
図6Eにおいても、同様である。ただし、これは説明の便宜のためであり、実際には、全ての毛束を同じ色に着色することもできるし、
図2及び
図6A~
図6Eに示されるように、毛束の種類に応じて、異なる色で着色することもできる。
【0033】
なお、ここでいう「硬い」とは、毛腰が強いことを言い、第1毛束3aは、歯や歯茎に触れたときに、歯垢等の口内の汚れをしっかりと除去することができる。一方、ここでいう「柔らかい」とは、毛腰が弱いことを言い、第2毛束3bは、歯や歯茎に触れたときに、優しい当たり心地を提供することができる。すなわち、第1毛束3aは、ブラッシング時の清掃力及び清掃実感を高めるのに寄与する。一方、第2毛束3bは、歯茎へのマッサージ効果が高く、ブラッシング時に歯茎の損傷を避けることができる。
【0034】
本実施形態では、第2毛束3bに含まれる各毛は、第1毛束3aに含まれる各毛よりも細い。第2毛束3bに含まれる各毛の径は、以上のようなマッサージ効果を発揮することができる限り、特に限定されないが、好ましくは、3mil(0.0762mm)~7mil(0.1778mm)であり、より好ましくは、4mil(0.1016mm)~6mil(0.1524mm)である。一方、第1毛束3aに含まれる各毛の径は、十分な清掃力及び清掃実感を得られる限り、特に限定されないが、好ましくは、4mil(0.1016mm)~10mil(0.254mm)であり、より好ましくは、5mil(0.127mm)~9mil(0.2286mm)である。なお、歯ブラシ100に使用される毛には、例えば、上述した先端部32が分岐した分岐毛からなる毛の他、全長に亘って概ね均一な径を有するフラット毛、先端に近づくにつれて細くなるテーパー毛、先端部が丸みを帯びているラウンド毛等、様々な種類があるが、ここでいう毛の径は、毛の根元部分で計測される径である。また、ここでいう毛の径とは、毛の長手方向に直交する断面の最大径である。
【0035】
本実施形態では、第2毛束3bに含まれる毛束当たりの毛の本数は、第1毛束3aに含まれる毛束当たりの毛の本数よりも多い。第2毛束3bに含まれる毛束当たりの毛の本数は、特に限定はされないが、好ましくは、60本~200本であり、より好ましくは、80本~120本である。第1毛束3aに含まれる毛束当たりの毛の本数も、特に限定はされないが、好ましくは、40本~150本であり、より好ましくは、60本~100本である。なお、ここでいう毛束当たりの毛の本数とは、植毛面A1から突出する毛束当たりの毛の本数である。
【0036】
図2に示すように、本実施形態では、植毛面A1上において左右方向の中央領域A21に配置される内側毛束列L1には、第2毛束3bは含まれず、第1毛束3aのみが含まれる。また、前側領域A12及び後側領域A13において2列の内側毛束列L1の間に配置される毛束3も、全て第1毛束3aである。一方、植毛面A1上において左右方向の最も外側に配置される外側毛束列L3には、第1毛束3aは含まれず、第2毛束3bのみが含まれる。また、内側毛束列L1と外側毛束列L3との間に挟まれる中間毛束列L2は、少量の第1毛束3aを含むものの、主として第2毛束3bから構成される。より具体的には、各中間毛束列L2は、前後方向の中央部に第1毛束3aを1つ含むとともに、この第1毛束3aを前後方向の両側から挟むように配置される第2毛束3bを含む。各中間毛束列L2の中で、第2毛束3bは、第1毛束3aの前後に3つずつ、計6つ配置され、前後方向に沿って最も外側に配置される。
【0037】
第1毛束3a及び第2毛束3bが以上のように配列されることにより、本実施形態では、第1外側領域A22及び第2外側領域A23では、いずれにおいても、第1毛束3aが1つ配置され、さらに当該第1毛束3aは、前後方向の中央部に配置される。また、第1外側領域A22及び第2外側領域A23では、いずれにおいても、前後方向の両端部には、第2毛束3bが配置される。さらに、第1外側領域A22及び第2外側領域A23では、いずれにおいても、第1毛束3aの数及び第2毛束3bの数の合計に対する第2毛束3bの数の割合(以下、第2毛束比率という)が、中央領域A21においてよりも高くなる。また、内側毛束列L1、中間毛束列L2、及び外側毛束列L3は、この順に、第2毛束比率が高くなる。よって、左右方向の内側の毛束3は硬く、左右方向の外側の毛束3は柔らかくなる。
【0038】
ここで、第1毛束3aの数及び第2毛束3bの数の合計に対する第1毛束3aの数の割合を、第1毛束比率と定義する。このとき、第1外側領域A22及び第2外側領域A23における第1毛束比率は、いずれも、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特により好ましい。一方、中央領域A21における第1毛束比率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましく、95%以上であることが最も好ましい。
【0039】
毛束3の毛を構成する材質は、特に限定されないが、例えば、飽和ポリエステル樹脂、ナイロン等にすることができる。
【0040】
<2.歯ブラシの使用方法>
以上のように構成される歯ブラシ100の使用方法について、以下に説明する。
【0041】
まず、歯の咬合面を磨くときを考える。咬合面を磨くときには、毛束3の全体の上面を咬合面に当てながら、歯ブラシ100を前後方向にスライドさせる。これにより、左右方向の中央領域A21に位置する内側毛束列L1が、しっかりと咬合面に接触する。このとき、第1毛束3aのみからなる内側毛束列L1は、比較的硬く構成されており、清掃力が高いため、咬合面に付着した歯垢等の汚れをしっかりと除去することができる。また、このとき、しっかりとした清掃実感も得ることができる。
【0042】
次に、歯の歯面を清掃するときを考える。歯面を清掃するときには、歯面や歯茎に毛束3の全体の側面を当てながら、歯ブラシ100を前後方向にスライドさせる。これにより、第1外側領域A22又は第2外側領域A23に含まれる毛束列L2及びL3、特に左右方向に最も外側に位置する外側毛束列L3が、歯面や歯茎に接触する。このとき、第2毛束3bのみからなる外側毛束列L3は、比較的柔らかく構成されているため、歯茎に優しく接触する。また、左右方向に外側毛束列L3の内側に隣接する中間毛束列L2も、主として第2毛束3bを含むため、外側毛束列L3ほどではないが、比較的柔らかく構成されている。よって、第1外側領域A22又は第2外側領域A23に含まれる毛束3の全体により、歯面や歯茎を優しくマッサージするかのように、ブラッシングすることができる。
【0043】
なお、第1外側領域A22又は第2外側領域A23に含まれる毛束列L2及びL3が、歯面や歯茎に沿ってスライドするようにブラッシングするとき(以下、このようなブラッシングを、側面ブラッシングということがある)、まず、当該毛束列L2及びL3に含まれる、スライド方向の先端に位置するより柔らかい第2毛束3bが、優しく歯面や歯茎に接触する。そのため、その後、毛束列L2及びL3全体が、滑らかにスライドを開始する。よって、側面ブラッシング中に、歯茎に過度の力が加えられることがない。以上により、側面ブラッシング時には、歯茎を労わり、保護しつつ、歯茎や歯面をマッサージするかのように、清掃することができる。また、側面ブラッシング時には、外側毛束列L3の先端部32が歯周ポケットに入り込み、汚れを掻き出すことができる。
【0044】
ところで、上記の通り、第1外側領域A22及び第2外側領域A23の中間毛束列L2は、いずれも、その前後方向の端部以外の位置に、より硬い第1毛束3aを含んでいる。よって、側面ブラッシング時には、この第1毛束3aが抵抗となり、中間毛束列L2に含まれる、この第1毛束3aを前後に挟む第2毛束3bが、スライド方向に倒れにくくなり、起立状態を保ちやすくなる。また、中間毛束列L2のこのような動きにつれて、外側毛束列L3に含まれる第2毛束3bも、起立状態を保ちやすくなる。よって、外側毛束列L3及び中間毛束列L2により、歯面や歯茎をしっかりと磨くことができる。以上より、歯ブラシ100によれば、歯茎への優しい当たり心地を確保しつつ、清掃力も清掃実感も維持することができる。
【0045】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例の要旨は、適宜組合せ可能である。
【0046】
<3-1>
中央領域A21、第1外側領域A22及び第2外側領域A23に含まれる毛束列の数は、上記したものに限られない。例えば、中央領域A21に含まれる毛束列は1列のみでもよいし、3列以上でもよい。また、第1外側領域A22に含まれる毛束列も1列のみでもよいし、3列以上でもよい。また、第2外側領域A23に含まれる毛束列も1列のみでもよいし、3列以上でもよい。ただし、第1外側領域A22及び第2外側領域A23においては、同数の毛束列が配列されていることが好ましい。
【0047】
<3-2>
上記実施形態では、植毛面A1に植毛されている全ての毛が、先端部32が多数本の分岐毛からなる分岐構造を有していた。しかしながら、植毛面A1に植毛されている毛は、分岐構造を有する毛に限らず、例えば、上述したフラット毛、テーパー毛、ラウンド毛等であってもよいし、このような様々な種類の毛の中から複数の種類の毛を混合して使用してもよい。このとき、異なる種類の毛を1つの毛束の中で混在させることもできるし、1つの毛束の中では同じ種類の毛を使用し、異なる毛束に異なる種類の毛を使用してもよい。
【0048】
<3-3>
中央領域A21、第1外側領域A22及び第2外側領域A23における第1毛束3a及び第2毛束3bの配列は、上述したものに限られない。例えば、第1外側領域A22及び第2外側領域A23に含まれる中間毛束列L2が、
図6A及び
図6Bに示すように、第1毛束3aを複数含んでいてもよい。また、
図6Cに示すように、外側毛束列L3が第1毛束3aを含んでいてもよい。特に、
図6Cの例のように、外側毛束列L3に含まれる第1毛束3aは、前後方向の中央部に配置されていることが好ましく、また、中間毛束列L2に含まれる第1毛束3aの左右に隣接するように配置されていることが好ましい。また、
図6D及び
図6Eに示すように、内側毛束列L1が少量の第2毛束3bを含んでいてもよい。
【0049】
なお、第1外側領域A22及び第2外側領域A23においては、複数の第1毛束3aが前後方向に隣接して並んでいてもよいが、
図2及び
図6A~
図6Eに示す例のように、前後方向に隣接して並んでいない方がよい。後者の場合、側面ブラッシング時に、第2毛束3bが第1毛束3aの存在により撓みにくくなり、清掃実感が向上するためである。
【符号の説明】
【0050】
100 歯ブラシ
1 ハンドル部
2 ヘッド部
3 毛束
3a 第1毛束
3b 第2毛束
31 基部
32 先端部
A1 植毛面
L1 内側毛束列
L2 中間毛束列
L3 外側毛束列