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特開2024-14979ポリアルキレンオキシド及び液体洗剤用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014979
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ポリアルキレンオキシド及び液体洗剤用組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20240125BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C11D3/37
C08G65/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023196565
(22)【出願日】2023-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西能 直輝
(72)【発明者】
【氏名】古田 理紗
(57)【要約】
【課題】本発明は、糸曳が抑制されたポリアルキレンオキシドを提供することを目的とする。
【解決手段】分子量が400万~1000万である成分の割合が20質量%以下である、ポリアルキレンオキシド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が400万~1000万である成分の割合が20質量%以下である、ポリアルキレンオキシド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアルキレンオキシドを含む、液体洗剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレンオキシド及び液体洗剤用組成物に関する。より詳しくは、ポリエチレンオキシド及びそのポリエチレンオキシドを含む液体洗剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤用組成物において、増粘目的としてポリアルキレンオキシドは使用されている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-532611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリアルキレンオキシドは水に溶かすと曳糸を生じさせるため、従来のポリアルキレンオキシドを含む液体洗剤としては使い勝手が悪く、糸曳が抑制されたポリアルキレンオキシドが求められていた。
【0005】
本発明は、糸曳が抑制されたポリアルキレンオキシドおよび液体洗剤用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の各項に記載のポリアルキレンオキシド及び液体洗剤用組成物を提供する。
項1
分子量が400万~1000万である成分の割合が20質量%以下である、ポリアルキレンオキシド。
項2
請求項1に記載のポリアルキレンオキシドを含む、液体洗剤用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、水に溶かした時に、糸曳が抑制されたポリアルキレンオキシドを提供する。また、そのポリアルキレンオキシドを用いた液体洗剤用組成物も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0009】
[ポリアルキレンオキシド]
本発明のポリアルキレンオキシドは、分子量が400万~1000万である成分の割合が20質量%以下であるポリアルキレンオキシドである。
【0010】
ポリアルキレンオキシドの分子量が400万~1000万である成分の割合は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムから、横軸に分子量(対数値)、縦軸に質量濃度分率の積算値とした積分分子量分布曲線を作成し、以下の計算式で算出される。
成分の割合=(分子量1000万での質量濃度分率の積算値)-(分子量400万での質量濃度分率の積算値)
【0011】
上述のゲル浸透クロマトグラフィーは、具体的には、ポリアルキレンオキシド0.02gを0.5mM酢酸アンモニウム水溶液40mLに加えて3時間かけて溶解させた溶液を、0.8μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、得られたろ液をゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」、ガードカラム:TSKgel guardcolumn PWXL)により測定する。この測定では、検出器を示差屈折率計、サイズ排除カラムをTSKgel G6000PWXL、TSKgel GMPWXL及びTSKgel G3000PWXLとし、移動相を0.5mM酢酸アンモニウム水溶液、流速を0.5mL/min、カラム温度を45℃、示差屈折率計温度を45℃、インジェクション量を500μL、測定時間を90分間とする。これとは別に、重量平均分子量が既知のポリエチレンオキシド標準試料を用いて同様に測定して検量線を作成し、この検量線に基づいてポリエチレンオキシドの分子量分布を得る。
【0012】
ポリアルキレンオキシドとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドがある。これらのポリアルキレンオキシドの中でも、本発明においては、ポリエチレンオキシドが特に好ましい。
【0013】
また、アルキレンオキシドと他のモノマーとを共重合させて得たポリアルキレンオキシドも本発明に用いることができる。
【0014】
本発明のポリアルキレンオキシドは、公知の方法により製造することができる。その製造方法は、アルカリもしくは金属触媒の存在下でアルキレンオキシドを重合または共重合させる方法が挙げられる。
【0015】
ポリアルキレンオキシドの製造で使用するアルキレンオキシドとしては、例えば、脂肪族アルキレンオキシドが挙げられ、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドが挙げられ、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドが特に好ましい。
【0016】
ポリアルキレンオキシドの製造で使用する触媒の種類は、公知のポリアルキレンオキシドの製造方法で使用されている触媒を広く使用することができる。具体的には、亜鉛等の金属触媒を挙げることができる。触媒の使用量は、たとえば、公知のポリアルキレンオキシドの製造方法と同様の範囲とすることができる。
【0017】
アルキレンオキシドの重合反応を行うにあたって、連鎖移動剤を使用することもできる。これにより、ポリアルキレンオキシドの分子量が調節されやすい。連鎖移動剤の種類は、アルキレンオキシドの重合反応で使用され得る公知の連鎖移動剤を広く使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等の炭素数1~5のアルコール化合物を連鎖移動剤として挙げることができる。
【0018】
連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は例えば、アルキレンオキシドに対して0.002~0.3モル%とすることができる。
【0019】
アルキレンオキシドの重合反応を行うにあたって、必要に応じて溶媒を使用することができ、例えば、公知のポリアルキレンオキシドの製造方法で使用されている溶媒を広く使用することができる。
【0020】
アルキレンオキシドの重合反応の温度等の条件も特に限定されず、公知の条件と同様とすることができる。
【0021】
上記重合反応によって得られたポリアルキレンオキシドには、必要に応じて、活性エネルギー線を照射することができる。これにより、ポリアルキレンオキシドが分解し、分子量を所望の範囲に調節することができる。活性エネルギー線は、例えば、ガンマ線等の放射線、紫外線、X線、イオン線等が挙げられ、分子量を調節しやすい点で、ガンマ線であることが好ましい。
【0022】
活性エネルギー線を照射する条件は、例えば、ポリアルキレンオキシドの種類に応じて0.1~20kGyの範囲でガンマ線を照射することができ、比較的小さい放射線量のガンマ線の照射で十分である場合は、例えば、0.2~1kGy、好ましくは0.5~0.8kGyとすることができる。
【0023】
本発明のポリアルキレンオキシドは、水に溶かした時に糸曳が抑制されるため、洗剤用として用いられ、特に液体洗剤として用いられる。
【0024】
[液体洗剤用組成物]
本発明の液体洗剤用組成物は、ポリアルキレンオキシドを必須の成分として含む。その他にも、界面活性剤、水軟化剤、酵素、アルカリ剤、漂白剤、再汚染防止剤、泡調整剤、安定化剤、pH調整剤等を必要に応じて適宜含むことができる。
【0025】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に限定されず、公知の界面活性剤を使用してよい。例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル、アルキルエーテル硫酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、純石けん分(脂肪酸ナトリウム)が挙げられる。
【0026】
界面活性剤の配合割合は、洗剤組成物の全量に対して、10~50質量%が好ましい。
【0027】
(水軟化剤)
水軟化剤としては、アルミノけい酸塩、アクリル酸/マレイン酸系高分子が挙げられる。
【0028】
(酵素)
酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼが挙げられる。
【0029】
(アルカリ剤)
アルカリ剤としては、炭酸塩、ケイ酸塩、アルカノールアミンが挙げられる。
【実施例0030】
以下、例を示して本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0031】
(製造例1;亜鉛触媒の製造)
冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管及び撹拌機として翼径53mmの4枚の(45度傾斜)パドル翼を有する撹拌翼を備えた、内径80mm、500mL容の丸底フラスコ内を窒素置換した後、このフラスコ内に、n-ヘキサン87.1g及びジエチル亜鉛(EtZn)9.90gを加えた。フラスコの内温を20℃に維持しつつ、先端周速0.97m/秒(撹拌回転数350rpm)でフラスコ内を撹拌しながら第一段階として、エチルアルコール(EtOH)11.03g(0.240モル)を0.2g/分で滴下し、反応を行うことで反応液を得た。次いで、第二段階として、10℃まで冷却した前記反応液に、1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)6.49g(0.072モル)及びエチルアルコール13.27g(0.288モル)からなる混合液を0.2g/分で滴下した。滴下終了後、フラスコ内を30℃まで昇温してからさらに1時間反応させ、次いで、50℃まで昇温して1時間反応させた。その後、フラスコを80℃に加熱する蒸留により、未反応成分を除去した。蒸留後、フラスコ内部を室温まで放冷してから、n-ヘキサン52.4gを添加し、80℃に加熱することで2度目の蒸留を行った。この操作を更にもう1度行い、合計3度の蒸留を行った。その後冷却し、n-ヘキサン264gで希釈することで、亜鉛の含有割合が1.8質量%である亜鉛触媒297gを得た。
【0032】
(実施例1;ポリエチレンオキシドの製造)
滴下ロート、窒素ガス導入管及び撹拌機として翼径47mmのいかり型パドル翼を有する撹拌翼を備えた、内径94mm、1L容の耐圧反応容器内を十分に窒素置換した後、この耐圧反応容器内に、n-ヘキサン340gを入れ、このn-ヘキサン中に製造例1で得られた亜鉛触媒0.975g(亜鉛換算:0.0004モル)を均一に分散させて分散液を得た。この分散液に、t-ブタノール0.0729g(0.00098モル)とエチレンオキシド81g(1.84モル)とを加えてから、容器を密栓し、40℃に維持して撹拌しながら重合反応を行った。重合反応により得られた白色生成物を濾過して分離し、40℃で減圧乾燥してポリエチレンオキシド81.0gを得た。得られたポリエチレンオキシド40.0gに0.2kGyのガンマ線を照射することで、目的のポリエチレンオキシド40.0gを得た。GPCで測定した結果、ポリエチレンオキシドの分子量が400万~1000万である成分の割合が17.851質量%であった。
【0033】
(実施例2;ポリエチレンオキシドの製造)
t-ブタノールを0.00648g(0.000087モル)加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシド81.0gを得た。得られたポリエチレンオキシド40.0gに0.8kGyのガンマ線を照射することで、目的のポリエチレンオキシド40.0gを得た。GPCで測定した結果、ポリエチレンオキシドの分子量が400万~1000万である成分の割合が16.382質量%であった。
【0034】
(実施例3;ポリエチレンオキシドの製造)
t-ブタノールを0.00405g(0.000055モル)加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシド81.0gを得た。得られたポリエチレンオキシド40.0gに0.7kGyのガンマ線を照射することで、目的のポリエチレンオキシド40.0gを得た。GPCで測定した結果、ポリエチレンオキシドの分子量が400万~1000万である成分の割合が12.840質量%であった。
【0035】
[糸曳性の評価]
(1)~(4)の順で糸曳性の評価を行った。
(1)測定対象のポリエチレンオキシド5.0gをイオン交換水が495.0g入った1Lビーカーに添加し、ジャーテスターで350rpmで5分間攪拌した後、250rpmで175分間攪拌し、ポリエチレンオキシドを1.0質量%含有した水溶液を調製した。
(2)調製した水溶液100mLを100mLビーカーに移し、液温を25℃に恒温水槽で一定にして試験液とした。
(3)恒温槽で25℃に調温した直径10mmのSUS製の棒を試験液に4.7cm浸漬し、液面から真上に4cm引き上げ、引き上げた直後から、棒から液面に曳いた糸が切れるまでの時間をストップウオッチで手動で計測した。
(4)3の操作を3回繰り返し、平均値を糸曳時間とした。
【0036】
【表1】