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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149950
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】条件設定方法及び決定木の生成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 18/241 20230101AFI20241016BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241016BHJP
   B24B 27/06 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
G06F18/241
G06N20/00 130
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063144
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】梁 文華
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA03
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA06
3C158BA09
3C158CB01
3C158DA17
(57)【要約】
【課題】対象物の処理又は監視の条件を適切に設定することが可能な条件設定方法を提供する。
【解決手段】対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定方法であって、対象物の処理の監視時に取得される複数の監視項目の数値を含み、対象物の品質に基づいて分類されたデータセットを準備するデータ準備ステップと、データセットを用いた学習によって、監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定されたノードを含む決定木を生成する決定木生成ステップと、ノードにおいて設定されたしきい値に基づいて、対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定ステップと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定方法であって、
該対象物の処理の監視時に取得される複数の監視項目の数値を含み、該対象物の品質に基づいて分類されたデータセットを準備するデータ準備ステップと、
該データセットを用いた学習によって、該監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定されたノードを含む決定木を生成する決定木生成ステップと、
該ノードにおいて設定された該しきい値に基づいて、該対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定ステップと、を含むことを特徴とする条件設定方法。
【請求項2】
対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定方法であって、
該対象物の処理の監視時に取得される複数の監視項目の数値を含み、該対象物の品質に基づいて分類された第1データセットを準備するデータ準備ステップと、
該第1データセットを用いた学習によって、該監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第1ノードを含む第1決定木を生成する第1決定木生成ステップと、
該第1決定木のルートノードから不純度が所定の基準値以下であるリーフノードに至る経路に存在する該第1ノードに対応する該監視項目を該第1データセットから削除することによって第2データセットを生成する削除ステップと、
該第2データセットを用いた学習によって、該監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第2ノードを含む第2決定木を生成する第2決定木生成ステップと、
該第1ノード及び該第2ノードにおいて設定された該しきい値に基づいて、該対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定ステップと、を含むことを特徴とする条件設定方法。
【請求項3】
決定木の生成方法であって、
複数の項目の数値を含む第1データセットを準備するデータ準備ステップと、
該第1データセットを用いた学習によって、該項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第1ノードを含む第1決定木を生成する第1決定木生成ステップと、
該第1決定木のルートノードから不純度が所定の基準値以下であるリーフノードに至る経路に存在する該第1ノードに対応する該項目を該第1データセットから削除することによって第2データセットを生成する削除ステップと、
該第2データセットを用いた学習によって、該項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第2ノードを含む第2決定木を生成する第2決定木生成ステップと、を含むことを特徴とする決定木の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定方法、及び、該条件の設定に用いることが可能な決定木を生成する決定木の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたウェーハを分割して個片化することにより、デバイスを備えるデバイスチップが製造される。また、実装基板上に実装された複数のデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することにより、パッケージ基板が形成される。このパッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップを備えるパッケージデバイスが製造される。デバイスチップやパッケージデバイスは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハ、パッケージ基板等の被加工物を分割する際には、各種の加工装置(切削装置、レーザー加工装置、研削装置等)によって被加工物が加工される。例えば切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物に切削加工を施す切削ユニットとを備えている。切削ユニットはスピンドルを内蔵しており、スピンドルの先端部には環状の切削ブレードが装着される。被加工物をチャックテーブルで保持し、切削ブレードを回転させつつ被加工物に切り込ませることにより、被加工物が切削、分割される。
【0004】
なお、加工装置の各構成要素の不具合、加工工具のコンディションの変化、加工条件の設定不備等の様々な事情に起因して、被加工物には加工不良が発生することがある。例えば、切削装置で被加工物を切削する際には、移動機構の不具合によるチャックテーブルの移動速度(加工送り速度)の変動、切削ブレードの摩耗や欠け、切削ブレードへの加工液の供給不備等が原因で、切削ブレードが蛇行して被加工物に意図しない切削が施されたり、被加工物に欠け(チッピング)が生じたりすることがある。これにより、被加工物に加工不良が発生し、加工品質が低下する。
【0005】
そこで、加工装置で被加工物を加工する際には、加工装置によって取得、収集される各種の情報(監視情報)を監視することによって、加工装置の不備の発見や加工不良の発生の予測が行われることがある。例えば、切削装置で被加工物を切削する際には、スピンドルを回転させるモータの電流値、切削ユニットの振動、加工液の温度及び流量等の監視情報が常時測定され、監視される(特許文献1参照)。監視情報を監視することにより、加工装置の不備や加工不良の予兆を早期に発見できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6925771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各種の処理装置(加工装置、洗浄装置、検査装置、搬送装置等)で対象物の処理(加工、洗浄、検査、搬送等)が行われる際には、対象物が所定の処理条件で処理されるとともに、前述のように対象物の処理を監視するための各種の監視情報が取得、収集される。そして、監視情報が所定の監視条件を満たすか否かに基づいて対象物の品質(良品又は不良品)が予測され、必要に応じてオペレーターに予測結果が通知される。
【0008】
しかしながら、処理条件及び監視条件の項目は多岐にわたり、多数の処理条件及び監視条件の設定値やしきい値を適切に選定、設定することは難しい。そして、誤って不適切な処理条件又は監視条件が設定された状態で対象物の処理が続行されると、対象物の処理又は監視が適切に行われず、対象物に加工不良等の不都合が生じやすくなる。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、対象物の処理又は監視の条件を適切に設定することが可能な条件設定方法、及び、該条件設定方法に用いることが可能な決定木を生成する決定木の生成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定方法であって、該対象物の処理の監視時に取得される複数の監視項目の数値を含み、該対象物の品質に基づいて分類されたデータセットを準備するデータ準備ステップと、該データセットを用いた学習によって、該監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定されたノードを含む決定木を生成する決定木生成ステップと、該ノードにおいて設定された該しきい値に基づいて、該対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定ステップと、を含む条件設定方法が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定方法であって、該対象物の処理の監視時に取得される複数の監視項目の数値を含み、該対象物の品質に基づいて分類された第1データセットを準備するデータ準備ステップと、該第1データセットを用いた学習によって、該監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第1ノードを含む第1決定木を生成する第1決定木生成ステップと、該第1決定木のルートノードから不純度が所定の基準値以下であるリーフノードに至る経路に存在する該第1ノードに対応する該監視項目を該第1データセットから削除することによって第2データセットを生成する削除ステップと、該第2データセットを用いた学習によって、該監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第2ノードを含む第2決定木を生成する第2決定木生成ステップと、該第1ノード及び該第2ノードにおいて設定された該しきい値に基づいて、該対象物の処理又は監視の条件を設定する条件設定ステップと、を含む条件設定方法が提供される。
【0012】
さらに、本発明の他の一態様によれば、決定木の生成方法であって、複数の項目の数値を含む第1データセットを準備するデータ準備ステップと、該第1データセットを用いた学習によって、該項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第1ノードを含む第1決定木を生成する第1決定木生成ステップと、該第1決定木のルートノードから不純度が所定の基準値以下であるリーフノードに至る経路に存在する該第1ノードに対応する該項目を該第1データセットから削除することによって第2データセットを生成する削除ステップと、該第2データセットを用いた学習によって、該項目に対応する特徴量のしきい値が設定された第2ノードを含む第2決定木を生成する第2決定木生成ステップと、を含む決定木の生成方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る条件設定方法では、複数の監視項目の数値を含み対象物の品質に基づいて分類されたデータセットが準備され、該データセットを用いた学習によって決定木が生成される。そして、決定木のノードにおいて設定された特徴量のしきい値に基づいて、対象物の処理条件又は監視条件が設定される。これにより、不良品が形成されにくい適切な処理条件を設定でき、また、対象物の品質を的確に予測可能な監視条件を設定できる。その結果、対象物の加工不良等の不都合が抑制される。
【0014】
また、本発明の一態様に係る決定木の生成方法では、複数の項目の数値を含む第1データセットを用いた学習によって第1決定木を生成した後、第1決定木における分類に用いられた所定の項目を第1データセットから削除して第2データセットを生成し、第2データセットを用いた学習によってさらに第2決定木を生成する。これにより、第1決定木のノードに割り当てられなかった項目のしきい値が、第2決定木において算出される。その結果、データセットに含まれる多数の項目に対応する特徴量のしきい値を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】対象物を示す斜視図である。
図2】切削装置を示す斜視図である。
図3図3(A)は加工ユニットを示す分解斜視図であり、図3(B)は加工ユニットを示す断面図である。
図4】条件設定方法を示すフローチャートである。
図5】データ準備ステップにおいて準備されるデータを示す概略図である。
図6】第1決定木を示す模式図である。
図7】削除ステップにおいて生成されるデータを示す概略図である。
図8】第2決定木を示す模式図である。
図9】第1決定木の変形例を示す模式図である。
図10】条件設定ステップにおいて処理条件又は監視条件が設定される様子を示す概略図である。
図11】レーザー加工装置を示す斜視図である。
図12】研削装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態における処理又は監視の対象物の構成例について説明する。図1は、対象物(被処理物、被監視物)11を示す斜視図である。
【0017】
例えば対象物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える。対象物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリート13によって区画された複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。
【0018】
対象物11をストリート13に沿って分割して個片化することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。対象物11の分割には、切削装置2(図2参照)、レーザー加工装置200(図11参照)等の加工装置が用いられる。また、対象物11の分割前に、対象物11を研削装置300(図12参照)で研削して薄化しておくと、薄型化されたデバイスチップが得られる。
【0019】
ただし、対象物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば対象物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、対象物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0020】
さらに、対象物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。例えばパッケージ基板は、実装基板上に実装された複数のデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することによって形成される。切削装置2(図2参照)やレーザー加工装置200(図11参照)を用いてパッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップをそれぞれ備える複数のパッケージデバイスが製造される。また、パッケージ基板の分割前に、樹脂層を研削装置300(図12参照)で研削して薄化しておくと、薄型化されたパッケージデバイスが得られる。
【0021】
加工装置で対象物11を加工する際は、対象物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、対象物11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は対象物11の直径よりも大きい。
【0022】
対象物11及びフレーム17には、円形のシート19が固定される。例えばシート19は、フィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープである。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化樹脂であってもよい。
【0023】
対象物11がフレーム17の開口17aの内側に配置された状態で、シート19の中央部が対象物11の裏面11b側に貼付され、シート19の外周部がフレーム17に貼付される。これにより、対象物11がシート19を介してフレーム17によって支持され、対象物11、フレーム17及びシート19を含む対象物ユニット(フレームユニット)が構成される。
【0024】
次に、本実施形態に係る条件設定方法によって対象物11の処理又は監視の条件が設定される処理装置の構成例について説明する。処理装置の例としては、対象物11(被加工物)を加工する加工装置、対象物11(被洗浄物)を洗浄する洗浄装置、対象物11(被検査物)を検査する検査装置、対象物11(被搬送物)を搬送する搬送装置等が挙げられる。
【0025】
また、加工装置の例としては、被加工物を切削する切削装置、被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置、被加工物を研削する研削装置、被加工物を研磨する研磨装置、被加工物にエッチング処理を施すエッチング装置、被加工物にプラズマ処理(成膜処理、プラズマエッチング等)を施すプラズマ処理装置等が挙げられる。以下では一例として、切削装置の構成例を説明する。
【0026】
図2は、切削装置2を示す斜視図である。なお、図2において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向、前後方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向、左右方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0027】
切削装置2は、切削装置2を構成する各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。基台4の上面上には、移動機構(移動ユニット)6が設けられている。
【0028】
移動機構6は、X軸方向に沿って配置された一対のX軸ガイドレール8を備える。一対のX軸ガイドレール8には、平板状のX軸移動テーブル10がスライド可能に装着されている。X軸移動テーブル10の下面(裏面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のX軸ガイドレール8の間にX軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ12が螺合されている。また、X軸ボールねじ12の端部には、X軸ボールねじ12を回転させるX軸パルスモータ14が連結されている。X軸パルスモータ14でX軸ボールねじ12を回転させると、X軸移動テーブル10がX軸ガイドレール8に沿ってX軸方向に移動する。
【0029】
X軸移動テーブル10の上面(表面)上には、円柱状のテーブルベース16が設けられている。テーブルベース16の上端部には、対象物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)18が装着されている。例えばチャックテーブル18は、テーブルベース16によって吸引保持される。
【0030】
チャックテーブル18の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、対象物11を保持する保持面18aを構成している。保持面18aは、チャックテーブル18の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0031】
移動機構6によってX軸移動テーブル10をX軸ガイドレールに沿って移動させることにより、チャックテーブル18がX軸方向に沿って移動する。また、チャックテーブル18には、チャックテーブル18をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。さらに、チャックテーブル18の周囲には、対象物11を支持しているフレーム17を把持して固定する複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0032】
X軸移動テーブル10の周囲には、切削加工中に生成される廃液を一時的に貯留するウォーターケース20が設けられている。ウォーターケース20の内側に貯留された廃液は、ドレーン(不図示)等を介して切削装置2の外部に排出される。
【0033】
基台4の上面側には、門型の支持構造22が移動機構6を跨ぐように設けられている。支持構造22の前面側の両端部には、一対の移動機構(移動ユニット)24が装着されている。
【0034】
具体的には、支持構造22の前面側には、一対のY軸ガイドレール26がY軸方向に沿って固定されている。一対のY軸ガイドレール26には、一対の移動機構24がそれぞれ備える平板状のY軸移動プレート28がスライド可能に装着されている。また、一対のY軸ガイドレール26の間には、一対のY軸ボールねじ30がY軸方向に沿って設けられている。
【0035】
Y軸移動プレート28の後面(裏面)側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはY軸ボールねじ30が螺合されている。また、一対のY軸ボールねじ30の端部にはそれぞれ、Y軸ボールねじ30を回転させるY軸パルスモータ32が連結されている。Y軸パルスモータ32でY軸ボールねじ30を回転させると、Y軸移動プレート28がY軸ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。
【0036】
Y軸移動プレート28の前面(表面)側には、一対のZ軸ガイドレール34がZ軸に沿って固定されている。一対のZ軸ガイドレール34には、平板状のZ軸移動プレート36がスライド可能に装着されている。
【0037】
Z軸移動プレート36の後面(裏面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のZ軸ガイドレール34の間にZ軸方向に沿って配置されたZ軸ボールねじ38が螺合されている。また、Z軸ボールねじ38の端部には、Z軸ボールねじ38を回転させるZ軸パルスモータ40が連結されている。Z軸パルスモータ40でZ軸ボールねじ38を回転させると、Z軸移動プレート36がZ軸ガイドレール34に沿ってZ軸方向に移動(昇降)する。
【0038】
Z軸移動プレート36の下部には、対象物11に切削加工を施す加工ユニット(切削ユニット)42が固定されている。加工ユニット42には、対象物11を切削する加工工具である環状の切削ブレード44が装着される。加工ユニット42は、切削ブレード44を回転させつつチャックテーブル18によって保持された対象物11に切り込ませることにより、対象物11を切削する。
【0039】
また、加工ユニット42は、純水等の液体を加工液(切削液)として供給するノズル46を備える。対象物11の切削中は、ノズル46から対象物11及び切削ブレード44に加工液が供給される。これにより、対象物11及び切削ブレード44が冷却されるとともに、対象物11の加工によって生じた屑(加工屑)が洗い流される。
【0040】
一対の加工ユニット42には、一対の切削ブレード44が互いに対面するように装着される。すなわち、切削装置2は所謂フェイシングデュアルスピンドルタイプの切削装置である。ただし、切削装置2が備える加工ユニット42の数は1組であってもよい。
【0041】
加工ユニット42に隣接する位置には、撮像ユニット48が設けられている。撮像ユニット48は、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備えており、チャックテーブル18によって保持された対象物11等を撮像する。例えば撮像ユニット48として、可視光カメラや赤外線カメラが用いられる。撮像ユニット48によって取得された画像は、対象物11と切削ブレード44との位置合わせ等に用いられる。
【0042】
移動機構24は、加工ユニット42及び撮像ユニット48をチャックテーブル18の保持面18aに対して接近及び離隔させる。具体的には、Y軸移動プレート28をY軸ガイドレール26に沿って移動させると、チャックテーブル18と加工ユニット42及び撮像ユニット48とがY軸方向に沿って相対的に移動する。また、Z軸移動プレート36をZ軸ガイドレール34に沿って移動(昇降)させると、チャックテーブル18と加工ユニット42及び撮像ユニット48とがZ軸方向に沿って相対的に移動(昇降)する。
【0043】
切削装置2の前面側には、切削装置2に関する情報を表示する表示ユニット(表示部、表示装置)50が設けられている。表示ユニット50は、各種のディスプレイによって構成され、対象物11の加工に関する各種の情報(加工条件、加工状況等)を表示する。
【0044】
例えば表示ユニット50として、タッチパネル式のディスプレイが用いられる。この場合には、表示ユニット50は切削装置2に情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)としても機能する。そして、オペレーターは表示ユニット50のタッチ操作によって切削装置2に情報を入力できる。すなわち、表示ユニット50はユーザーインターフェースとして機能する。ただし、入力ユニットは、表示ユニット50とは別途設けられたキーボード、マウス等の電子機器であってもよい。
【0045】
切削装置2の上部には、オペレーターに情報を報知する報知ユニット(報知部、報知装置)52が設けられている。例えば、報知ユニット52として表示灯(警告灯)が設けられる。この場合、切削装置2で異常が発生すると、表示灯が点灯又は点滅してエラーを通知する。
【0046】
ただし、報知ユニット52の種類に制限はない。例えば報知ユニット52は、音又は音声でオペレーターに情報を通知するスピーカーであってもよいし、外部のサーバ等に情報を送信する送信機であってもよい。
【0047】
さらに、切削装置2は、切削装置2を制御するコントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)54を備える。コントローラ54は、切削装置2を構成する各構成要素(移動機構6、チャックテーブル18、移動機構24、加工ユニット42、撮像ユニット48、表示ユニット50、報知ユニット52等)に接続されている。
【0048】
コントローラ54は、切削装置2の各構成要素に制御信号を出力することにより、各構成要素の動作を制御し、切削装置2を稼働させる。例えばコントローラ54は、コンピュータによって構成され、切削装置2の稼働に必要な演算を行う処理部と、処理部による処理に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。処理部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0049】
次に、加工ユニット42の構成例について説明する。図3(A)は加工ユニット42を示す分解斜視図であり、図3(B)は加工ユニット42を示す断面図である。なお、図3(A)及び図3(B)では、説明の便宜上、加工ユニット42の一部の構成要素の図示を省略している。
【0050】
加工ユニット42は、Z軸移動プレート36(図2参照)の下部に固定された筒状のハウジング60を備える。ハウジング60には、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル62が収容されている。
【0051】
スピンドル62の先端部(一端部)は、ハウジング60の先端から突出している。また、スピンドル62の先端部には、後述のボルト80がねじ込まれるボルト穴62aが設けられている。一方、スピンドル62の基端部(他端部)には、スピンドル62を回転させるモータ(スピンドルモータ)等の回転駆動源64が連結されている。なお、回転駆動源64には、回転駆動源64に供給される電流を測定する電流測定ユニットが内蔵又は接続されている。例えば電流測定ユニットは、回転駆動源64を構成するモータの電流値を測定する。
【0052】
ハウジング60の先端部には、円柱状のカバーユニット66が固定される。カバーユニット66の中央部には、カバーユニット66を高さ方向に貫通する円柱状の開口66aが設けられている。また、カバーユニット66の降端側の外周部には、板状に形成された一対の固定部66bが設けられている。固定部66bには、固定部66bを厚さ方向に貫通する円形の開口66cが設けられている。また、ハウジング60の先端部には、固定部66bの開口66cに対応する一対のねじ穴60aが設けられている。
【0053】
カバーユニット66は、スピンドル62の先端部が開口66aに挿入されるようにハウジング60に装着される。この状態で、固定用のねじ68(図3(B)参照)を固定部66bの開口66cを介してハウジング60のねじ穴60aに締め込むと、カバーユニット66がハウジング60に固定される。
【0054】
スピンドル62の先端部には、ブレードマウント70が装着される。ブレードマウント70は、円盤状のフランジ部72と、フランジ部72の表面(前面、第1面)から突出する円柱状の第1ボス部74と、フランジ部72の裏面(後面、第2面)から突出する円柱状の第2ボス部76とを備える。
【0055】
ブレードマウント70は、フランジ部72、第1ボス部74及び第2ボス部76が同心円状に配置されるように形成される。また、ブレードマウント70の中央部には、フランジ部72、第1ボス部74及び第2ボス部76を貫通する円柱状の開口70aが設けられている。
【0056】
ブレードマウント70は、スピンドル62の先端部が第2ボス部76側から開口70aに挿入されるように、カバーユニット66に装着される。また、開口70aの内側にワッシャー78が配置される。この状態で、固定用のボルト80がワッシャー78を介してスピンドル62のボルト穴62aに締め込まれることにより、ブレードマウント70がスピンドル62の先端部に固定される。
【0057】
フランジ部72の外周部には、環状の凸部がフランジ部72の外周縁に沿って設けられている。凸部の先端面は、切削ブレード44と接触して切削ブレード44を支持する環状の支持面72aを構成している。また、第1ボス部74の外周面には、ねじ部(ねじ溝)74aが設けられている。
【0058】
ブレードマウント70には、切削ブレード44が装着される。切削ブレード44の中央部には、切削ブレード44を厚さ方向に貫通する円形の開口44aが設けられている。切削ブレード44としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。
【0059】
具体的には、切削ブレード44は、金属等でなる環状のハブ基台44bと、ハブ基台44bの外周縁に沿って形成された環状の切刃44cとが一体化された構造を有する。例えば切刃44cは、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するニッケルめっき層等の結合材とを含む電鋳砥石によって構成される。
【0060】
ただし、切削ブレード44としてワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒と、金属、セラミックス、樹脂等でなり砥粒を固定する結合材とを含む環状の切刃のみによって構成される。
【0061】
切削ブレード44は、第1ボス部74が開口44aに挿入されるように、ブレードマウント70に装着される。そして、切削ブレード44は固定部材82によってブレードマウント70に固定される。
【0062】
固定部材82は、金属等でなる円盤状の部材であり、固定部材82の中央部には固定部材82を厚さ方向に貫通する円形の開口82aが設けられている。開口82aの内側で露出する固定部材82の側面(内周面)には、第1ボス部74のねじ部74aに対応するねじ溝が設けられている。また、固定部材82の裏面側の外周部には、切削ブレード44と接触して切削ブレード44を支持する環状の支持面82b(図3(B)参照)が設けられている。なお、ブレードマウント70の支持面72aと固定部材82の支持面82bとは、互いに対面するように形成される。
【0063】
切削ブレード44がブレードマウント70に装着された状態で、第1ボス部74が開口82aに挿入されるように固定部材82を第1ボス部74のねじ部74aに締め込むと、切削ブレード44がフランジ部72の支持面72aと固定部材82の支持面82bとによって挟持される。これにより、切削ブレード44がスピンドル62の先端部(ブレードマウント70)に固定される。そして、切削ブレード44は、回転駆動源64からスピンドル62及びブレードマウント70を介して伝達される動力により、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0064】
また、図3(B)に示すように、加工ユニット42には、加工ユニット42の振動を測定する振動測定ユニット84が搭載されている。振動測定ユニット84は、ブレードマウント70の内部に設けられた複数の超音波振動子86を備える。例えば超音波振動子86は、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi,Ti)O)等の圧電セラミックスや、リチウムナイオベート(LiNbO)、リチウムタンタレート(LiTaO)等の単結晶圧電材料でなり、加工ユニット42に付与された振動を電気信号(電圧)に変換する。
【0065】
超音波振動子86は、所定の周波数の振動に対して共振するように構成されている。そして、加工ユニット42の構成要素や切削ブレード44に付与された振動のうち超音波振動子86の共振周波数に対応する振動が、振動測定ユニット84によって測定される。超音波振動子86の共振周波数は、対象物11及び切削ブレード44の種類(材質、形状、大きさ、重量等)、加工条件、振動の態様(異常度、発生頻度等)等に応じて適宜選定される。
【0066】
複数の超音波振動子86は、スピンドル62の軸心に関して対称に配置されることが好ましい。これにより、加工ユニット42の振動を高精度に測定できる。ただし、超音波振動子86の数、配置、材質、形状等は自由に変更できる。
【0067】
なお、広範囲の周波数の振動を測定するため、ブレードマウント70には、共振周波数が異なる複数の超音波振動子86が搭載されてもよい。例えば、共振周波数がそれぞれ50kHz以上100kHz未満、100kHz以上300kHz未満、300kHz以上500kHz未満である3種類の超音波振動子86がブレードマウント70に装着される。これにより、振動測定ユニット84で広範囲の周波数(50kHz以上500kHz以下)の振動を測定することが可能になる。
【0068】
また、共振周波数が異なる超音波振動子86が搭載された複数のブレードマウント70を選択的に用いることもできる。例えば、共振周波数が50kHz以上100kHz未満、100kHz以上300kHz未満、300kHz以上500kHz未満である3種類の超音波振動子86がそれぞれ、異なるブレードマウント70に搭載される。そして、対象物11及び切削ブレード44の種類、加工条件、振動の態様等に応じて、3種類のブレードマウント70のいずれかがスピンドル62に固定される。
【0069】
超音波振動子86によって生成された電気信号は、伝送路88を介して伝送される。伝送路88は、非接触型の伝送路であり、超音波振動子86に接続された第1インダクタ90と、コントローラ54に接続された第2インダクタ92とを備える。例えば、第1インダクタ90及び第2インダクタ92は、導線が同心円状に巻かれた環状のコイルによって構成される。
【0070】
第1インダクタ90と第2インダクタ92とは、互いに離隔するように所定の間隔で対向しており、電磁結合されている。具体的には、第1インダクタ90はブレードマウント70の裏面側(カバーユニット66側)に装着されており、第2インダクタ92はカバーユニット66の表面側(ブレードマウント70側)に装着されている。
【0071】
超音波振動子86によって生成された電気信号は、相互誘導によって第1インダクタ106から第2インダクタ92に伝送され、第2インダクタ92からコントローラ54に入力される。そして、例えばコントローラ54は、第2インダクタ92から入力された電気信号を所定の信号処理(高速フーリエ変換等)によって変換し、加工ユニット42の振動の情報としてメモリに記憶する。
【0072】
図2に示す切削装置2で対象物11を切削する際は、まず、対象物11がチャックテーブル18によって保持される。例えば対象物11は、表面11a側が上方を向き裏面11b側(シート19側)が保持面18aと対面するように、チャックテーブル18上に配置される。この状態で、保持面18aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、対象物11がシート19を介してチャックテーブル18によって吸引保持される。
【0073】
次に、チャックテーブル18を回転させ、所定のストリート13(図1参照)の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、切削ブレード44が所定のストリート13の延長線と重なるように、加工ユニット42のY軸方向における位置を調整する。さらに、例えば切削ブレード44の下端が対象物11の裏面11b(シート19の上面)よりも下方に配置されるように、加工ユニット42の高さを調整する。
【0074】
そして、切削ブレード44を回転させつつ、チャックテーブル18をX軸方向に沿って移動させる。これにより、チャックテーブル18と切削ブレード44とがX軸方向に沿って相対的に移動し、切削ブレード44がストリート13に沿って対象物11に切り込む。その結果、対象物11の表面11aから裏面11bに至るカーフ(切り口)がストリート13に沿って形成され、対象物11が切断される(フルカット)。その後、同様の手順を繰り返して、全てのストリート13に沿って対象物11を切削してカーフを形成すると、対象物11が複数のデバイスチップに分割される。
【0075】
ただし、切削装置2による対象物11の加工の内容に制限はない。例えば、加工ユニット42の高さは、切削ブレード44の下端が対象物11の表面11aよりも下方で裏面11bよりも上方に位置付けられるように調節してもよい。この場合には、切削ブレード44が対象物11の表面11a側に切り込み、対象物11の表面11a側に深さが対象物11の厚さ未満の溝(カーフ)がストリート13に沿って形成される(ハーフカット)。
【0076】
また、切削装置2は、対象物11を洗浄する洗浄ユニット(不図示)を備えていてもよい。この場合には、切削加工後の対象物11が洗浄ユニットによって洗浄される。例えば洗浄ユニットは、対象物11を保持して回転するスピンナテーブルと、スピンナテーブルによって保持された対象物11に洗浄流体を供給する洗浄ノズルとを備える。
【0077】
スピンナテーブルの上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、対象物11を保持する保持面を構成する。保持面は、スピンナテーブルの内部に形成された流路、バルブ等を介して、エジェクタ等の吸引源に接続される。また、スピンナテーブルには、スピンナテーブルをZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源が連結されている。
【0078】
スピンナテーブルで対象物11を保持し、スピンナテーブルを回転させつつ洗浄ノズルから対象物11に洗浄流体を供給すると、対象物11が洗浄される。これにより、対象物11に付着している加工屑等の異物が除去される。洗浄流体としては、純水等の液体や、液体(純水等)と気体(エアー等)とが混合された混合流体等を用いることができる。
【0079】
また、洗浄ユニットは、スピンナテーブルによって保持された対象物11に乾燥用の気体を噴射する乾燥ノズルを備えていてもよい。この場合には、対象物11の洗浄後、スピンナテーブルの回転が維持されまま乾燥ノズルから乾燥用の気体(乾燥エアー等)が対象物11に吹き付けられる。これにより、対象物11の乾燥が行われる。
【0080】
切削装置2によって対象物11の処理(搬送、加工、洗浄等)が行われる際には、対象物11の処理が監視される。具体的には、切削装置2には複数の監視項目が設定されるとともに、監視項目にそれぞれ対応する複数の監視ユニット(監視センサ)が搭載される。監視ユニットは、対象物11の処理中に監視項目に対応する情報(監視情報)を継続的に取得し、コントローラ54に入力する。そして、コントローラ54は各監視ユニットから入力された監視情報に基づいて対象物11の処理の適否を判定する。
【0081】
例えば、加工ユニット42のノズル46等から供給される加工液の温度及び流量が監視項目に設定される。この場合には、加工液の温度を測定する温度センサ等の温度測定ユニットと、加工液の流量を測定する流量センサ等の流量測定ユニットとが、監視ユニットとして加工ユニット42に内蔵又は接続される。そして、温度測定ユニットによって測定された加工液の温度と、流量測定ユニットによって測定された加工液の流量とが、監視情報としてコントローラ54に入力される。
【0082】
また、スピンドル62を回転させる回転駆動源64(図3(A)及び図3(B)参照)のトルクが監視項目に設定されてもよい。対象物11の切削中に切削ブレード44にかかる負荷が変動すると、切削ブレード44の回転を維持するために必要な回転駆動源64のトルクも変化する。また、回転駆動源64のトルクは、回転駆動源64の電流値に依存する。
【0083】
そのため、対象物11の加工中に回転駆動源64の電流値を測定することにより、回転駆動源64のトルクを監視することができる。具体的には、回転駆動源64の電流値を測定する電流計等の電流測定ユニットが、監視ユニットとして回転駆動源64に内蔵又は接続される。そして、電流測定ユニットによって測定された回転駆動源64の電流値が、監視情報としてコントローラ54に入力される。
【0084】
さらに、加工ユニット42の振動が監視項目に設定されてもよい。切削ブレード44を回転させて対象物11に切り込ませると、加工ユニット42の各構成要素(スピンドル62、カバーユニット66、ブレードマウント70、固定部材82等)及び切削ブレード44に振動が付与される。この振動には、切削ブレード44の回転状態や対象物11の切削状況等が反映される。そこで、振動測定ユニット84(図3(B)参照)が監視ユニットとして用いられ、振動測定ユニット84によって測定された加工ユニット42の振動が監視情報としてコントローラ54に入力される。
【0085】
上記の監視項目(加工液の温度及び流量、回転駆動源64のトルク、加工ユニット42の振動)は、切削装置2によって処理された対象物11の品質と相関関係がある。例えば、加工液の温度及び流量が不適切であると、対象物11及び切削ブレード44の冷却が不十分になり、加工不良が生じやすくなる。また、切削ブレード44のコンディションが悪化したり(目詰まり、目潰れ等)、加工条件が不適切であったりすると、切削ブレード44に異常な負荷がかかり、回転駆動源64のトルクが異常値を示すとともに対象物11に加工不良が発生することがある。さらに、切削ブレード44のコンディション悪化や誤装着があると、切削ブレード44を回転させて対象物11に切り込ませる際、加工ユニット42に異常な振動が生じ、加工不良が発生することがある。
【0086】
そこで、対象物11の品質と相関関係がある上記のような監視項目に基づいて、切削装置2による対象物11の処理が監視される。これにより、対象物11の処理の異常がいち早く察知され、加工不良の発生を未然に防ぐことが可能になる。
【0087】
なお、多数の監視項目を総合的に監視することにより、加工不良の発生をより正確に予測することができる。そのため、上記の加工液の温度及び流量、回転駆動源64のトルク、加工ユニット42の振動に加えて、対象物11の処理中に切削装置2によって取得可能な他の情報も監視項目に設定されることが好ましい。以下、他の監視項目の例について説明する。
【0088】
例えば、チャックテーブル18には、チャックテーブル18の振動を測定する振動測定ユニット、チャックテーブル18の速度を測定する速度測定ユニット、チャックテーブル18の吸引路の圧力を測定する圧力測定ユニット等が監視ユニットとして内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、チャックテーブル18の振動、速度、吸引力(負圧)等を監視項目に設定できる。
【0089】
また、チャックテーブル18を回転させる回転駆動源には、回転駆動源のトルク(電流)を測定するトルク測定ユニット(電流測定ユニット)、回転駆動源の回転量を測定する回転量測定ユニット等が監視ユニットとして内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、チャックテーブル18を回転させる回転駆動源のトルク及び回転量(回転角度)等を監視項目に設定できる。
【0090】
加工ユニット42には、加工ユニット42にかかる荷重を測定するロードセル等の荷重測定ユニットが監視ユニットとして内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、加工ユニット42にかかる荷重を監視項目に設定できる。
【0091】
また、スピンドル62を回転させる回転駆動源64(図3(A)及び図3(B)参照)には、回転駆動源64の回転量(回転数)を測定する回転量測定ユニットが監視ユニットとして内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、回転駆動源64の回転量(回転数)を監視項目に設定できる。
【0092】
さらに、加工ユニット42には、加工液に印加される電圧を測定する電圧測定ユニット、又は、加工液を流れる電流を測定する電流測定ユニットが、監視ユニットとして内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、電圧測定ユニットによって測定された電圧、又は、電流測定ユニットによって測定された電流に基づいて、コントローラ54が加工液の比抵抗又は導電率を算出する。これにより、加工液の比抵抗又は導電率を監視項目に設定できる。
【0093】
移動機構6のX軸パルスモータ14と、移動機構24のY軸パルスモータ32及びZ軸パルスモータ40とにはそれぞれ、パルスモータのトルク(電流)を測定するトルク測定ユニット(電流測定ユニット)及びパルスモータの回転量(回転数)を測定する回転量測定ユニットが監視ユニットとして内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、X軸パルスモータ14のトルク及び回転量(回転数)、Y軸パルスモータ32のトルク及び回転量(回転数)、Z軸パルスモータ40それぞれのトルク及び回転量(回転数)を監視項目に設定できる。
【0094】
切削装置2にスピンナテーブルを備える洗浄ユニット(不図示)が搭載される場合には、スピンナテーブルに、スピンナテーブルの振動を測定する振動測定ユニット、スピンナテーブルの吸引路の圧力を測定する圧力測定ユニット等の監視ユニットが内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、スピンナテーブルの振動、吸引力(負圧)等を監視項目に設定できる。
【0095】
また、スピンナテーブルを回転させる回転駆動源には、回転駆動源のトルクを測定するトルク測定ユニット、回転駆動源の回転量(回転数)を測定する回転量測定ユニット等の監視ユニットが内蔵又は接続されていてもよい。この場合には、スピンナテーブルを回転させる回転駆動源のトルク及び回転量(回転数)等を監視項目に設定できる。
【0096】
切削装置2は、切削装置2の各構成要素のいずれかに内蔵又は接続された1又は複数の圧力測定ユニットを監視ユニットとして備えていてもよい。例えば、スピンドル62がエアスピンドルである場合にスピンドル62に供給されるエアーの圧力、テーブルベース16にチャックテーブル18を固定するための圧力(吸引力)、加工液の圧力、洗浄流体の圧力、乾燥用の気体の圧力、対象物11を搬送する搬送機構が備える吸引パッドの圧力(吸引力)、切削装置2の外部から内部に供給される気体(メインエアー、クリーンエアー)の圧力等が、圧力測定ユニットによって測定される。この場合には、上記の各圧力を監視項目に設定できる。
【0097】
また、切削装置2は、切削装置2の各構成要素のいずれかに内蔵又は接続された1又は複数の温度測定ユニット(温度計)を監視ユニットとして備えていてもよい。特に、対象物11の加工品質に影響を与え得る構成要素の温度変化が、温度測定ユニットによって測定されることが好ましい。
【0098】
例えば、切削装置2の各構成要素(基台4、X軸ガイドレール8、X軸移動テーブル10、X軸ボールねじ12、X軸パルスモータ14、テーブルベース16、チャックテーブル18、ウォーターケース20、支持構造22、Y軸ガイドレール26、Y軸移動プレート28、Y軸ボールねじ30、Y軸パルスモータ32、Z軸ガイドレール34、Z軸移動プレート36、Z軸ボールねじ38、Z軸パルスモータ40、ハウジング60、スピンドル62等)の温度、スピンドル62を冷却するためにスピンドル62の内部を流れる冷媒(冷却水等)の温度、スピンドル62がエアスピンドルである場合にスピンドル62に供給されるエアーの温度、加工液の温度、洗浄流体の温度、乾燥用の気体の温度、切削装置2の外部の温度(室温)等が、温度測定ユニットによって測定される。この場合には、上記の各温度を監視項目に設定できる。
【0099】
さらに、切削装置2は、切削装置2の各構成要素のいずれかに内蔵又は接続された1又は複数の時間測定ユニット(タイマー)を監視ユニットとして備えていてもよい。例えば、チャックテーブル18の移動時間、加工ユニット42の移動時間、対象物11の搬送時間、加工時間、洗浄時間、乾燥時間等が、時間測定ユニットによって測定される。この場合には、上記の各時間を監視項目に設定できる。
【0100】
切削装置2で対象物11を加工する際には、対象物11の厚さが測定されてもよい。具体的には、対象物11の厚さを測定する厚さ測定ユニットが監視ユニットとして切削装置2に搭載される。例えば厚さ測定ユニットは、接触式又は非接触式の高さ測定器(ハイトゲージ)によって構成され、加工前後又は加工中の対象物11の厚さを測定する。この場合には、対象物11の厚さを監視項目に設定できる。
【0101】
また、撮像ユニット48で対象物11等の被写体を撮像する際には、撮像ユニット48の内部又は外部に設けられた光源で被写体が照らされる。そして、光源の照度を測定する照度測定ユニットが監視ユニットとして切削装置2に搭載されてもよい。この場合には、光源の照度を監視項目に設定できる。
【0102】
切削ブレード44で対象物11を切削すると、前述の通り対象物11にはカーフが形成される。そこで、対象物11の切削後には、カーフの検査(カーフチェック)が実施されてもよい。例えば、切削後の対象物11が撮像ユニット48によって撮像される。そして、撮像によって得られた画像に画像処理が施され、カーフの特性(カーフの幅、カーフの位置、カーフから伸展する欠け(チッピング)の数及び寸法等)が抽出される。この場合には、カーフの特性を監視項目に設定できる。
【0103】
また、切削ブレード44で対象物11を切削すると、切削ブレード44に摩耗や欠けが生じる。そのため、対象物11の加工中は、切削ブレード44の状態が監視されてもよい。例えば、光センサ等のブレード検出ユニットが監視ユニットとして加工ユニット42に搭載され、ブレード検出ユニットによって切削ブレード44の摩耗や欠けが検出される。この場合には、切削ブレード44の状態(摩耗量、欠けの有無等)を監視項目に設定してもよい。また、ブレード検出ユニットの温度を前述の温度測定ユニットで測定し、ブレード検出器の温度を監視項目に設定してもよい。
【0104】
なお、切削ブレード44の摩耗量が測定される場合には、切削ブレード44の摩耗量に応じて切削ブレード44の切り込み深さを調節する処理(ブレードセットアップ)を所定の頻度で実施してもよい。ブレードセットアップでは、切削ブレード44の下端位置が測定され、切削ブレード44の摩耗量に応じて切削ブレード44の切り込み深さ(Z軸方向における位置)が調節される。
【0105】
さらに、切削ブレード44を加工ユニット42に確実に固定するため、フランジ部72の支持面72a(図3(A)及び図3(B)参照)を砥石で擦ることによって支持面72aの状態を整える処理(端面修正)を、所定の頻度で実施してもよい。端面修正を行うことにより、フランジ部72の支持面72aに付着した異物が除去されるとともに、支持面72aが平坦化される。
【0106】
上記のカーフチェック、セットアップ、端面修正の頻度は、手動又は自動で設定される。そして、対象物11の処理を監視する際には、カーフチェック、ブレードセットアップ、端面修正の頻度も監視項目に加えることができる。
【0107】
切削装置2で対象物11の処理を行う際には、予め設定された処理条件で対象物11が処理される。また、対象物11の処理中には、上記のような各種の監視ユニットによって複数の監視項目の数値が継続的に取得され、所定の監視条件で監視される。具体的には、複数の監視ユニットからコントローラ54に監視項目の数値が逐次的に入力される。そして、例えばコントローラ54は、監視項目の数値と予め設定された基準値とを比較することにより、対象物11の処理の適否を判定する。これにより、加工不良の発生を予測することができる。
【0108】
加工不良の発生を効果的に抑制するためには、処理条件及び監視条件が適切に設定される必要がある。しかしながら、加工条件及び監視条件の項目は多岐にわたり、多数の加工条件及び監視条件の設定値やしきい値を適切に選定、設定することは難しい。そして、誤って不適切な加工条件又は監視条件が設定された状態で対象物11の処理が続行されると、対象物11の処理又は監視が適切に行われず、対象物11に加工不良等の不都合が生じやすくなる。
【0109】
そこで、本実施形態においては、複数の監視項目の数値を含むデータセットを用いて決定木を生成し、決定木において設定されたしきい値に基づいて対象物11の処理又は監視の条件を設定する。これにより、対象物11の品質に関連する多数の処理条件及び監視条件を適切に設定することが容易になり、対象物11の品質低下が抑制される。
【0110】
図4は、条件設定方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る条件設定方法では、機械学習によって決定木を生成し、その決定木から抽出されるしきい値に基づいて対象物11の処理又は監視の条件を設定する。
【0111】
具体的には、まず、決定木の生成に用いられるデータを準備し(データ準備ステップS1)、そのデータを用いた機械学習によって決定木を生成する(決定木生成ステップS2)。その後、決定木において設定されたしきい値に基づいて、対象物11の処理又は監視の条件を設定し(条件設定ステップS3)、その条件で対象物11の処理又は監視を実行する(処理ステップS4)。なお、データ準備ステップS1及び決定木生成ステップS2は、本実施形態に係る条件設定方法に用いることが可能な決定木の生成方法に相当する。以下、各ステップの詳細について説明する。
【0112】
図5は、データ準備ステップS1において準備されるデータ100を示す概略図である。データ準備ステップS1では、対象物11の処理の監視時に取得される複数の監視項目の数値を含み、対象物11の品質に基づいて分類されたデータセット(第1データセット)を準備する。
【0113】
具体的には、まず、切削装置2で対象物11を処理しつつ、対象物11の処理の監視項目に対応する情報(監視情報)を取得する(監視情報取得ステップS11)。具体的には、切削装置2が稼働し、対象物11が切削装置2によって1枚ずつ処理される。その際、対象物11の処理が監視され、切削装置2に搭載された各種の監視ユニットによって監視項目に対応する数値が測定される。これにより、複数の監視項目の数値を含むデータセットが取得される。データセットは、例えば切削装置2のコントローラ54が備えるメモリに記憶、蓄積される。
【0114】
そして、複数の対象物11が様々な処理条件で切削装置2によって順次処理され、対象物11の処理ごとにデータセットが取得される。これにより、N個のデータセット(データセット1~N、Nは2以上の自然数)が切削装置2に蓄積される。データセットはそれぞれ、n種類の監視項目(監視項目1~n、nは2以上の自然数)の数値を含む。監視項目の具体例は前述の通りであり、加工液の温度及び流量、回転駆動源64のトルク(電流値)、加工ユニット42の振動、その他の監視項目が、監視項目の数値として取得される。例えば、データセット1~Nはそれぞれ、50以上(n≧50)、好ましくは100以上(n≧100)、より好ましくは200以上(n≧200)の監視項目を含む。
【0115】
データセット1~Nを含むデータ100は、例えば切削装置2から外部のサーバに送信され、サーバのメモリ102に記憶される。これにより、メモリ102にデータセットが蓄積される。なお、メモリ102には、複数の切削装置2によって取得されたデータ100がまとめて記憶されてもよい。この場合には、多数のデータセットを短時間で効率的に収集できる。
【0116】
このようにして、複数の監視項目の数値によって構成されるデータセットが収集される。例えば監視情報取得ステップS11では、1000以上セット以上(N≧1000)、好ましくは10000セット以上(N≧10000)、より好ましくは100000セット以上(N≧100000)のデータセットが取得される。
【0117】
次に、複数のデータセットがそれぞれ対象物11の品質によって分類される(分類ステップS12)。具体的には、切削装置2によって1枚の対象物11が処理されるごとに、撮像ユニット48(図2参照)によって対象物11が撮像され、対象物11の画像が取得される。そして、作業者が対象物11の画像を視認し、対象物11の品質を分類する。例えば対象物11は、良品・不良品の2種類に分類される。なお、対象物11の分類は画像処理等によって自動で行われてもよい。
【0118】
ただし、対象物11の分類は、対象物11の画像以外の情報に基づいて行われてもよい。例えば、対象物11の分割によって得られたデバイスチップの強度を所定の測定機器によって測定し(2点曲げ試験等)、デバイスチップの強度に基づいて対象物11を良品・不良品の2種類に分類することもできる。
【0119】
そして、前述の監視情報取得ステップS11によってデータセットが取得されると、データセットが対象物11の品質によって分類される。具体的には、切削装置2が所定の処理条件で対象物11を処理した際に取得されたデータセットが、その処理条件で処理された対象物11の品質によって分類される。その結果、図5に示すように、データセット1~Nと対象物11の分類(品質)とが紐付けられる。
【0120】
なお、本実施形態では一例としてデータセット1~Nがそれぞれ2クラス(良品・不良品)に分類される場合について説明するが、データセット1~Nの分類方法に制限はない。例えば、対象物11の品質の程度に応じて、データセット1~Nを3クラス以上に分類してもよい。また、データセットの分類は、切削装置2からメモリ102にデータセットが送信される前後どちらのタイミングで実施されてもよい。
【0121】
上記のデータ準備ステップS1によって、対象物11の品質に基づいて分類された複数のデータセットが準備される。なお、データセットの分類は、データセットが取得されるごとに行われてもよいし、所定の数のデータセットが取得された後にまとめて行われてもよい。また、データ準備ステップS1では、本実施形態に係る条件設定方法の実施者が自ら1又は複数の切削装置2を稼働させてデータセットを取得及び分類してもよいし、切削装置2のユーザーからデータセットを譲り受けてもよい。
【0122】
次に、データセットを用いた学習によって、データセットを対象物11の品質で分類する決定木を生成する(決定木生成ステップS2)。特に本実施形態では、データセットに含まれる所定の監視項目を順次削除しつつ複数の決定木を生成することが好ましい。
【0123】
具体的には、まず、データ準備ステップS1で準備されたデータセット1~N(第1データセット)を用いた学習によって、監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定されたノード(第1ノード)を含む第1決定木110Aを生成する(第1決定木生成ステップS21)。図6は、第1決定木110Aを示す模式図である。
【0124】
決定木は、データを分類して分岐する複数のノードと、ノード同士を結合させる複数のブランチとを含む。なお、最上位のノード(全体のデータを分類するノード)はルートノードと称され、末端のノード(データを分類しないノード)はリーフノードと称される。決定木に含まれる各ノードはデータの分類項目に相当し、教師あり学習によって各ノードにおいて分類項目のしきい値が設定される。なお、以下では一例として、決定木のアルゴリズムがCART(Classification and Regression Tree)である場合について説明するが、決定木のアルゴリズムに制限はない。
【0125】
第1決定木110Aは、データセット1~Nに含まれる監視項目1~nの数値を入力データ、データセット1~Nの分類結果(対象物11の品質)を正解データとする教師あり学習によって生成される。その結果、監視項目1~nのいずれかが第1決定木110Aの各ノードに割り当てられる。また、各ノードにおいて、分類されるデータの不純度が算出されるとともに、割り当てられた監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定される。決定木のアルゴリズムがCARTである場合には、各ノードにおいてジニ不純度が算出される。
【0126】
例えば、第1決定木110AのルートノードNAに監視項目1が割り当てられると、ルートノードNAにおいてジニ不純度(≧0)が算出されるとともに、監視項目1に対応する特徴量のしきい値が情報利得に基づいて設定される。そして、ルートノードNAから分岐した各ノードにも、同様に監視項目が割り当てられ、不純度と特徴量のしきい値とが算出される。このような処理が繰り返されることにより、第1決定木110Aが成長する。
【0127】
第1決定木110Aの成長は、全てのリーフノードの不純度が所定の基準値以下(例えば0)になるまで継続される。これにより、複数の監視項目の数値を含むデータセットを対象物11の品質によって分類する第1決定木110Aが生成される。
【0128】
なお、後述の条件設定ステップS3(図10参照)では、第1決定木110Aのノードにおいて設定された特徴量のしきい値に基づいて、切削装置2の処理条件又は監視条件が設定される。そのため、様々な処理条件又は監視条件を設定するためには、第1決定木110Aのノードに多数の監視項目が割り当てられ、多数の監視項目に対応する特徴量のしきい値が算出されることが好ましい。
【0129】
しかしながら、データセットの分類に支配的な監視項目がデータセットに含まれている場合には、第1決定木110Aに多数の監視項目が反映される前に第1決定木110Aが完成する。例えば図6に示すように、監視項目1が対象物11の分類に支配的であり、ルートノードNAの分岐のみによってデータセットを対象物11の良品又は不良品によって完全に分類できてしまう場合には、ルートノードNAから分岐したノードにおいて不純度が0となり、深さレベル1のリーフノードNA11,NA12が設定された段階で第1決定木110Aの成長が止まってしまう。その結果、第1決定木110Aでは、他の監視項目(監視項目2~n)に対応する特徴量のしきい値が設定されない。
【0130】
そこで、本実施形態では、第1決定木生成ステップS21の後、分類に支配的な所定の監視項目をデータセット1~Nから削除することによってデータセット1´~N´を生成し(削除ステップS22、図7参照)、その後、データセット1´~N´を用いた学習によって第2決定木110Bを生成する(第2決定木生成ステップS23、図8参照)。これにより、第1決定木110Aのノードに割り当てられなかった監視項目の特徴量のしきい値を、第2決定木110Bにおいて算出することができる。
【0131】
図7は、削除ステップS22において生成されるデータ100´を示す概略図である。削除ステップS22では、第1決定木110Aのルートノードから不純度が所定の基準値以下(例えば0)であるリーフノードに至る経路に存在するノードに対応する監視項目を、データセット1~Nから削除する。
【0132】
具体的には、図6に示すように、第1決定木110AのルートノードNAから不純度が0であるリーフノードNA11,NA12に至る経路には、監視項目1が割り当てられたルートノードNAが存在する。この場合には、図7に示すように、データセット1~Nから監視項目1の数値を削除する。これにより、n-1種類の監視項目(監視項目2~n)の数値を含むデータセット1´~N´(第2データセット)が生成される。生成されたデータセット1´~N´は、例えばメモリ102に記憶される。
【0133】
次に、データセット1´~N´(第2データセット)を用いた学習によって、監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定されたノード(第2ノード)を含む第2決定木110Bを生成する(第2決定木生成ステップS23)。図8は、第2決定木110Bを示す模式図である。
【0134】
第2決定木110Bは、データセット1´~N´に含まれる監視項目2~nの数値を入力データ、データセット1´~N´の分類(対象物11の品質)を正解データとする教師あり学習によって生成される。その結果、監視項目2~nのいずれかが第2決定木110Bの各ノードに割り当てられる。また、各ノードにおいて、分類されるデータの不純度が算出されるとともに、割り当てられた監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定される。
【0135】
例えば、第2決定木110BのルートノードNBに監視項目2が割り当てられ、ルートノードNBから分岐した深さレベル1のノードNB11,NB12にそれぞれ監視項目3,4が割り当てられると、ルートノードNA及びノードNB11,NB12においてジニ不純度(≧0)が算出されるとともに、監視項目2~4に対応する特徴量のしきい値が情報利得に基づいて設定される。そして、ノードNB11,NB12から分岐した各ノードにも、同様に監視項目が割り当てられ、不純度と特徴量のしきい値とが算出される。このような処理が繰り返されることにより、第2決定木110Bが成長する。
【0136】
第2決定木110Bの成長は、全てのリーフノードの不純度が所定の基準値以下(例えば0)になるまで継続される。例えば、ノードNB11,NB12から分岐したリーフノードNA21~NA24においてジニ不純度が0になると、第2決定木110Bの成長が止まり、深さレベルが2の第2決定木110Bが生成される。
【0137】
上記のように、分類に支配的な監視項目が削除されたデータセット1´~N´を用いて第2決定木110Bを生成することにより、第1決定木110Aにおいては割り当てられなかった監視項目に対応する特徴量のしきい値が、第2決定木110Bにおいて算出される。その結果、決定木生成ステップS2において多数の監視項目に対応する特徴量のしきい値を取得することが可能になる。
【0138】
なお、第1決定木生成ステップS21及び第2決定木生成ステップS23では、第1決定木110A及び第2決定木110Bの剪定を実施してもよい。これにより、第1決定木110A及び第2決定木110Bの過学習が抑制される。
【0139】
例えば、第1決定木生成ステップS21では、第1決定木110Aのリーフノードの不純度が基準値以下になる前であっても、第1決定木110Aの深さレベルが所定の値に達した段階で、第1決定木110Aの学習及び成長を停止させてもよい。同様に、第2決定木生成ステップS23では、第2決定木110Bのリーフノードの不純度が基準値以下になる前であっても、第2決定木110Bの深さレベルが所定の値に達した段階で、第2決定木110Bの学習及び成長を停止させてもよい。
【0140】
また、決定木生成ステップS2では、第2決定木生成ステップS23の後にさらに削除ステップ及び決定木生成ステップを繰り返すことにより、第3以降の決定木を生成してもよい。これにより、第1決定木110A及び第2決定木110Bにおいて割り当てられなかった監視項目についても、特徴量のしきい値を取得することができる。
【0141】
より詳細には、第2決定木生成ステップS23の後、第2決定木110Bのルートノードから不純度が所定の基準値以下(例えば0)であるリーフノードに至る経路に存在するノードに対応する監視項目をデータセット1´~N´から削除する。具体的には、第2決定木110BのルートノードNBから不純度が0であるリーフノードNB21~NB24に至る経路には、監視項目2が割り当てられたルートノードNBと、監視項目3、4が割り当てられたノードNB11,NB12とが存在する。この場合には、データセット1´~N´から監視項目2~4の数値を削除する。これにより、n-4種類の監視項目(監視項目5~n)の数値を含むデータセット1´´~N´´(第3データセット)が生成される(削除ステップ)。
【0142】
次に、データセット1´´~N´´(第3データセット)を用いた学習によって、監視項目に対応する特徴量のしきい値が設定されたノードを含む第3決定木を生成する(第3決定木生成ステップ)。第3決定木の生成の手順は、第1決定木110A及び第2決定木110Bの生成の手順と同様である。これにより、第1決定木110A及び第2決定木110Bにおいて割り当てられなかった監視項目に対応する特徴量のしきい値が、第3決定木において算出される。
【0143】
その後、同様に削除ステップ及び決定木生成ステップを繰り返すことにより、第4以降の決定木が生成される。なお、決定木生成ステップS2において生成される決定木の数は適宜設定できる。例えば、所望の書類又は数の監視項目が決定木に割り当てられるまで、決定木の生成が繰り返される。
【0144】
なお、図6ではルートノードNAと一対のリーフノードNA11,NA12とによって構成される第1決定木110Aについて説明したが、第1決定木生成ステップS21では第1決定木がある程度育つ場合もある。第1決定木の他の例を、図9に示す。
【0145】
図9は、第1決定木110A(図6参照)の変形例に相当する第1決定木110A´を示す模式図である。例えば、第1決定木生成ステップS21を実施すると、深さレベルが2以上の第1決定木110A´が生成されることもある。図9には、ルートノードNA´に監視項目1が割り当てられ、ルートノードNA´から分岐したノードNA11´,NA12´に監視項目2、3が割り当てられた例を示している。
【0146】
ノードNA11´は、不純度が0のリーフノードNA21´,NA22´に分岐している。一方、ノードNA12´はノードNA23´,NA24´に分岐しており、ノードNA23´,NA24´に監視項目4、5が割り当てられている。また、ここでは、ノードNA23´,NA24´よりも下位のノードの不純度が、所定の深さレベルに至るまでに所定値以下とならなかった場合について説明する。
【0147】
第1決定木110A´では、ルートノードNA´から不純度が0であるリーフノードNA21´,NA22´に至る経路に、監視項目1が割り当てられたルートノードNA´と監視項目2が割り当てられたノードNA11´が存在する。この場合には、次の削除ステップS22(図7参照)において、データセット1~Nから監視項目1,2の数値が削除され、監視項目3~5は削除されない。これにより、n-2種類の監視項目(監視項目3~n)を含むデータセット1´~N´が生成される。そして、第2決定木生成ステップS23(図8参照)では、データセット1´~N´を用いた学習によって、第2決定木が生成される。
【0148】
決定木生成ステップS2で生成された決定木は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に記憶される。例えば、第1決定木110A及び第2決定木110Bを記述するプログラムが、パラメータ(不純度、しきい値等)とともにメモリ102(図5参照)に記憶される。
【0149】
決定木生成ステップS2における決定木の生成は、例えば切削装置2の外部に設けられた高性能な計算機によって実行される。ただし、切削装置2のコントローラ54が決定木の学習に十分な処理能力を備えている場合には、コントローラ54によって決定木の学習い、生成が実行されてもよい。
【0150】
次に、決定木のノードにおいて設定されたしきい値に基づいて、対象物11の処理又は監視の条件を設定する(条件設定ステップS3)。図10は、条件設定ステップS3において処理条件又は監視条件が設定される様子を示す概略図である。
【0151】
条件設定ステップS3では、まず、第1決定木110Aのルートノードから不純度が所定の基準値以下(例えば0)であるリーフノードに至る経路に存在するノード(第1ノード)において設定されている特徴量のしきい値が抽出される。また、第2決定木110Bのルートノードから不純度が所定の基準値以下(例えば0)であるリーフノードに至る経路に存在するノード(第2ノード)において設定されている特徴量のしきい値が抽出される。
【0152】
具体的には、第1決定木110AのルートノードNAにおいて設定されている特徴量のしきい値(監視項目1に対応する特徴量のしきい値)と、第2決定木110BのルートノードNB及びノードNB11,NB12において設定されている特徴量のしきい値(監視項目2~4に対応する特徴量のしきい値)とが読み出される。なお、第1決定木生成ステップS21において第1決定木110A´(図9参照)が生成された場合には、ルートノードNA´及びノードNA11´おいて設定されている特徴量のしきい値(監視項目1,2に対応する特徴量のしきい値)が読み出される。
【0153】
次に、第1決定木110A及び第2決定木110Bのノードから抽出された特徴量のしきい値が、そのノードに対応する監視項目の数値に換算される。例えば、監視項目1が加工液の温度である場合、第1決定木110AのルートノードNAから抽出されたしきい値が、加工液の温度(℃)に換算される。同様に、第2決定木110BのルートノードNB及びノードNB11,NB12から抽出された特徴量のしきい値が、監視項目2~4の数値に換算される。これにより、決定木のノードにおいて設定された特徴量のしきい値に基づく監視項目の基準値(決定木基準値)が取得される。
【0154】
決定木基準値は、切削装置2によって処理される対象物11が良品となるか不良品となるかを区別する監視項目の境界値に相当する。そのため、決定木基準値は、切削装置2で対象物11を処理する際の処理条件の設定、及び、対象物11の処理を監視するための監視条件の設定に用いることができる。
【0155】
例えば、切削装置2で対象物11を処理する際には、一部の監視項目と同じ項目の処理条件(加工条件)が設定される。処理条件の例としては、チャックテーブル18の吸引力、チャックテーブル18の移動速度(加工送り速度)、スピンドル62の回転数、切削ブレード44の切り込み深さ、加工液の温度及び流量等が挙げられる。
【0156】
そして、監視項目と処理条件とで共通する項目については、決定木基準値に基づいて処理条件を設定できる。例えば、決定木基準値が処理条件の許容範囲を画定するしきい値(下限値又は上限値)に設定され、処理条件はその許容範囲内において選定される。例えば、加工液の温度の決定木基準値が22℃であり、加工液の温度が高くなるほど対象物11が不良品になりやすい傾向がある場合には、加工液の温度の上限値が22℃に設定される。これにより、処理条件が対象物11の不良を生じさせやすい値に設定されることを回避できる。
【0157】
ただし、処理条件の設定方法に制限はない。例えば作業者は、決定木基準値のみでなく監視項目の値の分布も参照して、対象物11が不良品とならないように処理条件を設定してもよい。
【0158】
具体例として、第1決定木110AのルートノードNAに、監視項目1として加工液の温度が割り当てられた場合を考える。この場合、ルートノードNAのしきい値が加工液の温度(℃)に換算されて決定木基準値が算出されるとともに、ルートノードNAで分類されたデータセット1~N(図5参照)に含まれる監視項目1の値(加工液の温度)の分布が、対象物11の品質(良品又は不良品)ごとにグラフや表で表示されてもよい。これにより、作業者は加工液の温度分布を参照しつつ、対象物11が不良品とならないように加工液の温度を設定できる。
【0159】
また、切削装置2による対象物11の処理を監視するための監視条件も、決定木基準値に基づいて設定できる。例えば、第1決定木110A及び第2決定木110Bのノードにおいて設定された特徴量のしきい値に基づいて算出された決定木基準値が、そのまま切削装置2の監視項目の基準値に設定される。これにより、第1決定木110A及び第2決定木110Bによって決定されたしきい値を対象物11の処理の監視に反映させることができ、対象物11の処理が適切に監視される。
【0160】
ただし、監視項目の基準値は、対象物11の処理が適切に監視される範囲内で、決定木基準値から所定量増減させた値に設定されてもよい。これにより、要求される対象物11の品質に応じて、監視の基準を適宜緩和又は厳格化することができる。
【0161】
条件設定ステップS3において選定された処理条件及び監視条件は、切削装置2に入力され、コントローラ54のメモリに記録される。これにより、決定木基準値に基づいて設定された処理条件及び監視条件が切削装置2に適用される。
【0162】
次に、条件設定ステップS3において設定された処理又は監視の条件で、対象物11の処理又は監視を行う(処理ステップS4)。処理ステップS4では、条件設定ステップS3において処理条件又は監視条件が設定された切削装置2で、対象物11の処理を実施する。
【0163】
決定木基準値に基づいて処理条件及び監視条件が設定された切削装置2(図2参照)を稼働させると、対象物11が決定木基準値に基づく処理条件で加工される。これにより、加工不良の発生が抑制される。
【0164】
また、切削装置2の稼働中は、対象物11の処理が決定木基準値に基づく監視条件で監視される。具体的には、切削装置2に搭載された各種の監視ユニットによって監視情報が取得される。そして、監視ユニットによって取得された監視情報と、決定木基準値に基づいて設定された監視項目の基準値とがコントローラ54によって比較され、対象物11の処理の適否が判断される。これにより、加工不良の予兆を早期に発見できる。
【0165】
上記の監視によって対象物11の処理が不適切であると判定されると、切削装置2は不良品の形成を防止するための措置を実行する。例えば、コントローラ54が切削装置2の各構成要素に制御信号を出力し、切削装置2による対象物11の処理を中断させる。そして、監視結果に応じて切削装置2の処理条件が手動又は自動で調節される。
【0166】
なお、コントローラ54は、表示ユニット50に制御信号を出力することにより、表示ユニット50に監視結果を示す情報(エラーメッセージ、エラーコード等)を表示させてもよい。また、コントローラ54は、報知ユニット52に制御信号を出力することにより、報知ユニット52に切削装置2で異常が発生している旨を通知させてもよい。
【0167】
上記の通り、本実施形態に係る条件設定方法では、複数の監視項目の数値を含み対象物11の品質に基づいて分類されたデータセットが準備され、該データセットを用いた学習によって決定木が生成される。そして、決定木のノードにおいて設定された特徴量のしきい値に基づいて、対象物11の処理条件又は監視条件が設定される。これにより、不良品が形成されにくい適切な処理条件を設定でき、また、対象物11の品質を的確に予測可能な監視条件を設定できる。その結果、対象物11の加工不良等の不都合が抑制される。
【0168】
また、本実施形態に係る決定木の生成方法では、複数の項目の数値を含む第1データセットを用いた学習によって第1決定木110Aを生成した後、第1決定木110Aにおける分類に用いられた所定の項目を第1データセットから削除して第2データセットを生成し、第2データセットを用いた学習によってさらに第2決定木110Bを生成する。これにより、第1決定木110Aのノードに割り当てられなかった項目のしきい値が、第2決定木110Bにおいて算出される。その結果、データセットに含まれる多数の項目に対応する特徴量のしきい値を取得することが可能となる。
【0169】
なお、上記では切削装置2の処理条件及び監視条件が設定される場合について説明したが、本発明に係る条件設定方法及び決定木の生成方法は、切削装置以外の加工装置にも適用できる。他の加工装置の例として、レーザー加工装置200(図11参照)及び研削装置300(図12参照)について説明する。
【0170】
図11は、レーザー加工装置200を示す斜視図である。なお、図11において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向、前後方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向、左右方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0171】
レーザー加工装置200は、レーザー加工装置200を構成する各構成要素を支持又は収容する基台202を備える。基台202の前端角部には、直方体状の突出部204が基台202の上面から上方に突出するように設けられている。また、基台202の側端部には、壁状の支持構造206が基台202の上面から上方に突出するようにXZ平面に沿って設けられている。
【0172】
突出部204の内側には、カセットエレベータ208が設置されている。カセットエレベータ208には、カセットエレベータ208をZ軸方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)が接続されている。カセットエレベータ208の上面上には、複数の対象物11を収容可能なカセット210が配置される。
【0173】
カセットエレベータ208の側方には、対象物11が仮置きされる仮置き機構212が設けられている。仮置き機構212は、Y軸方向に沿って配置された一対のガイドレール212a,212bを備える。一対のガイドレール212a,212bは、概ね平行な状態を維持したまま、X軸方向に沿って互いに接近又は離隔するように移動する。ガイドレール212a,212bはそれぞれ、フレーム17を下側から支持する支持面と、支持面に垂直な側面とを備える。
【0174】
仮置き機構212の上方には、対象物11を搬送する搬送機構(搬送ユニット)214が設けられている。例えば搬送機構214は、対象物11又はフレーム17の上面側を吸引保持する複数の吸引パッドを備える。また、搬送機構214のカセットエレベータ208側の端部には、フレーム17を把持する把持部214aが備えられている。
【0175】
搬送機構214は、カセット210に収容されているフレーム17を把持部214aで把持した状態で、カセット210から離れるようにY軸方向に沿って移動する。これにより、対象物11がカセット210から引き出される。そして、フレーム17が一対のガイドレール212a,212bの支持面によって支持され、対象物11が仮置き機構212に仮置きされる。その後、一対のガイドレール212a,212bが互いに接近してフレーム17を挟み込み、対象物11及びフレーム17の位置合わせが行われる。
【0176】
基台202の中央部には、移動機構(移動ユニット)216が設けられている。移動機構216は、Y軸方向に沿って配置された一対のY軸ガイドレール218を備える。一対のY軸ガイドレール218には、平板状のY軸移動テーブル220がスライド可能に装着されている。
【0177】
Y軸移動テーブル220の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のY軸ガイドレール218の間にY軸方向に沿って配置されたY軸ボールねじ222が螺合されている。また、Y軸ボールねじ222の端部には、Y軸ボールねじ222を回転させるY軸パルスモータ224が連結されている。Y軸パルスモータ224でY軸ボールねじ222を回転させると、Y軸移動テーブル220がY軸ガイドレール218に沿ってY軸方向に移動する。
【0178】
Y軸移動テーブル220の表面側(上面側)には、X軸方向に沿って配置された一対のX軸ガイドレール226が設けられている。一対のX軸ガイドレール226には、平板状のX軸移動テーブル228がスライド可能に装着されている。
【0179】
X軸移動テーブル228の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のX軸ガイドレール226の間にX軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ230が螺合されている。また、X軸ボールねじ230の端部には、X軸ボールねじ230を回転させるX軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールねじ230を回転させると、X軸移動テーブル228がX軸ガイドレール226に沿ってX軸方向に移動する。
【0180】
X軸移動テーブル228の表面側(上面側)には、柱状のテーブルベース232が設けられている。テーブルベース232の上端部には、対象物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)234が装着されている。例えばチャックテーブル234は、テーブルベース232によって吸引保持される。仮置き機構212に仮置きされた対象物11は、搬送機構214等によってチャックテーブル234に搬送される。
【0181】
チャックテーブル234の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、対象物11を保持する保持面234aを構成している。保持面234aは、チャックテーブル234の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0182】
移動機構216は、Y軸移動テーブル220を移動させることによってチャックテーブル234をY軸方向に沿って移動させ、X軸移動テーブル228を移動させることによってチャックテーブル234をX軸方向に沿って移動させる。また、チャックテーブル234には、チャックテーブル234をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。さらに、チャックテーブル234の周囲には、フレーム17を把持して固定する複数のクランプ236が設けられている。
【0183】
また、レーザー加工装置200は、対象物11にレーザービームを照射する加工ユニット(レーザー照射ユニット)238を備える。加工ユニット238は、YAGレーザー、YVOレーザー、YLFレーザー等のレーザー発振器(不図示)と、チャックテーブル234の上方に配置されたレーザー加工ヘッド240とを備える。例えばレーザー加工ヘッド240は、支持構造206の側面からチャックテーブル234側に突出する柱状の支持部材206aの先端部に固定されている。
【0184】
レーザー加工ヘッド240には、レーザー発振器から出射したパルス発振のレーザービームを対象物11へと導く光学系(不図示)が収容されている。光学系は、集光レンズ、ミラー等の光学素子を含んで構成される。対象物11をチャックテーブル234で保持し、レーザー加工ヘッド240から対象物11にレーザービームを照射することにより、対象物11に所定のレーザー加工が施される。
【0185】
レーザー加工ヘッド240と隣接する位置には、撮像ユニット242が設けられている。撮像ユニット242は、CCDセンサ、CMOSセンサ等のイメージセンサを備えており、チャックテーブル234によって保持された対象物11等を撮像する。例えば撮像ユニット242として、可視光カメラや赤外線カメラが用いられる。撮像ユニット242によって取得された画像は、対象物11とレーザー加工ヘッド240との位置合わせ等に用いられる。
【0186】
また、レーザー加工装置200は、対象物11を洗浄する洗浄ユニット244を備える。洗浄ユニット244は、対象物11を保持して回転するスピンナテーブル246と、対象物11に洗浄流体を供給するノズル248とを備える。
【0187】
スピンナテーブル246の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、対象物11を保持する保持面を構成している。また、スピンナテーブル246には、スピンナテーブル246をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。さらに、スピンナテーブル246の周囲には、フレーム17を把持して固定する複数のクランプが設けられている。
【0188】
対象物11に対するレーザー加工が完了すると、対象物11は搬送機構214等によってチャックテーブル234から洗浄ユニット244へ搬送され、スピンナテーブル246によって吸引保持される。そして、スピンナテーブル246を回転させつつ、ノズル248から洗浄流体を噴射することにより、対象物11が洗浄される。洗浄流体としては、純水等の液体や、液体(純水等)と気体(エアー等)とが混合された混合流体等を用いることができる。これにより、対象物11に付着している加工屑等の異物が洗い流される。
【0189】
洗浄後の対象物11は、搬送機構214によって仮置き機構212へ搬送される。そして、一対のガイドレール212a,212bが対象物11を挟み込み、対象物11及びフレーム17の位置合わせが行われる。その後、搬送機構214がフレーム17を把持部214aで把持し、Y軸方向に沿ってカセットエレベータ208側に移動する。これにより、対象物11が再びカセット210に収容される。
【0190】
また、レーザー加工装置200は、表示ユニット、報知ユニット及びコントローラ(不図示)を備える。レーザー加工装置200の表示ユニット、報知ユニット、コントローラの具体的な構成及び機能はそれぞれ、切削装置2(図2参照)の表示ユニット50、報知ユニット52、コントローラ54と同様である。
【0191】
対象物11に施されるレーザー加工の内容に制限はない。例えばレーザー加工装置200は、対象物11に対して吸収性を有するレーザービームをストリート13(図1参照)に沿って照射することにより、対象物11にアブレーション加工を施す。これにより、対象物11にレーザー加工溝(カーフ)がストリート13に沿って形成される。なお、対象物11には、対象物11を切断するレーザー加工溝が形成されてもよいし、対象物11の厚さ未満の深さのレーザー加工溝が形成されてもよい。
【0192】
また、対象物11には、分割起点として機能する改質層(変質層)が形成されてもよい。具体的には、対象物11に対して透過性を有するレーザービームをストリート13(図1参照)に沿って照射することにより、対象物11の内部を多光子吸収によって改質させる。これにより、対象物11の内部に改質層がストリート13に沿って形成される。
【0193】
対象物11の改質層が形成された領域は、他の領域と比較して脆くなる。そのため、改質層が形成された対象物11に外力を付与すると、対象物11がストリート13に沿って破断する。これにより、対象物11が複数のデバイスチップに分割される。
【0194】
上記のレーザー加工装置200は、予め設定された処理条件(加工条件)で対象物11を処理する。処理条件の例としては、チャックテーブル234の吸引力、チャックテーブル234の移動速度(加工送り速度)、レーザービームの波長、平均出力、繰り返し周波数等が挙げられる。
【0195】
また、レーザー加工装置200には、対象物11の処理を監視する各種の監視ユニットが搭載される。レーザー加工装置200に搭載される監視ユニットの例は、切削装置2(図2参照)と同様である。例えばレーザー加工装置200には、トルク測定ユニット、振動測定ユニット、回転量測定ユニット、圧力測定ユニット、温度測定ユニット等が搭載される。そして、レーザー加工装置200は、監視ユニットによって取得された監視情報に基づいて対象物11の処理を監視する。
【0196】
レーザー加工装置200の処理条件及び/又は監視条件の設定には、本発明に係る条件設定方法を用いることができる。これにより、対象物11に適切なレーザー加工が施されるとともに、レーザー加工装置200による対象物11の処理が適切に監視される。
【0197】
図12は、研削装置300を示す斜視図である。なお、図12において、X軸方向(第1水平方向、前後方向)とY軸方向(第2水平方向、左右方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0198】
研削装置300は、研削装置300を構成する各構成要素を支持又は収容する基台302を備える。基台302の前端部の上面側には開口302aが設けられており、開口302aの内側には対象物11を搬送する搬送機構(搬送ユニット)304が設けられている。例えば搬送機構304として、対象物11を保持可能なロボットハンド(エンドエフェクタ)が装着された搬送ロボットが用いられる。
【0199】
搬送機構304の前方には、カセット設置台306a,306bが設けられている。カセット設置台306a,306b上にはそれぞれ、複数の対象物11を収容可能なカセット308a,308bが配置される。
【0200】
開口302aの斜め後方には、位置合わせ機構(アライメント機構)310が設けられている。カセット308a,308bに収容された対象物11は、搬送機構304によって位置合わせ機構310に搬送される。そして、位置合わせ機構310は対象物11を挟み込んで対象物11の位置合わせを行う。
【0201】
位置合わせ機構310に隣接する位置には、対象物11を搬送する搬送機構(搬送ユニット、ローディングアーム)312が設けられている。例えば搬送機構312は、対象物11の上面側を吸引保持する吸引パッドを備える。搬送機構312は、位置合わせ機構310によって位置合わせが行われた対象物11を吸着パッドで保持した状態で、吸着パッドを旋回させて対象物11を後方に搬送する。
【0202】
搬送機構312の後方には、円盤状のターンテーブル314が設けられている。ターンテーブル314には、ターンテーブル314をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0203】
ターンテーブル314上には、対象物11を保持する複数のチャックテーブル(保持テーブル)316が設けられている。図12には、3個のチャックテーブル316がターンテーブル314の周方向に沿って概ね等間隔(120°間隔)で配置されている例を示している。ただし、チャックテーブル316の個数に制限はない。
【0204】
チャックテーブル316の上面は、対象物11を保持する保持面316aを構成している。保持面18aは、チャックテーブル316の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル316には、チャックテーブル316をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0205】
例えばターンテーブル314は、平面視で時計回りに回転する。これにより、各チャックテーブル316が搬送位置A、粗研削位置(第1研削位置)B、仕上げ研削位置(第2研削位置)C、搬送位置Aに順に位置付けられる。
【0206】
粗研削位置B、仕上げ研削位置Cの後方にはそれぞれ、柱状の支持構造318a,318bが配置されている。支持構造318aの前面側には移動機構(移動ユニット)320aが設けられ、支持構造318bの前面側には移動機構(移動ユニット)320bが設けられている。
【0207】
移動機構320a,320bはそれぞれ、Z軸方向に沿って配置された一対のZ軸ガイドレール322を備える。一対のZ軸ガイドレール322には、平板状のZ軸移動プレート324がZ軸ガイドレール322に沿ってスライド可能に装着されている。
【0208】
Z軸移動プレート324の後面側(裏面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のZ軸ガイドレール322の間にZ軸方向に沿って配置されたZ軸ボールねじ326が螺合されている。また、Z軸ボールねじ326の端部には、Z軸パルスモータ328が連結されている。Z軸パルスモータ328でZ軸ボールねじ326を回転させると、Z軸移動プレート324がZ軸方向に沿って移動する。
【0209】
移動機構320aのZ軸移動プレート324には、対象物11に粗研削を施す加工ユニット(第1研削ユニット、粗研削ユニット)330aが装着されている。加工ユニット330aは、粗研削位置Bに位置付けられたチャックテーブル316によって保持されている対象物11を研削する。
【0210】
一方、移動機構320bのZ軸移動プレート324には、対象物11に仕上げ研削を施す加工ユニット(第2研削ユニット、仕上げ研削ユニット)330bが装着されている。加工ユニット330bは、仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル316によって保持されている対象物11を研削する。
【0211】
加工ユニット330a,330bはそれぞれ、Z軸移動プレート324の前面側に固定された支持具332を備え、支持具332は中空の円柱状に形成されたハウジング334を支持している。ハウジング334には、Z軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル336が収容されている。スピンドル336の先端部(下端部)はハウジング334から突出しており、スピンドル336の基端部(上端部)にはスピンドル336を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0212】
加工ユニット330aのスピンドル336の先端部には、粗研削用の研削ホイール(粗研削ホイール)338aが装着される。一方、加工ユニット330bのスピンドル336の先端部には、仕上げ研削用の研削ホイール(仕上げ研削ホイール)338bが装着される。研削ホイール338a,338bは、スピンドル336の先端部に着脱可能で対象物11を研削する加工工具であり、例えば締結ボルト等の固定具によってスピンドル336の先端部に固定される。
【0213】
研削ホイール338a,338bはそれぞれ、アルミニウム、ステンレス等の金属でなる環状のホイール基台と、ホイール基台の下面側に固定された複数の研削砥石とを備える。例えば研削砥石は、直方体状に形成され、ホイール基台の周方向に沿って概ね等間隔で環状に配列される。
【0214】
研削砥石は、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するメタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等の結合材(ボンド材)とを含む。なお、研削砥石の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、研削砥石の数及び配列も任意に設定できる。ただし、研削ホイール338bの研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、研削ホイール338aの研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径よりも小さい。
【0215】
移動機構320aは、加工ユニット330aをZ軸方向に沿って昇降させることにより、粗研削位置Bに位置付けられているチャックテーブル316と研削ホイール338aとをZ軸方向に沿って互いに接近及び離隔させる。同様に、移動機構320bは、加工ユニット330bをZ軸方向に沿って昇降させることにより、仕上げ研削位置Cに位置付けられているチャックテーブル316と研削ホイール338bとをZ軸方向に沿って互いに接近及び離隔させる。
【0216】
回転駆動源によってスピンドル336を回転させると、研削ホイール338a,338bがZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。その結果、複数の研削砥石がそれぞれ、スピンドル336の回転軸を中心とする環状の旋回経路(旋回軌道)に沿って旋回する。
【0217】
研削ホイール338a,338bを回転させつつ研削砥石を対象物11に接触させることにより、対象物11が研削され、薄化される。また、対象物11の研削中は、純水等の加工液(研削液)が対象物11及び研削ホイール338a,338bに供給される。これにより、対象物11及び研削ホイール338a,338bが冷却されるとともに、研削によって発生した加工屑が洗い流される。
【0218】
搬送機構312とY軸方向において隣接する位置には、対象物11を搬送する搬送機構(搬送ユニット、アンローディングアーム)340が設けられている。例えば搬送機構340は、対象物11の上面側を吸引保持する吸引パッドを備える。搬送機構340は、搬送位置Aに配置されたチャックテーブル316によって保持されている対象物11を吸着パッドで保持した状態で、吸着パッドを旋回させて対象物11を前方に搬送する。
【0219】
搬送機構340の前方側には、対象物11を洗浄する洗浄ユニット(洗浄機構、洗浄装置)342が設けられている。洗浄ユニット342は、搬送機構340によってチャックテーブル316から搬送された対象物11を洗浄する。
【0220】
例えば洗浄ユニット342は、対象物11を保持して回転するスピンナテーブルと、スピンナテーブルによって保持された対象物11に洗浄流体を供給するノズルとを備える。スピンナテーブルの上面は、対象物11を保持する保持面を構成している。保持面は、スピンナテーブルの内部に形成された流路を介してエジェクタ等の吸引源に接続される。また、スピンナテーブルには、スピンナテーブルをZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源が連結される。
【0221】
また、研削装置300は、表示ユニット、報知ユニット及びコントローラ(不図示)を備える。研削装置300の表示ユニット、報知ユニット、コントローラの具体的な構成及び機能はそれぞれ、切削装置2(図2参照)の表示ユニット50、報知ユニット52、コントローラ54と同様である。
【0222】
研削装置300で対象物11を加工する際には、まず、複数の対象物11を収容したカセット308a又はカセット308bが、カセット設置台306a又はカセット設置台306b上に設置される。そして、搬送機構304によって対象物11がカセット308a又はカセット308bから位置合わせ機構310に搬送され、位置合わせ機構310によって対象物11の位置合わせが行われる。その後、搬送機構312によって対象物11が搬送位置Aに配置されているチャックテーブル316に搬送され、チャックテーブル316によって吸引保持される。
【0223】
次に、ターンテーブル314が回転し、対象物11を保持したチャックテーブル316が粗研削位置Bに位置付けられる。そして、チャックテーブル316及び研削ホイール338aを回転させた状態で、加工ユニット330aを下降させ、研削ホイール338aの研削砥石を対象物11に接触させる。これにより、対象物11に粗研削が施される。
【0224】
続いて、ターンテーブル314が回転し、対象物11を保持したチャックテーブル316が仕上げ研削位置Cに位置付けられる。そして、チャックテーブル316及び研削ホイール338bを回転させた状態で、加工ユニット330bを下降させ、研削ホイール338bの研削砥石を対象物11に接触させる。これにより、対象物11に仕上げ研削が施される。
【0225】
対象物11の研削が完了すると、ターンテーブル314が回転し、対象物11を保持したチャックテーブル316が再び搬送位置Aに位置付けられる。そして、対象物11は搬送機構340によってチャックテーブル316上から洗浄ユニット342に搬送され、洗浄ユニット342によって洗浄される。洗浄後の対象物11は、搬送機構304によって搬送され、再びカセット308a又はカセット308bに収容される。
【0226】
上記の研削装置300は、予め設定された処理条件(加工条件)で対象物11を処理する。処理条件の例としては、チャックテーブル234の回転数、スピンドル336の回転数、加工ユニット330a,330bの加工速度(研削送り速度)、加工液の温度及び流量等が挙げられる。
【0227】
また、研削装置300には、対象物11の処理を監視する各種の監視ユニットが搭載される。研削装置300に搭載される監視ユニットの例は、切削装置2(図2参照)と同様である。例えば研削装置300には、トルク測定ユニット、振動測定ユニット、温度測定ユニット、流量測定ユニット、圧力測定ユニット、回転量測定ユニット、荷重測定ユニット等が搭載される。そして、研削装置300は、監視ユニットによって取得された監視情報に基づいて対象物11の処理を監視する。
【0228】
研削装置300の処理条件及び/又は監視条件の設定には、本発明に係る条件設定方法を用いることができる。これにより、対象物11に適切な研削加工が施されるとともに、研削装置300による対象物11の処理が適切に監視される。
【0229】
また、本実施形態に係る条件設定方法は、他の加工装置に適用することもできる。他の加工装置の例としては、対象物11を研磨する研磨装置、対象物11にエッチング処理を施すエッチング装置、対象物11にプラズマ処理(成膜、プラズマエッチング等)を施すプラズマ処理装置等が挙げられる。
【0230】
さらに、本実施形態に係る条件設定方法は、加工装置以外の処理装置に適用することもできる。例えば、対象物11(被洗浄物)を洗浄する洗浄装置、対象物11(被検査物)を検査する検査装置、対象物11(被搬送物)を搬送する搬送装置等においても、本実施形態に係る条件設定方法によって処理条件(洗浄条件、搬送条件、検査条件)及び/又は監視条件が設定されてもよい。
【0231】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0232】
11 対象物(被処理物、被監視物)
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 フレーム
17a 開口
19 シート
2 切削装置
4 基台
6 移動機構(移動ユニット)
8 X軸ガイドレール
10 X軸移動テーブル
12 X軸ボールねじ
14 X軸パルスモータ
16 テーブルベース
18 チャックテーブル(保持テーブル)
18a 保持面
20 ウォーターケース
22 支持構造
24 移動機構(移動ユニット)
26 Y軸ガイドレール
28 Y軸移動プレート
30 Y軸ボールねじ
32 Y軸パルスモータ
34 Z軸ガイドレール
36 Z軸移動プレート
38 Z軸ボールねじ
40 Z軸パルスモータ
42 加工ユニット(切削ユニット)
44 切削ブレード
44a 開口
44b ハブ基台
44c 切刃
46 ノズル
48 撮像ユニット
50 表示ユニット(表示部、表示装置)
52 報知ユニット(報知部、報知装置)
54 コントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)
60 ハウジング
60a ねじ穴
62 スピンドル
62a ボルト穴
64 回転駆動源
66 カバーユニット
66a 開口
66b 固定部
66c 開口
68 ねじ
70 ブレードマウント
70a 開口
72 フランジ部
72a 支持面
74 第1ボス部
74a ねじ部(ねじ溝)
76 第2ボス部
78 ワッシャー
80 ボルト
82 固定部材
82a 開口
82b 支持面
84 振動測定ユニット
86 超音波振動子
88 伝送路
90 第1インダクタ
92 第2インダクタ
100,100´ データ
102 メモリ
110A,110A´ 第1決定木
110B 第2決定木
200 レーザー加工装置
202 基台
204 突出部
206 支持構造
206a 支持部材
208 カセットエレベータ
210 カセット
212 仮置き機構
212a,212b ガイドレール
214 搬送機構(搬送ユニット)
214a 把持部
216 移動機構(移動ユニット)
218 Y軸ガイドレール
220 Y軸移動テーブル
222 Y軸ボールねじ
224 Y軸パルスモータ
226 X軸ガイドレール
228 X軸移動テーブル
230 X軸ボールねじ
232 テーブルベース
234 チャックテーブル(保持テーブル)
234a 保持面
236 クランプ
238 加工ユニット(レーザー照射ユニット)
240 レーザー加工ヘッド
242 撮像ユニット
244 洗浄ユニット
246 スピンナテーブル
248 ノズル
300 研削装置
302 基台
302a 開口
304 搬送機構(搬送ユニット)
306a,306b カセット設置台
308a,308b カセット
310 位置合わせ機構(アライメント機構)
312 搬送機構(搬送ユニット、ローディングアーム)
314 ターンテーブル
316 チャックテーブル(保持テーブル)
316a 保持面
318a,318b 支持構造
320a,320b 移動機構(移動ユニット)
322 Z軸ガイドレール
324 Z軸移動プレート
326 Z軸ボールねじ
328 Z軸パルスモータ
330a 加工ユニット(第1研削ユニット、粗研削ユニット)
330b 加工ユニット(第2研削ユニット、仕上げ研削ユニット)
332 支持具
334 ハウジング
336 スピンドル
338a 研削ホイール(粗研削ホイール)
338b 研削ホイール(仕上げ研削ホイール)
340 搬送機構(搬送ユニット、アンローディングアーム)
342 洗浄ユニット(洗浄機構、洗浄装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12