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特開2024-150011感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
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  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150011
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20241016BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241016BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063213
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】野本 周司
(72)【発明者】
【氏名】代島 雄汰
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC53
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD14
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AM62P
2H225AN36P
2H225AN94P
2H225AP11P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314BB06
5E314BB10
5E314CC02
5E314CC03
5E314CC07
5E314CC15
5E314DD07
5E314FF01
5E314GG03
5E314GG09
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】解像性、耐熱衝撃性及び絶縁性に優れる永久レジストを形成することができる感光性樹脂組成物、当該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る感光性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂と、(B)(メタ)アクリロイル基及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂と、(C)光重合開始剤と、(D)無機フィラーとを含有し、前記(B)成分が、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、環状エーテル基を有する化合物と、α,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸と、多塩基酸無水物との反応物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂と、(B)(メタ)アクリロイル基及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂と、(C)光重合開始剤と、(D)無機フィラーとを含有し、
前記(B)成分が、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、環状エーテル基を有する化合物と、α,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸と、多塩基酸無水物との反応物である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記環状エーテル基を有する化合物が、アルキレンオキシド化合物及び環状カーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、シリカ粒子を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)エラストマーを更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(F)光重合性モノマーを更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(G)硬化剤を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、20質量%以上である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
支持フィルムと、
請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光層とを備える、感光性エレメント。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む永久レジストを具備する、プリント配線板。
【請求項10】
前記永久レジストの厚さが、5μm以上である、請求項9に記載のプリント配線板。
【請求項11】
基板上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光層を形成する工程と、
前記感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、を備える、プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
基板上に、請求項8に記載の感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、
前記感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、を備える、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、永久レジスト用の感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板分野では、プリント配線板上に永久レジストを形成することが行われている。永久レジストは、プリント配線板の使用時において、導体層の腐食を防止したり、導体層間の電気絶縁性を保持したりする役割を有している。近年、永久レジストは、半導体素子をプリント配線板上にはんだを介してフリップチップ実装又はワイヤボンディング実装を行う工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ、はんだレジスト膜としての役割をも有するようになっている。
【0003】
永久レジストは、熱硬化性樹脂組成物を用いたスクリーン印刷法、感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法等によって形成されている。例えば、FC(Flip Chip)、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flim)等の実装方式を用いたフレキシブル配線板においては、ICチップ、電子部品又はLCD(液晶ディスプレイ)パネル、及び接続配線部分を除いて、熱硬化性樹脂ペーストをスクリーン印刷し、熱硬化させて永久レジストを形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電子部品に搭載されているBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ基板においては、(1)半導体パッケージ基板上にはんだを介して半導体素子をフリップチップ実装するために、(2)半導体素子と半導体パッケージ基板とをワイヤボンディング接合するために、又は(3)半導体パッケージ基板をマザーボード基板上にはんだ接合するためには、接合部分の永久レジストを除去する必要がある。そのため、永久レジストの像形成には、感光性樹脂組成物を塗布して乾燥した後、選択的に紫外線等の活性光線を照射して硬化させ、未照射部分のみを現像で除去して像形成するフォトリソグラフィー法が用いられている。フォトリソグラフィー法は、その作業性の良さから大量生産に適しており、電子材料業界では感光性材料の像形成に広く用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-198105号公報
【特許文献2】特開2011-133851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント配線板の高密度化に対応して、永久レジストにも更なる高性能化が要求されており、特に解像性(微細パターン形成性)、耐熱衝撃性及び絶縁性を高度に両立させることが求められている。
【0007】
本開示の目的は、解像性、耐熱衝撃性及び絶縁性に優れる永久レジストを形成することができる感光性樹脂組成物、当該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、以下の感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
[1](A)(メタ)アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂と、(B)(メタ)アクリロイル基及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂と、(C)光重合開始剤と、(D)無機フィラーとを含有し、(B)成分が、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、環状エーテル基を有する化合物と、α,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸と、多塩基酸無水物との反応物である、感光性樹脂組成物。
[2]環状エーテル基を有する化合物が、アルキレンオキシド化合物及び環状カーボネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3](D)成分が、シリカ粒子を含む、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4](E)エラストマーを更に含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5](F)光重合性モノマーを更に含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6](G)硬化剤を更に含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7](B)成分の含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、20質量%以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]支持フィルムと、上記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む感光層とを備える、感光性エレメント。
[9]上記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む永久レジストを具備する、プリント配線板。
[10]永久レジストの厚さが、5μm以上である、上記[9]に記載のプリント配線板。
[11]基板上に、上記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は上記[8]に記載の感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、を備える、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、解像性、耐熱衝撃性及び絶縁性に優れる永久レジストを形成することができる感光性樹脂組成物、当該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る感光性エレメントを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について具体的に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を不当に制限するものではない。
【0012】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本開示において、組成物中の各成分の含有率は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。本開示において、「固形分」とは、樹脂組成物に含まれる水、溶媒等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、該樹脂組成物を乾燥させた際に蒸発又は揮発せずに残る成分を示し、室温(25℃、以下同様)で液状、水飴状又はワックス状の成分も含む。本開示において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル等の他の類似表現についても同様である。
【0013】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂(以下、「(A)成分」ともいう)と、(B)(メタ)アクリロイル基及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂(以下、「(B)成分」ともいう)と、(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう)と、(D)無機フィラーと(以下、「(D)成分」ともいう)を含有し、(B)成分が、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、環状エーテル基を有する化合物と、α,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸と、多塩基酸無水物との反応物である。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性樹脂組成物であり、感光性樹脂組成物の硬化膜は、永久レジストとして好適に用いることができる。
【0014】
<(A)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分として、(メタ)アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂を含有する。(A)成分を含有することにより、絶縁性及び耐熱衝撃性に優れる永久レジストを形成することができる。(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(A)成分は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物(以下、「(a)成分」ともいう)と、環状エーテル基を有する化合物(以下、「(b)成分」ともいう)と、α,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(以下、「(c)成分」ともいう)との反応物であってもよい。このような(A)成分は、親水性のアルキレンオキシド基又はその繰り返し構造を有することから、後述の(B)成分と併用することにより、アルカリ現像性が良好となる傾向がある。また、このような(A)成分を含有することにより、形成される永久レジストの絶縁性により優れる。
【0016】
(a)成分としては、例えばノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂は、例えば、酸性触媒の存在下でフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により合成することができる。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、クミルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビキシレノールが挙げられる。絶縁性、耐熱衝撃性及びアルカリ現像性により優れる観点から、(a)成分は、ビスフェノールAを用いて得られるビスフェノールA型ノボラック樹脂、又はビスフェノールFを用いて得られるビスフェノールF型ノボラック樹脂を用いてもよい。
【0017】
(a)成分としては、ノボラック型フェノール樹脂以外に、例えば、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、1-ナフトール又は2-ナフトールとアルデヒド類との縮合物(すなわちナフトール型ノボラック樹脂)、1,2-、1,3-、1,4-、1,5-、1,6-、2,3-、2,6-、2,7-ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物、モノナフトールと上記ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物、モノ又はジヒドロキシナフタレンとキシリレングリコール類との縮合物、モノ又はジヒドロキシナフタレンとジエン化合物との付加物、フェノール類とビス(メトキシメチル)ビフェニルとの縮合物等が挙げられる。
【0018】
(a)成分は、平均フェノール核数が3以上のものを使用してもよい。(a)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(b)成分としては、例えば、アルキレンオキシド化合物及び環状カーボネート化合物が挙げられる。アルキレンオキシド化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、及びテトラヒドロピランが挙げられる。環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが挙げられる。(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。(b)成分は、絶縁性、耐熱衝撃性及びアルカリ現像性の観点から、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを用いてもよい
【0020】
(c)成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物、及び、飽和又は不飽和二塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリレートとの半エステル化合物が挙げられる。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。光反応性と硬化物の物性、特に耐熱衝撃性、耐吸湿性及び絶縁性の観点から、(c)成分は、アクリル酸又はメタクリル酸を用いてもよい。
【0021】
(A)成分は、解像性、耐熱衝撃性及び絶縁性により優れる観点から、ビスフェノールA型ノボラック樹脂又はビスフェノールF型ノボラック樹脂と、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドと、アクリル酸又はメタクリル酸との反応物であってもよい。
【0022】
(A)成分は、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部に、環状エーテル基を有する化合物(b)を付加反応させ、アルコール性水酸基を有するアルキレンオキシド付加物を得るステップ(以下、「ステップ1」ともいう)と、当該付加物のアルコール性水酸基にα,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(c)をエステル化反応させるステップ(以下、「ステップ2」ともいう)を経ることにより得ることができる。
【0023】
ステップ1は、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物;トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第四級アンモニウム塩;又はアルカリ金属化合物と第四級アンモニウム塩との混合物の存在下で、有機溶媒を使用して、80~180℃、常圧~10kg/cmで、行われてもよい。有機溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;及びこれらの混合溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用してもよく、ケトン類、芳香族炭化水素類及びこれらの混合溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用してもよい。
【0024】
ステップ2におけるエステル化反応は、50~150℃の温度で、減圧下、常圧下又は加圧下で行われてもよい。溶媒としては、公知のものを用いることができる。触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、燐酸、フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びカチオン交換樹脂が挙げられる。エステル化反応は、重合禁止剤の存在下で行われてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロールが挙げられる。
【0025】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、2000~150000又は4000~100000であってもよい。
【0026】
Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。Mwは、例えば、下記のGPC条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値をMwとすることができる。検量線の作成は、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(「PStQuick MP-H」及び「PStQuick B」、東ソー株式会社製)を用いることができる。
GPC装置:高速GPC装置「HCL-8320GPC」(東ソー株式会社製)
検出器 :示差屈折計又はUV検出器(東ソー株式会社製)
カラム :カラムTSKgel SuperMultipore HZ-H(カラム長さ:15cm、カラム内径:4.6mm)(東ソー株式会社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
測定温度 :40℃
流量 :0.35mL/分
試料濃度 :10mg/THF5mL
注入量 :20μL
【0027】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、耐熱衝撃性及び絶縁性の観点から、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、12質量部以上又は14質量部以上であってもよく、解像性の観点から、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下又は35質量部以下であってもよい。(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、耐熱衝撃性及び絶縁性の観点から、1質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上であってもよく、解像性の観点から、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下又は14質量%以下であってもよい。
【0028】
<(B)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(B)成分として、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂を含有する。(B)成分は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、環状エーテル基を有する化合物と、α,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸と、多塩基酸無水物(以下、「(d)成分」ともいう)との反応物である。このような(B)成分は、(A)成分との相溶性に優れ、(A)成分と併用することにより、解像性に優れる。また、(B)成分を含有することにより、現像性、特にアルカリ現像性が良好となる傾向がある。(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、環状エーテル基を有する化合物、及びα,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸としては、それぞれ、独立的に、上記(A)成分において列挙された(a)成分~(c)成分を使用してもよい。
【0030】
(d)成分としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸の無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸の無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物が挙げられる。(d)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。(d)成分は、解像性及び耐熱性の観点から、脂環式二塩基酸無水物を使用してもよい。
【0031】
(B)成分は、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基の一部又は全部に、環状エーテル基を有する化合物を付加反応させ、アルコール性水酸基を有するアルキレンオキシド付加物を得るステップ(以下、「ステップi」ともいう)と、当該付加物のアルコール性水酸基にα,β-エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸をエステル化反応させるステップ(以下、「ステップii」ともいう)と、得られた生成物に多塩基酸無水物を更に反応させるステップ(以下、「ステップiii」ともいう)を経ることにより得ることができる。ステップi及びiiの反応条件は、それぞれ、上記(A)成分において説明したステップ1及び2の条件と同じであってもよい。
【0032】
ステップiiiにおいて、(d)成分の使用量は、生成する(B)成分の酸価が30~150mgKOH/g又は50~120mgKOH/gとなるような量であってもよい。ステップiiiにおける反応は、有機溶剤の存在下又は非存在下で、ハイドロキノン化合物及び酸素等の重合禁止剤の存在下、50~150℃で行われてもよい。必要に応じて、触媒を使用してもよい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、及びトリフェニルホスフィン等のリン化合物が挙げられる。
【0033】
(B)成分の酸価は、30~150mgKOH/g又は50~120mgKOH/gであってもよい。(B)成分の酸価が30mgKOH/g以上であると、アルカリ水溶液に対する溶解性が良好になり、形成された塗膜の現像が容易になる傾向がある。(B)成分の酸価が150mgKOH/g以下であると、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまうことを抑制することができる。
【0034】
(B)成分の重量平均分子量は、2000~150000又は4000~100000であってもよい。(B)成分の重量平均分子量が2000以上であると、タックフリー性能が劣ることを抑制することができるとともに、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像性が大きく劣ることを抑制することができる。(B)成分の重量平均分子量が150000以下であると、現像性が著しく悪くなること及び貯蔵安定性が劣ることを抑制することができる。
【0035】
(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の総量を基準として、20質量%以上又は25質量%以上であってもよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下又は35質量%以下であってもよい。(B)成分の含有量が20質量%以上であると、解像性により優れる。(B)成分の含有量が50質量%以下であると、感光性樹脂組成物の酸価が高くなることを抑制して、絶縁性が低下することを抑制することができる。
【0036】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、本開示の効果を妨げない範囲で、必要に応じて(B)成分以外のカルボキシ基含有樹脂を使用してもよい。このようなカルボキシ基含有樹脂としては、例えば、ノボラック型及び/又はビスフェノール型エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応生成物に酸無水物を付加して得られたものが挙げられる。
【0037】
<(C)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(C)成分として光重合開始剤を含有する。(C)成分は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物に含有される光重合性を有する化合物を重合させることができれば、特に限定されなく、通常用いられる光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
(C)成分としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアルキルフェノン化合物;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン化合物;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール化合物;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;及び1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-[O-(エトキシカルボニル)オキシム]等のオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0039】
(C)成分は、アルキルフェノン化合物、チオキサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシムエステル化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。(C)成分は、所望する性能に応じて選択することができる。(C)成分は、フォトブリーチングすることで、底部の硬化性を向上させる観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物を含んでもよく、揮発してアウトガスを発生し難い観点から、アルキルフェノン化合物を含んでもよい。
【0040】
アルキルフェノン化合物は、ベンジルケタール構造を有するベンジルケタール化合物、カルボニル基のα位にヒドロキシ基を有するα-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、及びカルボニル基のα位に窒素原子を有するα-アミノアルキルフェノン化合物にも分類することができ、これらの中でも、α-アミノアルキルフェノン化合物が好ましい。(C)成分がアルキルフェノン化合物を含む場合、アルキルフェノン化合物の含有量は、(C)成分の全量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上又は90質量%以上であってもよい。
【0041】
(C)成分の含有量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.4質量%以上又は0.6質量%以上であってもよく、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下又は1.5質量%以下であってもよい。(C)成分の含有量が、0.1質量%以上であると、露光部が現像中に溶出し難くなる傾向があり、15質量%以下であると、耐熱性に優れる傾向がある。
【0042】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上記(C)成分に加えて、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光重合開始助剤を更に含有していてもよい。光重合開始助剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
<(D)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(D)成分として無機フィラーを含有する。(D)成分を含有することで、形成される永久レジストの耐熱衝撃性に優れる。(D)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
(D)成分としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化ケイ素(Si)、チタン酸バリウム(BaO・TiO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、チタン酸鉛(PbO・TiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga)、スピネル(MgO・Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al/5SiO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、チタン酸アルミニウム(TiO・Al)、イットリア含有ジルコニア(Y・ZrO)、ケイ酸バリウム(BaO・8SiO)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、ハイドロタルサイト、雲母、焼成カオリン、及びカーボン(C)が挙げられる。
【0045】
(D)成分は、永久レジストの耐熱衝撃性をより向上させる観点から、シリカ粒子を含んでもよい。シリカ粒子の含有量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上又は28質量%以上であってもよく、60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってもよい。シリカ粒子の含有量が上記範囲内であると、低熱膨張率、はんだ耐熱性、接着強度等により優れる傾向がある。
【0046】
(D)成分は、凝集防止効果により感光性樹脂組成物における無機フィラーの分散性を向上させる観点から、予めアルミナ又は有機シラン化合物で表面処理された無機フィラーを使用してもよい。
【0047】
(D)成分の平均粒径は、解像性の観点から、0.01~5μm、0.05~3μm、0.1~2μm、又は0.15~1μmであってもよい。
【0048】
(D)成分の平均粒径は、感光性樹脂組成物に分散した状態での無機フィラーの平均粒径であり、以下の手順で測定して得られる値である。すなわち、感光性樹脂組成物を溶剤(メチルエチルケトン)で1000倍に希釈した後、サブミクロン粒子アナライザ(ベックマン・コールター株式会社製、商品名「N5」)を用いて、国際標準規格ISO13321に準拠して、屈折率1.38で、溶剤中に分散した粒子の粒度分布を測定する。粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒子径を平均粒径とする。感光性樹脂組成物を用いて形成された感光層及びその硬化膜に含まれる(D)成分の平均粒径についても、同様の手順で測定することができる。
【0049】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、20質量%以上、25質量%以上又は28質量%以上であってもよく、70質量%以下、65質量%以下又は60質量%以下であってもよい。(D)成分の含有量が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の硬化物の強度、耐熱衝撃性、解像性等により優れる傾向がある。
【0050】
<(E)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(E)成分としてエラストマーを更に含有してもよい。(E)成分を含有することにより、硬化収縮による樹脂内部の歪み(内部応力)に起因する可とう性及び接着強度の低下を抑えることができ、感光性樹脂組成物により形成される硬化膜の可撓性及び接着強度を向上させることができる。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(E)成分を更に含有することにより、半導体パッケージ基板に好適に使用することができる。(E)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
(E)成分としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。(E)成分は、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びアクリル系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。現像性の観点から、(E)成分は、アクリル系エラストマーを含んでもよい。
【0052】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-ペンテン等の炭素数2~20のα-オレフィンの重合体又は共重合体;炭素数2~20のα-オレフィンと、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2~20の非共役ジエンとの共重合体;及びカルボン酸変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、及びエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)が挙げられる。
【0053】
ポリエステル系エラストマーとしては、ジカルボン酸又はその誘導体と、ジオール化合物又はその誘導体とを重縮合した化合物を用いることができる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸;及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環族ジオール;及びビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等の芳香族ジオールが挙げられる。
【0054】
ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。ハードセグメント及びソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いによりさまざまなグレードのポリエステル系エラストマーがある。このようなマルチブロック共重合体の市販品としては、例えば、「ハイトレル(登録商標)」(東レ・デュポン株式会社製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡株式会社製)、「エスペル(登録商標)」及び「テスラック(登録商標)」(株式会社レゾナック製)が挙げられる。
【0055】
アクリル系エラストマーは、(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位を主成分として含む化合物を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、及びエトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系エラストマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、アクリロニトリルとを共重合した化合物であってもよく、架橋点となる官能基を有するモノマーを更に共重合した化合物であってもよい。官能基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート及びアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0056】
アクリル系エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メタクリル酸共重合体、及びアクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0057】
(E)成分の重量平均分子量は、500以上50000以下、800以上30000以下、又は1000以上20000以下であってもよい。(E)成分の重量平均分子量が上記範囲内であると、(B)成分との相溶性及び未露光部の現像液への溶出性に優れ、解像性に優れる傾向がある。
【0058】
(E)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.5~20質量%、1~15質量%、1.5~10質量%、2~6質量%又は2~4質量%であってもよい。
【0059】
<(F)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(F)成分として、光重合性モノマーを更に含有してもよい。(F)成分は、光重合性を示す官能基を有するモノマーであれば特に限定されない((A)成分及び(B)成分を除く)。光重合性を示す官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。(F)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
(F)成分は、光感度の観点から、分子量が1000以下の光重合性モノマーを含んでもよい。分子量が1000以下の光重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート類;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;及びメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
(F)成分は、感度をより向上させる観点から、上記多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。(F)成分は、光硬化による架橋密度を上げて、耐熱性及び絶縁性をより向上させる観点から、分子内にエチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。このような化合物としては、例えば、上記多価(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。多価(メタ)アクリレート化合物としては、感度をより向上させる観点から、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0062】
(F)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、2~50質量%、3~20質量%、又は、3~10質量%であってもよい。(F)成分の含有量が、2質量%以上であると、光感度が向上し、露光部が現像中に溶出し難い傾向があり、50質量%以下であると、耐熱性が向上する傾向がある。
【0063】
<(G)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(G)成分として硬化剤を更に含有してもよい。(G)成分としては、例えば、それ自体が熱、紫外線等で硬化する化合物、又は(B)成分のカルボキシ基と、熱、紫外線等で反応して硬化する化合物が挙げられる。(G)成分を用いることで、永久レジストの耐熱性、接着強度、耐薬品性等を向上させることができる。
【0064】
(G)成分としては、例えば、エポキシ化合物、メラミン化合物、尿素化合物、オキサゾリン化合物、ブロック型イソシアネート等の熱硬化性化合物が挙げられる。(G)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂、及びビキシレノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0066】
メラミン化合物としては、例えば、トリアミノトリアジン、ヘキサメトキシメラミン、及びヘキサブトキシ化メラミンが挙げられる。尿素化合物としては、例えば、ジメチロール尿素等が挙げられる。
【0067】
ブロック型イソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、並びにこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0068】
(G)成分は、硬化膜の耐熱性をより向上させる観点から、エポキシ化合物及びブロック型イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0069】
(G)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、2~40質量%、3~30質量%、又は、5~20質量%であってもよい。(G)成分の含有量を、上記範囲内にすることにより、良好な現像性を維持しつつ、形成される硬化膜の耐熱性をより向上させることができる。
【0070】
<(H)成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、導体パターンを隠蔽する等の外観向上の観点から、(H)成分として顔料を更に含有してもよい。(H)成分としては、導体パターンを隠蔽する等の際に所望の色を発色する着色剤を用いることができる。(H)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
着色剤としては、例えば、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、及びナフタレンブラックが挙げられる。
【0072】
(H)成分の含有量は、特に限定されないが、製造装置を識別し易くし、導体パターンをより隠蔽させる観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.01~5.0質量%、0.03~3.0質量%、又は0.05~2.0質量%であってもよい。
【0073】
<その他の成分>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、粘度を調整するために、有機溶剤等の希釈剤を含有していてもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;及び石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。
【0074】
希釈剤を使用する場合、その使用量は、感光性樹脂組成物の固形分全量の含有量が、50~90質量%、60~80質量%又は65~75質量%となる量から適宜選択すればよい。感光性樹脂組成物が希釈剤を含有する場合、希釈剤の含有量は、10~50質量%、20~40質量%又は25~35質量%であってもよい。希釈剤の含有量が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の塗布性が向上し、より高精細なパターンの形成が可能となる。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は希釈剤を含有しないものであってもよい。
【0075】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、kキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系等の消泡剤;シランカップリング剤;臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は上記各種添加剤を含有しないものであってもよい。
【0076】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、上記各成分を混合することにより製造することができる。混合には、例えば、ロールミル、ビーズミル等の装置を用いることができる。
【0077】
[感光性エレメント]
本実施形態に係る感光性エレメントは、支持フィルムと、上述した感光性樹脂組成物を含む感光層とを備える。図1は、本実施形態に係る感光性エレメントを模式的に示す断面図である。図1に示されるように、感光性エレメント1は、支持フィルム10と、支持フィルム10上に形成された感光層20とを備えている。
【0078】
感光性エレメント1は、例えば、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を、リバースロールコート、グラビアロールコート、コンマコート、カーテンコート等の公知の方法で支持フィルム10上に塗布した後、塗膜を乾燥して感光層20を形成することで作製することができる。塗膜の乾燥は、熱風乾燥、遠赤外線又は近赤外線を用いた乾燥を用いることができる。乾燥温度は、60~120℃、70~110℃、又は、80~100℃であってもよい。乾燥時間は、1~60分、2~30分、又は、5~20分であってもよい。
【0079】
支持フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。支持フィルムの厚さは、例えば、5~100μmであってもよい。感光層の厚さは、例えば、5~50μm、15~40μm、又は20~30μmであってもよい。
【0080】
感光層20上には、感光層20を被覆する保護フィルム30を更に備えていてもよい。感光性エレメント1は、感光層20の支持フィルム10と接する面とは反対側の面に保護フィルム30を積層することもできる。保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムを用いてもよい。保護フィルムは、支持フィルムと同様のフィルムであってもよく、異なるフィルムであってもよい。
【0081】
[プリント配線板]
本実施形態に係るプリント配線板は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を含む永久レジストを具備する。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、基板上に、上述の感光性樹脂組成物又は上述の感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程とを備える。以下、各工程の一例について説明する。
【0082】
まず、基板として、金属張積層基板を準備し、該基板上に、感光層を形成する。感光性樹脂組成物を用いる場合、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、静電塗装法等の方法で、基板上に感光性樹脂組成物を塗布し、形成された塗膜を60~110℃で乾燥させて、感光層を形成してもよい。塗布は、乾燥して得られる感光層の厚さが、5μm以上、10~200μm、15~150μm、20~100μm、又は23~50μmとなるよう塗布してもよい。感光性エレメントを用いる場合、ラミネータを用いて感光性エレメントの感光層を基板上に熱ラミネートすることにより、感光層を形成してもよい。
【0083】
次に、感光層にネガマスクを直接接触又は支持フィルム等の透明なフィルムを介して接触させて、活性光線を照射して露光した後、未露光部を現像液で溶解除去してレジストパターンを形成する。活性光線としては、例えば、電子線、紫外線、X線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ等を使用することができる。露光量は、10~2000mJ/cm、100~1500mJ/cm、又は300~1000mJ/cmであってもよい。現像方法としては、例えば、ディッピング法及びスプレー法が挙げられる。現像液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0084】
次に、形成されたレジストパターンに対して、後露光及び後加熱の少なくとも一方の処理をすることにより十分硬化させて永久レジストを形成することができる。後露光の露光量は、100~5000mJ/cm、500~2000mJ/cm、又は700~1500mJ/cmであってもよい。後加熱の加熱温度は、100~200℃、120~180℃、又は135~165℃であってもよい。後加熱の加熱時間は、5分~12時間、10分~6時間、又は30分~2時間であってもよい。永久レジストの厚さは、5μm以上、10~50μm、15~40μm、又は20~30μmであってもよい。その後、エッチングにて、配線を形成し、プリント配線板が作製される。
【0085】
本実施形態に係る永久レジストは、半導体素子の層間絶縁層又は表面保護層として用いることができる。上述の感光性樹脂組成物の硬化膜から形成された層間絶縁層又は表面保護層を備える半導体素子、該半導体素子を含む電子デバイスを作製することができる。半導体素子は、例えば、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等であってよい。電子デバイスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、及びハードディスクサスペンションが挙げられる。本実施形態に係る感光性樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜を備えることで、信頼性に優れた半導体素子及び電子デバイスを提供することができる。
【実施例0086】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
[合成例1:A-1の合成]
(ステップ1:付加反応)
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールF456質量部、水228質量部、及び37%ホルマリン649質量部を仕込み、40℃以下の温度を保ちながら、25%水酸化ナトリウム水溶液228質量部を添加し、50℃で10時間反応させた。反応後の溶液を40℃に冷却し、40℃以下の温度を保ちながら、37.5%リン酸水溶液でpHが4に達するまで中和した。静置し、有機層と水層を分離した。得られた有機層に、メチルイソブチルケトン300質量部を添加して均一に溶解させた後、蒸留水500質量部で3回洗浄した。洗浄後、50℃の温度で減圧下、水、溶媒等を除去し、生成物Aを得た。得られた生成物Aをメタノール550質量部に溶解し、生成物Aの溶液1230質量部を得た。得られた生成物Aの溶液の一部を真空乾燥機により室温で乾燥させたところ、固形分濃度が55.2質量%であった。
【0088】
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、得られた生成物Aの溶液500質量部、及び2,6-キシレノール440質量部を仕込み、50℃で均一に溶解させた。その後、50℃の温度で減圧下、メタノールを除去した。次に、シュウ酸8質量部を加え、100℃で10時間反応させた。その後、180℃、50mmHgの減圧下で留出してきた留出分を除去し、ノボラック樹脂A550質量部を得た。
【0089】
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック樹脂A130質量部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6質量部、及びトルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100質量部を仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。次に、150℃まで加熱昇温させ、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45質量部を徐々に導入して反応させた。反応は、ゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた。反応後の溶液を室温まで冷却し、得られた溶液に3.3質量部の36%塩酸水溶液を添加して混合し、水酸化ナトリウムを中和した。中和後の溶液をトルエンで希釈し、3回水洗した。その後、エバポレーターにて脱溶剤して、生成物B(ノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物;水酸基当量:175g/eq)を得た。生成物Bは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加したものであった。
【0090】
(ステップ2:エステル化反応)
撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に、生成物B175質量部、アクリル酸73質量部、p-トルエンスルホン酸3.0質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、及びトルエン130質量部を仕込み、空気を吹き込みながら攪拌し、115℃に昇温させ、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、4時間反応させた。その後、室温まで冷却し、5%NaCl水溶液を用いて、得られた反応溶液を水洗し、減圧留去にてトルエンを除去した。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂A-1の溶液(固形分濃度:70質量%)を得た。
【0091】
[合成例2:A-2の合成]
合成例1のステップ1におけるビスフェノールFをビスフェノールAに変更したこと以外は合成例1と同様の操作を行い、アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂A-2の溶液(固形分濃度:69質量%)を得た。
【0092】
[合成例3:B-1の合成]
合成例1のステップ2におけるアクリル酸を50質量部に変更したこと以外は、合成例1と同様の操作を行い、アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂A-3の溶液(固形分濃度:68質量%)を得た。
【0093】
次に、撹拌器及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、A-3の溶液312質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、及びトリフェニルホスフィン0.3質量部を仕込み、得られた混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸45質量部を加え、4時間反応させた。その後、冷却して、アクリロイル基を及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂B-1の溶液(固形分濃度:73質量%;固形分酸価:50mgKOH/g)を得た。
【0094】
[合成例4:B-2の合成]
合成例1のステップ1におけるビスフェノールFをビスフェノールAに変更し、ステップ2におけるアクリル酸を50質量部に変更したこと以外は、合成例1と同様の操作を行い、アクリロイル基を有し且つカルボキシ基を有しないフェノール変性樹脂A-4の溶液を得た。
【0095】
次に、撹拌器及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、A-4の溶液312質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、及びトリフェニルホスフィン0.3質量部を仕込み、得られた混合液を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸45質量部を加え、4時間反応させた。その後、冷却して、アクリロイル基を及びカルボキシ基を有するフェノール変性樹脂B-2の溶液(固形分濃度:69質量%;固形分酸価:52mgKOH/g)を得た。
【0096】
[合成例5:B’-1の合成]
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EXA-7376」)350質量部、アクリル酸70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、及びカルビトールアセテート120質量部を90℃で攪拌しながら混合した。得られた混合液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃で溶液の酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸98質量部及びカルビトールアセテート85質量部を加え、80℃に加熱して6時間反応させた。その後、反応液を室温に冷却して、カルボキシ基含有樹脂(B’-1)の溶液(固形分濃度:73質量%;固形分酸価:65mgKOH/g)を得た。
【0097】
(C)~(H)成分として、以下の材料を準備した。
C-1:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]モルホリノ-1-プロパノン(IGM Resins B.V.製、商品名「Ominirad 907」)
C-2:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(保土谷化学工業株式会社製)
D-1:シリカ粒子(デンカ株式会社製、商品名「SFP20M」、平均粒径:0.3μm)
E-1:ポリエステル樹脂(株式会社レゾナック製、商品名「SP1108」)
F-1:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「DPHA」)
G-1:テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名「YSLV-80XY」)
G-2:ノボラック型多官能エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「RE-306」)
H-1:フタロシアニン系顔料(山陽色素株式会社製)
【0098】
[感光性樹脂組成物]
表1に示す配合量(質量部、固形分換算量)で各成分を配合し、3本ロールミルで混練した。その後、固形分濃度が70質量%になるようにカルビトールアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を得た。
【0099】
[感光性エレメント]
支持フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡フィルムソリューション株式会社製、商品名「G2-25」、厚さ25μm)を準備した。支持フィルム上に、感光性樹脂組成物にメチルエチルケトンを加えて希釈した溶液を、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて75℃で30分間乾燥し、感光層を形成した。次いで、感光層の支持フィルムと接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「NF-15」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメントを得た。
【0100】
(解像性)
感光性エレメントから保護フィルムを剥離除去し、露出した感光層を、厚さ0.6mmの銅張積層基板(株式会社レゾナック製、商品名「MCL-E-67」)上に、プレス式真空ラミネータ(株式会社名機製作所製、商品名「MVLP-500」)を用いて、80℃でラミネートして、支持フィルムと感光層と銅張積層基板とを有する積層体を得た。
【0101】
次いで、所定サイズの開口パターン(開口径サイズ:30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、150、200μm)を有するネガマスクを上記積層体の支持フィルムに密着させ、紫外線露光装置(オーク株式会社製、商品名「EXM-1201」)を用いて、ステップタブレット(株式会社レゾナック製)における完全硬化段数が13段となる露光量で感光層を露光した。その後、感光層から支持フィルムを剥離し、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、60秒間、1.765×10Paの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置を用いて、2000mJ/cmの露光量で感光層を露光した後、170℃で1時間加熱して、銅張積層基板上に、所定サイズの開口パターンが形成された硬化膜を有する試験片1を作製した。
【0102】
上記試験片1を、光学顕微鏡を用いて観察し、以下の基準で評価した。
S:開口するマスク径の最小径が60μm以下であった。
A:開口するマスク径の最小径が60μmを超え、100μm以下であった。
B:開口するマスク径の最小径が100μmを超え、200μm以下であった。
C:開口径サイズ200μmが開口していなかった。
【0103】
(耐熱衝撃性)
上記試験片1に対して、-65℃で30分間及び150℃で30分間を1サイクルとして温度サイクル試験を実施し、1000サイクル及び1500サイクルの時点で試験片1を目視及び光学顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
A:1500サイクルでクラックの発生が確認されなかった。
B:1000サイクルでクラックの発生が確認されなかったが、1500サイクルでクラックの発生が確認された。
C:1000サイクルでクラックの発生が確認された。
D:開口パターンが形成されず、評価できなかった。
【0104】
(絶縁性)
上記試験片1の作製において、銅張積層基板に代えて、くし型電極(ライン/スペース=10/10μm)が形成されたビスマレイミドトリアジン基板を用いたこと以外は、上記試験片1と同じ方法で試験片2を作製した。試験片2を135℃、85%RH、3.3Vの条件下に晒し、抵抗値の推移をマイグレーションテスター(楠本化成株式会社製、商品名「SIR13」)で測定した。その後、マイグレーションの発生の程度を光学顕微鏡により観察し、以下の基準で評価した。
A:200時間を超えても抵抗値が10-7Ω以下に低下することがなかった。
B:200時間未満で抵抗値が10-7Ω以下に低下した。
【0105】
【表1】
【符号の説明】
【0106】
1…感光性エレメント、10…支持フィルム、20…感光層、30…保護フィルム。
図1