(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150034
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】シート折り装置、及び、画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 45/14 20060101AFI20241016BHJP
B65H 45/20 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B65H45/14
B65H45/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063256
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】井上 暢夫
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108AA01
3F108AB01
3F108AC01
3F108BA03
3F108BA04
3F108BA08
3F108BB02
3F108CC01
3F108CC05
(57)【要約】
【課題】第1、第2ローラとして団子状ローラを用いている場合であっても、第1、第2ニップが形成されないローラ部とローラ部との隙間に位置するシートの部分に対して、充分な折り処理を施す。
【解決手段】接離機構98によって第1、第2ローラ53、54に対してニップ形成ローラ57を離間させて第1、第2ニップN1、N2に挟持されていないシートPを、挟持した状態の搬送ローラ対51を移動機構99によって軸方向に移動して、第1ローラ53又は第2ローラ54の隙間の位置にあったシートPの非ニップ対向部Pxを第1ニップN1又は第2ニップN2に対応する位置に移動した後に、接離機構98によって第1、第2ローラ53、54に対してニップ形成ローラ57を当接させて第1ニップN1又は第2ニップN2において非ニップ対向部Pxに対する折り処理をおこなう移動折り処理モード(制御モード)が実行される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された第1ローラと、
前記第1ローラに対向するように配置されて、軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された第2ローラと、
前記第1ローラの前記複数のローラ部との間にそれぞれ第1ニップを形成するとともに、前記第2ローラの前記複数のローラ部との間にそれぞれ第2ニップを形成するニップ形成ローラと、
前記第1ニップ又は前記第2ニップに向けてシートを搬送可能な搬送ローラ対と、
前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを接離可能な接離機構と、
前記搬送ローラ対を軸方向に移動可能な移動機構と、
を備え、
前記接離機構によって前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを離間させて前記第1ニップ及び前記第2ニップに挟持されていないシートを、挟持した状態の前記搬送ローラ対を前記移動機構によって軸方向に移動して、前記第1ローラ又は前記第2ローラの前記隙間の位置にあった当該シートの非ニップ対向部を前記第1ニップ又は前記第2ニップに対応する位置に移動した後に、前記接離機構によって前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを当接させて前記第1ニップ又は前記第2ニップにおいて前記非ニップ対向部に対する折り処理をおこなう制御モードが実行されることを特徴とするシート折り装置。
【請求項2】
前記移動機構による前記搬送ローラ対の軸方向の最大の移動量が、前記第1ローラの前記複数のローラ部のピッチ、又は、前記第2ローラの前記複数のローラ部のピッチのうち、長い方のピッチよりも長い距離に設定されたことを特徴とする請求項1に記載のシート折り装置。
【請求項3】
1枚のシートに対して複数回の折り処理によって複数の折り目が形成されるときに、最後の折り処理に対して前記制御モードが実行されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート折り装置。
【請求項4】
前記接離機構は、前記第1ローラ及び前記第2ローラに対する前記ニップ形成ローラのニップ圧を調整可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート折り装置。
【請求項5】
前記ニップ圧は、シートの種類、シートの厚さ、複数回の折り処理によって形成される折り目の数、のうち少なくとも1つに基づいて調整されることを特徴とする請求項4に記載のシート折り装置。
【請求項6】
前記制御モードの実行の要否を選択可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート折り装置。
【請求項7】
前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートを前記第2ニップに向けて第1ガイド面によって案内する第1ガイド位置と、前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートに干渉しないように前記第1ローラと前記第2ローラとの間のシート搬送領域から退避する第1退避位置と、の間を第1支点を中心に回動可能な第1可動ガイド部材と、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートを前記第1ニップに向けて第2ガイド面によって案内する第2ガイド位置と、前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートに干渉しないように前記シート搬送領域から退避する第2退避位置と、の間を第2支点を中心に回動可能な第2可動ガイド部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート折り装置。
【請求項8】
前記第1ローラと前記第2ローラとは、前記ニップ形成ローラの上方に配置され、
前記第1支点と前記第2支点とは、前記ニップ形成ローラの下方に配置されたことを特徴とする請求項7に記載のシート折り装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置から排出されたシートに折り処理を施す請求項1又は請求項2に記載のシート折り装置と、を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートに対して折り処理をおこなうシート折り装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成システムと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置に接続される後処理装置であって、シートに対して蛇腹折り等の折り処理を施すシート折り装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1におけるシート折り装置は、下方に向けてシートを搬送する搬送ローラ対や、その下流側に配置された第1、第2ローラや、第1、第2ローラにそれぞれ当接して第1、第2ニップを形成するニップ形成ローラや、第1ガイド位置と第1退避位置との間を搬送ローラ対の軸部を中心に回動する第1可動ガイド部材や、第2ガイド位置と第2退避位置との間を搬送ローラ対の軸部を中心に回動する第2可動ガイド部材、などで構成されている。そして、搬送ローラ対によって搬送されるシートが、一対の可動ガイド部材によって、第1、第2ニップのうち一方のニップに向けて案内されながら搬送されたり、他方のニップに向けて案内されながら搬送されたりしながら、第1、第2ローラとニップ形成ローラとによって複数の折り目が形成されて蛇腹折りされることになる。
【0004】
一方、特許文献1には、第1、第2ローラとして、軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された団子状のローラを用いる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシート折り装置は、第1、第2ローラとして団子状ローラを用いているため、第1、第2ニップが形成されないローラ部とローラ部との隙間に位置するシートの部分に対して、充分な折り処理を施すことができない不具合が生じてしまう可能性があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、第1、第2ローラとして団子状ローラを用いている場合であっても、第1、第2ニップが形成されないローラ部とローラ部との隙間に位置するシートの部分に対して、充分な折り処理を施すことができる、シート折り装置、及び、画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明におけるシート折り装置は、軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された第1ローラと、前記第1ローラに対向するように配置されて、軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された第2ローラと、前記第1ローラの前記複数のローラ部との間にそれぞれ第1ニップを形成するとともに、前記第2ローラの前記複数のローラ部との間にそれぞれ第2ニップを形成するニップ形成ローラと、前記第1ニップ又は前記第2ニップに向けてシートを搬送可能な搬送ローラ対と、前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを接離可能な接離機構と、前記搬送ローラ対を軸方向に移動可能な移動機構と、を備え、前記接離機構によって前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを離間させて前記第1ニップ及び前記第2ニップに挟持されていないシートを、挟持した状態の前記搬送ローラ対を前記移動機構によって軸方向に移動して、前記第1ローラ又は前記第2ローラの前記隙間の位置にあった当該シートの非ニップ対向部を前記第1ニップ又は前記第2ニップに対応する位置に移動した後に、前記接離機構によって前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを当接させて前記第1ニップ又は前記第2ニップにおいて前記非ニップ対向部に対する折り処理をおこなう制御モードが実行されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1、第2ローラとして団子状ローラを用いている場合であっても、第1、第2ニップが形成されないローラ部とローラ部との隙間に位置するシートの部分に対して、充分な折り処理を施すことができる、シート折り装置、及び、画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成システムを示す全体構成図である。
【
図3】第1、第2ローラと排出ローラ対とを幅方向にみた図である。
【
図4】第1、第2可動ガイド部材を示す、(A)側面図と、(B)正面図と、である。
【
図5】折り処理時のシート折り装置の動作の一例を示す図である。
【
図6】シート折り装置における制御を示すフローチャートである。
【
図9】(A)第1可動ガイド部材が第1ガイド位置に位置している状態を示す拡大図と、(B)第2可動ガイド部材が第2ガイド位置に位置している状態を示す拡大図と、である。
【
図10】第1、第2ローラに対してニップ形成ローラを接離する接離機構の構成・動作を示す図である。
【
図11】移動折り処理モード時のシート折り装置の要部の動作を軸方向に示す模式図である。
【
図12】移動折り処理モード時の制御を示すフローチャートである。
【
図13】別形態のシート折り装置における移動折り処理モード時の動作の一部を軸方向に示す模式図である。
【
図14】変形例としての、シート折り装置における操作表示パネルの画面表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成システム100における全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態において、シート折り装置50は、画像形成装置1に対して着脱可能に設置されていて、画像形成装置1とともに1つの画像形成システム100を構成している。
【0012】
図1において、1は複写機能とプリンタ機能とを有する画像形成装置としてのデジタル複合機、2は原稿が搬送される原稿搬送台、3は原稿の画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、4は原稿読込部3で読み込んだ画像情報に基づいた露光光を感光体ドラム5上に照射する露光部、を示す。
また、5はトナー像(画像)が形成される感光体ドラム5(作像部)、10は用紙等のシートPがロール状に収納された給送部、20はシートP上の未定着画像を定着する定着装置、30は画像形成システム100における種々の情報を表示したり操作条件を入力するための操作表示パネル、を示す。
本実施の形態において、画像形成装置1は、ロール状のシートP(ロール紙)が給送部10で所望の長さでカットされるように構成されていて、A0、A1サイズなど複数の大サイズのシートPへの画像形成が可能になっている。
【0013】
また、
図1において、50は画像形成装置1から排出されて搬入されたシートPに対して後処理として折り処理を施すシート折り装置(後処理装置)を示す。
また、51は折り処理部53~57に向けてシートPを搬送する搬送ローラ対、を示す。本実施の形態において、折り処理部は、第1ローラ53、第2ローラ54、第1可動ガイド部材55、第2可動ガイド部材56、ニップ形成ローラ57、等で構成されている。
また、67は折り処理部53~57で折り処理が施されたシートPを装置外に排出する排出ローラ対、68は折り処理後のシートPが排出されて積載される排出トレイ、を示す。
また、69は折り処理を施さないシートPを排出するための第2の排出トレイ、70は複数の搬送経路K1、K2、K7、K8が合流する合流部においてシートPの搬送先を切り替える切替部材、90は手差し用のシート給送部、を示す。
【0014】
図1を参照して、画像形成システム100における、通常の画像形成時の動作について説明する。
画像形成装置1を複写機として使用する場合、まず、原稿が原稿搬送台2に載置されると、原稿が、搬送ローラによって搬送されて、原稿読込部3上を通過する。このとき、原稿読込部3では、上方を通過する原稿の画像情報が光学的に読み取られる。このとき、原稿のサイズも検知される。
そして、原稿読込部3で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部4(書込部)に送信される。そして、露光部4からは、その電気信号の画像情報に基づいた露光光(レーザ光)が、作像部の感光体ドラム5の表面に向けて発せられる。
なお、画像形成装置1をプリンタとして使用する場合には、パソコンなどの外部端末から露光部4に画像情報が入力されて、その画像情報に基づいて露光部4から感光体ドラム5の表面に向けて露光光が発せられる。
【0015】
一方、作像部において、感光体ドラム5は
図1中の反時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5の表面に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、転写部で、レジストローラにより搬送されたシートP上に転写される。
【0016】
一方、感光体ドラム5の位置に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置1の複数の給送部10のうち、1つの給送部10が自動又は手動で選択される。
そして、給送部10にロール状に巻き付けられたシートPが、原稿のサイズ(又は、外部端末から入力された画像情報)に合わせてカットされて、そのシートPが搬送経路K0に搬送される。
そして、シートPは、搬送経路K0を通過して、レジストローラの位置に達する。そして、レジストローラの位置に達したシートPは、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて搬送される。
そして、転写工程後のシートPは、感光体ドラム5(転写部)の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。そして、定着装置20によって、シートP上の画像が熱定着される。そして、画像が定着されたシートPは、画像形成装置1から排出される。
【0017】
ここで、本実施の形態では、画像形成装置1にシート折り装置50が設置されている。そして、画像形成装置1から排出されたシートPがシート折り装置50に搬送されて、搬送されたシートPに対して折り処理が施されることになる。
詳しくは、
図1を参照して、まず、画像形成装置1からシート折り装置50に搬送されたシートPは、第1、第2搬送経路K1、K2を経由して、搬送ローラ対51の位置に達する。そして、シートPは、搬送ローラ対51によって搬送されて、一対の可動ガイド部材55、56によって、第1ローラ53とニップ形成ローラ57とのニップ(第1ニップN1(
図9参照))に向けて案内されたり、第2ローラ54とニップ形成ローラ57とのニップ(第2ニップN2(
図9参照)に向けて案内されたりする。そして、それらの第1、第2ニップN1、N2で蛇腹折りなどの折り処理がシートPに施される。そして、折り処理が施されたシートPは、排出ローラ対67によって装置外に排出されて、排出トレイ68上に積載される。
なお、シート折り装置50については、後で、
図2~
図12等を用いて、さらに詳しく説明する。
【0018】
ここで、本実施の形態におけるシート折り装置50には、手差し用のシート給送部90が設置されている。そして、画像形成装置1を介さずに、シートPに直接的に折り処理を施したい場合には、シートPが手差し用のシート給送部90にセットされる。手差し用のシート給送部90にセットされたシートPは、第3搬送経路K7を介してシート折り装置50内に搬送される。そして、シート折り装置50において、上述したものと同様に、シートPに対する折り処理がおこなわれることになる。
また、本実施の形態におけるシート折り装置50には、画像形成装置1から送入されたシートPに対して折り処理を施さない場合に、折り処理部53~57を介さずに、装置外に排出するための第4搬送経路K8が設けられている。折り処理を施さない場合、画像形成装置1から第1搬送経路K1に送入されたシートPは、切替部材70によって第4搬送経路K8に導かれて、そのまま第2の排出トレイ69に排出されることになる。
【0019】
以下、本実施の形態におけるシート折り装置50において、特徴的な構成・動作について詳述する。
図2を参照して、シート折り装置50には、搬送ローラ対51や、第1、第2ローラ53、54や、第1、第2可動ガイド部材55、56や、ニップ形成ローラ57や、シート検知センサ61~63、などが設置されている。
【0020】
搬送ローラ対51は、第1ローラ53と第2ローラ54との間に向けてシートPを搬送するものである。換言すると、搬送ローラ対51は、第1ニップN1(第1ローラ53とニップ形成ローラ57との当接部であって、
図9、
図10参照)、又は、第2ニップN2(第2ローラ54とニップ形成ローラ57との当接部であって、
図9、
図10参照)に向けてシートPを搬送可能に構成されたものである。
詳しくは、搬送ローラ対51は、駆動ローラ51aと従動ローラ51bとが圧接してニップを形成したものであって、第1駆動手段としての搬送モータ91によって
図2の矢印方向に回転駆動される。これにより、搬送ローラ対51のニップに挟持されたシートPが、
図2の略垂直方向下方に向けて搬送されることになる。
【0021】
図3を参照して、第1ローラ53は、軸部53bに複数のローラ部53aが軸方向(
図2の紙面垂直方向であって、
図3、
図11の左右方向である。)に隙間(間隔)をあけて設置された団子状ローラである。
第2ローラ54は、第1ローラ53に対向するように配置されていて、軸部54bに複数のローラ部54aが軸方向に隙間(間隔)をあけて設置された団子状ローラである。
第1ローラ53と第2ローラ54とは、ニップ形成ローラ57の上方に配置されている。第1、第2ローラ53、54として団子状ローラを用いることで、軸方向に1つのローラ部が延在するように形成されたものを用いる場合に比べて、第1、第2ニップN1、N2におけるニップ圧の軸方向のバラツキを小さくすることができる。
なお、本実施の形態において、第1、第2ローラ53、54は、それぞれ、金属材料からなる軸部53b、54bに、樹脂材料やゴム材料などからなる複数のドーナツ状のローラ部53a、54aを圧入・接着して形成したものであるが、その製造方法はこれに限定されない。
また、本実施の形態において、第1、第2ローラ53、54は、それぞれ、ほぼ同等に形成されている。
また、本実施の形態では、第1、第2ローラ53、54に、それぞれ5つのローラ部53a、54aを設けたが、ローラ部53a、54aの数はこれに限定されない。
【0022】
図2を参照して、ニップ形成ローラ57は、第1ローラ53との間に第1ニップN1(
図9、
図10参照)を形成するとともに、第2ローラ54との間に第2ニップN2(
図9、
図10参照)を形成するものである。
ニップ形成ローラ57は、金属材料からなる軸部57bに、軸方向にわたって延在するように樹脂材料やゴム材料などからなる1つのローラ部57aが形成されたものである。ニップ形成ローラ57のローラ部57aは、第1、第2ローラ53、54の5つのローラ部53a、54aとの間にそれぞれ第1、第2ニップN1、N2を形成している。ニップ形成ローラ57のローラ部57aのローラ径は、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aのローラ径よりも充分に大きく設定されている。
また、ニップ形成ローラ57は、装置本体に回転可能に支持されるとともに、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aに対して接離可能に支持されていて、接離機構98によって第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aに押圧されている。なお、接離機構98については、後で
図10等を用いて詳しく説明する。
そして、このニップ形成ローラ57と、第1、第2ローラ53、54と、が一対の折りローラ対のように機能して、シートPに折り目Aを形成することになる。具体的に、シートPが折り返された状態で、第1ニップN1又は第2ニップN2に搬送されて、そのニップN1、N2における圧力によってシートPの折り返した部分に折り目Aが形成されることになる。
【0023】
さらに詳しくは、第1、第2ローラ53、54は、その上流側に配置された搬送ローラ対51のニップを通る仮想接線(
図2にて破線矢印で示す搬送方向に沿った略垂直方向に延びる仮想線である。)を跨ぐようにそれぞれ配置されている。具体的に、第1ローラ53は、上述した仮想接線に対して
図2の右方に配置され、第2ローラ54は、上述した仮想接線に対して
図2の左方に配置されている。
また、ニップ形成ローラ57は、その軸部57bの軸中心が、上述した搬送ローラ対51の仮想接線上に位置するように配置されている。
【0024】
また、第1、第2ローラ53、54と、ニップ形成ローラ57と、は一体的に正逆方向に回転可能に構成されている。
具体的に、本実施の形態において、ニップ形成ローラ57は、第3駆動手段としての駆動モータ94による駆動によって回転するように構成されている。駆動モータ94によってニップ形成ローラ57が回転駆動されると、ニップ形成ローラ57とのニップにおける摩擦抵抗によって、第1、第2ローラ53、54も、その回転に沿うように従動回転することになる。この駆動モータ94は、正逆双方向回転型のモータであって、制御部80の制御により正方向に回転することでニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54を正方向(
図5(A)の矢印方向である。)に回転させて、制御部80の制御により逆方向に回転することでニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54を逆方向(
図5(B)の矢印方向である。)に回転させることになる。そして、そのようなニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54が正方向に回転されると、シートPが正方向(
図2、
図5(A)の左方である。)に搬送されて、ニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54が逆方向に回転されると、シートPが逆方向(
図2、
図5(B)の右方である。)に搬送されることになる。
【0025】
ここで、本実施の形態では、搬送ローラ対51によって搬送されるシートPを、第1ローラ53とニップ形成ローラ57との第1ニップN1(
図9参照)に向けて案内したり、第2ローラ54とニップ形成ローラ57との第2ニップN2(
図9参照)に向けて案内したりする一対の可動ガイド部材(第1可動ガイド部材55と、第2可動ガイド部材56と、である。)が設けられている。
図2を参照して、第1、第2可動ガイド部材55、56は、第2駆動手段としての第1、第2回動機構92、93によってそれぞれ別々に移動(回動)されるように構成されている。
この一対の可動ガイド部材55、56は、搬送ローラ対51の下流側の搬送経路において搬送ローラ対51のニップを通る仮想接線(先に説明した略垂直方向に延びる仮想線である。)を跨ぐようにそれぞれ配置されていて、それぞれ別々に回動可能に構成されている。具体的に、第1可動ガイド部材55は、上述した仮想接線に対して
図2の右方に配置され、第2可動ガイド部材56は、上述した仮想接線に対して
図2の左方に配置されている。第1可動ガイド部材55と第2可動ガイド部材56とは、
図4(A)に示すようにいずれも先端が略フック状に形成されていて、上述した仮想接線に対して互いに線対象(左右対称)となっている。
【0026】
ここで、第1可動ガイド部材55は、第1ローラ53と第2ローラ54との間を通過するシートPを第2ニップに向けて第1ガイド面55b(
図4、
図9(A)参照)によって案内する第1ガイド位置(
図5(A)、(D)、(E)、
図9(A)の位置である。)と、第1ローラ53と第2ローラ54との間を通過するシートPに干渉しないように第1ローラ53と第2ローラ54との間のシート搬送領域から退避する第1退避位置(
図2、
図5(B)、(C)、(F)、
図9(B)の位置であって、基準位置である。)と、の間を第1支点としての第1支軸55aを中心に回動可能に構成されている。特に、本実施の形態において、第1可動ガイド部材55の第1退避位置は、第1ローラ53のローラ部53aとローラ部53aとの間の空間や、ローラ部53aの外側の空間となっている。
詳しくは、第1可動ガイド部材55は、ニップ形成ローラ57の下方(
図2の右斜め下方)に配置された第1支軸55a(第1支点)に支持され、その第1支軸55aを中心に回動可能に構成されている。具体的に、
図4(A)に示すように、第1可動ガイド部材55は、第1支軸55a(装置本体の筐体に保持されている。)から上方に延びる第1ベース部55dの先端に略フック状の曲げ部(第1ガイド面55bや第1接触面55cとなる部分が形成されている。)が形成されている。また、この第1支軸55aには第1回動機構92(
図2参照)が接続されている。この第1回動機構92は、搬送ローラ対51の回転や回転停止とは無関係に、第1可動ガイド部材55を独立して回転させたり回転停止させたりするものである。そして、第1回動機構92は、第1可動ガイド部材55を、第1支軸55a(第1支点)を中心に、
図2の反時計方向に回転させてガイド位置(第1ガイド位置)に回動させたり、
図2の時計方向に回転させて退避位置(第1退避位置)に回動させたりすることになる。
【0027】
同様に、第2可動ガイド部材56は、第1ローラ53と第2ローラ54との間を通過するシートPを第1ニップに向けて第2ガイド面56b(
図4、
図9(B)参照)案内する第2ガイド位置(
図5(B)、(C)、(F)の位置であって、基準位置である。)と、第1ローラ53と第2ローラ54との間を通過するシートPに干渉しないように第1ローラ53と第2ローラ54との間のシート搬送領域から退避する第2退避位置(
図2、
図5(A)、(D)、(E)の位置である。)と、の間を第2支点としての第2支軸56aを中心に回動可能に構成されている。特に、本実施の形態において、第2可動ガイド部材56の第2退避位置は、第2ローラ54のローラ部54aとローラ部54aとの間の空間や、ローラ部54aの外側の空間となっている。
詳しくは、第2可動ガイド部材56は、ニップ形成ローラ57の下方(
図2の左斜め下方)に配置された第2支軸56a(第2支点)に支持され、その第2支軸56aを中心に回動可能に構成されている。具体的に、
図4(A)に示すように、第2可動ガイド部材56は、第2支軸56a(装置本体の筐体に保持されている。)から上方に延びる第2ベース部56dの先端に略フック状の曲げ部(第2ガイド面56bや第2接触面56cとなる部分が形成されている。)が形成されている。また、この第2支軸56aには第2回動機構93(
図2参照)が接続されている。この第2回動機構93は、搬送ローラ対51の回転や回転停止とは無関係に、第2可動ガイド部材56を独立して回転させたり回転停止させたりするものである。そして、第2回動機構93は、第2可動ガイド部材56を、第2支軸55a(第2支点)を中心に、
図2の時計方向に回転させてガイド位置(第2ガイド位置)に回動させたり、
図2の反時計方向に回転させて退避位置(第2退避位置)に回動させたりすることになる。
【0028】
ここで、
図9(A)(及び、
図4)等に示すように、第1可動ガイド部材55は、第1ガイド位置に位置しているときに、第1ニップN1から第2ニップN2に向けて搬送されるシートP2に接触可能な第1接触面55cが形成されている。第1接触面55cに接触可能なシートP2は、搬送ローラ対51を通過した直後のシートP1(長尺のシートPの一部)でも、第2ニップN2で折り処理された直後のシートP3(長尺のシートPの一部)でもなく、第2ニップN2に向けて第1ニップN1から送出された直後のシートPの一部である。なお、この第1接触面55cは、第1ニップN1から第2ニップN2に向けてシートP2を良好に搬送するために設けられたものであるが、これについては後で詳しく説明する。
同様に、
図9(B)(及び、
図4)等に示すように、第2可動ガイド部材56は、第2ガイド位置に位置しているときに、第2ニップN2から第1ニップN1に向けて搬送されるシートP2に接触可能な第2接触面56cが形成されている。第2接触面56cに接触可能なシートP2は、搬送ローラ対51を通過した直後のシートP1(長尺のシートPの一部)でも、第2ニップN2で折り処理された直後のシートP3(長尺のシートPの一部)でもなく、第1ニップN1に向けて第2ニップN2から送出された直後のシートPの一部である。なお、この第2接触面56cは、第2ニップN2から第1ニップN1に向けてシートP2を良好に搬送するために設けられたものであるが、これについても後で詳しく説明する。
【0029】
図4(B)に示すように、第1、第2可動ガイド部材55、56において、第1、第2ガイド面55b、56b(ガイド部)と第1、第2接触面55c、56c(接触部)とは、軸方向(
図4(A)の紙面垂直方向であって、
図4(B)の左右方向である。)に延在する第1、第2支軸55a、56aから突出するように、軸方向に間隔をあけて複数設けられている。すなわち、第1可動ガイド部材55は、複数の第1ガイド面55bと複数の第1接触面55cとが、それぞれ、第1ローラ53の複数の隙間(ローラ部53aとローラ部53aとの隙間である。)に配置されている。同様に、第2可動ガイド部材56は、複数の第2ガイド面56bと複数の第2接触面56cとが、それぞれ、第2ローラ54の複数の隙間(ローラ部54aとローラ部54aとの隙間である。)に配置されている。
【0030】
さらに具体的に、これらのガイド面55b、56bと接触面55c、56cとは、
図3に示すように、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aとローラ部53a、54aとの間やローラ部53a、54aの外側に配置されている(ローラ部53a、54aが形成されていない軸方向の位置に配置されている。)。
そして、第1、第2可動ガイド部材55、56が退避位置に位置しているときには、これらのガイド面55b、56bと接触面55c、56cとが、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aから搬送経路側に突出しないように、第1ローラ53と第2ローラ54との間のシート領域から退避しているローラ部53a、54aの間のスペースに収納されることになる。これに対して、第1、第2可動ガイド部材55、56がガイド位置に位置しているときには、これらのガイド面55b、56bや接触面55c、56cが、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aから搬送経路側に突出して、搬送経路を通過するシートPをガイドすることになる。
また、
図4(B)を参照して、第1、第2可動ガイド部材55、56の第1、第2ベース部55d、56dには、第1、第2中継搬送経路K3、K4(
図1参照)を通過するシートPの搬送を妨げないように、開口55d1、56d1(一端側のベース部55d、56dと他端側のベース部55d、56dとの間に形成されている。)が形成されている。
また、
図4(A)において破線矢印で囲んだ部分を参照して、第1可動ガイド部材55は、第1ガイド面55bの端部と第1接触面55cの端部とが尖頭状に繋がるように形成されている。同様に、
図4(B)において破線矢印で囲んだ部分を参照して、第2可動ガイド部材56は、第2ガイド面56bの端部と第2接触面56cの端部とが尖頭状に繋がるように形成されている。
なお、一対の可動ガイド部材55、56をガイド位置と退避位置との間で移動させる第1、第2回動機構92、93は、上述したものに限定されず、種々の形態のものを用いることができる。
【0031】
このように、本実施の形態におけるシート折り装置50は、第1、第2ローラ53、54と、ニップ形成ローラ57と、第1、第2可動ガイド部材55、56とで折り処理部が構成されているため、一対の折りローラ対や一対のガイド部材などで折り処理部を構成したものに比べて、装置を小型化することができる。
【0032】
ここで、本実施の形態において、第1接触面55cは、
図9(A)(及び、
図5(D)等)に示すように、第1可動ガイド部材55が第1ガイド位置に位置しているときに、仮に延長した仮想平面Hが第2ニップN2に向けて延びるように形成されている。
すなわち、第1接触面55cは、第1可動ガイド部材55が第1ガイド位置に位置しているときに、第1ニップN1から第2ニップN2に接触可能に形成されていて、その接触可能な部分の平面を仮に延長した仮想平面H(
図9(A)の左方(第2ローラ54が設置された側である。)に延長した仮想平面である。)が第2ニップN2に向けて延びるように形成されている。
特に、本実施の形態において、第1可動ガイド部材55は、第1支軸55a(第1支点)を中心にして制限なく回動したと仮定したときに、第1接触面55c(特に、第1ガイド面55bと交わる先端部である。)が描く仮想軌跡Wが第2ニップN2を通るように形成されている。
さらに換言すると、第1接触面55cは、第1可動ガイド部材55が第1ガイド位置に位置しているときに、第1ニップN1から第2ニップN2に向けて搬送されるシートP2を、第2ニップN2に向けて押圧するように形成されていることになる。
このように構成することで、第1ニップN1から第2ニップN2に向けて搬送されるシートP2(既に折り目Aが形成されたものに限定されず、これから折り目Aが形成されるものも含む。)が、第1接触面55cに沿うように案内されて、第2ニップN2にスムーズに送入されることになる。したがって、第2ニップN2において、良好な折り処理がおこなわれることになる。
【0033】
同様に、第2接触面56cは、
図9(B)(及び、
図5(B)、
図5(F)等)に示すように、第2可動ガイド部材56が第2ガイド位置に位置しているときに、仮に延長した仮想平面Hが第1ニップN1に向けて延びるように形成されている。
すなわち、第2接触面56cは、第2可動ガイド部材56が第2ガイド位置に位置しているときに、第2ニップN2から第1ニップN1に接触可能に形成されていて、その接触可能な部分の平面を仮に延長した仮想平面H(
図9(B)の右方(第1ローラ53が設置された側である。)に延長した仮想平面である。)が第1ニップN1に向けて延びるように形成されている。
特に、本実施の形態において、第2可動ガイド部材56は、第2支軸56a(第2支点)を中心にして制限なく回動したと仮定したときに、第2接触面56c(特に、第2ガイド面56bと交わる先端部である。)が描く仮想軌跡Wが第1ニップN1を通るように形成されている。
さらに換言すると、第2接触面56cは、第2可動ガイド部材56が第2ガイド位置に位置しているときに、第2ニップN2から第1ニップN1に向けて搬送されるシートP2を、第1ニップN1に向けて押圧するように形成されていることになる。
このように構成することで、第2ニップN2から第1ニップN1に向けて搬送されるシートP2(既に折り目Aが形成されたものに限定されず、これから折り目Aが形成されるものも含む。)が、第2接触面56cに沿うように案内されて、第1ニップN1にスムーズに送入されることになる。したがって、第1ニップN1において、良好な折り処理がおこなわれることになる。
【0034】
ここで、先に
図1を用いて説明したように、本実施の形態におけるシート折り装置50には、第1ニップから送出されたシートPを装置外に排出するための排出ローラ対67が設置されている。
本実施の形態において、排出ローラ対67は、
図3を参照して、軸部67bにローラ部67aが軸方向に間隔をあけて複数設置されたローラが対になってニップを形成したものである。
そして、本実施の形態では、
図3に示すように、排出ローラ対67の複数のローラ部67aが、第1ローラ53の複数のローラ部53a(及び、第2ローラ54の複数のローラ部54a)が配置されていない軸方向の位置に配置されている。すなわち、軸方向にみたときに、排出ローラ対67のローラ部67aと、第1ローラ53のローラ部53aと、がほぼ隙間なく交互に配列されている。
このように構成することによって、第1、第2ニップN1、N2において、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aが設けられていない軸方向の位置で、シートPに形成する折り目Aが弱くなってしまったとしても、その位置の折り目Aが、排出ローラ対67のローラ部67aにニップによって強固に押圧される。そのため、装置から排出されたシートPは、幅方向(軸方向)にわたって、しっかりとした折り目Aが形成されることになる。
【0035】
ここで、
図2に示すように、本実施の形態におけるシート折り装置50には、3つのシート検知センサ61~63が設置されている。これらのシート検知センサ61~63は、いずれも発光素子と受光素子とからなる反射型フォトセンサであって、その位置にシートPがあるか否かを光学的に検知するものである。
詳しくは、第1シート検知センサ61は、搬送ローラ対51のニップに対して搬送方向上流側に配置されている。第2シート検知センサ62は、第2ローラ54とニップ形成ローラ57とのニップに対して
図2の左方に離れる側に配置されている。第3シート検知センサ63は、第1ローラ53とニップ形成ローラ57とのニップに対して
図2の右方に離れる側に配置されている。
【0036】
そして、第1シート検知センサ61と第2シート検知センサ62と第3シート検知センサ63とによって、それぞれシートPの先端や後端や折り目を検知して、それらを検知してからタイマー81で時間を計測しながら狙いの動作タイミングで、搬送モータ91、第1、第2回動機構92、93、駆動モータ94(及び、後述する接離機構98,移動機構99)をそれぞれ別々に制御して、シートPに所望の折り処理を施している。
このように、3つのシート検知センサ61~63による検知結果に基づいて制御部80によって複数のモータや回動機構などを制御することにより、シートPに所望の折り目を高精度に形成することができる。
なお、具体的な折り処理動作については、次に、
図5の動作図や、
図6~
図8のフローチャートなどを用いて、さらに詳しく説明する。
【0037】
以下、
図5(A)~(F)を用いて、シートPに3箇所の折り目A1~A3を形成する折り処理(蛇腹折り)を施すときの、シート折り装置50の動作について詳しく説明する。
なお、本実施の形態におけるシート折り装置50でおこなわれる折り処理は、
図6~
図8に示す制御フローに基づいて実行されるため、
図5(A)~(F)を用いた動作の説明に合わせて、適宜、
図6~
図8の制御フローにおけるステップS1~S27との関係について示すことにする。
【0038】
まず、搬送ローラ対51のニップ入口近傍に設置された第1シート検知センサ61によってシートPの先端が検知されると(
図6:ステップS1)、搬送モータ91がオンされて搬送ローラ対51が回転駆動される(
図6:ステップS2)。そして、駆動モータ94がオンされてニップ形成ローラ57や第1、第2ローラ53、54が正方向に回転駆動される(
図6:ステップS3)。さらに、第1シート検知センサ61がオンされてから時間T1が経過した後に第1回動機構92がオンされて第1可動ガイド部材55が退避位置(基準位置)から第1ガイド位置に移動される(
図6:ステップS4、S5)。このようにして、
図5(A)に示すように、搬送ローラ対51によって搬送されたシートPが、第1可動ガイド部材55の第1ガイド面55bに案内されながら、第2ローラ54とニップ形成ローラ57との第2ニップN2に案内されることになる。
その後、第1可動ガイド部材55が第1退避位置に戻されて(
図6:ステップS6)、第1シート検知センサ61がオンされてから時間T2(>T1)が経過した後に駆動モータ94がオフされてニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54が回転停止される(
図6:ステップS7)。
その後、
図5(B)に示すように、駆動モータ94がオンされて、ニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54が逆方向に回転駆動される(
図6:ステップS8)。また、第1シート検知センサ61がオンされてから時間T3(>T2)が経過した後に、第2回動機構93がオンされて第2可動ガイド部材56が第2退避位置(基準位置)から第2ガイド位置に移動される(
図6:ステップS9、S10)。これにより、
図5(B)に示すように、シートPは、軽く折り部B1が形成された状態で、搬送ローラ対51とニップ形成ローラ57及び第2ローラ54とに搬送されながら、第2可動ガイド部材56によって案内されて第1ローラ53とニップ形成ローラ57との第1ニップN1に向かうことになる。また、このとき、搬送ローラ対51によって搬送されるシートPの部分は第2ガイド面56bに案内されながら第1ニップN1に導かれ、第2ニップN2から送出されたシートPの部分は第2接触面56cに案内されながら第1ニップN1に導かれることになる。
そして、
図5(C)に示すように、シートPの先頭(軽く折り部が形成された部分B1)が第1ニップN1に達すると、そのニップの圧力によって、しっかりとした折り目A1(第1折り目)が形成されることになる。その後、第2可動ガイド部材56が第2ガイド位置から第2退避位置に戻されて(
図6:ステップS11)、次の折り処理があるか(第2折り目を形成するか)が判別される(
図6:ステップS12)。
図5の動作例では、第2折り目A2を形成するように設定されているため、
図7のステップS13以降の制御がおこなわれることになるが、
図6のステップS12で次の折り目を形成しないものと判断された場合には、後で
図11、
図12等を用いて説明する移動折り処理モードが実行されて(ステップS30)、その後にシートPが排出トレイ68に向けて排出されることになる(ステップS27)。
【0039】
その後、
図5(C)を参照して、シートPの折り目A1が第3シート検知センサ63によって検知されてから時間T5が経過した後に、駆動モータ94によるニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54の回転駆動が停止される(
図7:ステップS13、S14)。
その後、
図5(D)に示すように、駆動モータ94がオンされて、ニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54が正方向に回転駆動される(
図7:ステップS15)。また、第3シート検知センサ63がオンされてから時間T6(>T5)が経過した後に、第1可動ガイド部材55が第1退避位置から第1ガイド位置に移動される(
図7:ステップS16、S17)。これにより、シートPは、軽く折り部が形成された状態で、搬送ローラ対51とニップ形成ローラ57及び第1、第2ローラ53、54とに搬送されながら、第1可動ガイド部材55によって案内されて第2ニップN2に向かうことになる。また、このとき、搬送ローラ対51によって搬送されるシートPの部分は第1ガイド面55bに案内されながら第2ニップN2に導かれ、第1ニップN1から送出されたシートPの部分は第1接触面55cに案内されながら第2ニップN2に導かれることになる。そして、
図5(D)に示すように、シートPの先頭(軽く折り部が形成された部分)が第2ニップN2に達すると、そのニップの圧力によって、しっかりとした折り目A2(第2折り目)が形成されることになる。
そして、
図5(E)に示すように、シートPの第2折り目A2が左方にさらに搬送されることになる。
その後、第1可動ガイド部材55が第1ガイド位置から第1退避位置に戻されて(
図7:ステップS18)、次の折り処理があるか(第3折り目を形成するか)が判別される(
図7:ステップS19)。
図5の動作例では、第3折り目A3を形成するように設定されているため、
図8のステップS20以降の制御がおこなわれることになるが、
図7のステップS19で次の折り目を形成しないものと判断された場合には、後で
図11、
図12等を用いて説明する移動折り処理モードが実行されて(ステップS30)、その後にシートPが排出トレイ68に向けて排出されることになる(ステップS27)。
【0040】
その後、
図5(E)を参照して、シートPの第2折り目A2が第2シート検知センサ62によって検知されてから時間T7が経過した後に、駆動モータ94によるニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54の回転駆動が停止される(
図8:ステップS20、S21)。
その後、
図5(F)に示すように、駆動モータ94がオンされて、ニップ形成ローラ57、第1、第2ローラ53、54が逆方向に回転駆動される(
図8:ステップS22)。また、第2シート検知センサ62がオンされてから時間T8(>T7)が経過した後に、第2可動ガイド部材56が第2退避位置から第2ガイド位置に移動される(
図8:ステップS23、S24)。これにより、シートPは、軽く折り部が形成された状態で、搬送ローラ対51とニップ形成ローラ57及び第1、第2ローラ53、54とに搬送されながら、第2可動ガイド部材56によって案内されて第1ニップN1に向かうことになる。また、このとき、搬送ローラ対51によって搬送されるシートPの部分は第2ガイド面56bに案内されながら第1ニップN1に導かれ、第2ニップN2から送出されたシートPの部分は第2接触面56cに案内されながら第1ニップN1に導かれることになる。そして、
図5(F)に示すように、シートPの先頭(軽く折り部が形成された部分)が第1ニップに達すると、しっかりとした折り目A3(第3折り目)が形成されることになる。
その後、第2可動ガイド部材56が第2ガイド位置から第2退避位置に戻されて(
図8:ステップS25)、次の折り処理があるか(第4折り目を形成するか)が判別される(
図8:ステップS26)。
図5の動作例では、第4折り目を形成するように設定されていないため、後で
図11、
図12等を用いて説明する移動折り処理モードが実行されて(ステップS30)、その後にシートPが排出トレイ68に向けて排出される(ステップS27)。これに対して、
図8のステップS26で次の折り目を形成するものと判断された場合には、再び
図7のステップS13以降の制御がおこなわれることになる。
【0041】
なお、
図5を用いた動作例ではシートPに3つの折り目A1~A3を形成する折り処理について説明したが、
図6~
図8に示す制御フローにのっとって他の折り処理(例えば、1つ折り、Z折り、観音折りなどである。)をおこなうこともできる。
【0042】
ここで、
図10(及び、
図2)を参照して、本実施の形態におけるシート折り装置50には、第1ローラ53及び第2ローラ54に対してニップ形成ローラ57を接離可能な接離機構98が設けられている。
詳しくは、
図10に示すように、接離機構98は、アーム部材110、カム111、付勢部材としての引張スプリング112、回転型支持板113、などで構成されている。
アーム部材110は、ニップ形成ローラ57を回転可能に支持するとともに、支軸110aを中心に回動可能に装置本体の筐体に支持されている。
カム111は、制御部80によって制御される不図示のモータの駆動によって、カム軸111a(装置本体の筐体に支持されている。)を中心に正逆双方向に回動可能に構成されている。そして、カム11は、
図10(B)に示すように、アーム部材110を下方に押動可能に形成されている。
引張スプリング112は、一端側がアーム部材110に接続されていて、他端側が回転型支持板113(装置本体の筐体に支軸113aを中心に回転可能に支持されている。)に接続されている。この引張スプリング112は、ニップ形成ローラ57を第1、第2ローラ53、54に当接する方向に付勢するものである。
なお、回転型支持板113は、第1ニップN1や第2ニップN2におけるニップ圧を調整するためのものであるが、これについては後で詳しく説明する。
【0043】
このように構成された接離機構98によって、制御部80によりカム111の回動方向の姿勢が制御されることで、
図10(A)に示すように引張スプリング112の付勢によってニップ形成ローラ57を第1、第2ローラ53、54に当接させたり、
図10(B)に示すように引張スプリング112の付勢に抗するようにアーム部材110を押動してニップ形成ローラ57を第1、第2ローラ53、54から離間させたりすることになる。
【0044】
また、
図11(及び、
図2)を参照して、本実施の形態におけるシート折り装置50には、搬送ローラ対51を軸方向に移動可能な移動機構99が設けられている。なお、
図11では、第1、第2ローラ53、54に対して、第1ローラ53を図示して、第2ローラ54の図示を省略している。
詳しくは、
図11に示すように、移動機構99は、カム120、圧縮スプリング121(付勢部材)、などで構成されている。
カム120は、制御部80によって制御される不図示のモータの駆動によって、カム軸120a(装置本体の筐体に支持されている。)を中心に正逆双方向に回動可能に構成されている。また、カム120は、搬送ローラ対51(装置本体の筐体に、軸方向に移動可能に保持されている。)の軸部の一端側端面に接触している。
圧縮スプリング121は、一端側が搬送ローラ対51の他端側端面に接続されていて、他端側が装置本体の筐体に接続されている。この圧縮スプリング121は、搬送ローラ対51をカム120に当接する方向に付勢するものである。
そして、このように構成された移動機構99によって、制御部80によりカム120の回動方向の姿勢が制御されることで、
図11(A)、(B)に示すように搬送ローラ対51を軸方向にスライド移動させることができる。
【0045】
そして、
図11等を参照して、本実施の形態におけるシート折り装置50は、接離機構98によって第1ローラ53及び第2ローラ54に対してニップ形成ローラ57を離間させて第1ニップN1及び第2ニップN2に挟持されていないシートPを、挟持した状態の搬送ローラ対51を移動機構99によって軸方向に移動して、第1ローラ53又は第2ローラ54の隙間(ローラ部とローラ部との隙間である。)の位置にあったシートPの非ニップ対向部Pxを第1ニップN1又は第2ニップN2に対応する位置に移動する。すなわち、
図11(A)に示すように、ニップ形成ローラ57が離間した状態でシートPを挟持した状態の搬送ローラ対51を、
図11(B)の位置に移動する。
そして、そのように搬送ローラ対51(及び、シートP)を移動した後に、
図11(C)に示すように、接離機構98によって第1ローラ53及び第2ローラ54に対してニップ形成ローラ57を当接させて(当接方向に回動させて)、第1ニップN1又は第2ニップN2においてシートPの非ニップ対向部Pxに対する折り処理をおこなう「制御モード」が実行される。なお、このような制御モードを、以下、適宜に「移動折り処理モード」と呼ぶことにする。
このように、「移動折り処理モード(制御モード)」は、ニップ形成ローラ57の離間をおこなった後に、折り処理後のシートPを挟持した搬送ローラ対51を軸方向に移動して、その後にニップ形成ローラ57と第1ローラ53(又は、第2ローラ54)との間にシートPの非ニップ対向部Pxを挟み込んで、非ニップ対向部Pxの折り目を強化するものである。
なお、
図11(C)に示すように移動折り処理モードが終了した後(又は、搬送ローラ対51によるシートPの搬送が終了した後)は、移動機構99によって搬送ローラ対51を
図11(A)に示す基準位置に戻すことになる。
【0046】
このように、本実施の形態におけるシート折り装置50は、第1、第2ローラ53、54として団子状ローラを用いていて、第1、第2ニップN1、N2が形成されないローラ部53a、54aとローラ部53a、54aとの隙間に位置するシートPの部分(非ニップ対向部Px)に対して、充分な折り処理を施すことができない不具合が生じてしまう可能性があっても、「移動折り処理モード(制御モード)」を実行することで、その部分(非ニップ対向部Px)に対して充分な折り処理を施すことができる。
すなわち、第1、第2ニップN1、N2において、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aが設けられていない軸方向の位置で、シートPに形成する折り目Aが弱くなってしまったとしても、その位置の折り目Aが、第1、第2ニップN1、N2の位置にスライド移動されて、第1、第2ニップN1、N2によって強固に押圧される。そのため、装置から排出されたシートPは、幅方向(軸方向)にわたって、しっかりとした折り目Aが形成されることになる。
【0047】
ここで、本実施の形態では、移動機構99による搬送ローラ対51の軸方向の最大の移動量(カム120のカム面の形状によって定まるものである。)が、第1ローラ53の複数のローラ部53aのピッチ(ローラ部の一端側端面から、隣接するローラ部の一端側端面までの距離である。)、又は、第2ローラ54の複数のローラ部54aのピッチのうち、長い方のピッチよりも長い距離に設定されている。
具体的に、本実施の形態では、第1ローラ53の複数のローラ部53aのピッチと、第2ローラ54の複数のローラ部54aのピッチと、が同等に形成されていて、そのピッチよりも長い距離だけ搬送ローラ対51が軸方向に移動できるように移動機構99(カム120)が構成されている。
これにより、第1ニップN1で移動折り処理モードをおこなう場合であっても、第2ニップN2で移動折り処理モードをおこなう場合であっても、シートPの非ニップ対向部Pxを第1ニップN1又は第2ニップN2の位置までスライド移動させて、非ニップ対向部Pxに対する折り処理をおこなうことができる。
【0048】
また、
図6~
図8のステップS30を参照して、本実施の形態では、1枚のシートPに対して複数回の折り処理によって複数の折り目Aが形成されるときに、最後の折り処理に対して移動折り処理モード(制御モード)が実行されるように制御している。
具体的に、先に
図5で説明した例では、1枚のシートPに対して3回の折り処理をおこなって3つの折り目A1~A3を形成しているため、3回目の折り処理によって3つ目の折り目A3が形成されるときに(
図5(F)の工程が終了した後に)、第1ニップN1にて移動折り処理モードが実行されることになる。
そして、このように最後の折り処理に対して移動折り処理モードをおこなうように制御することで、1回の折り処理がおこなわれるたびに移動折り処理モードをおこなう場合に比べて、折り処理が完了するまでの時間を短縮することができる。
【0049】
ここで、
図12は、
図6~
図8におけるステップS30でおこなわれる移動折り処理モード時の制御の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、
図6~
図8におけるステップS30で移動折り処理モードが実行されることになると、まず、第1シート検知センサ61(
図2参照)によってシートPの後端が検知されたかが判別される(ステップS31)。
その結果、シートPの後端が検知されると、接離機構98によってニップ形成ローラ57が離間される(ステップS32)。これにより、シートPは搬送ローラ対51によってのみ挟持された状態になる。
そして、移動機構99によって、シートPの非ニップ対向部Pxが第1ニップN1(又は、第2ニップN2)の位置まで移動するように、搬送ローラ対51(及び、シートP)がスライド移動される(ステップS33)。
そして、接離機構98によってニップ形成ローラ57が当接方向に移動されて、第1ニップN1(又は、第2ニップN2)で非ニップ対向部Pxに対する折り処理が施される(ステップS34)。
【0050】
ここで、
図10を参照して、本実施の形態において、接離機構98は、第1ローラ53及び第2ローラ54に対するニップ形成ローラ57のニップ圧(当接圧)を調整可能に構成されている。
詳しくは、接離機構98において、引張スプリング112の他端側が接続部113bに接続されて回転型支持板113は、支軸113aを中心に回転可能に装置本体の筐体に支持されている。そして、回転型支持板113を支軸113aを中心に回転して、接続部113bの位置を
図10の符号113´又は113´´の位置に変位させて、その回転方向の姿勢を固定することで、アーム部材110に対する引張スプリング112の付勢力を増減させる。これにより、第1、第2ローラ53、54に対するニップ形成ローラ57のニップ圧を増減することが可能になる。
【0051】
そして、本実施の形態において、ニップ形成ローラ57のニップ圧は、シートPの種類、シートPの厚さ、複数回の折り処理によって形成される折り目Aの数、のうち少なくとも1つに基づいて調整される。
具体的に、シートPの厚さが厚かったり、折り目Aの数が多かったりして、折り処理において大きなニップ圧を要する場合には、大きなニップ圧を要さない場合に比べて、ニップ圧が大きくなるように回転型支持板113の接続部113bの位置が調整される。また、折り処理において大きなニップ圧を要する種類のシートPが用いられる場合には、大きなニップ圧を要さない種類のシートPが用いられる場合に比べて、ニップ圧が大きくなるように回転型支持板113の接続部113bの位置が調整される。
これにより、常に安定して良好な折り処理を施すことができる。
【0052】
なお、
図13(A)や
図13(B)に示すように、第1、第2ローラ53、54のローラ部53a、54aの軸方向長さや数、ローラ部53a、54a間の隙間は、
図11等に示した本実施の形態のものに限定されない。
また、移動機構99によって搬送ローラ対51をスライド移動したときの、カム120の回転方向の姿勢も、
図11等に示した本実施の形態のものに限定されない。
【0053】
<変形例>
変形例におけるシート折り装置50は、移動折り処理モード(制御モード)の実行の要否を選択可能に構成されている。
詳しくは、
図14を参照して、画像形成システム100(シート折り装置50)において、ユーザーによる操作表示パネル30(
図1参照)の操作によって折り処理が指定されると、操作表示パネル30に「しっかり折り目」と「はやさ優先」とのどちらを選択するかについての画面が表示される。そして、前者が選択された場合には、
図6~
図8、
図12等で説明した制御フローにそって移動折り処理モードが実行される。これに対して、後者が選択された場合には、移動折り処理モードを実行することなく、通常の折り処理のみが実施される。
このように移動折り処理モードの要否を選択可能に構成することで、折り処理に要する時間が掛かっても強固な折り目Aを希望するユーザーに対しても、そこまで強固な折り目Aは希望せずに折り処理に要する時間の短縮を希望するユーザーに対しても、満足のいく装置を提供することが可能になる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態におけるシート折り装置50は、軸部53bに複数のローラ部53aが軸方向に隙間をあけて設置された第1ローラ53と、第1ローラ53に対向するように配置されて、軸部54bに複数のローラ部54aが軸方向に隙間をあけて設置された第2ローラ54と、が設けられている。また、第1ローラ53の複数のローラ部53aとの間にそれぞれ第1ニップN1を形成するとともに、第2ローラ54の複数のローラ部54aとの間にそれぞれ第2ニップN2を形成するニップ形成ローラ57が設けられている。また、第1ニップN1又は第2ニップN2に向けてシートPを搬送可能な搬送ローラ対51と、第1ローラ53及び第2ローラ54に対してニップ形成ローラ57を接離可能な接離機構98と、搬送ローラ対51を軸方向に移動可能な移動機構99と、が設けられている。そして、接離機構98によって第1ローラ53及び第2ローラ54に対してニップ形成ローラ57を離間させて第1ニップN1及び第2ニップN2に挟持されていないシートPを、挟持した状態の搬送ローラ対51を移動機構99によって軸方向に移動して、第1ローラ53又は第2ローラ54の隙間の位置にあったシートPの非ニップ対向部Pxを第1ニップN1又は第2ニップN2に対応する位置に移動した後に、接離機構98によって第1ローラ53及び第2ローラ54に対してニップ形成ローラ57を当接させて第1ニップN1又は第2ニップN2において非ニップ対向部Pxに対する折り処理をおこなう移動折り処理モード(制御モード)が実行される。
これにより、第1、第2ローラ53、54として団子状ローラを用いている場合であっても、第1、第2ニップN1、N2が形成されないローラ部53a、54aとローラ部53a、54aとの隙間に位置するシートPの部分(非ニップ対向部Px)に対して、充分な折り処理を施すことができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1が設置された画像形成システム100に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置が設置された画像形成システムに対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1が設置された画像形成システムに対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷装置などである。)が設置された画像形成システムに対しても、当然に本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、折り処理のみをおこなうシート折り装置50に対して本発明を適用したが、折り処理に加えて別の処理(例えば、パンチ処理、綴じ処理、スタンプ処理などである。)をおこなうことができるシート折り装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、画像形成装置1に接続されたシート折り装置50に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、画像形成装置1に接続されておらずシート折り装置50として独立した装置であっても、当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、画像形成装置1の給送部10にロール状のシートP(ロール紙)が収納されるように構成したが、給送部に所定サイズにカットされたシート(カット紙)が収納されるように構成することもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものとほぼ同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、第1ローラ53と第2ローラ54とを隙間をあけて対向するように配置したが、第1ローラ53と第2ローラ54とを当接するように配置することもできる。その場合、ニップ形成ローラ57との摩擦抵抗によって従動回転する第1ローラ53と第2ローラ54との回転方向と、第1ローラ53と第2ローラ54とが互いの摩擦抵抗で回転する回転方向と、が一致しないことになるため、ニップ形成ローラ57を回転駆動する駆動モータと、第1ローラ53を回転駆動する駆動モータと、第2ローラ54を回転駆動する駆動モータと、をそれぞれ別々に設置することが好ましい。
また、本実施の形態におけるシート折り装置50は、搬送ローラ対51のニップを通りニップ形成ローラ57の回転中心に至る仮想接線(又は、第2搬送経路K2)が鉛直方向に対して水平になるように構成したが、仮想接線(又は、第2搬送経路K2)が鉛直方向に対して傾斜するように構成することもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものとほぼ同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0059】
なお、本願明細書等において「シート」とは、用紙はもちろんのこと、折り処理される対象となるすべてのシートを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置、
50 シート折り装置(後処理装置)、
51 搬送ローラ対、
53 第1ローラ、
53a ローラ部、 53b 軸部、
54 第2ローラ、
54a ローラ部、 54b 軸部、
55 第1可動ガイド部材、
55a 第1支軸(第1支点)、
56 第2可動ガイド部材、
56a 第2支軸(第2支点)、
57 ニップ形成ローラ、
67 排出ローラ対、
98 接離機構、
99 移動機構、
100 画像形成システム、
P、P1~P3 シート、
Px 非ニップ対向部、
A、A1~A3 折り目、
N1 第1ニップ、 N2 第2ニップ。
【0061】
なお、本発明における態様は、例えば、以下の通り付記1~9の組み合わせとすることもできる。
(付記1)
軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された第1ローラと、
前記第1ローラに対向するように配置されて、軸部に複数のローラ部が軸方向に隙間をあけて設置された第2ローラと、
前記第1ローラの前記複数のローラ部との間にそれぞれ第1ニップを形成するとともに、前記第2ローラの前記複数のローラ部との間にそれぞれ第2ニップを形成するニップ形成ローラと、
前記第1ニップ又は前記第2ニップに向けてシートを搬送可能な搬送ローラ対と、
前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを接離可能な接離機構と、
前記搬送ローラ対を軸方向に移動可能な移動機構と、
を備え、
前記接離機構によって前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを離間させて前記第1ニップ及び前記第2ニップに挟持されていないシートを、挟持した状態の前記搬送ローラ対を前記移動機構によって軸方向に移動して、前記第1ローラ又は前記第2ローラの前記隙間の位置にあった当該シートの非ニップ対向部を前記第1ニップ又は前記第2ニップに対応する位置に移動した後に、前記接離機構によって前記第1ローラ及び前記第2ローラに対して前記ニップ形成ローラを当接させて前記第1ニップ又は前記第2ニップにおいて前記非ニップ対向部に対する折り処理をおこなう制御モードが実行されることを特徴とするシート折り装置。
(付記2)
前記移動機構による前記搬送ローラ対の軸方向の最大の移動量が、前記第1ローラの前記複数のローラ部のピッチ、又は、前記第2ローラの前記複数のローラ部のピッチのうち、長い方のピッチよりも長い距離に設定されたことを特徴とする付記1に記載のシート折り装置。
(付記3)
1枚のシートに対して複数回の折り処理によって複数の折り目が形成されるときに、最後の折り処理に対して前記制御モードが実行されることを特徴とする付記1又は付記2に記載のシート折り装置。
(付記4)
前記接離機構は、前記第1ローラ及び前記第2ローラに対する前記ニップ形成ローラのニップ圧を調整可能に構成されたことを特徴とする付記1~付記3のいずれかに記載のシート折り装置。
(付記5)
前記ニップ圧は、シートの種類、シートの厚さ、複数回の折り処理によって形成される折り目の数、のうち少なくとも1つに基づいて調整されることを特徴とする付記4に記載のシート折り装置。
(付記6)
前記制御モードの実行の要否を選択可能に構成されたことを特徴とする付記1~付記5のいずれかに記載のシート折り装置。
(付記7)
前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートを前記第2ニップに向けて第1ガイド面によって案内する第1ガイド位置と、前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートに干渉しないように前記第1ローラと前記第2ローラとの間のシート搬送領域から退避する第1退避位置と、の間を第1支点を中心に回動可能な第1可動ガイド部材と、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートを前記第1ニップに向けて第2ガイド面によって案内する第2ガイド位置と、前記第1ローラと前記第2ローラとの間を通過するシートに干渉しないように前記シート搬送領域から退避する第2退避位置と、の間を第2支点を中心に回動可能な第2可動ガイド部材と、
を備えたことを特徴とする付記1~付記6のいずれかに記載のシート折り装置。
(付記8)
前記第1ローラと前記第2ローラとは、前記ニップ形成ローラの上方に配置され、
前記第1支点と前記第2支点とは、前記ニップ形成ローラの下方に配置されたことを特徴とする付記7に記載のシート折り装置。
(付記9)
シートに画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置から排出されたシートに折り処理を施す付記1~付記8のいずれかに記載のシート折り装置と、を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】