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特開2024-150077表面処理液、ニッケル含有層の表面処理方法、及びニッケル含有層の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150077
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】表面処理液、ニッケル含有層の表面処理方法、及びニッケル含有層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 1/10 20060101AFI20241016BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C23G1/10
C23F1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063309
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】大庭 三典
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴重
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和能
【テーマコード(参考)】
4K053
4K057
【Fターム(参考)】
4K053PA07
4K053QA01
4K053RA19
4K053RA29
4K053RA45
4K053SA04
4K053YA03
4K057WA20
4K057WB02
4K057WC05
4K057WC10
4K057WE08
4K057WM04
4K057WN01
4K057WN03
(57)【要約】
【課題】表面酸化層を除去しつつ、スマットの形成及びピンホールの発生を抑制することが可能なニッケル含有層用の表面処理液を提供する。
【解決手段】ニッケル含有層の表面を処理するために用いられる表面処理液である。(A)第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分0.5~15質量%;(B)塩化水素0.01~0.4質量%;(C)クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、及びリンゴ酸二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物1~20質量%;及び水を含有する水溶液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル含有層の表面を処理するために用いられる表面処理液であって、
(A)第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分0.5~15質量%;
(B)塩化水素0.01~0.4質量%;
(C)クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、及びリンゴ酸二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物1~20質量%;及び
水を含有する水溶液である表面処理液。
【請求項2】
前記ニッケル含有層がインバー材である請求項1に記載の表面処理液。
【請求項3】
(D)ニッケル化合物0.01~5質量%をさらに含有する請求項1に記載の表面処理液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有するニッケル含有層の表面処理方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有する表面処理されたニッケル含有層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液、ニッケル含有層の表面処理方法、及びニッケル含有層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル含有層は、プリント配線板、リードフレーム、コネクタ端子、及びパッケージ基板等の精密電子部品や、シャドウマスク等の高精細ディスプレイ用部品等に利用されている。なかでも、インバーは熱膨張率が小さいため、これらの部品等に好適に用いられている。
【0003】
レジストパターンを形成した金属材料をウェットエッチング法により加工して細線を形成する技術が知られている。ウェットエッチング法では、金属材料の表面に「スマット」と呼ばれる微粉末状の異物が形成されることがあり、金属材料とレジストパターンの間の密着性が低下することがあった。また、ニッケル含有層の表面に自然酸化膜が形成されることでデバイス性能が低下することがあった。そこで、表面処理液を用いて金属材料の表面を処理してスマットの形成を抑制し、金属材料とレジストパターンとの密着性を向上させる手法や、表面酸化膜を除去する手法が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、銅メッキ基板とドライフィルムレジストの密着性を向上させるための表面処理剤として、過酸化水素、鉱酸、アゾール類、銀イオン、及びハロゲンイオンを含有する表面処理剤が開示されている。また、特許文献2には、窒素含有複素環式化合物、及び無機酸や有機酸等の酸を含有する銅又は銅合金用の表面処理剤が開示されている。さらに、特許文献3には、硫酸及び弗化アンモニウムを含有するシリコン基板用の表面処理液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-003283号公報
【特許文献2】特開2008-045156号公報
【特許文献3】特開平9-246255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2で開示された表面処理剤は、銅に対してはある程度有効なものであった。しかしながら、インバー材やオーステナイト系ステンレス等のニッケル含有層にこれらの表面処理剤を適用しても、スマットの形成を抑制することは困難であるとともに、ウェットエッチング後のニッケル含有層とレジストパターンとの間の密着性を向上させることができなかった。ニッケル含有層等の基板とレジストパターンとの間の密着性が低いと、レジストパターンが剥離しやすくなり、レジストパターン通りの微細配線を形成することが困難になる。また、特許文献3で開示された硫酸を含有する表面処理液をニッケル含有層に適用すると、ピンホールが発生しやすく、デバイス性能が低下することがあった。
【0007】
このため、スマットの形成やピンホールの発生を抑制しうるとともに、自然酸化膜を除去してニッケル含有層とレジストパターンとの間の密着性を向上させることが可能な表面処理液が要望されていた。なかでも、ピンホールの発生を抑制することができる表面処理液が要望されていた。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、表面酸化層を除去しつつ、スマットの形成及びピンホールの発生を抑制することが可能なニッケル含有層用の表面処理液を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記表面処理液を用いたニッケル含有層の表面処理方法、及び表面処理されたニッケル含有層の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含有する水溶液が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ニッケル含有層の表面を処理するために用いられる表面処理液であって、(A)第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分0.5~15質量%;(B)塩化水素0.01~0.4質量%;(C)クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、及びリンゴ酸二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物1~20質量%;及び水を含有する水溶液である表面処理液が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有するニッケル含有層の表面処理方法が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有する表面処理されたニッケル含有層の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面酸化層を除去しつつ、スマットの形成及びピンホールの発生を抑制することが可能なニッケル含有層用の表面処理液を提供することができる。また、本発明によれば、上記表面処理液を用いたニッケル含有層の表面処理方法、及び表面処理されたニッケル含有層の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の一実施形態である表面処理液は、ニッケル含有層の表面を処理するために用いられる液状の組成物であり、(A)第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分0.5~15質量%;(B)塩化水素0.01~0.4質量%;(C)クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、及びリンゴ酸二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物1~20質量%;及び水を含有する水溶液である。
【0015】
本明細書における「ニッケル含有層」とは、ニッケルを少なくとも1質量%含有する金属材料をいう。ニッケル含有層としては、例えば、ニッケル単体;Fe-Ni36%、Fe-Ni32%-Co5%、Fe-Ni29%-Co17%、Fe-Ni42%-Cr-Ti、及びNi-Mo28%-Fe2%等の低熱膨張性鉄-ニッケル合金(「インバー材」ともいう);SUS301、SUS304、及びSUS316等のオーステナイト系ステンレス;白銅及び洋白等の銅-ニッケル合金;ニッケル-チタン合金;ニッケル-亜鉛合金;ニッケル-クロム合金;ニッケル-コバルト合金等を挙げることができる。被表面処理体となるニッケル含有層としては、上記のインバー材やステンレスが好ましく、インバー材が特に好ましい。
【0016】
表面処理液は、(A)第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分(以下、「(A)成分」とも記す)を含有する。(A)成分は、第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分を表面処理液中に供給(生成)しうる化合物であればよい。第一鉄イオンの供給源として、鉄(II)化合物を用いることができる。鉄(II)化合物としては、例えば、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、及び酢酸鉄(II)等を挙げることができる。第二鉄イオンの供給源として、鉄(III)化合物を用いることができる。鉄(III)化合物としては、例えば、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、及び酢酸鉄(III)等を挙げることができる。
【0017】
(A)成分の供給源としては、スマットの形成やピンホールの発生をより有効に抑制することができるとともに、自然酸化膜である表面酸化膜をより有効に除去することができるため、塩化鉄(II)又は塩化鉄(III)が好ましく、塩化鉄(II)及び塩化鉄(III)を併用することが特に好ましい。(A)成分の供給源は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
【0018】
表面処理液中の(A)成分の濃度は、0.5~15質量%である。スマットの形成やピンホールの発生をより有効に抑制することができるとともに、自然酸化膜をより有効に除去することができるため、表面処理液中の(A)成分の濃度は1~10質量%であることが好ましく、2~6質量%であることがさらに好ましい。「(A)成分の濃度」とは、第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分の濃度を意味する。例えば、塩化鉄(II)を10質量%含有する表面処理液の場合、(A)成分の濃度は約4.4質量%である。
【0019】
表面処理液は、(B)塩化水素(以下、「(B)成分」とも記す)を含有する。塩化水素の供給源は、濃塩酸及び希塩酸のいずれであってもよい。市販の塩酸をそのまま、又は適宜希釈して用いることができる。
【0020】
表面処理液中の(B)成分の濃度は、0.01~0.4質量%である。スマットの形成やピンホールの発生をより有効に抑制することができるとともに、自然酸化膜をより有効に除去することができるため、表面処理液中の(B)成分濃度は0.05~0.3質量%で、さらに好ましくは0.1~0.25質量%である。
【0021】
表面処理液は、(C)クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、及びリンゴ酸二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、「(C)成分」とも記す)を含有する。(C)成分として、市販品を用いることができる。スマットの形成やピンホールの発生をより有効に抑制することができるとともに、自然酸化膜をより有効に除去することができるため、(C)成分はクエン酸三アンモニウムであることが特に好ましい。
【0022】
表面処理液中の(C)成分の濃度は、1~20質量%である。スマットの形成やピンホールの発生をより有効に抑制することができるとともに、自然酸化膜をより有効に除去することができるため、表面処理液中の(C)成分の濃度は3~17質量%であることが好ましく、5~14質量%であることが特に好ましい。
【0023】
表面処理液は、(D)ニッケル化合物(以下、「(D)成分」とも記す)をさらに含有することが好ましい。(D)成分を含有させることで、スマットの形成やピンホールの発生をより有効に抑制することができるとともに、自然酸化膜をより有効に除去することができる。
【0024】
(D)成分(ニッケル化合物)としては、塩化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)、及び臭化ニッケル(II)等のハロゲン化ニッケル;硫酸ニッケル(II)、及び硝酸ニッケル(II)等のニッケル塩等を挙げることができる。表面処理液中の(D)成分の濃度は、0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましく、0.3~2質量%であることが特に好ましい。
【0025】
表面処理液は、各成分が水に溶解した水溶液である。このため、表面処理液は、水を溶媒として含有する。表面処理液中の水の量は、前述の(A)~(C)成分、及び必要に応じて用いられる(D)成分の濃度に応じて、その残部とすることが好ましい。後述する添加剤等を使用する場合における、表面処理液中の水の含有量は、(A)~(D)成分及び添加剤等の濃度に応じて、その残部とすることが好ましい。表面処理液中の水の含有量は、60~99質量%程度が好ましい。
【0026】
表面処理液には、前述の各成分及び水以外に加えて、本発明の効果を阻害することのない範囲で、周知の添加剤をさらに含有させることができる。添加剤としては、安定化剤、各成分の可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、及び界面活性剤等を挙げることができる。これらの添加剤の濃度は、一般的に、それぞれ0.001~10質量%の範囲である。
【0027】
本発明の一実施形態であるニッケル含有層の表面処理方法(以下、単に「表面処理方法」とも記す)は、上述の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有する。表面処理液を表面に接触させて表面処理することで、スマットの形成やピンホールの発生を抑制しつつ、エッチングすることが可能なニッケル含有層を得ることができる。ニッケル含有層の表面に表面処理液を接触させる方法は特に限定されず、一般的な前処理方法を採用することができる。具体的には、ディップ式、スプレー式、及びスピン式等の前処理方法によって、ニッケル含有層の表面に表面処理液を接触させることができる。
【0028】
ディップ式によってニッケル含有層の表面を表面処理する場合、例えば、10~90℃の温度範囲に調整した表面処理液に、ニッケル含有層を1~600秒程度浸漬すればよい。また、スプレー式によってニッケル含有層の表面を表面処理する場合、例えば、10~90℃の温度範囲に調整した表面処理液を、ニッケル含有層の表面に圧力0.01~1.0MPaの範囲で噴霧すればよい。
【0029】
ニッケル含有層の表面に表面処理液を接触させて処理した後、純水で洗浄及び乾燥する。次いで、従来公知の方法でニッケル含有層の表面にレジストパターンを形成した後、エッチング液でエッチングすることで、レジストパターンとの密着性が良好で、微細な配線を形成することができる。
【0030】
上述の表面処理液及びこの表面処理液を用いた表面処理方法は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、有機EL、太陽電池、及び照明器具等の機器の電極や配線用のニッケル含有層を加工する際に好適に使用することができる。
【0031】
<その他>
本実施形態の開示には、以下の様態が含まれる。
[1]
ニッケル含有層の表面を処理するために用いられる表面処理液であって、
(A)第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の成分0.5~15質量%;
(B)塩化水素0.01~0.4質量%;
(C)クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、及びリンゴ酸二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物1~20質量%;及び
水を含有する水溶液である表面処理液。
[2]
前記ニッケル含有層がインバー材である[1]に記載の表面処理液。
[3]
(D)ニッケル化合物0.01~5質量%をさらに含有する[1]又は[2]に記載の表面処理液。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有するニッケル含有層の表面処理方法。
[5]
[1]~[3]のいずれかに記載の表面処理液をニッケル含有層の表面に接触させる工程を有する表面処理されたニッケル含有層の製造方法。
【実施例0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0033】
<(A)成分>
(A)成分として、以下に示すa-1及びa-2を用意した。
a-1:塩化鉄(II)
a-2:塩化鉄(III)
【0034】
<(B)成分>
(B)成分及びその比較成分として、以下に示すb-1及びb-2を用意した。
b-1:塩化水素
b-2:硫酸
【0035】
<(C)成分>
(C)成分及びその比較成分として、以下に示すc-1~c-6を用意した。
c-1:クエン酸三アンモニウム
c-2:乳酸アンモニウム
c-3:ギ酸アンモニウム
c-4:クエン酸水素二アンモニウム
c-5:硫酸アンモニウム
c-6:クエン酸
【0036】
<(D)成分>
(D)成分として、以下に示すd-1を用意した。
d-1:塩化ニッケル(II)
【0037】
<表面処理液>
(実施例1~8及び比較例1~4)
表1に示す配合となるように各成分を混合して、処理液No.1~8及び比較処理液1~4を得た。表1中、(A)成分の濃度は第一鉄イオン及び第二鉄イオンの濃度を表しており、(B)成分の濃度は塩化水素又は硫酸の濃度を表している。なお、成分の合計が100質量%となるように水を配合した。
【0038】
【0039】
<ニッケル含有層の表面処理>
(実施例9)
縦100mm×横100mm×厚さ0.030mmのFe-Ni36%箔(以下、「(未処理の)基体」とも記す)を用意した。この表面に35℃、スプレー圧0.1MPaの条件で処理液No.1をスプレー法により噴霧した後、3質量%塩酸及びイオン交換水で順次洗浄した。ドライフィルムレジストを用いて、基体上にライン/スペース=10μm/10μmのレジストパターンを30箇所形成した。次いで、スプレー圧0.1MPaの条件で塩化第二鉄系パターンエッチング液(商品名「アデカケルミカIN-654」、ADEKA社製)をスプレー法により噴霧(50℃、150秒)してエッチングした後、3質量%塩酸及びイオン交換水で順次洗浄し、実施例基体No.1を得た。
【0040】
(実施例10~16)
処理液No.1に代えて、処理液No.2~8をそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例9と同様にして実施例基体No.2~8を得た。
【0041】
(比較例5~8)
処理液No.1に代えて、比較処理液1~4をそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例9と同様にして比較例基体1~4を得た。
【0042】
<評価例1~8及び比較評価例1~4>
(スマット評価)
X線光電子分光分析装置を使用し、実施例基体No.1~8及び比較例基体1~4の表面に析出しているスマットの最大厚みを測定し、以下に示す評価基準にしたがって評価した。結果を表2に示す。
+++:スマットの最大厚みが10nm未満
++:スマットの最大厚みが10nm以上30nm未満
+:スマットの最大厚みが30nm以上50nm未満
-:スマットの最大厚みが50nm以上100nm未満
--:スマットの最大厚みが100nm以上300nm未満
---:スマットの最大厚みが300nm以上
【0043】
(ピンホール評価)
実施例基体No.1~8及び比較例基体1~4の表面1cmの範囲を観察し、以下に示す評価基準にしたがってピンホール数を評価した。結果を表2に示す。
+++:孔径3μm以上のピンホールが10箇所未満、観察された。
++:孔径3nm以上のピンホールが10箇所以上30箇所未満、観察された。
+:孔径3nm以上のピンホールが30箇所以上50箇所未満、観察された。
-:孔径3nm以上のピンホールが50箇所以上70箇所未満、観察された。
--:孔径3nm以上のピンホールが70箇所以上100箇所未満、観察された。
---:孔径3nm以上のピンホールが100箇所以上、観察された。
【0044】
(表面酸化膜の評価)
X線光電子分光分析装置を使用し、実施例基体No.1~8及び比較例基体1~4の表面における酸化膜の有無を確認し、以下に示す評価基準にしたがって評価した。結果を表2に示す。
+++:表面酸化膜無し
---:表面酸化膜有り
【0045】
【0046】
表2に示すように、実施例基体No.1~8では、比較例基体1~4と比べて、ピンホールの発生が十分に抑制されていることがわかる。さらに、実施例基体No.1~8では、比較例基体2~3と比べて、スマットの形成が十分に抑制されていること、及び表面酸化膜を十分に除去できていることがわかる。
【0047】
以上の通り、本発明によれば、ニッケル含有層をエッチングする際のスマットの形成やピンホールの発生を抑制しうるとともに、表面酸化膜を除去することが可能な表面処理液、ニッケル含有層の表面処理方法、及びニッケル含有層の製造方法を提供することができる。