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特開2024-150085表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体処理装置用部材
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  • 特開-表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体処理装置用部材 図1
  • 特開-表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体処理装置用部材 図2
  • 特開-表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体処理装置用部材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150085
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体処理装置用部材
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/18 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
C25D11/18 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063321
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 大希
(72)【発明者】
【氏名】菊地 竜也
(57)【要約】
【課題】腐食性ガスやプラズマに対する耐食性に優れ、クラックの発生を抑制することができる表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体製造装置用部材を提供する。
【解決手段】表面処理アルミニウム材1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材2と、アルミニウムの酸化物及び水和酸化物を含み、母材2の表面の少なくとも一部に形成された保護皮膜3と、を有している。保護皮膜3の厚みは2μm以上である。保護皮膜3中の元素の質量比率をグロー放電発光分析法により深さ方向に分析した場合に、保護皮膜3の表面から深さ1μmの位置までの範囲におけるアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlが0.2以上0.7以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材と、
アルミニウムの酸化物及び水和酸化物を含み、前記母材の表面の少なくとも一部に形成された保護皮膜と、を有し、
前記保護皮膜の厚みが2μm以上であり、
前記保護皮膜中の元素の質量比率をグロー放電発光分析法により深さ方向に分析した場合に、前記保護皮膜の表面から深さ1μmの位置までの範囲におけるアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlが0.2以上0.7以下である、表面処理アルミニウム材。
【請求項2】
JIS H8683-2:2013に規定された方法により封孔度試験を行った場合における、単位面積当たりの質量減少量が0.2g/dm2以下である、請求項1に記載の表面処理アルミニウム材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面処理アルミニウム材からなる半導体製造装置用部材。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、
前記母材に陽極酸化処理を施すことにより前記母材上に細孔を備えた陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、
その後、前記母材を熱水中に浸漬して前記陽極酸化皮膜の前記細孔を封孔することにより前記母材上に前記保護皮膜を形成する封孔工程と、を有し、
前記封孔工程における熱水の温度T[℃]と、浸漬時間t[時間]との積が20℃・時間超え75℃・時間未満である、表面処理アルミニウム材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム材は、種々の用途に利用されている。これらのアルミニウム材の表面には、表面の保護などの目的で陽極酸化皮膜が設けられることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、基板にプラズマ処理を施す基板処理装置用の部品において、前記部品を直流電源の陽極に接続し且つ有機酸を主成分とする溶液中に浸漬する陽極酸化処理によって前記部品の表面に形成された皮膜を備え、前記皮膜には沸騰水を用いた半封孔処理が施されることを特徴とする基板処理装置用の部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-81815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の部品は、陽極酸化皮膜の細孔が完全に閉塞されていないため、腐食性ガスやプラズマに対する耐久性が低いという問題がある。
【0006】
一方、特許文献1の部品において、腐食性ガスやプラズマに対する耐久性を高めるためには陽極酸化皮膜の細孔を完全に閉塞させる方法が考えられる。しかし、この場合には、温度が上昇した際に陽極酸化皮膜にクラックが発生しやすくなり、陽極酸化皮膜の小片からなる異物が発生するおそれがある。このような異物の発生を抑制するため、表面に陽極酸化皮膜を有するアルミニウム材の耐熱性をより高めることが望まれている。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、腐食性ガスやプラズマに対する耐食性に優れ、クラックの発生を抑制することができる表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体製造装置用部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材と、
アルミニウムの酸化物及び水和酸化物を含み、前記母材の表面の少なくとも一部に形成された保護皮膜と、を有し、
前記保護皮膜の厚みが2μm以上であり、
前記保護皮膜中の元素の質量比率をグロー放電発光分析法により深さ方向に分析した場合に、前記保護皮膜の表面から深さ1μmの位置までの範囲におけるアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlが0.2以上0.7以下である、表面処理アルミニウム材にある。
【0009】
本発明の他の態様は、前記の態様の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、
前記母材に陽極酸化処理を施すことにより前記母材上に細孔を備えた陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、
その後、前記母材を熱水中に浸漬して前記陽極酸化皮膜の前記細孔を封孔することにより前記母材上に前記保護皮膜を形成する封孔工程と、を有し、
前記封孔工程における熱水の温度T[℃]と、浸漬時間t[時間]との積が20℃・時間超え75℃・時間未満である、表面処理アルミニウム材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
前記表面処理アルミニウム材(以下、「アルミニウム材」という。)における母材の表面には、2μm以上の厚みを有し、アルミニウムの酸化物と水和酸化物とを含む保護皮膜が設けられている。また、前記酸化物及び前記水和酸化物は、前記保護皮膜中において、グロー放電発光分析法により深さ方向に分析した場合における、アルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlが前記特定の範囲となるように分布している。前記アルミニウム材は、母材上にこのような保護皮膜を設けることにより、高い耐食性を有すると共に、クラックの発生を抑制することができる。
【0011】
また、前記の態様のアルミニウム材の製造方法は、母材に陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜を形成した後、前記特定の条件で陽極酸化皮膜の細孔を封孔することにより、母材上に前記保護皮膜を形成することができる。これにより、前記アルミニウム材を容易に得ることができる。
【0012】
以上のごとく、前記の態様によれば、腐食性ガスやプラズマに対する耐食性に優れ、クラックの発生を抑制することができる表面処理アルミニウム材、その製造方法及び半導体製造装置用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例におけるアルミニウム材の要部を示す断面図である。
図2図2は、実施例のアルミニウム材の製造過程において、陽極酸化処理工程が完了した状態の母材の要部を示す断面図である。
図3図3は、試験材S1の保護皮膜における水素原子の質量比率の深さ方向のプロファイルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(アルミニウム材)
前記アルミニウム材における母材の材質は、アルミニウム材の用途に応じて、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群の中から適宜選択することができる。例えば、アルミニウム材からのアウトガスを低減しようとする場合には、母材が1000系アルミニウムまたは3000系アルミニウム合金から構成されていることが好ましい。3000系アルミニウム合金としては、例えば、Mn(マンガン):1.0質量%以上1.5質量%以下を含むとともに、Si(シリコン)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Mg、Cr(クロム)、Zn(亜鉛)及びTi(チタン)からなる群より選択される1種または2種以上の元素を任意成分として含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金を使用することができる。
【0015】
より具体的には、前記アルミニウム材の母材を構成する1000系アルミニウムとしては、例えば、合金番号AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199で表される化学成分を有するアルミニウムを用いることができる。
【0016】
また、前記アルミニウム材の母材を構成する3000系アルミニウム合金としては、例えば、合金番号AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065で表される化学成分を有するアルミニウム合金を用いることができる。
【0017】
また、アルミニウム材の強度を高くしようとする場合には、母材が5000系アルミニウム合金または6000系アルミニウム合金から構成されていることが好ましい。5000系アルミニウム合金としては、例えば、Mg(マグネシウム):0.5質量%以上5.0質量%以下を含むとともに、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Zn及びTiからなる群より選択される1種または2種以上の元素を任意成分として含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金を使用することができる。また、6000系アルミニウム合金としては、例えば、Mg:0.3質量%以上1.5質量%以下、Si:0.2質量%以上1.2質量%以下を含むとともに、Fe、Cu、Mn、Cr、Zn及びTiからなる群より選択される1種または2種以上の元素を任意成分として含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金を使用することができる。
【0018】
より具体的には、前記アルミニウム材の母材を構成する5000系アルミニウム合金としては、例えば、合金番号AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088で表される化学成分を有するアルミニウム合金を用いることができる。
【0019】
また、前記アルミニウム材の母材を構成する6000系アルミニウム合金としては、例えば、合金番号AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092で表される化学成分を有するアルミニウム合金を用いることができる。
【0020】
前記母材上には、アルミニウムの酸化物と、水和酸化物とを含む保護皮膜が設けられている。保護皮膜は、例えば、母材に陽極酸化処理を施し、母材の表面に、アルミニウムの酸化物からなり、多数の細孔を備えたポーラス型の陽極酸化皮膜を形成した後、封孔処理を行い、陽極酸化皮膜の細孔をアルミニウムの水和酸化物で閉塞することにより得られる。
【0021】
保護皮膜の厚みは2μm以上である。これにより、腐食性ガスやプラズマから母材を保護し、アルミニウム材の耐食性を向上させることができる。耐食性の観点からは保護皮膜の厚みの上限は特に限定されることはなく、保護皮膜の厚みを厚くするほどアルミニウム材の耐食性を向上させることができる。かかる観点からは、保護皮膜の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。なお、保護皮膜の厚みの製造上の上限は、例えば200μmである。保護皮膜におけるクラックの発生を抑制する観点からは、保護皮膜の厚みは100μm以下であることが好ましい。
【0022】
保護皮膜中のアルミニウムの酸化物と水和酸化物とは、保護皮膜中の元素の質量比率をグロー放電発光分析法により深さ方向に分析した場合に、保護皮膜の表面から深さ1μmの位置までの範囲におけるアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlが0.20以上0.70以下となるように分布している。前記積分値の比CH/CAlは、保護皮膜の表面近傍に存在する水和酸化物の量を示しており、比CH/CAlの値が高いほど保護皮膜の表面近傍に存在する水和酸化物の量が多いことを意味する。
【0023】
従って、積分値の比CH/CAlが0.20以上である保護皮膜においては、陽極酸化処理によって生じた細孔が水和酸化物により十分に閉塞されていると考えられる。そのため、保護皮膜における前記比CH/CAlを0.20以上とすることにより、細孔内への腐食性ガスやプラズマ等の進入を抑制することができ、前記アルミニウム材の耐食性を向上させることができる。アルミニウム材の耐食性をより高める観点からは、積分値の比CH/CAlの値は0.22以上であることが好ましく、0.24以上であることがより好ましく、0.26以上であることがさらに好ましく、0.28以上であることが特に好ましく、0.30以上であることが最も好ましい。
【0024】
一方、積分値の比CH/CAlが0.20未満である場合には、細孔の閉塞が不十分となりやすく、アルミニウム材の耐食性の低下を招くおそれがある。
【0025】
また、前記積分値の比CH/CAlの値が過度に高くなると、アルミニウム材の温度が上昇した際に保護皮膜にクラックが生じやすくなるおそれがある。この原因は必ずしも明確ではないが、例えば、以下の理由が考えられる。積分値の比CH/CAlの値が過度に高い場合には、保護皮膜が、水和酸化物の量が過度に多い状態や、水和酸化物の結晶性が過度に高い状態になっていると考えられる。そのため、比CH/CAlの値が過度に高い場合には、母材と、アルミニウムの酸化物と、アルミニウムの水和酸化物との熱膨張率の差によって保護皮膜内の熱膨張が不均一になり、温度が上昇した際にクラックが生じやすくなると考えられる。
【0026】
保護皮膜におけるクラックの発生を抑制する観点から、積分値の比CH/CAlの値は0.70以下とする。同様の観点から、前記比CH/CAlの値は0.68以下であることが好ましく、0.66以下であることがより好ましく、0.64以下であることがさらに好ましい。
【0027】
保護皮膜における積分値の比CH/CAlの好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した積分値の比CH/CAlの上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、積分値の比CH/CAlの好ましい範囲は、0.22以上0.68以下であってもよく、0.24以上0.68以下であってもよく、0.26以上0.66以下であってもよく、0.28以上0.66以下であってもよく、0.30以上0.64以下であってもよい。
【0028】
保護皮膜における前記積分値の比CH/CAlの算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、アルミニウム材の表面を洗浄した後、グロー放電発光分析装置(例えば、SPECTRUMA Analytik GmbH製「GD750」)を用い、保護皮膜の深さ方向におけるアルミニウム原子及び水素原子の発光強度のプロファイルを取得する。この際、グロー放電発光分析装置の測定条件は、アノード径:2.5mm、出力:25W、ガス圧:3.5hPaとし、発光強度の取り込み間隔は0.2~0.24秒とする。なお、このような条件で測定した場合における、保護皮膜のスパッタ速度は約50~90nm/秒である。
【0029】
このようにして得られたアルミニウム原子及び水素原子の深さ方向における発光強度のプロファイルを、予め作成した検量線に基づいて質量比率のプロファイルに変換する。そして、各原子の質量比率を、保護皮膜の表面から深さ1μmの位置までの範囲にわたって積分し、水素原子の質量比率の積分値CH及びアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlを算出する。以上により得られた水素原子の質量比率の積分値CHをアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlで除することにより、積分値の比CH/CAlを算出することができる。
【0030】
JIS H8683-2:2013に規定された方法により封孔度試験を行った場合における、前記アルミニウム材の単位面積当たりの質量減少量は0.2g/dm2以下であることが好ましい。この場合には、アルミニウム材の耐食性をより高めることができる。
【0031】
なお、封孔度試験の具体的な方法は以下の通りである。まず、リン酸35mL及び無水クロム酸20gを水に溶解させ、1Lの試験液を準備する。次に、アルミニウム材から保護皮膜を含む試験片を採取し、試験片における保護皮膜の面積を測定する。この試験片の表面の汚れを除去した後、試験片の質量を測定する。その後、試験片を38℃±1℃の温度に保持された試験液中に15分±5秒間浸漬する。
【0032】
試験液への試験片の浸漬が完了した後、試験片を流水で洗浄し、さらに脱イオン水または蒸留水で洗浄する。洗浄後の試験片を十分に乾燥させた後、試験片の質量を測定する。
【0033】
以上により得られる、試験片の保護皮膜の面積A(単位:dm)、試験液への浸漬前の試験片の質量m(単位:g)及び試験液への浸漬後の試験片の質量m(単位:g)を用い、下記式(1)に基づいて単位面積当たりの質量減少量δ(単位:g/dm)を算出することができる。
δ=(m-m)/A ・・・(1)
【0034】
前記アルミニウム材は、前述したように、腐食性ガスやプラズマ等に対する耐食性に優れており、温度が上昇した場合においても保護皮膜へのクラックの発生を抑制することができる。それ故、前記アルミニウム材は、加熱調理器具のファンの周囲に設けられるカバー用部材や半導体製造装置用部材等の用途に好適である。より具体的には、前記アルミニウム材は、例えば、成膜装置及びエッチング装置等の半導体製造装置におけるチャンバーや、チャンバー内に配置される部品等に好適に用いられる。成膜装置としては、例えばPVD(物理気相成長法)装置やCVD(化学気相成長法)装置が挙げられる。また、エッチング装置としては、例えば、ドライエッチング装置等が挙げられる。
【0035】
(アルミニウム材の製造方法)
前記アルミニウム材の製造方法は、
前記母材に陽極酸化処理を施すことにより前記母材上に細孔を備えた陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程と、
その後、前記母材を熱水中に浸漬して前記陽極酸化皮膜の前記細孔を封孔することにより前記母材上に前記保護皮膜を形成する封孔工程と、を有している。
また、前記封孔工程における熱水の温度T(単位:℃)と、浸漬時間t(単位:時間)との積が20℃・時間超え75℃・時間未満である。
【0036】
陽極酸化処理工程においては、母材と対極とを電解液に浸漬した状態で、母材と対極との間に直流電流を流すことにより母材の表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。このようにして形成される陽極酸化皮膜は、母材上に緻密に形成されたバリア層と、バリア層上に形成され、多数の細孔を有するポーラス層とを有している。バリア層及びポーラス層は、アルミナなどのアルミニウムの酸化物から構成されている。
【0037】
陽極酸化処理工程において用いる電解液は、例えば、硫酸やリン酸などの電解質を含む酸性電解液であってもよく、メタホウ酸ナトリウムなどの電解質を含むアルカリ性電解液であってもよい。陽極酸化処理工程において所望の構造を有する陽極酸化皮膜をより容易に形成し、ひいては前記保護皮膜をより容易に形成する観点からは、陽極酸化処理工程において用いる電解液は、酸性電解液であることが好ましく、無機酸を電解質として含む酸性電解液であることがより好ましく、硫酸を電解質として含む酸性電解液であることがさらに好ましい。なお、陽極酸化処理工程によりアルミニウム材の表面に生成する酸化皮膜の内部には電解質由来のアニオンが取り込まれることがあり、例えば硫酸を用いた陽極酸化処理では硫酸イオンに由来する硫黄を含む酸化皮膜が形成される。
【0038】
また、陽極酸化処理における直流電流の電流密度は、例えば、1mA/cm以上20mA/cm以下の範囲から適宜設定することができる。また、陽極酸化処理工程における電解液の温度は、例えば、0℃以上40℃以下の範囲から適宜設定することができる。
【0039】
陽極酸化処理工程において形成される陽極酸化皮膜の厚みは、2μm以上であることが好ましい。陽極酸化皮膜の厚みを2μm以上とすることにより、封孔工程後の保護皮膜の厚みをより容易に2μm以上とすることができる。
【0040】
封孔工程においては、陽極酸化処理工程において、表面に陽極酸化皮膜が形成された母材を熱水中に浸漬する。陽極酸化皮膜を熱水中に浸漬すると、陽極酸化皮膜を構成するアルミニウムの酸化物と水とが反応し、水和酸化物が形成される。この水和酸化物が陽極酸化皮膜の細孔を閉塞させることにより、前記陽極酸化皮膜が前記保護皮膜となる。
【0041】
封孔工程においては、母材を浸漬する熱水の温度T(単位:℃)と、浸漬時間t(単位:時間)との積が20℃・時間超え75℃・時間未満、好ましくは21℃・時間以上73℃・時間以下、より好ましくは23℃・時間以上71℃・時間以下となるように母材を熱水中に浸漬する。熱水の温度と浸漬時間との積が20℃・時間よりも大きくなるように母材を熱水中に浸漬することにより、陽極酸化皮膜を構成するアルミニウムの酸化物と熱水とを十分に反応させ、陽極酸化皮膜の細孔を十分に閉塞させることができる。これにより、耐食性に優れた保護皮膜を形成することができる。熱水の温度と浸漬時間との積が20℃・時間以下の場合には、アルミニウムの酸化物と熱水との反応が不十分となり、細孔の閉塞が不十分となりやすい。そのため、この場合には、アルミニウム材の耐食性の低下を招くおそれがある。優れた耐食性を有する保護皮膜をより確実に得る観点からは、熱水の温度と浸漬時間との積は21℃・時間以上であることが好ましく、23℃・時間以上であることがさらに好ましい。
【0042】
一方、熱水の温度と浸漬時間との積が高すぎる場合には、アルミニウム材の温度が上昇した際に、保護皮膜にクラックが生じやすくなるおそれがある。この原因としては、アルミニウムの酸化物と熱水とが過剰に反応することなどが考えられる。保護皮膜へのクラックの発生を抑制し、アルミニウム材の耐熱性を向上させる観点から、熱水の温度と浸漬時間との積は75℃・時間未満とする。同様の観点から、熱水の温度と浸漬時間との積は73℃・時間以下であることが好ましく、71℃・時間以下であることがより好ましい。
【0043】
封孔工程における熱水の温度Tは、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。封孔工程において高温の熱水を用いることにより、所望の封孔度を実現するために必要な浸漬時間を容易に短縮することができる。その結果、前記アルミニウム材の生産性をより向上させることができる。なお、封孔工程における熱水の温度Tの上限は150℃である。すなわち、封孔工程においては、沸騰水中に母材を浸漬してもよく、過熱された水蒸気を母材に接触させてもよい。
【0044】
陽極酸化処理工程に用いられる母材は、どのような方法により作製されていてもよい。
例えば、前記アルミニウム材の製造方法は、さらに、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる鋳塊を作製する鋳造工程と、
前記鋳塊を500℃以上560℃以下の温度に5時間以上10時間以下保持して均質化処理を行う均質化処理工程と、
前記均質化処理が施された前記鋳塊に、その温度が500℃以上560℃以下である状態で熱間圧延を施して前記母材を作製する熱間圧延工程と、を有していてもよい。
【0045】
鋳造工程における鋳造方法としては、例えば、DC鋳造を採用することができる。鋳造工程において得られる鋳塊の厚みは特に限定されることはないが、鋳塊は、例えば、600mm以上の厚みを有していてもよい。
【0046】
均質化処理工程においては、鋳造工程において得られた鋳塊を、500℃以上560℃以下の温度に5時間以上10時間以下保持して均質化処理を行う。均質化処理における保持温度及び保持時間をそれぞれ前記特定の範囲とすることにより、鋳塊の組織を十分に均質化することができる。そして、このような鋳塊に熱間圧延を施すことにより、所望の第二相粒子を含む母材を得ることができる。
【0047】
熱間圧延工程においては、均質化処理が施された鋳塊に、その温度が500℃以上560℃以下である状態で鋳塊に熱間圧延を施す。これにより、母材を得ることができる。熱間圧延における開始温度が低すぎる場合には、鋳塊の変形抵抗が高くなり、圧延時に鋳塊に割れが生じたり、生産性の悪化を招くおそれがある。一方、熱間圧延における開始温度が高すぎる場合には、熱間圧延中の加工発熱によって鋳塊が局所的に溶融するおそれがある。
【0048】
前記製造方法においては、以上のようにして得られた母材をそのまま陽極酸化処理工程に供してもよい。また、前記製造方法は、熱間圧延工程を行った後、陽極酸化処理工程を行う前に、必要に応じて母材に焼鈍等の熱処理を行う熱処理工程を有していてもよい。
【0049】
さらに、前記製造方法は、熱間圧延工程を行った後、陽極酸化処理工程を行う前に、母材に前処理を施す前処理工程を有していてもよい。母材の前処理としては、例えば、アルカリ脱脂処理等の脱脂処理や、機械研磨、化学研磨及び電解研磨等の研磨処理等が挙げられる。前処理工程においては、所望するアルミニウム材の特性に応じて前述した前処理のうち1種を単独で実施してもよいし、2種以上の前処理を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0050】
前処理工程においてアルカリ脱脂処理を行う場合には、陽極酸化処理後に得られる陽極酸化皮膜の光沢を低減し、艶のない外観を有するアルミニウム材を得ることができる。また、前処理工程において研磨処理を行う場合には、陽極酸化処理後に得られる陽極酸化皮膜の光沢を高め、艶のある外観を有するアルミニウム材を得ることができる。アルミニウム材の光沢をより高める観点からは、前処理工程において、母材に電解研磨処理を行うことが好ましい。
【実施例0051】
前記表面処理アルミニウム材及びその製造方法の実施例を、図1図3を参照しつつ説明する。本例の表面処理アルミニウム材1は、図1に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材2と、アルミニウムの酸化物及び水和酸化物を含み、母材2の表面の少なくとも一部に形成された保護皮膜3と、を有している。保護皮膜3の厚みは2μm以上である。また、保護皮膜3中の元素の質量比率をグロー放電発光分析法により深さ方向に分析した場合に、保護皮膜3の表面から深さ1μmの位置までの範囲におけるアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlが0.2以上0.7以下である。
【0052】
表1に、アルミニウム材1の具体例(試験材S1~S5)を示す。試験材S1~S5の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、母材2として、合金番号A6016で表される化学成分を有し、厚みが1.1mmであるアルミニウム板を準備する。この母材2に陽極酸化処理の前処理を施す。具体的には、前処理として、まず母材2を濃度5質量%、温度55℃の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬するアルカリエッチング処理を行う。その後、母材2を濃度30質量%の硝酸に浸漬してデスマット処理を行う。その後、リン酸と硫酸とが体積比でリン酸:硫酸=7:3の比率で混合された、温度85℃の混合溶液に母材2を浸漬して化学研磨処理を行う。化学研磨処理の後、前述した条件と同様の条件で再びデスマット処理を行う。
【0053】
以上のようにして母材2に前処理を行った後、母材2に陽極酸化処理を行い、母材2の表面に陽極酸化皮膜30を形成する。陽極酸化処理において用いる電解液は濃度15質量%の硫酸水溶液とし、電解液の温度は5℃とする。また、陽極酸化処理における電流密度は10mA/cmとし、処理時間は60分とする。このようにして形成される陽極酸化皮膜30はいわゆるポーラス型の陽極酸化皮膜であり、図2に示すように、母材2上に形成されるバリア層31と、バリア層31上に形成され、多数の細孔321を備えたポーラス層32とを有している。なお、前述した条件で陽極酸化処理を行うことにより形成される陽極酸化皮膜30の厚みはおよそ15μmである。
【0054】
陽極酸化処理を行った後、母材を表1に示す条件で熱水に浸漬することにより、封孔処理を行う。以上により、表1に示す試験材S1~S5を得ることができる。なお、表1に示す試験材R1~R3は、試験材S1~S5との比較のための試験材である。試験材R1~R3の製造方法は、封孔処理における熱水の温度及び浸漬時間を表1に示すように変更した以外は、試験材S1~S5の製造方法と同様である。
【0055】
次に、表1に示す試験材S1~S5及び試験材R1~R3の諸特性の評価方法を説明する。
【0056】
〔水素原子及びアルミニウム原子の分布〕
各試験材の表面を洗浄した後、グロー放電発光分析装置(SPECTRUMA Analytik GmbH社製「GD750」)を用い、保護皮膜の深さ方向におけるアルミニウム原子及び水素原子の発光強度のプロファイルを取得する。グロー放電発光分析装置の測定条件は、アノード径:2.5mm、出力:25W、ガス圧:3.5hPaとし、発光強度の取り込み間隔は0.2~0.24秒とする。なお、このような条件で測定した場合における、保護皮膜のスパッタ速度は約50~90nm/秒である。
【0057】
このようにして得られたアルミニウム原子及び水素原子の深さ方向における発光強度のプロファイルを、予め作成した検量線に基づいて質量比率のプロファイルに変換する。図3に、一例として、試験材S1における水素原子の質量比率のプロファイルを示す。図3の縦軸は水素原子の質量比率(単位:質量%)であり、横軸は保護皮膜の表面からの深さ(単位:μm)である。このようにして得られるプロファイルにおいて、各原子の質量比率を保護皮膜の表面から深さ1μmの位置までの範囲にわたって積分し、水素原子の質量比率の積分値CH及びアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlを算出する。以上により得られる水素原子の質量比率の積分値CHをアルミニウム原子の質量比率の積分値CAlで除することにより、比CH/CAlを算出する。
【0058】
〔保護皮膜の封孔度〕
JIS H8683-2:2013に規定された方法により封孔度試験を行い、各試験材の単位面積当たりの質量減少量を測定する。
【0059】
〔耐熱性〕
以下の方法により測定される母材の露出率に基づいて耐熱性を評価する。まず、試験材を温度200℃に設定したオーブンで4時間加熱する。オーブンから取り出した試験材を室温まで冷却した後、保護皮膜上に評価領域を設定し、試験材の表面における評価領域以外の部分をシリコーン樹脂で被覆する。
【0060】
次に、濃度5質量%のNaCl水溶液と濃度99.7%の酢酸とを準備し、NaCl水溶液と酢酸との体積比率がNaCl水溶液:酢酸=1000:1となるようにしてNaCl水溶液に酢酸を添加することにより測定用溶液を作製する。この溶液中に、ポテンショスタットと電気的に接続した試験片、対極及び参照電極を浸漬し、30分間静置して測定部の電位を安定させる。なお、参照電極としては、例えば、Ag/AgCl電極を使用することができる。
【0061】
測定部の電位が安定した後、ポテンショスタットを用いて試験片と対極との間に電圧を印加し、測定部の電位が参照電極に対して-2000mVに達するまで、20mV/分の掃引速度で測定部の電位を掃引する。この時に測定部に流れる電流密度を測定することにより、加熱後の試験材の分極曲線を取得する。また、前述した方法で陽極酸化処理の前処理を行った後の母材を用いて同様の測定を行うことにより、母材の分極曲線を取得する。
【0062】
次に、母材の分極曲線において、水素の拡散限界電流を示す電位領域の中心を決定する。そして、当該電位領域の中心における電流密度を算出する。また、加熱後の試験材の分極曲線において、母材の分極曲線における前述した電位領域の中心と同一の電位における電流密度を算出する。
【0063】
加熱後の試験材の分極曲線に基づいて算出される電流密度は、加熱後の試験材における母材と測定用溶液との接触面積の指標として用いることができ、電流密度の値が大きいほど母材と測定用溶液との接触面積が広いことを示す。従って、母材を用いて算出した電流密度に対する、加熱後の試験片を用いて算出した電流密度の比率を、加熱による母材の露出面積の増加率の指標として用いることができる。より具体的には、例えば、加熱後の試験材における保護皮膜にクラックなどの欠陥が形成される場合には、クラックによって母材が露出することがある。従って、この場合には、母材に対する加熱後の試験材の電流密度比が大きくなる。表1に、各試験材の電流密度比を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、試験材S1~S5は、封孔処理工程において、熱水の温度と浸漬時間との積が前記特定の範囲内となるように封孔処理を行っている。そのため、これらの試験材における、アルミニウム原子の質量比率の積分値CAlに対する水素原子の質量比率の積分値CHの比CH/CAlは前記特定の範囲内となる。また、これらの試験材は、封孔度試験における質量減少量が低く、腐食性ガスやプラズマ等に対する耐食性に優れている。さらに、これらの試験材は、電流密度比が低く、温度が上昇した場合においても保護皮膜へのクラックの発生を抑制することができる。
【0066】
一方、試験材R1及び試験材R3は、封孔処理における熱水の温度と浸漬時間との積が前記特定の範囲よりも高いため、アルミニウムの酸化物と熱水との水和反応が過剰に進行する。それ故、試験材R1および試験材R3は、試験材S1~S5に比べて電流密度比が高く、温度が上昇した場合にクラックが発生しやすい。
【0067】
試験材R2は、封孔処理における熱水の温度と浸漬時間との積が前記特定の範囲よりも低いため、陽極酸化皮膜の細孔の閉塞が不十分となる。そのため、試験材R2は、試験材S1~S5に比べて封孔度試験における質量減少量が高く、耐食性に劣る。
【0068】
以上、実施例に基づいて本発明に係る表面処理アルミニウム材及びその製造方法の態様を説明したが、本発明に係る表面処理アルミニウム材及びその製造方法の具体的な態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 表面処理アルミニウム材
2 母材
3 保護皮膜
図1
図2
図3