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特開2024-150107有機膜形成用材料、半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、パターン形成方法、及び化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150107
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】有機膜形成用材料、半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、パターン形成方法、及び化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/20 20060101AFI20241016BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20241016BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20241016BHJP
   C07C 211/54 20060101ALN20241016BHJP
   C07C 39/17 20060101ALN20241016BHJP
   C07C 43/20 20060101ALN20241016BHJP
   C07C 43/29 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C08G8/20 Z
G03F7/26 511
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C07C211/54
C07C39/17
C07C43/20 D
C07C43/29 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063361
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】澤村 昂志
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4H006
4J033
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196KA07
2H225AF24P
2H225AF44P
2H225AH17
2H225AJ13
2H225AJ54
2H225AJ59
2H225AM22N
2H225AM26P
2H225AM79N
2H225AM91N
2H225AM94N
2H225AM99P
2H225AN11N
2H225AN21N
2H225AN28N
2H225AN29N
2H225AN31N
2H225AN37N
2H225AN39N
2H225AN39P
2H225AN50N
2H225AN56N
2H225AN62P
2H225AN65N
2H225AN82N
2H225BA01N
2H225BA02N
2H225BA24N
2H225BA26P
2H225BA32N
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB10
2H225CC03
2H225CC15
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB80
4H006FC52
4H006FC54
4H006FE13
4H006GP03
4H006GP06
4H006GP20
4J033CA02
4J033CA18
4J033CA22
4J033CA25
4J033HA12
4J033HB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不活性ガス中の成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板への密着性が良好な有機膜を形成できる化合物、及び該化合物を含有する有機膜形成用材料を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用材料。

(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機膜形成用材料であって、
(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤
を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用材料。
【化1】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化2】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1B)中のRが下記式(1C)で示されるもののいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【化3】
(上記式中の破線は結合手を表す)
【請求項3】
前記一般式(1A)中のn1が3または4であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【請求項4】
前記一般式(1B)中のn2が1であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【請求項5】
前記一般式(1A)中のYが下記式(1D)に示された部分構造のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【化4】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項6】
前記(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【請求項7】
前記(B)有機溶剤は、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【請求項8】
前記有機膜形成用材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【請求項9】
基板上に、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料が硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板。
【請求項10】
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
【請求項11】
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
【請求項12】
前記不活性ガス中の酸素濃度を1体積%以下とすることを特徴とする請求項10に記載の有機膜の形成方法。
【請求項13】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることを特徴とする請求項10に記載の有機膜の形成方法。
【請求項14】
被加工体上に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
被加工体上に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項16】
被加工体上に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項17】
被加工体上に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項18】
前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項16に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることを特徴とする請求項21に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
下記一般式(1A)で示される化合物。
【化5】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化6】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【請求項24】
前記一般式(1B)中のRが下記式(1C)で示されるもののいずれかであることを特徴とする請求項23に記載の化合物。
【化7】
(上記式中の破線は結合手を表す)
【請求項25】
前記一般式(1A)中のn1が3または4であることを特徴とする請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
前記一般式(1B)中のn2が1であることを特徴とする請求項23に記載の化合物。
【請求項27】
前記一般式(1A)中のYが下記式(1D)に示された部分構造のいずれかであることを特徴とする請求項23に記載の化合物。
【化8】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機膜形成用材料、該材料を用いた半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、多層レジスト法によるパターン形成方法、及び該材料に好適に用いることができる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の高集積化と高速度化は、汎用技術として光露光を用いたリソグラフィー技術(光リソグラフィー)における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化によって達成されてきた。このような微細な回路パターンを半導体装置製造用基板(被加工基板)上に形成するためには、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられる。しかしながら、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しないため、近年では多層レジスト法による基板加工が一般化している。この方法は、フォトレジスト膜(以下、レジスト上層膜ともいう)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この方法は、被加工基板上に有機樹脂含有組成物からなる有機下層膜材料(以下、有機膜形成用材料ともいう)を用いて塗布、焼成することにより有機下層膜(以下、有機膜ともいう)を成膜し、その上にケイ素含有樹脂含有組成物からなるレジスト中間膜材料(以下、ケイ素含有レジスト中間膜材料ともいう)を用いて塗布、焼成することによりケイ素含有膜(以下、ケイ素含有レジスト中間膜ともいう)として成膜し、その上に一般的な有機系フォトレジスト膜(レジスト上層膜)を形成する。当該レジスト上層膜をパターニングした後、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行うと、有機系のレジスト上層膜はケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比を取ることが出来るため、レジスト上層膜パターンをケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持たないレジスト上層膜や、被加工基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト上層膜を用いても、通常、ケイ素含有レジスト中間膜はレジスト上層膜に比べて同等以下の膜厚であるため、容易にケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写することができる。続いてパターン転写されたケイ素含有レジスト中間膜をドライエッチングマスクとして酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングで有機膜にパターン転写すれば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機膜にパターン転写することができる。このパターン転写された有機膜パターンをフッ素系ガスや塩素系ガスなどを用いてドライエッチングで基板にパターン転写することが出来る。
【0004】
一方、半導体装置の製造工程における微細化は、光リソグラフィー用光源の波長に由来する本質的な限界に近づきつつある。そのため、近年においては微細化に頼らない半導体装置の高集積化が検討されており、その方法の一つとしてマルチゲート構造等の複雑な構造を有する半導体装置が検討されており、一部は既に実用化されている。このような構造を多層レジスト法で形成する場合、被加工基板上で形成されたホール、トレンチ、フィン等の微小パターンを空隙なく膜で埋め込んだり、段差やパターン密集部分とパターンのない領域を膜で埋め込んで平坦化(planarization)可能な有機膜形成用材料を適用することが出来る。このような有機膜形成用材料を用いて段差基板上に平坦な有機膜表面を形成することによって、その上に成膜するケイ素含有レジスト中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、光リソグラフィーの焦点裕度やその後の被加工基板の加工工程におけるマージン低下を抑制することが出来る。これにより、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。一方、単層レジスト法では、段差やパターンのある被加工基板を埋めるためには、上層レジスト膜の膜厚が厚くなり、それによる露光現像後のパターン倒れや、露光時の基板からの反射によりパターン形状劣化など、露光時のパターン形成裕度が狭くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが困難である。
【0005】
更に次世代の半導体装置の高速度化の手法として、例えば、歪シリコンやガリウムヒ素などを用いた電子移動度の高い新規材料やオングストローム単位で制御された超薄膜ポリシリコン等の精密材料の適用も検討され始めている。しかしながら、このような新規精密材料が適用されている被加工基板では、上記のような有機膜形成用材料による平坦化膜形成時の条件、例えば空気中、300℃以上の成膜条件においては、空気中の酸素によって当該材料が腐食され、半導体装置の高速度化が材料設計どおりの性能を発揮することが出来ず、工業的な生産として成り立つ歩留まりに達成しない可能性がある。そこで、このような高温条件下の空気による基板の腐食に起因する歩留まりの低下を避けるため、不活性ガス中で成膜出来る有機膜形成用材料が期待されている。
【0006】
従来、フェノール系やナフトール系化合物に対して縮合剤としてケトン類やアルデヒド類などのカルボニル化合物や芳香族アルコール類を用いた縮合樹脂類が多層レジスト法用の有機膜形成用材料として知られている。例えば、特許文献1に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特許文献2に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特許文献3に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特許文献4に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂などが例示できる。このような材料は、架橋剤としてのメチロール化合物による架橋や、空気中の酸素の作用による芳香環のα位での酸化とその後の縮合による架橋反応による硬化作用により、次工程で使用される塗布膜材料に対する溶剤耐性を持つ膜として成膜されているが、この溶剤耐性を発現させる駆動力は酸化であるため不活性ガス中では十分な耐熱性や平坦性などの諸性能を満たことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-128509号公報
【特許文献2】特開2006-293298号公報
【特許文献3】特開2006-285095号公報
【特許文献4】特開2010-122656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板への密着性が良好な有機膜を形成できる化合物、及び該化合物を含有する有機膜形成用材料を提供することを目的とする。更に、本発明は当該材料を用いた半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、及びパターン形成方法も提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、有機膜形成用材料であって、
(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用材料を提供する。
【化1】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化2】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【0010】
このような有機形成用材料であれば、空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成用材料となる。
【0011】
この場合、前記一般式(1B)中のRが下記式(1C)で示されるもののいずれかであることが好ましい。
【化3】
(上記式中の破線は結合手を表す)
【0012】
(A)成分である有機膜形成用化合物に上記のような末端構造を導入することが優れた硬化性、平坦性、埋め込み特性、基板への密着性を付与する観点から好ましい。
【0013】
また、前記一般式(1A)中のn1が3または4であることが好ましい。
【0014】
(A)成分である有機膜形成用化合物中の置換基数を適切な範囲に調整することにより、急激な硬化により熱流動性が損なわれることを防ぐ観点から好ましい。
【0015】
また、前記一般式(1B)中のn2が1であることが好ましい。
【0016】
(A)成分である有機膜形成用化合物中に上記のような構造を導入することで、炭素密度を増やすことができるためエッチング耐性を付与でき、さらに熱による膜のシュリンクが抑制されるため耐熱性、平坦性のよい膜を形成することが可能となる。
【0017】
また、前記一般式(1A)中のYが下記式(1D)に示された部分構造のいずれかであることが好ましい。
【化4】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0018】
(A)成分である有機膜形成用化合物に上記のような構造を有することが、耐熱性、溶剤溶解性、平坦性などの諸物性を改善する観点から上記構造であることが好ましい。
【0019】
前記(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることが好ましい。
【0020】
(A)成分である有機膜形成用化合物のMw/Mnをこのような範囲で制御することで埋め込み特性と平坦性に優れた有機膜を形成することができる。
【0021】
前記(B)有機溶剤は、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0022】
有機溶剤が上記のような混合物である有機膜形成用材料は、高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、より高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を提供できる。なお、本発明において、沸点は1気圧(1013hPa)における値である。
【0023】
また、本発明の有機膜形成用材料は、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【0024】
本発明の有機膜形成用材料は、その目的に応じて、上記(C)~(F)成分のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【0025】
また、本発明は、基板上に、本発明の有機膜形成用材料が硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板を提供する。
【0026】
このような基板は、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を含むので、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0027】
更に本発明は、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法を提供する。
【0028】
本発明の方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される有機膜は、不活性ガス中での成膜であっても硬化し、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0029】
また、本発明は、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法を提供する。
【0030】
本発明の方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される有機膜は、一部不活性ガス中での成膜であっても硬化し、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0031】
また、本発明の有機膜の形成方法では、前記不活性ガス中の酸素濃度を1体積%以下とすることが好ましい。
【0032】
本発明の有機膜形成用材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物を発生することなく十分に硬化し、また、基板への密着性に優れる有機膜を形成することができる。また、このような不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、被加工基板の腐食を防止することができる。なお、本発明において酸素濃度は体積基準で表すものとする。
【0033】
また、本発明では、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることができる。
【0034】
本発明の有機膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0035】
また、本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0037】
また、本発明は、被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0038】
また、本発明は、被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0039】
本発明の有機膜形成用材料は、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができる。半導体装置の製造工程において、このような本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。
【0040】
前記無機ハードマスクを用いる場合は、これをCVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0041】
本発明のパターン形成方法では、例えばこのような方法で無機ハードマスクを形成することができる。
【0042】
また、本発明では、前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0043】
前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0044】
本発明のパターン形成方法では、このような回路パターンの形成手段及び現像手段を好適に用いることができる。
【0045】
また、前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0046】
前記被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0047】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【0048】
また、本発明では、下記一般式(1A)で示される化合物を提供する。
【化5】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化6】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【0049】
このようなカルド構造を1分子中に3個以上有する化合物は、末端構造に導入した置換基により空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる。また、複数のカルド構造が分子内に導入されたことにより化合物の結晶性を下げ、耐熱性を損なわずに溶剤への溶解性を向上させることができ、さらに熱流動性と耐熱性という相反する性能を両立することが可能となる。
【0050】
この場合、前記一般式(1B)中のRが下記式(1C)で示されるもののいずれかであることが好ましい。
【化7】
(上記式中の破線は結合手を表す)
【0051】
このような末端構造を導入することにより架橋性や基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性などを発現することができる。
【0052】
本発明の化合物は、前記一般式(1A)中のn1が3または4であることが好ましい。
【0053】
化合物中の置換基数を適切な範囲に調整することにより、急激な硬化により熱流動性が損なわれることを防ぐ観点から好ましい。
【0054】
また、前記一般式(1B)中のn2が1であることが好ましい。
【0055】
化合物中に上記のような構造を導入することで、炭素密度を増やすことができるためエッチング耐性が付与でき、さらに熱による膜のシュリンクが抑制されるため耐熱性、平坦性のよい膜が形成することが可能となる。
【0056】
また、前記一般式(1A)中のYが下記式(1D)に示された部分構造のいずれかであることが好ましい。
【化8】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0057】
本発明の化合物は上記のような構造とすることが、耐熱性、溶剤溶解性、平坦性などの諸物性を改善する観点から好ましい。
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように、本発明の化合物は、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化し、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込みおよび平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するために有用な化合物となる。また、この化合物(有機膜形成用化合物)を含む有機膜形成用材料は、優れた埋め込み/平坦化特性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性等の諸特性を兼ね備えた有機膜を形成する材料となる。したがって、本発明の有機膜形成用材料によって得られる有機膜であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦性不足による有機膜表面の凹凸のない有機膜となる。そのため、本発明の有機膜形成用材料は、例えば、2層レジスト法、ケイ素含有中間膜を用いた3層レジスト法、ケイ素含有中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法といった多層レジスト法における有機膜形成用材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用材料から形成される有機膜は、耐熱性に優れるため、当該有機膜上にCVDハードマスクを形成する場合でも熱分解による膜厚変動が無く、パターン形成に好適である。更に、本発明の有機膜で平坦化された半導体装置基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。そして、半導体装置の製造工程において、本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明における平坦化特性の説明図である。
図2】本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例の説明図である。
図3】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
図4】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
図5】実施例における密着性測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
上述のように、基板の腐食を防止するため、不活性ガス中の成膜条件、例えば、300℃以上においても副生物が発生することなく、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機膜を形成できる有機膜形成用化合物の開発が求められていた。更に、当該有機膜上にCVDハードマスクを形成する場合においても、熱分解による有機膜の膜厚変動のない有機膜形成用材料、当該材料を用いたパターン形成方法に有用な有機膜形成用化合物の開発が求められていた。
【0061】
通常、有機膜を形成する際には、有機膜形成用化合物を有機溶剤で溶解して組成物とし、これを半導体装置の構造や配線等が形成されている基板上に塗布して、焼成することで有機膜を形成する。組成物の塗布直後は基板上の段差構造の形状に沿った塗布膜が形成されるが、該塗布膜を焼成すると、硬化するまでの間に有機溶剤の殆どが蒸発し、基板上に残った有機膜形成用化合物によって有機膜が形成される。本発明者らは、このとき基板上に残った有機膜形成用化合物が十分な熱流動性を有するものであれば、熱流動によって塗布直後の段差形状を平坦化し、平坦な膜を形成することが可能であることに想到した。
【0062】
本発明者らは、更に鋭意検討を重ね、下記一般式(1A)で示されるフルオレン型の置換基を有する有機膜形成用化合物であれば、末端に導入した置換基の作用により空気中のみならず、不活性ガス中においても従来の有機膜形成用材料と同等の熱硬化性を有し、熱流動性が良好であるため高度な埋め込み/平坦化特性を発現する。酸化に依存しない硬化メカニズムを経由するため有機膜形成用化合物の酸化によるエッチング耐性の劣化がなく、良好なドライエッチング耐性を有す。また、剛直なフルオレン構造を複数有すためCVDハードマスクを形成する場合においても熱分解による塗布膜厚変動の無い耐熱性を併せ持つ有機膜形成用材料を与えるものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0063】
即ち、本発明は、有機膜形成用材料であって、(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用材料である。
【化9】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化10】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【0064】
また、本発明は、有機膜形成用材料として用いることができる上記一般式(1A)で示される化合物である。
【0065】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
本発明の有機膜形成用材料は、上記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物(A成分)と有機溶剤(B成分)を含有することを特徴とする。該有機膜形成用材料は、上記一般式(1A)で示される化合物(有機膜形成用化合物)と有機溶剤を含むものであればよく、必要に応じて他の成分を含むことができる。以下、各成分について説明する。
【0067】
<有機膜形成用化合物>
本発明の有機膜形成用化合物は、下記一般式(1A)で示され有機膜形成用化合物である。
【化11】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化12】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【0068】
上記一般式(1B)のように3個以上のカルド構造が分子内に導入されたことにより化合物の結晶性を下げ、耐熱性を損なわずに溶剤への溶解性を向上させることができ、熱流動性と耐熱性というトレードオフとなる性能を両立することが可能となる。また、ORは、置換基を選択することにより大気中および不活性ガス下で硬化性を付与し、平坦性付与、硬化性などの観点から適宜鎖長を調整することが可能である。また、部分的にエーテル基または水酸基を有する化合物と混合することで基板への高い密着性を付与することが可能である。またYで表される主骨格を成す構造を適宜選択することでエッチング耐性や光学特性などの諸物性を調整することができる。これらの化合物はCVD法やALD法を用いた無機ハードマスクを有機膜直上に形成する際の膜剥がれを防止しプロセス裕度に優れた有機膜が形成可能となる。
【0069】
上記一般式(1A)のYのうちn1価の有機基としては下記などを例示することができる、これらの芳香環を有する場合には置換基を有してもよく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。
【0070】
【化13】
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
上記の一般式(1A)で表される化合物のうち、一般式(1B)の芳香環上の置換基Rが他の芳香環中の水素原子と橋掛け構造を形成する(他の芳香環のR同士で結合して橋掛け構造を形成する)際の例として下記が例示できる。Ar1、Ar2、n1、n2、n3、n5、R,R、Rは前記と同じ。
【化17】
【0075】
上記の中でも化合物中の置換基数を適切な範囲に調整し急激な硬化により熱流動性が損なわれることを防ぐ観点、およびXで示される置換基が増えることで化合物の分子量が大きくなることにより熱流動性が損なわれる観点から、n1=3または4を満たす、つまりYが3価また4価の有機基になるときが好ましく、原料の入手の容易さからn1=3がより好ましい。
【0076】
さらに原料入手の容易さ、耐熱性、熱流動性の観点からYは下記式(1D)で示される部分構造のうちのいずれかであることがより好ましい。
【化18】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0077】
上記一般式中(1A)中のXは下記一般式(1B)である。
【化19】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
【0078】
上記一般式(1B)で表される部分構造としては下記などが例示できる。R,R、R、n3、n4、n5は前記と同じ。
【化20】
【0079】
【化21】
【0080】
【化22】
【0081】
【化23】
【0082】
【化24】
【0083】
上記の一般式(1B)中のAr1、Ar2で表される部分構造としてはAr1およびAr2がベンゼン環、Ar1、Ar2がベンゼン環とナフタレン環の組み合わせであることが好ましい。Ar1およびAr2がベンゼン環の時は対称性の観点から耐熱性の向上が期待でき、Ar1、Ar2がベンゼン環とナフタレン環の組み合わせのとき非対称構造となり化合物の溶剤への溶解性がさらに改善される。このなかでも原料入手の容易さからAr1およびAr2がベンゼン環であることがより好ましい。
【0084】
上記一般式(1B)中の芳香族上の置換基R、Rはそれぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ基、nーブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などの炭素数2~4のアルキニル基、エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基などの炭素数2~4のアルケニル基などが例示でき、アルキルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素原子上の水素原子が一部またはすべてがフッ素原子などフッ素置換基に置換されてもよい、たとえばメチル基であればトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基などとなる。これらの中でも耐熱性、エッチング耐性の観点からn4、n5=0が好ましく、平坦性、溶解性の観点からRがトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0085】
上記一般式(1B)中のRは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基である。炭素数1~4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、炭素数2~4のアルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、炭素数2~4のアルケニル基としてはエチニル基、プロパルギル基、ブチニル基などが例示できる。これらの中でも下記(1C)表される構造が好ましく、熱硬化性の観点からプロパルギル基がより好ましい。
【化25】
【0086】
上記の一般式(1B)中のn2は0または1の整数である。耐熱性、エッチング耐性の観点からn2=1、つまりナフタレン環であることが好ましい。
【0087】
上記一般式(1B)中のn3は1または2の整数である。硬化性の観点からn3=2であることが好ましく、特に下記の部分構造のように、カテコール類似の-ORで示される置換基が隣接しているとき密着性、耐熱性の観点から特に好ましい。
【化26】
【0088】
さらに上記一般式(1B)においては、下記のようにn2=1かつn3は1または2の整数であることが好ましく、硬化性の観点からn3=2であることがより好ましく、特に下記の部分構造のように、カテコール類似の-ORで示される置換基が隣接しているとき密着性、耐熱性の観点から特に好ましい。
【化27】
【0089】
さらにORで表される置換基を有する部分構造が下記に示すナフタレン環上のβ位にプロパルギルオキシ基がある場合にはプロパルギルオキシ基がベークにより環化体を形成後、重合することで熱硬化性を発現していると考えられる。この場合、プロパルギルオキシ基は、環化前は流動性を付与し、環化後は硬化性基として作用するだけでなく環構造形成により耐熱性改善にも寄与する。この場合の硬化反応においてはアウトガス成分となる熱酸発生剤などの分解性の添加剤や縮合反応などの副生物が発生しないためベーク時の昇華物成分を抑制すると伴に膜シュリンクも抑制することができる。これらの作用により相反する性能となる耐熱性と埋め込み/平坦化特性との両立が可能となるためさらに好ましい。
【0090】
【化28】
【0091】
さらにRを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基の割合をbとしたとき、基板への密着性や成膜性付与への効果が期待できる水素原子と耐熱性や熱流動性付与が期待できる炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基を任意の割合で調整し所望の性能に合わせて割合を調整できる。任意の割合に調整する際には、反応により置換基導入率を調整することも可能であり、別途、Rが水素原子の化合物と炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基で置換された化合物を各々用意し混合して所望の割合に調整することもできる。
【0092】
加えて、一般式(1A)で表される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることが好ましい。定義上、単分子化合物であればMw/Mnは1.00となるがゲルパーミエーションクロマトグラフィー法の分離性の都合で、測定値が1.00を超える場合がある。一般的に繰り返し単位を有する重合体は特殊な重合法を用いない限り、Mw/Mn=1.00に近づけることは極めて困難であり、Mwの分布を有しMw/Mnは1を超える値となる。本発明では単分子化合物と重合体を区別するため単分子性を示す指標として1.00≦Mw/Mn≦1.10を定義した。なお、本発明における平均分子量及び分散度は、テトラヒドロフランを溶離液としたGPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)である。
【0093】
有機膜形成組成物用化合物のMw/Mnをこのような範囲で制御することで埋め込み特性と平坦性に優れた有機膜を形成することができる。
【0094】
[有機膜形成用化合物の製造方法]
本発明の一般式(1A)で表される化合物の製造方法の一例としてAr1,Ar2を有するケトン類に対する金属Mを有する有機金属試薬との付加反応により中間体のフルオレノール類を得る工程(STEP1)、続くORを置換基としてもつベンゼンまたはナフタレン類を原料とする酸触媒を用いた脱水縮合反応(STEP2)により目的物を得る方法などが例示できる。STEP1、STEP2に用いる反応には単独または2種以上の原料を用いることが可能であり、これらは要求特性によって適宜組み合わせることができる。
【0095】
【化29】
(上記式中、Y、Ar1、Ar2、n1、n2、n3、n4、n5、R、R、Rは前記と同じ、MはLi、MgXなどの金属、Xはハロゲン原子を表す。)
【0096】
Step1で用いられる有機金属試薬としては、Grignard試薬、有機リチウム試薬、有機亜鉛試薬、有機チタニウム試薬等が例示でき、Grignard試薬、有機リチウム試薬が特に好ましい。Grignard試薬と有機リチウム試薬は、それぞれ対応するハロゲン化物と金属マグネシウムか金属リチウムとの直接メタル化で調製してもよいし、ハロゲン化イソプロピルマグネシウムやメチルリチウム、ブチルリチウム等の脂肪族有機金属化合物とのメタル-ハロゲン交換反応で調製してもよい。
【0097】
また、有機亜鉛試薬や有機チタニウム試薬は対応するGrignard試薬か有機リチウム試薬からハロゲン化亜鉛やハロゲン化チタニウム(IV)、アルコキシチタニウム(IV)等との反応により調製できる。上記有機金属試薬の調製の際、あるいは上記有機金属試薬とスマネン酸化物との反応の際に金属塩化合物を共存させてもよい。この際、パラジウムやニッケル等の遷移金属触媒により反応が進行する。
【0098】
上記金属塩化合物としてはシアン化物、ハロゲン化物、過ハロゲン酸塩が挙げられ、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム等のリチウム塩類、シアン化銅(I)、シアン化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、ジリチウムテトラクロロキュープレート等の銅塩類を好ましい金属塩化合物として例示できる。
【0099】
上記金属塩化合物は、有機金属試薬に対し0.01~5.0等量、好ましくは0.2~2.0等量加えることで、有機金属試薬の溶解性を増加させてその調製を容易にしたり、また、試薬の求核性やLewis酸性を調節することができる。
【0100】
上記有機金属試薬の調製及びスマネン酸化物との反応に用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒類を単独又は混合して用いることができる。
【0101】
反応温度は、Ar1,Ar2を有するケトン類や有機金属試薬の種類・反応条件に依存するが、好ましくは-70~150℃であり、例えば有機金属試薬が有機亜鉛試薬やGrignard試薬の場合は室温~溶媒の沸点での還流下等、反応によって種々選択できる。反応時間は通常30分間から48時間実施することが好ましい。
【0102】
反応方法としてはあらかじめ調製した有機金属試薬、Ar1,Ar2を有するケトン類溶媒中に一括で仕込む方法、有機金属試薬、Ar1,Ar2を有するケトン類のいずれか一方を溶媒中に分散または溶解後、溶媒に分散または溶解したもう一方を滴下して仕込む方法などがある。得られた中間体のフルオレノール類は、水などで反応をクエンチ語、そのままSTEP2の脱水縮合反応に続けて進むこともできるが、反応中間体として系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄や貧溶剤で晶出して粉体として回収することもできる。
【0103】
STEP2で示される脱水縮合反応に用いられる酸触媒として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。これらの触媒の使用量は中間体のフルオレノール類のモル数に対して0.1~20モル、好ましくは0.2~10モルの範囲であることができる。
【0104】
用いられる溶媒としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲で使用でき、反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温~150℃が更に好ましい。反応時間は0.1~100時間から適宜選択される。
【0105】
反応方法としては、フルオレノール類、ベンゼンまたはナフタレン類と触媒である酸触媒を一括で仕込む方法、フルオレノール類、ベンゼンまたはナフタレン類を分散または溶解後、触媒を一括または分割により添加する方法や溶剤で希釈し滴下する方法、触媒を分散後または溶解後、フルオレノール類、ベンゼンまたはナフタレン類をそれぞれ一括または分割により添加する方法や、溶剤で希釈し滴下する方法がある。このときベンゼンまたはナフタレン類の反応性にもよるがフルオレノール類を1モルとしたとき、ベンゼンまたはナフタレン類は2モル以上用いることが好ましい。反応終了後、反応に使用した触媒を除去するために有機溶剤に希釈後、分液洗浄を行い目的物を回収できる。
【0106】
この時使用する有機溶剤としては、目的物を溶解でき、水と混合しても2層分離するものであれば特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物などを挙げることが出来る。この際に使用する洗浄水は、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0107】
分液洗浄の際に系内の酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0108】
更に、分液洗浄の際に系内の金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0109】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0110】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1~5回程度である。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0111】
更に、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜形成用材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0112】
このときの溶剤としては、化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0113】
[化合物の製造方法の別法]
また、本発明の有機膜形成用材料に用いられる上記一般式(1A)で表される化合物のRが水素原子以外の場合、製造方法の別法として下記に示すようなフルオレノール類と水酸基を有するベンゼンまたはナフタレン類、所謂、フェノール類またはナフトール類を原料とする酸触媒を用いた脱水縮合反応により中間体を得る工程(STEP1-1)を経る方法が挙げられる。単分子化合物は、水酸基をORへ変換する脱離基Xを有するR-Xで表される原料を用いて塩基触媒を用いた置換反応(STEP2-1)を行う方法により得ることができる。この場合、単独または2種以上のR-Xを用いることも可能であり、さらに反応率を制御することで水酸基とORの割合も制御することが可能となる。水酸基のような極性構造を一部導入することにより成膜性や膜の基板板への密着力を制御することも可能となる。
【0114】
【化30】
(上記式中、Y、Ar1、Ar2、n1、n2、n3、n4、n5、R、R、Rは前記と同じ、Xはハロゲン原子、トシレートまたはメシレートを表す。)
【0115】
(STEP1-1)の脱水縮合反応は、上記一般式(1A)の化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。応方法および化合物の回収方法については上記の一般式(1A)で示される化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。
【0116】
(STEP2-1)の置換反応に用いられる塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合物等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等、これらを単独または混合して用いることができる。
【0118】
反応方法および化合物または重合体の回収方法については上記の一般式(1A)で示される化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。
【0119】
この方法で得られる有機膜形成用材料に用いられる化合物または重合体の調製には種々のハロゲン化物やトシレートおよびメシレートを要求性能に合わせて単独または複数組み合わせて用いることが可能である。例えば平坦化特性の向上に寄与する側鎖構造、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造などを持つものを任意の割合で組み合わせることができる。そのためこれらの重合体を用いた有機膜形成用材料は埋め込み/平坦化特性とエッチング耐性を高い次元で両立することが可能となる。
【0120】
以上のように、本発明の有機膜形成用化合物であれば、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化し、基板への密着性が良好であり、且つ例えば400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成できる有機膜形成用材料を与えるものとなる。
【0121】
なお、本発明において、平坦化特性とは、基板の表面を平坦化する性能のことである。本発明の有機膜形成用化合物を含有する材料(組成物)であれば、例えば、図1に示されるように、基板1上に有機膜形成用材料3’を塗布し、加熱して有機膜3を形成することによって、基板1における100nmの段差を30nm以下まで低減することが可能である。なお、図1に示される段差形状は、半導体装置製造用基板における段差形状の典型例を示すものであって、本発明の有機膜形成用化合物を含有する材料によって平坦化することのできる基板の段差形状は、もちろんこれに限定されるものではない。
【0122】
<有機膜形成用材料>
また、本発明では、有機膜形成用材料であって、(A)上述の本発明の有機膜形成用化合物及び(B)有機溶剤を含有する有機膜形成用材料を提供する。なお、本発明の有機膜形成用材料において、上述の本発明の有機膜形成用化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の有機膜形成用材料は、有機膜形成用組成物ということもできる。
【0123】
さらに本発明では、前記に記載する通り、2種以上のRで表される置換基をだけ組み合わせて用いる方法や、意図的に置換基Rの割合を所望の性能になるように置換率を制御することができる。具体的には、化合物中のRを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基の割合をbとしたとき、基板への密着性や成膜性付与への効果が期待できる水素原子と耐熱性や熱流動性付与が期待できる炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基を任意の割合で調整し所望の性能に合わせてbの割合をa+b=100になるように置換導入率を調整する方法が挙げられる。置換基導入率を制御する際には上述の[化合物の製造方法の別法]に記載の方法で、1種または2以上の脱離基Xを有する化合物を用いて反応を行うことで所望の化合物を得ることができる。
【0124】
<有機溶剤>
本発明の有機膜形成用材料において使用可能な有機溶剤としては、前記の本発明の有機膜形成用化合物、並びに任意成分である酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0091)~(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0125】
このような材料であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の有機膜形成用化合物を含有するため、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。
【0126】
更に、本発明の有機膜形成用材料には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤との混合物)。高沸点有機溶剤としては、有機膜形成用化合物を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0127】
上記、高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成用材料を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、更に好ましくは200℃~300℃であることが好ましい。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高いためベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0128】
また、上記、高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
有機溶剤の配合量は、(A)上記化合物100部(質量部とする。特に断らない限り以下同じ。)に対して好ましくは200~10,000部、より好ましくは300~5,000部である。
【0129】
このような有機膜形成用材料であれば、上記の有機膜形成用化合物に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。
【0130】
<他の成分>
本発明の有機膜形成用材料は、その目的に応じて、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有することができる。
【0131】
((C)酸発生剤)
本発明の有機膜形成用材料においては、硬化反応を更に促進させるために(C)成分として酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0061)~(0085)段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0132】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは0.05~50部、より好ましくは0.1~10部である。
【0133】
((D)界面活性剤)
本発明の有機膜形成用材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために、(D)成分として界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の(0142)~(0147)記載のものを用いることができる。
【0134】
上記界面活性剤を、1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは0.01~10部、より好ましくは0.05~5部である。
【0135】
((E)架橋剤)
本発明の有機膜形成用材料には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(E)成分として架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0136】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0137】
多核フェノール系架橋剤としては、具体的には下記一般式(1E)で示される化合物を例示することができる。
【化31】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のs価の炭化水素基である。R10は水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。sは1~5の整数である。)
【0138】
Qは単結合、又は、炭素数1~20のs価の炭化水素基である。sは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qとしては具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンからs個の水素原子を除いた基を例示できる。R10は水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。炭素数1~20のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、エイコサニル基を例示でき、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0139】
上記一般式(1E)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できる。この中でも有機膜の硬化性および膜厚均一性向上の観点からトリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が好ましい。R10は前記と同じである。
【0140】
【化32】
【0141】
【化33】
【0142】
上記酸架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~50部である。
【0143】
((F)可塑剤)
また、本発明の有機膜形成用材料には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)成分として可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~30部である。
【0144】
また、本発明の有機膜形成用材料には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。これらの熱分解性重合体を添加する場合の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~30部である。
【0145】
【化34】
(式中、Raは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Lは炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0146】
【化35】
(式中、Rbは炭素数1~4のアルキル基である。Zは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。tは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0147】
さらに上記同様の埋め込み/平坦化特性を改善するための添加剤として下記の流動性促進剤を用いることができる。流動性促進剤としては下記一般式(i)~(iii)から選択される1つ以上の化合物を用いることができる。これらの流動性促進剤を添加する場合の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~30部である。
【化36】
(式中、Raは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、または置換されていてもよい炭素数1~10の有機基である。W1は、フェニレン基、または下記一般式(i-1)で表される2価の基である。W2、W3は単結合または下記一般式(i-2)で表されるいずれかである2価の基である。m1は1~10の整数であり、naは0~5の整数である。)
【化37】
(式中、*は結合位置を示し、Rb、Rc、Rd、Reは、水素原子、水酸基、または炭素数1~10の有機基である。W10、W11はそれぞれ独立して、単結合またはカルボニル基である。m10、m11は0~10の整数であり、m10+m11≧1である。)
【化38】
(式中、*は結合位置を示す。)
【0148】
【化39】
(式中、Rfは、それぞれ独立して、水素原子、または置換されていてもよい炭素数1~10の有機基である。W4は、下記一般式(ii-1)で表される2価の基である。W5は単結合または下記一般式(ii-2)で表されるいずれかである2価の基である。m2は2~10の整数であり、ncは0~5の整数である。)
【化40】
(式中、*は結合位置を示し、Rg、Rh、Ri、Rjは水素原子、水酸基、または炭素数1~10の有機基である。m20、m21は0~10の整数であり、m20+m21≧1である。)
【0149】
【化41】
(式中、Rk、Rlは、水素原子、水酸基、または置換されていてもよい炭素数1~10の有機基であり、結合して環状構造を形成してもよい。Rm、Rnは炭素数1~10の有機基であり、Rmは芳香族環もしくは下記一般式(iii-1)で表される2価の基のどちらか一方を含む基である。W、Wは、単結合または下記一般式(iii-2)で表されるいずれかである2価の基であり、少なくとも一方は(iii-2)いずれかで表される2価の基である。)
【化42】
(式中、*は結合位置を示し、W30は、炭素数1~4の有機基である。)
【化43】
(式中、*は結合位置を示す。)
【0150】
以上のように、本発明の有機膜形成用材料であれば、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化し、基板への密着性が良好であり、且つ例えば400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。従って、本発明の有機膜形成用材料は、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスク(例えばケイ素含有無機ハードマスク)を用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスク及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法等といった多層レジスト法の有機膜形成用材料として、極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用材料は、不活性ガス中における成膜においても副生物が発生することなく、優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、多層レジスト法以外の半導体装置製造工程における平坦化材料としても好適に用いることができる。すなわち、本発明の有機膜形成用材料は、半導体装置製造工程で好適に使用することができる。
【0151】
<半導体装置製造用基板>
また、本発明は、基板上に、本発明の有機膜形成用材料の硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板を提供する。
【0152】
本発明の半導体装置製造用基板は、基板と、前記基板上に形成された、本発明の有機膜形成用材料の硬化物である有機膜とを具備するものであるということもできる。
【0153】
このような半導体装置製造用基板は、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を含むので、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0154】
<有機膜形成方法>
本発明は、更に、本発明の有機膜形成用材料を用いた、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法を提供する。具体的には、下記方法を挙げることができる。
(1段ベーク法(不活性ガス中))
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
(2段ベーク法(空気中-不活性ガス中))
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
【0155】
本発明の有機膜の形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用材料を、被加工基板上に回転塗布(スピンコート)する。
【0156】
本発明の有機膜の形成方法では、次いで、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板に熱処理(加熱成膜工程)をして硬化膜を得る。
【0157】
硬化膜を形成するための加熱成膜工程は1段ベーク、2段ベークまたは3段以上の多段ベークを適用することが出来るが、1段ベークまたは2段ベークが経済的に好ましい。
【0158】
1段ベークによる成膜は、50℃以上600℃以下の温度で5秒~7200秒間の範囲、好ましくは150℃以上500℃以下の温度で10~7200秒間(より好ましくは10~3600秒間)の範囲で行うのが好ましい。このような条件で熱処理することで、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させることが出来る。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素含有レジスト中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素含有レジスト中間膜を適用する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素含有レジスト中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機膜を成膜すると、ケイ素含有レジスト中間膜材料による有機膜の溶解を防ぎ、当該材料とミキシングしない有機膜を形成することができる。
【0159】
CVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0160】
また、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示できる。本発明の材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で焼成しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。そして、本発明の材料であれば、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化させることができる。
【0161】
すなわち、本発明の有機膜の形成方法の1つの態様は、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒~7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法である。
【0162】
一方、2段ベークによる成膜では、例えば、本発明の有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を空気中で熱処理する1段目のベークと、続く不活性ガス雰囲気下での二段目のベークとを行うことができる。
【0163】
1段目のベークは、空気中の酸素による基板の腐食の影響を考えると、空気中での処理温度の上限は300℃以下好ましくは250℃以下で5~600秒間の範囲で行う。空気中での処理温度の下限は例えば50℃とすることができる。
【0164】
2段目のベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示できる。本発明の材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で焼成しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。そして、本発明の材料であれば、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化させることができる。
【0165】
2段目のベーク温度としては、1段目のベーク温度より高く、例えば200℃以上とし、600℃以下、好ましくは500℃以下の温度で、10~7200秒間の範囲で行うのが好ましい。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素含有レジスト中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素含有レジスト中間膜を適用する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素含有レジスト中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機膜を成膜すると、ケイ素含有レジスト中間膜材料による有機膜の溶解を防ぎ、当該材料とミキシングしない有機膜を形成することができる。
【0166】
2段ベークでCVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0167】
すなわち、本発明の有機膜の形成方法の1つの態様は、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法である。
【0168】
上記不活性ガス中の酸素濃度を1体積%以下とすることが好ましい。
本発明の有機膜形成用材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱(熱処理)しても、昇華物を発生することなく十分に硬化し、また、基板への密着性に優れる有機膜を形成することができる。また、このような不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、被加工基板の腐食を防止することができる。
【0169】
すなわち、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板の腐食を防止するため、前記不活性ガス雰囲気下での熱処理が、被加工基板を酸素濃度1体積%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成するものである有機膜の形成方法を提供する。
【0170】
この有機膜の形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用材料を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布後、2段ベークでは、まず、空気中、300℃以下でベークした後、酸素濃度1体積%以下の雰囲気で2段目のベークを行う。1段ベークの場合は、初めの空気中での1段目のベークをスキップすればよい。なお、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示出来る。本発明の材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で焼成しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。
【0171】
また、本発明の有機膜の形成方法では、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが出来る。上述のように、本発明の有機膜形成用材料は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。つまり、本発明の有機膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0172】
なお、形成される有機膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0173】
また、上記の有機膜の形成方法は、本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜用の有機膜を形成する場合と、平坦化膜用の有機膜を形成する場合の両方に適用可能である。
【0174】
例えば、本発明の有機膜の形成方法の1つの変形は、半導体装置の製造工程で使用される段差基板の表面を平坦化することのできる有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料を塗布した被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5~600秒間の範囲で熱処理し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒間熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜の形成方法である。
【0175】
この有機膜の形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用材料を、被加工基板上に回転塗布(スピンコート)する。スピンコート法を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。回転塗布後、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。なお、このベークにより、材料中の溶媒を蒸発させることができるため、有機膜上にレジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合にも、ミキシングを防止することができる。
【0176】
<パターン形成方法>
本発明の有機膜形成用材料は、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができる。半導体装置の製造工程において、このような本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。以下、本発明の有機膜形成用材料を用いるパターン形成方法の例を挙げる。
【0177】
(1)被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
(2)被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
(3)被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
(4)被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
以下、パターン形成方法について例を挙げて説明するが、これらに限定されない。
【0178】
[ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法]
また、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜をエッチングして、該ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜をエッチングして、該有機膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0179】
被加工体としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0180】
被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0181】
なお、被加工体を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものであることが好ましい。
【0182】
また、被加工体として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることができる。
【0183】
被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成する際には、上述の本発明の有機膜形成方法を適用すればよい。
【0184】
次に、有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成する。ケイ素含有レジスト中間膜材料としては、ポリシロキサンベースの中間膜材料が好ましい。ケイ素含レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜形成用材料として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造またはポリシロキサン構造中に有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0185】
次に、ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料をスピンコート後、60~180℃で10~300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0186】
次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0187】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0188】
また、回路パターンの形成において、アルカリ又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0189】
次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜をエッチングして、ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うケイ素含有レジスト中間膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成する。
【0190】
次に、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして有機膜をエッチングして、有機膜にパターンを転写する。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスに対して有機膜に比較して高いエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをマスクにして行う有機膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、有機膜パターンを形成することが出来る。
【0191】
次に、パターンが転写された有機膜をマスクにして被加工体をエッチングして、被加工体にパターンを転写する。次の被加工体(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工体がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0192】
本発明の有機膜形成用材料を用いて得られる有機膜は、上記のような被加工体のエッチング時のエッチング耐性に優れたものとすることができる。
【0193】
[ケイ素含有レジスト中間膜と有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜及び前記ケイ素含有レジスト中間膜をエッチングして、該有機反射防止膜及び該ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜をエッチングして、前記有機膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0194】
なお、この方法は、ケイ素含有レジスト中間膜とレジスト上層膜との間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0195】
有機反射防止膜は、公知の有機反射防止膜材料を用いてスピンコートで形成することができる。
【0196】
[無機ハードマスクを用いた3層レジスト法]
また、本発明では、上述の本発明の有機膜形成用材料を用いた3層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクをエッチングして、該無機ハードマスクにパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングして、該有機膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0197】
なお、この方法は、有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0198】
ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号公報等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300~500℃となるために、有機膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明の有機膜形成用材料を用いて形成される有機膜は高い耐熱性を有しており、300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0199】
チタン酸化膜及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクも、CVD法やALD法等で形成することができる。
【0200】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、上述の本発明の有機膜形成用材料を用いた4層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工体上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜及び前記無機ハードマスクをエッチングして、該有機反射防止膜及び該無機ハードマスクにパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングして、該有機膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0201】
なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜との間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0202】
特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0203】
ここで、本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例を図2(A)~(F)に示す。3層レジスト法の場合、図2(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、図2(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、図2(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、図2(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、図2(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する。更に、図2(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
【0204】
無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行ってもよい。
【0205】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法によって、被加工体に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例0206】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0207】
合成例 有機膜形成用化合物の合成
有機膜形成用化合物(A1)~(A13)の合成には下記に示すフルオレノール類:(B1)~(B7)、フェノールおよびナフトール類:(C1)~(C4)を用いた。
【0208】
フルオレノール類:
【化44】
【0209】
フェノールまたはナフトール類:
【化45】
【0210】
フルオレノール類の合成例として(B1)の合成例を以下に示す。
[合成例1]フルオレノール類(B1)の合成
【化46】
雰囲気下で-20℃まで冷却したトリス(4-ブロモフェニル)アミン(D1)189.9gとMTBE(t-ブチルメチルエーテル)1000mLとTHF(テトラヒドロフラン)1000mlの混合液に、n-ブチルリチウム2.60Mヘキサン溶液500mLを加え、-20℃で20分間撹拌した。あらかじめ9-フルオレノン191.7gをTHFに溶解し25wt%THF溶液としたものをゆっくりと滴下し、徐々に室温に昇温し、室温にて4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液1000mlを加えて反応を停止後、MTBE2000mlを追加し、分離した水層を除去した。さらに有機層を純水500mlで5回洗浄後、溶剤を留去した。留去後、THF500gを追加後、さらにメタノール2000gを追加して再結晶を行った。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール500gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(B1)を得た。
【0211】
その他のフルオレノール類(B2)~(B7)については以下に示すフルオレノール類源を用いて合成を行った。具体的には合成例1に使用した原料(D1)に対応する化合物を目的物の構造に応じて対応する臭素化物(D2)~(D7)に置き換えて、n-ブチルリチウム溶液、9-フルオレノンのモル比は合成例1と同様にして合成を行い、(B2)~(B7)をそれぞれ合成した。なお、(B5)について9-フルオレノンの代わりに、(D8)のケトンを用いて合成を行った。
【0212】
フルオレノール類原料:
【化47】
【0213】
[合成例2]化合物(A1)の合成
【化48】
窒素雰囲気下、化合物(B1)30.0g、化合物(C1)55.0g、1,2-ジクロロエタン400gを加え、内温60℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸22.0gをゆっくりと加え、内温70℃で1時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK(メチルイソブチルケトン)1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、IPE(ジイソプロピルエーテル)2000gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、IPE500gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A1):Mw=1350、Mw/Mn=1.04
【0214】
[合成例3]化合物(A2)の合成
【化49】
窒素雰囲気下、化合物(B2)30.0g、化合物(C1)19.9g、1,2-ジクロロエタン250gを加え、内温60℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸20.4gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、IPE(ジイソプロピルエーテル)1000gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、IPE300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A2):Mw=1520、Mw/Mn=1.04
【0215】
[合成例4]化合物(A3)の合成
【化50】
窒素雰囲気下、化合物(A1)10.0g、炭酸カリウム10.3g、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)60gを加え、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド8.8gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK150mlを加え、純水50mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK40gを加え均一溶液とした後、MeOH(メタノール)200gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A3):Mw=1590、Mw/Mn=1.04
【0216】
[合成例5]化合物(A4)の合成
【化51】
窒素雰囲気下、化合物(A2)10.0g、炭酸カリウム9.8g、DMF60gを加え、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド8.4gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK150mlを加え、純水50mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK40gを加え均一溶液とした後、MeOH200gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A4)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A4):Mw=1830、Mw/Mn=1.04
【0217】
[合成例6]化合物(A5)の合成
【化52】
窒素雰囲気下、化合物(B3)20.0g、化合物(C1)21.5g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温60℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸12.9gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF100gを加え均一化溶液とし、ヘキサン300gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム23.9gを加え、窒素雰囲気下で内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド20.6gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK80gを加え均一溶液とした後、MeOH400gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A5)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A5):Mw=1750、Mw/Mn=1.05
【0218】
[合成例7]化合物(A6)の合成
【化53】
窒素雰囲気下、化合物(B4)20.0g、化合物(C1)17.5g、1,2-ジクロロエタン190gを加え、内温60℃で均一溶液とした。メタンスルホン酸10.5gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF100gを加え均一化溶液とし、ヘキサン300gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム22.6gを加え、窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド19.5gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK80gを加え均一溶液とした後、MeOH400gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A6)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A6):Mw=1870、Mw/Mn=1.03
【0219】
[合成例8]化合物(A7)の合成
【化54】
窒素雰囲気下、化合物(B5)20.0g、化合物(C1)12.8g、1,2-ジクロロエタン160gを加え、内温60℃で均一溶液とした。メタンスルホン酸7.7gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF100gを加え均一化溶液とし、ヘキサン300gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム16.6gを加え、窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド14.3gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK80gを加え均一溶液とした後、MeOH400gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A7)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A7):Mw=2320、Mw/Mn=1.05
【0220】
[合成例9]化合物(A8)の合成
【化55】
窒素雰囲気下、化合物(B6)20.0g、化合物(C1)18.5g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温60℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸11.1gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF100gを加え均一化溶液とし、ヘキサン300gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム26.5gを加え、窒素雰囲気下で内温50℃で均一分散液とした。アリルブロミド23.2gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK80gを加え均一溶液とした後、MeOH(400gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A8)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A8):Mw=2110、Mw/Mn=1.05
【0221】
[合成例10]化合物(A9)の合成
【化56】
窒素雰囲気下、化合物(B1)20.0g、化合物(C2)41.7g、1,2-ジクロロエタン300gを加え、内温60℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸22.0gをゆっくりと加え、内温70℃で1時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK(メチルイソブチルケトン)1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、IPE(ジイソプロピルエーテル)2000gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、IPE500gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A9)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A9):Mw=1300、Mw/Mn=1.02
【0222】
[合成例11]化合物(A10)の合成
【化57】
窒素雰囲気下、化合物(A2)10.0g、炭酸カリウム6.5g、DMF60gを加え、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド2.8gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK150mlを加え、純水50mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK40gを加え均一溶液とした後、MeOH200gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A10)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A10):Mw=1690、Mw/Mn=1.07
【0223】
[合成例12]化合物(A11)の合成
【化58】
窒素雰囲気下、化合物(B3)20.0g、化合物(C3)25.2g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温60℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸12.9gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF100gを加え均一化溶液とし、ヘキサン300gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム15.4gを加え、窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド13.3gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK80gを加え均一溶液とした後、MeOH400gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A11)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A11):Mw=1330、Mw/Mn=1.06
【0224】
[合成例13]化合物(A12)の合成
【化59】
窒素雰囲気下、化合物(B4)20.0g、化合物(C4)12.0g、1,2-ジクロロエタン160gを加え、内温60℃で均一溶液とした。メタンスルホン酸10.5gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF100gを加え均一化溶液とし、ヘキサン300gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム22.6gを加え、窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド19.5gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK80gを加え均一溶液とした後、MeOH400gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A12)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A12):Mw=1540、Mw/Mn=1.03
【0225】
[合成例14]化合物(A13)の合成
【化60】
窒素雰囲気下、化合物(B7)20.0g、化合物(C1)15.1g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温60℃で均一溶液とした。メタンスルホン酸9.1gをゆっくりと加え、内温70℃で3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF120gを加え均一溶液とした後、ヘキサン350gを攪拌しながら滴下し、モチ状の沈殿物を析出させた。しばらく静置を行った後、透明な上澄み液をデカントした。再度、THF120gを加え均一化溶液とし、ヘキサン350gを加えモチ状の沈殿物を析出後、静置を行い、上澄み液をデカントした。沈殿物にDMFを加え、均一溶液とした後、減圧留去を行い、DMFを加え収率換算で30wt%DMF溶液に調整した。
得られたDMF溶液に炭酸カリウム29.3gを加え、窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド25.2gをゆっくりと加え、内温50℃で16時間反応を行った。反応終了後、MIBK400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にMIBK100gを加え均一溶液とした後、MeOH500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A13)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A13):Mw=1810、Mw/Mn=1.04
【0226】
比較例用化合物(R1)~(R3)の合成には下記の化合物(a1)~(a3)を用いて合成を行った。
【化61】
【0227】
[比較合成例1]比較例用化合物(R1)の合成
【化62】
窒素雰囲気下、化合物(a1)を10.00g、炭酸カリウム4.76g、DMF50gを窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド3.72gをゆっくり滴下し、内温50℃で16時間反応を行った。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン100g、純水50gを加え均一溶液とした後、水層を除去した。更に有機層を3.0%硝酸水溶液30gで2回、純水30gで5回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF30gを加え、メタノール100gで結晶を晶出させた。晶出した結晶をろ過で分別、メタノール60gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(R1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R1):Mw=960、Mw/Mn=1.07
【0228】
[比較合成例2]比較例用化合物(R2)の合成
【化63】
窒素雰囲気下、化合物(a2)78.8g、37%ホルマリン溶液21.6g、及び1,2-ジクロロエタン250g、液温70℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸5gをゆっくり加え、液温80℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、MIBK500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300mLを加え、ヘキサン2000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R2):Mw=2720、Mw/Mn=1.55
【0229】
[比較合成例3]比較例用化合物(R3)の合成
【化64】
窒素雰囲気下、化合物(a3)90.1g、37%ホルマリン溶液10.5g、及び2-メトキシ-1-プロパノール270gを液温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸の2-メトキシ-1-プロパノール溶液18gをゆっくり加え、液温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、MIBK600gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF320gを加え、ヘキサン1350gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R3):Mw=3700、Mw/Mn=2.82
【0230】
上記で得られた化合物の構造式、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を表1、表2-1に一覧にして示す。また、比較例に用いた化合物(R1)~(R3)についても、構造式、Mw及びMw/Mnを表2-2に示す。
【0231】
【表1】
【0232】
【表2-1】
【0233】
【表2-2】
【0234】
有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較例UDL-1~3)の調製
上記化合物(A1)~(A13)および(R1)~(R3)を、界面活性剤FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表3に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較例UDL-1~3)をそれぞれ調製した。UDL-1~15の調製では、溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いた。UDL-16~19の調製では、溶媒として、PGMEAと、高沸点溶剤としての(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃、および(S2)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃の何れかとの混合物を用いた。比較UDL-1~3の調製では、溶媒として、PGMEAを用いた。
【0235】
【表3】
【0236】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1-1~1-19、比較例1-1~1-3)
上記で調製した有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較UDL-1~3)をシリコン基板上に塗布し、酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒間焼成した後、膜厚(a[Å])を測定した。その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚(b[Å])を測定した。PGMEA処理前後の膜厚差(残膜率:(b/a)×100)を求めた。結果を以下の表4に示す。
【0237】
【表4】
【0238】
表4に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例1-1~1-19)は、PGMEA処理後の残膜率が99.5%以上あり、窒素雰囲気下においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対して比較例1-3においては架橋基となる置換基を有していないためPGMEA処理後の残膜率が50%未満となり硬化反応が起きていないため溶剤耐性が発現しなかった。これらの結果より置換基として導入したORで表される置換基が熱架橋基として有効に機能していることがわかる。
【0239】
実施例2 耐熱特性評価(実施例2-1~2-19、比較例2-1~2-3)
上記の有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較UDL-1~3)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、180℃で焼成して200nmの塗布膜を形成し、膜厚(A(Å))を測定した。この基板を更に酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃で10分間焼成して膜厚(B(Å))を測定した。膜厚Bを膜厚Aで割ることにより、残膜率を求めた。これらの結果を表5に示す。
【0240】
【表5】
【0241】
表5に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例2-1~2-19)は、400℃で10分間の焼成後も膜厚減少が3%未満となり、本発明の有機膜形成用材料は400℃焼成後においても膜厚を保持しており、高い耐熱性を有していることがわかる。これらの中でもn2=1かつn3=2の構造を持つ化合物を含む実施例2-1~2-5、2-11、2-16~2-18においてはさらに膜厚減少が少ない結果となっている。それに対して2価の化合物である比較例2-1とフルオレン構造を持たない比較例2-2については10%を超える大きな膜厚減少を示しており、架橋基をもたない比較例2-3においても10%を超える膜厚減少を起こす結果となった。以上の結果からも多価の骨格とナフタレン構造を有する化合物によって緻密で耐熱性の高い膜が形成されていることがわかる。
【0242】
実施例3 埋め込み特性評価(実施例3-1~3-19、比較例3-1~3-3)
図3のように、上記の有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較UDL-1~3)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒間焼成し、有機膜8を形成した。使用した基板は図3(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiOウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表6に示す。埋め込み特性に劣る有機膜形成用材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜形成用材料を用いた場合は、本評価において、図3(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜が充填される。
【0243】
【表6】
【0244】
表6に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例3-1~3-19)は、ボイドを発生すること無くホールパターンを充填することが可能であり、良好な埋め込み特性を有することが確認出来た。比較例3-1、3-2においては耐熱特性評価の結果のとおり耐熱性の不足がみられるものの、ボイドの発生は観察されなかった。一方で比較例3-3では耐熱性だけでなく、架橋性の不足からボイドが発生し埋め込み特性が不良であることが確認された。この結果から、本発明の有機膜形成用材料は良好な埋め込み特性を有すことが確認できた。
【0245】
実施例4 平坦化特性評価(実施例4-1~4-19、比較例4-1~4-3)
有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較UDL-1~3)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(図4(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiOウエハー基板)上に塗布し、酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒間焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差(図4(K)中のdelta10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表7に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、通常膜厚約0.2μmの有機膜形成用材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。
【0246】
【表7】
【0247】
表7に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例4-1~4-19)は、比較例4-1~4-3に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。比較例4-1~4-2においては耐熱特性評価の結果の通り耐熱性が不足しており、埋め込み特性評価の通り埋め込み性は確保されているが高温ベーク時に膜がシュリンクしてしまい平坦性が劣化する結果となった。また、比較例4-3においては架橋性が不足しているため平坦化特性が良好なものとならなかった。また、高沸点溶剤を添加した実施例4-15~4-19と添加していない実施例4-1、4-2、4-4及び4-6とそれぞれ比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることがわかる。この結果から、本発明の有機膜形成用材料は耐熱性に優れるため高温ベーク時の膜シュリンクが抑制され、優れた平坦化特性を発現することがわかる。
【0248】
実施例5 密着性試験(実施例5-1~5-15、比較例5-1~5-2)
上記の有機膜形成材料(UDL-1~15、比較UDL1~2)を、SiOウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下、400℃で60秒ベークすることにより膜厚200nmの有機膜を形成した。この有機膜付のウエハーを、1×1cmの正方形に切り出し、専用治具を用いて切り出したウエハーにエポキシ接着剤付きのアルミピンを取り付けた。その後、オーブンを用いて150℃で1時間、加熱しアルミピンを基板に接着させた。室温まで冷却した後、薄膜密着強度測定装置(Sebastian Five-A)を用いて抵抗力により、初期の密着性を評価した。なお、実施例1で溶剤耐性が確保できなかった比較例UDL-3については密着性試験を実施できなかった。
【0249】
図5に密着性測定方法を示す説明図を示す。図5の11はシリコンウエハー(基板)、12は硬化皮膜、13は接着剤付きアルミピン、14は支持台、15はつかみであり、16は引張方向を示す。密着力は12点測定の平均値であり、数値が高いほど密着膜の基板に対する密着性が高い。得られた数値を比較することにより密着性を評価した。その結果を表8に示す。
【0250】
【表8】
【0251】
表8の実施5-1~5-15で示されるように、本発明の化合物を用いた有機膜材料は比較例5-1、5-2に比べて高い密着力を示していることがわかる。その中でもn3=2の構造を含む実施例5-1~5-6,5-8,5-10~5-15は高い密着力を示し、なかでもR=Hの構造を含む実施例5-8,5-12,5-13は特に高い密着力を示した。一方で比較例5-1,5-2は耐熱性の不足から低い密着力となった。この結果からも、本発明の化合物は高い耐熱性と基板との密着性を示すことがわかる。
【0252】
実施例6 パターン形成試験1(実施例6-1~6-19、比較例6-1)
上記の有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較UDL-1)を、それぞれ、300nmのSiO膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒焼成し、有機膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にCVD-SiONハードマスクを形成し、更に有機反射防止膜材料(ARC-29A:日産化学社製)を塗布して210℃で60秒間ベークして膜厚80nmの有機反射防止膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜(レジスト上層膜)を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。なお、比較例UDL―2およびUDL-3については耐熱性と架橋性が劣るためCVD―SiONハードマスクの形成ができず、以後のパターン形成試験に進むことはできなかった。
【0253】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表9の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0254】
【表9】
【0255】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【0256】
【化65】
【0257】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表10の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0258】
【表10】
【0259】
用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【化66】
【0260】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0261】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにして有機反射防止膜とCVD-SiONハードマスクをエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたハードマスクパターンをマスクにして有機膜をエッチングして有機膜パターンを形成し、得られた有機膜パターンをマスクにしてSiO膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0262】
レジストパターンのSiONハードマスクへの転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 75sccm
ガス流量 15sccm
時間 15sec
【0263】
ハードマスクパターンの有機膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0264】
有機膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
ガス流量 60sccm
時間 90sec
【0265】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表11に示す。
【0266】
【表11】
【0267】
表11に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例6-1~6-19)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用材料は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。比較例6-1においては、耐熱性が不足するもののパターンを形成することはできた。
【0268】
また、本発明の有機膜形成用材料(UDL1~19)は、基板への優れた密着性を示す有機膜を形成することができ、それにより、有機膜直上に形成したCVD-SiONハードマスク、その上に形成したレジスト上層膜の膜剥がれを抑えることができた。その結果、実施例6-1~6-19では、先に説明したように、レジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写することができた。
【0269】
実施例7 パターン形成試験2(実施例7-1~7-19、比較例7-1)
上記の有機膜形成用材料(UDL-1~19、比較UDL-1)を、それぞれ、トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒焼成した以外は、パターン形成試験1と同じ方法で塗布膜を形成し、パターニング、ドライエッチングを行ない、出来上がったパターンの形状を観察した、結果を表12に示す。
【0270】
【表12】
【0271】
表12に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例7-1~7-19)の結果、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用材料は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例7-1では平坦化特性評価の結果のとおり平坦化特性に劣るためパターン加工時にパターン倒れが発生し、最終的に良好なパターンを得ることが出来なかった。
【0272】
また、本発明の有機膜形成用材料(実施例7-1~7-19)は、基板への優れた密着性を示す有機膜を形成することができ、それにより、有機膜直上に形成したCVD-SiONハードマスク、その上に形成したレジスト上層膜の膜剥がれを抑えることができた。その結果、実施例7-1~7-19では、先に説明したように、レジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写することができた。
【0273】
以上のことから、本発明の有機膜形成用化合物を含有する本発明の有機膜形成用材料であれば、酸素を含まない不活性ガス下においても400℃以上の耐熱性、基板への優れた密着性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つため、多層レジスト法に用いる有機膜形成用材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0274】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0275】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:有機膜形成用材料であって、
(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤
を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用材料。
【化67】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化68】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
[2]:前記一般式(1B)中のRが下記式(1C)で示されるもののいずれかであることを特徴とする[1]の有機膜形成用材料。
【化69】
(上記式中の破線は結合手を表す)
[3]:前記一般式(1A)中のn1が3または4であることを特徴とする[1]又は[2]の有機膜形成用材料。
[4]:前記一般式(1B)中のn2が1であることを特徴とする[1]から[3]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料。
[5]:前記一般式(1A)中のYが下記式(1D)に示された部分構造のいずれかであることを特徴とする[1]から[4]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料。
【化70】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
[6]:前記(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることを特徴とする[1]から[5]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料。
[7]:前記(B)有機溶剤は、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする[1]から[6]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料。
[8]:前記有機膜形成用材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする[1]から[7]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料。
[9]:基板上に、[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料が硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板。
[10]:半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
[11]:半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
[12]:前記不活性ガス中の酸素濃度を1体積%以下とすることを特徴とする[10]又は[11]の有機膜の形成方法。
[13]:前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることを特徴とする[10]から[12]のうちのいずれか1つの有機膜の形成方法。
[14]:被加工体上に[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
[15]:被加工体上に[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
[16]:被加工体上に[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
[17]:被加工体上に[1]から[8]のうちのいずれか1つの有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
[18]:前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする[16]又は[17]に記載のパターン形成方法。
[19]:前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することを特徴とする[14]から[18]のうちのいずれか1つのパターン形成方法。
[20]:前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することを特徴とする[14]から[19]のうちのいずれか1つのパターン形成方法。
[21]:前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする[14]から[20]のうちのいずれか1つのパターン形成方法。
[22]:前記被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることを特徴とする[21]に記載のパターン形成方法。
[23]:下記一般式(1A)で示される化合物。
【化71】
(式中、Yはn1価の有機基、3価の窒素原子又は4価の炭素原子であり、n1は3~8の整数であり、Xは下記一般式(1B)で示される部分構造である。)
【化72】
(式中、破線は結合手を表す。R、Rはハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニル基または炭素数2~4のアルケニル基を表し、前記アルキル基、アルキルオキシ基、アルキニル基、アルケニル基を構成する炭素原子上の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい。また、Rで置換され得る芳香環どうしが、単結合により又は前記Rから水素原子を1つ取り除いた2価の基を介して橋掛け構造を形成してもよい。n4、n5は0~2の整数を表す。Ar1、Ar2はそれぞれベンゼン環またはナフタレン環を表す。n2は0または1を表し、n3は1または2を表し、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基若しくは炭素数2~4のアルケニル基を表す。)
[24]:前記一般式(1B)中のRが下記式(1C)で示されるもののいずれかであることを特徴とする[23]に記載の化合物。
【化73】
(上記式中の破線は結合手を表す)
[25]:前記一般式(1A)中のn1が3または4であることを特徴とする[23]又は[24]の化合物。
[26]:前記一般式(1B)中のn2が1であることを特徴とする[23]から[25]のうちのいずれか1つの化合物。
[27]:前記一般式(1A)中のYが下記式(1D)に示された部分構造のいずれかであることを特徴とする[23]から[26]のうちのいずれか1つの化合物。
【化74】
(上記式中の破線は結合手を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【符号の説明】
【0276】
1…基板、 2…被加工層、 2a…被加工層に形成されるパターン、 3…有機膜、 3a…有機膜パターン、 3’…有機膜形成用材料、 4…ケイ素含有レジスト中間膜、 4a…ケイ素含有レジスト中間膜パターン、 5…レジスト上層膜、 5a…レジスト上層膜パターン、 6…所用部分(露光部分)、 7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…有機膜、 9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…有機膜、 delta 10…トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト中間膜の膜厚の差。 11…シリコンウエハー、 12…硬化皮膜、 13…接着剤付きアルミピン、14…支持台、 15…つかみ、 16…引張方向。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
このような有機形成用材料であれば、空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成用材料となる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
上記一般式(1A)のYのうちn1価の有機基としては下記などを例示することができる、これらの芳香環を有する場合には置換基を有してもよく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、ニトロ基、ハロゲン原子、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
上記の一般式(1A)で表される化合物のうち、一般式(1B)の芳香環上の置換基Rが他の芳香環中の水素原子に代わって橋掛け構造を形成する(他の芳香環のR同士で結合して橋掛け構造を形成する)際の例として下記が例示できる。Ar1、Ar2、n1、n2、n3、n5、R,R、Rは前記と同じ。s
【化17】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
上記一般式(1B)中の芳香族上の置換基R、Rはそれぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ基、nーブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などの炭素数2~4のアルニル基、エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基などの炭素数2~4のアルニル基などが例示でき、アルキルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素原子上の水素原子が一部またはすべてがフッ素原子などフッ素置換基に置換されてもよい、たとえばメチル基であればトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基などとなる。これらの中でも耐熱性、エッチング耐性の観点からn4、n5=0が好ましく、平坦性、溶解性の観点からRがトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
上記一般式(1B)中のRは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基である。炭素数1~4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、炭素数2~4のアルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、炭素数2~4のアルニル基としてはエチニル基、プロパルギル基、ブチニル基などが例示できる。これらの中でも下記(1C)表される構造が好ましく、熱硬化性の観点からプロパルギル基がより好ましい。
【化25】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
上記金属塩化合物は、有機金属試薬に対し0.01~5.0量、好ましくは0.2~2.0量加えることで、有機金属試薬の溶解性を増加させてその調製を容易にしたり、また、試薬の求核性やLewis酸性を調節することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
反応方法としてはあらかじめ調製した有機金属試薬、Ar1,Ar2を有するケトン類溶媒中に一括で仕込む方法、有機金属試薬、Ar1,Ar2を有するケトン類のいずれか一方を溶媒中に分散または溶解後、溶媒に分散または溶解したもう一方を滴下して仕込む方法などがある。得られた中間体のフルオレノール類は、水などで反応をクエンチ、そのままSTEP2の脱水縮合反応に続けて進むこともできるが、反応中間体として系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄や貧溶剤で晶出して粉体として回収することもできる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
[化合物の製造方法の別法]
また、本発明の有機膜形成用材料に用いられる上記一般式(1A)で表される化合物のRが水素原子以外の場合、製造方法の別法として下記に示すようなフルオレノール類と水酸基を有するベンゼンまたはナフタレン類、所謂、フェノール類またはナフトール類を原料とする酸触媒を用いた脱水縮合反応により中間体を得る工程(STEP1-1)を経る方法が挙げられる。単分子化合物は、水酸基をORへ変換する脱離基Xを有するR-Xで表される原料を用いて塩基触媒を用いた置換反応(STEP2-1)を行う方法により得ることができる。この場合、単独または2種以上のR-Xを用いることも可能であり、さらに反応率を制御することで水酸基とORの割合も制御することが可能となる。水酸基のような極性構造を一部導入することにより成膜性や膜の基への密着力を制御することも可能となる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
(STEP1-1)の脱水縮合反応は、上記一般式(1A)の化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。応方法および化合物の回収方法については上記の一般式(1A)で示される化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
反応方法および化合物の回収方法については上記の一般式(1A)で示される化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
この方法で得られる有機膜形成用材料に用いられる化合物の調製には種々のハロゲン化物やトシレートおよびメシレートを要求性能に合わせて単独または複数組み合わせて用いることが可能である。例えば平坦化特性の向上に寄与する側鎖構造、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造などを持つものを任意の割合で組み合わせることができる。そのためこれらの化合物を用いた有機膜形成用材料は埋め込み/平坦化特性とエッチング耐性を高い次元で両立することが可能となる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0123
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0123】
さらに本発明では、前記に記載する通り、2種以上のRで表される置換基だけ組み合わせて用いる方法や、意図的に置換基Rの割合を所望の性能になるように置換基導入率を制御することができる。具体的には、化合物中のRを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基の割合をbとしたとき、基板への密着性や成膜性付与への効果が期待できる水素原子と耐熱性や熱流動性付与が期待できる炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルキニル基、アルケニル基を任意の割合で調整し所望の性能に合わせてbの割合をa+b=100(%)になるように置換導入率を調整する方法が挙げられる。置換基導入率を制御する際には上述の[化合物の製造方法の別法]に記載の方法で、1種または2以上の脱離基Xを有する化合物を用いて反応を行うことで所望の化合物を得ることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
記架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の添加量は、前記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~50部である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0241
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0241】
表5に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例2-1~2-19)は、400℃で10分間の焼成後も膜厚減少が3%未満となり、本発明の有機膜形成用材料は400℃焼成後においても膜厚を保持しており、高い耐熱性を有していることがわかる。これらの中でもn2=1かつn3=2の構造を持つ化合物を含む実施例2-1~2-5、2-11、2-16~2-18においてはさらに膜厚減少が少ない結果となっている。それに対して2価の化合物である比較例2-1とフルオレン構造を持たない比較例2-2については10%を超える大きな膜厚減少を示しており、架橋基をもたない比較例2-3においても10%を超える膜厚減少を起こす結果となった。以上の結果からも多価の骨格とベンゼン又はナフタレン構造を有する化合物によって緻密で耐熱性の高い膜が形成されていることがわかる。