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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150112
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241016BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 21/461 20060101ALI20241016BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
H01L21/78 S
H01L21/304 621B
H01L21/304 622F
H01L21/461
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063367
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】小田中 健太郎
【テーマコード(参考)】
4E168
5F004
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168CB07
4E168CB13
4E168JA12
4E168JA13
4E168JA27
5F004CA06
5F004DB01
5F004DB13
5F004DB19
5F004DB20
5F004FA05
5F057AA07
5F057AA21
5F057BA15
5F057BB16
5F057BC03
5F057BC10
5F057CA12
5F057CA31
5F057CA36
5F057DA02
5F057DA22
5F057DA28
5F057EB02
5F057EB04
5F057FA42
5F063AA04
5F063AA07
5F063AA15
5F063BA05
5F063BA07
5F063BA32
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB18
5F063CB22
5F063CB27
5F063DD42
5F063DD46
5F063DD59
5F063DF04
5F063DF06
5F063EE09
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】レーザ光線の照射後に発生する加工屑を、デバイスを損傷せずに除去すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法1000は、ウエーハの加工方法であって、該ウエーハの表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成ステップ1100と、該分割予定ラインに沿って、該レジスト膜を除去し該ウエーハを露出させる加工溝を形成する加工溝形成ステップ1200と、該ウエーハの表面に形成された該レジスト膜を残存させつつ、該加工溝に研磨パッドを侵入させて該加工溝の周辺に付着した加工屑を除去する研磨ステップ1300と、該レジスト膜をマスクとして該加工溝に沿って該ウエーハをプラズマエッチングするエッチングステップ1400と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの加工方法であって、
該ウエーハの表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成ステップと、
分割予定ラインに沿って、該レジスト膜を除去し該ウエーハを露出させる加工溝を形成する加工溝形成ステップと、
該ウエーハの表面に形成された該レジスト膜を残存させつつ、該加工溝に研磨パッドを侵入させて該加工溝の周辺に付着した加工屑を除去する研磨ステップと、
該レジスト膜をマスクとして該加工溝に沿って該ウエーハをプラズマエッチングするエッチングステップと、を備えることを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該ウエーハは、基板の表面に積層された機能層に、複数の分割予定ラインと該分割予定ラインに区画された複数のデバイス領域が形成され、
該加工溝形成ステップは、該レジスト膜と、該機能層と、を除去し、該基板を露出させることを特徴とする請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該エッチングステップは、該ウエーハを分割し複数のチップを生産することを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該エッチングステップの後に、該ウエーハに外力を付与して分割し、複数のチップを生産することを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該加工溝形成ステップは、レーザ光線を照射することを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項6】
該研磨ステップは、砥粒を含有する研磨液を該研磨パッドとウエーハとに供給することを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項7】
該機能層は、酸化膜を含むことを特徴とする請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項8】
該レジスト膜は、フェノールノボラック樹脂を含むことを特徴とする
請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項9】
該研磨パッドは、スウェードまたは不織布の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等のウエーハを分割してチップに個片化する方法として、ウエーハに設定された分割予定ラインに沿ってレーザ光線を照射することで加工溝を形成した後、加工溝に沿って破断して分割する方法や、プラズマによってエッチングすることで分割する方法等が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-305420号公報
【特許文献2】特開2018-190857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、ウエーハにレーザで加工溝を形成すると加工溝の周辺にデブリやバリなどの加工屑が発生し、加工屑を除去しないと後工程でチップの品質不良に繋がるという問題がある。従来のデブリ対策として、レーザ光線の照射前に、ウエーハに水溶性樹脂を被覆し、レーザ光線の照射後に水溶性樹脂を洗い流すことで一緒にデブリが除去されるようにしている。しかし、例えば酸化膜に対してレーザ光線を照射し加工溝を形成すると、溶解された酸化膜がバリとなって加工溝周辺に付着し、水溶性樹脂を洗浄しても一緒に除去されない問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、レーザ光線の照射後に発生する加工屑を、デバイスを損傷せずに除去することができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの加工方法であって、該ウエーハの表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成ステップと、分割予定ラインに沿って、該レジスト膜を除去し該ウエーハを露出させる加工溝を形成する加工溝形成ステップと、該ウエーハの表面に形成された該レジスト膜を残存させつつ、該加工溝に研磨パッドを侵入させて該加工溝の周辺に付着した加工屑を除去する研磨ステップと、該レジスト膜をマスクとして該加工溝に沿って該ウエーハをプラズマエッチングするエッチングステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記ウエーハの加工方法において、該ウエーハは、基板の表面に積層された機能層に、複数の分割予定ラインと該分割予定ラインに区画された複数のデバイス領域が形成され、該加工溝形成ステップは、該レジスト膜と、該機能層と、を除去し、該基板を露出させてもよい。
【0008】
前記ウエーハの加工方法において、該エッチングステップは、該ウエーハを分割し複数のチップを生産してもよい。
【0009】
前記ウエーハの加工方法において、該エッチングステップの後に、該ウエーハに外力を付与して分割し、複数のチップを生産してもよい。
【0010】
前記ウエーハの加工方法において、該加工溝形成ステップは、レーザ光線を照射してもよい。
【0011】
前記ウエーハの加工方法において、該研磨ステップは、砥粒を含有する研磨液を該研磨パッドとウエーハとに供給してもよい。
【0012】
前記ウエーハの加工方法において、該機能層は、酸化膜を含んでもよい。
【0013】
前記ウエーハの加工方法において、該レジスト膜は、フェノールノボラック樹脂を含んでもよい。
【0014】
前記ウエーハの加工方法において、該研磨パッドは、スウェードまたは不織布を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は、レーザ光線の照射後に発生する加工屑を、デバイスを損傷せずに除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る加工方法の加工対象であるウエーハの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るウエーハの加工方法を実施するレーザ加工装置の構成例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示すレジスト膜形成ステップの一例を説明するための図である。
図5図5は、図3に示す加工溝形成ステップの一例を説明するための図である。
図6図6は、図3に示す研磨ステップで用いる研磨パッドの一例を説明するための図である。
図7図7は、図3に示す研磨ステップの一例を説明するための図である。
図8図8は、図3に示すエッチングステップの一例を説明するための図である。
図9図9は、加工屑の高さと研磨パッドのショア硬さとの関係を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0018】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウエーハ10の加工方法について、図面に基づいて説明する。まず、加工対象のウエーハ10、および加工に用いるレーザ加工装置100の構成例について説明する。図1は、実施形態に係る加工方法の加工対象であるウエーハ10の一例を示す斜視図である。図2は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法を実施するレーザ加工装置100の構成例を示す斜視図である。
【0019】
図1に示すウエーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTaO)等を基板11とする円板状の半導体デバイスウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。
【0020】
ウエーハ10は、表面12に、複数の分割予定ライン13が設定されている。分割予定ライン13は、第一の分割予定ライン13-1および第二の分割予定ライン13-2が設定される。第一の分割予定ライン13-1は、第一の方向21に沿って伸長し、第一の方向21に交差する第二の方向22に並んで複数設定される。第二の分割予定ライン13-2は、第二の方向22に沿って伸長し、第一の方向21に並んで複数設定される。第一の方向21と第二の方向22とは、実施形態において、直交する。
【0021】
ウエーハ10は、格子状に設定された第一の分割予定ライン13-1および第二の分割予定ライン13-2によって区画された領域に形成されたデバイス15を有している。デバイス15は、例えば、IC(Integrated Circuit)、またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。
【0022】
ウエーハ10は、例えば、図2に示す環状のフレーム30およびテープ31に支持された状態で搬送および加工される。フレーム30は、金属または樹脂で形成され、ウエーハ10の外径より大きな開口を有する環状の板部材である。テープ31は、フレーム30の開口より外径が大きなシート状であって、フレーム30の開口を覆うように、フレーム30の裏面側に貼着される。テープ31は、例えば、伸縮性を有する合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ伸縮性および粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含んで構成されてもよく、あるいは、糊層を有さず、熱可塑性を有する樹脂から構成されてもよい。
【0023】
ウエーハ10は、フレーム30の開口の所定の位置に位置決めされ、表面12または裏面16側がテープ31に貼着することによって、フレーム30およびテープ31に固定される。ウエーハ10は、複数の分割予定ライン13に沿って個々のデバイス15に分割されて、デバイスチップ17に個片化される。なお、デバイスチップ17は、実施形態において、正方形状であるが、長方形状であってもよい。また、ウエーハ10は、実施形態では円板状であるが、本発明では円板状でなくともよい。
【0024】
図2に示すレーザ加工装置100は、加工対象であるウエーハ10に対して、レーザ光線122を照射することにより、ウエーハ10を加工する装置である。図に示すように、レーザ加工装置100は、保持テーブル110と、レーザ光線照射ユニット120と、移動ユニット140と、表示ユニット150と、制御ユニット160と、を備える。なお、以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザ加工装置100は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、集光点位置調整方向がZ軸方向である。
【0025】
保持テーブル110は、ウエーハ10を保持面111で保持する。保持面111は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面111は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面111は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル110は、保持面111上に載置されたウエーハ10を吸引保持する。保持テーブル110の周囲には、ウエーハ10を支持するフレーム30を挟持するクランプ部112が複数配置されている。
【0026】
保持テーブル110は、回転ユニット113によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット113は、X軸方向移動プレート114に支持される。回転ユニット113および保持テーブル110は、X軸方向移動プレート114を介して、移動ユニット140の加工送りユニット141によりX軸方向に移動される。回転ユニット113および保持テーブル110は、X軸方向移動プレート114、加工送りユニット141およびY軸方向移動プレート115を介して、移動ユニット140の割り出し送りユニット142によりY軸方向に移動される。
【0027】
レーザ光線照射ユニット120は、保持テーブル110に保持されたウエーハ10に対して、ウエーハ10を加工するための所定の波長を有するパルス状のレーザ光線122を照射するユニットである。実施形態において、レーザ光線照射ユニット120の照射ヘッド121を含む一部は、装置本体101から立設した立設壁102に基端部が取り付けられた支持梁103の先端に支持されている。
【0028】
レーザ光線照射ユニット120は、例えば、レーザ光線122を出射する発振器と、発振器から出射されたレーザ光線122を加工点へ集光照射する集光器と、発振器から集光器までレーザ光線122を導く各種の光学部品と、を有する。集光器は、照射ヘッド121の内部に設けられる。集光器によって集光され照射ヘッド121から照射されるレーザ光線122の集光点123は、例えば、不図示の集光点位置調整ユニットによって、集光点位置調整方向であるZ軸方向に、保持テーブル110に対して相対的に移動可能である。
【0029】
移動ユニット140は、保持テーブル110とレーザ光線照射ユニット120から照射されるレーザ光線122の集光点とを相対的に移動させるユニットである。移動ユニット140は、加工送りユニット141と、割り出し送りユニット142と、を含む。
【0030】
加工送りユニット141は、保持テーブル110とレーザ光線照射ユニット120から照射されるレーザ光線122の集光点とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。加工送りユニット141は、実施形態において、保持テーブル110をX軸方向に移動させる。加工送りユニット141は、実施形態において、レーザ加工装置100の装置本体101上に設置されている。加工送りユニット141は、X軸方向移動プレート114をX軸方向に移動自在に支持する。
【0031】
割り出し送りユニット142は、保持テーブル110と、レーザ光線照射ユニット120から照射されるレーザ光線122の集光点とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。割り出し送りユニット142は、実施形態において、保持テーブル110をY軸方向に移動させる。割り出し送りユニット142は、実施形態において、レーザ加工装置100の装置本体101上に設置されている。割り出し送りユニット142は、Y軸方向移動プレート115をY軸方向に移動自在に支持する。
【0032】
加工送りユニット141および割り出し送りユニット142はそれぞれ、例えば、周知のボールねじと、周知のパルスモータと、周知のガイドレールと、を含む。ボールねじは、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータは、ボールねじを軸心回りに回転させる。加工送りユニット141のガイドレールは、Y軸方向移動プレート115に固定して設けられ、X軸方向移動プレート114をX軸方向に移動自在に支持する。割り出し送りユニット142のガイドレールは、装置本体101に固定して設けられ、Y軸方向移動プレート115をY軸方向に移動自在に支持する。
【0033】
表示ユニット150は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット150は、例えば、加工条件の設定画面、加工動作の状態等を、表示面に表示させる。表示ユニット150の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット150は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット150は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット150は、報知装置を含んでもよい。報知装置は、音および光の少なくとも一方を発してレーザ加工装置100のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知装置は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0034】
制御ユニット160は、レーザ加工装置100の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、ウエーハ10に対する加工動作をレーザ加工装置100に実行させる。制御ユニット160は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザ加工装置100の制御を行う。
【0035】
以上、本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成例について説明した。なお、図2を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成は係る例に限定されない。本実施形態に係るレーザ加工装置100の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0036】
(ウエーハの加工方法)
次に、本実施形態に係るウエーハ10の加工方法を説明する。図3は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。図4は、図3に示すレジスト膜形成ステップの一例を説明するための図である。図5は、図3に示す加工溝形成ステップの一例を説明するための図である。図6は、図3に示す研磨ステップで用いる研磨パッドの一例を説明するための図である。図7は、図3に示す研磨ステップの一例を説明するための図である。図8は、図3に示すエッチングステップの一例を説明するための図である。
【0037】
図3に示すウエーハ10の加工方法1000は、基板11の表面に積層された機能層に、複数の分割予定ライン13と該分割予定ライン13に区画された複数のデバイス領域が形成されたウエーハ10を加工する方法である。加工方法1000は、レジスト膜形成ステップ1100と、加工溝形成ステップ1200と、研磨ステップ1300と、エッチングステップ1400と、を備える。本実施形態では、加工方法1000は、レジスト膜形成ステップ1100、加工溝形成ステップ1200、研磨ステップ1300及びエッチングステップ1400の順序でステップを実行する。
【0038】
まず、加工方法1000は、レジスト膜形成ステップ1100を実行する。レジスト膜形成ステップ1100は、ウエーハ10の機能層の表面にレジスト膜を形成するステップである。レジスト膜形成ステップ1100は、図示しない樹脂被覆装置が、ウエーハ10の裏面側をスピンナテーブルの保持面に吸引保持した状態で、ウエーハ10の表面全体を覆うように塗布される。
【0039】
本実施形態では、ウエーハ10は、図4に示すように、厚みが例えば140μmのシリコン等の基板11の表面に、絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された機能層18が形成されている。機能層18は、酸化膜を含み、格子状に形成された複数の分割予定ライン13によって区画された複数の領域にデバイス15が形成されている。基板11の裏面は、テープ31が貼着されている。
【0040】
加工方法1000は、レジスト膜19を機能層18の表面に積層することで、ウエーハ10にレジスト膜19を形成する。本実施形態では、レジスト膜19は、例えば、1~5μmの厚さで形成している、レジスト膜19は、例えば、フェノールノボラック樹脂系のレジスト、株式会社ディスコ製のHOGOMAX(登録商標)の水溶性樹脂等を含む構成とすることができる。例えば、プラズマエッチング時のマスクとして水溶性樹脂を用いる場合、研磨時に除去されてしまう可能性がある。このため、本実施形態では、レジスト膜19は、フェノールノボラック樹脂系のレジストを含んでいる。レジスト膜19は、研磨時にウエーハ10から剥がれない密着力が高い素材が好ましい。また、水溶性樹脂を使用した場合は、研磨を乾式研磨で実施しても良い。
【0041】
また、実験の結果では、環化ゴム系のレジストは、ウエーハ10との密着力が低いため、研磨時にウエーハ10から剥離してしまい、レジスト膜19に適していないことが判明した。一方、フェノールノボラック樹脂系のレジストは、ウエーハ10との密着性に優れ、研磨時にウエーハ10から剥がれず、保護膜に適していることが判明した。フェノールノボラック樹脂系のレジストは、研磨速度も酸化膜と比較して低く、パターンを保護することが可能であることが判明した。
【0042】
図3に示すように、加工方法1000は、レジスト膜形成ステップ1100が終了すると、加工溝形成ステップ1200を実行する。加工溝形成ステップ1200は、ウエーハ10の分割予定ライン13に沿って、レジスト膜19と機能層18とを除去し、基板11を露出させる加工溝を形成するステップである。加工溝形成ステップ1200は、図5に示すように、レーザ加工装置100が分割予定ライン13に沿ってウエーハ10とレーザ光線照射ユニット120とを相対的に移動させながら、レーザ光線照射ユニット120からウエーハ10に対して吸収性を有する波長のレーザ光線を分割予定ライン13に沿ってウエーハ10に照射する。なお、本実施形態において、加工溝形成ステップ1200では、レーザ加工装置100がレーザ光線の集光点をレジスト膜19の表面または基板11の表面に設定して、レーザ光線を各分割予定ライン13に沿ってウエーハ10に照射ヘッド121から照射する。加工溝形成ステップ1200では、レーザ加工装置100が各分割予定ライン13上のレジスト膜19、機能層18及び基板11にアブレーション加工を施して、これらの一部を除去して、各分割予定ライン13に機能層18を分断する加工溝14を形成する。
【0043】
図5に示す一例では、加工溝形成ステップ1200は、レジスト膜19の加工溝14の形成箇所がレーザ光線の熱によって後退し、機能層18の露出領域18-1に加工屑300が発生する状態を示している。加工屑300は、デブリ、バリ等を含む。ウエーハ10は、加工屑300を除去しないと、後工程でデバイスチップ17の品質不良に繋がるという問題がある。デブリ対策は、レーザ光線の照射前に、ウエーハ10に水溶性樹脂を被覆し、レーザ光線の照射後に水溶性樹脂を洗い流すことで一緒にデブリが除去されるようにしている。しかし、例えば酸化膜に対してレーザ光線を照射し加工溝14を形成すると、溶解された酸化膜がバリとなって加工溝周辺に付着し、水溶性樹脂を洗浄しても一緒に除去されない問題があった。このため、本実施形態に係るウエーハ10の加工方法1000は、レーザ光線の照射後に発生する加工屑300を、デバイス15を損傷せずに除去する方法を実現する。
【0044】
図3に示すように、加工方法1000は、加工溝形成ステップ1200が終了すると、研磨ステップ1300を実行する。研磨ステップ1300は、ウエーハ10のデバイス15の領域の上に形成されたレジスト膜19を残存させつつ、加工溝14に研磨パッドを侵入させて加工溝14の周辺に付着した加工屑300を除去するステップである。図6に示すように、研磨ステップ1300は、スウェードまたは不織布を含む研磨パッド232を用いて研磨を行って加工屑300を除去する。研磨ステップ1300は、ウエーハ10のパターンを研磨しなうように、柔らかい研磨パッド232を用い、段差の角を多く研磨する特性を有している。研磨パッド232は、上方からレジスト膜19に押し当てられると、加工溝14に進入して研磨を行う。
【0045】
研磨ステップ1300は、酸化膜のデブリを研磨し易く、レジスト膜19を研磨し難いスラリーを使用する。スラリーは、研磨液であり、単体の薬液からなるものでもよいし、複数の薬液を混合した混合液を水で希釈して所定濃度にしたものでもよい。本実施形態では、研磨ステップ1300は、レジスト膜19と酸化膜との場合、酸化膜の方が研磨されやすいスラリーを使用している。具体的には、スラリーは、アルカリ性が9~11pH、コロイダルシリカ粒子が40~150nm、砥粒濃度が5~20%となっている。例えば、0.5μmのレジスト膜19が研磨される際に、2μmの酸化膜が除去されるほど研磨レートに差がある。このため、本実施形態では、バリ等の加工屑300を除去出来る時間を事前に実験により求め、所定時間研磨することで、研磨レートの違いによりレジスト膜19が除去されず残るようにしている。
【0046】
図7に示すように、研磨ステップ1300を実行する研磨装置200は、研磨ユニット210を備える。研磨ユニット210は、不図示のガイドレールに沿って上下方向に移動可能に装着されている。研磨ユニット210は、ハウジング中に回転可能に収容されたスピンドル222と、スピンドル222の先端に固定されたホイールマウント226と、ホイールマウント226に着脱可能に装着された研磨ホイール228と、を備える。スピンドル222は、不図示のサーボモータ24によって回転駆動する。研磨ホイール228は、ホイール基台230と、ホイール基台230の下面に接着された研磨パッド232とから構成される。スピンドル222中にはスラリー供給路223が形成されており、研磨ホイール228中にもスピンドル222のスラリー供給路23に接続するスラリー供給路233が形成されている。スピンドル222のスラリー供給路223は、砥粒を含むスラリーを供給するスラリー供給源250に連通しており、スラリーを研磨箇所に供給する。
【0047】
研磨装置200は、保持テーブル234を備える。保持テーブル234は、上述した保持テーブル110と同様に、ウエーハ10を吸引保持が可能であり、回転ユニットにより鉛直方向と平行な軸心回りに回転される。
【0048】
研磨ステップ1300では、保持テーブル234に保持されたウエーハ10にスラリー供給源250からスラリーを供給しつつ、保持テーブル234を所定の回転速度で回転させるとともに、研磨パッド232をウエーハ10のレジスト膜19に所定の圧力で当接させながら研磨ホイール228を保持テーブル234の回転速度とは異なる速度で回転させて、研磨パッド232をウエーハ10に対して摺動させてウエーハ10のレジスト膜19を研磨する。この場合、研磨ステップ1300は、レジスト膜19がプラズマエッチングにおいてデバイス15の領域を保護するのに十分な厚みが残存するように、レジスト膜19の厚みを調整する。これにより、加工方法1000は、ウエーハ10のデバイス15の領域をレジスト膜19で被覆した状態で研磨することで、デバイス15への損傷を防ぎつつ、加工屑300を除去することができる。
【0049】
図3に示すように、加工方法1000は、研磨ステップ1300が終了すると、エッチングステップ1400を実行する。エッチングステップ1400は、レジスト膜19をマスクとして加工溝14に沿って基板11をプラズマエッチングするステップである。エッチングステップ1400は、図示しないプラズマエッチング装置が、保持テーブルの保持面にウエーハ10の裏面側を、テープ31を介して保持する。図8の場面1401に示すように、エッチングステップ1400は、上部電極にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、下部電極である保持テーブルにイオンを引き込むための高周波電力を印加しながらエッチングガス500をウエーハ10のレジスト膜19側に供給する。
【0050】
すると、図8の場面1402に示すように、エッチングステップ1400は、プラズマエッチング装置が、保持テーブルと上部電極との間の空間のエッチングガス500がプラズマ化され、このプラズマ化されたエッチングガス500がウエーハ10側に引き込まれて、ウエーハ10のマスクであるレジスト膜19に形成された加工溝14の底面に露出した基板11をエッチング(所謂プラズマエッチング)して、加工溝14をウエーハ10の裏面に向かって進行させる。
【0051】
エッチングステップ1400では、プラズマエッチング装置が、図8に示すように、加工溝14がウエーハ10の裏面側に開口して、ウエーハ10をデバイスチップ17に分割するまで、ウエーハ10をプラズマエッチングする。こうして、エッチングステップ1400は、ウエーハ10を分割し、複数のデバイスチップ17を製造することとなる。加工方法1000は、エッチングステップ1400が終了すると、図3に示す処理手順を終了する。
【0052】
以上のように、ウエーハ10の加工方法1000は、ウエーハ10の機能層18の表面にレジスト膜19を形成し、ウエーハ10の分割予定ライン13に沿って、レジスト膜19と機能層18とを除去し基板11を露出させる加工溝14を形成する。加工方法1000は、ウエーハ10のデバイス15の領域の上に形成されたレジスト膜19を残存させつつ、加工溝14に研磨パッド232を侵入させて加工溝14の周辺に付着した加工屑300を除去し、レジスト膜19をマスクとして加工溝14に沿って基板11をプラズマエッチングする。これにより、加工方法1000は、ウエーハ10の加工溝14に沿って発生する加工屑300を研磨パッド232によって除去することができるので、デバイスチップ17の品質不良を抑制することができる。
【0053】
また、加工方法1000は、加工溝形成ステップ1200がレーザ加工装置100によってレーザ光線を照射する。これにより、加工方法1000は、ウエーハ10のレジスト膜19がレーザ光線によって後退し、機能層18の一部がバリとなって加工溝14の周辺に発生するが、研磨パッド232によって除去することができるので、バリが加工溝14の周辺に付着することを防止できる。よって、加工方法1000は、レーザ光線の照射後に発生する加工屑300を、デバイス15を損傷せずに除去することができる。
【0054】
また、加工方法1000は、研磨ステップ1300で砥粒を含有するスラリー(研磨液)を研磨パッド232とウエーハ10とに供給する。これにより、加工方法1000は、ウエーハ10のレジスト膜19を除去することがないので、デバイス15の領域を保護するのに十分なレジスト膜19の厚みを残存させることができる。
【0055】
また、加工方法1000は、ウエーハ10の機能層18が酸化膜を含む。これにより、加工方法1000は、機能層18の酸化膜に対してレーザ光線を照射し加工溝を形成すると、溶解された酸化膜がバリとなって加工溝周辺に付着しても、研磨パッド232によってバリを除去することができる。
【0056】
また、加工方法1000は、ウエーハ10のレジスト膜19がフェノールノボラック樹脂を含む。これにより、加工方法1000は、フェノールノボラック樹脂が環化ゴム系のレジストよりもウエーハ10との密着性に優れるので、レジスト膜19がウエーハ10から剥がれにくくなり、ウエーハ10のパターンを確実に保護することができる。
【0057】
また、加工方法1000は、研磨パッド232がスウェードまたは不織布を含む。これにより、加工方法1000は、研磨パッド232をウエーハ10の加工溝14の周辺に密着させて研磨することができるので、加工溝14に沿って発生する加工屑300をより一層確実に除去することができる。
【0058】
上述した加工方法1000は、研磨ステップ1300では、砥粒を含むスラリーを研磨パッド232とウエーハ10に供給しながら研磨する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、加工方法1000は、砥粒を含む研磨パッドによって研磨する乾式研磨であってもよい。
【0059】
上述した加工方法1000は、エッチングステップ1400では、プラズマエッチングによってウエーハ10をフルカットし、チップに分割してもよいし、ハーフカットに留めて後工程でチップに分割してもよい。
【0060】
上述した加工方法1000は、研磨ステップ1300の後にエッチングステップ1400を実行する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、加工方法1000は、エッチングステップ1400の後に研磨ステップ1300を実行する処理手順としてもよい。
【0061】
(実験結果)
例えば、研磨パッド232は、固いと、ウエーハ10の表面12における加工溝14の周辺に付着した加工屑300(例えばバリ)にパッドが当たらず、研磨できない可能性がある。以下に、上述した加工方法1000の研磨ステップ1300において、研磨パッド232のショア硬さ(硬度)を変えて研磨した実験結果の一例について説明する。
【0062】
図9は、加工屑300の高さと研磨パッド232のショア硬さとの関係を示す実験結果である。図9において、縦軸は、加工屑300の高さ(μm)を示し、横軸は研磨パッド232のショア硬さ(HS)を示している。図9に示すように、研磨前の加工屑300の高さが2μmの場合、ショア硬さが35の研磨パッド232を研磨ステップ1300で用いると、研磨後の加工屑300の高さがほぼゼロとなり、加工屑300が除去されることを確認した。研磨前の加工屑300の高さが2μmの場合、ショア硬さが45の研磨パッド232を研磨ステップ1300で用いると、研磨後の加工屑300の高さがほぼゼロとなり、加工屑300が除去されることを確認した。研磨前の加工屑300の高さが2μmの場合、ショア硬さが52の研磨パッド232を研磨ステップ1300で用いると、研磨後の加工屑300の高さが1μmとなり、加工屑300の高さが大きく低減している。研磨前の加工屑300の高さが2μmの場合、ショア硬さが60の研磨パッド232を研磨ステップ1300で用いると、研磨後の加工屑300の高さが変わらず、加工屑300が除去されていないことを確認した。
【0063】
このように、上述した加工方法1000の研磨ステップ1300では、ショア硬さが55以下の研磨パッド232を用いると、加工屑300の高さが大きく低減し、さらに、ショア硬さが45以下の研磨パッド232を用いると、加工屑300の高さがほぼゼロになって加工屑300が除去されることを、実験結果から確認できた。
【0064】
また、上述した加工方法1000は、研磨パッド232がポリウレタンの場合、パッドが硬いため、加工溝14に入り込めず、加工屑300が除去されなかった。さらに、上述した加工方法1000は、砥粒を含まない薬液と砥粒を含まない研磨パッドとで研磨してウエーハ10の表面12側を研磨することで、ウエーハ10の表面12へのダメージを軽減させつつ、加工屑300の高さを低減することができる。薬剤の種類は、例えば、有機アルカリ系のキレート剤を含む。ただし、ウエーハ10は、保護膜(レジスト)ありの方が、加工屑300や研磨パッド232によってウエーハ10の表面12にキズをつける可能性がなく、リスクが少ない。
【符号の説明】
【0065】
10 ウエーハ
11 基板
12 表面
13 分割予定ライン
14 加工溝
15 デバイス
17 デバイスチップ
18 機能層
18-1 露出領域
19 レジスト膜
31 テープ
100 レーザ加工装置
110 保持テーブル
120 レーザ光線照射ユニット
121 照射ヘッド
122 レーザ光線
123 集光点
140 移動ユニット
141 加工送りユニット
142 割り出し送りユニット
150 表示ユニット
160 制御ユニット
200 研磨装置
210 研磨ユニット
222 スピンドル
226 ホイールマウント
228 研磨ホイール
230 ホイール基台
232 研磨パッド
233 スラリー供給路
250 スラリー供給源
300 加工屑
500 エッチングガス
1000 加工方法
1100 レジスト膜形成ステップ
1200 加工溝形成ステップ
1300 研磨ステップ
1400 エッチングステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9