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特開2024-150167プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150167
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063443
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】千野 光貴
(72)【発明者】
【氏名】榎本 果穂
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA09
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA03
5F004DA04
5F004DA05
5F004DA11
5F004DA12
5F004DA13
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA20
5F004DA22
5F004DA23
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA05
5F004EA28
5F004EA30
(57)【要約】
【課題】エッチングにおいてクロッギングを抑制する技術を提供する。
【解決手段】本開示に係る基板処理方法は、(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する工程であって、基板は、第1膜及び第1膜上に開口を有する第2膜を含み、第1膜は、シリコン及び酸素を含む第1層とシリコン及び窒素を含む第2層とを含む積層膜であり、第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、工程と、(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、HFガスと、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、開口を介して第1膜をエッチングする工程と、を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する工程であって、前記基板は、第1膜及び前記第1膜上に開口を有する第2膜を含み、前記第1膜は、シリコン及び酸素を含む第1層とシリコン及び窒素を含む第2層とを含む積層膜であり、前記第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、工程と、
(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、HFガスと、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、前記開口を介して前記第1膜をエッチングする工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1膜は、ホウ素、リン、及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも1つの典型元素を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2膜は、タングステン、チタン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの遷移金属元素を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2膜は、タングステン化合物を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第2膜は、タングステンシリサイド、タングステンボロン、タングステンカーバイド、タングステンナイトライド、タングステンオキサイド、タングステンシリコンナイトライド、タングステンシリコンボロン及びタングステンシリコンカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1つのタングステン化合物を含む、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2膜は、シリコン、炭素、窒素、酸素、水素、ホウ素及びリンのうち少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2膜は、シリコン含有膜を更に含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記シリコン含有膜は、ホウ素を含む、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理ガスは、リン含有ガスを更に含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記処理ガスは、金属含有ガスを更に含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記処理ガスは、水素含有ガス、ハロゲン含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び貴ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスを更に含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記(b)の工程において、前記基板支持部の温度は、-10℃~-100℃に設定される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記(b)の工程において、前記基板支持部にバイアス信号が供給され、前記バイアス信号はバイアスDC信号又はバイアスRF信号である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記(b)において、前記チャンバ内の圧力は、1~20mTorrに設定される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記基板は、複数のDRAM素子が形成される基板である、請求項1から14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記積層膜は、前記第1層を1又は2以上含み、前記第2層を1又は2以上含み、
前記1又は2以上の第1層のうちの少なくとも1つの厚さは、前記1又は2以上の第2層のうちの少なくとも1つの厚さよりも厚い、請求項1から14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記開口の幅は、50nm以下である、請求項1から14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、プラズマ生成部、及び、制御部を備えたプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する制御であって、前記基板は、第1膜及び前記第1膜上に開口を有する第2膜を含み、前記第1膜は、シリコン及び酸素を含む膜とシリコン及び窒素を含む膜とを含む積層膜であり、前記第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、制御と、
(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、前記プラズマ生成部から供給する電力により、HFガスと、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、前記開口を介して前記第1膜をエッチングする制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【請求項19】
前記プラズマ生成部は、ソースRF信号及びバイアス信号を前記基板支持部に供給する、請求項18に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
前記ソースRF信号の周波数は、40MHz以上である、請求項19に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコンマスクが形成された基板をエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-21546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングにおいてクロッギングを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する工程であって、基板は、第1膜及び第1膜上に開口を有する第2膜を含み、第1膜は、シリコン及び酸素を含む第1層とシリコン及び窒素を含む第2層とを含む積層膜であり、第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、工程と、(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、HFガスと、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、開口を介して第1膜をエッチングする工程と、を含む基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、エッチングにおいてクロッギングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例示的なプラズマ処理システムを概略的に示す図である。
図2】本処理方法の一例を示すフローチャートである。
図3】基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図4】工程ST32においてシリコン窒化膜EF1がエッチングされた後の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図5】工程ST34の終了後における基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理方法が提供される。基板処理方法は、(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する工程であって、基板は、第1膜及び第1膜上に開口を有する第2膜を含み、第1膜は、シリコン及び酸素を含む第1層とシリコン及び窒素を含む第2層とを含む積層膜であり、第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、工程と、(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、HFガスと、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、開口を介して第1膜をエッチングする工程と、を含む。
【0010】
一つの例示的実施形態において、第1膜は、ホウ素、リン、及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも1つの典型元素を含む。
【0011】
一つの例示的実施形態において、第2膜は、タングステン、チタン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの遷移金属元素を含む。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第2膜は、タングステン化合物を含む。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第2膜は、タングステンシリサイド、タングステンボロン、タングステンカーバイド、タングステンナイトライド、タングステンオキサイド、タングステンシリコンナイトライド、タングステンシリコンボロン及びタングステンシリコンカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1つのタングステン化合物を含む。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第2膜は、シリコン、炭素、窒素、酸素、水素、ホウ素及びリンのうち少なくとも1つを更に含む。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第2膜は、シリコン含有膜を更に含む。
【0016】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、ホウ素を含む。
【0017】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、リン含有ガスを更に含む。
【0018】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、金属含有ガスを更に含む。
【0019】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、水素含有ガス、ハロゲン含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び貴ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスを更に含む。
【0020】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、基板支持部の温度は、-10℃~-100℃に設定される。
【0021】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、基板支持部にバイアス信号が供給され、バイアス信号はバイアスDC信号又はバイアスRF信号である。
【0022】
一つの例示的実施形態において、(b)において、チャンバ内の圧力は、1~20mTorrに設定される。
【0023】
一つの例示的実施形態において、基板は、複数のDRAM素子が形成される基板である。
【0024】
一つの例示的実施形態において、積層膜は、第1層を1又は2以上含み、第2層を1又は2以上含み、1又は2以上の第1層のうちの少なくとも1つの厚さは、1又は2以上の第2層のうちの少なくとも1つの厚さよりも厚い。
【0025】
一つの例示的実施形態において、開口の幅は、50nm以下である。
【0026】
一つの例示的実施形態において、チャンバ、チャンバ内に設けられた基板支持部、プラズマ生成部、及び、制御部を備えたプラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置において、制御部は、(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する制御であって、基板は、第1膜及び第1膜上に開口を有する第2膜を含み、第1膜は、シリコン及び酸素を含む膜とシリコン及び窒素を含む膜とを含む積層膜であり、第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、制御と、(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、プラズマ生成部から供給する電力により、HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCsHtFuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、開口を介して第1膜をエッチングする制御とを実行する。
【0027】
一つの例示的実施形態において、プラズマ生成部は、ソースRF信号及びバイアス信号を基板支持部に供給する。
【0028】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号の周波数は、40MHz以上である。
【0029】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
<プラズマ処理システムの構成例>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0031】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0032】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、エッジリングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0033】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号又はDC信号がRF又はDC電極に接続される場合、RF又はDC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つの下部電極として機能してもよい。
【0034】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0035】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0036】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0037】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0038】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0039】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0040】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0041】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0042】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0043】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0045】
<プラズマ処理方法の一例>
図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法(以下「本処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。図2に示すように、本処理方法は、基板を提供する工程ST1と、基板支持部の温度及びチャンバ内の圧力を設定する工程ST2と、基板上のエッチング対象膜をエッチングする工程ST3とを含む。各工程における処理は、図1に示すプラズマ処理システムで実行されてよい。以下では、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御して、基板Wに対して本処理方法を実行する場合を例に説明する。
【0046】
(工程ST1:基板の提供)
工程ST1において、基板Wは、プラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に提供される。基板Wは、基板支持部11の上面に、上部電極と対向するように配置され、静電チャック1111により基板支持部11に保持される。
【0047】
図3は、工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、下地膜UF上に、エッチング対象膜EF及びマスク膜MFがこの順で形成されている。エッチング対象膜EFは、第1膜の一例である。また、マスク膜MFは、第2膜の一例である。基板Wは、例えば、複数のDRAM素子を形成するための基板でよい。
【0048】
下地膜UFは、例えば、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等でよい。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。下地膜UFは、基板Wにおいて形成されるDRAM素子の一部を構成する膜であり得る。また、下地膜UFは、DRAM素子を形成する工程の1つにおいて、マスクとして用いられる膜であり得る。
【0049】
エッチング対象膜EFは、複数の層を含む積層膜であり得る。エッチング対象膜EFは、例えば、シリコン酸化膜EF2を含む層と、当該シリコン酸化膜EF2上に形成されたシリコン窒化膜EF1を含む層を含んでよい。シリコン窒化膜EF1は、シリコン及び酸素を含む第1層の一例であり得る。また、シリコン酸化膜EF2は、シリコン及び窒素を含む第2層の一例であり得る。エッチング対象膜EFは、本処理方法によりエッチングされる膜を含む積層膜の一例であり得る。シリコン酸化膜EF2の厚さは、シリコン窒化膜EF1の厚さよりも厚くてよい。
【0050】
下地膜UF及び/又はエッチング対象膜EFは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。下地膜UF及び/又はエッチング対象膜EFは、平坦な膜であってよく、また、凹凸を有する膜であってもよい。
【0051】
マスク膜MFは、エッチング対象膜EF上に形成されている。マスク膜MFは、エッチング対象膜EF上において少なくとも1つの開口を有する。すなわち、マスク膜MFは、エッチング対象膜EF上において少なくとも一つの開口OPを規定する形状を有するように構成される。例えば、開口OPは、エッチング対象膜EF上の空間であって、マスク膜MFの側壁に囲まれている。すなわち、図3において、エッチング対象膜EFの上面は、マスク膜MFによって覆われた領域と、開口OPの底部において露出した領域とを有する。
【0052】
開口OPは、基板Wの平面視、すなわち、基板Wを図3の上から下に向かう方向に見た場合において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、円、楕円、矩形、線やこれらの1種類以上を組み合わせた形状であってよい。マスク膜MFは、複数の側壁を有し、複数の側壁が複数の開口OPを規定してもよい。複数の開口OPは、それぞれ線形状を有し、一定の間隔で並んでライン&スペースのパターンを構成してもよい。また、複数の開口OPは、それぞれ穴形状を有し、アレイパターンを構成してもよい。
【0053】
開口OPの開口幅は、50nm以下でよい。当該開口幅は、30nm以下でもよい。当該開口幅は、15nm以上25nm以下でもよい。また、当該開口幅は、1nm以上であり得る。
【0054】
マスク膜MFは、金属含有膜であり得る。マスク膜MFは、タングステン、チタン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの遷移金属元素を含む膜であってよい。マスク膜MFは、一例として、タングステン化合物を含む膜であり得る。タングステン化合物は、一例として、タングステンシリサイド、タングステンボロン、タングステンカーバイド、タングステンナイトライド、タングステンオキサイド、タングステンシリコンナイトライド、タングステンシリコンボロン及びタングステンシリコンカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み得る。また、マスク膜MFは、炭素含有膜であってもよい。
【0055】
マスク膜MFは、1つの層からなる単層マスクでも、2つ以上の層からなる多層マスクであってもよい。マスク膜MFは、一例として、金属含有膜及び/又は炭素含有膜とシリコン含有膜とを含む積層膜であり得る。シリコン含有膜は、一例として、ホウ化シリコン膜又はホウ素ドープシリコン膜であり得る。マスク膜MFは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。マスク膜MFは、リソグラフィによって形成されてもよい。開口OPは、マスク膜MFをエッチングすることで形成されてよい。
【0056】
基板Wの各構成を形成するプロセスの少なくとも一部は、プラズマ処理チャンバ10内で行われてよい。一例では、マスク膜MFをエッチングして開口OPを形成する工程は、プラズマ処理チャンバ10で実行されてよい。すなわち、開口OP及び後述するエッチング対象膜EFのエッチングは、同一のチャンバ内で連続して実行されてよい。また、基板Wの各構成の全部又は一部がプラズマ処理装置1の外部の装置又はチャンバで形成された後、基板Wがプラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に搬入され、基板支持部11の上面に配置されてもよい。
【0057】
(基板ST2:基板支持部の温度及びチャンバ内の圧力を設定)
工程ST2において、基板支持部11の温度を0℃以下の目標温度に設定する。目標温度は、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下又は-70℃以下でもよい。目標温度は、-100℃以上であってよい。目標温度は、-10℃~-100℃であってよく、-20℃~-70℃であってよく、-30℃~-50℃であってよい。一実施形態において、目標温度を低温に設定することにより、プラズマにより生成された活性種の吸着係数が増加し得る。これにより、エッチング対象膜EFのエッチングレートが増加し得るため、クロッギングが抑制され得る。
【0058】
基板支持部11の温度を目標温度に設定することは、基板支持部11の温度を測定して、基板支持部11の温度が目標温度になるように、温調モジュールにより基板支持部11の温度を調整することを含むがこれに限られない。一例では、基板支持部11の温度を目標温度に設定することは、(a)基板支持部11の温度が目標温度になるように、基板Wの温度又は流路1110aを流れる伝熱流体の温度を当該目標温度又は当該目標温度とは異なる温度に設定すること、及び、(b)基板Wの温度が目標温度となるように、基板支持部11又は流路1110aを流れる伝熱流体の温度を、当該目標温度又は当該目標温度とは異なる温度に設定することを含む。また、温度を「設定」することは、制御部2において当該温度が入力、選択又は記憶されることを含む。
【0059】
また、工程ST2において、プラズマ処理チャンバ10内又はプラズマ処理空間10sの圧力(以下、「チャンバ圧力」という。)を30mTorr以下の目標圧力に設定する。目標圧力は、20mTorr以下、15mTorr以下、10mTorr以下、5mTorr以下でもよい。目標圧力は、1mTorr以上であってよい。目標圧力は、1~20mTorrであってよく、2~15mTorrであってよく、5~10mTorrであってよい。一実施形態において、目標圧力を低圧に設定することにより、工程ST3において生成された副生成物が開口OP及び/又は凹部に堆積することを抑制し得る。これにより、開口OP及び/又は凹部において、クロッキングを抑制し得る。
【0060】
チャンバ圧力を目標圧力に設定することは、チャンバ圧力を測定し、チャンバ圧力が目標圧力になるように排気システム40を制御して、チャンバ圧力を調整することを含むがこれに限られない。一例では、チャンバ圧力を目標圧力に設定することは、チャンバ圧力が目標圧力となるように、チャンバ圧力に関連するパラメータを設定することを含み得る。また、チャンバ圧力を「設定」することは、制御部2において当該圧力が入力、選択又は記憶されることを含む。
【0061】
なお、本処理方法において、工程ST2の少なくとも一部は、工程ST1の前に行ってもよい。すなわち、基板支持部11の温度を目標温度に設定した後に、当該基板支持部11に基板Wを提供してよい。
【0062】
(工程ST3:エッチング対象膜EFのエッチング)
工程ST3において、エッチング対象膜EFがエッチングされる。工程ST3は、処理ガスを供給する工程ST31及び処理ガスからプラズマを生成する工程ST32を含む。工程ST3における処理の間、基板支持部11の温度は、工程ST2で設定した0℃以下の目標温度に設定される。また、工程ST3における処理の間、チャンバ圧力は、30mT(4.0Pa)以下に設定してよい。
【0063】
工程ST31において、処理ガスがプラズマ処理空間10s内に供給される。処理ガスは、フッ化水素ガス(HFガス)と、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s,t及びuは1以上の整数である)を含む。また、一実施形態において、処理ガスはArガス、Heガス、Krガス又はXeガス等の貴ガスやN2ガス等の不活性ガスを含み得る。
【0064】
処理ガスにおいて、Cxyガスは、CF4ガス、C22ガス、C24ガス、C36ガス、C38ガス、C46ガス、C48ガス及びC58ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。
【0065】
処理ガスにおいて、Cstuガスは、CHF3ガス、CH22ガス、CH3Fガス、C2HF5ガス、C224ガス、C233ガス、C242ガス、C3HF7ガス、C322ガス、C324ガス、C326ガス、C335ガス、C426ガス、C455ガス、C428ガス、C526ガス、C5210ガス及びC537ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。また、処理ガスは、CxyガスとCstuガスとの双方のガスを含んでよい。
【0066】
一実施形態において、HFガスは、不活性ガスを除いて処理ガス中最も流量(分圧)が大きくてよい。一例では、HFガスの流量は、処理ガスの総流量(処理ガスが不活性ガスを含む場合はこれらのガスを除く全てのガスの流量)に対して、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上又は95体積%以上でよい。HFガスの流量は、処理ガスの総流量に対して、100体積%未満、99.5体積%以下、98体積%以下又は96体積%以下でよい。一例では、HFガスの流量は、処理ガスの総流量に対して、70体積%以上96体積%以下である。
【0067】
一実施形態において、処理ガスは、リン含有ガスを含む。一実施形態において、リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである。ハロゲン化リンガスは、例えば、PF3ガスやPF5ガス等、ハロゲン元素としてフッ素を含むフッ化リンガスであってよい。一実施形態において、ハロゲン化リンガスは、PCl3ガスやPCl5ガス等、ハロゲン元素として塩素を含む塩化リンガスであってよい。一実施形態において、ハロゲン化リンガスは、PBr3ガス、PBr5ガス、PI3ガスのようにハロゲン元素として、臭素やヨウ素を含むガスであってもよい。一実施形態において、ハロゲン化リンガスは、PClF2ガス、PCl2Fガス、PCl23ガス等、2種以上のハロゲン元素を含むガスであってもよい。一実施形態において、ハロゲン化リンガスは、オキシフッ化リンガス又はオキシ塩化リンガスであってよい。例えば、ハロゲン化リンガスは、POF3ガス、POCl3ガス、POF2Cl2ガス、POFCl2ガス又はPOF2Clガスであってよい。一実施形態において、処理ガスに含まれるリン含有ガスの流量は、処理ガスの総流量のうち、20体積%以下、10体積%以下、5体積%以下である。
【0068】
一実施形態において、処理ガスは、フッ素以外のハロゲン含有ガスをさらに含む。一実施形態において、フッ素以外のハロゲン含有ガスは、塩素含有ガス、臭素含有ガス及び/又はヨウ素含有ガスである。塩素含有ガスは、一例では、Cl2、SiCl2、SiCl4、CCl4、SiH2Cl2、Si2Cl6、CHCl3、SO2Cl2、BCl3、PCl3、PCl5及びPOCl3からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。臭素含有ガスは、一例では、Br2、HBr、CBr22、C25Br、PBr3、PBr5、POBr3及びBBr3からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。ヨウ素含有ガスは、一例では、HI、CF3I、C25I、C37I、IF5、IF7、I2、PI3からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。一例では、フッ素以外のハロゲン含有ガスは、Cl2ガス、Br2ガス及びHBrガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。一例では、フッ素以外のハロゲン含有ガスは、Cl2ガス又はHBrガスである。
【0069】
一実施形態において、処理ガスは金属含有ガスをさらに含む。一実施形態において、金属含有ガスは、タングステン、モリブデン、ルテニウム及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種の金属(金属M)を含むガスである。一実施形態において、金属含有ガスは、金属Mとハロゲンとを含有するガスでよい。一例では、金属含有ガスは、WF2ガス、WF4ガス、WF5ガス、WF6ガス、WCl2ガス、WCl4ガス、WCl5ガス、WCl6ガス、MoF4ガス、MoF6ガス、MoCl6ガス、TiCl4ガス等である。
【0070】
一実施形態において、処理ガスは酸素含有ガスをさらに含む。酸素含有ガスは、例えば、O2、CO、CO2、H2O及びH22からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。一例では、酸素含有ガスは、H2O以外の酸素含有ガス、例えばO2、CO、CO2及びH22からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。酸素含有ガスの流量は、処理ガスに含まれる他のガス(例えば炭素含有ガス)の流量に応じて調整されてよい。
【0071】
一実施形態において、処理ガスは、HFガスの一部又は全部に代えて、プラズマ中にフッ化水素種(HF種)を生成可能なガスを含んでよい。HF種は、フッ化水素のガス、ラジカル及びイオンの少なくともいずれかを含む。
【0072】
一実施形態において、処理ガスは、窒素含有ガスをさらに含む。窒素含有ガスは、一例では、窒素ガス(N2)、アンモニアガス(NH3)、ヒドラジンガス(N24)等である。
【0073】
一実施形態において、処理ガスは、水素含有ガスをさらに含む。水素含有ガスは、一例として、水素ガス(H2)、硫化水素ガス(H2S)等である。水素含有ガスの流量比は、HFガス、Cxyガス及びCstuガスのそれぞれの流量比より多くてもよい。水素含有ガスの流量比は、HFガス、Cxyガス及びCstuガスの流量比の合計より多くてもよい。一実施形態において、水素含有ガスは、ハロゲンを含まないガスであり得る。
【0074】
工程ST32において、第1のRF生成部31aからソースRF信号(RF電力)が下部電極に供給される。ソースRF信号の周波数は、一例として、40MHzであり得る。ソースRF信号が下部電極に供給されると、第1の処理ガスからプラズマが生成される。またバイアス信号として、第1のDC生成部32aから、バイアスDC信号が下部電極に供給され、基板にバイアス電位が発生する。これにより、生成されたプラズマ中のイオン、ラジカルといった活性種が基板Wに引きよせられ、マスク膜MFの開口OPを通ってシリコン窒化膜EF1がエッチングされる。なお、バイアスDC信号の電圧は、10kV以下、6kV以下、4kV以下又は3kV以下であり得る。一実施形態において、バイアスDC信号の電圧を低くすることにより、開口OPの上部付近に付着する堆積物を低減し得る。これにより、開口OP及び/又は凹部において、クロッキングを抑制し得る。また、上述のとおり、エッチングの間、基板支持部11の温度は0℃以下の目標温度に設定されている。また、エッチングの間、チャンバ圧力は30mTorr以下の目標圧力に設定されている。
【0075】
なお、バイアス信号の供給を開始するタイミングは、ソースRF信号の供給を開始するタイミングと同時でも異なってもよい。また、バイアス信号として、バイアスRF信号を用いてよい。すなわち、第2のRF生成部31bから負極性のバイアスDC信号を下部電極に供給して、基板Wにバイアス電位を発生させてよい。ソースRF信号及びバイアス信号は、双方が連続波であってよく、また一方が連続波で他方がパルス波であってよい。
【0076】
一実施形態において、シリコン窒化膜EF1及びシリコン酸化膜EF2の双方は、同じエッチング条件でエッチングされてよい。すなわち、上述した工程ST31及び工程ST32において、シリコン窒化膜EF1及びシリコン酸化膜EF2の双方がエッチングされてよい。
【0077】
図4は、工程ST32においてシリコン窒化膜EF1がエッチングされた後の基板Wの断面構造の一例を示す図である。図4に示すように、エッチングによりシリコン窒化膜EF1に形成される凹部の底部BTがシリコン酸化膜EF2に到達し、シリコン酸化膜EF2の表面が露出している。
【0078】
図5は、工程ST32の終了後の基板Wの断面構造の一例を示す図である。図5に示すように、エッチングによりシリコン酸化膜EF2に形成される凹部の底部BTが下地膜UFに到達し、下地膜UFの表面が露出すると、工程ST32が終了される。なお、下地膜UFの一部がエッチングされた後に工程ST32を終了してもよい。すなわち、工程ST32において、下地膜UFの一部が深さ方向にオーバーエッチングされてよい。以上により、本処理方法が終了される。
【0079】
<実施例>
次に、本処理方法の実施例について説明する。本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
実施例では、プラズマ処理装置1を用いて本処理方法を適用し、図3に示す基板Wと同様の構造を有する基板をエッチングした。マスク膜MFとしては、タングステン含有膜を用いた。実施例1におけるシリコン窒化膜EF1及びシリコン酸化膜EF2のエッチング条件は以下のとおりである。

シリコン窒化膜EF1及びシリコン酸化膜EF2のエッチング条件(工程ST3):
基板支持部の温度:-50℃
チャンバ圧力:6mTorr
処理ガス:HFガス、CF4ガス
【0081】
(参考例)
参考例では、プラズマ処理装置1を用いて、実施例と同様の基板をエッチングした。参考例におけるシリコン窒化膜EF1及びシリコン酸化膜EF2のエッチング条件は以下のとおりである。

シリコン窒化膜EF1及びシリコン酸化膜EF2のエッチング条件:
基板支持部の温度:-50℃
チャンバ圧力:6mT
第1の処理ガス:HFガス
【0082】
実施例において、基板支持部の温度を低温に設定し、また、チャンバ圧力を低圧に設定しつつ、処理ガスにフルオロカーボンガスを加えたところ、マスク膜MFに形成された開口OP及び/又はエッチング対象膜EFに形成された凹部において、クロッギングは発生しなかった。
【0083】
また、実施例のエッチング対象膜EFのエッチングレートは213[nm/min]であり、マスク膜MFに対する選択比は12.8であった。これに対し、参考例のエッチング対象膜EFのエッチングレートは101[nm/min]であり、マスク膜MFに対する選択比は4.8であった。すなわち、実施例においては、参考例に比べて、エッチングレートが約2倍となり大幅に向上した。また実施例においては、参考例に比べて選択比も約2.7倍となり大幅に向上した。
【0084】
また、実施例において、エッチング対象膜EFの上部における凹部のCDは19.5nmであった。これに対し、参考例において、エッチング対象膜EFの上部における凹部のCDは16.7nmであった。すなわち、実施例においては、参考例に比べて、いわゆるトップCDも大幅に改善された。
【0085】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0086】
(付記1)
(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する工程であって、前記基板は、第1膜及び前記第1膜上に開口を有する第2膜を含み、前記第1膜は、シリコン及び酸素を含む第1層とシリコン及び窒素を含む第2層とを含む積層膜であり、前記第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、工程と、
(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、HFガスと、Cxyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCstuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、前記開口を介して前記第1膜をエッチングする工程と、
を含む、基板処理方法。
【0087】
(付記2)
前記第1膜は、ホウ素、リン、及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも1つの典型元素を含む、付記1に記載の基板処理方法。
【0088】
(付記3)
前記第2膜は、タングステン、チタン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの遷移金属元素を含む、付記1又は2に記載の基板処理方法。
【0089】
(付記4)
前記第2膜は、タングステン化合物を含む、付記1に記載の基板処理方法。
【0090】
(付記5)
前記第2膜は、タングステンシリサイド、タングステンボロン、タングステンカーバイド、タングステンナイトライド、タングステンオキサイド、タングステンシリコンナイトライド、タングステンシリコンボロン及びタングステンシリコンカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1つのタングステン化合物を含む、付記4に記載の基板処理方法。
【0091】
(付記6)
前記第2膜は、シリコン、炭素、窒素、酸素、水素、ホウ素及びリンのうち少なくとも1つを更に含む、付記1から5のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0092】
(付記7)
前記第2膜は、シリコン含有膜を更に含む、付記1から6のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0093】
(付記8)
前記シリコン含有膜は、ホウ素を含む、付記7に記載の基板処理方法。
【0094】
(付記9)
前記処理ガスは、リン含有ガスを更に含む、付記1から8のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0095】
(付記10)
前記処理ガスは、金属含有ガスを更に含む、付記1から9のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0096】
(付記11)
前記処理ガスは、水素含有ガス、ハロゲン含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び貴ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスを更に含む、付記1から10のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0097】
(付記12)
前記(b)の工程において、前記基板支持部の温度は、-10℃~-100℃に設定される、付記1から11のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0098】
(付記13)
前記(b)の工程において、前記基板支持部にバイアス信号が供給され、前記バイアス信号はバイアスDC信号又はバイアスRF信号である、付記1から12のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0099】
(付記14)
前記(b)において、前記チャンバ内の圧力は、1~20mTorrに設定される、付記1から13のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0100】
(付記15)
前記基板は、複数のDRAM素子が形成される基板である、付記1から14のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0101】
(付記16)
前記積層膜は、前記第1層を1又は2以上含み、前記第2層を1又は2以上含み、
前記1又は2以上の第1層のうちの少なくとも1つの厚さは、前記1又は2以上の第2層のうちの少なくとも1つの厚さよりも厚い、付記1から15のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0102】
(付記17)
前記開口の幅は、50nm以下である、付記1から16のいずれか1つに記載の基板処理方法。
【0103】
(付記18)
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、プラズマ生成部、及び、制御部を備えたプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
(a)チャンバ内の基板支持部上に基板を提供する制御であって、前記基板は、第1膜及び前記第1膜上に開口を有する第2膜を含み、前記第1膜は、シリコン及び酸素を含む膜とシリコン及び窒素を含む膜とを含む積層膜であり、前記第2膜は、金属含有膜又は炭素含有膜である、制御と、
(b)基板支持部の温度が0℃以下に設定された状態、及び、チャンバ内の圧力が30mTorr以下に設定された状態で、前記プラズマ生成部から供給する電力により、HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)又はCsHtFuガス(s、t及びuは1以上の整数である)とを含む処理ガスからプラズマを生成して、前記開口を介して前記第1膜をエッチングする制御と
を実行する、プラズマ処理装置。
【0104】
(付記19)
前記プラズマ生成部は、ソースRF信号及びバイアス信号を前記基板支持部に供給する、付記18に記載のプラズマ処理装置。
【0105】
(付記20)
前記ソースRF信号の周波数は、40MHz以上である、付記19に記載のプラズマ処理装置。
【0106】
以上の各実施形態は、説明の目的で記載されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以上の各実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0107】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……プラズマ処理チャンバ、10s……プラズマ処理空間、11……基板支持部、13……シャワーヘッド、20……ガス供給部、31a……第1のRF生成部、31b……第2のRF生成部、32a……第1のDC生成部、MF…マスク膜、OP…開口、EF…エッチング対象膜、EF1……シリコン窒化膜、EF2……シリコン酸化膜、UF…下地膜、W…基板
図1
図2
図3
図4
図5