(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150222
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】差動入力保護回路及び増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20241016BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H03F1/52
H03F3/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063533
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大司
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC16
5J500AC32
5J500AC56
5J500AF01
5J500AF04
5J500AH10
5J500AH14
5J500AH16
5J500AH19
5J500AK02
5J500AK18
5J500AK20
5J500AT01
5J500PG01
(57)【要約】
【課題】入力バイアス電流の依存性を低減しつつ、高耐圧で入力バイアス電流が少ないESD保護回路を提供する。
【解決手段】実施形態の差動入力増幅回路は、電圧制限回路と、ドレイン端子が第1外部入力端子に接続され、ソース端子がゲート端子及び増幅回路の非反転入力端子に接続された第1高耐圧ディプレッショントランジスタと、ドレイン端子が第2外部入力端子に接続され、ソース端子がゲート端子及び増幅回路の反転入力端子に接続された第2高耐圧ディプレッショントランジスタと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子及び第2入力端子を有する保護対象の差動増幅回路に入力される差動電圧の値を制限する電圧制限回路と、
第1外部入力端子に第1端子が接続され、前記第1入力端子に第2端子が接続された第1高耐圧ディプレッショントランジスタと、
第2外部入力端子に第1端子が接続され、前記第2入力端子に第2端子が接続された第2高耐圧ディプレッショントランジスタと、
を備えた差動入力保護回路。
【請求項2】
前記第1外部入力端子と前記第2外部入力端子との間の差電圧が第1閾値電圧よりも低い場合に、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタ及び前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタは、入力抵抗素子として機能し、
前記差電圧が前記第1閾値電圧よりも高い場合に、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタ及び前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのうち、一方は抵抗素子として機能し、他方は電流源として機能するような電圧が高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子に印加されている、
請求項1に記載の差動入力保護回路。
【請求項3】
前記電圧制限回路は、ダイオードリミッタ回路として構成されている、
請求項1に記載の差動入力保護回路。
【請求項4】
前記ダイオードリミッタ回路は、前記第1入力端子にアノード端子が接続され、前記第2入力端子にカソード端子が接続された第1保護ダイオードと、
前記第1入力端子にカソード端子が接続され、前記第2入力端子にアノード端子が接続された第1保護ダイオードと、
を備えた請求項3に記載の差動入力保護回路。
【請求項5】
前記ダイオードリミッタ回路は、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子にアノード端子が接続され、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのソース端子にカソード端子が接続された第1保護ダイオードと、
前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子にアノード端子が接続され、前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのソース端子にカソード端子が接続された第2保護ダイオードと、
記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子、前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子にカソード端子が接続され、低電位側電源にアノード端子が接続された第3保護ダイオードと、を備え、
さらに、前記第1外部入力端子及び前記第2外部入力端子の同相電圧を検出して出力する同相電圧バッファ回路と、
前記同相電圧バッファ回路の出力が入力され、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子及び前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子に前記同相電圧バッファ回路の出力をレベルシフトした電圧を印加する第1レベルシフト回路と、
を備えた請求項3に記載の差動入力保護回路。
【請求項6】
前記ダイオードリミッタ回路は、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのソース端子にアノード端子が接続された第4保護ダイオードと、
前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのソース端子にアノード端子が接続された第5保護ダイオードと、
前記第4保護ダイオードのカソード端子及び前記第5保護ダイオードのカソード端子にアノード端子が接続され、高電位側電源にカソード端子が接続された第6保護ダイオードと、を備え、
さらに、前記同相電圧バッファ回路の出力が入力され、前記第4保護ダイオードのカソード端子、前記第5保護ダイオードのカソード端子及び前記第6保護ダイオードのアノード端子に前記同相電圧バッファ回路の出力をレベルシフトした電圧を印加する第2レベルシフト回路と、
を備えた請求項5に記載の差動入力保護回路。
【請求項7】
前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子が前記第1入力端子又は前記第1外部入力端子の何れか一方に接続され、
前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子は、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子が前記第1入力端子に接続されている場合には、前記第2入力端子に接続され、前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタのゲート端子が前記第1外部入力端子に接続された場合には、前記第2外部入力端子に接続される、
請求項1に記載の差動入力保護回路。
【請求項8】
前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタ及び前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのバルク端子に、前記第1入力端子及び前記第2入力端子に入力される同相電圧を出力する同相電圧バッファ回路を備えた、
請求項1に記載の差動入力保護回路。
【請求項9】
前記同相電圧が印加され、前記同相電圧を前記第1高耐圧ディプレッショントランジスタ及び前記第2高耐圧ディプレッショントランジスタのオン抵抗を下げる側にシフトして出力するレベルシフト回路を備えた、
請求項8に記載の差動入力保護回路。
【請求項10】
第1入力端子及び第2入力端子を有する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路に入力される差動電圧の値を制限する電圧制限回路と、
第1外部入力端子に第1端子が接続され、前記第1入力端子に第2端子が接続された第1高耐圧ディプレッショントランジスタと、
第2外部入力端子に第1端子が接続され、前記第2入力端子に第2端子が接続された第2高耐圧ディプレッショントランジスタと、
を備えた増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、差動入力保護回路及び増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高耐圧に設計された増幅装置は、入力差動電圧の耐圧範囲が電源耐圧と比較して低い場合があるため、入力にダイオードクリッパー回路のような電圧制限回路を備えることが行われていた。
【0003】
入力差動電圧の耐圧範囲が電源耐圧と比較して低い理由は、例えば、入力段にMOSトランジスタを用いた差動増幅回路を使用している場合、相互コンダクタンス値を大きくするため、ゲート・ソース間の耐圧は小さいものを使う場合があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電圧制限回路は差動入力電圧が大きくなると回路内部のダイオードによって電圧が制限され、代わりに電流が片方の入力端子からもう片方の入力端子に流れるような動作をすることとなり、差動入力電圧が更に大きくなると、この電流値が大きくなってしまうという課題があった。
【0006】
したがって、これをそのままとすれば、入力に流れ込む電流値が回路の定格を超えたときに、回路を破壊したり、大信号の矩形波を入力したときに一方の入力端子から他方の入力端子に流れてしまう電流が、入力端子に接続された外部素子に流れ込み、素子を破壊したりする虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、高耐圧な増幅装置における、入力差動電圧の耐圧範囲を広くする差動入力保護回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の差動入力保護回路は、第1入力端子及び第2入力端子を有する保護対象の差動増幅回路に入力される差動電圧の値を制限する電圧制限回路と、第1外部入力端子に第1端子が接続され、前記第1入力端子に第2端子が接続された第1高耐圧ディプレッショントランジスタと、第2外部入力端子に第1端子が接続され、前記第2入力端子に第2端子が接続された第2高耐圧ディプレッショントランジスタと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
【
図2】
図2は、電圧制限回路の一例の概要構成図である。
【
図4】
図4は、増幅回路の入力差動対の一例の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路において、電圧制限回路を他の構成とした場合の概要説明図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路において、電圧制限回路をさらに他の構成とした場合の概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に実施形態について、図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
第1実施形態の差動入力増幅回路10は、第1外部入力端子Tinpと、第2外部入力端子Tinnと、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pと、高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pと、電圧制限回路P1と、増幅回路A1と、出力端子Toutと、を備えている。
【0011】
上記構成において、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pのドレイン端子は第1外部入力端子Tinpに接続され、ソース端子は、ゲート端子及び増幅回路A1の非反転入力端子TP(=第1入力端子に相当)に接続されている。
高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのドレイン端子は第2外部入力端子Tinnに接続され、ソース端子は、ゲート端子及び増幅回路A1の反転入力端子TN(=第2入力端子に相当)に接続されている。
【0012】
電圧制限回路P1は、一方の端子が高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pのソース端子に接続され、他方の端子が高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのソース端子に接続されている。
【0013】
第1実施形態においては、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2PとしてPMOSディプレッショントランジスタを使用している。
【0014】
ここで、電圧制限回路P1の構成例について説明する。
図2は、電圧制限回路の一例の概要構成図である。
電圧制限回路P1は、保護ダイオードD11と、保護ダイオードD12と、を備えている。
【0015】
保護ダイオードD11と、保護ダイオードD12とは、双方向となるように並列接続されて、ダイオードリミッタ回路として構成されており、入力端子間の電圧を所定電圧範囲内に保つように動作する。
【0016】
ここで、第1実施形態の動作説明に先立ち、従来の問題点について説明する。
図3は、従来の問題点の説明図である。
図4は、増幅回路の入力差動対の一例の説明図である。
【0017】
従来の差動入力増幅回路10Pは、
図3(A)に示すように、第1外部入力端子Tinpと、第2外部入力端子Tinnと、電圧制限回路P1と、増幅回路A1と、出力端子Toutと、を備えている。
【0018】
この場合において、増幅回路A1の入力差動対は、
図4に示すように、非反転入力端子TPにゲート端子が接続された高耐圧ディプレッショントランジスタM11Pと、反転入力端子TNにゲート端子が接続された高耐圧ディプレッショントランジスタM12Pと、一端が高耐圧ディプレッショントランジスタM11Pのソース端子及び高耐圧ディプレッショントランジスタM12Pのソース端子に接続され、他端が高電位側電源VDDに接続された定電流源CS1と、を備えている。
【0019】
上記構成において、差動入力電圧が大きくなると電圧制限回路P1の回路内部の保護ダイオードD11、D12(
図3(A)参照)によって電圧が制限され、
図3(B)に示すように、代わりに電流IEが何れか一方の入力端子から何れか他方の入力端子に流れるような動作をする。
【0020】
すなわち、
図3(B)の場合には、第1外部入力端子Tinpの電圧が第2外部入力端子Tinnの電圧よりも高い場合であり、電流IEは、一方の入力端子である第1外部入力端子Tinpから他方の入力端子である第2外部入力端子Tinnに流れることとなる。
【0021】
しかし、差動入力電圧が更に大きくなると、この電流IEの電流値が大きくなってしまい電圧制限回路P1を破壊したり、電圧制限回路P1の破壊により増幅回路A1の内部回路を破壊したり、第1外部入力端子Tinpまたは第2外部入力端子Tinnに接続された外部素子に流れ込み素子を破壊したりする不具合が生じることとなっていた。
【0022】
次に第1実施形態の動作を説明する。
差動入力電圧が所定の閾値電圧(=電圧制限回路P1の動作開始電圧、第1の閾値電圧に相当)よりも低い通常時においては、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pは両方とも抵抗値の小さな抵抗素子(入力抵抗素子)として動作することとなる。
【0023】
この場合においては、電圧制限回路P1は動作することなく、第1外部入力端子Tinpの電圧及び第2外部入力端子Tinnの電圧が増幅回路A1に印加されて、通常通り、差動増幅が行われることとなる。
【0024】
これに対し、差動入力電圧が所定の閾値電圧よりも大きくなり、例えば、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P側の入力端子の電圧が高く、高耐圧ディプレッショントランジスタM2P側の入力端子の電圧が低くなったとき、高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pは、高抵抗な電流源として動作し、入力電流を制限することとなる。
【0025】
一方、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pは低抵抗値の抵抗素子として動作するため、増幅回路A1の入力同相電圧は、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P側の入力端子の電圧に近づくこととなる。
【0026】
したがって、第1外部入力端子Tinpと第2外部入力端子Tinnとの間、すなわち、差動入力端子間に流れる電流は制限され、増幅回路A1を含む回路全体を保護することが可能となる。
ひいては、高耐圧な増幅回路(増幅装置)における、入力差動電圧の耐圧範囲を広くする差動入力保護回路を提供することができる。
【0027】
この場合において、高耐圧とは、例えば、電源電圧が入力端子に印加された場合でも耐えることができるという意味である。
また、増幅回路とは、例えば、センサ信号等を増幅する増幅回路、計装アンプ等の増幅装置である。
【0028】
なお、
図1の第1実施形態において、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート端子は、それぞれのソース端子と接続する構成としたが、ゲート端子へ印加する電圧は、通常時に高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pが抵抗値の小さな抵抗素子として動作し、差動入力電圧が大きくなった場合に、電圧が高くなった側の高耐圧ディプレッショントランジスタが低抵抗値の抵抗素子として動作し、電圧が低くなった側の耐圧ディプレッショントランジスタは、高抵抗な電流源として動作するように構成すればよい。
【0029】
[1.1]第1実施形態の第1変形例
図5は、第1実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
【0030】
図5の第1実施形態の第1変形例の差動入力増幅回路10Aにおいて、
図1の第1実施形態と異なる点は、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pに代えて、NMOSディプレッショントランジスタである高耐圧ディプレッショントランジスタM1N及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Nを用いている点である。
本第1実施形態の第1変形例の動作は、原理的には、第1実施形態と同様である。
【0031】
すなわち、差動入力電圧が所定の閾値電圧(=電圧制限回路P1の動作開始電圧)よりも低い通常時においては、高耐圧ディプレッショントランジスタM1N及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Nは両方とも抵抗値の小さな抵抗素子(入力抵抗素子)として動作し、電圧制限回路P1は動作することなく、第1外部入力端子Tinpの電圧及び第2外部入力端子Tinnの電圧が増幅回路A1に印加されて、通常通り、差動増幅が行われることとなる。
【0032】
これに対し、差動入力電圧が所定の閾値電圧よりも大きくなり、高耐圧ディプレッショントランジスタM1N及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Nの何れか一方に対応する入力端子の電圧が高く、何れか他方に対応する入力端子の電圧が低くなった場合には、電圧が高くなった側の高耐圧ディプレッショントランジスタは、低抵抗値の抵抗素子として動作する。
【0033】
一方、電圧が低くなった側の耐圧ディプレッショントランジスタは、高抵抗な電流源として動作し、入力電流を制限することとなる。
このため、増幅回路A1の入力同相電圧は、入力端子の電圧画高い側の高耐圧ディプレッショントランジスタは対応する入力端子の電圧に近づくこととなる。
【0034】
したがって、第1外部入力端子Tinpと第2外部入力端子Tinnとの間、すなわち、差動入力端子間に流れる電流は制限され、増幅回路A1を含む回路全体を保護することが可能となる。
ひいては、高耐圧な増幅回路(増幅装置)における、入力差動電圧の耐圧範囲を広くする差動入力保護回路を提供することができる。
【0035】
[2]第2実施形態
図6は、第2実施形態の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
図6において、
図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0036】
図6の第2実施形態の差動入力増幅回路10Bが
図1の第1実施形態と異なる点は、同相電圧バッファ回路CMA1を備え、この同相電圧バッファ回路CMA1によって、増幅回路A1の入力同相電圧を検出し、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのバルク端子に出力する構成を採っている点である。
【0037】
この構成によれば、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのバルク端子-基板間の寄生ダイオードを入力端子から分離することができるため、入力端子に流れる寄生ダイオードのリーク電流を低減し、入力バイアス電流を低減することができる。
【0038】
次に第2実施形態の動作を説明する。
図7は、第2実施形態の動作説明図である。
差動入力増幅回路10Bにおいて、差動入力電圧が所定の閾値電圧(=電圧制限回路P1の動作開始電圧)よりも低い通常時においては、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pは両方とも抵抗値の小さな抵抗素子(入力抵抗素子)として動作することとなる。
【0039】
この場合においては、電圧制限回路P1は動作することなく、第1外部入力端子Tinpの電圧及び第2外部入力端子Tinnの電圧が増幅回路A1に印加されて、通常通り、差動増幅が行われることとなる。
【0040】
これに対し、差動入力電圧が大きくなり、例えば、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P側の入力端子の電圧が高く、高耐圧ディプレッショントランジスタM2P側の入力端子の電圧が低くなったとき、高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pは、高抵抗な電流源として動作し、入力電流を制限することとなる。
【0041】
一方、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pは低抵抗値の抵抗素子として動作するため、増幅回路A1の入力同相電圧は、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P側の入力端子の電圧に近づくこととなり、同相電圧バッファ回路CMA1の出力もこの電圧変動に追従する。
【0042】
このとき、
図7に示す様に、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pには寄生ダイオードD1Pが存在し、寄生ダイオードD1Pには順電圧が印加されているが、同相電圧バッファ回路CMA1の出力電圧の変動により、寄生ダイオードD1Pのアノード-カソード間の電圧が小さくなるため、大きな電流が寄生ダイオードD1Pを介して流れ込むことはない。
【0043】
したがって、第1外部入力端子Tinpと第2外部入力端子Tinnとの間、すなわち、差動入力端子間に流れる電流は制限され、増幅回路A1を含む回路全体を保護することが可能となる。
【0044】
ひいては、高耐圧な増幅回路(増幅装置)における、入力差動電圧の耐圧範囲を広くする差動入力保護回路を提供することができる。
【0045】
[2.1]第2実施形態の第1変形例
図8は、第2実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路の概要説明図である。
図8において、
図7と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0046】
第2実施形態の第1変形例の差動入力増幅回路10Cが、
図7の第2実施形態と異なる点は、同相電圧バッファ回路CMA1に代えて、同相電圧バッファ回路CMA2及びレベルシフタSFTを備え、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート端子に同相電圧バッファ回路CMA2の出力をレベルシフタSFTによりレベルシフトした電圧を印加している点である。
【0047】
この構成によれば、差動入力電圧が所定の閾値電圧(=電圧制限回路P1の動作開始電圧)よりも低い通常時に高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのオン抵抗を小さくすることができる。
したがって、低消費電力あるいは高精度信号処理を行うための回路に用いる差動入力増幅回路を構成することができる。
【0048】
[3]電圧制限回路の他の構成例
図9は、第2実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路において、電圧制限回路P1を他の構成とした場合の概要説明図である。
【0049】
図9において、
図8と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
図9に示す差動入力増幅回路10Dが、
図8の第2実施形態の第1変形例と異なる点は、電圧制限回路P1Aとして、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-ソース間電圧が急激に変化した場合に、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pのゲート-ソース間電圧の変化を吸収する第1保護ダイオードD31と、高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-ソース間電圧の変化を吸収する第2保護ダイオードD32と、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-接地間電圧の変化を吸収する第3保護ダイオードD33を備えた点である。
【0050】
第1保護ダイオードD31~第3保護ダイオードD33を設けることにより、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-ソース間電圧並びに高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-接地間電圧の変動を相対的に相殺して、第1外部入力端子Tinpと第2外部入力端子Tinnとの間、すなわち、差動入力端子間に流れる電流は制限され、増幅回路A1を含む回路全体を保護することが可能となる。
【0051】
ひいては、高耐圧な増幅回路(増幅装置)における、入力差動電圧の耐圧範囲を広くする差動入力保護回路を提供することができる。
【0052】
[3.1]電圧制限回路のさらに他の構成例
図10は、第2実施形態の第1変形例の差動入力回路を有する差動入力増幅回路において、電圧制限回路P1をさらに他の構成とした場合の概要説明図である。
【0053】
図10において、
図9と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
図10に示す差動入力増幅回路10Eが、
図9の差動入力増幅回路10Dと異なる点は、電圧制限回路P1Bとして電圧制限回路P1Aに備える保護ダイオードに加えて、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-ソース間電圧が急激に変化した場合に、高耐圧ディプレッショントランジスタM1Pのゲート-ソース間電圧の変化を吸収する第4保護ダイオードD41と、高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-ソース間電圧の変化を吸収する第5保護ダイオードD42と、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-高電位側電源VDD間の電圧の変化を吸収する第6保護ダイオードD43を備えた点である。
また、第2のレベルシフタSFT1を備え、第4保護ダイオードD41のカソード端子、第5保護ダイオードD42のカソード端子及び第6ダイオードのアノード端子に同相電圧バッファ回路CMA2の出力を第2のレベルシフタSFTによりレベルシフトした電圧を印加している点である。
【0054】
この構成によれば、差動入力電圧が所定の閾値電圧(=電圧制限回路P1の動作開始電圧)よりも低い通常時に高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pのゲート-ソース間の電圧が急激に変化しようとした場合に、ゲート-ソース間電圧の変化を抑制して、高耐圧ディプレッショントランジスタM1P及び高耐圧ディプレッショントランジスタM2Pを保護することができるとともに、入力差動電圧値を制限することができる。
【0055】
さらに、保護ダイオードD31、D32、D33、D41のリーク電流値が近い値となるように設計することによって、リーク電流を相殺し、第1外部入力端子Tinp及び第2外部入力端子Tinnに流れこむ入力バイアス電流を低減することができる。
【0056】
したがって、差動電圧の変動の影響を抑制して、第1外部入力端子Tinpと第2外部入力端子Tinnとの間、すなわち、差動入力端子間に流れる電流は制限され、増幅回路A1を含む回路全体を保護することが可能となる。
ひいては、高耐圧な増幅回路(増幅装置)における、入力差動電圧の耐圧範囲を広くする差動入力保護回路を提供することができる。
【0057】
[4]実施形態の効果
以上の説明のように、上記各実施形態によれば、高耐圧で入力バイアス電流が少なく、入力バイアス電流の電圧依存性が低減される。
【0058】
また、差動増幅器の差動入力端子に使用時に差動入力での耐圧が高いESD保護回路を実現可能で、例えばセンサ信号等を増幅する増幅回路、計装アンプ等の増幅装置に有用である。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10、10A~10E 差動入力増幅回路
D11 保護ダイオード
D12 保護ダイオード
D31 第1保護ダイオード
D32 第2保護ダイオード
D33 第3保護ダイオード
D41 第4保護ダイオード
D42 第5保護ダイオード
D43 第6保護ダイオード
IE 電流
M1N 高耐圧ディプレッショントランジスタ(NMOSトランジスタ)
M2N 高耐圧ディプレッショントランジスタ(NMOSトランジスタ)
M1P 高耐圧ディプレッショントランジスタ(PMOSトランジスタ)
M2P 高耐圧ディプレッショントランジスタ(PMOSトランジスタ)
SFT レベルシフタ
SFT1 第2のレベルシフタ
TN 反転入力端子(第2入力端子)
TP 非反転入力端子(第1入力端子)
Tinn 第2外部入力端子
Tinp 第1外部入力端子
Tout 出力端子
VDD 高電位側電源
VSS 低電位側電源