(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150241
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】回転速センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 3/487 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G01P3/487 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063559
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
(57)【要約】
【課題】回転速センサの検出精度が確保しつつ、エアギャップの範囲を大きくする。
【解決手段】一実施形態である回転速センサRSS1は、磁気検出素子21,22を有するセンサ部品20と、センサ部品20の下面20b側に配置される磁石10と、センサ部品20の下面20bと磁石10との間に配置され、磁性体材料からなる磁性板30と、を備える。磁性板30には、センサ部品20、磁性板30、及び磁石10の配列方向である第1方向AR1に貫通する開口部30Hが形成される。開口部30Hの壁面34は、径が一定の内壁33、及び、内壁33よりもセンサ部品20側に設けられ、径が変化する縁部31を有する。縁部31は、第1方向AR1に沿って下面20bから離間するほど、開口部30Hの中心に接近する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、前記第1面の反対側の第2面、前記第1面と前記第2面との間に配置される第1磁気検出素子、及び前記第1面と前記第2面との間に前記第1磁気検出素子と離間して配置される第2磁気検出素子、を有するセンサ部品と、
前記センサ部品の前記第2面側に配置される磁石と、
前記センサ部品の前記第2面と前記磁石との間に配置される磁性板と、を備え、
前記磁性板には、前記センサ部品、前記磁性板、及び前記磁石の配列方向である第1方向に沿って貫通する開口部が形成され、
前記開口部の壁面は、径が一定の内壁、及び、前記内壁よりも前記センサ部品側に形成され、径が変化する縁部を有し、
前記縁部は、前記第1方向に沿って前記第2面から離間するほど、前記開口部の中心に接近する、回転速センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転速センサにおいて、
前記縁部は、前記センサ部品と対向する面における前記開口部の端部と、前記縁部と前記内壁とが接続する接続部と、を連結する面であり、
前記開口部の端部の径は、前記接続部の径よりも大きい、回転速センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転速センサにおいて、
前記第2面側における前記磁性板の外縁部は、前記第1方向に沿って前記第2面から離間するほど、前記開口部の中心から離間する、回転速センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転速センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転速センサは、例えば、車輪の回転速度を検出する目的で車両に搭載される。このような目的で車両に搭載される回転速センサは、一般的に「車輪速センサ」と呼ばれる。車輪速センサとしての回転速センサは、車両のブロックを防止するアンチロックブレーキシステム(ABSシステム)や、車輪のスリップを防止するトラクションコントロールシステム等の構成要素の1つとして車両に搭載される。
【0003】
特許文献1には、車輪と共に回転する歯車の回転による磁界の変動を検知する回転速センサが記載されている。この回転速センサでは、磁気検出素子を用いて、被計測物である歯車等が回転することによる磁界の変動が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気検出素子を利用した回転速センサの場合、被計測物と回転速センサとの離間距離(エアギャップと呼ぶ)を小さくすることにより、回転速センサの磁気検出素子に検出される磁束密度が大きくなる。この結果、回転速センサの計測精度を向上させることができる。しかし、回転速センサの取り付け作業の容易性、回転速センサの設計の自由度等を考慮すると、エアギャップは大きい方が好ましい。
【0006】
特許文献1の回転速センサでは、磁気検出素子と磁石との間に開口部を有する磁性板が配置されることにより、回転速センサの計測精度を確保しつつ、エアギャップを大きくしている。しかしながら、回転速センサの計測精度が確保された状態で、エアギャップをさらに大きくすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態による回転速センサは、第1面、前記第1面の反対側の第2面、前記第1面と前記第2面との間に配置される第1磁気検出素子、及び前記第1面と前記第2面との間に前記第1磁気検出素子と離間して配置される第2磁気検出素子、を有するセンサ部品と、前記センサ部品の前記第2面側に配置される磁石と、前記センサ部品の前記第2面と前記磁石との間に配置される磁性板と、を備える。前記磁性板には、前記センサ部品、前記磁性板、及び前記磁石の配列方向である第1方向に沿って貫通する開口部が形成される。前記開口部の壁面は、径が一定の内壁、及び、前記内壁よりも前記センサ部品側に設けられ、径が変化する縁部を有する。前記開口部の縁部は、前記第1方向に沿って前記第2面から離間するほど、前記開口部の中心に接近する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転速センサの検出精度が確保されるエアギャップの範囲を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の回転速センサの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示されるA-A線における回転速センサの断面図である。
【
図3】センサヘッドに内蔵される磁石、センサ部品、磁性板及びケーブルの外観図である。
【
図4】
図3に示されるB-B線における断面図である。
【
図5】
図4に示されるC-C線における断面図である。
【
図6】
図5に示されるセンサ部品周辺に形成される磁束線を模式的に示す図である。
【
図7】比較例における回線速センサの断面図である。
【
図8】実施の形態の回転速センサと比較例の回転速センサとの検出精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<全体構成>
図1は、実施の形態の回転速センサRSS1の構成を模式的に示す図である。
図2は、
図1のA-A線における回転速センサRSS1の断面図である。本実施の形態の回転速センサRSS1は、センサヘッド2,ケーブル3及びコネクタ4を備える。センサヘッド2は、不図示の車輪と一緒に回転する歯車5の近傍に配置される。センサヘッド2は、歯車5との位置関係が所定の位置関係となるように、車体(ハブ,ナックル,サスペンション等)に固定される。本実施の形態では、センサヘッド2は、センサヘッド2のセンサ保持部2Sと歯車5の外周(複数の歯5Tが配置される部分)とが互いに対向するように固定されている。歯車5は磁性体からなり、不図示の車輪の回転に応じて、回転軸5rを中心に回転する。
【0012】
<センサヘッド2>
センサヘッド2は、フランジ部2Fと、フランジ部2Fの一側に設けられたセンサ保持部2Sと、フランジ部2Fの他側に設けられたケーブル保持部2Cと、を含んでいる。これらフランジ部2F、センサ保持部2S及びケーブル保持部2Cは、樹脂によって一体成形されている。フランジ部2F、センサ保持部2S及びケーブル保持部2Cのそれぞれは、射出成形された樹脂成形体の一部である。
【0013】
センサヘッド2内には、磁石10、センサ部品20、磁性板30及びケーブル3の一部が内蔵されている。歯車5が回転すると、センサヘッド2内の磁石10から歯車5に向かう磁界の向き(ベクトル)や分布が変化する。センサ部品20は、磁石10から歯車5に向かう磁界を検出し、その磁界の大きさに応じた電気信号を出力する磁気センサ用ICである。以下で説明する「エアギャップG1」とは、回転速センサRSS1と歯車5との最短距離として定義される。本実施の形態の場合、センサヘッド2に内蔵されるセンサ部品20と歯車5との間には、センサ保持部2Sの筐体の一部が介在するので、エアギャップG1は、センサ保持部2Sの筐体と、歯車5との最短距離として定義される。
【0014】
尚、磁石10、センサ部品20及び磁性板30の詳細については、説明を後述する。
【0015】
<センサ部品20の周辺構造>
図3は、センサヘッド2に内蔵される磁石10、センサ部品20、磁性板30及びケーブル3の外観図である。
図4は、
図3に示されるB-B線における断面図である。
図5は、
図4に示されるC-C線における断面図である。尚、
図5には、磁石10、センサ部品20及び磁性板30に加えて歯車5が示される。
【0016】
磁石10、センサ部品20及び磁性板30は、センサヘッド2のセンサ保持部2S内に固定されている。本実施の形態では、歯車5に近い側から順に、センサ部品20、磁性板30、磁石10が配置されている。尚、以下の説明においては、上記のセンサ部品20、磁性板30及び磁石10が配列された配列方向を第1方向AR1と呼ぶことがある。また、
図1から
図5において矢印で示される第1方向AR1の基端側を上方、先端側を下方と呼ぶことがある。また、第1方向AR1をZ方向とし、Z方向と直交し
図2に示される歯車5の回転軸5rに沿う方向をY方向とし、Y方向及びZ方向と直交する方向をX方向とする直交座標系を用いて説明することがある。
【0017】
<ケーブル3>
センサヘッド2とコネクタ4とは、ケーブル3を介して接続されている。ケーブル3は、複数本の芯線50を含む多芯ケーブルである。より具体的には、ケーブル3は、詳細を後述するセンサ部品20に配置された磁気検出素子21とリード線24を介して接続される芯線50と、磁気検出素子22と他のリード線24を介して接続される他の芯線50と、を含む多芯ケーブルである。
【0018】
それぞれの芯線50は、絶縁体55によって被覆されている。さらに、絶縁体55によって被覆されているそれぞれの芯線50は、互いに撚り合わされた状態でシース56によって一括被覆されている。つまり、ケーブル3は、撚り合わされた2本の絶縁電線と、それら2本の絶縁電線を一括被覆して一本に纏めるシース56と、を有する2芯ケーブルである。
【0019】
尚、本実施形態における芯線50は、錫を含有する複数本の銅合金線からなる撚り線である。また、絶縁体55は架橋ポリエチレンによって形成されており、シース56は熱可塑性ウレタンによって形成されている。もっとも、芯線50,絶縁体55及びシース56の材料が上記材料に限定されないことは勿論である。
【0020】
センサヘッド2に内蔵されているセンサ部品20から出力された電気信号は、ケーブル3を介してコネクタ4に伝送され、コネクタ4の接続先に入力される。コネクタ4は、例えばABSシステムの制御部や制御装置、ABSシステムを含む各種システムを統括的に制御する制御部や制御装置等に接続される。
【0021】
<磁石10>
磁石10は、N極に着磁された磁極部10nと、S極に着磁された磁極部10sとを有する。磁石10は、センサ部品20に対して下方側、すなわちセンサ部品20の下面20b側に配置される。磁石10のようにN極とS極とを有する一つの磁石の場合、N極からS極に向かって磁石10の周囲に複数の磁束線が形成される。
【0022】
<センサ部品20>
センサ部品20は、歯車5と対向する上方側の面(上面)20t及び上面20tの反対側の下方側の面(下面)20bを有する封止体23と、磁気検出素子(第1磁気検出素子)21と、磁気検出素子(第2磁気検出素子)22とを有する。磁気検出素子21,22は、第1面である上面20tと第2面である下面20bとの間に配置される。すなわち、磁気検出素子21,22は、封止体23内に封止されている。磁気検出素子21,22は、互いに離間して配置される。磁気検出素子21,22は、封止体23の内部において、リード線24と電気的に接続されている。複数のリード線24のそれぞれは、一部が封止体23の内部に封止され、他の部分は封止体23の外部に延びている。
【0023】
磁気検出素子21,22には、ホール効果を利用して磁束密度を計測するホール素子や、磁気抵抗効果を利用して磁界(磁束や磁束密度)の大きさを計測する磁気抵抗効果素子(MR(Magneto Resistive effect)素子)を用いることができる。本実施の形態における磁気検出素子21,22のそれぞれは、巨大磁気抵抗効果素子(GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子)である。尚、磁気検出素子21,22は、異方性磁気抵抗効果素子(AMR(Anisotropic Magneto Resistive effect)素子)や、トンネル磁気抵抗効果素子(TMR(Tunnel Magneto Resistance effect)素子)であってもよい。磁気検出素子21,22は、X方向に沿って配列される。
【0024】
本実施の形態のように、磁石10と歯車5との間にセンサ部品20が配置される回転速センサRSS1の場合、センサ部品20の背面側(下面20b側)から磁力が印加される。このような磁力の印加方式をバックバイアス方式と呼ぶ。回転速センサRSS1の他の例として、回転体自身に磁石を設ける方式もある。例えば、マグネットエンコーダの外周にN極とS極とが交互に配列され、そのマグネットエンコーダと対向する位置にセンサ部品が配置される。この場合、車輪の回転に伴ってマグネットエンコーダが回転すると、マグネットエンコーダが備える磁極の位置が変化するので、センサ部品の周辺の磁界が変動する。
【0025】
磁気検出素子21,22を有するセンサ部品20は、水平方向(X方向とY方向とを含むXY平面に沿った方向)の磁界を検出する。磁気検出素子21,22は、検出した磁界の大きさに応じた電気抵抗を示す。このため、磁気検出素子21,22の周囲の磁界が変化すれば、磁気検出素子21,22によって示される抵抗値が変化する。磁気検出素子21,22の抵抗値の変化に応じて出力された信号は、上述したリード線24を介してセンサ部品20の外部に出力される。上述したように、磁気検出素子21,22から出力された信号は、リード線24を有するケーブル3を介してコネクタ4に伝達され、コネクタ4の接続先に入力される。
【0026】
本実施の形態のバックバイアス方式の場合、磁石10から歯車5に向かって延びる磁束線が磁石10と歯車5との間に配置された磁気検出素子21,22を貫く程度が変化することにより、回転体の速度や回転方向が検出される。この場合、センサ部品20により磁気の検出精度を向上させようとすれば、エアギャップG1は小さくなる傾向がある。エアギャップG1、すなわち歯車5とセンサ保持部2Sとのクリアランスが小さくなると、歯車5の近傍にセンサヘッド2を固定する必要が生じる。この場合、センサヘッド2自身、あるいはセンサヘッド2の近くに固定される部品を取り付ける際の作業が煩雑になる。また、センサ部品20の設計の自由度を考慮すると、エアギャップG1は大きい方が好ましい。エアギャップG1は、寸法のばらつき、振動による振れ幅等を考慮して必要な値が設定される。
【0027】
<磁性板30>
磁性板30は、例えば金属材料等の磁性体材料からなる。本実施の形態の場合、磁性板30は、ステンレス鋼(SUS430)からなる。磁性板30は、磁石10と歯車5との間、より詳細には、磁石10とセンサ部品20との間に配置される。磁性板30は、板状の部材であり、センサ部品20の下面20bと対向する上面30tと、上面30tの反対側に位置し、磁石10と対向する下面30bとを有する。磁性板30は、上面30tと下面30bとを第1方向AR1に沿って貫通する開口部30Hを有する。開口部30Hは、XY平面上において、例えば、第1方向AR1に沿った中心軸C1を中心とする円形状に形成される。磁性板30及び開口部30Hは、板状の材料部材をプレス成形することにより形成される。
【0028】
永久磁石の近傍に磁性体が配置されている場合、永久磁石のN極から延びる磁束線は、磁性体の方向に向かって延び、磁性体を貫く。上述したように、磁石10のN極からS極に向かって、磁石10の周囲に複数の磁束線が形成される。したがって、センサ部品20と磁石10との間に磁性板30を配置することで、磁石10の磁極部10nからセンサ部品20に向かう磁界の磁束密度を増大させることができる。
【0029】
開口部30Hは、センサ部品20、磁性板30、及び磁石10の配列方向であるZ方向(第1方向AR1)に見た場合において、磁気検出素子21の中心と磁気検出素子22の中心とを結んだ線分と重なる位置に形成される。これにより、磁性板30に開口部30Hが形成されない場合と比較して、開口部30H内において磁界の向きがZ方向へ矯正され難くなる。すなわち、開口部30Hにおいて、歯車5の回転に対応して、Z方向と交差するX方向の磁界の成分が増大する。磁気検出素子21,22の近傍で、X方向の磁界の成分が増大すると、磁気検出素子21,22を貫く磁界の磁束密度を増大させることができる。
【0030】
上述したように、磁性板30と開口部30Hとは材料部材をプレス成形することにより形成される。このため、磁性板30の上面30tと下面30bとのうちの一方の面の外縁部にはダレが生じ、他方の面の外縁部にはバリが生じる。同様に、開口部30Hの上面30tと下面30bとのうちの一方の面の縁部にはダレが生じ、他方の面の縁部にはバリが生じる。本実施の形態では、磁性板30の外縁部及び開口部30Hの縁部にダレが生じている側の面がセンサ部品20の下面20bと対向し、磁性板30の外縁部及び開口部30Hの縁部にバリが生じている側の面を磁石10と対向した状態で磁性板30が配置される。すなわち、磁性板30の上面30tの外縁部32及び開口部30Hの縁部31にダレが生じ、磁性板30の下面30bの外縁部及び開口部30Hの縁部にバリが生じている。
【0031】
上面30tにおける開口部30Hの縁部31は、上述したダレが生じているため、Z方向と平行な平面における断面がR形状の面となる。具体的には、開口部30Hの壁面34は、径が変化する縁部31と、径が一定の内壁33とを有する。縁部31は、内壁33と接続し、内壁33よりもセンサ部品20側(上方側)に設けられる。縁部31は、開口部30Hの端部31Aと、開口部30Hの接続部31Bとを連結する面である。端部31Aは、センサ部品20と対向する上面30tにおける開口部30Hの開口端部である。また、接続部31Bにおいて、縁部31と内壁33とが接続している。
【0032】
縁部31は、第1方向AR1に沿ってセンサ部品20の下面20bから離間するほど、開口部30Hの中心である中心軸C1に向けて接近する形状を有する。より特定的には、端部31Aの径D1は、接続部31Bの径D2よりも大きい。
【0033】
上面30tにおける外縁部32も、上述したダレが生じているため、Z方向と平行な平面における断面がR形状の面となる。具体的には、外縁部32は、第1方向AR1に沿ってセンサ部品20の下面20bから離間するほど、開口部30Hの中心から離間する形状を有する。
【0034】
図6は、磁石10から磁性板30を介してセンサ部品20を貫く磁束線を模式的に示す図である。
図6では、磁束線が二点鎖線にて示される。複数の磁束線のうちの一部は、磁性板30の内側の側面から開口部30Hに向かって延びている。また、縁部31及び外縁部32がZ方向と平行な平面上でR形状の断面を有しているため、磁束線の一部は、このR形状の断面を介して磁気検出素子21,22の方向に向かって延びる。この場合、開口部30Hと磁気検出素子21,22との位置関係を調整することにより、磁気検出素子21,22の近傍の磁束密度を大きくすることができる。この結果、エアギャップG1を小さくしなくても、磁気検出素子21,22の検出精度を向上させることが可能となる。換言すると、磁気検出素子21,22による検出精度を確保した状態で、エアギャップG1の範囲を大きくすることができる。
【0035】
図7は、比較例としての回転速センサRSS1Aにおける磁石10、センサ部品20及び磁性板30の断面図である。この比較例では、磁性板30の縁部31及び外縁部32にダレが生じた面が磁石10と対向し、磁性板30の縁部及び外縁部にバリが生じた面がセンサ部品20と対向している。すなわち、上述した実施の形態における磁性板30の上面30tと下面30bとが反転した状態で磁性板30が配置されている。その他の構成は実施の形態の回転速センサRSS1と同様である。
【0036】
図8は、上述した実施の形態の回転速センサRSS1及び比較例の回転速センサRSS1Aの検出精度を計測した結果の一例を示す図である。
図8においては、歯車5と磁気検出素子21,22の上方側の面までの距離(クリスタルギャップ)を異ならせた場合ごとの回転速センサRSS1,RSS1Aの出力のばらつき程度(Duty比)が示されている。
図8に示されるグラフL1は実施の形態の回転速センサRSS1の出力のばらつき程度であり、グラフL2は比較例の回転速センサRSS1Aの出力のばらつき程度である。
図8においては、縦軸がDuty比の値([±%])を示し、横軸がクリスタルギャップの値([mm])を示す。尚、計測には、48個の歯5Tを有する歯車5が用いられている。回転速センサRSS1,RSS1Aから出力が得られる状態とは、歯車5の回転に応じて、歯車5が有する48個の歯5Tのそれぞれに対応した波形(パルス波形)、すなわち48個の波形が得られる状態のことである。
【0037】
図8に示されるように、比較例の回転速センサRSS1AのDuty比は、±2パーセントから±27パーセントの範囲となっている。そして、クリスタルギャップが2.3mmよりも大きくなると、回転速センサRSS1Aによる出力が得られなくなる。すなわち、回転速センサRSS1Aから出力される波形の個数が48個に満たなくなる。
【0038】
これに対して、実施の形態の回転速センサRSS1のDuty比は、±2パーセントから±10パーセントの範囲となっている。そして、クリスタルギャップが3.8mmの場合であっても、回転速センサRSS1のDuty比が上記の範囲に収まっている。すなわち、比較例の回転速センサRSS1Aでは出力が得られないクリスタルギャップが2.3mmよりも大きい場合でも、回転速センサRSS1による出力が得られる。
【0039】
これにより、実施の形態の回転速センサRSS1は、比較例の回転速センサRSS1Aよりもクリスタルギャップを増大させてエアギャップG1の範囲を大きくした場合であっても、出力のばらつき程度を抑制した状態で出力を得ることができる。換言すると、実施の形態の回転速センサRSS1では、磁気検出素子21,22による検出精度を確保するとともに、出力を得ることが可能なエアギャップG1の範囲を大きくすることができる。
【0040】
以上で説明した実施の形態によれば、以下の作用効果の少なくとも一つが得られる。
【0041】
(1)センサ部品20の第2面である下面20b側における磁性板30の開口部30Hの縁部31は、第1方向AR1に沿って下面20bから離間するほど、開口部30Hの中心である中心軸C1に向けて接近する。これにより、磁石10の周囲に形成される磁束線の一部は、縁部31を介して磁気検出素子21,22に向かって延び、磁気検出素子21,22の近傍の磁束密度が大きくなる。この結果、エアギャップG1を小さくしなくても、磁気検出素子21,22の検出精度を向上させることができる。換言すると、磁気検出素子21,22による検出精度を確保しつつ、回転速センサRSS1の出力を得ることが可能なエアギャップG1の範囲を大きくすることができ、回転速センサRSS1の取り付け作業の容易性及び設計の自由度の向上に寄与する。
【0042】
(2)縁部31は、上面30tにおける開口部30Hの端部31Aと、内壁33と接続する位置における接続部31Bとを連結する面である。端部31Aの径D1は、接続部31Bの径D2よりも大きい。これにより、Z方向と平行な平面上でR形状の断面を有する縁部31を形成することが可能となる。
【0043】
(3)センサ部品20の下面20b側における磁性板30の外縁部32は、第1方向AR1に沿って下面20bから離間するほど、開口部30Hの中心である中心軸C1から離間する。これにより、磁気検出素子21,22の近傍の磁束密度が大きくなるので、エアギャップG1を小さくしなくても、磁気検出素子21,22の検出精度を向上させることができる。従って、磁気検出素子21,22による検出精度を確保しつつ、回転速センサRSS1の出力を得ることが可能なエアギャップG1の範囲を大きくすることができ、回転速センサRSS1の取り付け作業の容易性及び設計の自由度の向上に寄与する。
【0044】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
実施の形態においては、縁部31及び外縁部32は、Z方向と平行な平面上でR形状の断面を有していたが、この例に限定されない。少なくとも開口部30Hの縁部31がZ方向と平行な平面上でR形状の断面を有していればよい。すなわち、縁部31が、センサ部品20の下面20bから離間するほど中心軸C1に接近していればよい。これにより、実施の形態により得られる作用効果(1)及び(2)の少なくとも一方と同様の作用効果が得られる。
【0046】
また、磁性板30をプレス成形によって形成するものに代えて、鋳造等により形成されてもよい。この場合、磁性板30の縁部31及び外縁部32のうち少なくとも縁部31が、センサ部品20の下面20bから離間するほど中心軸C1に接近する形状を有するように鋳型が製作される。これにより、実施の形態により得られる作用効果(1),(2)及び(3)の少なくとも一つと同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
2 センサヘッド、2C ケーブル保持部、2F フランジ部、2S センサ保持部、3 ケーブル、4 コネクタ、5 歯車、5r 回転軸、5T 歯、10 磁石、10n,10s 磁極部、20 センサ部品、20b 下面(第2面)、20t 上面(第1面)、21 磁気検出素子(第1磁気検出素子)、22 磁気検出素子(第2磁気検出素子)、23 封止体、24 リード線、25 コンデンサ、30 磁性板、30b 下面、30t 上面、30H 開口部、31 縁部、31A 端部、31B 接続部、32 外縁部、33 内壁、34 壁面、50 芯線、55 絶縁体、56 シース、AR1 第1方向、C1 中心軸、D1,D2 径、G1 エアギャップ、RSS1,RSS1A 回転速センサ