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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150253
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241016BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241016BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241016BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B24B41/06 L
B24B57/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063577
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 研二
(72)【発明者】
【氏名】國分 光胤
(72)【発明者】
【氏名】寺本 政由志
(72)【発明者】
【氏名】國本 公一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034DD10
3C043BA03
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C047FF04
3C047GG00
5F057AA05
5F057BA15
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC15
5F057FA42
(57)【要約】
【課題】ウェーハの被研削面へのスクラッチの形成を抑制し、該ウェーハの分割によって得られるチップの抗折強度の低下を防ぐことができるウェーハの研削方法を提供すること。
【解決手段】表面にデバイスDが形成されたウェーハWの裏面を研削砥石25b,35bで研削するウェーハWの研削方法は、ウェーハWの表面全面を保護テープ(保護部材)Tで覆う保護部材形成工程と、該保護テープTを介してチャックテーブル10にウェーハWを保持させる保持工程と、界面活性剤を含む研削水を研削砥石25b,35,とウェーハWとに供給し,該研削砥石25b,35bでウェーハWの裏面を研削する研削工程(粗研削工程と仕上げ研削工程)とを経てウェーハWの裏面を研削する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイスが形成されたウェーハの裏面を研削砥石で研削するウェーハの研削方法であって、
ウェーハの表面全面を保護部材で覆う保護部材形成工程と、
該保護部材を介してチャックテーブルに該ウェーハを保持させる保持工程と、
界面活性剤を含む研削水を該研削砥石と該ウェーハとに供給し該研削砥石で該ウェーハの裏面を研削する研削工程と、
からなる、ウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウェーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パーソナルコンピュータ(パソコン)やスマートフォン(スマホ)などの各種電子機器に対して小型・薄型化が要求されていることから、これらの電子機器に用いられている半導体デバイスも小型・薄型化される傾向にある。すなわち、半導体デバイスの製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に配列されたストリートと称される分割予定ラインによって多数の矩形領域に区画されており、各矩形領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。このように多数のデバイスが形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って切断することによって、複数の半導体チップが形成されている。
【0003】
そして、個々の半導体チップの小型化と薄型化を図るため、通常、ウェーハを分割予定ラインに沿って切断する前に該ウェーハの裏面(デバイスが形成された面とは反対側の面)が研削されている。このウェーハの研削は、高速回転する研削砥石をウェーハの裏面に押し当てることによってなされるが、この研削時には、ウェーハと研削砥石との接触領域(研削領域)に研削水が供給され、この研削水によって接触領域(研削領域)を冷却するとともに、研削屑を除去している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-141176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウェーハの研削によって発生する研削屑には、研削砥石から脱落した砥粒が含まれており、この脱落した砥粒が研削中のウェーハの被研削面(裏面)と研削砥石の下面(研削面)との間に侵入した場合、ウェーハの被研削面に、研削砥石によって形成される研削痕よりも深い傷であるスクラッチが形成されることがある。そして、このスクラッチは、研削後にウェーハを分割して得られるチップの抗折強度を低下させる原因となる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ウェーハの被研削面へのスクラッチの形成を抑制し、該ウェーハの分割によって得られるチップの抗折強度の低下を防ぐことができるウェーハの研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、表面にデバイスが形成されたウェーハの裏面を研削砥石で研削するウェーハの研削方法であって、ウェーハの表面全面を保護部材で覆う保護部材形成工程と、該保護部材を介してチャックテーブルに該ウェーハを保持させる保持工程と、界面活性剤を含む研削水を該研削砥石と該ウェーハとに供給し該研削砥石で該ウェーハの裏面を研削する研削工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保持工程において保護部材を介してチャックテーブルに保持されたウェーハの裏面を研削工程において研削する際、界面活性剤を含む研削水を研削砥石とウェーハとに供給するようにしたため、研削加工中に研削砥石から脱落した砥粒が界面活性剤の作用によって研削水から分離除去される。このため、研削砥石の下面(研削面)とウェーハの裏面(被研削面)との間への砥粒の侵入が防がれ、砥粒によるウェーハの裏面へのスクラッチの形成が抑制される。この結果、研削されたウェーハを分割して得られるチップの抗折強度の低下が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るウェーハの研削方法を実施するための研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】ウェーハの斜視図である。
図3】本発明に係るウェーハの研削方法における保護部材形成工程を示す図であって、(a)はウェーハと保護テープの分解斜視図、(b)は保護テープが貼着されたウェーハの斜視図である。
図4】本発明に係るウェーハの研削方法の保持工程と研削工程(粗研削工程)を示す部分側断面図である。
図5】本発明に係るウェーハの研削方法の研削工程(粗研削工程)におけるウェーハと研削砥石との関係を示す平面図である。
図6】本発明に係るウェーハの研削方法の研削工程(粗研削工程)を示す部分斜視図である。
図7】本発明に係るウェーハの研削方法の保持工程と研削工程(仕上げ研削工程)を示す部分側断面図である。
図8】本発明に係るウェーハの研削方法の研削工程(仕上げ研削工程)におけるウェーハと研削砥石との関係を示す平面図である。
図9】本発明に係るウェーハの研削方法の研削工程(仕上げ研削工程)を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
[研削装置の構成]
まず、本発明に係る研削方法を実施するための研削装置の構成を図1に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0012】
図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハW(図2及び図3参照)を研削する装置であって、回転可能な円盤状のターンテーブル2上に配置された3つのチャックテーブル10と、チャックテーブル10上に保持されたウェーハWを研削する研削ユニットである粗研削ユニット20及び仕上げ研削ユニット30と、チャックテーブル10に保持されたウェーハWの研削領域に研削水を供給する研削水供給ユニット40を主要な構成要素として備えている。ここで、ウェーハWは、図2に示すように、その表面(図2においては、上面)が格子状に配列された互いに直交するストリートと称される分割予定ラインL1,L2によって多数の矩形領域に区画されており、各矩形領域にはICやLSIなどのデバイスDがそれぞれ形成されている。そして、このように多数のデバイスDが形成されたウェーハWの表面には、デバイスDを保護するための保護テープTが貼着されており、ウェーハWを分割予定ラインL1,L2に沿って切削することによって複数の半導体チップが得られる。
【0013】
なお、研削装置1には、その他の構成要素として、研削加工中のウェーハWの厚みを測定する厚み測定器51,52と、研削加工されたウェーハWを洗浄する洗浄ユニット50と、研削加工前の複数のウェーハWを収納するカセット81と、研削加工後のウェーハWを収納するカセット82と、カセット81から取り出したウェーハWを位置合わせする位置合わせテーブル83と、カセット81,82に対してウェーハWを出し入れするとともに、カセット81から取り出したウェーハWを位置合わせテーブル83へと搬送する搬出入ロボット84と、位置合わせテーブル83において位置合わせされたウェーハWをウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段85と、仕上げ研削領域R3において仕上げ研削されたウェーハWをチャックテーブル10から取り外して洗浄ユニット50へと搬送する第2搬送手段90などが備えられているが、これらについての詳細な説明は省略する。
【0014】
ここで、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30及び研削水供給ユニット40の構成についてそれぞれ説明する。
【0015】
(チャックテーブル)
3つのチャックテーブル10は、円板状の部材であって、Z軸方向に垂直な中心軸回りに間欠的に回転するターンテーブル2上に周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。そして、これらのチャックテーブル10は、ターンテーブル2の間欠的な回転によって該ターンテーブル2のZ軸方向に垂直な軸中心回りに角度120°ずつ公転してウェーハ搬出入領域R1と粗研削領域R2及び仕上げ研削領域R3の間を順次移動するとともに、不図示の回転機構によって軸中心回りに所定の速度で回転(自転)することができる。
【0016】
ここで、各チャックテーブル10は、図4に示すように、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが中央部にそれぞれ組み込まれており、各ポーラス部材10Aの上面は、円板状のウェーハWを吸引保持する保持面10aを構成している。そして、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、後述するように、真空ポンプなどの吸引源11(図4参照)に選択的に接続される。
【0017】
(粗研削ユニットと仕上げ研削ユニット)
本実施形態に係る研削装置1は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30を備えており、これらの粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース200の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に並設される状態で垂直に配置されている。ここで、粗研削ユニット20は、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面(図4においては、上面)を粗研削するユニットであり、仕上げ研削ユニット30は、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面(図7においては、上面)を仕上げ研削するユニットであって、両者の基本構成は同じである。
【0018】
すなわち、粗研削ユニット20は、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動されるスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石25bによって構成されている。
【0019】
また、仕上げ研削ユニット30も粗研削ユニット20と同様に、ホルダ31に固定されたスピンドルモータ32と、該スピンドルモータ32によって回転駆動されるスピンドル33と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35とを備えている。ここで、研削ホイール35は、円板状の基台35aと、該基台35aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石35bによって構成されているが、これらの研削砥石35bは、粗研削ユニット20の研削砥石25bよりも細かい砥粒によって構成されている。
【0020】
ところで、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、ベース200の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って垂直に立設された一対のブロック状のコラム101の各-Y軸方向端面(前面)にそれぞれ設けられた昇降機構3によって昇降可能に支持されている。ここで、両昇降機構3の構成は同じであるため、以下、対応する構成要素には同一符号を付して説明する。
【0021】
各昇降機構3は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をそれぞれ独立にZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板4と、該昇降板4の昇降動をガイドするためのガイドレール5をそれぞれ備えている。ここで、各昇降板4には、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30がそれぞれ取り付けられている。また、ガイドレール5は、コラム101の前面に垂直に配設されている。
【0022】
そして、各ガイドレール5の横には、回転可能なボールネジ6がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ6の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ7に連結されている。また、ボールネジ6の下端は、不図示の軸受によってコラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ6には、昇降板4の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0023】
したがって、以上のように構成された各昇降機構3のサーボモータ7を起動して各ボールネジ6を正逆転させると、各ボールネジ6に螺合する不図示のナット部材が突設された各昇降板4がガイドレール5に沿って昇降するため、該昇降板4に取り付けられた粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30もそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って互いに独立して昇降動する。
【0024】
(研削水供給ユニット)
研削水供給ユニット40は、図1に示すように、研削加工中に粗研削ユニット20の研削砥石25bとウェーハWとの接触領域(研削領域)に界面活性剤を含んだ研削水を供給するものであって、研削水供給源41を備えている。ここで、研削水供給源41には、純水供給源43と界面活性剤供給源44が接続されており、純水供給源43から研削水供給源41へと供給される純水に界面活性剤供給源44から供給される界面活性剤が研削水供給源41に混合されることによって、研削水供給源41において界面活性剤を含む研削水が生成される。なお、本実施形態においては、研削水に含まれる界面活性剤の濃度は、0.1%程度の設定されている。
【0025】
上記研削水供給源41からは配管42が延びており、この配管42からは2つの分岐管42a,42bが分岐している。そして、各分岐管42a,42bは、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各スピンドルモータ22,32の軸中心部に形成された不図示の供給路にそれぞれ接続されており、これらの分岐管42a,42bの途中には、開閉弁V1,V2がそれぞれ設けられている。なお、図示しないが、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各スピンドルモータ22,32の軸中心部に形成された不図示の供給路は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各スピンドル23,33とマウント24,34及び研削ホイール25,35に形成された不図示の供給路に連通しており、開閉弁V1,V2の開閉を切り替えることによって、界面活性剤を含む研削水が研削加工中の粗研削ユニット20または仕上げ研削ユニット30の研削砥石25b,35bとウェーハWとの接触領域(研削領域)に選択的に供給される。
【0026】
[ウェーハの研削方法]
次に、以上のように構成された研削装置1において実施される本発明に係るウェーハWの研削方法について説明する。
【0027】
本発明に係るウェーハWの研削方法は、
1) 保護部材形成工程
2) 保持工程
3) 研削工程
を経てウェーハWの裏面を研削する方法である。以下、各工程についてそれぞれ説明する。
【0028】
1) 保護部材形成工程:
保護部材形成工程は、図3(a),(b)に示すように、ウェーハWの表面(図3においては、下面)に保護部材である保護テープTを貼着する工程である。すなわち、図3(a)に示すように、複数のデバイスDが形成されたウェーハWの表面(図3(a)においては、上面)に薄い円形の保護テープTを貼着すれば、図3(b)に示すように、ウェーハWの表面(図3(b)においては、下面)に形成された複数のデバイスD(図3(a)参照)が保護テープTによって保護される。
【0029】
2) 保持工程:
保持工程は、前記保護部材形成工程によって表面に保護テープTが貼着されたウェーハWを、図4に示すように、保護テープTを下にしてチャックテーブル10の保持面10aに保持させる工程であり、この保持工程においては、チャックテーブル10のポーラス部材10Aが図4に示す吸引源11に接続される。すると、吸引源11によってポーラス部材10Aが真空引きされて該ポーラス部材10Aに負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWが図4に示すようにチャックテーブル10の保持面10aに保護テープTと共に吸引保持される。
【0030】
3) 研削工程:
研削工程は、図4図6に示すように、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面(図4においては、上面)を粗研削する粗研削工程と、図7図9に示すように、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面(図7においては、上面)を仕上げ研削する仕上げ研削工程が含まれ、以下、これらの粗研削工程と仕上げ研削工程について説明する。
【0031】
3-1)粗研削工程:
粗研削工程は、前述のように、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面を粗研削する工程であるが、図4に示すように、チャックテーブル10の保持面10aは、中心を頂点として径方向外方に向かって下方に傾斜する円錐面として構成されており、チャックテーブル10は、中心を通る垂直な軸心を中心として図示矢印方向に回転駆動される。これに対して、粗研削ユニット20のスピンドル23と研削ホイール25は、チャックテーブル10の保持面10a(半径エリア)と平行になるように不図示の傾き調整機構によって傾きが調整され、図1に示すスピンドルモータ22によって図示矢印方向に回転駆動される。
【0032】
而して、粗研削ユニット20によってウェーハWの裏面(図4においては、上面)を粗研削するには、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの中心に研削砥石25bの外接円が通るように位置決めされる。
【0033】
上記状態から、図1に示す昇降機構3によって研削砥石25bが-Z軸方向に下降すると、該研削砥石25bの下面(研削面)がウェーハWの裏面(上面)に接触しながら回転するため、該ウェーハWの裏面(上面)が粗研削される。ここで、研削砥石25bの回転軌跡を図5においてC1にて示すが、この研削砥石25bは、ウェーハWの裏面に図5に示す円弧状の領域S1において接触して該ウェーハWの裏面(上面)を全面に亘って粗研削する。そして、研削砥石25bによるウェーハWの裏面(上面)が粗研削されると、図6に示すように、ウェーハWの裏面(上面)には、該ウェーハWの中心から周縁部に向かう円弧状の複数の研削痕r1が放射状に形成される。
【0034】
而して、ウェーハWの粗研削時には、図1に示す研削水供給ユニット40の研削水供給源41から界面活性剤を含んだ研削水が粗研削ユニット20の研削砥石25bとウェーハWとの接触領域(研削領域)S1(図5参照)に供給される。すなわち、一方の開閉弁V2が閉じられた状態で、他方の開閉弁V1か開かれると、界面活性剤を含んだ研削水が研削水供給源41から配管42と分岐管42a及び粗研削ユニット20のスピンドルモータ22やスピンドル23などの軸中心に形成された不図示の供給路を通って研削砥石25bとウェーハWとの接触領域(研削領域)S1に供給され、該接触領域(研削領域)S1の冷却と洗浄に供される。なお、研削水に含まれる界面活性剤の濃度は、0.1%に限らず、0.01%~0.2%の範囲において任意である。なお、粗研削の場合には、研削砥石25bの砥粒の大きさに比例して排出される研削屑が大きくウェーハWに付着しにくいため、界面活性剤の濃度は、0.01%にしてもよい。
【0035】
また、粗研削ユニット20の研削砥石25bによるウェーハWの粗研削加工中においては、ウェーハWの厚みが図1に示す厚み測定器51によって測定され、この厚み測定器51によって測定されるウェーハWの厚みが目標とする厚みに達するまでウェーハWの粗研削が継続される。そして、ウェーハWの研削量が所定値に達したために粗研削が終了すると、図1に示すターンテーブル2が矢印方向に角度120°だけ回転するため、チャックテーブル10も同角度だけ公転して粗研削領域R2から仕上げ研削領域R3へと移動する。そして、この仕上げ研削領域R3へと移動したチャックテーブル10に保持されたウェーハWの裏面(上面)が仕上げ研削ユニット30によって粗研削と同様になされる。
【0036】
3-2)仕上げ研削工程:
仕上げ研削工程は、前述のように、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面を仕上げ研削する工程であるが、図7に示すように、チャックテーブル10の保持面10aは、中心を通る垂直な軸心を中心として図示矢印方向に回転駆動される。これに対して、粗研削ユニット20のスピンドル23と研削ホイール35は、チャックテーブル10の保持面10a(半径エリア)と平行になるように不図示の傾き調整機構によって傾きが調整され、図1に示すスピンドルモータ32によって図示矢印方向に回転駆動される。
【0037】
而して、仕上げ研削ユニット30によってウェーハWの裏面(図7においては、上面)を仕上げ研削するには、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの中心に研削砥石35bの外接円が通るように位置決めされる。
【0038】
上記状態から、図1に示す昇降機構3によって研削砥石35bが-Z軸方向に下降すると、該研削砥石35bの下面(研削面)がウェーハWの裏面(上面)に接触しながら回転するため、該ウェーハWの裏面(上面)が仕上げ研削される。ここで、研削砥石35bの回転軌跡を図8においてC2にて示すが、この研削砥石35bは、ウェーハWの裏面に図8に示す円弧状の領域S2において接触して該ウェーハWの裏面(上面)を全面に亘って仕上げ研削する。そして、研削砥石35bによるウェーハWの裏面(上面)が仕上げ研削されると、図9に示すように、ウェーハWの裏面(上面)には、粗研削工程においてウェーハWの裏面(上面)に形成された研削痕r1(6参照)とは向きが反対の円弧状の複数の研削痕r2が形成される。つまり、粗研削によって形成された研削痕r1に交差すると仕上げ研削が開始されることによって研削痕r1に交差する研削痕r2が形成され、ウェーハWの裏面(上面)が研削痕r2のみ形成された状態になって仕上げ研削を完了させる。
【0039】
而して、ウェーハWの仕上げ研削時には、図1に示す研削水供給ユニット40の研削水供給源41から界面活性剤を含んだ研削水が仕上げ研削ユニット30の研削砥石35bとウェーハWとの接触領域(研削領域)S2(図8参照)に供給される。すなわち、一方の開閉弁V1が閉じられた状態で、他方の開閉弁V2か開かれると、界面活性剤を含んだ研削水が研削水供給源41から配管42と分岐管42b及び仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ32やスピンドル33などの軸中心に形成された不図示の供給路を通って研削砥石35bとウェーハWとの接触領域(研削領域)S2に供給され、該接触領域(研削領域)S2の冷却と洗浄に供される。なお、仕上げ研削においても、研削水に含まれる界面活性剤の濃度は、0.1%に設定されているが、研削水に含まれる界面活性剤の濃度は、0.1%に限らず0.01%~0.2%の範囲において任意である。なお、仕上げ研削の場合には、研削砥石35bの砥粒の大きさが粗研削に使用される研削砥石25bの砥粒よりも小さいので、その研削砥石35bの砥粒の大きさに比例して排出される研削屑は小さくウェーハWに付着しやすいため、界面活性剤の濃度は、0.2%にしてもよい。
【0040】
また、仕上げ研削ユニット30の研削砥石35bによるウェーハWの仕上げ研削加工中においては、ウェーハWの厚みが図1に示す厚み測定器52によって測定され、この厚み測定器52によって測定されるウェーハWの厚みが目標とする厚みに達するまでウェーハWの仕上げ研削が継続される。そして、ウェーハWの研削量が所定値に達したために仕上げ研削が終了すると、図1に示すターンテーブル2が矢印方向に角度120°だけ回転するため、チャックテーブル10も同角度だけ公転して仕上げ研削領域R3からウェーハ搬出入領域R1へと移動する。そして、このウェーハ搬出入領域R1へと移動したチャックテーブル10に保持されたウェーハWが第2搬送手段90によって保持されて図1に示す洗浄ユニット50へと搬送される。
【0041】
洗浄ユニット50へと搬送されたウェーハWは、洗浄ユニット50のスピンナテーブル53上に保持されて該スピンナテーブル53と共に回転するとともに、洗浄水噴射ノズル54からの洗浄水の噴射によって被研削面(上面)が洗浄される。そして、被研削面が洗浄されたウェーハWは、搬出入ロボット84によって保持されてカセット82へと搬送され、該カセット82内に収納されることによって、ウェーハWに対する一連の研削加工が終了する。
【0042】
以上のように、本発明に係るウェーハWの研削方法においては、保持工程において保護テープTを介してチャックテーブル10に保持されたウェーハWの裏面を研削工程(粗研削工程と仕上げ研削工程)において研削する際、界面活性剤を含んだ研削水を研削砥石25b,35bとウェーハWとの接触領域(研削領域)S1,S2(図5及び図8参照)に供給するようにしたため、研削加工中に研削砥石25b,35bから脱落した砥粒が界面活性剤の作用によって研削水から分離除去される。このため、研削砥石25b,35bの下面(研削面)とウェーハWの裏面(被研削面)との間への砥粒の侵入が防がれ、砥粒によるウェーハWの裏面へのスクラッチの形成が抑制される。この結果、研削されたウェーハWを分割して得られるチップの抗折強度の低下が防がれるという効果が得られる。また、研削後のウェーハWの裏面(被研削面)に研削屑(パーティクル)の付着を低減させることができる。これにより、チャックテーブル10に保持された状態でのウェーハWの洗浄を短時間に完了することができる。
【0043】
なお、以上の実施の形態に係る研削装置1においては、研削水を粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各軸中心からウェーハWに向けてそれぞれ供給する方式を採用したが、チャックテーブル10の側部に配置された洗浄水噴射ノズルからウェーハWに向けて研削水を側方から供給する方式を採用することもできる。ここで、洗浄水噴射ノズルは、研削ホイールの内側に配置され研削砥石の内側面に研削水を噴射する内部ノズル、または研削ホイールの外側に配置され研削砥石の外側面に研削水を噴射する外部ノズルであって、どちらか一方、または、両方を備えていてもよい。
【0044】
また、研削装置1は、粗研削ユニット20、仕上げ研削ユニット30のどちらか一方のみを備える構成でもよい。さらに、研削装置1は、研削ユニットとチャックテーブルとを各々一つ備える構成でもよい。
【0045】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1:研削装置、2:ターンテーブル、3:昇降機構、4:昇降板、5:ガイドレール、6:ボールネジ、7:サーボモータ、10:チャックテーブル、10A:ポーラス部材、10a:保持面、11:吸引源、20:粗研削ユニット、21:ホルダ、
22:スピンドルモータ、23:スピンドル、24:マウント、25:研削ホイール、
25a:基台、25b:研削砥石、30:仕上げ研削ユニット、31:ホルダ、
32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:マウント、35:研削ホイール、
35a:基台、35b:研削砥石、40:研削水供給ユニット、41:研削水供給源、
42:配管、42a,42b:分岐管、43:純水供給源、44:界面活性剤供給源、
50:洗浄ユニット、51,52:厚み測定器、53:スピンナテーブル、
54:洗浄水噴射ノズル、60:テープマウンタ、61:
81,82:カセット、83:位置合わせテーブル、84:搬出入ロボット、
85:第1搬送手段、90:第2搬送手段、100:ベース、101:コラム、
C1:粗研削時の研削砥石の回転軌跡、C2:仕上げ研削時の研削砥石の回転軌跡、
D:デバイス、L1,L2:分割予定ライン、R1:ウェーハ搬出入領域、
R2:粗研削領域、R3:仕上げ研削領域、r1:粗研削の研削痕、
r2:仕上げ研削時の研削痕、S1:粗研削時の研削砥石の接触領域、
S2:仕上げ研削時の研削砥石の接触領域、T:保護テープ(保護部材)、
V1,V2:開閉弁、W:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9