(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150272
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241016BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241016BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20241016BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20241016BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B27/06 J
B24B55/02 D
B24B49/12
B23Q17/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063611
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029CC01
3C029CC10
3C034AA07
3C034BB52
3C034BB73
3C034BB83
3C034BB93
3C034CA30
3C034CB02
3C034CB13
3C034CB20
3C034DD07
3C034DD10
3C034DD18
3C047FF06
3C047FF19
3C047GG07
3C158AA03
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3C158BA05
3C158CB03
3C158DA17
5F063AA28
5F063AA41
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5F063DE01
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5F063FF01
5F063FF22
5F063FF33
5F063FF42
5F063FF43
(57)【要約】
【課題】チップ飛びの原因分析や対策の検討を容易にすることができる被加工物の加工方法及び加工装置を提供する事。
【解決手段】被加工物を複数のチップに分割する被加工物の加工方法は、保持テーブルに保持された被加工物を分割し複数のチップを製造する分割ステップ1001と、分割ステップ1001の実施中または実施後に被加工物の画像を撮像する撮像ステップ1002と、画像から、チップ飛びの有無と、チップ飛びが生じた領域と、を検出する検出ステップ1003と、チップ飛びが検出された領域に基づいて、チップ飛びの原因または対策の少なくともいずれかを警告する警告ステップ1004と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を複数のチップに分割する被加工物の加工方法であって、
保持テーブルに保持された被加工物を分割し複数のチップを製造する分割ステップと、
該分割ステップの実施中または実施後に被加工物の画像を撮像する撮像ステップと、
該画像から、チップ飛びの有無と、チップ飛びが生じた領域と、を検出する検出ステップと、
チップ飛びが検出された領域に基づいて、チップ飛びの原因または対策の少なくともいずれかを警告する警告ステップと、
を備える被加工物の加工方法。
【請求項2】
該検出ステップにおいて、チップ飛びが同じ領域で任意の枚数以上検出された場合、
該警告ステップは、該保持テーブルの保持面への異物の付着を警告する事を特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該検出ステップにおいて、チップ飛びが同じ領域で任意の枚数以上検出された場合、
該警告ステップは、該保持テーブルの保持面の洗浄を提案する事を特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該分割ステップは、加工点に切削水を供給しながら切削ブレードで切削し、
該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、
該警告ステップは、該切削水の流量が多いと警告する請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項5】
該分割ステップは、加工点に切削水を供給しながら切削ブレードで切削し、
該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、
該警告ステップは、該切削水の流量の調整を提案する事を特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項6】
該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、
該警告ステップは、該分割ステップは、チップ飛びが発生する領域において、被加工物の外縁に至らない被加工物の外縁から所定距離内側に分割溝を形成する事を提案する請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項7】
該分割ステップは、切削ブレードで切削し、
該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、
該警告ステップは、該分割ステップは、チップ飛びが発生する領域において、切削ブレードと、被加工物とを相対的に分割予定ラインに沿って加工送りする加工送り速度を低速にする事を提案する請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項8】
被加工物を複数のチップに分割する被加工物の加工装置であって、
被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された被加工物を分割し複数のチップを製造する分割ユニットと、
該分割ユニットによって分割中または分割後の被加工物を撮像する撮像ユニットと、
制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該撮像ユニットが撮像した画像から画像処理によりチップ飛びの領域を検出する検出部と、
該検出部によって検出されたチップ飛びの領域に基づいて、チップ飛びの原因と対策との少なくともいずれかを警告する警告部と、
を備える加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を分割する被加工物の加工方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて形成された被加工物を、分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造する被加工物の加工方法や加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような被加工物の加工方法や加工装置において、被加工物の分割にともない、分割されたチップが飛んでいってしまう、所謂チップ飛びが発生する事がある。そこで、特許文献1の被加工物の加工方法や加工装置では、チップ飛びを検出するために、加工中または加工後に被加工物を撮像してチップ飛び領域を検出する技術が提案されている。しかしながら、チップ飛びの原因分析や、対策の検討は、作業者が実施する必要があるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、チップ飛びの原因分析や対策の検討を容易にすることができる被加工物の加工方法及び加工装置を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、被加工物を複数のチップに分割する被加工物の加工方法であって、保持テーブルに保持された被加工物を分割し複数のチップを製造する分割ステップと、該分割ステップの実施中または実施後に被加工物の画像を撮像する撮像ステップと、該画像から、チップ飛びの有無と、チップ飛びが生じた領域と、を検出する検出ステップと、チップ飛びが検出された領域に基づいて、チップ飛びの原因または対策の少なくともいずれかを警告する警告ステップと、を備えるものである。
【0007】
該検出ステップにおいて、チップ飛びが同じ領域で任意の枚数以上検出された場合、該警告ステップは、該保持テーブルの保持面への異物の付着を警告してもよい。
【0008】
該検出ステップにおいて、チップ飛びが同じ領域で任意の枚数以上検出された場合、該警告ステップは、該保持テーブルの保持面の洗浄を提案してもよい。
【0009】
該分割ステップは、加工点に切削水を供給しながら切削ブレードで切削し、該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、該警告ステップは、該切削水の流量が多いと警告してもよい。
【0010】
該分割ステップは、加工点に切削水を供給しながら切削ブレードで切削し、該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、該警告ステップは、該切削水の流量の調整を提案してもよい。
【0011】
該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、該警告ステップは、該分割ステップは、チップ飛びが発生する領域において、被加工物の外縁に至らない被加工物の外縁から所定距離内側に分割溝を形成する事を提案してもよい。
【0012】
該分割ステップは、切削ブレードで切削し、該検出ステップにおいて、被加工物の外縁においてチップ飛びが検出された場合、該警告ステップは、該分割ステップは、チップ飛びが発生する領域において、切削ブレードと、被加工物とを相対的に分割予定ラインに沿って加工送りする加工送り速度を低速にする事を提案してもよい。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、被加工物を複数のチップに分割する被加工物の加工装置であって、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を分割し複数のチップを製造する分割ユニットと、該分割ユニットによって分割中または分割後の被加工物を撮像する撮像ユニットと、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該撮像ユニットが撮像した画像から画像処理によりチップ飛びの領域を検出する検出部と、該検出部によって検出されたチップ飛びの領域に基づいて、チップ飛びの原因と対策との少なくともいずれかを警告する警告部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、推定されるチップ飛びの原因と、チップ飛びの対策との少なくともいずれかを判定し、警告するので、作業者がチップ飛びの原因分析や対策の検討を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る被加工物の加工方法を実施する実施形態に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る被加工物の加工方法及び
図1の加工装置の加工対象である被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の加工装置の分割ユニットの詳細を示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図1の加工装置の分割ユニットの動作処理の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の加工装置の分割ユニットの動作処理の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の加工装置の撮像ユニットが撮像する画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1の加工装置の撮像ユニットが撮像する画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1の加工装置の制御ユニットが記憶するデータベースの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る被加工物の加工方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る被加工物の加工方法を実施する実施形態に係る加工装置1の構成例を示す斜視図である。加工装置1は、
図1に示すように、保持テーブル10と、分割ユニット20と、撮像ユニット30と、X軸方向移動ユニット41と、Y軸方向移動ユニット42と、Z軸方向移動ユニット43と、搬送ユニット50と、カセット載置台55と、洗浄ユニット60と、報知ユニット70と、制御ユニット80と、を備える。
【0018】
図2は、実施形態に係る被加工物の加工方法及び
図1の加工装置1の加工対象である被加工物100の一例を示す斜視図である。被加工物100は、
図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウェーハなどのウエーハである。被加工物100は、平坦な表面101の互いに交差する複数の分割予定ライン102によって区画された領域にチップ状のデバイス103が形成されている。被加工物100は、分割ユニット20により分割予定ライン102に沿って分割することで、複数のデバイス103のチップを製造する。
【0019】
被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されている。すなわち、被加工物100は、環状フレーム106の開口に粘着テープ105を介して固定されている。なお、被加工物100は、粘着テープ105や環状フレーム106が装着されていなくてもよい。また、被加工物100は、本発明では、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でもよい。
【0020】
保持テーブル10は、
図1に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備える。保持テーブル10の吸着部は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル10の吸着部の上面は、被加工物100が載置されて、真空吸引源から導入される負圧により、載置された被加工物100を吸引保持する保持面11である。保持面11は、本実施形態では、被加工物100が表面101を上方に向けて載置され、載置された被加工物100を裏面104側から粘着テープ105を介して吸引保持する。保持面11と保持テーブル10の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面であるXY平面に平行に形成されている。保持テーブル10は、X軸方向移動ユニット41により水平方向と平行なX軸方向に移動自在に設けられている。保持テーブル10は、不図示の回転駆動源により、鉛直方向に平行でかつXY平面に直交するZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0021】
図3は、
図1の加工装置1の分割ユニット20の詳細を示す側面図である。分割ユニット20は、保持テーブル10に保持された被加工物100を分割する。分割ユニット20は、
図1及び
図3に示す本実施形態の例では、先端に切削ブレード21が回転可能に装着されるスピンドル22を備え、スピンドル22により回転動作が加えられた切削ブレード21で保持テーブル10に保持された被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削することで分割する切削ユニットである。分割ユニット20は、それぞれY軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43により、水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。加工装置1は、
図1に示すように、切削ユニットである分割ユニット20を2組備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの加工装置である。
【0022】
分割ユニット20は、
図3に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、マウント23と、ブレードカバー24と、切削水供給ノズル25と、を備える。切削ブレード21は、マウント23を介してスピンドル22の先端に装着され、回転軸となるスピンドル22により回転されることで保持テーブル10に保持された被加工物100を切削する。スピンドル22は、Y軸方向と平行な軸心周りに回転可能に設けられ、スピンドル22に連結された不図示のモータにより軸心回りに回転する。スピンドル22は、先端がマウント23に連結され、マウント23に切削ブレード21が装着される。スピンドル22は、このようにして、先端にマウント23を介して切削ブレード21が装着される。スピンドル22は、スピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転可能に支持する。マウント23は、スピンドル22に連結し、スピンドル22の先端において切削ブレード21を支持する。
【0023】
ブレードカバー24は、スピンドル22の先端を露出させ、かつ、先端を除く部分を収容するスピンドルハウジングの先端側に固定され、
図3に示すように、スピンドル22の先端に装着された切削ブレード21の上方、前方及び後方を覆う。切削水供給ノズル25は、ブレードカバー24に、下方に向けて設けられている。切削水供給ノズル25は、ブレードカバー24の内部に形成された複数の水路を介して不図示の切削水供給源が接続されており、切削水供給源から供給される切削水を、保持テーブル10に保持された被加工物100において回転中の切削ブレード21により切削加工されている領域である加工点(加工領域)に向けて供給する。切削水供給源が供給する切削水は、例えば純水またはCO
2や界面活性剤などが含まれる純水である。
【0024】
切削水供給ノズル25は、本実施形態では、第1ノズル25-1と、第2ノズル25-2と、を有する。第1ノズル25-1は、
図3に示すように、不図示の切削水供給源からブレードカバー24内に形成された水路を通して供給される切削水を切削ブレード21の切刃外周部の側方部分に供給するブレードクーラーノズルである。具体的には、第1ノズル25-1は、切削ブレード21の切刃外周部の側方部分のうち、被加工物100上の加工点の近くを通過している部分に、切削水を供給する。
【0025】
第2ノズル25-2は、不図示の切削水供給源からブレードカバー24内に形成された水路を通して供給される切削水を切削ブレード21の切刃外周部の前方部分に供給するシャワーノズルである。具体的には、第2ノズル25-2は、被加工物100上の加工点よりも切削ブレード21の回転方向の前方(手前)を通過している切削ブレード21の切刃外周部の部分に、切削水を供給する。
【0026】
分割ユニット20は、切削水供給ノズル25から加工点に切削水を供給しつつ、スピンドル22の回転動作によりスピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転しながら、X軸方向移動ユニット41により切削ブレード21を保持テーブル10上の被加工物100に対して相対的にX軸方向に沿って移動させることにより、切削ブレード21で被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削して分割溝を形成することで、被加工物100を分割予定ライン102に沿って分割する。
【0027】
図4及び
図5は、いずれも、
図1の加工装置1の分割ユニット20の動作処理の一例を示す断面図である。分割ユニット20は、制御ユニット80により特定の分割条件(切削条件)の設定がなされていない場合、
図4に示すように、切削ブレード21により、被加工物100の一方の外縁から切削を開始し、分割予定ライン102に沿って切削し、被加工物100の他方の外縁まで切削して分割溝を形成する切削処理を実施する。
【0028】
分割ユニット20は、制御ユニット80により被加工物100の特定の外縁を含む領域の切削を回避するように外周まで分割しないカットを採用する旨の設定がなされた場合、
図5に示すように、切削ブレード21を回転させながら、被加工物100の真上から切削ブレード21を下げることで、被加工物100の切削を開始する位置に向けて切り込み送り方向に沿って下降させ、切削ブレード21で被加工物100を表面101側から所定量だけ切り込む。その後、切削ブレード21を被加工物100に対して相対的に加工送り方向に沿って移動させることにより、切削を開始する位置から切削を終了する位置までの間にわたって被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削し、その後切削を終了する位置において切削ブレード21を切り込み送り方向に沿って上昇させる。なお、加工送り方向は、本実施形態では、X軸方向に平行であり、切削する分割予定ライン102に沿う方向に設定される。分割ユニット20は、
図5に示す本実施形態の例では、切削を開始する位置側では、被加工物100の外縁において切削ブレード21を切り込み深さまで下降させた後に、切削ブレード21を被加工物100に対して相対的に加工送り方向に沿って移動させ、その後切削を終了する位置側で被加工物100の外縁の切削を回避し、被加工物100の外縁に至らない被加工物100の外縁から所定距離内側に分割溝を形成する。
【0029】
ここで、所定距離は、デバイス103のチップの分割を妨げない十分な短さ、かつ、分割ユニット20による分割処理(本実施形態では切削加工処理)以外の加工装置1による種々の処理中に発生する外力、例えば搬送中等の振動や洗浄中の回転動作等により、分割溝が被加工物100の外縁まで伸展しない十分な長さである。
【0030】
分割ユニット20は、
図5に示す本実施形態の外周まで分割しないカットの例では、切削を開始する位置側では被加工物100の外縁を切削し、切削を終了する位置側で被加工物100の外縁の切削を回避して未分割領域を残存させているが、本発明ではこれに限定されず、切削を開始する位置側のみで被加工物100の外縁の切削を回避して未分割領域を残存させてもよいし、切削を開始する位置側と切削を終了する位置側との両方で被加工物100の外縁の切削を回避して未分割領域を残存させてもよい。
【0031】
分割ユニット20は、本発明ではこのような切削ユニットに限定されず、被加工物100にレーザビームを照射するレーザビーム照射器を備え、レーザビーム照射器により被加工物100に対して吸収性を有する波長のレーザビームを、保持テーブル10に保持された被加工物100の分割予定ライン102に沿って照射して、被加工物100を表面101側からアブレーション(昇華もしくは蒸発)させるいわゆるアブレーション加工を実施することにより、保持テーブル10に保持された被加工物100を分割予定ライン102に沿って分割するレーザ加工ユニットであってもよい。また、分割ユニット20は、被加工物100に対して透過性を有する波長のレーザビームを、被加工物100の分割予定ライン102に沿って照射して、改質層と改質層から被加工物100の表裏面に向かって伸びるクラックとを形成して、クラックによって被加工物100を分割して複数のチップを製造してもよい。ここで、改質層は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0032】
また、分割ユニット20は、研削砥石が配置された研削ホイールが回転可能に装着されるスピンドルを備え、分割予定ライン102に沿って改質層等の分割起点または分割溝が形成された被加工物100の裏面104を研削砥石で研削加工することにより、保持テーブル10に保持された被加工物100を分割予定ライン102に沿って分割して複数のチップを製造する研削ユニットでもよい。また、分割ユニット20は、研磨パッドが回転可能に装着されるスピンドルを備え、分割予定ライン102に沿って改質層等の分割起点または分割溝が形成された被加工物100の裏面104を研磨パッドで研磨加工することにより、保持テーブル10に保持された被加工物100を分割予定ライン102に沿って分割して複数のチップを製造する研磨ユニットでもよい。改質層は、研削加工または研磨加工することにより、研削加工に伴う衝撃によって改質層を分割起点として亀裂が伸展して、被加工物100が改質層に沿って分割される。また、分割溝は、被加工物100を完全に分割しない深さのハーフカット溝である。このため、分割溝は、裏面104側から分割溝の底面に到達するまで研削加工することにより、被加工物100が分割溝に沿って分割される。
【0033】
撮像ユニット30は、被加工物100を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、分割ユニット20によって分割中または分割後の被加工物100を撮像して、当該被加工物100の画像を取得する。撮像ユニット30は、被加工物100の表面101の全体を1枚の画像で撮像可能な撮像視野を有するか、もしくは、被加工物100と撮像ユニット30とが相対的に移動して表面101の全面を走査することにより被加工物100の表面101の全体を撮像することができる。撮像ユニット30は、撮像した画像を制御ユニット80に出力する。撮像ユニット30は、被加工物100の表面101を1枚の画像で撮像してもよいし、複数の画像で撮像して制御ユニット80が合体させて1枚の画像として出力しても良い。撮像ユニット30は、本実施形態では、撮像ユニット30-1と、撮像ユニット30-2と、を有する。
【0034】
撮像ユニット30-1は、保持テーブル10に保持された被加工物100を撮像する。撮像ユニット30-1は、保持テーブル10に保持された被加工物100の表面101を撮像して、被加工物100と分割ユニット20との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を取得する。また、撮像ユニット30-1は、保持テーブル10に保持された被加工物100の表面101を撮像して、被加工物100に対する加工が正常な範囲内で実行されたか否かを自動的に確認するチェックを遂行するための画像を取得する。撮像ユニット30-1は、本実施形態では、分割ユニット20に隣接して固定されており、分割ユニット20と一体的に移動する。
【0035】
撮像ユニット30-2は、本実施形態では、水平方向と平行なX軸方向に沿って、撮像素子を一列または複数列に配列させたラインセンサを搭載したラインカメラである。撮像ユニット30-2は、洗浄ユニット60のスピンナテーブル61上から一対のレール51上への被加工物100の搬送路の上方に配置されており、洗浄ユニット60のスピンナテーブル61上から一対のレール51上へ搬送中の被加工物100を撮像する。もしくは、撮像ユニット30-2は、一対のレール51上からカセット載置台55に載置されたカセット56内への被加工物100の搬送路の上方に配置されており、一対のレール51上からカセット載置台55に載置されたカセット56内へ搬送中の被加工物100を撮像する。なお、撮像ユニット30-2は、被加工物100を搬送する搬送アーム52に設置されており、搬送アーム52で洗浄ユニット60のスピンナテーブル61上もしくは一対のレール51上の被加工物100上を走査することにより、被加工物100を撮像してもよい。
【0036】
図6及び
図7は、いずれも、
図1の加工装置1の撮像ユニット30が撮像する画像の一例を示す図である。撮像ユニット30は、分割ユニット20による分割処理後の被加工物100を表面101側から撮像して、
図6及び
図7に示すような被加工物100の画像201,202,203,204を取得する。撮像ユニット30は、画像201,202,203,204において、粘着テープ105の粘着面を、所定の閾値以上の輝度値を有する画素で表示し、被加工物100のデバイス103の表面101を、所定の閾値未満の輝度値を有する画素で表示する。このため、画像201,202,203,204は、分割予定ライン102に沿って切削して切削溝を形成した領域と、被加工物100の分割に伴い分割されたデバイス103のチップが飛んでいってしまう所謂チップ飛びが発生した領域とを、所定の閾値以上の輝度値を有する画素で表示し、チップ飛びが発生しなかったデバイス103のチップの領域を所定の閾値未満の輝度値を有する画素で表示する。
図6に示す画像201,202は、チップ飛びが被加工物100の外縁を除く互いに同じ領域で発生した場合の被加工物100の画像であり、
図7に示す画像203,204は、チップ飛びが被加工物100の外縁で発生した場合の被加工物100の画像である。
【0037】
ここで、粘着テープ105の粘着面を撮像した際に得られる輝度値と、被加工物100のデバイス103の表面101を撮像した際に得られる輝度値とは、十分な差を有する。このため、所定の閾値は、粘着テープ105の粘着面を撮像した際に得られる輝度値よりも十分に小さく、被加工物100のデバイス103の表面101を撮像した際に得られる輝度値よりも十分に大きい輝度値を作業者が予め設定し、制御ユニット80に登録しておくことができる。なお、これらの輝度値が十分な差を有さない場合は、制御ユニット80が画像処理を行い、デバイス103の表面101と粘着テープ105の粘着面と、を識別可能にしても良い。
【0038】
なお、画像201,202,203,204における輝度は、本実施形態では、複数段階の階調、例えば256階調で規定され、0から255までの整数値で表され、最も暗いときを値が最小の0で表され、最も明るいときを値が最大の255で表され、明るくなるにつれて大きい値で表される。
【0039】
X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、それぞれ、保持テーブル10と、分割ユニット20と、を相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット41は、本実施形態では、X軸方向に沿って、保持テーブル10を分割ユニット20に対して相対的に移動させる。Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、本実施形態では、それぞれY軸方向及びZ軸方向に沿って、分割ユニット20を保持テーブル10に対して相対的に移動させる。X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、いずれも、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。
【0040】
搬送ユニット50は、本実施形態では、例えば、一対のレール51と、搬送アーム52,53と、を備える。一対のレール51は、互いに平行な状態を維持しながら接近または離隔でき、一対のレール51間で、環状フレーム106を介して被加工物100を保持できる。搬送アーム52は、被加工物100に装着された環状フレーム106を側方から把持することで、上方から撮像ユニット30-2により撮像可能に被加工物100を間接的に把持する把持部を有し、カセット載置台55に載置されたカセット56内と一対のレール51上との間、及び、洗浄ユニット60のスピンナテーブル61上と一対のレール51上との間で、被加工物100を搬送する。搬送アーム53は、被加工物100に装着された環状フレーム106を上方から吸着保持ことで、上方から被加工物100を間接的に保持する吸着保持部を有し、保持テーブル10上と一対のレール51上との間、及び、保持テーブル10上と洗浄ユニット60のスピンナテーブル61上との間で、被加工物100を搬送する。カセット載置台55は、複数の被加工物100を収容するための収容器であるカセット56を載置する載置台であり、載置されたカセット56をZ軸方向に昇降させる。
【0041】
洗浄ユニット60は、スピンナテーブル61を備える。スピンナテーブル61は、保持テーブル10と同様の構成を有し、被加工物100が表面101を上方に向けて載置され、載置された被加工物100を裏面104側から粘着テープ105を介して吸引保持する。洗浄ユニット60は、スピンナテーブル61で保持した被加工物100を洗浄し、例えば分割ユニット20によって分割するための加工が実施された際に発生して被加工物100に付着した加工屑等のコンタミネーションを除去する。
【0042】
報知ユニット70は、
図1に示す本実施形態の例では、表示ユニット71と、発光ユニット72と、を有する。表示ユニット71は、加工装置1の不図示のカバーに、表示面側を外側に向けて設けられている。表示ユニット71は、分割ユニット20による加工や撮像ユニット30による撮像等の加工装置1の各種処理に関する各種条件の設定の画面や、取得された画像やデータ、制御ユニット80による種々の判定結果、後述する制御ユニット80の検出部81による検出結果、後述する制御ユニット80の警告部82による警告内容、等を作業者に視認可能に表示する。表示ユニット71は、液晶表示装置等により構成される。表示ユニット71は、作業者が加工装置1の上記した各種条件に関する情報や画像等の表示に関する情報等を入力する際に使用する入力ユニット75が設けられている。表示ユニット71に設けられた入力ユニット75は、表示ユニット71に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。なお、表示ユニット71は加工装置1に固定されておらず、任意の通信機器に備えられ、任意の通信機器が無線または有線により加工装置1と接続されてもよい。
【0043】
発光ユニット72は、加工装置1の不図示のカバーの上方に設けられている。発光ユニット72は、本実施形態では、発光ダイオードなどで構成され、点灯や点滅や光の色彩等により、加工装置1による各種処理中に発生したエラーや、判定結果、警告内容、等を作業者に認識可能に報知する。なお、報知ユニット70は、本発明では表示ユニット71や発光ユニット72に限定されず、例えば、スピーカなどで構成され音声を発信する音声ユニットであってもよく、この場合、音声ユニットの音声により、発生したエラーや判定結果、警告内容、等を作業者に認識可能に報知してもよい。
【0044】
制御ユニット80は、加工装置1の各構成要素の動作を制御して、実施形態に係る被加工物の加工方法における様々な処理を含む各種処理を加工装置1に実施させる。制御ユニット80は、撮像ユニット30を制御して、撮像ユニット30により被加工物100を撮像して、被加工物100の画像(画像201,202,203,204)を取得する。制御ユニット80は、撮像ユニット30を走査して被加工物100を撮像する場合には、撮像ユニット30を移動させる移動ユニットも合わせて制御する。
【0045】
図8は、
図1の加工装置1の制御ユニット80が記憶するデータベース300の一例を示す図である。データベース300は、
図8に示すように、チップ飛びが発生した領域のパターンと、当該領域のパターンにチップ飛びが発生する原因と、当該原因を解消するための対策とを互いに対応付けたデータベースである。なお、原因と対策とは、少なくともいずれかがチップ飛びが発生した領域のパターンと、紐付いていれば良い。
図8において、「チップ飛び領域の分布」は、チップ飛びが発生した領域のパターンを示しており、「警告する原因」は、当該領域のパターンにチップ飛びが発生する原因を示す情報であり、「提案する対策」は、当該原因を解消するための対策を示す情報である。
【0046】
被加工物100を保持する保持テーブル10の保持面11においてある領域に異物が付着している場合、被加工物100において当該ある領域に対応する領域にチップ飛びが発生するおそれがある。保持テーブル10の保持面11に異物が付着している場合、作業者は、保持面11を洗浄して異物を除去したり、保持面11を目視で確認して異物を除去したりすることで、チップ飛びの発生を抑制するように対応する。このため、
図8に示す本実施形態のデータベース300の例では、任意の枚数(n枚)以上の被加工物100に連続で(もしくは所定の枚数において所定値以上の頻度で発生するなど高確率で)同一領域にチップ飛びが発生するパターンと、保持面11に異物が付着しているという原因と、保持面11の洗浄や保持面11の目視確認という対策とを、互いに対応付けている。
【0047】
分割ユニット20により被加工物100を分割する際、分割により端材のサイズが小さくなる被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するおそれがある。このような理由でチップ飛びが発生してしまう場合、作業者は、被加工物100の外縁のチップ飛びが発生する領域において、被加工物100の当該外縁に至らない被加工物100の外縁から所定距離内側に分割溝を形成するように、外周まで分割しないカットを実施することで、チップ飛びの発生を抑制するように対応する。このため、
図8に示す本実施形態のデータベース300の例では、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するパターンと、端材のサイズが小さいという原因と、チップ飛び領域において外周に未分割領域を残存させるように外周まで分割しないカットを実施するという対策とを、互いに対応付けている。
【0048】
また、さらに、切削ユニットである分割ユニット20により加工点に切削水を供給しながら被加工物100を切削して分割する際、切削水の流量が多過ぎる場合、分割により端材のサイズが小さくなる被加工物100の外縁において、多過ぎる流量の切削水により端材が飛ばされてしまうことにより、チップ飛びが発生するおそれがある。このような理由でチップ飛びが発生してしまう場合、作業者は、切削水の流量を減らすことで、チップ飛びの発生を抑制するように対応する。このため、
図8に示す本実施形態のデータベース300の例では、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するパターンにさらに、切削水の流量が多いという原因と、切削水の流量を減らすという対策とを、互いに対応付けている。
【0049】
また、切削ユニットである分割ユニット20により加工点に切削水を供給しながら被加工物100を切削して分割する際、切削ブレード21と被加工物100とを相対的に分割予定ライン102に沿って加工送りする速度である加工送り速度が大き過ぎる場合、分割により端材のサイズが小さくなる被加工物100の外縁において、大き過ぎる加工送り速度で移動する切削ブレード21により端材が飛ばされてしまうことにより、チップ飛びが発生するおそれがある。このような理由でチップ飛びが発生してしまう場合、作業者は、加工送り速度を低速にすることで、チップ飛びの発生を抑制するように対応する。このため、
図8に示す本実施形態のデータベース300の例では、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するパターンにさらに、加工送り速度が大きいという原因と、加工送り速度を低速にするという対策とを、互いに対応付けている。
【0050】
なお、本実施形態では、
図8に示すデータベース300により、任意の枚数(n枚)以上の被加工物100に連続で(もしくは高確率で)同一領域にチップ飛びが発生するパターンと、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するパターンとについて、当該チップ飛びが発生する原因及び当該原因を解消するための対策を互いに対応付けているが、本発明ではこれに限定されず、その他のチップ飛びが発生するパターンについて、同様に、チップ飛びが発生する原因及び当該原因を解消するための対策を互いに対応付けてもよい。また、制御ユニット80は、本実施形態では、分割ユニット20が切削ユニットであることに合わせて作成された
図8に示すデータベース300を記憶するが、本発明ではこれに限定されず、分割ユニット20がレーザ加工ユニットや研削ユニットである場合には、これらの分割ユニット20に合わせて適宜変更されたデータベースを記憶する。
【0051】
制御ユニット80は、
図1に示すように、検出部81と、警告部82と、を備える。検出部81は、撮像ユニット30が撮像した画像(画像201,202,203,204)から画像処理によりチップ飛びの領域を検出する。具体的には、検出部81は、撮像ユニット30が撮像した画像(画像201,202,203,204)を、上記した所定の閾値の輝度値で二値化処理をして、所定の閾値以上の輝度値を有する画素を最大輝度(輝度=255)に変換し、所定の閾値未満の輝度値を有する画素を最小輝度(輝度=0)に変換して、最大輝度の画素の領域において分割予定ライン102に沿って切削して切削溝を形成した領域を除く領域を抽出し、この抽出した領域をチップ飛びの領域として検出する。
【0052】
例えば、検出部81は、
図6(A)に示す画像201から、被加工物100の
図6(A)における左上の2箇所の白い四角の領域が、チップ飛びが発生した領域であると検出する。また、検出部81は、
図6(B)に示す画像202から、被加工物100の
図6(B)における左上の3箇所の白い四角の領域が、チップ飛びが発生した領域であると検出する。また、検出部81は、
図7(A)に示す画像203から、被加工物100の
図7(A)における右上の3箇所の外縁の領域が、チップ飛びが発生した領域であると検出する。また、検出部81は、
図7(B)に示す画像204から、被加工物100の
図7(B)における左下の3箇所の外縁の領域が、チップ飛びが発生した領域であると検出する。
【0053】
警告部82は、検出部81によって検出されたチップ飛びの領域に基づいて、チップ飛びの原因と対策との少なくともいずれかを警告する。具体的には、警告部82は、制御ユニット80に記憶された
図8に示すデータベース300を参照し、検出部81によって検出されたチップ飛びの領域がデータベース300に登録されているチップ飛びが発生した領域のパターンに該当するか否かを判定し、検出部81によって検出されたチップ飛びの領域がデータベース300に登録されているチップ飛びが発生した領域のパターンに該当すると判定した場合、データベース300において当該判定したパターンに互いに対応付けられた原因と対策との少なくともいずれかを警告し、当該警告内容を報知ユニット70に送信して、報知ユニット70に報知させる。なお、警告部82は、原因と対策とを共に警告してもよいし、データベース300において当該判定したパターンに互いに対応付けられた原因と対策とが複数ある場合には、それらを同時にもしくは作業者に選択可能に警告してもよい。
【0054】
例えば、
図6に示す画像201,202が被加工物100の2枚連続で撮像された場合、検出部81により、被加工物100の
図6における左上の同じ領域が被加工物100の2枚連続でチップ飛びが発生したと検出するので、警告部82は、この検出結果に基づき、データベース300に登録されている、任意の枚数(n枚)以上の被加工物100に連続で(もしくは高確率で)同一領域にチップ飛びが発生するパターンに該当すると判定し、保持面11に異物が付着しているという原因や、保持面11の洗浄や保持面11の目視確認という対策の少なくともいずれかを警告する。
【0055】
また、例えば、
図7に示す画像203や画像204が撮像された場合、検出部81により、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生したと検出するので、警告部82は、この検出結果に基づき、データベース300に登録されている、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するパターンに該当すると判定し、端材のサイズが小さいという原因や、切削水の流量が多いという原因、加工送り速度が大きいという原因と、チップ飛び領域において外周まで分割しないカットを実施するという対策や、切削水の流量を減らすという対策、加工送り速度を低速にするという対策との少なくともいずれかを警告する。
【0056】
制御ユニット80は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット80が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット80の演算処理装置は、制御ユニット80の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット80の入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。検出部81及び警告部82の機能は、本実施形態では、制御ユニット80の演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0057】
次に、本明細書は、実施形態に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図9は、実施形態に係る被加工物の加工方法の処理手順を示すフローチャートである。実施形態に係る被加工物の加工方法は、実施形態に係る加工装置1によって実施される動作処理の一例であり、
図9に示すように、分割ステップ1001と、撮像ステップ1002と、検出ステップ1003と、警告ステップ1004と、を備える。実施形態に係る被加工物の加工方法では、実施形態に係る加工装置1は、カセット載置台55に未分割(分割処理前)の複数の被加工物100が収容されたカセット56が載置されると、カセット56に収容された被加工物100を1枚ずつ順次、各ステップを実行して、加工等の処理を実施する。
【0058】
実施形態に係る被加工物の加工方法では、分割ステップ1001の前に、被加工物100を保持テーブル10の保持面11で保持する保持ステップを実施する。この保持ステップでは、具体的には、まず、制御ユニット80は、搬送ユニット50の搬送アームにより、カセット56に収容された分割処理前の被加工物100を1枚搬出して、一対のレール51を経由して保持テーブル10の保持面11上に搬送する。この保持ステップでは、次に、制御ユニット80は、保持テーブル10により、保持面11上に搬送された被加工物100を吸引保持する。
【0059】
分割ステップ1001は、保持テーブル10に保持された被加工物100を複数のデバイス103のチップに分割するステップである。分割ステップ1001では、例えば
図4に示すように、制御ユニット80は、分割ユニット20により、切削水供給ノズル25から加工点に切削水を供給しつつ、スピンドル22の回転動作によりスピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転しながら、X軸方向移動ユニット41により切削ブレード21を保持テーブル10上の被加工物100に対して相対的にX軸方向に沿って移動させることにより、切削ブレード21で被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削することで、被加工物100を分割予定ライン102に沿って分割する。分割ステップ1001では、制御ユニット80は、全ての分割予定ライン102について、分割予定ライン102に沿って切削することで、被加工物100をデバイス103のチップ及び外縁の端材に分割する。
【0060】
撮像ステップ1002は、分割ステップ1001の実施中または実施後に被加工物100の画像を撮像するステップである。撮像ステップ1002では、制御ユニット80は、撮像ユニット30により、分割ステップ1001の実施中または実施後に被加工物100を撮像して、被加工物100の画像(画像201,202,203,204)を取得する。ここで、分割ステップ1001の実施中は、被加工物100の一部の分割予定ライン102に沿って切削した後を指す。また、分割ステップ1001の実施後は、被加工物100の全ての分割予定ライン102に沿って切削した後を指す。
【0061】
撮像ステップ1002では、分割ステップ1001の実施中に実施する場合には、制御ユニット80は、撮像ユニット30-1により、保持テーブル10に保持された被加工物100の表面101側を撮像する。撮像ステップ1002では、分割ステップ1001の実施後に実施する場合には、制御ユニット80は、撮像ユニット30-1により保持テーブル10に保持された被加工物100の表面101側を撮像してもよく、分割ステップ1001の実施後に搬送ユニット50の搬送アームにより被加工物100を洗浄ユニット60のスピンナテーブル61上に搬送し、さらに洗浄ユニット60により洗浄した後に、撮像ユニット30-2によりスピンナテーブル61上の被加工物100の表面101側を撮像してもよく、分割ステップ1001の実施後に洗浄ユニット60により洗浄し、さらに搬送ユニット50の搬送アームにより一対のレール51上に搬送中または搬送した後に、撮像ユニット30-2により一対のレール51上の被加工物100の表面101側を撮像してもよい。
【0062】
検出ステップ1003は、撮像ステップ1002の実施後に、撮像ステップ1002で撮像した画像(画像201,202,203,204)から、チップ飛びの有無と、チップ飛びが生じた領域と、を検出するステップである。検出ステップ1003では、検出部81は、撮像ユニット30が撮像した画像(画像201,202,203,204)を、所定の閾値の輝度値で二値化処理をして、所定の閾値以上の輝度値を有する画素を最大輝度に変換し、所定の閾値未満の輝度値を有する画素を最小輝度に変換して、最大輝度の画素の領域において分割予定ライン102に沿って切削して切削溝を形成した領域を除く領域を抽出し、この抽出した領域をチップ飛びの領域として検出する。
【0063】
警告ステップ1004は、検出ステップ1003でチップ飛びが検出された領域に基づいて、チップ飛びの原因または対策の少なくともいずれかを警告するステップである。警告ステップ1004では、警告部82は、制御ユニット80に記憶された
図8に示すデータベース300を参照し、検出部81によって検出されたチップ飛びの領域がデータベース300に登録されているチップ飛びが発生した領域のパターンに該当するか否かを判定し、検出部81によって検出されたチップ飛びの領域がデータベース300に登録されているチップ飛びが発生した領域のパターンに該当すると判定した場合、データベース300において当該判定したパターンに互いに対応付けられた原因と対策との少なくともいずれかを警告し、当該警告内容を報知ユニット70に送信して、報知ユニット70に報知させる。
【0064】
警告ステップ1004では、報知ユニット70の表示ユニット71に画面を表示させることにより報知させてもよいし、報知ユニット70の発光ユニット72に警告内容ごとに定められたパターンで点灯や点滅や光の色彩等の発光をさせることにより報知させてもよいし、報知ユニット70の音声ユニットに警告内容ごとに定められたパターンで音声を発信させることにより報知させてもよいし、任意の通信機器に定められた情報を伝達してもよい。
【0065】
なお、警告ステップ1004は、本実施形態では、1枚の被加工物100の分割及び画像の撮像をしてチップ飛びを検出した時点で、次に加工しようとしている被加工物100の加工を開始する前に実施しても良いし、複数枚の被加工物100の分割及び画像の撮像を実施してから実施しても良い。
【0066】
図10及び
図11は、それぞれ、
図9の警告ステップ1004で表示する画面の一例である画面401,402を示す図である。
図12及び
図13は、それぞれ、
図9の警告ステップ1004で提案する対策の一例を説明する図である。なお、
図12及び
図13の大きな実線円は、被加工物100の外縁を表しており、当該実線円を紙面の左右方向又は上下方向にまたがる直線は、分割ステップ1001において切削ブレード21によって切削して切削溝を形成する領域を示している。
【0067】
警告ステップ1004では、先の撮像ステップ1002で
図6に示す画像201,202が被加工物100の2枚連続で撮像された場合、先の検出ステップ1003で検出部81により、被加工物100の
図6における左上の同じ領域が被加工物100の2枚連続でチップ飛びが発生したと検出するので、警告部82は、この検出結果に基づき、データベース300に登録されている、任意の枚数(n枚)以上の被加工物100に連続で(もしくは所定値以上の確率で)同一領域にチップ飛びが発生するパターンに該当すると判定する。この場合、警告部82は、
図10に示すような画面401を報知ユニット70の表示ユニット71に表示させる。画面401は、
図10に示すように、任意の枚数(n枚)以上の被加工物100に連続で(もしくは所定値以上の確率で)同一領域にチップ飛びが発生した旨の判定結果と、保持テーブル10の保持面11に異物付着の可能性がある旨のチップ飛びの原因についての警告内容と、保持テーブル10の保持面11の洗浄もしくは目視確認のいずれかの対策を作業者に選択可能に提案する警告内容とを表示している。また、画面401は、いずれかの対策のボタンに加え、作業者に被加工物100の加工を再開する旨のボタンも合わせて選択可能に表示している。制御ユニット80は、画面401において、作業者によりいずれかの対策を示すボタンが選択されると、選択された対策を実施するための画面に切り替える。制御ユニット80は、画面401において、作業者により被加工物100の加工を再開する旨のボタンが選択されると、被加工物100の加工を再開する。
【0068】
警告ステップ1004では、先の撮像ステップ1002で
図7に示す画像203や画像204が撮像された場合、先の検出ステップ1003で検出部81により、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生したと検出するので、警告部82は、この検出結果に基づき、データベース300に登録されている、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生するパターンに該当すると判定する。この場合、警告部82は、
図11に示すような画面402を報知ユニット70の表示ユニット71に表示させる。画面402は、
図11に示すように、被加工物100の外縁にチップ飛びが発生した旨の判定結果と、端材のサイズが小さい可能性がある旨や切削水の流量が多い可能性がある旨、加工送り速度が大きい可能性がある旨のチップ飛びの原因についての警告内容と、チップ飛び領域において外周まで分割しないカットを実施するという対策や、切削水の流量を減らすという対策、加工送り速度を低速にするという対策を作業者に選択可能に提案する警告内容とを表示している。また、画面402は、いずれかの対策のボタンに加え、作業者に被加工物100の加工を再開する旨のボタンも合わせて選択可能に表示している。制御ユニット80は、画面402において、作業者によりいずれかの対策を示すボタンが選択されると、選択された対策を実施するための画面に切り替える。制御ユニット80は、画面402において、作業者により被加工物100の加工を再開する旨のボタンが選択されると、被加工物100の加工を再開する。
【0069】
特に、警告ステップ1004では、被加工物100の外縁において切削ブレード21の入り側に偏ってチップ飛びが発生した場合、切削ブレード21の入り側に供給される切削水の流量が多い可能性がある旨の警告を強調することが好ましく、被加工物100の外縁において同じ領域に偏ってチップ飛びが発生した場合、チップ飛び領域において外周まで分割しないカットを実施するという対策や加工送り速度を低速にするという対策を強調して提案することが好ましい。
【0070】
警告ステップ1004では、先の撮像ステップ1002で
図7(A)に示す画像203が撮像された場合、先の検出ステップ1003で検出部81により、被加工物100の
図7(A)における右上の3箇所の外縁にチップ飛びが発生したと検出するので、画面402においてチップ飛び領域において外周まで分割しないカットを実施するという対策が選択されると、警告部82は、具体的には、
図12(A)に示すように、チップ飛びが発生したと検出した被加工物100の右上の3箇所の外縁(
図12(A)における破線円内)において、次以降の被加工物100に対する分割ステップ1001について、外周まで分割しないカットを実施することにより、当該被加工物100の外縁に至らない被加工物100の外縁から所定距離内側に分割溝を形成して、当該チップ飛びの発生を抑制するように、処理を変更する旨を提案する。
【0071】
警告ステップ1004では、先の撮像ステップ1002で
図7(B)に示す画像204が撮像された場合、先の検出ステップ1003で検出部81により、被加工物100の
図7(B)における左下の3箇所の外縁にチップ飛びが発生したと検出するので、画面402においてチップ飛び領域において外周まで分割しないカットを実施するという対策が選択されると、警告部82は、具体的には、
図12(B)に示すように、チップ飛びが発生したと検出した被加工物100の左下の3箇所の外縁(
図12(B)における破線円内)において、次以降の被加工物100に対する分割ステップ1001について、外周まで分割しないカットを実施することにより、当該被加工物100の外縁に至らない被加工物100の外縁から所定距離内側に分割溝を形成して、当該チップ飛びの発生を抑制するように、処理を変更する旨を提案する。
【0072】
警告ステップ1004では、先の撮像ステップ1002で
図7(A)に示す画像203が撮像された場合、先の検出ステップ1003で検出部81により、被加工物100の
図7(A)における右上の3箇所の外縁にチップ飛びが発生したと検出するので、画面402において切削水の流量を減らすという対策もしくは加工送り速度を低速にするという対策が選択されると、警告部82は、具体的には、
図13(A)に示すように、チップ飛びが発生したと検出した被加工物100の右上の3箇所の外縁(
図13(A)における破線円内)において、次以降の被加工物100に対する分割ステップ1001について、選択に応じて切削水の流量を減らすもしくは加工送り速度を低速にすることにより、当該チップ飛びの発生を低減するように、処理を変更する旨を提案する。
【0073】
警告ステップ1004では、先の撮像ステップ1002で
図7(B)に示す画像204が撮像された場合、先の検出ステップ1003で検出部81により、被加工物100の
図7(B)における左下の3箇所の外縁にチップ飛びが発生したと検出するので、画面402において切削水の流量を減らすという対策もしくは加工送り速度を低速にするという対策が選択されると、警告部82は、具体的には、
図13(B)に示すように、チップ飛びが発生したと検出した被加工物100の左下の3箇所の外縁(
図13(B)における破線円内)において、次以降の被加工物100に対する分割ステップ1001について、選択に応じて切削水の流量を減らすもしくは加工送り速度を低速にすることにより、当該チップ飛びの発生を低減するように、処理を変更する旨を提案する。
【0074】
以上のような構成を有する実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1は、推定されるチップ飛びの原因と、チップ飛びの対策との少なくともいずれかを判定し、警告するので、作業者がチップ飛びの原因分析や対策の検討を容易にすることができる作用効果を奏する。
【0075】
また、実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1は、検出ステップ1003において、チップ飛びが同じ領域で任意の枚数以上検出された場合、警告ステップ1004では、保持テーブル10の保持面11への異物の付着を警告したり、保持テーブル10の保持面11の洗浄を提案したりする。また、実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1は、分割ステップ1001が、加工点に切削水を供給しながら切削ブレード21で切削し、検出ステップ1003において、被加工物100の外縁においてチップ飛びが検出された場合、警告ステップ1004では、切削水の流量が多いと警告したり、切削水の流量の調整を提案したりする。また、実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1は、検出ステップ1003において、被加工物100の外縁においてチップ飛びが検出された場合、警告ステップ1004では、分割ステップ1001が、チップ飛びが発生する領域において、被加工物100の外縁に至らない被加工物100の外縁から所定距離内側に分割溝を形成する事を提案する。また、実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1は、分割ステップ1001が、切削ブレード21で切削し、検出ステップ1003において、被加工物100の外縁においてチップ飛びが検出された場合、警告ステップ1004では、分割ステップ1001が、チップ飛びが発生する領域において、切削ブレード21と、被加工物100とを相対的に分割予定ライン102に沿って加工送りする加工送り速度を低速にする事を提案する。このように、実施形態に係る被加工物の加工方法及び加工装置1は、分割ステップ1001の動作処理や検出ステップ1003によって検出するチップ飛びのパターンに応じて適切な警告や対策の提案をすることにより、作業者が適切なチップ飛びの原因分析や対策の検討を容易にすることを可能にする。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 加工装置
10 保持テーブル
11 保持面
20 分割ユニット
21 切削ブレード
30,30-1,30-2 撮像ユニット
80 制御ユニット
81 検出部
82 警告部
100 被加工物
102 分割予定ライン
201,202,203,204 画像
1001 分割ステップ
1002 撮像ステップ
1003 検出ステップ
1004 警告ステップ