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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150347
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/509 20060101AFI20241016BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20241016BHJP
   C23C 16/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C23C16/509
H01L21/285 C
H01L21/88 M
H01L21/88 B
C23C16/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063724
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 健索
(72)【発明者】
【氏名】小林 岳志
(72)【発明者】
【氏名】岡部 真也
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 隆
(72)【発明者】
【氏名】多田 國弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理志
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA17
4K030BA22
4K030DA06
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA03
4K030KA02
4K030KA15
4K030KA23
4K030KA39
4M104BB13
4M104DD43
4M104DD44
4M104DD45
4M104GG09
4M104HH13
4M104HH15
4M104HH17
5F033HH17
5F033JJ17
5F033KK01
5F033PP04
5F033PP12
5F033XX02
5F033XX07
5F033XX09
(57)【要約】
【課題】ジルコニウム膜を安定的に形成する。
【解決手段】成膜装置は、内部が減圧される処理容器と、該処理容器の内部の処理空間に電界を生じさせる電極と、該電極へ高周波電力を供給する高周波電源と、処理容器の内部に配置されて基板が載置される載置台と、処理空間に気化した塩化ジルコニウムを導入する成膜ガス導入部と、を備え、成膜ガス導入部は金属からなり、接地する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が減圧される処理容器と、該処理容器の内部の処理空間に電界を生じさせる電極と、該電極へ高周波電力を供給する高周波電源と、前記処理容器の内部に配置されて基板が載置される載置台と、前記処理空間に気化した塩化ジルコニウムを導入する成膜ガス導入部と、を備え、
前記成膜ガス導入部は金属からなり、接地する成膜装置。
【請求項2】
前記処理空間に還元ガスを導入する円板状の還元ガス導入部をさらに備え、
前記還元ガス導入部は、前記載置台に載置された基板と対向するように配置され、
前記成膜ガス導入部は、環状を呈し、前記還元ガス導入部を囲むように配置される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記成膜ガス導入部は、前記載置台に載置された基板と対向しないように配置される、請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記還元ガスを貯留し、該貯留した還元ガスを前記還元ガス導入部へ供給する還元ガス貯留タンクをさらに備える、請求項2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記処理空間の酸素濃度をモニタする酸素濃度モニタをさらに備える、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記処理空間に少なくとも一部が暴露される部品の表面を覆う第1の被覆膜は、酸素を含まない材料で構成される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1の被覆膜を覆う第2の被覆膜は、ジルコニウム膜を形成する際に生じる副生成物と同じ又は類似の成分からなる材料で構成される、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記処理空間に生じたプラズマの処理空間以外への拡散を抑制する部品をさらに備える、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記処理容器の内部に生じたプラズマの処理空間以外への拡散を抑制するためのパージガスを供給するパージガス供給系をさらに備える、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記処理空間に少なくとも一部が暴露される部品を加熱する加熱機構をさらに備える、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項11】
内部が減圧される処理容器と、該処理容器の内部の処理空間に電界を生じさせる電極と、該電極へ高周波電力を供給する高周波電源と、前記処理容器の内部に配置されて基板が載置される載置台と、前記処理空間に気化した塩化ジルコニウムを導入する成膜ガス導入部と、を備える成膜装置において、
前記電界によって前記気化した塩化ジルコニウムからプラズマを生成する際に、前記成膜ガス導入部から前記処理空間へ前記気化した塩化ジルコニウムを導入するとともに、前記成膜ガス導入部を接地させる、成膜方法。
【請求項12】
前記気化した塩化ジルコニウムからプラズマを生成する際に、前記処理空間へ還元ガスを導入する、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記気化した塩化ジルコニウムからプラズマを生成する際に、前記処理空間へ前記気化した塩化ジルコニウムを導入しながら前記処理空間へ前記還元ガスを導入しないタイミングを設ける、請求項12に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記処理空間へ前記気化した塩化ジルコニウムを導入する際に、前記電極へ高周波電力を供給しないタイミングを設ける、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記気化した塩化ジルコニウムからプラズマを生成する際に、前記処理空間に少なくとも一部が暴露される部品を加熱する、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記成膜装置は、粉状の塩化ジルコニウムを収容する収容容器をさらに備え、
前記収容容器の内部へ前記気化した塩化ジルコニウムを運搬するキャリアガスを導入する際、前記収容容器の内部の圧力の変動が予め定められた範囲に収まるように前記キャリアガスの流量を調整する、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記処理空間へ還元ガスを導入して、前記基板に形成されたジルコニウム膜に還元処理を施す、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記基板に形成されたジルコニウム膜に前記還元処理を施す際、前記処理空間に気化した塩化ジルコニウムを導入しない、請求項17に記載の成膜方法。
【請求項19】
前記処理空間の酸素濃度をモニタし、前記酸素濃度が予め定められた値を超えたら、前記還元処理を行う、請求項17に記載の成膜方法。
【請求項20】
前記気化した塩化ジルコニウムからプラズマを生成する際、並びに、前記還元処理を行う際のいずれにおいても、前記処理空間へ還元ガスを導入し、
前記還元処理を行う際には、前記処理空間へ導入される還元ガスを追加する、請求項17に記載の成膜方法。
【請求項21】
前記処理空間へ導入される還元ガスが追加される際には、前記電極へ供給される高周波電力を強める、請求項20に記載の成膜方法。
【請求項22】
前記気化した塩化ジルコニウムからプラズマを生成する前に、前記処理空間へ還元ガスを導入し、該還元ガスからプラズマを生成する、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項23】
前記還元ガスと前記気化した塩化ジルコニウムを予め混合した後に、前記処理空間へ導入する、請求項12に記載の成膜方法。
【請求項24】
前記還元処理を行う際には、前記処理空間の圧力を10mTorr以上に維持し、前記還元処理の前記処理空間への流量を10L/分以上とする、請求項17に記載の成膜方法。
【請求項25】
前記電極と前記載置台は対向するように配置され、
前記還元処理を行う際には、前記電極と前記載置台の間の距離が縮められる、請求項17に記載の成膜方法。
【請求項26】
前記還元ガスは、水素ガス及び重水素ガスの少なくとも1つである、請求項17に記載の成膜方法。
【請求項27】
前記処理容器の内部へクリーニングガスを導入して、前記処理容器の内部のクリーニング処理を行う、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項28】
前記クリーニング処理を行う前に、前記基板へジルコニウム膜を形成する際に生じる副生成物の酸化膜を還元する酸化膜還元処理を行う、請求項27に記載の成膜方法。
【請求項29】
前記クリーニングガスは弗素を含まない塩化物ガスである、請求項27に記載の成膜方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)やシリコンゲルマニウム(SiGe)を用いる金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)では、ソースやドレインへの配線(コンタクト)の材料として、チタン(Ti)やチタンシリサイド(TiSi)が用いられている。
【0003】
ところで、近年、半導体デバイスの更なる微細化に伴い、配線も微細化するため、より低抵抗の配線材料が求められている。ソースやドレインと配線との接触抵抗の要因の1つとして、ショットキー障壁(SBH)が挙げられる。ソースやドレインを構成する半導体にはP型とN型半導体があるが、N型半導体に対してSBHを下げるには、シリコンやシリコンゲルマニウムの伝導帯とエネルギーレベルが近い伝導帯を有する金属材料を用いればよいことが知られている。このような金属材料としてはジルコニウム(Zr)が知られている。そして、ジルコニウム膜は、例えばCVD装置において、気化した塩化ジルコニウム(ZrCl)が励起・分解されて生じるプラズマを用いてウエハに形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-343354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示に係る技術は、ジルコニウム膜を安定的に形成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る技術の一態様は、成膜装置であって、内部が減圧される処理容器と、該処理容器の内部の処理空間に電界を生じさせる電極と、該電極へ高周波電力を供給する高周波電源と、前記処理容器の内部に配置されて基板が載置される載置台と、前記処理空間に気化した塩化ジルコニウムを導入する成膜ガス導入部と、を備え、前記成膜ガス導入部は金属からなり、接地する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術によれば、ジルコニウム膜を安定的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る技術の一実施の形態に係る成膜装置としてのプラズマ処理装置の構成を示す図である。
図2図1のプラズマ処理装置における暴露部品の被覆構造を説明するための断面図である。
図3図1のプラズマ処理装置におけるパージガス供給系の構造を説明するための図である。
図4図1のプラズマ処理装置のガス供給系の構成を模式的に示す図である。
図5図1のプラズマ処理装置において載置台とシャワーヘッドの間の距離が縮まる様子を説明するための図である。
図6】ウエハの表面にジルコニウム膜を形成する際に実行される各種処理の流れを示すフローチャートである。
図7】成膜前処理を示すフローチャートである。
図8】成膜処理における各種ガスの導入タイミングや高周波電力の供給タイミングを示すシーケンス図である。
図9】成膜処理におけるジルコニウムの堆積の様子を説明するための工程図である。
図10】成膜処理における閉塞ジルコニウムの除去処理を説明するための各種ガスの導入タイミングや高周波電力の供給タイミングを示すシーケンス図である。
図11】還元処理における各種ガスの導入タイミングや高周波電力の供給タイミングを示すシーケンス図である。
図12】還元処理における水素ガスの流量と整合器のロードやチューンのインピーダンスとの関係を示すグラフである。
図13】クリーニング処理を示すフローチャートである。
図14図1のプラズマ処理装置の第1の変形例の構成を示す図である。
図15図1のプラズマ処理装置の第2の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ところで、塩化ジルコニウムは常態で固体であるため、ジルコニウム膜を成膜するためには、まず、塩化ジルコニウムを加熱して気化させ、アルゴン(Ar)ガス等のキャリアガスでCVD装置の処理容器の内部へ導入する。そして、チャンバ内において生じた電界により、気化した塩化ジルコニウム(以下、「塩化ジルコニウムガス」という)を励起・分解してプラズマを生成する。
【0010】
しかしながら、塩化ジルコニウムガスの励起・分解には多くのエネルギーが必要であるため、塩化ジルコニウムガスの励起・分解は容易ではなく、従来のCVD装置では塩化ジルコニウムガスを用いてジルコニウム膜を安定的に形成するのが困難である。
【0011】
これに対して、本開示に係る技術は、処理容器の内部へ塩化ジルコニウムガスを導入する導入部を接地させ、電界から導入部に向けて放電を誘発し、該放電によって塩化ジルコニウムガスの励起・分解を促進させる。また、接地によってプラズマ中のイオンを導入部へ引き込み、該イオンと塩化ジルコニウムガスの各分子を積極的に衝突させて塩化ジルコニウムガスの励起・分解を促進させる。これにより、ジルコニウム膜を安定的に形成する。
【0012】
以下、図面を参照して本開示に係る技術の一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る成膜装置としてのプラズマ処理装置の構成を示す図である。
【0013】
図1において、プラズマ処理装置10は、内部が減圧されてウエハW(基板)を収容する略円筒状のチャンバ(処理容器)11を備える。チャンバ11の内部の下方にはウエハWを載置する載置台12が配置され、載置台12は駆動機構(不図示)によって上下方向に移動可能に構成される。また、チャンバ11の天井部には、金属、例えば、アルミからなるシャワーヘッド13が配置される。載置台12とシャワーヘッド13の間には処理空間Uが形成され、処理空間Uでは、後述するように、塩化ジルコニウムガスから塩化ジルコニウムプラズマが生成される。
【0014】
さらに、チャンバ11の内部には、処理空間Uの側方を囲むように壁状のライナー14が配置され、ライナー14と載置台12の間には、載置台12を囲むように構成される略環状のバッフルリング15が配置される。ライナー14やバッフルリング15は、処理空間Uで生成されたプラズマが処理空間U以外へ拡散するのを抑制する。なお、バッフルリング15には多数の貫通穴(不図示)が設けられ、処理空間Uと載置台12の下方の空間を連通させる。
【0015】
載置台12、シャワーヘッド13、ライナー14やバッフルリング15等の処理空間Uに少なくとも一部が暴露される部品(以下、「暴露部品」)の表面は、図2に示すように、まず、酸素を含まない材料からなる下地層16(第1の被覆膜)で覆われる。この酸素を含まない材料には、例えば、窒化アルミ(AlN)が該当する。下地層16は、暴露部品の基材の酸化を防止し、後述する塩素ガス等による腐食を防止する。また、下地層16は酸素を含まないため、例えば、下地層16がプラズマによってエッチングされるようなことがあっても、酸素を放出することがなく、後述するジルコニウムの酸化を抑制することができる。
【0016】
また、下地層16は、処理空間Uのプラズマを用いてジルコニウム膜を形成する際に生じる副生成物17と同じ又は類似の成分、例えば、ジルコニウム(Zr)からなる犠牲膜18(第2の被覆膜)で覆われる。さらに、載置台12やライナー14にはヒータ19(加熱機構)が埋め込まれる。
【0017】
また、プラズマ処理装置10は、処理空間Uの酸素濃度をモニタする酸素濃度モニタ(不図示)と、処理空間Uのプラズマの状態をモニタするプラズマモニタ(不図示)と、チャンバ11の内部へパージガスを供給するパージガス供給系20とを備える。図3に示すように、パージガス供給系20は、2つの環状のガス放出管20aと、パージガス供給源20bと、各ガス放出管20a及びパージガス供給源20bを接続する配管20cとを有する。各ガス放出管20aは、チャンバ11の側壁とライナー14の間の空間に配置され、図中に破線で示すように、各所からパージガスを放出することにより、当該空間に塩化ジルコニウムガスの分解物が入り込むことを抑制する。これにより、ライナー14の外側側壁やチャンバ11の側壁に副生成物17が付着するのを抑制する。
【0018】
また、チャンバ11の側壁には、ウエハWを処理空間Uへ搬入出するための搬入出口21及び搬入出口21を開閉するゲートバルブ22が設けられ、チャンバ11の底部には排気系23が配置される。排気系23は、チャンバ11の内部を排気するポンプ、例えば、ターボ分子ポンプやドライポンプ(不図示)と、チャンバ11の内部の圧力を制御する排気弁、例えば、APC(Auto Pressure Controller)バルブ(不図示)とを有する。処理空間Uにおいてプラズマを生成する際、排気系23は、処理空間Uの圧力を、例えば、数十mTorrまで下降させる。
【0019】
シャワーヘッド13は、略円板状の還元ガス導入部26と、略環状の原料ガス導入部27(成膜ガス導入部)とを有する。原料ガス導入部27は還元ガス導入部26を囲むように配置され、原料ガス導入部27と還元ガス導入部26の間には絶縁部材28が配置される。
【0020】
還元ガス導入部26は、内部に形成されたガス拡散室26aと、ガス拡散室26a及び処理空間Uを連通させる多数のガス穴26bを有する。原料ガス導入部27も、内部に形成されたガス拡散室27aと、ガス拡散室27a及び処理空間Uを連通させる多数のガス穴27bを有する。また、還元ガス導入部26は載置台12に載置されたウエハWと対向するが、原料ガス導入部27は還元ガス導入部26を囲むように配置されるため、載置台12に載置されたウエハWと対向しない。
【0021】
還元ガス導入部26には、配管29を介して還元ガス供給源30が接続され、還元ガス供給源30はガス拡散室26aへ還元ガスとしての水素ガスを供給する。ガス拡散室26aへ供給された水素ガスは各ガス穴26bを介して処理空間Uに導入される。また、配管29は、還元ガス導入部26と還元ガス供給源30の間で2系統に分岐し、一方の系統にはフィルタンク31(還元ガス貯留タンク)が配置される。また、フィルタンク31と還元ガス導入部26の間にはバルブ32が配置される。フィルタンク31は還元ガス供給源30から供給された還元ガスを貯留し、バルブ32が開弁した際に貯留した還元ガスをガス拡散室26aへ短時間で供給する。
【0022】
原料ガス導入部27には、配管33を介して原料ガス供給源34が接続され、原料ガス供給源34はガス拡散室27aへ原料ガスとしての塩化ジルコニウムガスを供給する。ガス拡散室27aへ供給された塩化ジルコニウムガスは各ガス穴27bを介して処理空間Uに導入される。
【0023】
また、配管29や配管33にはクリーニングガス供給源35が接続される。クリーニングガス供給源35はガス拡散室26a,27aへクリーニングガスとしての塩素ガスを供給する。ガス拡散室26a,27aへ供給されたクリーニングガスは各ガス穴26b,27bを介して処理空間Uに導入される。
【0024】
なお、プラズマ処理装置10では、上述した還元ガス供給源30、原料ガス供給源34やクリーニングガス供給源35の他にも各種ガス供給源がガス拡散室26a,27aへ配管29,33を介して接続される。
【0025】
図4は、図1のプラズマ処理装置10のガス供給系の構成を模式的に示す図である。なお、本実施の形態では、還元ガスとして、水素(H)ガスが用いられるため、図中において、還元ガス供給源30は「Hガス」と表記される。また、クリーニングガスとして弗素を含有しない塩化物ガス、具体的には、塩素(Cl)ガスが用いられるため、図中において、クリーニングガス供給源35は「Clガス」と表記される。なお、クリーニングガスは塩素ガスに限定されず、例えば、塩化水素(HCl)ガス、三塩化硼素(BCl)ガス、塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl)ガスや塩化チタン(IV)(TiCl)ガスを用いてもよい。
【0026】
図4において、プラズマ処理装置10のガス拡散室26a,27aには、上述した還元ガス供給源30、原料ガス供給源34やクリーニングガス供給源35の他にアルゴン(Ar)ガス供給源、水素/重水素(H/D)ガス供給源が接続される。なお、図中において、アルゴンガス供給源は「Arガス」と表記され、水素/重水素ガス供給源は「H/Dガス」と表記される。また、プラズマ処理装置10において、チタン(Ti)の成膜を行う場合には、ガス拡散室26aに塩化チタン(IV)ガス供給源が接続される(後述の図14参照)。
【0027】
具体的に、ガス拡散室26aには、還元ガス供給源30、フィルタンク31やクリーニングガス供給源35の他に、水素/重水素ガス供給源36とアルゴンガス供給源37が配管29を介して接続される。また、ガス拡散室27aには、原料ガス供給源34やクリーニングガス供給源35の他に、アルゴンガス供給源38が配管33を介して接続される。
【0028】
また、図4には、原料ガス供給源34の詳細な構成が示される。図4において、原料ガス供給源34は、粉状の塩化ジルコニウムを収容する収容容器(アンプル)39と、アンプル39に接続されるアルゴンガス供給源40とを有する。また、原料ガス供給源34は、アンプル39及びチャンバ11の間に配置される質量流量計(MFM)41と、MFM41に直接接続されるアルゴンガス供給源42と、アンプル39を囲むヒータ43とを有する。さらに、原料ガス供給源34は、MFM41とチャンバ11の間において配管33から分岐し、チャンバ11を経由せずに排気系23へ到るエバック(Evac)配管44を有する。
【0029】
後述する成膜処理を実行する際、ヒータ43はアンプル39に収容された塩化ジルコニウムを、140℃乃至200℃までに加熱して気化させ、塩化ジルコニウムガスを生じさせる。アルゴンガス供給源40はキャリアガスとしてのアルゴンガスをアンプル39の内部へ供給する。供給されたアルゴンガスは塩化ジルコニウムガスを巻き込んでアンプル39から排出される。そして、塩化ジルコニウムガスを巻き込んだアルゴンガスは、アルゴンガス供給源42から供給されるキャリアガスとしてのアルゴンガスによってMFM41を経由してチャンバ11へ到達し、ガス拡散室27aへ導入される。さらに、ガス拡散室27aへ導入された塩化ジルコニウムガスやアルゴンガスは、各ガス穴27bを介して処理空間Uへ導入される。なお、成膜処理において、アルゴンガスはキャリアガスとして機能するだけでなく、塩化ジルコニウムガスの希釈ガスや分圧調整ガスとして機能する。
【0030】
後述する還元処理を実行する際、還元ガス供給源30は配管29を介して水素ガスをガス拡散室26aへ供給するが、このとき、アルゴンガス供給源37も配管29を介してアルゴンガスをガス拡散室26aへ供給する。ガス拡散室26aへ供給された水素ガスやアルゴンガスは各ガス穴26bを介して処理空間Uへ導入される。なお、還元処理においても、アルゴンガスはキャリアガスとして機能するだけでなく、水素ガスの希釈ガスや分圧調整ガスとして機能する。
【0031】
また、還元処理を実行する際、水素/重水素ガス供給源36が配管29を介して水素ガスと重水素ガスの混合ガスをガス拡散室26aへ供給してもよい。このときも、アルゴンガス供給源37が配管29を介してアルゴンガスをガス拡散室26aへ供給する。なお、還元ガス供給源30が水素ガスをガス拡散室26aへ供給すると同時に、水素/重水素ガス供給源36が水素ガスと重水素ガスの混合ガスをガス拡散室26aへ供給してもよい。
【0032】
後述するクリーニング処理を実行する際、クリーニングガス供給源35は配管29,33を介して塩素ガスをガス拡散室26a,27aへ供給する。このとき、アルゴンガス供給源37,38も配管29,33を介してアルゴンガスをガス拡散室26a,27aへ供給する。ガス拡散室26a,27aへ供給された塩素ガスやアルゴンガスは各ガス穴26b,27bを介して処理空間Uへ導入される。なお、クリーニング処理においても、アルゴンガスはキャリアガスとして機能するだけでなく、塩素ガスの希釈ガスや分圧調整ガスとして機能する。
【0033】
また、プラズマ処理装置10のガス供給系では、キャリアガスとしてアルゴンガスが用いられたが、他の不活性ガス、例えば、他の希ガスをキャリアガスとして用いてもよい。
【0034】
上述したように、シャワーヘッド13の原料ガス導入部27や還元ガス導入部26は、例えば、アルミによって構成されるが、原料ガス導入部27は接地される一方、還元ガス導入部26には高周波電源24が接続される。したがって、本実施の形態では、還元ガス導入部26が電極として機能する。また、載置台12にはPOP(Plasma Optimizer)等の整合器25が接続される。高周波電源24は、例えば、450kHzのプラズマ生成用の高周波電力(以下、単に「高周波電力」という)を還元ガス導入部26へ供給することにより、処理空間Uに電界を生じさせる。整合器25は載置台12の電位を変更することにより、処理空間Uに生じた電界を維持する。処理空間Uに生じた電界は、処理空間Uへ導入された水素ガスや塩化ジルコニウムガスを励起・分解して水素プラズマや塩化ジルコニウムプラズマを生成する。
【0035】
成膜処理では、塩化ジルコニウムガスから塩化ジルコニウムプラズマが生成され、当該塩化ジルコニウムプラズマがウエハWの表面に到達してジルコニウム膜を形成する。また、還元処理では、水素ガスから水素プラズマが生成され、当該水素プラズマがウエハWの表面や暴露部品の表面に到達し、ウエハWや各暴露部品の表面を還元する。
【0036】
また、上述したように、載置台12は上下方向に移動可能に構成されるが、還元処理を実行する際、図5に示すように、載置台12は上昇し、載置台12とシャワーヘッド13の間の距離が成膜処理を実行する際よりも縮まる。具体的に、還元処理を実行する際、載置台12とシャワーヘッド13の間の距離は、例えば、5mmに設定される。
【0037】
さらに、プラズマ処理装置10には制御部(不図示)が設けられる。制御部は、少なくともCPUとメモリを有するコンピュータからなり、メモリには成膜処理や還元処理を実行するためのレシピ(プログラム)が記録される。
【0038】
ところで、上述したように、塩化ジルコニウムガスの励起・分解は容易ではないが、プラズマ処理装置10では、塩化ジルコニウムガスを処理空間Uに導入する原料ガス導入部27が接地する。したがって、処理空間Uに電界が生じた際、原料ガス導入部27にはセルフバイアスが生じて原料ガス導入部27の電位が低下する。これにより、プラズマ中のイオンが原料ガス導入部27へ引き込まれて原料ガス導入部27の周囲に存在する塩化ジルコニウムガスの各分子と積極的に衝突し、塩化ジルコニウムガスの励起・分解が促進される。
【0039】
また、原料ガス導入部27が接地するため、処理空間Uの電界から原料ガス導入部27へ向けてアーク放電が生じやすくなるが、当該アーク放電を受けて原料ガス導入部27の周囲に存在する塩化ジルコニウムガスの各分子のエネルギーが高まる。これによっても、塩化ジルコニウムガスの励起・分解が促進される。
【0040】
その結果、塩化ジルコニウムガスから塩化ジルコニウムプラズマが生じやすくなり、塩化ジルコニウムプラズマが多量に生じるため、ウエハWの表面にジルコニウム膜を安定的に形成することができる。また、このとき形成されるジルコニウム膜は安定するため、剥離等が発生しにくく、ジルコニウム膜の一部がパーティクルとして飛散するのを抑制することができ、暴露部品へのパーティクルの付着を防止することができる。
【0041】
ところで、原料ガス導入部27の各ガス穴27bの近辺には、塩化ジルコニウムガスから生じた副生成物が付着してそれらが落下するおそれがある。しかしながら、プラズマ処理装置10では、原料ガス導入部27が載置台12に載置されたウエハWと対向しないため、落下した副生成物がウエハWの表面に付着するのを防止することができる。
【0042】
さらに、例えば、各暴露部品の表面へ堆積した副生成物17が後述するクリーニング処理で完全に除去できなくなる場合、これらの暴露部品をチャンバ11から取り外し、薬液によって副生成物17を除去する。このとき、副生成物17のみを除去すると、暴露部品に表面が荒れた犠牲膜18が残存することになる。
【0043】
しかしながら、上述したように、プラズマ処理装置10では、犠牲膜18が副生成物17と同じ又は類似の成分からなるため、副生成物17を除去するための薬液で犠牲膜18も除去することができる。すなわち、薬液によって副生成物17だけでなく犠牲膜18も除去することができるため、副生成物17を除去した際に暴露部品に荒れた表面が残存することが無い。また、1種類の薬液で副生成物17だけでなく犠牲膜18も除去することができるため、暴露部品を何種類もの薬液で洗浄する必要を無くすことができ、暴露部品(特に、下地層16)へ薬液によるダメージを与えるのを抑制することができる。なお、薬液によって副生成物17や犠牲膜18が除去された暴露部品の表面(下地層16)には溶射等よって犠牲膜18が再生される。
【0044】
また、プラズマ処理装置10では、上述したように、載置台12やライナー14へヒータ19が埋め込まれる。成膜処理を実行する際、ヒータ19は載置台12やライナー14を加熱する。これにより、載置台12やライナー14に副生成物17が付着したとしても、副生成物17中の不純物を昇華等によって除去することができ、副生成物17に含まれる不純物を減少させることができる。その結果、副生成物17を塩素ガスや薬液によって除去しやすくすることができる。
【0045】
次に、プラズマ処理装置10で実行される各種処理について説明する。図6は、ウエハWの表面にジルコニウム膜を形成する際に実行される各種処理の流れを示すフローチャートである。なお、各種処理は、制御部がメモリに記録されたレシピを実行することにより、実現される。
【0046】
図6において、まず、プラズマ処理装置10は、ウエハWの自然酸化膜を除去する成膜前処理を実行し(ステップS61)、ウエハWの表面にジルコニウム膜を形成する成膜処理を実行する(ステップS62)。
【0047】
次いで、形成されたジルコニウム膜を還元する還元処理を実行し(ステップS63)、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS64)。そして、終了条件を満たしていない場合は、ステップS62に戻り、終了条件を満たしている場合は、本処理を終了する。図6の処理における終了条件は、例えば、還元処理(ステップS63)の繰り返し回数が、予め定められた回数に到達したか否かが該当する。
【0048】
また、プラズマ処理装置10では、上述した図6の処理の他、暴露部品から副生成物17を除去するためのクリーニング処理も実行される。以下、各種処理について詳細に説明する。
【0049】
まず、成膜前処理について説明する。通常、トランスファモジュール等の搬送装置によってウエハWがプラズマ処理装置10に搬入される前に、プラズマ処理装置10とは別のプラズマ処理装置において、ウエハWのシリコンの表面に形成された自然酸化膜がプラズマを用いて除去される。しかしながら、減圧されたトランスファモジュールの内部に微量の酸素が存在することがある。この場合、別のプラズマ処理装置からプラズマ処理装置10へウエハWが搬送されると、例えば、半導体デバイスにおいて、シリコンからなるソースやドレインの表面にこの微量の酸素が吸着して酸化層が形成されることがある。本実施の形態では、これに対応して、成膜処理を行う前に、形成された酸化層を還元等によって除去する成膜前処理を実行する。
【0050】
図7は、成膜前処理を示すフローチャートである。図7において、まず、搬入出口21からチャンバ11の内部へウエハWを搬入し、該ウエハWを載置台12へ載置する(ステップS71)。次いで、排気系23によってチャンバ11の内部を減圧し、還元ガス供給源30やアルゴンガス供給源37,38からガス拡散室26a,27aを介して水素ガスやアルゴンガスを処理空間Uへ導入する。また、高周波電源24が高周波電力を還元ガス導入部26へ供給し、処理空間Uに電界を生じさせる。このとき、電界によって励起・分解した水素ガスやアルゴンガスから生じる水素プラズマやアルゴンプラズマがスパッタリングや還元反応によって形成された酸化層を除去する(ステップS72)。その後、予め定められた時間が経過した後、本処理を終了する。
【0051】
なお、図7の処理では、アルゴンガスだけでなく水素ガスからもプラズマを生じさせてスパッタリングだけでなく還元反応も利用して形成された酸化層を除去した。しかしながら、形成された酸化層が極微量である場合には、アルゴンガス又は水素ガスのみを処理空間Uへ導入し、いずれかから生じたプラズマのみを用いて形成された酸化層を除去してもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、プラズマ処理装置10の成膜前処理に先立って別のプラズマ処理装置においてウエハWのシリコンの表面に形成された自然酸化膜を除去する。これにより、プラズマ処理装置10において、多量の自然酸化膜を除去する必要を無くし、自然酸化膜を除去する際に生じる酸素が処理空間Uに多く残留するのを防止することができる。その結果、成膜前処理の後の成膜処理で形成されたジルコニウム膜がチャンバ11の内部において酸化するのを抑制することができる。
【0053】
なお、ウエハWのシリコンの表面に形成された自然酸化膜の除去には必ずしもプラズマを用いる必要は無い。例えば、トランスファモジュール等の搬送装置によってウエハWがプラズマ処理装置10に搬入される前に、プラズマ処理装置10とは別の酸化物除去装置においてプラズマレスの処理で自然酸化膜を除去してもよい。この酸化物除去装置では、フッ化水素(HF)ガス及びアンモニア(NH)ガスを用いた化学反応によるプラズマレスのCOR(Chemical Oxide Removal)処理によって自然酸化膜が除去される。
【0054】
次に、成膜処理について説明する。図8は、成膜処理における各種ガスの導入タイミングや高周波電力の供給タイミングを示すシーケンス図である。なお、還元ガス導入部26へ高周波電力を供給すると、還元ガス導入部26から高周波(RF)電圧が処理空間Uへ印加されるため、図8では、高周波電力の供給を「RF印加」と表記する。
【0055】
成膜処理では、まず、成膜前処理で減圧されたチャンバ11の内部の状態を維持したまま、還元ガス供給源30やアルゴンガス供給源37からガス拡散室26aを介して水素ガスやアルゴンガスを処理空間Uへ導入する。また、同時に、原料ガス供給源34では、ヒータ43がアンプル39に収容された粉状の塩化ジルコニウムを加熱して塩化ジルコニウムガスを生じさせ、アルゴンガス供給源40はアルゴンガスをアンプル39の内部へ供給する。
【0056】
そして、塩化ジルコニウムガスを巻き込んだアルゴンガスはMFM41を通過するが、成膜処理の開始後から予め定められた時間が経過するまでは、配管33によってチャンバ11まで導かれず、エバック配管44を流れる。これにより、塩化ジルコニウムガスを巻き込んだアルゴンガスはチャンバ11を迂回して排気系23へ到り、そのままプラズマ処理装置10から排出される。
【0057】
その後、予め定められた時間が経過すると、塩化ジルコニウムガスを巻き込んだアルゴンガスは配管33によってチャンバ11まで導かれ、ガス拡散室27aを介して処理空間Uへ導入される。なお、塩化ジルコニウムガスを巻き込んだアルゴンガスを配管33へ流すか、エバック配管44へ流すかは、配管33やエバック配管44に配置された各バルブの開閉によって制御される。
【0058】
次いで、さらに予め定められた時間が経過して、処理空間Uの全体に塩化ジルコニウムガスが行き渡り、処理空間Uの状態が安定すると、高周波電源24が高周波電力を還元ガス導入部26へ供給する。これにより、処理空間Uに電界が生じ、該電界は処理空間Uへ導入された塩化ジルコニウムガスを励起・分解して塩化ジルコニウムプラズマを生成する。このとき、塩化ジルコニウムプラズマがウエハWの表面に到達してジルコニウム膜を形成する。なお、このときのウエハWの温度は載置台12のヒータによって300℃以上に維持される。また、処理空間Uへ導入された水素ガスは塩化ジルコニウムガスを還元して塩素やジルコニウムへの分解を促進する。
【0059】
ここで、塩化ジルコニウムガスは粉状の塩化ジルコニウムを加熱して気化させることによって発生するため、塩化ジルコニウムを加熱し始めてから暫くの間は、塩化ジルコニウムの全体が暖まりきらず、安定した量が発生しない。また、塩化ジルコニウムの全体が暖まりきらない間は、アルゴンガスによって巻き上げられた粉状の塩化ジルコニウムがそのままアンプル39から流出することがある。しかしながら、本実施の形態では、図8に示すように、アンプル39から流出する塩化ジルコニウムガスを巻き込んだアルゴンガスは、成膜処理の開始後から予め定められた時間が経過するまでエバック配管44を流れる。これにより、処理空間Uへ導入される塩化ジルコニウムガスが不足するのを防止でき、また、処理空間Uへ塩化ジルコニウムが粉状のまま流入するのを防止することができる。
【0060】
ところで、ウエハWの表面に存在する各MOSFET45では、ビアホール48がソース46へ向けて開口し、ビアホール49がドレイン47へ向けて開口する。そして、ジルコニウム膜を形成する際、ビアホール48やビアホール49に塩化ジルコニウムプラズマによって解離または活性化した塩化ジルコニウムガスが進入してジルコニウム50が堆積していく。
【0061】
しかしながら、半導体デバイスの更なる微細化に伴い、ビアホール48,49のアスペクト比が大きくなっている。そのために塩化ジルコニウムプラズマによって解離または活性化した塩化ジルコニウムガスがビアホール48,49の底部に到達する前に、ビアホール48,49の入り口に付着し易くなる。その結果、図9(A)に示すように、ビアホール48,49の入り口近傍にジルコニウム50が堆積し、堆積したジルコニウム50がビアホール48,49の入り口を塞ぐことがある。この場合、塩化ジルコニウムプラズマによって解離または活性化した塩化ジルコニウムガスがビアホール48,49の内部に十分に進入することができず、ジルコニウム50がビアホール48,49の内部でしっかりと堆積しない。その結果、ビアホール48,49に形成される配線が空孔等の欠陥を含むおそれがある。本実施の形態では、これに対応して、成膜処理を実行する際に、ビアホール48,49の入り口近傍に堆積したジルコニウム50(以下、「閉塞ジルコニウム」という)を除去する。
【0062】
図10は、成膜処理における閉塞ジルコニウムの除去処理を説明するための各種ガスの導入タイミングや高周波電力の供給タイミングを示すシーケンス図である。
【0063】
成膜処理において、処理空間Uへ導入される水素ガスを減らすと、塩化ジルコニウムガスの還元による塩素やジルコニウムへの分解が停滞し、処理空間Uに電界が生じていても、塩化ジルコニウムガスが分解されずにそのまま残存する可能性が高まる。そして、そのまま残存する塩化ジルコニウムガスは閉塞ジルコニウムと化学的に反応して塩化ジルコニウム(III)(ZrCl)51に変質するが、塩化ジルコニウム(III)51は塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl)と同程度に気化しやすい。したがって、閉塞ジルコニウムは塩化ジルコニウム(III)51となった後、気化して飛散する(図9(B))。すなわち、処理空間Uへ導入される水素ガスを減らすと、閉塞ジルコニウムを除去することができ、塩化ジルコニウムプラズマによって解離または活性化した塩化ジルコニウムガスをビアホール48,49の内部に十分に進入させることができる。その結果、ジルコニウム50をビアホール48,49の内部でしっかりと堆積させることができる(図9(C))。なお、ジルコニウム50と化学的に反応する塩化ジルコニウムガスは励起して塩化ジルコニウムのままプラズマとなったものと、励起されずにガスのまま存在するものの両方を含む。
【0064】
そこで、本実施の形態では、閉塞ジルコニウムを除去するために、成膜処理の実行中に処理空間Uへ導入される水素ガスを減量する。例えば、図10(A)に示すように、処理空間Uへ水素ガスを間欠的に導入する。この場合、処理空間Uへ水素ガスが導入されないときに塩化ジルコニウムガスによって閉塞ジルコニウムが除去され、処理空間Uへ水素ガスが導入されるときにビアホール48,49ではジルコニウム50が堆積する。すなわち、ビアホール48,49では、ジルコニウム50の堆積と閉塞ジルコニウムの除去が繰り返される。これにより、塩化ジルコニウムプラズマによって解離または活性化した塩化ジルコニウムガスが閉塞ジルコニウムに阻害されること無く、ビアホール48,49の内部に確実に進入することができる。その結果、ジルコニウム50がビアホール48,49の内部でしっかりと堆積してビアホール48,49に形成される配線が空孔等の欠陥を含むのを抑制することができる。
【0065】
さらに、成膜処理の実行中に処理空間Uへ導入される水素ガスを減量するために、例えば、図10(B)に示すように、処理空間Uへ導入される水素ガスの流量の漸減を繰り返してもよい。この場合、処理空間Uへ導入される水素ガスの流量が減少するときに塩化ジルコニウムガスによって閉塞ジルコニウムが除去され、処理空間Uへ導入される水素ガスの流量が増加するときにビアホール48,49ではジルコニウム50が堆積する。すなわち、図10(A)の場合と同様に、ビアホール48,49では、ジルコニウム50の堆積と閉塞ジルコニウムの除去が繰り返されるため、ビアホール48,49に形成される配線が空孔等の欠陥を含むのを抑制することができる。
【0066】
また、成膜処理において、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力を弱めると、処理空間Uの電界も弱くなり、塩化ジルコニウムガスの励起による塩素やジルコニウムへの分解が停滞する。そして、分解されずに残存する塩化ジルコニウムガスは、閉塞ジルコニウムと化学的に反応して塩化ジルコニウム(III)51に変質させて閉塞ジルコニウムを除去する。すなわち、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力を弱めると、閉塞ジルコニウムを除去して塩化ジルコニウムプラズマによって解離または活性化した塩化ジルコニウムガスをビアホール48,49の内部に十分に進入させることができる。その結果、処理空間Uへ導入される水素ガスを減らす場合と同様に、ジルコニウム50をビアホール48,49の内部でしっかりと堆積させることができる。
【0067】
そこで、本実施の形態では、閉塞ジルコニウムを除去するために、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力を弱めてもよい。例えば、図10(C)に示すように、還元ガス導入部26へ高周波電力を間欠的に供給する。この場合、還元ガス導入部26へ高周波電力が供給されないときに塩化ジルコニウムガスによって閉塞ジルコニウムが除去され、還元ガス導入部26へ高周波電力が供給されるときにビアホール48,49ではジルコニウム50が堆積する。すなわち、図10(A)の場合と同様に、ビアホール48,49では、ジルコニウム50の堆積と閉塞ジルコニウムの除去が繰り返されるため、ビアホール48,49に形成される配線が空孔等の欠陥を含むのを抑制することができる。
【0068】
さらに、成膜処理の実行中に還元ガス導入部26へ供給される高周波電力を弱めるために、例えば、図10(D)に示すように、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力の漸減を繰り返してもよい。この場合、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力が弱まるときに塩化ジルコニウムガスによって閉塞ジルコニウムが除去され、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力が強まるときにビアホール48,49ではジルコニウム50が堆積する。すなわち、図10(A)の場合と同様に、ビアホール48,49では、ジルコニウム50の堆積と閉塞ジルコニウムの除去が繰り返されるため、ビアホール48,49に形成される配線が空孔等の欠陥を含むのを抑制することができる。
【0069】
また、成膜処理では、塩化ジルコニウムガスを運搬するためにアンプル39の内部へアルゴンガスが供給されるが、供給されるアルゴンガスの流量が急激に増加した場合に気化されていない粉状の塩化ジルコニウムが巻き上げられる可能性がある。巻き上げられた粉状の塩化ジルコニウムはMFM41や配管33の各バルブへ到達し、これらの作動不良を引き起こすことがある。
【0070】
そこで、本実施の形態では、アンプル39の内部の圧力がモニタされ、アンプル39の内部の圧力が急上昇、すなわち、アンプル39の内部へ流入するアルゴンガスの流量が急激に増加しないように、アルゴンガス供給源40が制御される。具体的には、アンプル39の内部の圧力の変動が予め定められた範囲に収まるように、アルゴンガス供給源40からのアルゴンガスの流量が調整される。これにより、アンプル39の内部において粉状の塩化ジルコニウムが巻き上げられるのを抑制し、粉状の塩化ジルコニウムがMFM41や配管33の各バルブへ到達するのを防止する。
【0071】
次に、還元処理について説明する。本実施の形態では、成膜処理において、塩化ジルコニウムガスを励起・分解して塩化ジルコニウムプラズマを生じさせる。しかしながら、同時に、塩素が生じるため、塩素成分がジルコニウム50から形成されるソース46やドレイン47の配線に残存する可能性がある。また、ジルコニウム50は非常に酸化し易いため、処理空間Uに酸素が微量でも存在すると、この酸素と直ちに反応し、ジルコニウム50の表面は容易に酸化膜で覆われてしまう。酸化膜が残存すると、ジルコニウム50から形成されるソース46やドレイン47の配線の抵抗が大きくなり、MOSFET45が所望の性能を発揮できなくなる可能性がある。これに対応して、塩素成分や酸化膜を還元して除去するために、本実施の形態では還元処理を実行する。
【0072】
図11は、還元処理における各種ガスの導入タイミングや高周波電力の供給タイミングを示すシーケンス図である。図6のフローチャートに示すように、本実施の形態では、成膜処理と還元処理が繰り返して実行されるが、還元処理では処理空間Uへの塩化ジルコニウムガスの導入が停止される。したがって、図11において、塩化ジルコニウムガスが導入されていないタイミングが還元処理に該当する。
【0073】
図11に示すように、還元処理を行うタイミングであっても、還元ガス導入部26への高周波電力の供給は継続される。したがって、還元処理では、処理空間Uへ導入された水素ガスが励起・分解されて水素プラズマが生じる。この水素プラズマは成膜処理においてウエハWの表面に堆積したジルコニウム50の酸化膜や堆積したジルコニウム50に含まれる塩素成分を還元して除去する。
【0074】
そして、本実施の形態では、還元処理を実行する際、塩素成分や酸化膜の還元を促進するために、処理空間Uへ導入される水素ガスを追加して成膜処理を実行するときよりも処理空間Uへ導入される水素ガスの流量を増加させ、水素プラズマを増加させる。具体的には、還元処理を実行する際、バルブ32を開放して還元ガス供給源30だけでなくフィルタンク31からも水素ガスを還元ガス導入部26のガス拡散室26aへ供給する。これにより、各ガス拡散室26aから処理空間Uへ導入される水素ガスの流量を増加させる。このとき、処理空間Uへ導入される水素ガスの流量は10L/分以上となる。また、水素ガスの流量が増加するため、処理空間Uの圧力は10mTorr以上に維持される。
【0075】
また、増加した水素ガスを確実に解離・分解させるために、還元ガス導入部26へ供給される高周波電力を強め、電界を強める。このとき、整合器25の可変コンデンサであるロード(LOAD)やチューン(TUNE)のインピーダンスを変更して載置台12の電位を調整し、還元ガス導入部26からの高周波電力の反射を防止する。
【0076】
プラズマ処理装置10の制御部は、例えば、図12に示すような、整合器25のロードやチューンのインピーダンスと、処理空間Uへ導入される水素ガスの流量との関係を予め記憶する。そして、これらの関係に従って整合器25のロードやチューンのインピーダンスを決定する。なお、制御部は、整合器25のロードやチューンのインピーダンスと、フィルタンク31の圧力との関係を記憶していてもよく、又は整合器25のロードやチューンのインピーダンスと、チャンバ11の内部の圧力との関係を記憶していてもよい。
【0077】
本実施の形態では、還元処理が繰り返して実行されるが、これにより、ジルコニウム50の酸化膜やジルコニウム50に含まれる塩素成分が新たなジルコニウム50によって覆われる前に、これらの酸化膜や塩素成分を除去することができる。その結果、ソース46やドレイン47の配線に酸化膜や塩素成分が残存するのを防止することができ、MOSFET45が所望の性能を発揮できなくなることを防止することができる。
【0078】
なお、還元処理を実行する際、より還元力を高めるために、水素/重水素ガス供給源36から水素ガスと重水素ガスを処理空間Uへ導入し、水素プラズマだけで無く重水素プラズマを生じさせてもよい。水素/重水素ガス供給源36から水素ガスと重水素ガスを処理空間Uへ導入する際、還元ガス供給源30やフィルタンク31から処理空間Uへ水素ガスを導入してもよく、または、還元ガス供給源30やフィルタンク31からの水素ガスの導入を停止してもよい。
【0079】
さらに、本実施の形態では、上述したように、還元処理を実行する際、載置台12を上昇させて、載置台12とシャワーヘッド13の間の距離を成膜処理が実行される際よりも縮める。これにより、処理空間Uの水素プラズマの密度を高めることができ、さらに還元力を高めることができる。
【0080】
また、還元処理が必要となる、ジルコニウム50の表面が酸化膜で容易に覆われるような場合には、処理空間Uの酸素濃度が高まっていると考えられる。したがって、酸素濃度モニタによって処理空間Uの酸素濃度をモニタし、処理空間Uの酸素濃度が予め定められた酸素濃度を上回ったときに、ステップS63の還元処理を実行してもよい。
【0081】
次に、クリーニング処理について説明する。本実施の形態において、クリーニング処理は、成膜前処理、成膜処理や還元処理とは独立して実行される。本実施の形態に係るクリーニング処理では、パーティクルの発生要因となる、暴露部品の表面に堆積した副生成物17を除去する。
【0082】
ところで、副生成物17の主成分はジルコニウムである。ここで、通常、暴露部品のクリーニング処理では三弗化塩素(ClF)ガスを用いるが、三弗化塩素ガスとジルコニウムが反応して生成される弗化ジルコニウム(ZrF)の飽和蒸気圧は低く、気化しにくい。したがって、ジルコニウム膜を形成するプラズマ処理装置10では、三弗化塩素ガスを用いてクリーニング処理を実行しても、暴露部品に堆積した副生成物17を除去するのが困難である。一方、塩化ジルコニウムは弗化ジルコニウムよりも飽和蒸気圧が高く、気化しやすい。そこで、本実施の形態では、クリーニング処理において弗素を含まない塩化物ガス、例えば、塩素ガスを副生成物17と反応させて塩化ジルコニウムを生成し、この塩化ジルコニウムを気化させることにより、副生成物17を除去する。なお、クリーニング処理には、塩素ガスの他に、塩化物ガスである塩化水素ガス、三塩化硼素ガス、塩化チタン(IV)ガスや塩化ジルコニウム(IV)ガスを用いることができる。また、クリーニング処理には、弗素を含まず且つ塩素を含むガスを用いることができる。
【0083】
また、上述したように、暴露部品の表面に堆積した副生成物17の主成分はジルコニウムであるため、処理空間Uに酸素が微量でも存在すると、副生成物17の表面はこの酸素と反応して酸化膜で覆われることがある。この酸化膜は塩素ガスと副生成物17の反応を阻害する。そこで、本実施の形態では、処理空間Uに弗素を含まない塩化物ガス、例えば、塩素ガスを導入する前に、還元反応によって副生成物17の表面を覆う酸化膜を還元する。
【0084】
図13は、クリーニング処理を示すフローチャートである。本実施の形態において、クリーニング処理は、成膜処理の実行時間の積算値が予め定められた時間を超えた場合等に実行される。
【0085】
クリーニング処理では、例えば、図13(A)に示すように、まず、還元ガス供給源30から処理空間Uへ水素ガスを導入し、さらに、処理空間Uに電界を生じさせて、水素ガスを励起・分解し、水素プラズマを生じさせる。この水素プラズマは副生成物17の表面を覆う酸化膜を還元する(ステップS131)。
【0086】
次いで、クリーニングガス供給源35から弗素を含まない塩化物ガス、例えば、塩素ガスを還元ガス導入部26のガス拡散室26aや原料ガス導入部27のガス拡散室27aを介して処理空間Uへ導入する。このとき、塩素ガスは暴露部品の表面に堆積した副生成物17と反応して塩化ジルコニウムを生成する。そして、生成された塩化ジルコニウムは、チャンバ11の内部が減圧されていることから、容易に気化する。これにより、副生成物17が除去される(ステップS132)。その後、本処理を終了する。
【0087】
なお、堆積した副生成物17が多い場合は、ステップS132において、処理空間Uへ塩素ガスを導入する際、処理空間Uに電界を生じさせて塩素ガスを励起・分解し、塩素プラズマを生じさせてもよい。塩素プラズマは塩素ガスよりもエネルギーが高いため、副生成物17とより積極的に反応し、堆積した副生成物17が多くても、全ての副生成物17を塩化ジルコニウムへ変更することができ、もって、副生成物17を確実に除去することができる。
【0088】
また、アンモニアガスも強い還元力を有するため、副生成物17の表面を覆う酸化膜を還元する際、水素ガスと併用してもよい。例えば、図13(B)に示すように、まず、ステップS131を実行した後、不図示のアンモニアガス供給源から処理空間Uへアンモニアガスを導入し、さらに、処理空間Uに電界を生じさせて、アンモニアガスを励起・分解し、アンモニアプラズマを生じさせる。このアンモニアプラズマも副生成物17の表面を覆う酸化膜を還元する(ステップS133)。次いで、ステップS132を実行して副生成物17を除去した後、本処理を終了する。
【0089】
さらに、副生成物17を確実に除去するために、ステップS131やステップS132を繰り返してもよい。例えば、図13(C)に示すように、ステップS131を経てステップS132を実行した後、クリーニング処理の終了条件を満たしたか否かを判定する(ステップS134)。終了条件を満たしていない場合は、ステップS131に戻ってステップS131及びステップS132を再度実行し、満たしている場合は、本処理を終了する。
【0090】
また、アンモニアガスを水素ガスと併用する場合は、ステップS131乃至ステップS133を繰り返してもよい。例えば、図13(D)に示すように、ステップS131、ステップS133を経てステップS132を実行した後、クリーニング処理の終了条件を満たしたか否かを判定する(ステップS134)。終了条件を満たしていない場合は、ステップS131に戻ってステップS131乃至ステップS133を再度実行し、満たしている場合は、本処理を終了する。
【0091】
ステップS134の終了条件は、例えば、ステップS132の実行回数が予め定められた回数を超えたか否かが該当する。また、副生成物17を除去する際に酸素が発生することから、ステップS134において、酸素濃度モニタによって処理空間Uの酸素濃度をモニタすることによってクリーニング処理の終了条件を満たしたか否かを判定してもよい。この場合、除去されるべき副生成物17がほぼ無くなって酸素が発生しなくなり、処理空間Uの酸素濃度が予め定められた酸素濃度を下回ったときに、終了条件を満たすと判定される。
【0092】
以上、本開示の好ましい実施の形態について説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0093】
例えば、本実施の形態では、ソース46やドレイン47の配線をジルコニウムで形成したが、当該配線をジルコニウムシリサイド(ZrSi)で形成してもよい。
【0094】
また、ソース46やドレイン47の配線をチタンシリサイド(TiSi)で形成し、その後、処理空間Uで塩化ジルコニウムプラズマを生じさせ、該塩化ジルコニウムプラズマによってチタンシリサイドへジルコニウムをドープしてもよい。なお、この場合、暴露部品の表面に堆積する副生成物17の主成分はジルコニウムではなくチタン(Ti)となるため、犠牲膜18はチタンや窒化チタン(TiN)で形成するのが好ましい。
【0095】
また、ソース46やドレイン47の配線をジルコニウムシリサイドで形成した後、ジルコニウムシリサイド上にチタンを成膜してもよく、若しくはジルコニウムの成膜とチタンの成膜を繰り返してもよい。特に、ジルコニウムシリサイド上にチタンを成膜することにより、ジルコニウムシリサイドのシリコン成分がチタンに吸い上げられてチタンシリサイドが形成される。
【0096】
ジルコニウムシリサイド上にチタンを成膜する方法としては、ジルコニウムシリサイドの形成後に塩化チタン(IV)ガスと水素ガスをチャンバ11の内部に供給してこれらのガスからプラズマを生じさせるCVD処理によってチタンを成膜する方法が用いられる。この方法では、図14に示すプラズマ処理装置53が用いられる。プラズマ処理装置53は、プラズマ処理装置10と同様の構成を備えるが、塩化チタン(IV)ガス供給源54を備える点がプラズマ処理装置10と異なる。プラズマ処理装置53では、塩化チタン(IV)ガス供給源54が配管55を介して還元ガス導入部26のガス拡散室26aへ接続される。そして、ガス拡散室26aにおいて混合された塩化チタン(IV)ガス及び還元ガスとしての水素ガスが処理空間Uへ導入され、処理空間Uの電界が塩化チタン(IV)ガスを励起・分解して塩化チタンプラズマを生成する。この塩化チタンプラズマがジルコニウムシリサイド上にチタンを成膜する。
【0097】
なお、プラズマ処理装置53は、上述したように、プラズマ処理装置10と同様の構成を備えるため、ジルコニウム膜の形成とチタン膜の形成を同じチャンバ11で行うことができる。これにより、ジルコニウム膜の形成とチタン膜の形成をそれぞれ異なるチャンバ11で行う必要を無くし、チャンバ11の数を減らしてプラズマ処理装置の大型化、数の増加を避けてフットプリントの増加を抑制することができる。
【0098】
また、プラズマ処理装置10のシャワーヘッド13では、水素ガスが還元ガス導入部26から処理空間Uへ導入され、塩化ジルコニウムガスが原料ガス導入部27から処理空間Uへ導入された。すなわち、水素ガスと塩化ジルコニウムガスはそれぞれ別個に処理空間Uへ導入された。
【0099】
しかしながら、塩化ジルコニウムガスと水素ガスが処理空間Uへ導入される前に予め混合されてもよい。この場合、プラズマ処理装置56は、シャワーヘッド13の代わりに、図15に示すように、シャワーヘッド52を備える。
【0100】
シャワーヘッド52はシャワーヘッド13と同様の外形を有し、内部に形成されたガス拡散室52aと、ガス拡散室52a及び処理空間Uを連通させる多数のガス穴52bを有する。シャワーヘッド52には配管29を介して還元ガス供給源30が接続され、また、配管33を介して原料ガス供給源34が接続される。したがって、還元ガス供給源30から供給される水素ガスと原料ガス供給源34から供給される塩化ジルコニウムガスは、処理空間Uへ導入される前にガス拡散室52aにおいて混合される。その後、混合された水素ガスと塩化ジルコニウムガスは各ガス穴52bを介して処理空間Uに導入される。
【0101】
このとき、処理空間Uでは、塩化ジルコニウムガスの近傍に水素ガスが存在することになるため、プラズマによって励起された塩化ジルコニウムガスは直ちに水素ガスに触れ、当該水素ガスによって還元されて塩素やジルコニウムへの分解が促進される。その結果、塩化ジルコニウムプラズマが生じ易くなる。また、各ガス穴27bはシャワーヘッド52の処理空間Uに対向する面の広範囲に亘って設けられる。これにより、シャワーヘッド52からは、広範囲に亘って塩化ジルコニウムガスが処理空間Uへ導入されることになるため、塩化ジルコニウムガスとプラズマが接触する領域が多くなる。この点からも、塩化ジルコニウムガスの励起・分解が促進されて塩化ジルコニウムプラズマが生じ易くなる。
【0102】
以上より、プラズマ処理装置56がシャワーヘッド52を備える場合であっても、塩化ジルコニウムプラズマを多量に生じさせて、ウエハWの表面にジルコニウム膜を安定的に形成することができる。
【0103】
また、プラズマ処理装置10では、成膜処理を実行する際、ヒータ19は載置台12やライナー14等の暴露部品を加熱して副生成物17に含まれる不純物を減少させたが、逆に、暴露部品を低温、例えば、120℃以下に維持してもよい。この場合、暴露部品の表面において副生成物17を生成する反応が進まず、暴露部品の表面に副生成物17が堆積するのを抑制することができる。なお、暴露部品を低温に維持する方法としては、暴露部品にヒータが埋め込まれている場合、当該ヒータによる加熱を停止すればよく、暴露部品にチラー等の冷却機構が埋め込まれている場合、当該冷却機構によって暴露部品を冷却する。
【0104】
さらに、成膜前処理では、ウエハWをチャンバ11の内部へ搬入した後に処理空間Uで水素プラズマを生じさせたが、ウエハWをチャンバ11の内部へ搬入する前に処理空間Uで水素プラズマを生じさせてもよい。この場合、ソースやドレインの表面に自然酸化膜を発生させる酸素を還元反応によって事前にチャンバ11の内部から除去することができ、当該自然酸化膜の発生を抑制することができる。
【0105】
また、酸素濃度モニタはクリーニング処理の終了条件の判定に用いられるが、成膜前処理や還元処理の終点検知に用いてもよい。成膜前処理や還元処理では酸化膜が除去される際に酸素が発生するため、酸素が発生しなくなったときは酸化膜が除去されたと考えることができる。そこで、成膜前処理や還元処理では酸素濃度モニタによって処理空間Uの酸素濃度をモニタし、処理空間Uの酸素濃度が予め定められた酸素濃度を下回ったときに、成膜前処理や還元処理を終了すべきと判定してもよい。
【符号の説明】
【0106】
U 処理空間
W ウエハ
10 プラズマ処理装置
11 チャンバ
12 載置台
13 シャワーヘッド
24 高周波電源
26 還元ガス導入部
27 原料ガス導入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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