(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150540
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】燃料電池、蓄電池および電池用の新規の凍結防止剤および冷却剤
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
C09K5/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112809
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2021523673の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】18204600.3
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19156713.0
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19156712.2
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ディートル
(72)【発明者】
【氏名】バイラム アイディン
(72)【発明者】
【氏名】ローガー ズィーク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却システムのための本質的に無水の新規の凍結防止剤であって、水でさらに希釈することなく冷却剤および凍結防止剤として使用できるものを提供する。
【解決手段】凍結防止剤は、(A)式(I)のアルキレングリコール誘導体および(B)特定の腐食防止剤を含有し、
ただし、1質量%未満の水を含有し、n≦2である上記アルキレングリコール誘導体を、10質量%以下含有し、n≧5である上記のアルキレングリコール誘導体を、5質量%以下含有し、特定のグリコール類を10質量%以下含有し、95~99.9質量%の成分(A)、および0.1~5質量%の成分(B)を含有し、かつ、25℃で最大50μS/cmの電気伝導率を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システム用のすぐに使用できる凍結防止剤であって、
(A) 式(I)の少なくとも1つのアルキレングリコール誘導体
【化1】
[式中、
R
1は、水素またはC
1~C
4-アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチル、特に好ましくは水素またはメチル、およびとりわけ特に好ましくは水素であり、
R
2は、C
1~C
4-アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはn-ブチル、特に好ましくはメチルまたはn-ブチル、およびとりわけ特に好ましくはメチルであり、
R
3は、水素またはメチル、好ましくは水素であり、且つ
nは算術平均で3.0~4.0の数である]
および
(B) 以下からなる群から選択される少なくとも1つの腐食防止剤
(Ba) オルトケイ酸エステルおよび/またはアルコキシアルキルシラン
(Bb) アゾール誘導体
(Bc) 一般式(II)の化合物
【化2】
[式中、
R
4は、6~10個の炭素原子を有する有機基、殊に6~10個の炭素原子、好ましくは7~9個、および特に好ましくは8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、好ましくは直鎖のアルキル基またはアルケニル基であり、
pおよびqは互いに独立して1~30、好ましくは1~20、特に好ましくは1~10、とりわけ特に好ましくは1~5、および殊に1~3、特に1または2の正の整数であり、且つ
各々のX
iは、i=1~p且つ1~qについて、互いに独立して-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-、-CH(CH
3)-CH(CH
3)-O-、-CH
2-CH
2-CH
2-O-および-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-からなる群から選択され、好ましくは-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-および-CH(CH
3)-CH
2-O-からなる群から選択され、特に好ましくは-CH
2-CH
2-O-である]
を含有し、ただし、該組成物は、
・ 1質量%未満、好ましくは0.75質量%未満、特に好ましくは0.5質量%未満、とりわけ特に好ましくは0.4質量%未満、殊に0.3質量%未満、および特に0.2質量%未満の水を含有し、
・ n≦2である式(I)のアルキレングリコール誘導体を、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下、とりわけ特に好ましくは5質量%以下、殊に4質量%以下、および特に3質量%以下の割合で含有し、
・ n≧5である式(I)のアルキレングリコール誘導体を、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、とりわけ特に好ましくは2.5質量%以下、および特に2質量%以下の割合で含有し、
・ モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールおよびグリセリンを、それぞれ10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下、とりわけ特に好ましくは5質量%以下、および特に3質量%以下の割合で含有する、
前記凍結防止剤。
【請求項2】
25℃で最大50μS/cm、好ましくは25μS/cm以下、特に好ましくは15μS/cm以下、とりわけ特に好ましくは10μS/cm以下、および殊に5μS/cm以下の電気伝導率を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1013hPaで少なくとも200℃、好ましくは少なくとも210℃、特に好ましくは少なくとも220℃、とりわけ特に好ましくは少なくとも230℃、および殊に少なくとも250℃の沸点を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ASTM D445に準拠して最高4mm2/秒の100℃での動粘度を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ASTM D445に準拠して600mm2/秒以下のマイナス40℃での動粘度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも2.0kJ/kg・Kの50℃での比熱容量を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも0.15W/m・Kの熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
構造要素R3-N<が、n-ヘキシルアミン、2-メチルペンチルアミン、n-ヘプチルアミン、2-ヘプチルアミン、イソヘプチルアミン、1-メチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-アミノオクタン、6-メチル-2-ヘプチルアミン、n-ノニルアミン、イソノニルアミン、n-デシルアミンおよび2-プロピルヘプチルアミンからなる群、またはそれらの混合物からなる群から選択されるアミンから誘導されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アゾール誘導体が、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールおよび/または水素化トリルトリアゾールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
95~99.9質量%の成分(A)、および
0.1~5質量%の成分(B)
を含有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
n=3である式(I)のアルキレングリコール誘導体:n=4である式(I)のアルキレングリコール誘導体の比が、100:0~40:60であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
成分(A)、成分(B)、前記成分(B)とは異なる任意の少なくとも1つのさらなる腐食防止剤(C)、並びに、苦味剤、色素、消泡剤および酸化防止剤からなる群から選択される任意の少なくとも1つのさらなる化合物からなる、請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
燃料電池、蓄電池および/または電池における冷却システムのための冷却剤および凍結防止剤としての、請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
リチウムイオン蓄電池のための冷却剤としての、請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物の使用であって、イオン不含水を水性の混合物全体に対して50質量%まで含有し、燃料電池のための冷却剤および凍結防止剤として用いる使用。
【請求項16】
前記水性の混合物が、50μS/cm以下、好ましくは25μS/cm以下、特に好ましくは15μS/cm以下、およびとりわけ特に好ましくは10μS/cm以下の、25℃での電気伝導率を有することを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
相対的に高い温度で熱源からの熱を少なくとも1つの第1の熱交換器を介して冷却剤に移し、この冷却剤を冷却回路内で少なくとも1つの第2の熱交換器にみちびき、そこで相対的に低い温度で前記冷却剤から熱を除去することによる冷却方法であって、
・ 冷却剤として請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物を使用し、
・ 前記相対的に高い温度が60℃~300℃であり、
・ 前記相対的に低い温度がマイナス50℃~100℃であり、
・ 前記相対的に低い温度が、前記相対的に高い温度よりも少なくとも50℃低い
ことを特徴とする、前記冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却システム用の本質的に無水の新規の凍結防止剤、つまり水でさらに希釈することなく冷却剤および凍結防止剤として使用できるもの、および燃料電池および/または電池を備える電気自動車における、および/または燃料電池および/または電池を内燃機関と共に備える電気自動車からのハイブリッド車における、好ましくは自動車、特に好ましくは乗用車および商用車(いわゆる小型車および大型車)における、冷却システム内でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
移動用途のための、特に自動車における燃料電池および/または電池は、例えば約マイナス40℃までの低い外気温の際にも動作できなければならない。従って、霜防止冷却剤回路が必須である。
【0003】
さらに、電池の急速充電の際、温度は100℃より上まで達するので、それぞれの部品が損傷しないように熱を除去しなければならない。
【0004】
モノアルキレングリコールに基づき任意にグリセリンを併用する、内燃機関で用いられる従来の冷却器保護剤の使用は、燃料電池および/または電池の場合は、冷却路を完全に電気的に絶縁することなしには不可能であり、なぜなら、これらの剤はその中に腐食防止剤として含有される塩およびイオン化し得る化合物ゆえに、高すぎる電気伝導率を有し、それが燃料電池または電池の機能に悪影響を及ぼし得るからである。さらに、例えば電池の漏れを伴う事故の場合、冷却液でアノードとカソードとが短絡する際に、短絡および/または電解質による水素ガスの発生が生じるおそれがあり、それがさらなる危険の可能性をもたらす。
【0005】
このために、低い伝導率を有する水およびエチレングリコール含有の冷却剤が知られている(例えば米国特許出願公開第2015/266370号明細書(US2015/266370))。
【0006】
国際公開第1995/07323号(WO95/07323)はプロピレングリコールおよび任意のエチレングリコールに基づく含水率0.5質量%未満の無水の冷却剤を開示しているが、内燃機関用であるに過ぎない。電気部品を冷却するための使用は提案されていない。
【0007】
さらに冷却器保護剤は長期間にわたり、多くの場合低い最初の電気伝導率を保持し、多くの場合イオンを形成する種々の分解過程によってその伝導率が上昇しないことが必要である。
【0008】
欧州特許第1399523号明細書(EP1399523)から、水/モノエチレングリコールに基づき、抑制剤としてアゾール誘導体並びに任意にオルトケイ酸エステルを含有する、燃料電池用の冷却剤が公知である。
【0009】
従来の冷却器保護液中の実質的な成分としての水によって、この冷却器保護液の使用温度は、動作圧力でのそれぞれの混合物中の水の沸点に制限される。従って、典型的な従来の冷却器保護液としての水とモノエチレングリコールからの混合物は通常、標準圧力の際に約110~120℃で沸騰する。
【0010】
従来技術において、無水の冷却剤濃縮物が広く、例えば米国特許第8394287号明細書(US8394287)において記載されており、そこでは、冷却器保護剤、多くの場合モノエチレングリコールが種々の添加剤、例えば腐食防止剤、酸化防止剤、消泡剤、苦味剤および色素と混合される。米国特許第8394287号明細書は、前記濃縮物に加えて、少なくとも1つのさらなる冷却器保護成分、例えばモノプロピレングリコール、より高級なエチレングリコール同族体またはグリセリンの存在を記載している。
【0011】
これらの冷却剤濃縮物の目的は常に、冷却剤として使用するために後に水で希釈することであり(多くの場合、含水率30~70体積%で)、希釈しない濃縮物を冷却剤として使用することは想定されていない。
【0012】
いわゆる超濃縮物も記載されることが多く、その際、それは相対的に少ない冷却器保護成分、多くの場合、モノエチレングリコールまたはモノプロピレングリコール中で本質的に高濃縮された上記の添加剤の配合物である。
【0013】
この超濃縮物の目的は常に、その冷却剤濃縮物を製造し、そこから本来の冷却剤を製造するために冷却器保護成分で後に希釈することである。冷却剤としての希釈しない超濃縮物の使用は想定されていない。
【0014】
モノエチレングリコールは標準圧力の際に197℃で沸騰するので、モノエチレングリコールを含有する組成物は約170℃の温度から顕著な蒸気圧を有し、そのことは高温での熱媒液としてのそれらの使用を制限する。同様のことがモノエチレングリコールモノメチルエーテル(標準圧力の際の沸点124℃)およびモノプロピレングリコール(標準圧力の際の沸点188℃)にも該当する。
【0015】
冷却器保護液の成分としてのグリセリンはたしかに約290℃の比較的高い沸点を有するのだが、その際、それは分解する。従って、高温でのグリセリンは分解反応の傾向があり、従ってそのような条件下では熱媒液としてはあまり適していない。
【0016】
従って、水および冷却器保護液中で使用されることが多い低級のアルキレングリコール、特にモノアルキレングリコール、およびそれらのエーテル、並びにグリセリンは、高温での熱媒液として使用するためには大きな欠点を有する。
【0017】
比較的高い温度で熱を伝えるべき場合、冷却システムを比較的高い圧力に設計するか、または、冷却剤としての油、例えば鉱油、合成油または脂肪酸エステル、またはフッ素化された炭化水素に換えるかのいずれかの必要がある。冷却システムは通常、環境に対して開放されているので、前者は技術的に煩雑である。後者はとりわけ、それらが小さな熱容量を有し、且つ冷却システムの開いた構成によって水が侵入した場合、水との適合性が低いことによって2つの相を形成するという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/266370号明細書
【特許文献2】国際公開第1995/07323号
【特許文献3】欧州特許第1399523号明細書
【特許文献4】米国特許第8394287号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、電気自動車における、および/または燃料電池および/または電池を内燃機関と共に備える電気自動車からのハイブリッド車における、電池または燃料電池において使用するための冷却剤であって、高温で使用可能であり、且つその際、高い熱容量を有すると共に、開いた冷却システムにおける使用に適しており、且つ水との適合性を示す、前記冷却剤を開発することが課題である。
【0020】
さらに、それらはさらにまた、低い伝導率を有し且つこれが動作の際にも保持されるべきであり、そのことは特に低い腐食を必要とし、なぜなら、腐食は冷却剤中にイオンが入ることを意味し、それが電気伝導率を高めかねないからである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の課題は、冷却システム用のすぐに使用できる凍結防止剤であって、
(A) 式(I)の少なくとも1つのアルキレングリコール誘導体
【化1】
[式中、
R
1は、水素またはC
1~C
4-アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチル、特に好ましくは水素またはメチル、およびとりわけ特に好ましくは水素であり、
R
2は、C
1~C
4-アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはn-ブチル、特に好ましくはメチルまたはn-ブチル、およびとりわけ特に好ましくはメチルであり、
R
3は、水素またはメチル、好ましくは水素であり、且つ
nは算術平均で3.0~4.0の数である]
および
(B) 以下からなる群から選択される少なくとも1つの腐食防止剤
(Ba) オルトケイ酸エステルおよび/またはアルコキシアルキルシラン
(Bb) アゾール誘導体
(Bc) 一般式(II)の化合物
【化2】
[式中、
R
4は、6~10個の炭素原子を有する有機基、殊に6~10個の炭素原子、好ましくは7~9個、および特に好ましくは8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、好ましくは直鎖のアルキル基またはアルケニル基であり、
pおよびqは互いに独立して1~30、好ましくは1~20、特に好ましくは1~10、とりわけ特に好ましくは1~5、および殊に1~3、特に1または2の正の整数であり、且つ
各々のX
iは、i=1~p且つ1~qについて、互いに独立して-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-、-CH(CH
3)-CH(CH
3)-O-、-CH
2-CH
2-CH
2-O-および-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-からなる群から選択され、好ましくは-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-および-CH(CH
3)-CH
2-O-からなる群から選択され、特に好ましくは-CH
2-CH
2-O-である]
を含有し、ただし、該組成物は、
・ 1質量%未満、好ましくは0.75質量%未満、特に好ましくは0.5質量%未満、とりわけ特に好ましくは0.4質量%未満、殊に0.3質量%未満、および特に0.2質量%未満の水を含有し、
・ n≦2である式(I)のアルキレングリコール誘導体を、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下、とりわけ特に好ましくは5質量%以下、殊に4質量%以下、および特に3質量%以下の割合で含有し、
・ n≧5である式(I)のアルキレングリコール誘導体を、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、とりわけ特に好ましくは2.5質量%以下、および特に2質量%以下の割合で含有し、
・ モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールおよびグリセリンを、それぞれ10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下、とりわけ特に好ましくは5質量%以下、および特に3質量%以下の割合で含有する、
前記凍結防止剤によって解決された。
【0022】
個々の成分を以下でより詳細に説明する:
成分(A)
式(I)の少なくとも1つのアルキレングリコール誘導体
【化3】
において、
R
1は、水素またはC
1~C
4-アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチル、特に好ましくは水素またはメチル、およびとりわけ特に好ましくは水素であり、
R
2は、C
1~C
4-アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはn-ブチル、特に好ましくはメチルまたはn-ブチル、およびとりわけ特に好ましくはメチルであり、
R
3は、水素またはメチル、好ましくは水素であり、且つ
nは算術平均で3.0~4.0の数である。
【0023】
好ましいアルキレングリコール誘導体(A)は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル
トリエチレングリコールモノエチルエーテル
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
トリエチレングリコールジメチルエーテル
トリエチレングリコールジエチルエーテル
トリエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル
テトラエチレングリコールモノメチルエーテル
テトラエチレングリコールモノエチルエーテル
テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
テトラエチレングリコールジメチルエーテル
テトラエチレングリコールジエチルエーテル
テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
トリプロピレングリコールモノエチルエーテル
トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
トリプロピレングリコールジメチルエーテル
トリプロピレングリコールジエチルエーテル
トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル
テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル
テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル
テトラプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
テトラプロピレングリコールジメチルエーテル
テトラプロピレングリコールジエチルエーテル
テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル
である。
【0024】
その際、エチレングリコールエーテルは、プロピレングリコールエーテルよりも好ましい。
【0025】
さらに、モノアルキルエーテルはジアルキルエーテルよりも好ましい。
【0026】
好ましくは、成分(A)は、n=3である式(I)の本質的に純粋な化合物であるか、またはn=3およびn=4である式(I)の化合物の混合物である。混合物での式(I)の化合物についてnは算術平均において好ましくは3.0~3.6、特に好ましくは3.0~3.5、とりわけ特に好ましくは3.05~3.4、殊に3.1~3.3、および特に3.15~3.25である。
【0027】
その際、混合物での前記化合物についてR1基およびR2基は同じであるかまたは異なっていてよく、好ましくは同じである。
【0028】
「本質的に純粋」とは、n=3もしくはn=4である式(I)の化合物が、nについてより高いおよびより低い値を有する同族体の化合物も特定の割合まで含有されることを示す。
【0029】
通常、n=3である式(I)の化合物の場合、純度は少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも85質量%、とりわけ特に好ましくは少なくとも90質量%、殊に少なくとも95質量%、および特に少なくとも97.5質量%である。残分は主に、n=2およびn=4である式(I)の化合物である。
【0030】
これに対し、n=4である式(I)の化合物の場合、純度は多くの場合、50質量%を上回るに過ぎず、好ましくは少なくとも55、特に好ましくは少なくとも60質量%である。残分は主に、n=3およびより少ない程度でn=5である式(I)の化合物である。
【0031】
本質的に純粋な化合物での好ましい成分(A)は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル
トリエチレングリコールモノエチルエーテル
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
である。
【0032】
n=3およびn=4である式(I)の化合物の混合物での好ましい成分(A)は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物、
トリエチレングリコールモノエチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合物、
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとの混合物
である。
【0033】
あまり好ましくはないが、異なるR1基を有する、n=3およびn=4である式(I)の化合物の混合物も考えられる。
【0034】
そのような混合物は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノメチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノエチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノエチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルと、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合物
である。
【0035】
あまり好ましくはないが、各々のnについてR3が互いに独立して同じかまたは異なっていてよい式(I)の混合アルキレングリコール誘導体、つまり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物からの式(I)のトリアルキレングリコールおよびテトラアルキレングリコール誘導体も考えられる。
【0036】
n=3およびn=4である式(I)の化合物の混合物の場合、その質量比は、好ましくは100:0~40:60、特に好ましくは95:5~50:50、とりわけ特に好ましくは90:10~60:40、殊に85:15~70:30、および特に85:15~75:25である。
【0037】
成分(B)
成分(B)は、
(Ba) オルトケイ酸エステルおよび/またはアルコキシシラン、
(Bb) アゾール誘導体、および
(Bc) 一般式(II)の化合物
【化4】
からなる群から選択される少なくとも1つの腐食防止剤である。
【0038】
オルトケイ酸エステル(Ba)は、式
Si(OR5)4
の化合物であり、前記式中、
R5はそれぞれ1~6個の炭素原子を有する有機基、好ましくは1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、好ましくは直鎖のアルキル基、または6個の炭素原子を有するアリール基、特に好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、とりわけ特に好ましくは1または2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0039】
これについての例は、
オルトケイ酸テトラメチルエステル
オルトケイ酸テトラエチルエステル
オルトケイ酸テトラ-n-ブチルエステル
オルトケイ酸テトラフェニルエステル
である。好ましくは
オルトケイ酸テトラメチルエステル
オルトケイ酸テトラエチルエステル
である。特に好ましくは、
オルトケイ酸テトラエチルエステル
である。
【0040】
オルトケイ酸エステルよりもあまり好ましくないアルコキシシランは、好ましくはトリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランおよびメトキシトリメチルシランである。
【0041】
本明細書の範囲において、アゾール誘導体(Bb)は、窒素および硫黄の群からの2または3つのヘテロ原子を有する5員の複素環式化合物であって、環中に硫黄原子が組み込まれていないか、または最大で1つ組み込まれて含有され、且つ任意に芳香族または脂肪族の6員の環縮合(Anellanten)を有し得るものである。
【0042】
これらの5員の複素環式化合物(アゾール誘導体)は、ヘテロ原子として通常2つのN原子を含有し且つS原子を含有しないか、3つのN原子を含有し且つS原子を含有しないか、または1つのN原子および1つのS原子を含有する。
【0043】
上記のアゾール誘導体の好ましい群は、縮合(anellierte)イミダゾールおよび縮合1,2,3-トリアゾールであって、一般式
【化5】
または
【化6】
のものであり、前記式中、可変部Rは水素またはC
1~C
10-アルキル基、殊にメチルまたはエチルであり、可変部Xは窒素原子またはC-H部分である。
【0044】
一般式(III)のアゾール誘導体についての典型的且つ好ましい例は、ベンズイミダゾール(X=C-H、R=H)、ベンゾトリアゾール(X=N、R=H)、およびトルトリアゾール(トリルトリアゾール)(X=N、R=CH3)である。一般式(IV)のアゾール誘導体についての典型的な例は、水素化1,2,3-トルトリアゾール(トリルトリアゾール)(X=N、R=CH3)である。
【0045】
上記のアゾール誘導体のさらに好ましい群は、一般式(V)
【化7】
のベンゾチアゾールであり、前記式中、
可変部Rは上記の意味を有し、且つ
可変部R’は水素、C
1~C
10-アルキル基、殊にメチルまたはエチル、または殊にメルカプト基(-SH)である。あまり好ましくはないが、R’は式-(C
mH
2m)-COOR’’のカルボキシアルキル基であってもよいと考えられ、ここでmは1~4の数を表し、且つR’’はC
1~C
10-アルキル、殊にメチルまたはエチル、またはC
6~C
12-アリールである。これについての例は、(2-ベンゾチアジルチオ)-酢酸エステル、または3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸エステルである。一般式(V)のアゾール誘導体についての典型的な例は、2-メルカプトベンゾチアゾールである。
【0046】
さらに、一般式(VI)
【化8】
[式中、可変部XおよびYは共に2つの窒素原子であるか、または1つの窒素原子と1つのC-H部分である]
の非縮合アゾール誘導体、例えば1H-1,2,4-トリアゾール(X=Y=N)または好ましくはイミダゾール(X=N、Y=C-H)が好ましい。
【0047】
本発明については、アゾール誘導体として、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、水素化トリルトリアゾールまたはこれらの混合物、殊にベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾール、特にトリルトリアゾールがとりわけ特に好ましい。
【0048】
上記のアゾール誘導体は、市販のものであるか、または通常の方法によって製造可能である。水素化ベンゾトリアゾール、例えば水素化トリルトリアゾールも、独国特許出願公開第1948794号明細書(DE-A 1948 794)に従い入手可能であり、市販もされている。
【0049】
成分(Bc)の一般式(II)において、
R4は6~10個の炭素原子を有する有機基、殊に6~10個の炭素原子、好ましくは7~9個、および特に好ましくは8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、好ましくは直鎖のアルキル基またはアルケニル基であり、
pおよびqは互いに独立して1~30、好ましくは1~20、特に好ましくは1~10、とりわけ特に好ましくは1~5、殊に1~3、特に1または2の正の整数であり、
且つ
各々のXiは、i=1~pおよび1~qについて、互いに独立して-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-、-CH(CH3)-CH2-O-、-CH2-C(CH3)2-O-、-C(CH3)2-CH2-O-、-CH2-CH(C2H5)-O-、-CH(C2H5)-CH2-O-、-CH(CH3)-CH(CH3)-O-、-CH2-CH2-CH2-O-および-CH2-CH2-CH2-CH2-O-からなる群から選択され、好ましくは-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-および-CH(CH3)-CH2-O-からなる群から選択され、特に好ましくは-CH2-CH2-O-である。
【0050】
式(II)の化合物において、構造要素R4-N<は好ましくは脂肪アミンから誘導され、好ましくは脂肪酸およびエステルの水素化およびアミノ化により、特に好ましくは上記の脂肪酸の水素化およびアミノ化または脂肪アルコールのアミノ化により得られる。
【0051】
R4基として、アルキル基がアルケニル基よりも好ましい。
【0052】
特別な実施態様において、pおよびqは互いに独立して1、2または3、特に好ましくは1または2、およびとりわけ特に好ましくは1である。
【0053】
好ましい実施態様において、脂肪アミンは、n-ヘキシルアミン、2-メチルペンチルアミン、n-ヘプチルアミン、2-ヘプチルアミン、イソヘプチルアミン、1-メチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-アミノオクタン、6-メチル-2-ヘプチルアミン、n-ノニルアミン、イソノニルアミン、n-デシルアミンおよび2-プロピルヘプチルアミン、またはそれらの混合物である。
【0054】
特に好ましくはn-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミンおよびn-デシルアミン、とりわけ特に好ましくはn-オクチルアミンおよび2-エチルヘキシルアミン、および殊にn-オクチルアミンである。
【0055】
殊に、2、3、4、5および6カ所エトキシ化されたn-オクチルアミン、並びにそれらの混合物、および2、3、4、5および6カ所エトキシ化されたn-ヘキシルアミン並びにその混合物が挙げられる。
【0056】
一般式(II)のアルコキシル化アミンの場合、アルコキシル化度は(p+q)の合計に関し、つまり、アミン分子あたりのアルコキシル化単位の平均の総数に関する。
【0057】
化合物(II)は、好ましくは、相応のアミンR4-NH2をアルキレンオキシドと共に、所望の平均の統計的なアルコキシル化度まで、好ましくは塩基性条件下で反応させることによって得られる。その際、これは構造単位Xiがエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドから、好ましくはエチレンオキシドから誘導される場合に特に好ましい。
【0058】
本発明による組成物は通常、
成分(A): 95~99.9質量%、好ましくは96~99.8、特に好ましくは97~99.5、とりわけ特に好ましくは97.5~99質量%、および殊に98~99質量%
成分(B): 0.1~5質量%、好ましくは0.2~4、特に好ましくは0.5~3、とりわけ特に好ましくは1~2.5質量%、および特に1~2質量%
を含有する。
【0059】
成分(C) - さらなる任意の腐食防止剤
必須の腐食防止剤としての少なくとも1つの上記成分(B)の他に、本発明による組成物は、(B)で記載されたものとは別の、任意のさらに少なくとも1つのさらなる腐食防止剤を含有し得る。
【0060】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様は、上記で挙げられた成分(B)の他にさらなる腐食防止剤(C)を組成物中に含有しない。
【0061】
成分(C)についての例は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族アミンであって、追加的にエーテルの酸素原子またはヒドロキシル基を含有することがあり且つ式(II)の化合物(Bc)とは異なるものである。
【0062】
アミン(C)は、有利には2~9、殊に4~8個の炭素原子を有する。アミン(C)は有利には第三級アミンである。アミン(C)は有利には0~3個のエーテルの酸素原子または0~3個、好ましくは0~2個のヒドロキシル基を含有する。アミン(C)についての典型的な例は、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、イソノニルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンおよびトリイソプロパノールアミン、ピペリジン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、アニリンおよびベンジルアミンである。脂肪族および脂環式アミン(C)は通常、飽和している。
【0063】
さらに、さらなる腐食防止剤として脂肪酸アルコキシレートおよび脂肪アルコールアルコキシレートの使用が考えられ、例えばそれらは国際公開第2018/95759号(WO18/95759)に記載されるとおり、式(V)および(VI)の化合物として5ページ、34行目~10ページ、10行目に記載されており、参照をもって本願に含まれるものとする。
【0064】
成分(C)は任意であり、且つ本発明による組成物中に0~2質量%、好ましくは0~1.5質量%、特に好ましくは0~1質量%、とりわけ特に好ましくは0~0.7質量%の量で存在できる。
【0065】
明らかに好ましい実施態様においては、成分(C)は存在しない。
【0066】
成分(D) -さらなる添加剤
本発明による組成物は、
(Da) 苦味剤
(Db) 色素
(Dc) 消泡剤
(Dd) 酸化防止剤、および
(De) 乳化剤
からなる群から選択される、任意のさらに少なくとも1つのさらなる添加剤を含有し得る。
【0067】
苦味剤(Da)は、飲み込んでしまった場合の衛生および安全性に基づき添加されることがあり、例えば安息香酸デナトニウム型の苦味剤である。本願による組成物の場合、苦味剤は任意である。好ましくは、本発明による組成物中に苦味剤は存在しない。
【0068】
これらの物質は、冷却剤中で典型的に使用され得る従来技術からの市販且つ慣例的な化合物である。
【0069】
本発明による組成物中で使用される乳化剤(De)の機能は、それが冷却システムに由来する潜在的な不純物および/または組立液、例えばポリアルキレングリコールまたはグリセリンのオリゴマーを、組成物中で乳化できることである。
【0070】
成分(D)はそれぞれ任意であり、且つ本発明による組成物中でそれぞれ互いに独立して0~0.5質量%、好ましくは0.001~0.3質量%、および特に好ましくは0.002~0.2質量%の量で存在し得る。
【0071】
本発明による組成物の特性
本発明による組成物は以下の条件に従う:
それらは水を1質量%未満、好ましくは0.75質量%未満、特に好ましくは0.5質量%未満、とりわけ特に好ましくは0.4質量%未満、殊に0.3質量%未満、および特に0.2質量%未満含有する。
【0072】
本発明による少ない含水率は、成分(A)の選択と共に、本発明による高められた沸点をもたらし、なぜなら、より高い含水率は、組成物の沸点を約100℃+生じ得る沸点上昇に制限するからである。少量の水の存在で既に組成物の沸点は劇的に低下し、この作用は例えばブレーキ液から知られており、且つ含水率に依存して沸点について異なる要求が生じる。
【0073】
さらに、燃料電池、蓄電池および/または電池において、冷却システム用の冷却剤として前記組成物を使用する場合、著しい電気伝導率を有する水は組成物の電気分解および望ましくない水素の発生をもたらすことがあり、それが事故のリスクを高める。
【0074】
本発明による組成物のさらなる条件は、n≦2である式(I)のアルキレングリコール誘導体を10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下、とりわけ特に好ましくは5質量%以下、殊に4質量%以下、および特に3質量%以下の割合で含有することである。
【0075】
n≦2である式(I)のアルキレングリコール誘導体の割合がより高いと、一方では沸点が望ましくなく低下し、他方では、組成物の粘度が非常に減少する。低すぎる粘度は特定の用途において望ましくないことがあり、なぜなら低粘度の液体は封止を容易に乗り越え、ひいてはリークの原因になるからである。
【0076】
本発明による組成物のさらなる条件は、n≧5である式(I)のアルキレングリコール誘導体を5質量%以下、好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、とりわけ特に好ましくは2.5質量%以下、および特に2質量%以下の割合で含有することである。
【0077】
ここで逆に、より高い同族体は組成物の高い粘度をもたらし、ひいては組成物のポンピング性が阻害されることが該当する。高粘度は高められたポンプ出力を必要とし、ひいてはポンプの高められたエネルギー消費を必要とする。さらに、より高い同族体は高められた沸点をさらに有するので、低温の際にこれらが組成物から析出する危険がある。
【0078】
本発明による組成物のさらなる条件は、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールおよびグリセリンをそれぞれ、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下、とりわけ特に好ましくは5質量%以下、および特に3質量%以下の割合で含有することである。
【0079】
より低い同族体の上述の低い沸点の他に、多価アルコールは熱の負荷および酸化に対して比較的不安定である。従って、上記の化合物の割合が少ないことは、本発明による組成物の安定性を高める。
【0080】
本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも2.0kJ/kg・K、特に好ましくは少なくとも2.1kJ/kg・K、とりわけ特に好ましくは少なくとも2.2kJ/kg・K、および殊に少なくとも2.3kJ/kg・Kの、50℃での比熱容量を有する。
【0081】
本発明による組成物は好ましくは少なくとも0.15W/m・Kの熱伝導率を有する。
【0082】
低い伝導率を得るために、成分(A)として好ましくは50C・m2/V以下、特に好ましくは45C・m2/V以下、とりわけ特に好ましくは40C・m2/V以下、殊に35C・m2/V以下、および特に30C・m2/V以下の分極率を有する化合物が使用される。
【0083】
使用
上記の組成物の利点は、一般にそれが冷却システム、特に燃料電池、蓄電池および/または電池における冷却システムとしての冷却システム用の冷却剤として使用可能であることである。これらの冷却剤はさらに、凍結防止作用を示す。
【0084】
後者の使用のために、組成物が最大50μS/cm、好ましくは25μS/cm以下、特に好ましくは15以下、とりわけ特に好ましくは10μS/cm以下、および殊に5μS/cm以下の25℃での電気伝導率を有することが重要である。
【0085】
燃料電池、蓄電池および電池における冷却システム中での低い電気伝導率は必須であり、なぜなら、そうでなければ個々のセルが動作の際に充電または放電で短絡しかねないからである。
【0086】
電池のセルの損傷により、冷却剤と電解質とが接触し、プロトン性の冷却剤と、よく使用される電解質LiPF6との反応により、危険なフッ化水素および他の反応生成物が形成するリスクがある。このリスクは、水の存在によって、例えば冷却剤の吸湿特性によってさらに高められる(下記参照)。例えば、A.V.Plakhotnyk et al., Journal of Fluorine Chemistry, 126(2005)27~31から、非プロトン性有機溶剤中で溶解されたLiPF6では、0.5質量%の含水率で既に、約23日にわたって、使用されたLiPF6の合計約10mol%が加水分解することが知られている。
【0087】
本発明の組成物とLiPF6とが接触する際には、意外なことに、水の存在下であっても本質的な反応が観察されない。従って、本発明による組成物はリチウムイオン蓄電池の冷却のために特に適している。
【0088】
本願において「電池」および「蓄電池」との用語は一般的な慣用語に従って、蓄電池は再充電可能な、個別または相互接続された化学的エネルギー蓄積体を記載するように用いられ、且つ「電池」は上位概念として、再充電可能な、および再充電が可能ではない蓄電体について用いられる。従って、「蓄電池」との用語は「電池」の部分集合である。
【0089】
本発明による必須の低い電気伝導率を達成するために、使用される成分には塩の形態の化合物、および容易に解離する化合物、特に酸を避けることが好ましい。従って、上述のさらなる添加剤は、好ましい実施態様において使用条件下で本質的に非イオン性の形態で使用される。
【0090】
グリコールエーテルは一般に吸湿性であるので、本発明による組成物中の含水率は、保管の際、特に開いた保管の際、または冷却システム中での使用の際にも、例えば空気の湿分の吸収によって経時的に上昇する危険がある。これは、閉じたシステムでの保管および使用の際にも該当し、なぜなら、多くの封止材は空気および空気の湿分に対しては透過性であるからである。
【0091】
本発明による組成物の利点は、混合物全体に対して5質量%まで、好ましくは10質量%まで、特に好ましくは25質量%まで、とりわけ特に好ましくは40質量%まで、および殊に50質量%までの水の吸収もしくは添加の際であっても、50μS/cm以下、好ましくは25μS/cm以下、特に好ましくは15μS/cm以下、およびとりわけ特に好ましくは10μS/cm以下の25℃での電気伝導率を有することである。
【0092】
本発明による組成物のさらなる利点は、最も重要な通常使用される封止材料と適合することである。これは、例えばEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン-(モノマー)ゴム、好ましくはEN 13956に準拠)、SBR(スチレン-ブタジエン-ゴム)、FKM(フルオロカーボンゴム、好ましくはDIN ISO 1629またはASTM D 1418に準拠、例えばViton(登録商標))、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)およびHNBR(水素化アクリロニトリルブタジエンゴム)について該当する。
【0093】
本発明による組成物の利点は、熱の負荷および酸化に対する安定性に基づき、最初の低い電気伝導率が長期間でも保持されることであり、なぜなら、分解または酸化に起因する電気伝導性の生成物の形成が低減されているからである。
【0094】
従って、本発明の特に好ましい実施態様は、本発明による組成物を、水性の混合物全体に対して40質量%まで、さらには50質量%までの、イオン不含の、好ましくは脱塩されたかまたは再蒸留水で希釈し、この形態で燃料電池用の冷却剤および凍結防止剤として使用することであり、なぜなら、この水性の冷却剤および凍結防止剤も、この特別な用途について充分に低い伝導率を有するからである。
【0095】
ここで、「イオン不含水」は、水の自動プロトン分解からの水酸化物イオンおよびオキソニウムイオン以外のイオンが本質的に存在しない、中性のpH値を有する水を示す。そのような水の25℃での電気伝導率は、好ましくは5μS/cm以下、特に好ましくは3μS/cm以下、とりわけ特に好ましくは2μS/cm以下、および殊に1μS/cm以下である。
【0096】
本発明による組成物は、好ましくは、1013hPa(標準圧力)での沸点少なくとも200℃、好ましくは少なくとも210℃、特に好ましくは少なくとも220℃、とりわけ特に好ましくは少なくとも230℃、および殊に少なくとも250℃を有する。
【0097】
これは、組成物における蒸気圧が非常に高められることなく、組成物が高い周囲温度でも液状のままであり且つ熱媒体として機能できることをもたらす。従って、本発明による組成物は、高温の際でも開いたシステムにおいて扱うことができる。
【0098】
上記で説明されたとおり、本発明による組成物は、低すぎず且つ高すぎない有利な粘度を有する。
【0099】
好ましくは、最高4mm2/秒、特に好ましくは最高3mm2/秒、およびとりわけ特に好ましくは最高2mm2/秒のASTM D445に準拠する100℃での動粘度を有する。
【0100】
さらに、好ましくは600mm2/秒以下、特に好ましくは500mm2/秒以下、とりわけ特に好ましくは400mm2/秒以下、および殊に350mm2/秒以下のASTM D445に準拠するマイナス40℃での動粘度を示す。
【0101】
本発明による組成物の利点は、広い温度範囲にわたって、好ましくはマイナス40℃からプラス100℃の温度範囲にわたって、水およびモノエチレングリコールに基づく従来の冷却剤よりも、一方では低い粘度を示し且つ他方では少ない粘度変化を示すことである。
【0102】
例えば、50質量%の水と50質量%のモノエチレングリコールとの混合物は、約マイナス37℃で既に固化するので、上記の好ましい温度範囲において使用可能ではない。そのような混合物の動粘度は、マイナス20℃で約300mm2/秒である。
【0103】
本発明の利点は、本発明による典型的な混合物がマイナス40℃で固化せず、且つマイナス40℃で動粘度約250~500mm2/秒、並びにマイナス20℃で約100mm2/秒以下を有することである。
【0104】
従って、マイナス40℃からプラス100℃までの温度範囲における動粘度の変化は、本発明による組成物の場合、約500mm2/秒以下であるので、水とモノエチレングリコールとの上記の混合物よりも変動が少ない。これは、冷却システムにおいてポンプを少ない搬送出力で用いることができ、従って冷却システム中で冷却剤を搬送するために少ないエネルギーしか消費しなくてよいことをもたらす。
【0105】
方法
上述の組成物が水もしくはモノアルキレングリコールに基づく従来の冷却剤よりも高い沸点を有することによって、本発明のさらなる対象は、車両の蓄電池、燃料電池および電池のための冷却方法であって、相対的に高い温度で熱源からの熱を少なくとも1つの第1の熱交換器を介して冷却剤に移し、この冷却剤を冷却回路内で少なくとも1つの第2の熱交換器にみちびき、そこで相対的に低い温度で熱を冷却剤から除去し、その際、
・ 冷却剤として上述の組成物を使用し、
・ 前記相対的に高い温度が60~300℃、好ましくは70~280℃、特に好ましくは80~250℃であり、
・ 前記相対的に低い温度がマイナス50~100℃、好ましくはマイナス40~90℃、特に好ましくはマイナス30~80℃であり、
・ 前記相対的に低い温度は前記相対的に高い温度よりも少なくとも50℃低い、
前記方法である。
【0106】
好ましい実施態様は、高い沸点を有する本発明による組成物を使用する際、冷却回路内での圧力は、500hPa以下、好ましくは400hPa以下、特に好ましくは300hPa以下、およびとりわけ特に好ましくは200hPa以下、周囲圧力を上回る。
【0107】
その際、前記のより高い温度は例えば、燃料電池および/または電池を備える電気自動車、および/または燃料電池および/または電池を内燃機関と共に備える電気自動車からのハイブリッド車の通常の運転の間、またはそのような蓄電池または電池の充電および放電プロセスの間の、蓄電池、燃料電池または電池の壁温度である。
【0108】
その際、前記のより低い温度は好ましくは、温められた冷却剤が第2の熱交換器内で接触する周囲温度である。
【0109】
全ての熱交換器は、この目的のために当業者に知られている自体公知の部品であってよい。
【0110】
本明細書内のパーセント、ppmまたは部の記載は、特段記載されない限り質量%、質量ppmまたは質量部に関する。
【実施例0111】
試験方法
特段記載されない限り、本明細書において記載される値は以下の方法によって測定された:
沸点 ASTM D 1120
密度 ASTM D 1122
電気伝導率 ASTM D 1125
比熱容量 DIN EN ISO 11357-4
熱伝導率 球ギャップ法
含水率 ASTM D 1123
引火点 ISO 2719
発火温度 DIN 51794
屈折率 ASTM D 1218
予備アルカリ度 ASTM D 1121
pH ASTM D 1287
組成物
以下の組成物を作製した(質量%で記載):
比較:
【表1-1】
【0112】
【0113】
【表1-3】
* 使用された2部の添加剤混合物は、1.67部のトリエチレングリコールモノメチルエーテル中に溶解された非鉄金属腐食防止剤のトリルトルアゾール、酸化防止剤、および腐食防止剤としての脂肪アルコールエトキシレートから構成される。
【0114】
腐食試験において、腐食前後の予備アルカリ度(0.1M HCl/10mlの試験体積中で測定)、腐食前後のpH値、およびASTM D1384に準拠した336時間にわたる腐食による浸食[mg/cm2]について以下の値がもたらされた。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
ASTM D1384に準拠した腐食試験からの上澄み液中で、以下の金属含有率がICP分光測定(誘導結合プラズマ)によって測定された[ppm]:
【表3】
【0119】
本発明による組成物中で、液体への特に鉄イオンの取り込みが明らかに減少するが、銅イオンの取り込みも明らかに減少することがわかる。従って、本発明による組成物の電気伝導率を低く保つことが可能である。さらに、腐食を通じてpH値は安定に保たれ、わずかな変化のみを示した。
【0120】
このことは、腐食前後の測定された以下の電気伝導率(25℃でのμS/cm)で示される:
【表4】
【0121】
比較組成物においては、本発明による組成物におけるよりもより多くの電気伝導率の相対的な上昇が生じることがわかる。
【0122】
ASTM D1384に準拠する腐食試験および4週間にわたる腐食の浸食[mg/cm
2]:
【表5】
【0123】
添加剤混合物中で使用された成分は以下の作用を有する:
* 非鉄金属の腐食に対する防止剤としてのトリルトリルトリアゾール
** アルキレングリコールエーテルの酸化を防止/減少するための酸化防止剤
*** 脂肪アルコールエトキシレートの混合物
**** 欧州特許第1399523号明細書(EP1399523 B1)の例5、比較によるモノエチレングリコール/水(60/40 w/w)に基づく冷却剤組成物。
【0124】
【0125】
上記の表から、本発明による特に好ましいN-オクチルジエタノールアミンが、鉄材料、殊に鋼およびねずみ鋳鉄の腐食防止剤として特に利点を示すことが判明する。
【0126】
さらに、それは非鉄金属の腐食防止剤としての作用も有し、従来使用されていたトリルトリアゾールを部分的に置き換えることができる。
【0127】
ASTM D1384に類似し、以下の変更を有する組成物番号15の腐食試験: 蒸留水を使用し、50質量%の水溶液にして、燃料電池用に代表的であるとみなされる3つの金属(真鍮、鋼、およびアルミニウム)のみを使用した。その腐食試験の結果を4および7日後に測定した。
【0128】
【0129】
種々の温度で、および25℃で0.8μS/cmもしくは60℃で1.5μS/cmの電気伝導率を有する再蒸留水を混合する場合の電気伝導率の推移。
【0130】
【0131】
例15からの本発明による測定された組成物は、再蒸留水での1:1の希釈の際に25℃で25μS/cmの臨界伝導率をまだ下回ったままであり、20質量%の再蒸留水の混合の場合、10μS/cmの臨界伝導率を下回ったままであることがわかる。
1013hPaで少なくとも200℃、好ましくは少なくとも210℃、特に好ましくは少なくとも220℃、とりわけ特に好ましくは少なくとも230℃、および殊に少なくとも250℃の沸点を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
n=3である式(I)のアルキレングリコール誘導体:n=4である式(I)のアルキレングリコール誘導体の比が、100:0~40:60であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物。
成分(A)、成分(B)、前記成分(B)とは異なる任意の少なくとも1つのさらなる腐食防止剤(C)、並びに、苦味剤、色素、消泡剤および酸化防止剤からなる群から選択される任意の少なくとも1つのさらなる化合物からなる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物の使用であって、イオン不含水を水性の混合物全体に対して50質量%まで含有し、燃料電池のための冷却剤および凍結防止剤として用いる使用。
前記水性の混合物が、50μS/cm以下、好ましくは25μS/cm以下、特に好ましくは15μS/cm以下、およびとりわけ特に好ましくは10μS/cm以下の、25℃での電気伝導率を有することを特徴とする、請求項13に記載の使用。
相対的に高い温度で熱源からの熱を少なくとも1つの第1の熱交換器を介して冷却剤に移し、この冷却剤を冷却回路内で少なくとも1つの第2の熱交換器にみちびき、そこで相対的に低い温度で前記冷却剤から熱を除去することによる冷却方法であって、
・ 冷却剤として請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物を使用し、
・ 前記相対的に高い温度が60℃~300℃であり、
・ 前記相対的に低い温度がマイナス50℃~100℃であり、
・ 前記相対的に低い温度が、前記相対的に高い温度よりも少なくとも50℃低い
ことを特徴とする、前記冷却方法。