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特開2024-150622画像を生成するシステム、及び非一時的コンピュータ可読媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150622
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】画像を生成するシステム、及び非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20241016BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241016BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20241016BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28 B
G06T7/11
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116783
(22)【出願日】2024-07-22
(62)【分割の表示】P 2023204328の分割
【原出願日】2020-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 康隆
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌義
(72)【発明者】
【氏名】大内 将記
(57)【要約】
【課題】効率良く、特定部位の学習を行う。
【解決手段】本開示は、荷電粒子ビーム装置が生成した入力画像の入力に基づいて、変換画像を生成するように構成されたシステムであって、1以上のコンピュータサブシステムと、当該1以上のコンピュータサブシステムによって実行される1以上のコンポーネントを備え、当該1以上のコンポーネントは、学習時に教師データとして入力される第1の画像と、前記システムヘの前記入力画像の入力によって変換された第2の画像との間の誤差を抑制するように、パラメータが調整された学習モデルを含み、前記第1の画像は、半導体パターン画像であって、前記第1の画像は、当該画像内の少なくとも2以上の領域において異なるパラメータによる画像補正が施され、前記少なくとも2以上の領域は、画像セグメンテーションにより分割された領域である、画像生成システムを提案する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム装置が生成した入力画像の入力に基づいて、変換画像を生成するように構成されたシステムであって、
1以上のコンピュータサブシステムと、当該1以上のコンピュータサブシステムによって実行される1以上のコンポーネントを備え、
当該1以上のコンポーネントは、学習時に教師データとして入力される第1の画像と、前記システムヘの前記入力画像の入力によって変換された第2の画像との間の誤差を抑制するように、パラメータが調整された学習モデルを含み、
前記第1の画像は、半導体パターン画像であって、
前記第1の画像は、当該画像内の少なくとも2以上の領域において異なるパラメータによる画像補正が施され、
前記少なくとも2以上の領域は、画像セグメンテーションにより分割された領域である、画像生成システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記画像補正は、輝度補正、明度補正、コントラスト補正、および着色補正のうち、少なくともいずれかを含む、画像生成システム。
【請求項3】
荷電粒子ビーム装置が生成した入力画像の入力に基づいて、変換画像を生成するコンピュータ実装方法を実行するためにコンピュータシステム上で実行可能なプログラム命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータ実装方法は、学習時に教師データとして入力される第1の画像と、前記システムヘの前記入力画像の入力によって変換された第2の画像との間の誤差を抑制するように、パラメータが調整された学習モデルを含み、
前記入力画像は、半導体パターン画像であって、
前記第1の画像は、当該画像内の少なくとも2以上の領域において異なるパラメータによる画像補正が施され、
前記少なくとも2以上の領域は、画像セグメンテーションにより分割された領域である、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項4】
請求項3において、
前記画像補正は、輝度補正、明度補正、コントラスト補正、および着色補正のうち、少なくともいずれかを含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項5】
荷電粒子ビーム装置が生成した入力画像の入力に基づいて、変換画像を生成するように構成されたシステムにおける画像生成方法であって、
前記システムは、1以上のコンピュータサブシステムと、当該1以上のコンピュータサブシステムによって実行される1以上のコンポーネントを備え、
当該1以上のコンポーネントは、学習時に教師データとして入力される第1の画像と、前記システムヘの前記入力画像の入力によって変換された第2の画像との間の誤差を抑制するように、パラメータが調整された学習モデルを含み、
前記入力画像は、半導体パターン画像であって、
前記第1の画像は、当該画像内の少なくとも2以上の領域において異なるパラメータによる画像補正が施され、
前記少なくとも2以上の領域は、画像セグメンテーションにより分割された領域である、画像生成方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記画像補正は、輝度補正、明度補正、コントラスト補正、および着色補正のうち、少なくともいずれかを含む、画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像を生成する方法、システム、及び非一時的コンピュータ可読媒体に係り、特に試料に対するビーム照射に基づいて画像を生成する方法、システム、及び非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、試料に対する荷電粒子ビームの照射に基づいて得られる検出信号に基づいて画像を生成する試料観察装置が開示されている。特許文献1には、深層学習等のニューラルネットワークを用いて、低品質画像から高品質画像を生成する試料観察装置が開示され、当該試料観察装置は、低品質画像から高品質画像を生成するための画像変換モデルを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-137275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ニューラルネットワークは低品質画像から変換された画像と高品質画像の2つの画像自体を教師データとし、両画像間を合わせ込むように学習を進めるため、例えば測定や検査の対象となる対象物のエッジなどの特定部位の品質を十分に改善できない場合がある。また、画像全体を合わせ込むような学習を行うと、モデル生成のために多くの時間を費やしてしまう場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、効率良く、特定部位の学習を行うことを目的とする方法、システム、及び非一時的コンピュータ可読媒体について説明する。上記目的を達成するための一態様として、荷電粒子ビーム装置が生成した入力画像の入力に基づいて、変換画像を生成するように構成されたシステムであって、1以上のコンピュータサブシステムと、当該1以上のコンピュータサブシステムによって実行される1以上のコンポーネントを備え、当該1以上のコンポーネントは、学習時に教師データとして入力される第1の画像と、前記システムヘの前記入力画像の入力によって変換された第2の画像との間の誤差を抑制するように、パラメータが調整された学習モデルを含み、前記第1の画像は、半導体パターン画像であって、前記第1の画像は、当該画像内の少なくとも2以上の領域において異なるパラメータによる画像補正が施され、前記少なくとも2以上の領域は、画像セグメンテーションにより分割された領域である、画像生成システムが提案される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、分割領域のそれぞれ(例えば、配線と円形の構造物)に対して異なる学習を施すことができ、よって、操作者の好みに応じた画像を、低品質画像から生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態の画像生成システムに入力される画像を生成する画像生成ツールの一種である走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の一例を示す図である。
図2図1に例示するような画像生成ツールによって得られた画像データから、変換画像を生成する画像生成システムの一例を示す図である。
図3】ニューラルネットワークの構成の一例を示す。
図4】荷電粒子ビームの走査対象であるパターン、当該パターンにビームを走査することによって得られる画像、及び画像の輝度分布情報から形成される信号波形の一例を示す図である。
図5】画像の分割条件と、分割された領域に対する損失関数の重み(誤差の調整条件)の設定を可能とするGUI画面の一例を示す図である。
図6】輝度分布情報を用いて領域分割を行った画像の一例を示す図である。
図7】第1の実施の形態(図2)のシステムを用いた学習器の学習条件の設定、設定された学習条件による学習、及び学習を施された学習器を用いた画像生成工程を示すフローチャートである。
図8】位置合わせパターンとの相対位置関係が異なる位置毎に、異なる重み係数を設定しておくことによって、領域単位の重要度等に応じた学習を行う例、及びレシピに予め視野804内のROI805の重み係数λと、それ以外の領域806の重み係数λを設定する例について説明する概念図である。
図9】第1の実施の形態の変形例に係る走査型電子顕微鏡を示す。
図10】第1の実施の形態の変形例の動作を説明するフローチャートである。
図11】第2の実施の形態の画像生成システムの一例を示すブロック図である。
図12図11に例示するコンピュータシステム202に入力された高品質画像、当該高品質画像を画像分割処理部2060によって分割した領域分割画像、及び当該領域分割画像の分割された領域のそれぞれに対して領域毎輝度補正部2070にて輝度調整を行った輝度調整画像の例を示す図である。
図13】第2の実施の形態において、輝度補正条件を設定するためのGUI画面の一例を示す。
図14】第2の実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
図15】第3の実施の形態のシステムの動作を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本実施の形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号又は対応する番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施の形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0009】
本実施の形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0010】
以下に説明する実施の形態では、第1の画像を当該第1の画像とは画質が異なる第2の画像に変換する方法、システム、及びコンピュータ可読媒体に係り、画像に含まれる複数領域について、異なる変換を行う方法、システム、及びコンピュータ可読媒体について説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1図10を参照して、第1の実施の形態に係る画像生成システムを説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る画像生成システムに入力される画像を生成する画像生成ツールの一種である走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の一例を示す図である。なお、以下の説明では荷電粒子線装置の一種であるSEMを画像生成ツールとして説明するが、これに限られることはなく、例えばイオンビームの走査に基づいて画像を生成する集束イオンビーム装置を画像生成ツールとすることも可能である。更に、他にも高品質画像を生成するより低品質画像を生成する方が処理の簡素化等ができるような画像生成ツールを用いるようにしても良い。
【0012】
図1に例示する走査電子顕微鏡システム100は、撮像部101、コンピュータシステム102、信号処理部103、入出力部104、記憶部105を備えている。記憶部105は、本システムの動作を司るコンピュータプログラムを記憶する非一時的記録媒体としても機能する。コンピュータシステム102は、撮像部101が備える以下の光学系を制御する。
【0013】
撮像部101は、電子ビーム107を照射する電子銃106、電子ビーム107を集束する集束レンズ108、集束レンズ108を通過した電子ビーム107をさらに集束する集束レンズ109を備えている。撮像部101はさらに、電子ビーム107を偏向する偏向器110、電子ビーム107の集束する高さを制御する対物レンズ111を備えている。
【0014】
撮像部101の光学系を通過した電子ビーム107は、試料ステージ113上に載せられた試料112に照射される。電子ビーム107の照射によって試料112から放出される二次電子(Secondary Electron:SE)や後方散乱電子(Backscattered Electron:BSE)等の放出電子114は、その軌道上に設置された下段検出器115と上段検出器116によって検出される。上段検出器116に設けられた開口は、電子ビーム107を通過させるものである。この開口を十分小さくすることにより、試料112上に形成された深孔や深溝の底から放出され、パターン中心近傍を通過して試料表面上に脱出した二次電子を検出することができる。上段検出器116の直前にあるエネルギーフィルタ117a、又は下段検出器115の直前にあるエネルギーフィルタ117bを用いたエネルギーフィルタリングにより、放出電子114をエネルギー弁別することができる。
【0015】
撮像部101はさらに、電子ビーム107を光軸外に偏向することによって試料112へ電子ビーム107が到達することを制限するブランキング偏向器118、及びブランキング偏向器118によって偏向された電子ビーム107を受け止めるブランキング用電極119を備える。
【0016】
信号処理部103は、下段検出器115と上段検出器116の出力に基づいてSEM画像を生成する。信号処理部103は、図示しない走査偏向器の走査と同期して、フレームメモリ等に検出信号を記憶させることにより画像データを生成する。フレームメモリに検出信号を記憶する際、フレームメモリの走査位置に対応する位置に検出信号を記憶させることにより、信号プロファイル(1次元情報)、及びSEM画像(二次元情報)を生成する。また、必要に応じて偏向器120で二次電子を偏向することにより、深孔等から脱出した光軸近傍を通過する二次電子を、下段検出器115の開口外(下段検出器115の検出面)に導くことができる。
【0017】
図2は、図1に例示するような画像生成ツールによって得られた画像データから、変換画像を生成する画像生成システムの一例を示す図である。図2に例示するコンピュータシステム102は、1以上のCPUやGPUを含む1以上のコンピュータサブシステムで構成されている。また、図2に例示するコンピュータシステム102は、当該1以上のコンピュータサブシステムによって実行される1以上のコンポーネントを備える。1以上のコンピュータサブシステムは、後述するような処理を1以上のプロセッサを用いてソフトウェアで実現することもできるし、その処理の一部または全部を電子回路などのハードウェアで実現するようにしても良い。
【0018】
図2に例示するコンピュータシステム202は、一例として、画像変換部2030、変換誤差算出部2040、変換パラメータ更新部2050、及び画像分割処理部2060を備える。また、コンピュータシステム202は、入力装置203から各種情報の入力を受けるよう構成される。
【0019】
画像変換部2030は、図1に例示するような画像生成ツールの出力画像、又は記憶媒体201に記憶されている画像(低品質画像)を入力画像とし、その入力画像に基づいて変換画像を生成する。画像変換部2030は、変換パラメータが調整された学習モデルを含んでおり、この学習モデルを用いた画像変換を実行する。変換パラメータは、変換パラメータ更新部2050で適宜更新され、画像変換部2030に供給される。学習モデルは例えばニューラルネットワークで構成され、図3に例示するような1以上の入力層、1以上の中間層(隠れ層)、及び1以上の出力層を含んでいる。
【0020】
ニューラルネットワークは、出力層で所望の結果(例えば高品質画像や正しい測定値など)が出るよう、パラメータ(重みやバイアス等)を調整する学習を施すことで、適正な出力が可能となる。学習は例えば誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)によって、逐次的に変数(重みやバイアス)を更新することによって行われ、データの出力誤差を重み(活性化関数も含む)で偏微分して、出力を少しずつ最適な値へと調整する。
【0021】
変換誤差算出部2040は、画像変換部2030によって低品質画像から生成された変換画像(出力層の出力である第2の画像)と、正解データ(高品質画像(教師データ))として入力された画像(第1の画像)との誤差を算出する。より具体的には、変換誤差算出部2040は、フォワードプロパゲーションによって導出された変換画像の画素値と、それに対応する正解画像の画素値から、算出される平均絶対誤差や平均二乗誤差等を変換誤差として算出する。変換パラメータ更新部2050は、変換誤差に基づいて各画素の変換誤差を抑制するように、ニューラルネットワークの変換パラメータ(変数)を調整し、画像変換部2030に供給する。
【0022】
画像分割処理部2060は、教師データとしての高品質画像を複数の画像に分割し、その分割に関する領域情報を変換誤差算出部2040に供給する。領域情報及び重み情報は、入力装置203から入力することができる。
【0023】
以上のようなフォワードプロパゲーションとバックプロパゲーションの繰り返しによって、出力の精度を向上させることができるが、ニューロンの入力に対する重みが最適化されるまでには、多くの画像(教師データ)を用いた学習が必要となる。一方、半導体デバイスのパターン等の測定や検査は、画像に含まれるパターン等のエッジ間の寸法測定や、パターン等の形状評価によって行われるため、例えばエッジ以外の部分については高い精度を必要としない。
【0024】
本実施の形態では、画像に含まれる特定のパターンやそれ以外の構造物のエッジ等の部分画像を選択的に高精度変換できるような学習モデルと、その学習モデルに対する学習を施すシステムについて説明する。画像全体ではなく、画像の部位毎の重要度に応じて、学習の程度を変えることができれば、重要な部分については高度な学習を施すことによる高品質画像の生成を実現できる一方で、重要でない部分については学習に要する処理の削減による学習の効率化を実現することが可能となる。
【0025】
図2に例示するシステムでは、教師データとして入力される高品質画像について、画像分割処理部2060にて画像分割を行い、入力装置203によって入力された分割領域毎の学習の程度に応じて画像変換部203において学習器に学習を施す。分割領域毎の学習の程度の設定は、例えば正解データ(ラベル)と学習器の出力との誤差を計算する関数である損失関数を、分割領域毎に異なる重みを付与することによって実現する。例えば[数1]のような演算式に基づいて損失関数Lを計算することができる。
【0026】
[数1]
L=(λ・Lbg+λ・Ledge
【0027】
ここで、Lbgは画像内の第1の領域(例えばパターンエッジ以外の背景部分)に設定される損失関数であり、Ledgeは画像内の第2の領域(例えばパターンエッジ)に設定される損失関数である。λ、λはそれぞれの損失関数の重み係数である。例えばエッジ部分の係数λをλより大きく設定することで、エッジ部以外の領域に対して、相対的に誤差値が大きく見積もられるようになり、結果としてエッジ部分にフォーカスして変換誤差を抑制するような変換パラメータの更新が可能となる。また、これと同様な効果は、Lbgをエッジ部分を含む画像全体に設定される損失関数、Ledgeをエッジ部分のみに設定される損失関数とし、エッジ部分の誤差値が画像の総画素数に対する実際のエッジの総画素数の比率よりも大きく反映されるようにλ、λを設定することでも得ることができる。
【0028】
一方で、測定や検査に必要のないエッジ以外の部分については、学習をしない、或いは相対的に程度の低い学習を行うべく、λ<λ(λはゼロを含む)と設定することによって学習に要する処理を減らすことが可能となる。すなわち、この第1の実施の形態では、学習モデルにおいて、画像内の異なる領域毎に、異なる学習が施されている。画像内の計測や検査に要する領域の損失関数の重みを相対的に増やすと共に、それ以外の領域の損失関数の重みを減らすことで、必要となる部分の再現性を向上させることが可能となる。
【0029】
次に、図2に例示する画像分割処理部2060における領域分割処理の概要について説明する。図4は、荷電粒子ビームの走査対象であるパターン、当該パターンにビームを走査することによって得られる画像、及び画像の輝度分布情報から形成される信号波形の一例を示す図である。
【0030】
図4(a)に例示するような断面形状を有するラインパターン401に荷電粒子ビームを二次元走査し、当該走査によって得られる荷電粒子を検出することによって、図4(b)に例示するような二次元画像402を形成することができる。更に投影処理を行う(各画素列の信号を加算平均する)ことによって、図4(c)に例示するような信号波形(プロファイル)404を生成することができる。
【0031】
図4(a)に例示するような断面を持つパターンに対しビームを走査すると、パターンのエッジに対応する位置403から放出される荷電粒子の量は、エッジ効果により、その他の領域から放出される荷電粒子の量より多くなる。上述のように、画像を用いた計測や検査では、エッジ部分の輝度情報が重要である。このため、図4(c)に例示するように、閾値Th(405)を設定し、輝度が所定の閾値を超える領域から得られる領域、もしくは閾値を超える領域に数画素のマージンを持たせた領域の変換誤差に対する係数をλとし、それ以外の領域から得られる変換誤差に対する係数をλとすることができる。これにより、エッジ部分の再現性に優れた学習モデルを生成することが可能となる。
【0032】
なお、パターンのエッジ部分の特定に基づいて測定を行うような場合、所定の閾値以上の輝度を持つ領域として抽出される領域だけではなく、その周囲も含めた領域をエッジ領域として抽出することが望ましい。特に、エッジ間の寸法を測定する場合、ホワイトバンド(エッジに対応する高輝度領域)の輝度の分布情報を利用して測定の基準位置を決めるため、ホワイトバンド周辺の輝度値も計測値に影響を及ぼすことになる。このため、自動抽出されたホワイトバンド領域と、その周囲の所定の画素数分の領域(周辺領域)も併せて抽出した画像データを教師データとすることが望ましい。周辺領域を含めた画像データを抽出する具体的な手法は、図6を用いて後述する。
【0033】
図5は、画像の分割条件と、分割された領域に対する損失関数の重み(誤差の調整条件)の設定を可能とするGUI画面の一例を示す図である。なお、図5では、分割領域毎に重み係数λを設定するGUIを例示しているが、これに限られることはなく、学習に要する処理の負荷を調整可能な他のパラメータを入力できるようにしても良い。
【0034】
図5に例示するGUI画面は、例えば図1に示す入力装置203の表示装置に表示させることができる。このようなGUI画面により、コンピュータシステム202(コンピュータサブシステム)によるバックプロパゲーションの条件(学習条件)設定が可能となる。図5に例示するGUI画面501には、SEM画像表示領域502と、損失関数条件設定領域503が含まれている。
【0035】
損失関数条件設定領域503では、画像分割条件の選択が可能となっている。具体的には、損失関数設定領域503には、GUI上で所望の領域を設定するときに選択するROI(Region Of Interest) setting、自動で領域分割を行うときに選択するAuto Segmentation、及び輝度に応じて自動的に領域分割を行うときに選択するArea division by brightnessの選択ボタンが設けられている。
【0036】
例えばROI settingを選択すると、SEM画像表示領域502内に、ポインタ504によって任意の位置に任意のサイズで設定が可能なROI設定枠505が表示される。ポインタ504によってROIの位置とサイズを設定した後、重み係数設定枠506に所望の重み係数(λ、λ)を設定することによって、ROIに対する学習の負荷の程度の設定ができる。また、ROIとして設定しない領域については、Backgroundの重み係数(λ)を設定することによって、選択領域以外の重み係数を選択することができる。上述のように、ROIとして選択しない領域の重み係数(λ)に対して、相対的にROIとして選択した領域の重み係数(λ、λ)を高く設定することによって、ROI内の画像の再現性や品質を向上させることが可能となる。
【0037】
また、Auto Segmentationを選択すると、コンピュータシステム202は、例えばセマンティックセグメンテーションによって領域分割を自動的に実行する。
【0038】
更に、Area division by brightnessを選択すると、コンピュータシステム202は、画像内の輝度情報に応じた領域分割を実行する。具体的には輝度に応じたn値化(n≧2)処理などにより画像内で領域分割を行う。Auto Segmentationや、Area division by brightnessの選択によって分割された各領域について、損失関数の重み係数を設定するための重み係数設定欄507を設けておくことによって、各領域について適切な重みを設定することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、画像を分割し、分割領域の重要度に応じた損失関数条件を定義する例について説明するが、これに限られることはなく、例えばROIだけを選択的に学習し、その他の領域については学習しない、という選択を行うことも可能である。すなわち、図1の入力装置203からは分割に係る情報(領域情報等)は入力せず、画像分割処理部203における分割処理を実行しないような設定も可能である。ROI以外の部分は低品質画像でも良く、計測や検査に用いるエッジ部分だけを高品質画像としたい場合には、このような選択的学習を行うようにしても良い。
【0040】
一方で、本実施の形態のように学習に要する処理の程度を領域単位で設定できるようにしておけば、画像の再現性と学習に要する処理時間等を勘案した、目的に応じた適切な学習条件を設定することが可能となる。更に、ROI以外を最適化しようとすると、ROI内の再現画像の品質の向上を阻害する要因となる可能性があるが、ROI内をより高品質にするような学習を可能とすることによって、早期の再現画像の品質向上を行うことが可能となる。なお、セマンティックセグメンテーション等に替えて、K-means法等の他の分割処理法を適用することも可能である。
【0041】
図2は、低品質画像を入力することによって、高品質画像を出力するシステムを例示しているが、ここで低品質画像とは、例えば少フレーム画像のことである(1フレームとは例えば1の二次元走査)。走査電子顕微鏡等では、画質を向上させるために、同じ視野(Field of View:FOV)を複数回走査し、得られた検出信号を積算(加算平均)することによって、画像のS/N比を向上させることができるが、一方でビームを複数回走査すると帯電の蓄積やパターンのシュリンク等が発生する可能性がある。本実施の形態では、低品質画像を1フレーム画像とし、教師データとなる高品質画像を64フレームのような多フレーム画像とすることによって、低品質画像から高品質画像を再現する。
【0042】
なお、多フレームのビーム走査を行うと、パターンがシュリンクすることがある。このため、本実施の形態では、例えば64フレームのビーム走査を行い、高品質画像を生成するのに必要な画像信号を取得し、その後に、少フレーム画像(例えば1フレーム画像)を取得する。そして、この少フレーム画像を画像変換部2030によって変換し変換画像とすると共に、先に取得した64フレーム画像のような高品質画像を教師データとして、両者の変換誤差を算出する。これにより、シュリンク等の影響を抑制しつつ、学習器に学習を施すことができる。
【0043】
なお、ビーム走査初期はパターンのシュリンク量が大きいので、例えばシュリンクがある程度収まった時点(例えば走査開始からnフレームの走査が終了したとき)から、多フレーム画像生成用の信号取得を開始し、このようにして得られた検出信号に基づいて高品質画像を生成するようにすると良い。
【0044】
図6は、輝度分布情報を用いて領域分割を行った画像の一例を示す図である。図6に例示するような画像から投影等により輝度分布情報を抽出すると、図4(c)に例示するような信号波形を生成することができる。ここで所定の閾値を超えた領域のx方向の中心を基準とした所定の領域、或いは所定の閾値を超えた領域のx方向の端部からn画素分(nは任意の自然数)拡張した領域をROI601とし、当該部分固有の損失関数条件(重み係数など)の設定を可能とする、これにより、高輝度部分だけではなく、ピーク波形として表現可能な領域の品質を向上させることができる。
【0045】
図7は、第1の実施の形態(図2)のシステムを用いた学習器の学習条件の設定、設定された学習条件による学習、及び学習を施された学習器を用いた画像生成工程を示すフローチャートである。
【0046】
まず、コンピュータシステム202は、図1に例示するような画像生成ツールの出力画像、或いは記憶媒体201に記憶されている画像を取得する(ステップS701)。一方、画像分割処理部2060では、入力装置203等で指定された領域情報に従い、当該画像に対し領域分割の処理を実行する(ステップS702)。画像分割処理部2060は、例えば図5に例示したGUI画面で設定された画像分割条件に基づいて、画像の分割を実行する。
【0047】
次に図5に例示するGUI画面等から、学習に要する負荷のパラメータの1つである損失関数の重み係数を分割領域単位で設定することによって、領域単位の学習条件を設定する(ステップS703)。
【0048】
次に、学習器を含むコンピュータシステム202へ低品質画像を入力することによって、画像変換部2030にて変換画像を生成する(フォワードプロパゲーション)。更に、変換誤差算出部2040では、低品質画像とは別にコンピュータシステム202に入力された高品質画像と、変換画像との画素単位の差分を求め、フォワードプロパゲーションによって生成された画像と、正解画像である高品質画像との誤差を算出する。ここで変換パラメータ更新部2050では、画像領域単位で割り当てられた重み係数と各領域の損失関数とを用いてバックプロパゲーションを実行し、ニューラルネットワークの重み及びバイアスの変化を計算し、その値を更新する(ステップS704)。
【0049】
以上のようなフォワードプロパゲーションとバックプロパゲーションを1回以上繰り返すことによって、学習を行う。なお、フィードバックの手法として進化アルゴリズムを適用することも可能である。
【0050】
以上のように、学習されたモデルは特定領域について選択的に高度な学習が施されているので、学習に要する手間や時間を抑制しつつ、再現性の良い推定(画像変換、ステップS705)を行うことが可能となる。
【0051】
次に、位置合わせパターンとの相対位置関係が異なる位置毎に、異なる重み係数を設定しておくことによって、領域単位の重要度等に応じた学習を行う例について説明する。
【0052】
図8(a)は、半導体ウェハ等の試料上に形成された位置合わせ用パターン801と、第1の視野802、及び第2の視野803との位置関係を示す図である。図1に例示するような走査電子顕微鏡等で所望の位置に視野を位置付ける場合、例えば、位置合わせパターン801、或いは所望の位置の座標に、視野位置が位置付けられるように走査電子顕微鏡内に設けられたステージを移動させ、所望の位置の視野より広範囲にビームを走査することによって、低倍率画像を生成する。低倍率画像の取得後、予め登録された位置合わせパターン801が含まれるテンプレート画像を用いたパターンマッチングを実行することによって、位置合わせパターン801の位置を特定し、当該位置合わせパターン801と既知の位置関係にある第1の視野802と第2の視野803への視野移動を行う。
【0053】
図1に例示する走査電子顕微鏡は、レシピと呼ばれる動作プログラムによって制御され、予め登録された位置合わせ用パターン801と所望の視野位置との距離((-x,-y)、(x,y))情報に基づいて、視野移動を行うように1以上のコンピュータシステムによって制御される。図8(a)に例示するように、視野位置ごとの重要度等に応じて、損失関数の重み係数(λ,λ)を定義しておくことによって、学習の効率化を実現することが可能となる。
【0054】
更に、図8(b)に例示するように、レシピに予め視野804内のROI805の重み係数λと、それ以外の領域806の重み係数λを設定可能としておくようにしても良い。
【0055】
図9及び図10に、第1の実施の形態の変形例を示す。
図9は、第1の実施の変形例に係る、BSE検出器901、902と、SE検出器908を備えた走査電子顕微鏡の一例を示す図である。図9に図示以外の構成については、第1の実施の形態と同様の構成(図1)とすることができる。この図9の例では、対物レンズ111を通過する電子ビームの高速化と、試料112に到達する電子ビームの低加速化を両立すべく、試料112に負電圧が印加されている。試料112への負電圧の印加によって、対物レンズ111との間に試料112に到達するビームを減速させる減速電界が形成される。このような光学系では、試料112から放出された二次電子907はほぼビーム光軸904に沿って加速され、例えばウィーンフィルタ906によってSE検出器908に向かって偏向される。
【0056】
一方、二次電子907に対して高加速である後方散乱電子903は、相対的に減速電界の影響を受けることがなく、SE検出器908よりも試料112に近い側に配置されたBSE検出器901、902によって検出される。後方散乱電子903は、例えばパターンの側壁に衝突すると、試料112の表面に対して傾斜した方向に反射し、対物レンズ111の集束作用を受けてBSE検出器901、902によって検出される。図9に例示するような位置にBSE検出器901、902を配置しておくことによって、パターンのエッジ部分等で反射した後方散乱電子を選択的に検出することができるため、エッジ部分とそれ以外の部分のコントラストを明確にすることができる。
【0057】
第1の実施の形態の変形例では、このような現象を利用して、画像の領域分割を、BSE像の輝度分布情報を用い、学習器の学習工程を実行する。図10は、BSE像とSE像の双方を用いて学習を行う学習器の学習工程を示すフローチャートである。
【0058】
まず、図9に例示するような光学系を持つ走査電子顕微鏡によって、SE検出器908、BSE検出器901、902の検出信号に基づきBSE像とSE像を取得する(ステップS1001、S1002)。
【0059】
次に、図2に例示する画像分割処理部2060にて、BSE画像の輝度分布情報を利用した画像分割処理を実行する(ステップS1003)。上述のように、パターンのエッジ等で反射した後方散乱電子はBSE検出器901、902で検出される一方、それ以外の方向に放出された後方散乱電子は検出されない。よって、BSE像はエッジ部とそれ以外の部分のコントラストが明確になる。そこで、画像分割処理部2060では、例えばBSE像の中の所定の閾値以上の高輝度部分を抽出し、当該部分、或いは当該高輝度部分を数画素分拡げた部分をROIと設定する。また、それ以外の部分を背景と定義する。
【0060】
コンピュータシステム202は、例えば図5に例示するようなGUI画面から入力された損失関数に関する情報(本実施の形態の場合、重み係数)を各分割領域に対応する損失関数情報として設定(ステップS1004)し、例えば記憶部105に記憶させる。上述のようにROIと背景の2つの領域に画像分割する場合には、重み係数λ、λを設定する。
【0061】
コンピュータシステム202は、以上のようにして領域ごとに設定された重み係数を用いて、各領域単位で異なる学習(1回以上のフォワードプロパゲーションとバックプロパゲーションの繰り返し)を行うことによって、学習器の学習を行う(ステップS1005)。図10に例示するような手法によれば、効率の良い学習を行うことができる。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、図11図14を参照して、第2の実施の形態に係る画像生成システムを説明する。図11のブロック図は、第2の実施の形態の画像生成システムの一例を示している。第1の実施の形態(図2)と同一の構成要素については、図11において同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0063】
図11に例示するシステムは、単に高品質画像とするのではなく、より見栄えの良い画像を生成することを可能にしたシステムである。具体的に図11のシステムは、図2のシステムの構成要素に加え、領域毎輝度補正部2070を備えている。領域毎輝度補正部2070は、画像分割処理部2060によって分割された画像のそれぞれについて、輝度補正処理を行うよう構成されている。すなわち、領域毎輝度補正部2070は、分割された各領域が所定の輝度となるよう輝度値を補正するように構成されている。
【0064】
図12は、図11に例示するコンピュータシステム202に入力された高品質画像、当該高品質画像を画像分割処理部2060によって分割した領域分割画像、及び当該領域分割画像の分割された領域のそれぞれに対して領域毎輝度補正部2070にて輝度調整を行った輝度調整画像の例を示す図である。図12に例示する高品質画像1201は、一例として半導体デバイスを撮像した画像であり、上層配線1202、下層配線1203、円形の構造物1204、及び配線等と重畳している円形の構造物1205を含んでいる。
【0065】
画像分割処理部2060は、例えばセマンティックセグメンテーションや輝度に応じた領域分割を行うことによって、領域分割画像を生成する。輝度に応じた領域分割を行う場合、例えば所定の輝度範囲ごとに画像を分割するような処理を行うことが考えられる。例えば高品質画像1201内に含まれる上層パターン1202は下層パターン1203より明るい場合が多い。これは試料表面に近い方が、二次電子が放出し易く、相対的に二次電子の検出量が多いためである。更にパターンの形状や他の構造物との位置関係等を特徴量に変換し、その特徴量に応じた分類を行うようにしても良い。図12の例では、5つの領域A~Eに分割された例を示している。具体的には、図12では、1つの画像が(1)上層配線1202に対応する領域A、(2)下層配線1203に対応する領域B、(3)円形構造物1204に対応する領域C、(4)上層配線1202と重畳する円形の構造物1205に対応する領域D、及び(5)背景となる領域Eの5つの領域に分割されている。
【0066】
以上のようにして分割された各領域に対して、領域毎輝度補正部2070は、入力装置203等から入力される輝度補正情報に基づいて輝度補正を行う。輝度補正の条件は、例えば図13に例示するGUI画面上で設定するようにしても良い。図13に例示するGUI画面1301は、コンピュータシステム202によって分割された各領域について、輝度の調整が可能なように構成されている。
【0067】
GUI画面1301には、分割画像表示領域1302と、輝度条件設定欄1303とが設けられている。分割画像表示領域1302には、画像分割処理部2060によって生成された分割画像が表示される。輝度条件設定欄1303には、各分割領域の輝度を調整するためのスライドバー1304や、数値で輝度を設定するための輝度設定欄1305等が設けられている。
【0068】
輝度設定欄1305には、分割画像の初期の輝度を表示しておき、操作者は輝度設定欄1305やスライドバー1304を用いて各領域が好みの輝度となるように調整を行うようにすることができる。また、スライドバー1304等による輝度の調整に伴って、分割画像表示領域1302の各領域の輝度を変えるように表示を調整することによって、操作者は変換画像の出来栄えを確認しつつ、条件設定を行うことが可能となる。
【0069】
なお、この第2の実施の形態では、主に手動で各領域の明るさを調整する例について説明するが、例えば暗い領域は明るくし、明るい領域を暗くするよう、明暗を反転させるモードを設けておき、自動で輝度調整を行うようにしても良い。また、円形の構造物を高輝度とし、その他の領域の輝度を下げるモードを用意しておき、測定や検査目的に応じて使い分けるようにしても良い。
【0070】
図14は、図11に例示するシステムにおける、学習器の学習条件の設定工程と、学習工程を示すフローチャートである。このフローチャートによれば、画像に含まれる任意の領域の輝度を、選択的に変化させた画像を生成することができる。
【0071】
第2の実施の形態の学習工程では、図11に例示するコンピュータシステム202は、まず、教師データとなる高品質画像を取得し、画像分割処理部2060を用いて分割画像を生成する(ステップS1401、S1402)。分割画像は、入力装置203の表示装置等に表示されたGUI画面等に表示される。
【0072】
操作者は、分割画像表示領域1302に表示された分割画像と、各分割領域の表示装置上の明るさを参照しつつ、適切な輝度補正条件を設定する(ステップS1403)。領域毎輝度補正部2070は、設定された輝度補正値条件で画像の輝度補正を行い(ステップS1404)、輝度補正された画像データを正解データ(ラベル)として変換誤差算出部2040に送る。
【0073】
一方、画像変換部2030は、低品質画像を入力としたフォワードプロパゲーションを実行すべく、学習用の低品質画像を取得(ステップS1405)し、変換画像を生成する(ステップS1406)。変換誤差算出部2040は、フォワードプロパゲーションを経て生成された変換画像と、領域毎輝度補正部2070の出力である輝度補正画像との間の誤差を求める。変換パラメータ更新部2050は、画素単位で変換誤差を教師データとして受け取り、損失が最小となる変換パラメータを設定する(ステップS1407、S1408)。ステップS1401~1408の処理を1回以上繰り返すことによって、学習が実行される。
【0074】
図11に例示するようなコンピュータシステム202によれば、分割領域のそれぞれ(例えば配線と円形の構造物)に対して異なる学習を施すことができるため、操作者の好みに応じた画像を、低品質画像から生成することが可能となる。
【0075】
なお、上述の実施の形態では各分割領域の輝度を変化させる例について説明したが、例えば特定のパターンにグレーレベル以外の色を画像処理によって着色し、それを教師データとすることも可能である。
【0076】
[第3の実施の形態]
次に、図15を参照して、第3の実施の形態に係る画像生成システムを説明する。この第3の実施の形態のシステムは、基本構成は前述の実施の形態の構成(図2図11)と同様でよい。ただし、この第3の実施の形態は、前述の実施の形態の構成に加え(又は替えて)、領域毎に走査速度を変更することにより、領域毎に異なる学習を実行可能に構成されている。
【0077】
図15は、第3の実施の形態の特徴を説明する概念図である。図15(a)は、1つの視野(FOV)内において、低速走査領域と高速走査領域を設定した例を示している。FOV内の高速走査と低速走査の切り替えは、例えば電子顕微鏡の走査偏向器に供給する走査信号を、図15(b)のように変化させることによって実現することができる。信号波形の傾きは走査速度を示し、図15(b)の例は、領域(b)の走査速度を領域(a)(c)に対し1/2にしたことを示している。走査速度が速い程、単位面積当たりのビーム照射量が減るため、帯電等の影響を低減できる一方で、照射量が少ない分、検出信号量は減少する。
【0078】
この第3の実施の形態では、例えば測定基準や検査の対象となる領域をROIとして設定すると共に、当該ROIで選択的に低速走査を行うことができる。これにより、必要な情報の取得とFOV内の帯電等の影響の抑制の両立を実現できる。
【0079】
前述した通り、第1の実施の形態(図2)では、ROIの部分を選択的に学習させ、他の領域は学習しないか、又は或いは重みλを下げることによって、効率の良い学習を行うことが可能となる。
【0080】
第3の実施の形態では、フレーム数を変えるだけではなく走査速度を変えることによっても、低品質画像と高品質画像を生成することができる。また、走査速度を変える代わりに、単位面積当たりのビームの照射量を変える他の手段によっても、低品質画像と高品質画像を生成することが可能である。
【0081】
(その他)
領域単位で異なる学習を施す方法として、更に別の例を説明する。試料に対し電子ビームを走査することによって発生する二次電子は、平坦な試料表面に対し、パターン等のエッジ部分の方が、放出量が多く、画像上では高輝度に表示される。一方、試料から放出される後方散乱電子は、試料に含まれる材質に応じたコントラスト画像を生成するのに適している。更に、図9に例示するような光学系を備えた電子顕微鏡によれば、特定の方向に向かう後方散乱電子を選択的に検出することができるため、試料上の構造物の縁部分のコントラストが明確な画像を生成することが可能となる。
【0082】
以上のような検出電子の特徴と、計測や検査の目的に応じた学習モデルを生成する他の例について以下に説明する。まず、パターンのエッジ間の寸法を測定するための画像を生成する学習モデルの場合、SE像の高輝度領域(エッジ部分)の重み係数を大きくすることが望ましい。また、材質コントラストを明確にする必要がある場合には、BSE像の中で輝度が大きく変化する部分(材質が変化する部分)の重み係数を大きくすることが考えられる。図9に例示するような二次電子と後方散乱電子を同時に検出できる光学系を用いて、SE像とBSE像の生成と、目的に応じた複数の学習を実行可能なシステムの提供によって、用途に応じた複数のモデルを効率よく生成することが可能となる。
【0083】
なお、上述の実施の形態では低品質画像の画像変換によって、高品質画像を生成(推定)する学習器を含むシステムについて説明したが、高品質画像ではなく、高品質画像から求められるエッジ間の寸法値、プロファイル波形、輪郭線、ラフネス評価値などを正解データとして学習を施し、これらの値やデータを推定するようにしても良い。例えばエッジ間寸法であれば、寸法の計測対象となる2以上のエッジが含まれる高品質画像から、計測アルゴリズムによって求められる寸法値を正解データとすると共に、高品質画像と同じ領域の低品質画像のフォワードプロパゲーションによって求められる寸法値と、正解データの寸法値との誤差を最小化するように変換パラメータを更新するようにして学習を実行する。
【0084】
他の推定対象も同等であり、高品質画像から正解データを抽出し、バックプロパゲーションによって学習を実行することで、学習器に学習を施すことが可能となる。
【0085】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
100…走査電子顕微鏡システム、101…撮像部(走査電子顕微鏡)、102…コンピュータシステム、103…信号処理部、104…入出力部、105…記憶部、106…電子銃、107…電子ビーム、108…集束レンズ、109…集束レンズ、110…偏向器、111…対物レンズ、112…試料、113…ステージ、114…放出電子、115…偏向器、116…検出絞り、117a、117b…エネルギーフィルタ、118…二次電子、119…検出器、120…二次電子、121…検出器、123…、201…記憶媒体、202…コンピュータシステム、203…入力装置、2030…画像変換部、2040…変換誤差算出部、2050…変換パラメータ更新部、2060…画像分割処理部、2070…領域毎輝度補正部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15