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特開2024-150685画像処理装置、及び画像処理装置による画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150685
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】画像処理装置、及び画像処理装置による画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20241016BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G06T1/00 200A
E01D22/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024119366
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2022505021の分割
【原出願日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2020035172
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】與那覇 誠
(57)【要約】
【課題】本発明の一つの実施形態は、建造物を撮影した画像に基づいて建造物の3次元モデル及び損傷情報を容易に取り扱うことができる画像処理装置、及び画像処理装置による画像処理方法を提供する。
【解決手段】一つの態様において、画像処理装置は、プロセッサと、建造物を撮影した複数の画像と、建造物を構成する部材の3次元モデルと、複数の画像に基づいて抽出した前記建造物の損傷情報とが対応付けて記憶されたメモリとを備え、プロセッサは、複数の画像から、損傷情報に含まれる情報の項目の優先度、または画像の画質の少なくともいずれかに基づいて、指定された部材に対応する、指定された数の画像を選択する選択処理と、指定された部材と、選択された画像と、損傷情報と、の対応を認識可能に出力する出力処理と、を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
建造物を撮影した複数の画像と、前記建造物を構成する部材の3次元モデルと、前記複数の画像に基づいて抽出した前記建造物の損傷情報とが対応付けて記憶されたメモリとを備え、
前記プロセッサは、
前記複数の画像から、前記損傷情報に含まれる情報の項目の優先度、または前記画像の画質の少なくともいずれかに基づいて、指定された部材に対応する、指定された数の画像を選択する選択処理と、
前記指定された部材と、前記選択された画像と、前記損傷情報と、の対応を認識可能に出力する出力処理と、を行う、画像処理装置。
【請求項2】
前記優先度又は前記画像の画質は、ユーザの操作に応じて設定されたものである、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記指定された数は、ユーザの操作に応じて設定されたものである、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
プロセッサと、
建造物を撮影した複数の画像と、前記建造物を構成する部材の3次元モデルと、前記複数の画像に基づいて抽出した前記建造物の損傷情報とが対応付けて記憶されたメモリと、を備える画像処理装置による画像処理方法であって、
前記プロセッサが行う処理は、
前記複数の画像から、前記損傷情報に含まれる情報の項目の優先度、または前記画像の画質の少なくともいずれかに基づいて、指定された部材に対応する、指定された数の画像を選択する選択工程と、
前記指定された部材と、前記選択された画像と、前記損傷情報と、の対応を認識可能に出力する出力工程と、
を含む画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物を撮影した画像、建造物の3次元モデル、及び損傷情報を取り扱う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の3次元モデル及び損傷情報を取り扱う技術に関し、例えば特許文献1には、橋梁等の構造物(建造物、建築物)の管理用図面を作成する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-192270号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、建造物を撮影した画像、建造物の3次元モデル、及び損傷情報を容易に取り扱うことができる画像処理装置、及び画像処理装置による画像処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、プロセッサと、建造物を撮影した複数の画像と、造物を構成する部材が特定された建造物の3次元モデルと、が記憶されたメモリであって、複数の画像と部材とが対応付けて記憶されたメモリと、を備える画像処理装置であって、プロセッサは、複数の画像に基づいて建造物の損傷情報を抽出する抽出処理と、複数の画像の中から、指定された基準に従って、指定された部材に対応する画像を選択する選択処理と、指定された部材と、選択された画像と、損傷情報と、を対応付けて出力する出力処理と、を行う。
【0006】
第2の態様に係る画像処理装置は第1の態様において、プロセッサは、複数の画像に基づいて建造物の3次元モデルを生成する生成処理と、生成した3次元モデルにおいて、建造物を構成する部材を特定する特定処理と、3次元モデルを、複数の画像と特定された部材とを対応付けてメモリに記憶させる記憶制御処理と、を行う。
【0007】
第3の態様に係る画像処理装置は第2の態様において、プロセッサは、ユーザが部材を特定する操作によらずに特定処理を行う。
【0008】
第4の態様に係る画像処理装置は第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、基準の指定を受け付ける受付処理を行う。
【0009】
第5の態様に係る画像処理装置は第1から第4の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、抽出処理において、損傷の種類、数、大きさ、損傷度合い、及び時間変化のうち少なくとも1つを損傷情報として抽出する。
【0010】
第6の態様に係る画像処理装置は第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、選択処理において、損傷の種類ごとに画像を選択する。
【0011】
第7の態様に係る画像処理装置は第1から第6の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、選択処理において、指定された数の画像を選択する。
【0012】
第8の態様に係る画像処理装置は第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、指定された書式の文書ファイルにおいて画像領域として指定された領域に選択された画像を配置する画像配置処理を行う。
【0013】
第9の態様に係る画像処理装置は第8の態様において、プロセッサは、文書ファイルにおいて情報領域として指定された領域に損傷情報を入力する情報入力処理を行う。
【0014】
第10の態様に係る画像処理装置は第1から第9の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、3次元モデルと、選択された画像の3次元モデルにおける位置を示す位置情報と、を関連付けて表示装置に表示させる第1の表示処理と、表示された位置情報のうち指定された位置情報について、選択された画像を表示装置に表示させる第2の表示処理と、を行う。
【0015】
第11の態様に係る画像処理装置は第1から第10の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、3次元モデルと、選択された画像の3次元モデルにおける位置を示す位置情報と、を関連付けて表示装置に表示させる第1の表示処理と、表示された位置情報について、選択された画像を表示装置に表示させる第3の表示処理と、を行う。
【0016】
第12の態様に係る画像処理装置は第10または第11の態様において、プロセッサは、少なくとも第1の表示処理において、位置情報を損傷情報に応じた態様で識別表示させる。
【0017】
第13の態様に係る画像処理装置は第10から第12の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、少なくとも第1の表示処理において、複数の画像のうち特定された部材に対応する画像を合成し、合成された画像を特定された部材にマッピングして表示装置に表示させる。
【0018】
第14の態様に係る画像処理装置は第10から第13の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、少なくとも第1の表示処理において、損傷情報を3次元モデルに強調表示する。
【0019】
第15の態様に係る画像処理装置は第1から第14の態様のいずれか1つにおいて、プロセッサは、建造物を撮影した複数の画像であって、メモリに記憶された複数の画像と撮影日時が異なる複数の画像を取得する取得処理と、取得した複数の画像と、メモリに記憶された3次元モデルの部材と、を対応付ける対応付け処理と、を行う。
【0020】
第16の態様に係る画像処理装置は第15の態様において、プロセッサは、取得した複数の画像と、メモリに記憶された複数と、の相関に基づいて対応付け処理を行う。
【0021】
本発明の第17の態様に係る画像処理方法は、プロセッサと、建造物を撮影した複数の画像と、建造物の3次元モデルと、が記憶されたメモリであって、複数の画像と、3次元モデルにおいて建造物を構成する部材と、が対応付けて記憶されたメモリと、を備える画像処理装置による画像処理方法であって、プロセッサが行う処理は、複数の画像に基づいて建造物の損傷情報を抽出する抽出工程と、複数の画像の中から、指定された基準に従って、3次元モデルにおいて指定された部材に対応する画像を選択する選択工程と、指定された部材と、選択された画像と、損傷情報と、を対応付けて出力する出力工程と、を含む。第17の態様に係る画像処理方法は、第2から第16の態様と同様の構成をさらに有していてもよい。
【0022】
本発明の第18の態様に係る画像処理プログラムは、第17の態様に係る画像処理方法をコンピュータに実行させる。第18の態様に係る画像処理プログラムのコンピュータ読み取り可能なコードを記録した非一時的記録媒体も、本発明の態様として挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1の実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、処理部の機能構成を示す図である。
図3図3は、記憶装置に記憶される情報を示す図である。
図4図4は、画像処理方法の処理を示すフローチャートである。
図5図5は、画像群を取得する様子を示す図である。
図6図6は、3次元点群データの例を示す図である。
図7図7は、3次元モデルの例を示す図である。
図8図8は、損傷情報の例を示す図である。
図9図9は、代表画像の選択基準を設定する様子を示す図である。
図10図10は、処理結果の出力態様を設定する様子を示す図である。
図11図11は、2次元の点検調書に代表画像及び損傷情報を入力した様子を示す図である。
図12図12は、3次元モデル上での位置情報の表示の様子を示す図である。
図13図13は、指定された位置の代表画像を表示させた様子を示す図である。
図14図14は、代表画像が最初から表示されている様子を示す図である。
図15図15は、2次元の点検調書のうち指定された位置の代表画像が含まれる部分を表示した様子を示す図である。
図16図16は、3次元モデルに合成画像をマッピングした様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る画像処理装置、及び画像処理装置による画像処理方法の一つの実施形態は以下の通りである。説明においては、必要に応じて添付図面が参照される。
【0025】
[第1の実施形態]
[画像処理システムの構成]
図1は、画像処理システム1(画像処理装置)の概略構成を示すブロック図である。画像処理システム1は画像処理装置10(画像処理装置)及び表示装置20(表示装置、モニタ)を備え、被写体を分割撮影して取得した複数の画像について損傷情報の抽出、3次元モデルの作成、2次元点検調書の作成支援等を行うシステムである。画像処理システム1は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の機器(情報端末)を用いて構成することができる。画像処理システム1の各要素は1つの筐体に収納されていてもよいし、独立した筐体に収納されていてもよい。また、各要素が離れた場所に配置されネットワークを介して接続されていてもよい。
【0026】
[画像処理装置の構成]
画像処理装置10は処理部100、記憶装置200、及び操作部300を備え、これら各部は互いに接続されて必要な情報が送受信される。
【0027】
[処理部の構成]
図2は処理部100(プロセッサ)の構成を示す図である。処理部100は、入力処理部102、取得処理部103、抽出処理部104、生成処理部105、特定処理部106、対応付け処理部107、選択処理部108、記憶制御処理部109、受付処理部110、画像配置処理部112、情報入力部114、表示処理部116、及び通信制御部118を備え、撮影画像の取得、3次元モデルの作成、2次元点検調書の作成支援等を行う。これら各部による処理の詳細は後述する。
【0028】
上述した処理部100の機能は、各種のプロセッサ(processor)及び記録媒体を用いて実現できる。各種のプロセッサには、例えばソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能を実現する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)も含まれる。
各機能は1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ)で実現されてもよい。また、複数の機能を1つのプロセッサで実現してもよい。これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0029】
上述したプロセッサあるいは電気回路がソフトウェア(プログラム)を実行する際は、実行するソフトウェアのコンピュータ(例えば、処理部100を構成する各種のプロセッサや電気回路、及び/またはそれらの組み合わせ)で読み取り可能なコードをROM等の非一時的記録媒体(メモリ)に記憶しておき、コンピュータがそのソフトウェアを参照する。実行の際は、必要に応じて記憶装置に記憶された情報が使用される。また、実行の際は、例えばRAM(Random Access Memory;メモリ)が一時的記憶領域として用いられる。
【0030】
なお、処理部100の機能の一部または全部をネットワーク上のサーバで実現して、画像処理装置10はデータの入力、通信制御、結果の表示等を行ってもよい。この場合、ネットワーク上のサーバを含めてApplication Service Provider型システムが構築される。
【0031】
[記憶部の構成]
記憶装置200(記憶装置、メモリ)はCD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、ハードディスク(Hard Disk)、各種半導体メモリ等の非一時的記録媒体及びその制御部により構成され、図3に示す情報が互いに関連づけて記憶される。撮影画像202は建造物を撮影した複数の画像であり、合成画像204は、撮影画像から合成された、特定の部材に対応する画像(の集合)である。3次元モデルデータ206(3次元モデル)は、撮影画像に基づいて作成された建造物の3次元モデルであり、建造物を構成する部材が特定されている。なお、3次元モデルデータ206は撮影画像、代表画像、2次元調書等との対応付けがされており、詳細を後述するように、ユーザは3次元モデル上で位置情報を指定することにより、代表画像や2次元点検調書を表示させることができる。損傷情報208(損傷情報)は、撮影画像から抽出された、建造物の損傷を示す情報である。点検調書データ210は、2次元点検調書のひな形(指定された形式の文書ファイル)、あるいは、ひな形に代表画像や損傷情報が配置、入力されたデータである(後述)。ひな形は、国土交通省や地方自治体の定める形式でもよい。
【0032】
これらの情報の他に、後述するSfM(Structure from Motion)を適用する場合に必要なカメラのパラメータ(焦点距離、イメージセンサの画像サイズ、画素ピッチ等)が、記憶装置200に記憶されていてもよい。
【0033】
[操作部の構成]
操作部300はキーボード310及びマウス320を含み、ユーザはこれらのデバイスにより本発明に係る画像処理に必要な操作を行うことができる。タッチパネル型のデバイスを用いることにより、表示装置20を操作部として用いてもよい。
【0034】
[表示装置]
表示装置20(表示装置)は、例えば液晶ディスプレイ等のデバイスであり、取得した撮影画像、損傷情報、3次元モデル、2次元点検調書、代表画像等の情報を表示させることができる。
【0035】
[画像処理の手順]
図4は、本発明に係る画像処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0036】
[画像の入力]
入力処理部102(プロセッサ)は、被写体としての建造物を撮影した複数の画像を入力する(ステップS100:入力処理、入力工程)。建造物(建築物、構造物)は例えば橋梁、道路等であるが、他の建造物でもよい。また、入力処理部102は、撮影画像202として記憶装置200に記憶されている画像を入力してもよいし、図示せぬ記録媒体やネットワークを介して画像を入力してもよい。これらの画像は、ドローン等の飛翔体や移動機能のあるロボット等により、視点を移動させながら撮影することができる(ユーザが撮影してもよい)。撮影する画像はステレオ画像でなくて良い。なお、3次元モデルの作成及び画像合成のためには、画像間で特徴点が多数共通することが好ましいので、隣接する画像同士が十分に(例えば、面積の80%以上)オーバーラップしていることが好ましい。図5は、カメラ30により、そのようにオーバーラップした画像を撮影する様子を示す図である。
【0037】
[損傷の抽出]
抽出処理部104(プロセッサ)は、入力した複数の画像に基づいて、建造物の損傷情報を抽出する(ステップS110:抽出処理、抽出工程)。抽出処理部104は、抽出処理において、損傷の種類、数、大きさ、損傷度合い、及び時間変化のうち少なくとも1つを損傷情報として抽出することができる。
【0038】
抽出処理部104は、種々の手法を用いて損傷情報を抽出することができる。例えば、特許4006007号公報に記載されたひび割れ検出方法や、特表2010-538258号公報に記載された錆及び剥離の検出方法を用いることができる。また、抽出処理部104は、機械学習の手法を用いて損傷情報を抽出することができる。例えば、損傷の種類や大きさ等をラベルとして付与した画像を教師データとして与えて機械学習によりDNN(Deep Neural Network)等の学習器を生成し、生成した学習器を用いて損傷を検出することができる。
【0039】
抽出処理部104は、個々の撮影画像から損傷情報を抽出して対応する情報を1つに合成してもよいし、複数の撮影画像を合成した1つの画像から損傷情報を抽出してもよい。損傷は始点及び終点を持ったベクトルとして表すことができ、この場合、WO2017/110279号公報に記載されているようにベクトル同士の階層構造を考慮してもよい。
【0040】
図8は抽出した損傷情報の例を示す図である。抽出処理部104は、抽出した損傷情報を、損傷情報208として記憶装置200に記憶させることができる。
【0041】
[3次元モデルの作成]
生成処理部105(プロセッサ)は、入力した複数の画像に基づいて、建造物の3次元モデルを作成する(ステップS120:生成処理、生成工程)。3次元モデルには、3次元点群モデル、3次元点群モデルに基づいて作成される3次元サーフェスモデルや3次元ポリゴンモデル、あるいは画像がテクスチャーマッピングされたものなど、各種のモデルが存在し、生成処理部105は、例えばSfM(Structure from Motion)の手法を用いて3次元モデルを作成することができる。SfMは、多視点画像から3次元形状を復元する手法であり、例えばSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)等のアルゴリズムにより特徴点を算出し、この特徴点を手掛かりとして、三角測量の原理を用いて点群(point cloud)の3次元位置を算出する。具体的には、三角測量の原理を用いてカメラから特徴点へ直線を引き,対応する特徴点を通る2本の直線の交点が、復元した3次元点となる。そして、検出した特徴点ごとにこの作業を行うことにより、点群の3次元位置を得ることができる。図6は、点群500(点群の例)を示す図である。
【0042】
なお、SfMでは大きさは算出されないが、例えば、寸法が既知のスケーラ-(scaler)を被写体に設置して撮影を行うことで、実スケールとの対応付けを行うことができる。
【0043】
生成処理部105は、このようにして得た点群のデータに対し例えばTINモデル(TIN:triangulated irregular network)を適用して建造物の面を三角形で近似し、その結果に基づいてソリッドモデル(solidモデル;3次元モデル)を得ることができる。ソリッドモデルでは、建造物の3次元形状が、中身の詰まった積み木やブロックのような3次元の部材の組合せとして構成される。なお、ソリッドモデルを得る際に、ユーザが操作部300を介して「点群のどの範囲が同一の面に属するか」を指定し、生成処理部105がその結果を利用してもよい。また、生成処理部105が、RANSAC(Random Sample Consensus)等のアルゴリズムを用いて、ユーザの操作によらずに自動的にソリッドモデルを生成してもよい。ソリッドモデルを生成する際、生成処理部105は、点群の3次元位置、色(R,G,B)、輝度の情報を利用して、これらの情報の変化を算出してもよい。
【0044】
[生成済みの3次元モデルの利用]
なお、過去の検査等により既に3次元モデルが生成あるいは取得されている場合は、生成処理部105がそのモデルを読み込んでもよい。このような生成済みの3次元モデルを利用する場合、取得処理部103は、建造物を撮影した複数の画像であって、記憶装置200(メモリ)に記憶された複数の画像と撮影日時が異なる複数の画像(例えば、記憶されている画像よりも撮影日時が新しく、3次元モデルの生成に用いられていない画像)を取得することができる(取得処理、取得工程)。また、対応付け処理部107は、取得した複数の画像と、記憶装置200に記憶された3次元モデルの部材と、を対応付けることができる(対応付け処理、対応付け工程)。対応付け処理部107は、例えば、取得した複数の画像と、記憶装置200に記憶された複数の画像と、の相関に基づいて対応付け処理(対応付け工程)を行うことができる。
【0045】
[部材の特定]
特定処理部106(プロセッサ)は、3次元モデルにおいて、建造物を構成する部材を特定する(ステップS130:特定処理、特定工程)。すなわち、特定処理部106は、「3次元モデルの各領域が建造物のどの部材に対応するか」を特定する。特定処理部106は、ユーザの操作に基づいて部材を特定してもよいし、ユーザが部材を特定する操作によらずに特定してもよい。特定処理部106は、部材を特定する際に、部材の形状や寸法に関する情報を用いてもよい。例えば「水平面内で2次元状に広がり、面積がしきい値以上である部材は床版である」、「床版に付着し、1次元状に延伸する部材は主桁である」等の情報を用いることができる。また、特定処理部106は、3次元モデルを構成する部材を正解ラベルとして与えた機械学習により構成された、DNN等の学習器を用いて部材を特定してもよい。図7は、部材が特定された3次元モデルの例を示す図である。同図の例では、橋梁の3次元モデル510は、床版512、壁部514、及び脚部516の各部材から構成されている。
【0046】
記憶制御処理部109は、生成した3次元モデルを示すデータを、3次元モデルデータ206として記憶装置200に記憶させることができる(記憶制御処理、記憶制御工程)。
【0047】
[代表画像の選択]
上述した点群は撮影画像に含まれる特徴点の位置を示す情報であり、またステップS130で部材が特定されているので、各部材に対応する撮影画像を特定することができる。しかしながら、3次元モデルを作成するため、通常は各部材について非常に多くの画像を取得しているので、ユーザが画像を選択するのは手間が掛かる作業である。そこで画像処理システム1において、受付処理部110(プロセッサ)は画像の選択基準の指定を受け付け(ステップS140:受付処理、受付工程)、選択処理部108(プロセッサ)は、その基準に従って、撮影された画像の中から、特定された部材に対応する画像(代表画像)を選択する(ステップS140:選択処理、選択工程)。
【0048】
図9は、代表画像の選択基準を設定する様子を示す図であり、受付処理部110は、このような画面を表示装置20に表示させる。図9の例では、受付処理部110は、損傷情報に含まれる情報(損傷の数、大きさ、損傷の程度(度合い)、時間変化)について、ユーザの操作に応じて優先度を設定する。また、受付処理部110は、ユーザの操作に応じて、選択する代表画像の枚数(1枚でもよいし、複数枚でもよい)を設定する。このような設定に応じて、選択処理部108は、設定された優先度に従って、指定された数の画像を選択する。これにより、ユーザは代表画像を迅速かつ容易に選択することができる。なお、図9に示す態様は選択基準設定の一例であり、他の基準(例えば、撮影画像の画質、部材の種類、部材の識別番号等)に基づいて代表画像を選択してもよい。
【0049】
[処理結果の出力]
図10は、処理結果の出力態様を設定する様子を示す図である。同図に示す例では、ユーザは、操作部300を介したラジオボタンの選択及び数値入力により、2次元点検調書の表示、3次元モデルの表示、代表画像の表示タイミング、合成画像のマッピングの有無、損傷の強調表示、3次元モデルへの2次元点検調書の表示の有無を選択することができる。そして、設定された内容に従い、画像配置処理部112、情報入力部114、表示処理部116が単独で、または協調して、特定された部材と、選択された画像と、損傷情報と、を対応付けて出力する(ステップS150:出力処理、出力工程)。ステップS110からS150までの処理は、ステップS160で終了の判断が肯定されるまで、繰り返し行うことができる。なお、出力態様の設定、及び設定した態様での出力は、ユーザが希望するタイミングで行うことができる。例えば、あるモードで処理結果を表示させた後、別のモードで再度表示させることができる。各出力態様の具体的な内容は、以下で説明する。
【0050】
[その1:2次元点検調書を用いた出力]
図11は、画像配置処理部112が、2次元点検調書(「指定された書式の文書ファイル」の一例)において、画像を配置する領域として指定された領域(画像領域)に代表画像(代表画像552,554,556,558)を配置した例である。同図中、代表画像552にはうき552Aが写っており、代表画像554には剥離554Aが写っている。このような形式の調書は複数ページに渡っていてもよい。図11の例では、さらに、情報入力部114が、写真番号、部材名、要素番号、損傷の種類、程度等の損傷情報を、文書ファイルにおいて情報領域として指定された領域に入力している(情報入力処理、情報入力工程)。「メモ」欄の内容は、情報入力部114が損傷情報に基づいて自動的に入力してもよいし、ユーザの操作に基づいて入力してもよい。表示処理部116は、図10の画面で「2次元点検調書表示モード」がオンの場合に、このような画面を表示装置20に表示させる。また、表示処理部116は、この画面に対応する情報を点検調書データ210として記憶させる。
【0051】
なお、文書のフォーマットや代表画像のレイアウトは各種考えられる。例えば、点検調書等の文書は、国土交通省、地方自治体等の定める書式でもよいし、他の書式でもよい。点検調書以外の、他の指定された書式の文書を用いてもよい。また、部材をキーにして代表画像がソートされて文書に配置されていてもよいし、損傷の種類をキーとして(損傷の種類ごとに)各部材の代表画像がソートされて配置されていてもよい。
【0052】
このような処理により、画像処理システム1では、ユーザは代表画像の選択及び点検調書の作成を迅速かつ容易に行うことができる。すなわち、ユーザは建造物を撮影した画像、建造物の3次元モデル、及び損傷情報を容易に取り扱うことができる。
【0053】
[その2:3次元モデルを用いた出力]
図12は、3次元モデル520と、選択された画像(代表画像)の3次元モデルにおける位置を示すピン532,534(位置情報)と、を関連付けて表示装置に表示させた状態(第1の表示処理の結果)を示す図である。図10で代表画像の表示タイミングが「ピン指定時」となっている場合に、このように代表画像の位置にピンが表示される。図12の例は、3次元モデルは橋梁の脚部の壁面付近を表示したものであり、表示処理部116は、操作部300を介したユーザの操作に応じて3次元モデルを拡大または縮小し、また視点の移動や視線方向の変更を行うことができる。また、表示処理部116は、3次元モデルを表示する際に、特定の部材(例えば、ユーザが指示した部材)の表示をオンまたはオフにしてもよい。表示処理部116は、図10で「3次元モデル表示モード」がオンの場合に、このような表示を行う。なお、図12~15ではテクスチャなしの3次元モデルを示しているが、テクスチャありの3次元モデルについても同様の処理を行うことができる(図16及び同図に関連する記載を参照)。
【0054】
表示処理部116は、損傷情報を3次元モデルに強調表示してもよい。例えば、ひび割れ、あるいはうきや剥離等、損傷もしくはその輪郭を太い線や目立つ色の線でなぞって表示する、等の態様で表示してもよい。
【0055】
なお、図11の例では、表示処理部116はピンを損傷情報に応じた態様で識別表示している。具体的には、表示処理部116は損傷の種類に応じてピンの記号を変えて表示しているが、記号の他に色や数字を変えてもよいし、アイコン状に表示してもよい。また、損傷の程度に応じて表示態様を変えてもよい。ユーザは、図12の例において、例えばマウス320により画面上でカーソル540を移動させてピンを選択(クリック等)することができる。
【0056】
図13は、表示処理部116が、画面に表示されたピン(位置情報)のうち指定されたものについて、代表画像を表示装置20に表示させた状態(第2の表示処理の結果)を示す図である。図13の(a)部分は、ピン532の指定により「うき」の代表画像552が表示された状態であり、同図の(b)部分はピン534の指定により「剥離」の代表画像554が表示された状態である。表示処理部116は、3次元モデルとは別の領域、別の画面、あるいは別の表示装置に代表画像を表示させてもよい。
【0057】
図14は、3次元モデルに代表画像を最初から表示した状態(第1の表示処理及び第3の表示処理の結果)を示す図である。表示処理部116は、図10で代表画像の表示が「最初から」に設定されている場合にこのような表示を行う。図14に示す例では、ピンと代表画像が引き出し線で結ばれているので、ユーザはピンと代表画像との関係を容易に把握することができる。ピンに結ばれた吹き出し状の図形に代表画像を表示してもよい。
【0058】
図15は、2次元点検調書のうち、選択されたピンに対応する代表画像を含む部分を表示した様子(第4の表示処理の結果)を示す図である。表示処理部116は、図10で「3次元モデルへの2次元点検調書表示」がオンである場合に、このような表示を行うことができる。表示処理部116は、このような部分的な2次元点検調書を、3次元モデルと別の領域、別の画面、別の表示装置に表示させてもよい。
【0059】
このような処理により、画像処理システム1では、ユーザは代表画像や点検調書の作成を迅速かつ容易に閲覧することができる。すなわち、ユーザは建造物を撮影した画像、建造物の3次元モデル、及び損傷情報を容易に取り扱うことができる。
【0060】
[その3:3次元モデルへの合成画像のマッピング]
図16は、3次元モデル520(図12参照)に合成画像をマッピングした3次元モデル522を、表示装置20に表示した様子を示す図である。図10で「合成画像のマッピング」がオンの場合に、このような表示が行われる。この態様では、画像合成部117(プロセッサ)が複数の撮影画像のうち特定された部材に対応する画像を合成し、表示処理部116が、合成された画像を特定された部材にマッピングして表示装置20に表示させる(第5の表示処理)。画像の合成及びマッピングは、建造物の一部の部材について行ってもよいし、全ての部材について行ってもよい。なお、図16に示す例では、表示処理部116は、上述した態様と同様に位置情報の識別表示(ピン532,534,536を損傷の種類に応じた記号で表示)を行っており、位置情報の選択に応じて代表画像や2次元点検調書を表示してもよい。また、損傷情報の強調表示を行ってもよい。
【0061】
なお、図16では、立体形状のみの3次元モデルに別途生成した合成画像をマッピングした例を示しているが、生成処理部105(プロセッサ)は、上述したSfM等により、テクスチャ付きの3次元モデルを直接生成してもよい。この際、生成処理部105は、MVS(Multi-View Stereo:多眼ステレオ)等の他のアルゴリズムを用いてもよい。MVSは、単眼より情報量が多いという点で、より精細な3次元モデルを生成することができる。このようなテクスチャ付きの3次元モデルについても、図12~15について上述した態様と同様に、位置情報や代表画像の表示、部分的な2次元点検調書の表示、損傷情報の強調表示を行ってもよい。
【0062】
このような処理により、画像処理システム1では、ユーザは建造物を撮影した画像、建造物の3次元モデル、及び損傷情報を容易に取り扱うことができる。
【0063】
以上で本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述した態様に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 画像処理システム
10 画像処理装置
20 表示装置
30 カメラ
100 処理部
102 入力処理部
103 取得処理部
104 抽出処理部
105 生成処理部
106 特定処理部
107 対応付け処理部
108 選択処理部
109 記憶制御処理部
110 受付処理部
112 画像配置処理部
114 情報入力部
116 表示処理部
117 画像合成部
118 通信制御部
200 記憶装置
202 撮影画像
204 合成画像
206 3次元モデルデータ
208 損傷情報
210 点検調書データ
300 操作部
310 キーボード
320 マウス
500 点群
510 3次元モデル
512 床版
514 壁部
516 脚部
520 3次元モデル
522 3次元モデル
532 ピン
534 ピン
536 ピン
540 カーソル
552 代表画像
552A うき
554 代表画像
554A 剥離
556 代表画像
558 代表画像
S100~S160 画像処理方法の各ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16