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特開2024-150686界面活性剤組成物、乳化重合用組成物、重合体エマルションの製造方法、及び重合体エマルション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150686
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】界面活性剤組成物、乳化重合用組成物、重合体エマルションの製造方法、及び重合体エマルション
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/42 20220101AFI20241016BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 246/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20241016BHJP
   C08G 65/32 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09K23/42
C08F216/14
C08F246/00
C08F2/24 A
C08G65/32
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024119376
(22)【出願日】2024-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 修平
(72)【発明者】
【氏名】川口 明裕
(72)【発明者】
【氏名】押渡部 千佳
(72)【発明者】
【氏名】塚原 直樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションを得ることができる、界面活性剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を95.5質量%~99.2質量%と、下記の一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を0.8質量%~4.5質量%含有する、界面活性剤組成物を提供する。

(式中、Rは炭素原子数8~15の直鎖又は分岐アルキル基を表し、mは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)

(式中、Rは炭素原子数8~15の直鎖又は分岐アルキル基を表し、nは5~50の数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を95.5質量%~99.2質量%と、下記の一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を0.8質量%~4.5質量%含有する、界面活性剤組成物。
【化1】
(式中、Rは炭素原子数8~15の直鎖又は分岐アルキル基を表し、mは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)
【化2】
(式中、Rは炭素原子数8~15の直鎖又は分岐アルキル基を表し、nは5~50の数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のRと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のRとが、同一のアルキル基である、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
乳化重合用界面活性剤組成物である、請求項1又は2に記載の界面活性剤組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の界面活性剤組成物を含有する、乳化重合用組成物。
【請求項5】
アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の重合性モノマーを、請求項1又は2に記載の界面活性剤組成物の存在下で重合する工程を含む、重合体エマルションの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の界面活性剤組成物の存在下で、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の重合性モノマーを重合して得られる重合体エマルション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションを得ることができる、界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、接着剤、粘着剤、コーティング剤、インク、セメント、モルタル、カーワックス等に、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の樹脂エマルションが使用される。その樹脂エマルションの各種特性を向上させるために、原料モノマーを乳化重合して樹脂エマルションを製造する際に反応性乳化剤を用いる方法が知られており、これまでに様々な反応性乳化剤が提案されてきた。
【0003】
反応性乳化剤としては、例えば、反応性基として(メタ)アリルエーテル基を有する各種反応性乳化剤(特許文献1、2)や、反応性基として(メタ)アクリル酸エステル基を有する各種反応性乳化剤(特許文献3、4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-054927号公報
【特許文献2】特開昭63-319035号公報
【特許文献3】特開昭63-077530号公報
【特許文献4】特開昭63-185436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~4に記載される反応性乳化剤では、得られる重合体エマルションの粘着特性、機械的安定性、及び耐水性が十分ではなく、市場では依然として優れた特性を有する界面活性剤組成物が求められていた。
【0006】
従って、本発明は、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションを得ることができる、界面活性剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のアニオン性界面活性剤と特定のノニオン性界面活性剤とを特定量含有する界面活性剤組成物が、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションを得ることができることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を95.5質量%~99.2質量%と、下記の一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を0.8質量%~4.5質量%含有する、界面活性剤組成物である。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Rは炭素原子数8~15のアルキル基を表し、mは5~50の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは炭素原子数8~15のアルキル基を表し、nは5~50の数を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明による界面活性剤組成物を用いることで、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションを調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.アニオン性界面活性剤
本発明に用いるアニオン性界面活性剤は、下記の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤である。
【0014】
【化3】
【0015】
一般式(1)におけるRは、炭素原子数8~15のアルキル基を表し、このような基としては例えば、オクチル基、分岐オクチル基、ノニル基、分岐ノニル基、デシル基、分岐デシル基、ウンデシル基、分岐ウンデシル基、ドデシル基、分岐ドデシル基、トリデシル基、分岐トリデシル基、テトラデシル基、分岐テトラデシル基、ペンタデシル基、分岐ペンタデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基等が挙げられる。これらの中でも、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)におけるRは、炭素原子数10~15の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素原子数11~13の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましい。また、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)におけるRは、分岐アルキル基であることが好ましく、3個以上の末端メチル基を有する分岐アルキル基であるイソアルキル基であることがより好ましい。本発明においては、これらの中でも、特に粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)におけるRは、炭素原子数10~15のイソアルキル基であることが好ましく、炭素原子数11~13のイソアルキル基であることがより好ましく、イソウンデシル基であることが特に好ましい。
【0016】
一般式(1)におけるmは、5~50の数を表す。これらの中でも、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)におけるmは、10~40であることが好ましく、10~30であることがより好ましい。
また、mの平均値は、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、7~45が好ましく、8~40がより好ましく、10~30がさらに好ましい。
【0017】
一般式(1)におけるMは、水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表し、アルカリ金属原子としては例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。これらの中でも、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)におけるMは、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、又はアンモニウム基であることが好ましく、アンモニウム基であることがより好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、例えば、特開2006-075808号公報に記載の方法等により製造することができる。
【0019】
B.ノニオン性界面活性剤
本発明に用いるノニオン性界面活性剤は、下記の一般式(2)で表されるアニオン性界面活性剤である。
【0020】
【化4】
【0021】
一般式(2)におけるRは、炭素原子数8~15のアルキル基を表し、このような基としては例えば、オクチル基、分岐オクチル基、ノニル基、分岐ノニル基、デシル基、分岐デシル基、ウンデシル基、分岐ウンデシル基、ドデシル基、分岐ドデシル基、トリデシル基、分岐トリデシル基、テトラデシル基、分岐テトラデシル基、ペンタデシル基、分岐ペンタデシル基、ヘキサデシル基、分岐ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、分岐ヘプタデシル基、ステアリル基、分岐ステアリル基、エイコシル基、分岐エイコシル基等の直鎖又は分岐アルキル基等が挙げられる。これらの中でも、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(2)におけるRは、炭素原子数10~15の直鎖又は分岐アルキル基であることが好ましく、炭素原子数11~13の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましい。また、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(2)におけるRは、分岐アルキル基であることが好ましく、3個以上の末端メチル基を有する分岐アルキル基であるイソアルキル基であることがより好ましい。本発明においては、これらの中でも、特に粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(2)におけるRは、炭素原子数10~15のイソアルキル基であることが好ましく、炭素原子数11~13のイソアルキル基であることがより好ましく、イソウンデシル基であることが特に好ましい。
【0022】
一般式(2)におけるnは、5~50の数を表す。これらの中でも、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)におけるnは、10~40であることが好ましく、10~30であることがより好ましい。
また、nの平均値は、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、7~45が好ましく、8~40がより好ましく、10~30がさらに好ましい。
【0023】
一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、例えば、特開2002-301353号公報に記載の方法等により製造することができる。
【0024】
C.界面活性剤組成物
本発明の界面活性剤組成物は、上述した一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を、界面活性剤組成物全量に対して、95.5質量%~99.2質量%と、上述した一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を、界面活性剤組成物全量に対して、0.8質量%~4.5質量%含有する界面活性剤組成物である。一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤の含有量が95.5質量%より少ないと、乳化重合に用いた場合に粘着特性及び耐水性に劣る重合体エマルションとなるおそれがあり、また99.2質量%より多いと、乳化重合に用いた場合に粘着特性及び機械的安定性に劣る重合体エマルションとなるおそれがある。同様に、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤の含有量が0.8質量%より少ないと、乳化重合に用いた場合に粘着特性及び機械的安定性に劣る重合体エマルションとなるおそれがあり、また4.5質量%より多いと、乳化重合に用いた場合に粘着特性及び耐水性に劣る重合体エマルションとなるおそれがある。本発明においては、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、本発明の界面活性剤組成物は、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を95.8質量%~99.1質量%と、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を0.9質量~4.2質量%含有することが好ましく、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を96.0質量%~99.0質量%と、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を1.0質量%~4.0質量%含有することがより好ましい。
【0025】
本発明の界面活性剤組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤、上述した一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤以外の成分(例えば、後述する各種成分)を含有していてもよいが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点から、界面活性剤組成物中の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤と一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤との含有量の合計が、界面活性剤組成物全量に対して、96.5質量%以上であることが好ましく、97.0質量%以上であることがより好ましく、99.0質量%以上であることが更により好ましく、100%質量%であることが特に好ましい。つまり、本発明の界面活性剤組成物は、不可避不純物を除き、上述した一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤及び上述した一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤からなることが特に好ましい。
【0026】
本発明においては、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のアルキル基Rと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のアルキル基Rとが、同一のアルキル基であることが好ましい。具体的には、例えば、本発明の界面活性剤組成物としては、一般式(1)においてRが炭素原子数8~15のアルキル基であるアニオン性界面活性剤95.5質量%~99.2質量%と、一般式(2)においてRがRと同一のアルキル基であるノニオン性界面活性剤0.8質量%~4.5質量%と、を含有することが好ましく、一般式(1)においてRが炭素原子数11~13の直鎖又は分岐アルキル基であるアニオン性界面活性剤95.5質量%~99.2質量%と、一般式(2)においてRがRと同一のアルキル基であるノニオン性界面活性剤0.8質量%~4.5質量%と、を含有することがより好ましく、一般式(1)においてRが炭素原子数11~13のイソアルキル基であるアニオン性界面活性剤95.5質量%~99.2質量%と、一般式(2)においてRがRと同一のアルキル基であるノニオン性界面活性剤0.8質量%~4.5質量%と、を含有することが更により好ましく、一般式(1)においてRが炭素原子数11~13のイソアルキル基であるアニオン性界面活性剤96.0質量%~99.0質量%と、一般式(2)においてRがRと同一のアルキル基であるノニオン性界面活性剤1.0~4.0質量%と、を含有することが更により好ましい。
【0027】
なお、本発明において、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のアルキル基Rと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のアルキル基Rとが、同一のアルキル基である、とは、それぞれの製造に用いる原料中の微量成分等に由来する意図しない構造物を除く、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のアルキル基Rと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のアルキル基Rとの、炭素原子数及びその直鎖・分岐構造が、実質的に同一であることを示す。これは、例えば、界面活性剤組成物中の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のアルキル基Rが一種の構造からなる場合は、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のアルキル基Rも同一の一種の構造からなることを示し、また、界面活性剤組成物中にRが異なる2種以上の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を含有する場合は、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤においても、Rが異なる2種以上の一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を、それぞれアルキル基の構造が対応する一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤の含有量と同等の量で含有することを示す。ここで、「同等の量」とは、両者の含有量の差が5質量%以内であること指し、好ましくは3質量%以内、より好ましくは1質量%以内を指す。
【0028】
本発明においては、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数mと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数nとが、同一の付加数であることが好ましい。具体的には、例えば、本発明の界面活性剤組成物としては、一般式(1)においてmが5~50の数であるアニオン性界面活性剤95.5質量%~99.2質量%と、一般式(2)においてnがmと同一の数であるノニオン性界面活性剤0.8~4.5質量%と、を含有することが好ましく、一般式(1)においてmが10~30の数であるアニオン性界面活性剤95.5質量%~99.2質量%と、一般式(2)においてnがmと同一の数であるノニオン性界面活性剤0.8質量%~4.5質量%と、を含有することがより好ましく、一般式(1)においてmが10、20、又は30であるアニオン性界面活性剤95.5質量%~99.2質量%と、一般式(2)においてnがmと同一の数であるノニオン性界面活性剤0.8質量%~4.5質量%と、を含有することが更により好ましく、一般式(1)においてmが10又は30であるアニオン性界面活性剤96.0質量%~99.0質量%と、一般式(2)においてnがmと同一の数であるノニオン性界面活性剤1.0質量%~4.0質量%と、を含有することが更により好ましい。
【0029】
なお、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数mと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数nとが、同一の付加数である、とは、それぞれの製造時の副生成物等の由来する意図しない構造物を除く、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数mと、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数nの値が、同一であることを示す。これは、例えば、界面活性剤組成物中の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数mが特定の1つの数である場合は、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数nも同一の数であることを示し、また、界面活性剤組成物中にmの値が異なる2種以上の一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を含有する場合は、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤においても、nが異なる2種以上の一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を、それぞれエチレンオキサイド基の付加数が対応する一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤の含有量と同等の量で含有することを示す。なお、「同等の量」については上記定義と同じである。
【0030】
また、本発明の界面活性剤組成物において、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数mの値と、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数nの値をそれぞれ、界面活性剤組成物中に含まれる一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数の平均値と、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数の平均値により表す場合、より粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られる界面活性剤組成物とする観点からは、本発明の界面活性剤組成物が含有する一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数の平均値と、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数の平均値が同等の値であることが好ましい。ここで、「平均値が同等の値」とは、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加数の平均値を基準として両者の値の差が20%以内であること指し、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を指す。
【0031】
本発明の界面活性剤組成物は、界面活性剤の通常の用途に特に制限なく用いることができる。例えば、乳化重合用界面活性剤組成物、懸濁重合用界面活性剤組成物、樹脂用改質(撥水性向上、親水性調節、相溶性向上、帯電防止性向上、防曇性向上、耐水性向上、接着性向上、染色性向上、造膜性向上、耐候性向上、耐ブロッキング性向上等)用界面活性剤組成物剤、繊維加工用界面活性剤組成物、繊維防汚加工用界面活性剤組成物等として用いることができる。これらの中でも、本発明の効果の観点からは、本発明の界面活性剤組成物は、乳化重合用界面活性剤組成物として用いることが好ましい。本発明の界面活性剤組成物を乳化重合用界面活性剤組成物として用いる場合の、その具体的な製品分野も限定されず、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、インク、フィルム、コーティング剤、紙塗工剤、サイズ剤、シーラー等に使用するための重合体エマルションを製造するための乳化重合用界面活性剤組成物として用いることができる。
【0032】
本発明の界面活性剤組成物を乳化重合用界面活性剤組成物として用いて重合体エマルションを製造する際に用いることができる重合性モノマーとしては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エイコサニルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラコサニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、アクリル酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
ジエン系モノマーとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、1,3-シクロヘキサジエン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
アクリロニトリル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
本発明の界面活性剤組成物を乳化重合用界面活性剤組成物として用いる場合、本発明の効果の観点から、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上を乳化重合させるための乳化重合用界面活性剤組成物として用いることが好ましく、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、及びビニルエステル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上を乳化重合させるための乳化重合用界面活性剤組成物として用いることがより好ましく、アクリレート系モノマー及びスチレン系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上を乳化重合させるための乳化重合用界面活性剤組成物として用いることがより好ましい。
【0039】
本発明の界面活性剤組成物を、乳化重合用界面活性剤組成物として用いる場合の、界面活性剤組成物の使用量は特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、例えば、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の重合性モノマーの合計質量100質量部に対して、0.1質量部~20重量部用いることが好ましく、0.2質量部~10重量部用いることがより好ましく、0.5質量部~8重量部用いることが更により好ましい。
【0040】
D.乳化重合用組成物
本発明の乳化重合用組成物は、上述した界面活性剤組成物を含有する、乳化重合用組成物である。本発明の乳化重合用組成物は、目的に応じて、水、重合性モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤、pH緩衝剤、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を除くその他のアニオン性界面活性剤、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を除くその他のノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、有機溶媒、可塑剤、防腐剤、増粘剤、分散剤等を含有することができる。
【0041】
本発明の乳化重合用組成物が、界面活性剤組成物と、水を含有する場合の、水の含有量は特に限定されず目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、水の含有量が、乳化重合用組成物の全量に対して、1質量%~95質量%であることが好ましく、2質量%~90質量%であることがより好ましく、5質量%~80質量%であることが更により好ましい。
【0042】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる重合性モノマーとしては、例えば、上述したアクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー等を用いることができる。本発明の乳化重合用組成物が、重合性モノマーを含有する場合の、重合性モノマーの含有量は、特に限定されず目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、重合性モノマーの含有量が、乳化重合用組成物の全量に対して、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、20質量%~70質量%であることが更により好ましい。
【0043】
本発明の乳化重合用組成物が、界面活性剤組成物と、重合性モノマーを含有する場合の、界面活性剤組成物と重合性モノマーの含有量の比は特に限定されず、目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、乳化重合用組成物中の重合性モノマー100質量部に対し、界面活性剤組成物の含有量が0.1質量部~20質量部であることが好ましく、0.2質量部~10質量部であることがより好ましく、0.5質量部~8質量部であることが更により好ましい。
【0044】
本発明の乳化重合用組成物が、界面活性剤組成物と、水及び重合性モノマーを含有する場合の、上述した界面活性剤組成物と、水と、重合性モノマーの含有量はそれぞれ特に限定されず、目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、乳化重合用組成物の全量に対して、界面活性剤組成物の含有量が0.1質量%~10質量%であり、水の含有量が10質量%~70質量%であり、重合性モノマーの含有量が20質量%~80質量%であることが好ましく、界面活性剤組成物の含有量が0.2質量%~8質量%であり、水の含有量が20質量%~65質量%であり、重合性モノマーの含有量が30質量%~75質量%であることがより好ましく、界面活性剤組成物の含有量が0.5質量%~5質量%であり、水の含有量が25質量%~60質量%であり、重合性モノマーの含有量が35質量%~70質量%であることが更により好ましい。
【0045】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウム、過酸化カリウム、過酸化水素、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロポキシカルボニルパーオキサイド、tert-ブトキシカルボニルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルハイドロパ-オキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテ-ト、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2,2’-アゾビス-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン塩酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。また、重合開始剤に加えて、亜硫酸水素ナトリウム、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等の促進剤を用いることもでき、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤を用いてもよい。
【0046】
本発明の乳化重合用組成物が、重合開始剤を含有する場合の、重合開始剤の含有量は特に限定されず目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、乳化重合用組成物の全量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.02質量%~3質量%であることがより好ましく、0.05質量%~2質量%であることが更により好ましい。
【0047】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる連鎖移動剤としては、例えば、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、アミノエタンチオール、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸n-ブチル、チオグリコール酸メトキシブチル、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、α-テルピネン、γ-テルビネン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0048】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができるpH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、酢酸、リン酸、ギ酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リシン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0049】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができるその他のアニオン性界面活性剤(一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を除く)としては、例えば、脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルカノールアミドのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、N-アシル-N-メチルタウリンの塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸、N-アシル-N-カルボキシエチルタウリン又はその塩、アルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0050】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができるその他のノニオン性界面活性剤(一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を除く)としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グルセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合物等の2種以上のアルキレンオキシドの共重合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0051】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリウムベタイン型両性界面活性剤、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルアミノジプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0052】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができるカチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、アルキル(アルケニル)アミン塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0053】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類、エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0054】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル類、フマル酸エステル類、セバシン酸エステル類、クエン酸エステル類、マレイン酸エステル類、リン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、スルホンアミド類、脂肪酸アミド類、ポリエステル類、塩素化パラフィン類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0055】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる防腐剤としては、例えば、パラベン、メチルパラベン、ベンゾエート、ベンジルアルコール、イソチアゾロン、イソチアゾリノン、フェノキシエタノール、フェニルエタノール、アルカンジオール類、アルキルグリセリルエーテル類、トリアジン系化合物、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸、サリチル酸塩、第四級アンモニウム塩系化合物、ハロゲン化化合物、環状有機窒素化合物、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、チメロサール、ブロノポール、チアベンダゾール、ジンクピリチオン、カルベンダジム、ピリジンオキサイドチオールナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0056】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる増粘剤としては、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ガッチガム、カラヤガム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸・マレイン酸コポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0057】
本発明の乳化重合用組成物が含有することができる分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体、及びこれらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0058】
本発明の乳化重合用組成物が、その他のアニオン性界面活性剤、その他のノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、有機溶媒、可塑剤、防腐剤、増粘剤、及び分散剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する場合の、各成分の含有量は特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、例えば、界面活性剤組成物全量に対し、それぞれ0.01~10質量%含有することができる。
【0059】
E.重合体エマルションの製造方法
本発明の重合体エマルションの製造方法は、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の重合性モノマーを、上述した界面活性剤組成物の存在下で重合する、重合体エマルションの製造方法である。本発明の重合体エマルションは、重合性モノマーを上述した界面活性剤組成物の存在下で重合することにより、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる。本発明の重合体エマルションの製造方法の具体的な方法としては特に限定されないが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点から、例えば、下記(方法1)~(方法3)のいずれかの方法により重合することが好ましい。
【0060】
(方法1)モノマー混合物を反応容器に入れ40℃~100℃に昇温し、水又は有機溶媒に溶解させた重合開始剤を5分~4時間かけて滴下又は分割添加し、40℃~100℃で1時間~12時間重合する。
(方法2)用いるモノマー混合物の1質量%~50質量%を反応容器に入れ40℃~90℃に昇温した後、水又は有機溶媒に溶解させた重合開始剤を滴下又は分割添加して40℃~90℃で5分~4時間重合した後、残りのモノマー混合物を40℃~90℃で1時間~6時間程度かけて滴下又は分割添加し、さらに40℃~90℃で10分~3時間重合する。
(方法3)水又は有機溶媒に溶解させた重合開始剤を反応容器に入れ40℃~90℃昇温した後、モノマー混合物及び水又は有機溶媒からなる混合溶液を40℃~90℃で2時間~6時間かけて滴下又は分割添加し、さらに40℃~90℃で1時間~5時間重合する。
【0061】
本発明の重合体エマルションの製造方法においては、用いる重合性モノマーと界面活性剤組成物の量の比は特に限定されず、目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、重合性モノマー100質量部に対し、界面活性剤組成物を0.1質量部~10質量部用いることが好ましく、0.2質量部~6質量部用いることがより好ましく、0.5質量部~4質量部用いることが更により好ましい。
【0062】
本発明の重合体エマルションの製造方法において、重合開始剤を用いる場合、用いる重合開始剤の量は特に限定されず、目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、重合性モノマー100質量部に対し、重合開始剤を0.01質量部~7質量部用いることが好ましく、0.02質量部~5質量部用いることがより好ましく、0.05質量部~3質量部用いることが更により好ましい。
【0063】
本発明の重合体エマルションの製造方法において、重合性モノマーを、界面活性剤組成物の存在下で水溶液中で重合する場合、用いる界面活性剤組成物と、水と、重合性モノマーの比はそれぞれ特に限定されず、目的に応じて調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションが得られやすい観点からは、用いる界面活性剤組成物、水、重合性モノマーの合計量に対して、用いる界面活性剤組成物の量が0.1質量%~10質量%であり、水の量が10質量%~70質量%であり、重合性モノマーの量が20質量%~80質量%であることが好ましく、界面活性剤組成物の量が0.2質量%~8質量%であり、水の量が20質量%~65質量%であり、重合性モノマーの量が30質量%~75質量%であることがより好ましく、界面活性剤組成物の量が0.5質量%~6質量%であり、水の量が25質量%~60質量%であり、重合性モノマーの量が35質量%~70質量%であることが更により好ましく、界面活性剤組成物の量が0.5質量%~5質量%であり、水の量が30質量%~55質量%であり、重合性モノマーの量が40質量%~65質量%であることが更により好ましい。
【0064】
本発明の重合体エマルションの製造方法においては、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションがより得られやすい観点からは、(方法1)~(方法3)において、有機溶媒を用いず水を用い、乳化重合する方法が好ましい。また、これらの中でも、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションがより得られやすい観点からは、上述した(方法2)又は(方法3)により重合することがより好ましく、(方法3)により重合することが更により好ましい。
【0065】
F.重合体エマルション
本発明の重合体エマルションは、上述した界面活性剤組成物の存在下で、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の重合性モノマーを重合して得られる重合体エマルションである。本発明の重合体エマルションを製造するときに用いる界面活性剤組成物、重合性モノマーは、具体的には、それぞれ上述したものを用いることができる。本発明の重合体エマルションとしては、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる観点から、具体的には、上述した重合体エマルションの製造方法により得られた重合体エマルションであることが好ましい。
【0066】
本発明の重合体エマルションにおいて、重合体の含有量は特に限定されず目的に応じて適宜調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる観点から、本発明の重合体エマルションとしては、一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤と一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤と重合性モノマーとの重合体の含有量が、重合体エマルションの全質量に対して、30質量%~90質量%であることが好ましく、35質量%~80質量%であることがより好ましく、40質量%~75質量%であることが更により好ましく、45質量%~70質量%であることが更により好ましい。
【0067】
また、本発明の重合体エマルションにおいて、水の含有量は特に限定されず目的に応じて適宜調整することができるが、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる観点から、本発明の重合体エマルションとしては、重合体エマルションの全質量に対する水の含有量が10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~65質量%であることがより好ましく、25質量%~60質量%であることが更により好ましく、30質量%~55質量%であることが更により好ましい。
【0068】
本発明の重合体エマルションは、重合体が通常用いられる製品に特に制限なく用いることができ、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、インク、フィルム、コーティング剤、紙塗工剤、サイズ剤、シーラー等に使用するための重合体エマルションとして用いることができる。また、本発明の重合体エマルションは、目的に応じて、上述した一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤を除くその他のアニオン性界面活性剤、一般式(2)で表されるノニオン性界面活性剤を除くその他のノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、有機溶媒、可塑剤、防腐剤、増粘剤、分散剤等を、重合体エマルション全量に対し、それぞれ0.01質量%~10質量%含有することができる。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。実施例及び比較例に使用した各成分を下記に示す。
【0070】
<アニオン性界面活性剤>
アニオン性界面活性剤1:一般式(1)において、Rがイソウンデシル基であり、mが10(平均値)であり、Mがアンモニウム基であるアニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤2:一般式(1)において、Rがイソウンデシル基であり、mが30(平均値)であり、Mがアンモニウム基であるアニオン性界面活性剤
【0071】
<ノニオン性界面活性剤>
ノニオン性界面活性剤1:一般式(2)において、Rがイソウンデシル基であり、nが10(平均値)であるノニオン性界面活性剤
ノニオン性界面活性剤2:一般式(2)において、Rがイソウンデシル基であり、nが30(平均値)であるノニオン性界面活性剤
【0072】
<混合モノマー>
混合モノマー1:ブチルアクリレート48質量%、2-エチルヘキシルアクリレート40質量%、スチレン10質量%、アクリル酸2質量%からなる混合モノマー
混合モノマー2:ブチルアクリレート48質量%、2-エチルヘキシルアクリレート40質量%、メチルメタクリレート10質量%、アクリル酸2質量%からなる混合モノマー
【0073】
<重合開始剤>
重合開始剤1:過硫酸アンモニウム
【0074】
[界面活性剤組成物の調製]
アニオン性界面活性剤1~2及びノニオン性界面活性剤1~2を、表1~2に示す質量比でそれぞれ混合することにより、界面活性剤組成物1~8を調製した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
[重合体エマルションの調製]
還流冷却器、攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に蒸留水103gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次に、反応容器内に重合開始剤として過硫酸アンモニウム1.2gを入れた後、蒸留水47gと、表3~4に記載の組合せで界面活性剤組成物5g及び混合モノマー200gの混合溶液を、それぞれ80℃に保った反応容器内に5時間かけて滴下して重合反応を行い、滴下終了後80℃で1時間さらに反応させることで、実施例5~12及び比較例5~12の重合体エマルションを得た。各重合体エマルションの最終的な配合比率を表3~4に示す。
【0078】
[粘着特性の評価]
得られた実施例5~12及び比較例5~12の重合体エマルションについてそれぞれ、JIS Z 0237(2009)の保持力試験に準拠した保持時間の測定、及び、JIS Z 0237(2009)の引きはがし粘着力試験に準拠した剥離力の測定を行い、下記粘着特性の評価基準に基づき各重合体エマルションの粘着特性の評価を行った。このうち、保持時間の測定方法としては、まず、厚さ38μmのPETフィルムに、実施例5~12、比較例5~12の重合体エマルションをそれぞれ塗工後、105℃で3分間乾燥して膜厚20μmの塗膜を作製した。続いて、25mm×25mmの試験片を塗膜側が接着面となるよう2kgの圧着ローラーでSUS板に圧着し、24時間養生後、1kgの荷重をつるして40℃環境下で試験片が落ちるまでの経過時間を保持時間として測定した。また、剥離力の測定としては、まず、厚さ38μmのPETフィルムに、実施例5~12、比較例5~12の重合体エマルションをそれぞれ塗工後、105℃で3分間乾燥して膜厚20μmの塗膜を作製した。続いて、25mm×25mmの試験片を塗膜側が接着面となるよう2kgの圧着ローラーでSUS板に圧着し、24時間養生後、剥離力として、300mm/分の速度で180°の引きはがし力を測定した。そして、各重合体エマルションの保持時間及び剥離力の測定結果を用いて、下記粘着特性の評価基準に基づき粘着特性の評価を行った。各評価結果を表3~4に示す。
【0079】
<粘着特性の評価基準>
○:保持時間が6時間以上かつ剥離力が5.0N以上
△:保持時間が6時間以上かつ剥離力が5.0N未満、又は、
保持時間が6時間未満かつ剥離力が5.0N以上
×:保持時間が6時間未満かつ剥離力が5.0N未満
【0080】
[機械的安定性の評価]
得られた実施例5~12及び比較例5~12の重合体エマルション50gをそれぞれ秤取し、マーロン安定度試験機を用いて荷重20kg、回転数1000rpmで10分間負荷をかけた後、80メッシュの金網でろ過した。続いて、金網上の残渣(凝集物)について、水洗及び105℃2時間乾燥後に質量を測定し、用いた重合体エマルション中の固形分の質量に対する凝集物量(質量%)を算出し、本算出結果及び下記機械的安定性の評価基準に基づき機械的安定性を評価した。各評価結果を表3~4に示す。
【0081】
<機械的安定性の評価基準>
○:凝集物量が0.50質量%未満
×:凝集物量が0.50質量%以上
【0082】
[耐水性の評価]
得られた実施例5~12及び比較例5~12の重合体エマルションについて、それぞれ塗布時の厚さが100μmとなるよう、厚さ2mmのガラス板に塗布後、105℃で3分間乾燥して塗膜を作製した。続いて、25℃の水に6時間浸漬して取り出し、塗膜の外観を目視で観察し、下記耐水性の評価基準に基づき耐水性を評価した。各評価結果を表3~4に示す。
【0083】
<耐水性の評価基準>
○:白化が見られなかった
×:白化が見られた
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
以上の結果から、本発明の界面活性剤組成物の存在下で各種モノマーを重合することにより、粘着特性、機械的安定性、及び耐水性に優れる重合体エマルションを得ることができることがわかる。