(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150701
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241016BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120636
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2023512996の分割
【原出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/172,316
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】須田 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】三浦 太樹
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰永
(72)【発明者】
【氏名】福永 裕介
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エッチングの形状異常を抑制する。
【解決手段】エッチング方法は、シリコン含有膜とマスクを有する基板を、チャンバ内に提供する工程と、シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、エッチングする工程は、フッ化水素(HF)ガスとHFと、シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスと、を含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いてシリコン含有膜をエッチングする。第1の処理ガスは、反応制御ガスとして反応を促進する反応促進ガス及び反応を抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む。工程はまた、HFガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いてシリコン含有膜をエッチングする。第2の処理ガスは、反応を促進する反応促進ガスを第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含むか、反応を抑制する反応抑制ガスを第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか又は反応制御ガスを含まない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内に提供する工程と、
(b)前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(b)の工程は、
(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素と前記シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第1の処理ガスは、前記反応制御ガスとして、前記反応を促進する反応促進ガス及び前記反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む工程と、
(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第2の処理ガスは、前記反応を促進する反応促進ガスを前記第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は前記反応を抑制する反応抑制ガスを前記第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、前記反応制御ガスを含まない工程と、を含む、
エッチング方法。
【請求項2】
前記(b)の工程において、前記(b-1)の工程の後に、前記(b-2)の工程を行う、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記(b)の工程において、前記(b-2)の工程の後に、前記(b-1)の工程を行う、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記(b)の工程において、前記(b-1)の工程と前記(b-2)の工程とを交互に繰り返す、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記(b)の工程において、エッチングにより前記シリコン含有膜に形成される凹部の深さ、当該凹部のアスペクト比、及び、エッチング時間の少なくとも一つに基づいて、前記(b-1)の工程と前記(b-2)の工程との切り換えを行う、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記(b-1)の工程において、第1のデューティ比を有するソースRF信号のパルス波を用いて、前記第1の処理ガスからプラズマを生成し、
前記(b-2)の工程において、前記第1のデューティ比よりも小さい第2のデューティ比を有するソースRF信号のパルス波を用いて、前記第2の処理ガスからプラズマを生成する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記反応促進ガスは、リン含有ガス、窒素含有ガス及び水素含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである、請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記窒素含有ガスは、NH3ガス、NF3ガス、NOガス及びNO2ガスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記水素含有ガスは、OH基を有するガスである、請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記反応抑制ガスは、塩素含有ガスである、請請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記塩素含有ガスは、Cl2ガス、SiCl2ガス、SiH2Cl2ガス、SiCl4ガス、Si2Cl6ガス、CHCl3ガス、CCl4ガス及びBCl3ガスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記第1の処理ガス及び前記第2の処理ガスのいずれにおいても、不活性ガスを除きフッ化水素ガスの分圧が最も大きい、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記第1の処理ガス及び前記第2の処理ガスの少なくとも一方は、炭素含有ガス、酸素含有ガス、炭素を含まないフッ素含有ガス及びフッ素以外のハロゲン含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記第1の処理ガスに含まれる反応抑制ガスと、前記第2の処理ガスに含まれる反応抑制ガスとが互いに同一の種類のガスである、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記第1の処理ガスに含まれる反応促進ガスと、前記第2の処理ガスに含まれる反応促進ガスとが互いに同一の種類のガスである、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項17】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内に提供する工程と、
(b)前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、
(b-1)第1の処理ガスから生成される、フッ化水素の活性種を含むプラズマを用いて、前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第1の処理ガスは、フッ化水素と前記シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとして、前記反応を促進する反応促進ガス及び前記反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む工程と、
(b-2)第2の処理ガスから生成される、フッ化水素の活性種を含むプラズマを用いて、前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第2の処理ガスは、前記反応を促進する反応促進ガスを前記第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は前記反応を抑制する反応抑制ガスを前記第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、前記反応制御ガスを含まない工程と、を含む、
エッチング方法。
【請求項18】
前記フッ化水素の活性種は、フッ化水素ガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくとも1種のガスから生成される、請求項17に記載のエッチング方法。
【請求項19】
前記フッ化水素の活性種は、フッ素含有ガス及び水素含有ガスから生成される、請求項17に記載のエッチング方法。
【請求項20】
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、プラズマ生成部、及び、制御部を備え、
前記制御部は、
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する制御と、
(b)前記シリコン含有膜をエッチングする制御と、を実行し、
前記(b)の制御は、
(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素と前記シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする制御であって、前記第1の処理ガスは、前記反応制御ガスとして、前記反応を促進する反応促進ガス及び前記反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む制御と、
(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする制御であって、前記第2の処理ガスは、前記反応を促進する反応促進ガスを前記第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は前記反応を抑制する反応抑制ガスを前記第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、前記反応制御ガスを含まない制御と、を含む、
プラズマ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びプラズマ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコンを含有する基板内の膜を、アモルファスカーボン又は有機ポリマーを含むマスクを用いてエッチングする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングの形状異常を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、前記(b)の工程は、(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素と前記シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第1の処理ガスは、前記反応制御ガスとして、前記反応を促進する反応促進ガス及び前記反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む工程と、(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第2の処理ガスは、前記反応を促進する反応促進ガスを前記第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は前記反応を抑制する反応抑制ガスを前記第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、前記反応制御ガスを含まない工程と、を含む、エッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、エッチングの形状異常を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】例示的なプラズマ処理システムを概略的に示す図である。
【
図2】本処理方法の例示的な実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】反応促進ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの一例である。
【
図5】反応抑制ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの一例である。
【
図6A】H期間終了時の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【
図6B】L期間終了時の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【
図7】反応促進ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの他の例である。
【
図8】反応抑制ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの他の例である。
【
図9A】H1期間終了時の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【
図9B】L1期間終了時の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【
図10】本処理方法の変形例を示すフローチャートである。
【
図11】本処理方法の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、(b)の工程は、(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いてシリコン含有膜をエッチングする工程であって、第1の処理ガスは、反応制御ガスとして、反応を促進する反応促進ガス及び反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む工程と、(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いてシリコン含有膜をエッチングする工程であって、第2の処理ガスは、反応を促進する反応促進ガスを第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は反応を抑制する反応抑制ガスを第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、反応制御ガスを含まない工程と、を含むエッチング方法が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、(b-1)の工程の後に、(b-2)の工程を行うエッチング方法を提供する。
【0011】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、(b-2)の工程の後に、(b-1)の工程を行うエッチング方法を提供する。
【0012】
一つの例示的実施形態において、b)の工程において、(b-1)の工程と(b-2)の工程とを交互に繰り返す。
【0013】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、エッチングによりシリコン含有膜に形成される凹部の深さ、凹部のアスペクト比、及び、エッチング時間の少なくとも一つに基づいて、(b-1)の工程と(b-2)の工程との切り換えを行う。
【0014】
一つの例示的実施形態において、(b-1)の工程において、第1のデューティ比を有するソースRF信号のパルス波を用いて、第1の処理ガスからプラズマを生成し、(bー2)の工程において、第1のデューティ比よりも小さい第2のデューティ比を有するソースRF信号のパルス波を用いて、第2の処理ガスからプラズマを生成する。
【0015】
一つの例示的実施形態において、反応促進ガスは、リン含有ガス、窒素含有ガス及び水素含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0016】
一つの例示的実施形態において、リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである。
【0017】
一つの例示的実施形態において、窒素含有ガスは、NH3ガス、NF3ガス、NOガス及びNO2ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0018】
一つの例示的実施形態において、水素含有ガスは、OH基を有するガスである。
【0019】
一つの例示的実施形態において、反応抑制ガスは、塩素含有ガスである。
【0020】
一つの例示的実施形態において、塩素含有ガスは、Cl2ガス、SiCl2ガス、SiH2Cl2ガス、SiCl4ガス、Si2Cl6ガス、CHCl3ガス、CCl4ガス及びBCl3ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0021】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのいずれにおいても、不活性ガスを除きフッ化水素ガスの分圧が最も大きい。
【0022】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの少なくとも一方は、炭素含有ガス、酸素含有ガス、炭素を含まないフッ素含有ガス及びフッ素以外のハロゲン含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む。
【0023】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガスに含まれる反応抑制ガスと、第2の処理ガスに含まれる反応抑制ガスとが互いに同一の種類のガスである。
【0024】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガスに含まれる反応促進ガスと、第2の処理ガスに含まれる反応促進ガスとが互いに同一の種類のガスである。
【0025】
一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、(b-1)第1の処理ガスから生成される、フッ化水素の活性種を含むプラズマを用いて、シリコン含有膜をエッチングする工程であって、第1の処理ガスは、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとして、反応を促進する反応促進ガス及び反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む工程と、(b-2)第2の処理ガスから生成される、フッ化水素の活性種を含むプラズマを用いて、シリコン含有膜をエッチングする工程であって、第2の処理ガスは、反応を促進する反応促進ガスを第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は反応を抑制する反応抑制ガスを第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、反応制御ガスを含まない工程と、を含むエッチング方法が提供される。
【0026】
一つの例示的実施形態において、フッ化水素の活性種は、フッ化水素ガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくとも1種のガスから生成される。
【0027】
一つの例示的実施形態において、フッ化水素の活性種は、フッ素含有ガス及び水素含有ガスから生成される。
【0028】
一つの例示的実施形態において、チャンバ、チャンバ内に設けられた基板支持部、プラズマ生成部、及び、制御部を備え、制御部は、(a)シリコン含有膜とシリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する制御と、(b)シリコン含有膜をエッチングする制御と、を実行し、(b)の制御は、(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いてシリコン含有膜をエッチングする制御であって、第1の処理ガスは、反応制御ガスとして、反応を促進する反応促進ガス及び反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む制御と、(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いてシリコン含有膜をエッチングする制御であって、第2の処理ガスは、反応を促進する反応促進ガスを第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は反応を抑制する反応抑制ガスを第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、反応制御ガスを含まない制御と、を含むプラズマ処理システムが提供される。
【0029】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
<プラズマ処理システムの構成例>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0031】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0032】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、エッジリングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0033】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号又はDC信号がRF又はDC電極に接続される場合、RF又はDC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つの下部電極として機能してもよい。
【0034】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0035】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0036】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0037】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0038】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0039】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0040】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0041】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0042】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0043】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0045】
<エッチング方法の一例>
図2は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法(以下「本処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。
図2に示すように、本処理方法は、基板を提供する工程ST1と、基板のシリコン含有膜をエッチングする工程ST2とを含む。各工程における処理は、
図1に示すプラズマ処理システムで実行されてよい。以下では、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御して、基板Wに対して本処理方法を実行する場合を例に説明する。
【0046】
(工程ST1:基板の提供)
工程ST1において、基板Wは、プラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に提供される。基板Wは、基板支持部11の中央領域111aに提供される。そして、基板Wは、静電チャック1111により基板支持部11に保持される。
【0047】
図3は、工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、下地膜UF上に、シリコン含有膜SF及びマスクMFがこの順で積層されている。基板Wは、半導体デバイスの製造に用いられてよい。半導体デバイスは、例えば、DRAM、3D-NANDフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイスを含む。
【0048】
下地膜UFは、一例では、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等である。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0049】
シリコン含有膜SFは、本処理方法において、エッチングの対象となる膜である。シリコン含有膜SFは、一例では、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、多結晶シリコン膜である。シリコン含有膜SFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。例えば、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層されて構成されてよい。また例えば、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜と多結晶シリコン膜とが交互に積層されて構成されてよい。
【0050】
マスクMFは、シリコン含有膜SFのエッチングにおいてマスクとして機能する膜である。マスクMFは、例えば、ポリシリコン膜、ホウ素ドープシリコン膜、タングステン含有膜(例えば、WC膜、WSi膜等)、アモルファスカーボン膜又は酸化ズズ膜又はチタン含有膜(例えば、TiN膜等)でよい。
【0051】
図3に示すとおり、マスクMFは、シリコン含有膜SF上において少なくとも一つの開口OPを規定する。開口OPは、シリコン含有膜SF上の空間であって、マスクMFの側壁に囲まれている。すなわち、シリコン含有膜SFの上面は、マスクMFによって覆われた領域と、開口OPの底部において露出した領域とを有する。
【0052】
開口OPは、基板Wの平面視、すなわち、基板Wを
図3の上から下に向かう方向に見た場合において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、円、楕円、矩形、線やこれらの1種類以上を組み合わせた形状であってよい。マスクMFは、複数の側壁を有し、複数の側壁が複数の開口OPを規定してもよい。複数の開口OPは、それぞれ線形状を有し、一定の間隔で並んでライン&スペースのパターンを構成してもよい。また、複数の開口OPは、それぞれ穴形状を有し、アレイパターンを構成してもよい。
【0053】
基板Wを構成する各膜(下地膜UF、シリコン含有膜SF、マスクMF)は、それぞれ、CVD法、ALD法、スピンコート法等により形成されてよい。開口OPは、マスクMFをエッチングすることで形成されてよい。またマスクMFは、リソグラフィによって形成されてもよい。なお、上記各膜は、平坦な膜であってよく、また、凹凸を有する膜であってもよい。また基板Wが下地膜UFの下に他の膜をさらに有し、シリコン含有膜SF及び下地膜UFの積層膜が多層マスクとして機能してもよい。すなわち、シリコン含有膜SF及び下地膜UFの積層膜を多層マスクとして、当該他の膜をエッチングしてもよい。
【0054】
基板Wの各膜を形成するプロセスの少なくとも一部は、プラズマ処理チャンバ10の空間内で行われてよい。一例では、マスクMFをエッチングして開口OPを形成する工程は、プラズマ処理チャンバ10で実行されてよい。すなわち、開口OP及び後述するシリコン含有膜SFのエッチングは、同一のチャンバ内で連続して実行されてよい。また、基板Wの各膜の全部又は一部がプラズマ処理装置1の外部の装置やチャンバで形成された後、基板Wがプラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に搬入され、基板支持部11の中央領域111aに配置されることで、基板が提供されてもよい。
【0055】
基板Wを基板支持部11の中央領域111aに提供後、基板支持部11の温度が温調モジュールにより設定温度に調整される。設定温度は、例えば、70℃以下、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下又は-70℃以下でよい。一例では、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、流路1110aを流れる伝熱流体の温度を設定温度又は設定温度と異なる温度に調整又は維持することを含む。一例では、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、静電チャック1111と基板Wの裏面との間の伝熱ガス(例えばHe)の圧力を制御することを含む。なお、流路1110aに伝熱流体が流れ始めるタイミングは、基板Wが基板支持部11に載置される前でも後でもよく、また同時でもよい。また、本処理方法において、基板支持部11の温度は、工程ST1の前に設定温度に調整されてよい。すなわち、基板支持部11の温度が設定温度に調整された後に、基板支持部11に基板Wを提供してよい。
【0056】
(工程ST2:エッチング)
工程ST2において、基板Wのシリコン含有膜SFがエッチングされる。工程ST2は、第1のエッチング工程ST21と、第2のエッチング工程ST22とを備える。また工程ST2は、エッチングの停止条件を満たしているか判定する工程ST23を備えてよい。すなわち、工程ST23において停止条件を満たすと判定されるまで、工程ST21と工程ST22とを交互に繰り返してよい。工程ST2における処理の間、基板支持部11の温度は、工程ST1で調整した設定温度に維持される。
【0057】
(工程ST21:第1のエッチング)
工程ST21において、第1の処理ガスから生成したプラズマを用いて、シリコン含有膜SFがエッチングされる。まず、ガス供給部20から第1の処理ガスがプラズマ処理空間10s内に供給される。第1の処理ガスは、フッ化水素(HF)ガスと、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む。第1の処理ガスは、反応制御ガスとして、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を促進する反応促進ガスを含んでよい。第1の処理ガスは、当該反応を抑制する反応抑制ガスを含んでよい。なお、第1の処理ガスは、反応促進ガスと反応抑制ガスの双方を含んでもよい。
【0058】
次に、基板支持部11の下部電極及び/又はシャワーヘッド13の上部電極にソースRF信号が供給される。これにより、シャワーヘッド13と基板支持部11との間で高周波電界が生成され、プラズマ処理空間10s内の第1の処理ガスからプラズマが生成される。また、基板支持部11の下部電極にバイアス信号が供給されて、プラズマと基板Wとの間にバイアス電位が発生する。バイアス電位によって、プラズマ中のイオン、ラジカル等の活性種が基板Wに引きよせられ、当該活性種によってシリコン含有膜SFがエッチングされる。
【0059】
(工程ST22:第2のエッチング)
第2のエッチング工程ST22において、第2の処理ガスから生成したプラズマを用いて、シリコン含有膜SFがさらにエッチングされる。まず、ガス供給部20から第2の処理ガスがプラズマ処理空間10s内に供給される。第2の処理ガスは、フッ化水素(HF)ガスを含む。
【0060】
第2の処理ガスは、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を促進する反応促進ガス及び当該反応を抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含んでよい。第2の処理ガスが反応促進ガスを含む場合、当該反応促進ガスの分圧は、第1の処理ガス中の反応促進ガスの分圧よりも小さくてよい。第2の処理ガスが反応抑制ガスを含む場合、当該反応抑制ガスの分圧は、第1の処理ガス中の反応抑制ガスの分圧よりも大きくてよい。第2の処理ガスが反応促進ガスと反応抑制ガスの双方を含む場合、反応促進ガスの分圧が第1の処理ガス中の反応促進ガスの分圧に比べて小さいか、反応抑制ガスの分圧が第1の処理ガス中の反応抑制ガスの分圧に比べて大きいか、又はその両方であってよい。
【0061】
第2の処理ガスは、フッ化水素とシリコン含有膜との反応を制御(抑制又は促進)するガスを含まなくてもよい。
【0062】
次に、工程ST21と同様に、基板支持部11の下部電極及び/又はシャワーヘッド13の上部電極にソースRF信号が供給される。これにより、シャワーヘッド13と基板支持部11との間で高周波電界が生成され、プラズマ処理空間10s内の第2の処理ガスからプラズマが生成される。また、基板支持部11の下部電極にバイアス信号が供給されて、プラズマと基板Wとの間にバイアス電位が発生する。バイアス電位によって、プラズマ中のイオン、ラジカル等の活性種が基板Wに引きよせられ、当該活性種によってシリコン含有膜SFがさらにエッチングされる。
【0063】
工程ST21から工程ST22への切り換えは、例えば、エッチングによりシリコン含有膜SFに形成される凹部の深さ、当該凹部のアスペクト比、及び、エッチング時間の少なくともいずれか一つに基づいて行ってよい。
【0064】
工程ST21及び工程ST22において、バイアス信号は、第2のRF生成部31bから供給されるバイアスRF信号であってよい。またバイアス信号は、DC生成部32aから供給されるバイアスDC信号であってもよい。なお、工程ST21及び工程ST22においてバイアス信号が供給されなくてもよい。
【0065】
工程ST21及び工程ST22において、ソースRF信号及びバイアス信号は、双方が連続波又はパルス波でよく、また一方が連続波で他方がパルス波でもよい。ソースRF信号及びバイアス信号の双方がパルス波である場合、双方のパルス波の周期は同期してよい。バイアスDC信号を用いる場合、パルス波は、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせの波形を有してよい。バイアスDC信号の極性は、プラズマと基板との間に電位差を与えてイオンを引き込むように基板Wの電位が設定されれば、負であっても正であってもよい。
【0066】
ソースRF信号又はバイアス信号としてパルス波を用いる場合、パルス波のデューティ比は適宜設定してよく、例えば、1~80%でよく、また5~50%でよい。ここで、デューティ比は、パルス波の周期における、電力又は電圧レベルが高い期間が占める割合である。また、パルス波のデューティ比は、工程ST21と工程ST22とで同一でよく、また異なっていてもよい。一例では、工程ST22におけるソースRF信号のパルス波のデューティ比を、工程ST21におけるソースRF信号のパルス波のデューティ比よりも小さくしてよい。デューティ比を小さくすることで、プラズマによる基板Wへの入熱が抑制され、工程ST22に比べて基板Wの温度が低くなる。フッ化水素は、基板Wの温度が低いほどシリコン含有膜SFに吸着しやすい傾向があるので、デューティ比を小さくすることで、フッ化水素のシリコン含有膜SFへの吸着を促進し得る。
【0067】
(工程ST23:終了判定)
工程ST23において、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、例えば、工程ST21及び工程ST22を1サイクルとし、当該サイクルの繰り返し回数が所与の回数に達しているか否かでよい。停止条件は、例えば、エッチング時間が所与の時間に達しているかでもよい。停止条件は、例えば、エッチングにより形成される凹部の深さが所与の深さに達しているかでもよい。工程ST23において停止条件が満たされていないと判定されると、工程ST21及び工程ST22を含むサイクルが繰り返される。工程ST23において停止条件が満たされると判定されると、本処理方法を終了する。なお、停止条件が満たされるか否かの判断を、工程ST23に加え、工程ST21と工程ST22との間でも実行してもよい。
【0068】
(処理ガスの構成)
第1の処理ガスにおいて、不活性ガスを除く全ガスのうち、HFガスの分圧が最も大きくてよい。また第2の処理ガスにおいて、不活性ガスを除く全ガスのうち、HFガスの分圧が最も大きくてよい。一例では、第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスにおいて、HFガスは、不活性ガスを除く総流量に対して、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上でよく、また80体積%以上含まれてよい。なお、HFガスとしては、高純度のもの、例えば、純度が99.999%以上のものを用いてよい。
【0069】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスに含まれる反応促進ガスは、例えば、プラズマ中のフッ化水素の活性種がシリコン含有膜SFに吸着することを促進するガス(吸着促進ガス)でよい。ここで、フッ化水素の活性種は、フッ化水素のガス、ラジカル及びイオンの少なくともいずれかを含む。反応促進ガスとしては、リン含有ガス、窒素含有ガス及び水素含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種を使用してよい。第1の処理ガスと第2の処理ガスの双方が反応促進ガスを含む場合、第1の処理ガスに含まれる反応促進ガスの種類と、第2の処理ガスに含まれる反応促進ガスの種類とは同一でよく、また異なっていてもよい。
【0070】
リン含有ガスは、リン含有分子を含むガスである。リン含有分子は、十酸化四リン(P4O10)、八酸化四リン(P4O8)、六酸化四リン(P4O6)等の酸化物であってもよい。十酸化四リンは、五酸化二リン(P2O5)と呼ばれることがある。リン含有分子は、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、三臭化リン(PBr3)、五臭化リン(PBr5)、ヨウ化リン(PI3)のようなハロゲン化物(ハロゲン化リン)であってもよい。すなわち、リン含有分子は、フッ化リン等、ハロゲン元素としてフッ素を含んでもよい。或いは、リン含有分子は、ハロゲン元素としてフッ素以外のハロゲン元素を含んでもよい。リン含有分子は、フッ化ホスホリル(POF3)、塩化ホスホリル(POCl3)、臭化ホスホリル(POBr3)のようなハロゲン化ホスホリルであってよい。リン含有分子は、ホスフィン(PH3)、リン化カルシウム(Ca3P2等)、リン酸(H3PO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等であってよい。リン含有分子は、フルオロホスフィン類(HgPFh)であってよい。ここで、gとhの和は、3又は5である。フルオロホスフィン類としては、HPF2、H2PF3が例示される。処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、上記のリン含有分子のうち一つ以上のリン含有分子を含み得る。例えば、処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、PF3、PCl3、PF5、PCl5、POCl3、PH3、PBr3、又はPBr5の少なくとも一つを含み得る。なお、各リン含有分子が液体又は固体である場合、各リン含有分子は、加熱等によって気化されてプラズマ処理空間10s内に供給され得る。
【0071】
窒素含有ガスとしては、一例では、NH3ガス、NF3ガス、NOガス、NO2ガスからなる群から選択される少なくとも1種を用いてよい。
【0072】
水素含有ガスとしては、OH基を有するガスを用いてよく、一例では、H2Oガス、H2O2ガス及びアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を用いてよい。
【0073】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスに含まれる反応抑制ガスは、例えば、プラズマ中の水素の活性種を除去(スカベンジ)することで、プラズマ中のフッ化水素の活性種とシリコン含有膜SFとの反応を抑制するガスでよい。反応抑制ガスとしては、例えば、塩素含有ガスを用いてよい。一例では、塩素含有ガスは、Cl2ガス、SiCl2ガス、SiH2Cl2ガス、SiCl4ガス、Si2Cl6ガス、CHCl3ガス、CCl4ガス及びBCl3ガスからなる群から選択される少なくとも一種を使用してよい。第1の処理ガスと第2の処理ガスの双方が反応抑制ガスを含む場合、第1の処理ガスに含まれる反応抑制ガスの種類と、第2の処理ガスに含まれる反応抑制ガスの種類とは同一でよく、また異なっていてもよい。
【0074】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスは、炭素含有ガスをさらに含んでよい。炭素含有ガスは、例えば、フルオロカーボンガス及びハイドロフルオロカーボンガスのいずれかまたは両方でよい。一例では、フルオロカーボンガスは、CF4ガス、C2F2ガス、C2F4ガス、C3F6ガス、C3F8ガス、C4F6ガス、C4F8ガス及びC5F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。一例では、ハイドロフルオロカーボンガスは、CHF3ガス、CH2F2ガス、CH3Fガス、C2HF5ガス、C2H2F4ガス、C2H3F3ガス、C2H4F2ガス、C3HF7ガス、C3H2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス、C3H3F5ガス、C4H2F6ガス、C4H5F5ガス、C4H2F8ガス、C5H2F6ガス、C5H2F10ガス及びC5H3F7ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。また、炭素含有ガスは、不飽和結合を有する直鎖状のものであってよい。不飽和結合を有する直鎖状の炭素含有ガスは、例えば、C3F6(ヘキサフルオロプロぺン)ガス、C4F8(オクタフルオロ-1-ブテン、オクタフルオロ-2-ブテン)ガス、C3H2F4(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)ガス、C4H2F6(トランス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン)ガス、C4F8O(ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル)ガス、CF3COFガス(1,2,2,2-テトラフルオロエタン-1-オン)、CHF2COF(ジフルオロ酢酸フルオライド)ガス及びCOF2(フッ化カルボニル)ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。
【0075】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含んでよい。酸素含有ガスは、例えば、O2、CO及びCO2からなる群から選択される少なくとも1種のガスでよい。
【0076】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスは、炭素を含まないフッ素含有ガスをさらに含んでよい。一例では、炭素を含まないフッ素含有ガスは、SF6、NF3、XeF2、SiF4、IF5、IF7、BrF5、AsF5、NF5、BF3及びWF6の群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0077】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスは、フッ素以外のハロゲン含有ガスをさらに含んでよい。フッ素以外のハロゲン含有ガスは、例えば、HBrガス、HIガス及びI2ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。
【0078】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスは、不活性ガスをさらに含んでよい。不活性ガスは、一例では、Arガス、Heガス、Krガス等の貴ガス又はN2ガスでよい。
【0079】
第1の処理ガス及び/又は第2の処理ガスは、HFガスに代えて又はHFガスに加えて、プラズマ中にHF種を生成可能なガスを含んでよい。
【0080】
HF種を生成可能なガスは、例えば、ハイドロフルオロカーボンガスである。ハイドロフルオロカーボンガスは、炭素数が2以上、3以上又は4以上でもよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、一例では、CH2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス、C3H3F5ガス、C4H2F6ガス、C4H5F5ガス、C4H2F8ガス、C5H2F6ガス、C5H2F10ガス及びC5H3F7ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。ハイドロフルオロカーボンガスは、一例では、CH2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス及びC4H2F6ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0081】
HF種を生成可能なガスは、例えば、フッ素含有ガス及び水素含有ガスである。フッ素含有ガスは、例えば、フルオロカーボンガスである。フルオロカーボンガスは、一例では、C2F2ガス、C2F4ガス、C3F6ガス、C3F8ガス、C4F6ガス、C4F8ガス及びC5F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。またフッ素含有ガスは、例えば、NF3ガス又はSF6ガスでもよい。水素含有ガスは、一例では、H2ガス、CH4ガス及びNH3ガスからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0082】
(工程ST2の一例)
図4は、反応促進ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの一例である。
図4は、反応制御ガスとして反応促進ガスを用い、第1のエッチング工程ST21及び第2のエッチング工程ST2の1サイクルで、シリコン含有膜SFをエッチングする例である。
図4において、縦軸は、第1の処理ガス又は第2の処理ガスに含まれる反応促進ガスの分圧、及び、シリコン含有膜SFに対するフッ化水素の吸着レベルを示す。横軸は、エッチング時間を示す。「P
B」は、反応促進ガスの分圧がゼロであるか、又は、「P
A」よりも小さいことを示す。「L
B」は、シリコン含有膜SFに対するフッ化水素の吸着レベル(吸着量)が「L
A」よりも小さいことを示す。
図4では、時間0~t11が工程ST21に対応し(以下この期間を「H期間」という)、時間t11~t12が工程ST22に対応する(以下この期間を「L期間」という)。
【0083】
なお、
図4では、反応促進ガスの分圧は、各期間(H期間及びL期間)内で一定であるが、各期間内において段階的又は連続的に変化(減少、増加又は増減)させてよい。この場合、フッ化水素ガスの吸着レベルは当該変化に追随して変化しうる。
【0084】
また
図4は、工程ST2において、反応制御ガスとして反応促進ガスを用いた場合のタイミングチャートであるが、これに代えて/又は加えて、反応制御ガスとして反応抑制ガスを用いてもよい。
図5は、反応抑制ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの一例である。
図5に示すように、H期間において反応抑制ガスの分圧を低く又はゼロにし(P
D)、L期間において反応抑制ガスの分圧を高く(P
C)してよい。これにより、H期間におけるフッ化水素の吸着レベル(L
C)は、L期間における吸着レベル(L
D)よりも高くなる。
【0085】
図6Aは、
図4又は
図5のH期間(工程ST21)終了時(時間t11)の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図6Bは、
図4又は
図5のL期間(工程ST22)終了時(時間t12)の基板Wの断面構造の一例を示すである。
【0086】
図6Aに示すように、H期間(工程ST21)における処理により、シリコン含有膜SFのうち、開口OPにおいて露出した部分が深さ方向(
図6Aで上から下に向かう方向)にエッチングされ、凹部RCが形成される。H期間では、凹部RCの底部が下地膜UFに到達するまで又は到達する直前までシリコン含有膜SFをエッチングしてよい。
【0087】
H期間(工程ST21)において、フッ化水素のシリコン含有膜への吸着レベル(L
A又はL
C)は、L期間(工程ST21)よりも大きい(
図4、
図5参照)。これにより、H期間では、フッ化水素のシリコン含有膜SFへの吸着が促進され、L期間よりも高いエッチングレートでシリコン含有膜SFがエッチングされる。他方、H期間では、エッチングにより生じる反応生成物(バイプロダクト)がL期間に比べて増加する。反応副生成物は、凹部RCの側壁に吸着し、水平方向(
図6Aの左右方向)のエッチングを妨げ得る。これにより、凹部RCは、深さ方向に沿って先細る形状になり得る(
図6A参照)。
【0088】
続くL期間(工程ST22)では、フッ化水素のシリコン含有膜への吸着レベル(L
B又はL
D)は、H期間(工程ST21)よりも小さい(
図4、
図5参照)。これにより、L期間では、フッ化水素のシリコン含有膜SFへの吸着が抑制され、H期間に比べて低いエッチングレートでシリコン含有膜SFがエッチングされる。他方、L期間では、エッチングにより生じる反応副生成物がH期間に比べて減少し、凹部RCの側壁への吸着が抑制される。これにより、水平方向へのエッチングが進行し、凹部RCは先細り形状から矩形状に近づく(
図6B参照)。すなわち凹部RCの垂直性が高まる。
【0089】
このように、
図4又は
図5に示す例では、H期間(工程ST21)において高いエッチングレードでシリコン含有膜SFをエッチングし、その後、L期間(工程ST22)でシリコン含有膜SFの凹部RCの底部を広げる。これにより、工程ST2全体におけるエッチングレートの低下を抑制しつつ、エッチングにより形成される凹部の垂直性を高め、形状異常を抑制することができる。
【0090】
(工程ST2の他の例)
図7は、反応促進ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの他の例である。
図7は、反応制御ガスとして反応促進ガスを用い、第1のエッチング工程ST21及び第2のエッチング工程ST2の1サイクルを複数サイクル繰り返して、シリコン含有膜SFをエッチングする例である。
図7の縦軸及び横軸は、
図4と同様であり、「P
B」は、反応促進ガスの分圧がゼロであるか、又は、「P
A」よりも小さいことを示す。「L
B」は、シリコン含有膜SFに対するフッ化水素の吸着レベル(吸着量)が「L
A」よりも小さいことを示す。
図7では、時間0~t21及び時間t22~t23などが工程ST21に対応する(以下この期間を「H1期間」「H2期間」などという)。また時間t21~t22及び時間t23~t24などが工程ST22に対応する(以下この期間を「L1期間」「L2期間」などという)。
【0091】
なお、
図7では、反応促進ガスの分圧は、各期間(H1期間、H2期間、L1期間、L2期間等)において一定であるが、各期間内において段階的又は連続的に変化(減少、増加又は増減)させてよい。この場合、フッ化水素の吸着レベルは当該変化に追随して変化しうる。
【0092】
また
図7は、工程ST2において、反応制御ガスとして反応促進ガスを用いた場合のタイミングチャートであるが、これに代えて/又は加えて、反応制御ガスとして反応抑制ガスを用いてもよい。
図8は、反応抑制ガスを用いた場合の工程ST2のタイミングチャートの他の例である。
図5に示すように、工程ST1(H1期間、H2期間)において反応抑制ガスの分圧を低く又はゼロにし(P
D)、工程ST2(L1期間、L2期間)において反応抑制ガスの分圧を高く(P
C)してよい。これにより、工程ST1(H1期間、H2期間)におけるフッ化水素の吸着レベル(L
C)は、工程ST2(L1期間、L2期間)における吸着レベル(L
D)よりも高くなる。
【0093】
図9Aは、
図7又は
図8のH1期間(1サイクル目の工程ST21)終了時(時間t21)の基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図9Bは、
図7又は
図8のL1期間(1サイクル目の工程ST22)終了時(時間t22)の基板Wの断面構造の一例を示すである。
【0094】
図9Aに示すように、H1期間(1サイクル目の工程ST21)における処理により、シリコン含有膜SFのうち、開口OPにおいて露出した部分が深さ方向(
図9Aで上から下に向かう方向)にエッチングされ、凹部RCが形成される。H1期間では、凹部RCが所与の深さ(例えば、工程ST21及び工程ST22をnサイクル繰り返す場合において、シリコン含有膜SFの厚みの1/nの深さ)になるまでシリコン含有膜SFがエッチングされる。H1期間では、上述したH期間と同様、L1期間よりも高いエッチングレートでシリコン含有膜SFがエッチングされる一方で、凹部RCは、深さ方向に沿って先細る形状になり得る(
図9A参照)。
【0095】
続くL1期間(1サイクル目の工程ST22)では、上述したL期間と同様、H1期間に比べて低いエッチングレートでシリコン含有膜SFがエッチングされる一方で、水平方向へのエッチングが進行し、凹部RCは、先細り形状から矩形に近づく(
図9B参照)。すなわち凹部RCの垂直性が高まる。
【0096】
このように、
図6又は
図7に示す例では、高いエッチングレードでシリコン含有膜SFをエッチングする工程ST1(期1期間、H2期間等)と、シリコン含有膜SFの凹部RCの底部を広げる工程ST2(L1期間、L2期間)とを交互に繰り返す。これにより、工程ST2におけるエッチングレートの低下を抑制しつつ、エッチングにより形成される凹部の垂直性を高め、形状異常を抑制することができる。
【0097】
<変形例>
本開示の実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、以下のような変形が可能である。
【0098】
図10は、本処理方法の変形例を示すフローチャートである。
図10に示すように、エッチング工程において、第1のエッチングと第2のエッチングの順番を逆にしてよい。すなわち、はじめに第2の処理ガスを用いてシリコン含有膜SFのエッチングを行った後(工程ST21A)、第1の処理ガスを用いてシリコン含有膜SFのエッチングを行ってよい(工程ST23A)。なお、工程ST2Aにおいて、停止条件が満たされるか否かの判断を、工程ST23に加え、工程ST21Aと工程ST22Aとの間でも実行してもよい。
【0099】
図11は、本処理方法の変形例を示すフローチャートである。
図11に示すように、エッチング工程において、第1のエッチングのみを行ってもよい。すなわち、エッチング工程ST2Bにおいて、第1の処理ガスを用いてシリコン含有膜SFのエッチングを行う(工程ST2B)ようにしてもよい。
【0100】
プラズマからの入熱によって、エッチングの進行に伴って、基板Wの温度が大きくなり得る。ここで、フッ化水素は、基板Wの温度が低いほどシリコン含有膜SFに吸着しやすい傾向がある。そのため、エッチングの進行に伴い、フッ化水素の吸着量が減少し、エッチングレートが低下しうる。そこで、例えば、エッチングレートが低下し得るエッチング工程の中期から終期にかけて反応促進ガスを供給してよい。これにより、エッチングレートの低下を抑制し得る。なお、反応促進ガスの供給量は、エッチング時間、基板Wや基板支持部11の温度等に基づいて設定してよい。
【0101】
エッチングにより形成される凹部のアスペクト比が大きくなるにつれて、凹部の底部へのエッチャント(フッ化水素の活性種)の供給量は減少する。そこで、凹部のアスペクト比に応じて反応制御ガスの分圧を変更してもよい。例えば、高アスペクト領域のエッチングでは、低アスペクト領域のエッチングよりも、反応促進ガスの分圧を大きくしてよい。これにより、高アスペクト領域において、エッチャントとシリコン含有膜SFとの反応を促進することができる。
【0102】
シリコン含有膜SFのエッチングにより生じる反応副生成物の堆積により、エッチングレートが低下し得る。このため、エッチングの途中で、一時的に反応抑制ガスを供給し、反応副生成物の揮発を促進してよい。反応促進ガスは、予め設定したタイミングで供給してよく、プラズマの発光状態等から推測されるエッチングの状況に応じて供給してもよい。反応抑制ガスの供給量及び供給時間は、反応副生成物の揮発を促進できる限り制限されることはない。
【0103】
また処理方法は、容量結合型のプラズマ処理装置1以外にも、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置を用いて実行してよい。
【0104】
<実施例>
次に、本処理方法の実施例について説明する。本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1及び実施例2)
プラズマ処理装置1を用いて本処理方法を適用し、
図3に示す基板Wと同様の構造を有する基板をエッチングした。マスクMFとしては、ホール形状の開口OPを有するアモルファスカーボン膜を用いた。シリコン含有膜SFとしては、シリコン酸化膜を用いた。第1の処理ガスは、HFガスに加え、反応抑制ガスとしてCl
2ガスを含んでいた。また第2の処理ガスは、HFガスに加え、反応抑制ガスとしてCl
2ガスを含んでいた。第2の処理ガスにおける反応抑制ガス(Cl
2ガス)の分圧は、第1の処理における反応抑制ガス(Cl
2ガス)の分圧よりも小さかった。基板支持部11の温度は15℃に設定した。実施例1では、
図2の工程ST21(620秒)及び工程ST22(310秒)を1サイクル行った。実施例2では、
図2の工程ST21(150秒)及び工程ST22(50秒)をこの順で4サイクル行った。
【0105】
(参考例1)
参考例1では、プラズマ処理装置1を用いて、実施例1及び実施例2と同一の構成の基板Wをエッチングした。参考例1では、実施例1及び実施例2で用いた第1の処理ガスと同じ処理ガスを用いて840秒連続してエッチングを行った。基板支持部11の温度は15℃に設定した。
【0106】
実施例1、実施例2及び参考例1によるシリコン含有膜SFのエッチングレートER[nm/分]、BBバイアス[nm]を表1に示す。BBバイアスは、エッチングにより形成される凹部の最大開口幅と底部の開口幅との差であり、この値が小さいほど、凹部が矩形に近い(垂直性が高い)ことになる。
【0107】
【0108】
実施例1は、参考例1に比べて、ややエッチングレートはやや低下したものの、BBバイアスは小さく、凹部の垂直性が向上していた。実施例2は、参考例1に比べてエッチングレートが向上し、かつ、BBバイアスも小さく凹部の垂直性が向上していた。すなわち、実施例1及び実施例2ともに、エッチングレートの低下を抑制しつつ、凹部の垂直性を高める(形状異常を抑制する)ことができていた。
【0109】
(実施例3及び実施例4)
プラズマ処理装置1を用いて本処理方法を適用し、
図3に示す基板Wと同様の構造を有する基板をエッチングした。マスクMFとしては、ホール形状の開口OPを有するアモルファスカーボン膜を用いた。シリコン含有膜SFとしては、シリコン酸化膜を用いた。第1の処理ガスは、HFガスに加え、反応促進ガスとしてPF
3ガスを含んでいた。第2の処理ガスは、HFガスを含み、PF
3ガスは含んでいなかった。基板支持部11の温度は-20℃に設定し、
図10の工程ST21A(40秒)及び工程ST22A(120秒)を4サイクル行った。実施例3では、工程ST21A及び工程ST22Aの双方で、同一のデューティ比(37%)を有するソースRF信号のパルス波を用いてプラズマを生成した。実施例4では、工程ST21Aでデューティ比29%のソースRF信号のパルス波を用い、工程ST22Aでデューティ比37%のソースRF信号のパルス波を用いてプラズマを生成した。
【0110】
実施例3及び実施例4によるシリコン含有膜SFのエッチングレートER[nm/分]、BBバイアス[nm]を表2に示す。
【0111】
【0112】
実施例4は、実施例3に比べて、エッチングレートがやや高く、BBバイアスがやや大きかった。実施例4では、工程ST21Aにおいて工程ST22Bよりもデューティ比を下げることで、基板Wへの入熱が抑制され、エッチングレートの低下が抑制されたものと考えられる。
【0113】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0114】
(付記1)
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるデバイス製造方法であって、
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(b)の工程は、
(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素と前記シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第1の処理ガスは、前記反応制御ガスとして、前記反応を促進する反応促進ガス及び前記反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む工程と、
(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする工程であって、前記第2の処理ガスは、前記反応を促進する反応促進ガスを前記第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は前記反応を抑制する反応抑制ガスを前記第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、前記反応制御ガスを含まない工程と、を含む、デバイス製造方法。
【0115】
(付記2)
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、プラズマ生成部を備えるプラズマ処理システムのコンピュータに、
(a)シリコン含有膜と前記シリコン含有膜上のマスクとを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する制御と、
(b)前記シリコン含有膜をエッチングする制御と、を実行させ、
前記(b)の制御は、
(b-1)フッ化水素ガスと、フッ化水素と前記シリコン含有膜との反応を制御する反応制御ガスとを含む第1の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする制御であって、前記第1の処理ガスは、前記反応制御ガスとして、前記反応を促進する反応促進ガス及び前記反応を抑制する抑制する反応抑制ガスの少なくとも一方を含む制御と、
(b-2)フッ化水素ガスを含む第2の処理ガスから生成したプラズマを用いて前記シリコン含有膜をエッチングする制御であって、前記第2の処理ガスは、前記反応を促進する反応促進ガスを前記第1の処理ガス中の反応促進ガスよりも小さい分圧で含む及び/又は前記反応を抑制する反応抑制ガスを前記第1の処理ガス中の反応抑制ガスよりも高い分圧で含むか、又は、前記反応制御ガスを含まない制御と、を含む、プログラム。
【0116】
(付記3)
付記2に記載のプログラムを格納した、記憶媒体。
【符号の説明】
【0117】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……プラズマ処理チャンバ、10s……プラズマ処理空間、11……基板支持部、13……シャワーヘッド、20……ガス供給部、31a……第1のRF生成部、31b……第2のRF生成部、32a……第1のDC生成部、SF……シリコン含有膜、MF……マスク、OP……開口、RC……凹部、UF……下地膜、W……基板