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特開2024-150755ペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法
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  • 特開-ペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150755
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/64 20120101AFI20241016BHJP
【FI】
G03F1/64
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024127953
(22)【出願日】2024-08-02
(62)【分割の表示】P 2022530126の分割
【原出願日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2020099139
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 優
(57)【要約】
【課題】EUV露光を真空下で行う際、大気圧から真空への圧力変化に耐えてペリクル膜の破損が生じにくく、また、ペリクルフレームの加工性が良好であり、且つ、ペリクルを剥離する際に破損しにくいペリクルフレームを用いたペリクルを提供することを目的とする。
【解決手段】二つの端面を有する枠状の金属製ペリクルフレームを備えるペリクルであって、前記ペリクルフレームの少なくとも一方の端面は、外側面から内側面まで繋がった凹部を有し、前記ペリクルフレームは、少なくとも内側面に開口部を有する貫通孔を28~250個有することを特徴とするペリクル、及び、該ペリクルを用いた、ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの端面を有する枠状の金属製ペリクルフレームを備えるペリクルであって、
前記ペリクルフレームの少なくとも一方の端面は、外側面から内側面まで繋がった凹部を有し、前記ペリクルフレームは、少なくとも内側面に開口部を有する貫通孔を28~250個有することを特徴とするペリクル。
【請求項2】
前記ペリクルフレームの内側面における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上である請求項1記載のペリクル。
【請求項3】
ペリクルの内空間側における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上である請求項1記載のペリクル。
【請求項4】
前記ペリクルフレームの外側面における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上である請求項1記載のペリクル。
【請求項5】
ペリクルの外空間側における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上である請求項1記載のペリクル。
【請求項6】
前記貫通孔と前記ペリクルフレームの端面との間の最薄部が0.2mm以上である請求項1~5のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項7】
前記通気面積の合計は、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.02mm2以下である請求項2~6のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項8】
前記凹部の高さは、前記ペリクルフレームの厚みの50%以下である請求項1~7のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項9】
前記ペリクルフレームの厚みは、2.5mm以下である請求項1~8のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項10】
前記ペリクルフレームの前記凹部を有する端面は、粘着剤又は接着剤を介してペリクル膜を有する請求項1~9のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項11】
真空下又は減圧下における露光に使用される請求項1~10のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項12】
EUV露光に使用される請求項1~10のいずれか1項記載のペリクル。
【請求項13】
露光原板に請求項1~12のいずれか1項記載のペリクルが装着されていることを特徴とするペリクル付露光原版。
【請求項14】
請求項13記載のペリクル付き露光原版を用いて露光することを特徴とする露光方法。
【請求項15】
請求項13記載のペリクル付露光原版を用いて、基板を露光する工程を備えることを特徴とする半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ用フォトマスクに異物除けとして装着されるペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付露光原版、露光方法、半導体の製造方法及び液晶表示板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIのデザインルールはサブクオーターミクロンへと微細化が進んでおり、それに伴って、露光光源の短波長化が進んでいる。すなわち、露光光源は水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)から、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等に移行しており、さらには主波長13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet)光を使用するEUV露光が検討されている。
【0003】
LSI、超LSI等の半導体製造又は液晶表示板の製造においては、半導体ウエハ又は液晶用原板に光を照射してパターンを作製するが、この場合に用いるリソグラフィ用フォトマスク及びレチクル(以下、総称して「露光原版」と記述する。)に異物が付着していると、この異物が光を吸収したり、光を曲げてしまうために、転写したパターンが変形したり、エッジが粗雑なものとなるほか、下地が黒く汚れたりして、寸法、品質、外観等が損なわれるという問題があった。
【0004】
これらの作業は、通常クリーンルームで行われているが、それでも露光原版を常に清浄に保つことは難しい。そこで、露光原版の表面に異物除けとしてペリクルを貼り付けた後に露光をする方法が一般に採用されている。この場合、異物は露光原版の表面には直接付着せず、ペリクル上に付着するため、リソグラフィ時に焦点を露光原版のパターン上に合わせておけば、ペリクル上の異物は転写に無関係となる。
【0005】
このペリクルの基本的な構成は、アルミニウムやチタン等からなるペリクルフレームの上端面に露光に使われる光に対し透過率が高いペリクル膜が張設されるとともに、下端面に気密用ガスケットが形成されているものである。気密用ガスケットは一般的に粘着剤層が用いられ、この粘着剤層の保護を目的とした保護シートが貼り付けられる。ペリクル膜は、露光に用いる光(水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等)を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素系ポリマー等からなるが、EUV露光用では、ペリクル膜として極薄シリコン膜や炭素膜が検討されている。
【0006】
また、EUV露光は真空下で行われるため、EUV用ペリクルは大気圧から真空への圧力変化に耐える必要があり、EUVペリクルの通気面積が大きいことが要求される。
【0007】
そこで、特許文献1では、ペリクルフレームの対向する2側面に、他側面に対して開孔面積率が50~90%である通気孔がそれぞれ設けられたペリクルフレームを有するペリクルが提案されている。しかしながら、ペリクル内外の圧力変化に影響を与えるのは、ペリクルの内部空間体積に対する通気面積であり、ペリクルフレームの開孔面積率のみで議論するには不十分である。
【0008】
また、特許文献2では、セラミック製フレームに設けられた貫通孔の流路面積の合計が、ペリクルの内部空間の体積1cm3あたり0.005cm2以上であるペリクルフレームを提案している。しかしながら、セラミック製の場合、素材に延性がないため、ペリクルを剥離する時など、ペリクルフレームに局所的に強い力が加わると、該ペリクルフレームが破損し、異物を発生させる場合があることが分かってきた。ペリクルフレームに強度を持たせるには、一般的にはペリクルフレームを厚くすればよいが、EUV用のペリクルには最大高さ2.5mmという制限があるため、ペリクルフレームを厚くして破損を防止することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-294786号公報
【特許文献2】特開2018-200380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、EUV露光を真空下で行う際、大気圧から真空への圧力変化に耐えてペリクル膜の破損が生じにくく、また、ペリクルフレームの加工性が良好であり、且つ、ペリクルを剥離する際に破損しにくいペリクルフレームを用いたペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームであって、該ペリクルフレームの端面の外側面から内側面に向かって切り欠き部を設け、内側面、外側面、ペリクル内空間側及びペリクル外空間側のいずれかの箇所における通気面積を、ペリクル内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上に設定することにより、圧力変化時にペリクル膜の破損を抑制できることを見出した。また、多数の通気部を設けるには、ペリクルフレームに細かな加工を施す必要があるが、延性のある金属を材料に用いることで、ペリクルフレーム加工時のペリクルフレーム破損による損失を低減し、且つ、ペリクルをフォトマスクから剥離する際に、ペリクルフレームが破損するリスクが少ないことを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は、下記のペリクルフレーム、ペリクル、ペリクル付露光原版、露光方法、半導体の製造方法及び液晶表示板の製造方法を提供する。
1.ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームにおいて、該ペリクルフレームは金属製であると共に、上端面又は下端面が開放された切り欠き部を外側面から内側面に向かって設け、内側面における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上であることを特徴とするペリクルフレーム。
2.ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームにおいて、該ペリクルフレームは金属製であると共に、上端面又は下端面が開放された切り欠き部を外側面から内側面に向かって設け、ペリクルの内空間側における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上であることを特徴とするペリクルフレーム。
3.ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームにおいて、該ペリクルフレームは金属製であると共に、上端面又は下端面が開放された切り欠き部を外側面から内側面に向かって設け、外側面における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上であることを特徴とするペリクルフレーム。
4.ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームにおいて、該ペリクルフレームは金属製であると共に、上端面又は下端面が開放された切り欠き部を外側面から内側面に向かって設け、ペリクルの外空間側における通気面積の合計が、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上であることを特徴とするペリクルフレーム。
5.少なくとも内側面に開口部を有する貫通孔が設けられる上記1~4のいずれかに記載のペリクルフレーム。
6.ペリクルフレームの金属材料は、チタン、チタン合金、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選ばれる上記1~4のいずれかに記載のペリクルフレーム。
7.上記通気面積の合計は、ペリクルの内空間の体積1mm3あたり0.02mm2以下である上記1~4のいずれかに記載のペリクルフレーム。
8.上記切り欠き部の高さは、ペリクルフレームの厚みの50%以下である上記1~4のいずれかに記載のペリクルフレーム。
9.ペリクルフレームの厚みは、2.5mm以下である上記1~4のいずれかに記載のペリクルフレーム。
10.上記1~9のいずれかに記載のペリクルフレームと、該ペリクルフレームの上端面に粘着剤又は接着剤を介して設けられるペリクル膜とを具備することを特徴とするペリクル。
11.真空下又は減圧下における露光に使用される上記10記載のペリクル。
12.EUV露光に使用される上記10又は11記載のペリクル。
13.ペリクルの高さが2.5mm以下である上記10又は11記載のペリクル。
14.上記ペリクル膜は、枠に支えられたペリクル膜である上記10又は11記載のペリクル。
15.露光原板に上記10記載のペリクルが装着されていることを特徴とするペリクル付露光原版。
16.露光原版が、EUV用露光原版である上記15記載のペリクル付露光原版。
17.EUVリソグラフィに用いられるペリクル付露光原版である上記15記載のペリクル付露光原版。
18.上記15記載のペリクル付き露光原版を用いて露光することを特徴とする露光方法。
19.上記15記載のペリクル付露光原版を用いて、真空下又は減圧下において基板を露光する工程を備えることを特徴とする半導体の製造方法。
20.上記15記載のペリクル付露光原版を用いて、真空下又は減圧下において基板を露光する工程を備えることを特徴とする液晶表示板の製造方法。
21.上記15記載のペリクル付露光原版を用いて、基板をEUV露光する工程を備えることを特徴とする半導体の製造方法。
22.上記15記載のペリクル付露光原版を用いて、基板をEUV露光する工程を備えることを特徴とする液晶表示板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のペリクルフレーム及びペリクルによれば、大気圧から真空への圧力変化時にペリクル膜の破損が生じにくく、ペリクルフレームの加工時やペリクルの剥離時において破損し難いペリクルフレーム及びペリクルを提供することができる。また、本発明は、特に、EUV露光用のペリクルに有用であり、また上記ペリクルを用いることにより、ペリクル付露光原版を用いて基板を露光する工程を備える半導体又は液晶表示板の製造方法において非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のペリクルフレームの一実施形態を示す模式図であり、(A)は上端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
図2】本発明のペリクルをフォトマスクに装着した様子を示す概略図である。
図3】本発明のペリクルフレームの他の実施形態を示す模式図であり、(A)は上端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
図1(A)~(C)は、本発明のペリクルフレーム1の一例を示し、符号11はペリクルフレームの内側面、符号12はペリクルフレームの外側面、符号13はペリクルフレームの上端面、符号14はペリクルフレームの下端面を示す。上記ペリクルフレーム1の上端面には切り欠き部20が設けられ、符号21は切り欠き部の幅、符号22は切り欠き部の奥行、符号23は切り欠き部の高さを示す。また、上記ペリクルフレーム1には貫通孔30が複数個設けられている。なお、通常、ペリクルフレームの長辺側にはペリクルをフォトマスクから剥離するために用いられる治具穴が設けられるが、図1では特に図示していない。
【0016】
図2は、ペリクルをフォトマスクに装着したペリクル付フォトマスク10を示すものであり、ペリクルフレーム1の上端面には、粘着剤又は接着剤4によりペリクル膜2が接着又は粘着されると共に張設されている。また、ペリクルフレーム1の下端面には、粘着剤又は接着剤5によりフォトマスク3に剥離可能に接着又は粘着されており、フォトマスク3上のパターン面を保護している。
【0017】
図1に示すように、本発明のペリクルフレームは、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームである。
【0018】
ペリクルフレームは枠状であれば、その形状はペリクルを装着するフォトマスクの形状に対応する。一般的には、四角形(長方形又は正方形)枠状である。ペリクルフレームの角部(エッジ部)の形状については、そのまま角ばった(尖った)形状であってもよく、或いは、R面取り又はC面取り等の面取りを施し、曲線形状等の他の形状であってもよい。
【0019】
また、ペリクルフレームには、ペリクル膜を設けるための面(ここでは上端面とする。)と、フォトマスク装着時にフォトマスクに面する面(ここでは下端面とする。)がある。
【0020】
図2に示すように、ペリクルフレームの上端面には、接着剤等を介してペリクル膜が設けられ、下端面には、ペリクルをフォトマスクに装着するための粘着剤等が設けられるが、この限りではない。
【0021】
ペリクルフレームの材質は延性のある金属であることが好ましい。さらに、EUV露光では、ArF露光よりも高い精度が求められるため、フォトマスクに対して平坦性の要求が厳しい。フォトマスクに対する平坦性は、ペリクルの影響を受けることが知られている。ペリクルのフォトマスクへの影響を少しでも抑えるために、軽量なチタン、チタン合金やアルミニウム、アルミニウム合金を用いることが好ましい。
【0022】
ペリクルフレームの寸法は特に限定されないが、EUV用ペリクルの高さが2.5mm以下に制限される場合には、EUV用のペリクルフレームの厚みはそれよりも小さくなり2.5mm以下であることが好ましい。特に、EUV用のペリクルフレームの厚みは、ペリクル膜やフォトマスク用粘着剤等の厚みを勘案すると、1.5mm以下であることが好ましい。また、上記ペリクルフレームの厚みの下限値は1.0mm以上であることが好ましい。
【0023】
本発明のペリクルフレームには、上端面又は下端面が開放された切り欠き部が外側面から内側面に向かって設けられる。即ち、切り欠き部は、ペリクルフレームの上端面又は下端面に設けられ、外側面から内側面まで繋がったくぼみ(凹部)を意味する。例えば、図1(B)及び(C)に示すように、切り欠き部20は、ペリクルフレームの外面からみて略コの字型のくぼみを有する。なお、略コの字型のくぼみは、角部が尖って四角形に削られた形状のほか、角部にR加工を施した形状も含まれる。また、図1(A)に示すように、切り欠き部20は、上面からみて、外側面から内側面に向けて同じ幅で凹部が形成されているが、これに限られず、外側面から内側面に向けて漸次幅狭又は幅広のテーパー形状であってもよい。さらに、切り欠き部の高さ方向(図1の符号23参照)についても、外側面から内側面に向けて、高さが同一に限られず漸次拡張又は縮小となるようにテーパー形状になっていてもよい。なお、上記切り欠き部の配置場所や個数については特に制限はない。
【0024】
また、切り欠き部は、その形状や寸法については特に制限はないが、切り欠き部の高さ(図1の符号23)を大きくすれば、その分、ペリクルフレームの切り欠き部下方の厚みが減り、ペリクルを剥離する時に、最薄部を起点としてペリクルフレームが折曲がってしまい、その衝撃でペリクル膜が破損する可能性がある。ペリクルを剥離する時のペリクル膜の破損は、フォトマスクを再生する際に時間を要するので問題である。そのため、切り欠き部の高さは、ペリクルフレームの厚みの50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。一方、加工の容易さから、切り欠き部の高さは、ペリクルフレームの厚さの5%以上であることが好ましい。
【0025】
なお、図1では、ペリクルフレーム1の上端面に切り欠き部20を設けるものであるが、別のペリクルフレームの態様として、ペリクルフレーム1の下端面に切り欠き部20を設けたペリクルフレームを図3(A)~(C)に示す。
【0026】
また、本発明では、大気圧から真空への圧力変化時にペリクル膜の破損を防ぐため、ペリクルフレームの内側面、外側面、ペリクル内空間側及びペリクル外空間側のいずれかの箇所における通気面積の合計を、ペリクル内空間の体積1mm3あたり0.001mm2以上に設定する必要がある。ペリクル膜の破損のリスクを下げるために、通気面積は大きいほど好ましい。上記通気面積の合計の好ましい値は、ペリクル内空間の体積1mm3あたりで、0.0013mm2以上であり、より好ましい値は、0.0015mm2以上である。上限値としては、ペリクルフレームの破損防止及び強度維持の点から、好ましくは0.02mm2以下、より好ましくは0.015mm2以下である。
【0027】
また、本発明のペリクルフレームは、少なくとも内側面に開口部を有する貫通孔が設けられることが好適である。即ち、貫通孔の開口部の一方は内側面に設けられるとともに、貫通孔の開口部の他方は、ペリクルフレームの外側面やペリクル膜が位置する上端面に形成することができる。貫通孔の他方の開口部をペリクルフレームの上端面に形成する場合、該上端面にフィルタを設けることができ、特にフレーム厚さが薄いEUV用には有利である。
【0028】
上記貫通孔(通気孔)は、その形状や寸法に特に制限はないが、円形、楕円形などの形状を採用することが好ましく、その開口面積は0.03mm2以上であることが好適である。また、加工の容易さから、ペリクル端面と通気孔との間の最薄部を0.2mm以上にすることが好ましい。
【0029】
図1のペリクルフレームでは、切り欠き部と貫通孔(通気孔)との両方が形成されているが、これに限定されるものではなく本発明では、切り欠き部のみを採用しても構わない。但し、後述するように、通気部として一定上の面積を確保し、本発明の所望の効果を十分に発揮させ、且つペリクルフレームの強度を十分に確保するためには、切り欠き部と貫通孔とを併用することが望ましい。この場合のペリクルフレームの長辺、短辺の各辺において、切り欠き部の面積は、0.05~400mm2で、個数は1~50個の範囲であり、一方、貫通孔の面積は、0.03~130mm2で、個数は1~250個の範囲内で設けることができる。
【0030】
本発明のペリクルフレームにおいて、通気面積は、ペリクルを完成させた時の内側面、外側面、ペリクル内空間側及びペリクル外空間側のいずれかの箇所における通気面積として計算される。例えば、直径0.8mmの通気孔を40個、ペリクル膜側の端面に10mm幅(図1の符号21参照)、高さ0.2mm(図1の符号23参照)の切り欠き部を40個、切り欠き部以外の上端面に形成されたペリクル膜用粘着剤の厚みが0.1mmとした場合、このペリクルに存在する通気面積の合計は140mm2となる。つまり、粘着剤の厚み分も通気面積として計算する。
[通気孔の面積:式1] 0.4×0.4×3.14×40(個数)=20.096(mm2
[切り欠き部の開口面積:式2] 10×(0.2+0.1)×40(個数)=120(mm2
【0031】
即ち、ペリクルフレームに切り欠き部を設けた場合、切り欠き部は通気孔より作製が容易であるとともに、切り欠き部以外の通気空間として、上記のとおり、積層される粘着剤層の厚みの分も加算されることとなり、本発明において、通気部として切り欠き部を必須とすることのメリットは大きい。
【0032】
そして、本発明において、ペリクルの内部空間体積とは、ペリクルを完成させた時の、粘着剤厚みを含む真の内部空間体積を意味する。例えば、ペリクルフレームの内寸が縦143mm×横110mm×高さ1.5mmであり、ペリクル膜用粘着剤とフォトマスク用粘着剤との厚みが0.1mmであり、ペリクル膜が0.725mm高さのSi枠に支えられた極薄単結晶シリコン膜の場合、極薄シリコン膜は十分に薄いので体積計算時には無視することができ、従って、ペリクルの内部空間体積は38145mm3となる。
[ペリクルの内部空間体積:式3] 143×110×(1.5+0.1+0.1+0.725)=38145.25(mm3
この時の通気面積の合計は、〔20.096(mm2)+120(mm2)〕/38145mm3≒0.0037である。ペリクル内空間の体積1mm3あたり約0.0037mm2と計算できる。
【0033】
上記通気部には、必要に応じてフィルタを設けてもよい。
【0034】
本発明のペリクルは、上記のようなペリクルフレームの上端面に、ペリクル膜用の粘着剤又は接着剤を介して、ペリクル膜が設けられる。ペリクル膜用粘着剤又は接着剤としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。一般的に、粘着剤や接着剤は、ペリクルフレームの一端面の周方向全周に亘って、ペリクルフレーム幅と同じ又はそれ以下の幅に形成される。ペリクルフレームの一端面に切り欠き部がある場合は、切り欠き部以外の端面上に形成されることが好ましい。
【0035】
上記ペリクル膜の材質については、特に制限はないが、露光光源の波長における透過率が高く耐光性の高いものが好ましい。例えば、EUV露光に対しては極薄シリコン膜、Si膜や炭素膜等が用いられる。これら炭素膜としては、例えば、グラフェン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等の膜が挙げられる。なお、ペリクル膜単独での取り扱いが難しい場合は、シリコン等の枠に支えられたペリクル膜を用いることができる。その場合、枠の領域とペリクルフレームとを接着することにより、ペリクルを容易に製造することができる。
【0036】
さらに、ペリクルフレームの下端面には、フォトマスクに装着するための粘着剤又は接着剤が形成される。一般的に、粘着剤や接着剤は、ペリクルフレームの一端面の周方向全周に亘って、ペリクルフレーム幅と同じ又はそれ以下の幅に形成される。ペリクルフレームの一端面に切り欠き部がある場合は、切り欠き部以外の端面上に形成される。
【0037】
上記フォトマスク用粘着剤としては、公知のものを使用することができ、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が好適に使用でき、特に、耐熱性の観点からシリコーン系粘着剤が好ましい。粘着剤は必要に応じて、任意の形状に加工されてもよい。
【0038】
上記フォトマスク用粘着剤の下端面には、粘着剤を保護するための離型層(セパレータ)が貼り付けられていてもよい。離型層の材質は、特に制限されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)等を使用することができる。また、必要に応じて、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤等の離型剤を離型層の表面に塗布してもよい。
【0039】
本発明のペリクルフレームは、外側又は内側に向けた突起部を設けてもよい。このような突起部を用いることで、フィルタを形成することもできる。また、外側に向けた突起部に露光原版との接続機構(ネジ、粘着剤等)を設けることで、フォトマスク用粘着剤を省略することもできる。
【0040】
本発明のペリクルは、EUV露光装置内で、露光原版に異物が付着することを抑制するための保護部材としてだけでなく、露光原版の保管時や、露光原版の運搬時に露光原版を保護するための保護部材としてもよい。ペリクルをフォトマスク等の露光原版に装着し、ペリクル付露光原版を製造する方法には、前述したフォトマスク用粘着剤で貼り付ける方法の他、静電吸着法、機械的に固定する方法等がある。
【0041】
本発明の実施形態に係る半導体又は液晶表示板の製造方法は、上記のペリクル付露光原版によって基板(半導体ウエハ又は液晶用原板)を露光する工程を備える。例えば、半導体又は液晶表示板の製造工程の一つであるリソグラフィ工程において、集積回路等に対応したフォトレジストパターンを基板上に形成するために、ステッパーに上記のペリクル付露光原版を設置して露光する。一般に、EUV露光ではEUV光が露光原版で反射して基板へ導かれる投影光学系が使用され、これらは減圧又は真空下で行われる。これにより、仮にリソグラフィ工程において異物がペリクル上に付着したとしても、フォトレジストが塗布されたウエハ上にこれらの異物は結像しないため、異物の像による集積回路等の短絡や断線等を防ぐことができる。よって、ペリクル付露光原版の使用により、リソグラフィ工程における歩留まりを向上させることができる。
【実施例0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0043】
[実施例1]
チタン製のペリクルフレーム(内寸143mm×110mm×高さ1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。ペリクルフレーム各辺中央の上端面には、幅30mm×高さ0.1mm×奥行4mmの切り欠き部を設けた。さらに、各辺に直径0.8mmの貫通孔を12個設けた。
ペリクルフレームを洗浄し、ペリクルフレーム上端面の切り欠き部の無い箇所にシリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製「X-40-3264」)100質量部に硬化剤(信越化学工業(株)製「PT-56」)1質量部加えて撹拌した材料を幅1mm、厚み0.1mmになるよう塗布した。また、ペリクルフレームの下端面には、フォトマスク用粘着剤として、アクリル粘着剤(綜研化学(株)製「SKダイン1499M」)100質量部に硬化剤(綜研化学(株)製「L-45」)を0.1質量部加えて撹拌した材料を全周に亘り、幅1mm、厚み0.1mmになるよう塗布した。その後、ペリクルフレームを100℃で12時間加熱して、上下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として0.725mm厚のSi枠に支えられた50nm厚の極薄シリコン膜を、ペリクルフレームの上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0044】
[実施例2]
アルミ製のペリクルフレーム(内寸143mm×110mm×高さ1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。ペリクルフレーム各辺には、直径0.8mmの貫通孔を48個設けた。このフレームの形状以外は、実施例1と同じである。
【0045】
[比較例1]
チタン製のペリクルフレーム(内寸143mm×110mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。ペリクルフレーム各辺中央の上端面には、幅30mm×高さ0.1mm×奥行4mmの切り欠き部を設けた。このペリクルフレームの形状以外は、実施例1と同じである。
【0046】
[比較例2]
セラミックであるアルミナで実施例1のペリクルフレームの作製を試みたが、製作途中で破損してしまった。
【0047】
[真空テスト]
実施例1,2及び比較例1で作製したペリクルを6インチ角の石英マスクに貼り付け、真空テストを実施した。この真空テストは、上記のマスク付ペリクルを真空チャンバーに入れ、大気圧から1Paまで170秒で減圧し、その後、1Paから大気圧まで250秒で戻し、ペリクル膜に破損があるかを確認した。その結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1の結果から、実施例1及び実施例2では、ペリクル膜の破損は確認されず良好であったが、比較例1ではペリクル膜の破損を確認した。
【符号の説明】
【0050】
1 ペリクルフレーム
11 ペリクルフレームの内側面
12 ペリクルフレームの外側面
13 ペリクルフレームの上端面
14 ペリクルフレームの下端面
20 切り欠き部
21 切り欠き部の幅
22 切り欠き部の奥行
23 切り欠き部の高さ
30 貫通孔(通気孔)
2 ペリクル膜
3 フォトマスク
4 ペリクル膜用粘着剤又は接着剤
5 フォトマスク用粘着剤又は接着剤
10 ペリクル付フォトマスク
図1
図2
図3