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特開2024-150870積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法
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  • 特開-積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150870
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241017BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241017BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241017BHJP
   B32B 3/02 20060101ALI20241017BHJP
   C09J 7/30 20180101ALN20241017BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J201/00
B32B3/02
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063887
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】越野 美春
(72)【発明者】
【氏名】大久保 恵介
(72)【発明者】
【氏名】岩永 有輝啓
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義信
(72)【発明者】
【氏名】田澤 強
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA42C
4F100DB01
4F100DC21B
4F100GB41
4F100JL11B
4F100JL13C
4J004AB01
4J004AB07
4J004CC02
4J004EA06
4J004FA04
4J004FA08
4J040JA09
4J040JB08
4J040JB09
4J040LA06
4J040NA20
4J040PA23
5F063AA18
5F063DG27
5F063EE13
5F063EE14
5F063EE18
5F063EE31
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE58
(57)【要約】
【課題】本来のフィルム機能を維持しつつ、保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】積層フィルム1では、粘着フィルム4が接着層3の縁よりも外側に張り出して保護フィルム2の一面2aに接する張出領域Pを有し、張出領域Pにおいて、粘着層6には、当該粘着層6の本体部分6Aに比べて保護フィルム2に対する粘着力が小さい低粘着部分6Bが設けられ、低粘着部分6Bは、粘着層6の周縁部6aの一部において、保護フィルム2の延在方向Dの先端となる縁部6cを含み、且つ幅方向Bについて見た場合に、低粘着部分6Bが本体部分6Aによって挟まれるように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の保護フィルムと、
前記保護フィルムの一面に設けられた接着層と、
前記接着層に重なる粘着層及び前記粘着層に重なる基材フィルムによって構成された粘着フィルムと、を備え、
前記粘着フィルムは、前記接着層の縁よりも外側に張り出して前記保護フィルムの一面に接する張出領域を有し、
前記張出領域において、前記粘着層には、当該粘着層の本体部分に比べて前記保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分が設けられ、
前記低粘着部分は、前記粘着層の周縁部の一部において、前記保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含み、且つ前記延在方向に直交する幅方向について見た場合に、前記低粘着部分が前記本体部分によって挟まれるように配置されている、積層フィルム。
【請求項2】
前記低粘着部分は、前記粘着層の縁部と、当該縁部から前記保護フィルムの延在方向に延びる一対の辺と、前記一対の辺における前記粘着層の縁部と反対側の端部同士を結ぶ前記幅方向の辺とによって画成される切欠状の領域に設けられている、請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記延在方向に延びる前記一対の辺の長さは、前記幅方向の辺の長さよりも小さくなっている、請求項2記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記低粘着部分は、前記張出領域において、前記保護フィルムの延在方向の一側の縁部及び他側の縁部にそれぞれ設けられている、請求項1記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記低粘着部分は、前記粘着層を構成する樹脂組成物の硬化物又は半硬化物によって構成されている、請求項1記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記低粘着部分は、当該低粘着部分の配置領域に対応して前記保護フィルムに離型層を形成することによって構成されている、請求項1記載の積層フィルム。
【請求項7】
一面側に接着層が設けられた長尺の保護フィルムに、粘着層及び粘着層に重なる基材フィルムを有する粘着フィルムを積層する積層工程と、
前記粘着フィルムを所定のパターンでプリカットし、接着層の縁よりも外側に張り出して前記保護フィルムの一面に接する張出領域を前記粘着フィルムに形成する切断工程と、
前記張出領域において、前記粘着層の本体部分に比べて前記保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分を前記粘着層に形成する形成工程と、を備え、
前記形成工程では、前記粘着層の周縁部の一部において、前記保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含み、且つ前記延在方向に直交する幅方向について見た場合に、前記低粘着部分が前記本体部分によって挟まれるように前記粘着層を形成する、積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルムを半導体ウェハ及びリングフレームに向けて搬送する搬送工程と、
剥離プレートを用いて前記保護フィルムを前記接着層及び前記粘着フィルムに対して折り返し、前記接着層及び前記粘着フィルムから前記保護フィルムを剥離する剥離工程と、
前記接着層及び前記粘着フィルムを前記半導体ウェハ及び前記リングフレームに貼り付ける貼付工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記剥離工程において、前記接着層及び前記粘着フィルムに対する前記保護フィルムの折返位置に剥離をアシストするエアを供給する、請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程として、半導体ウェハを個々のチップに分離するダイシング工程、及び個々に分離したチップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するダイボンディング工程がある。例えばNAND型フラッシュメモリパッケージのような半導体装置では、ダイボンディング工程において、半導体チップ同士を積層・接着する場合もある。このような半導体チップの製造工程では、ダイシング工程における半導体ウェハの固定と、ダイボンディング工程における半導体チップの接着とに併用できる積層フィルムの導入が進められている。積層フィルムには、ダイシングの際の半導体ウェハ及びリングフレームへの取付作業性を考慮し、機能フィルムであるダイアタッチフィルム及びダイシングフィルムにプリカット加工が施されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-156753公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、半導体メモリの高容量化或いはモバイル用途への展開に伴い、半導体チップの薄型化が要求されてきており、半導体チップの製造に用いられる積層フィルムの薄型化の要求も強まってきている。積層フィルムを薄型化する場合、機能フィルムを構成する基材フィルムを薄くすることで、積層フィルムの低コスト化が図られると共に、ダイシングによって個片化された半導体チップのピックアップ性の向上が見込まれる。しかしながら、基材フィルムが薄くなると、上述した貼付工程において、機能フィルムからの保護フィルムの剥離不良が生じるおそれがある。したがって、基材フィルムが薄くなった場合でも保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる技術が求められている。その一方で、剥離フィルムの剥離不良を抑制しつつも、本来のフィルム機能(リングフレームへの貼付性など)が損なわれないような工夫も必要となる。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、本来のフィルム機能を維持しつつ、保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る積層フィルムは、長尺の保護フィルムと、保護フィルムの一面に設けられた接着層と、接着層に重なる粘着層及び粘着層に重なる基材フィルムによって構成された粘着フィルムと、を備え、粘着フィルムは、接着層の縁よりも外側に張り出して保護フィルムの一面に接する張出領域を有し、張出領域において、粘着層には、当該粘着層の本体部分に比べて保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分が設けられ、低粘着部分は、粘着層の周縁部の一部において、保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含み、且つ延在方向に直交する幅方向について見た場合に、低粘着部分が本体部分によって挟まれるように配置されている、積層フィルム。
【0007】
この積層フィルムでは、粘着層の周縁部の一部において、保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含むように低粘着部分が設けられている。低粘着部分は、剥離プレートを用いて保護フィルムを接着層及び粘着フィルムに対して折り返す際に、保護フィルムの剥離起点となる。したがって、基材フィルムが薄い場合であっても、保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる。この積層フィルムでは、保護フィルムの幅方向について見た場合に、低粘着部分が本体部分によって挟まれている。これにより、低粘着部分が張出領域において過剰な面積を占めることが抑制され、積層フィルムの本来のフィルム機能を維持できる。
【0008】
低粘着部分は、粘着層の縁部と、当該縁部から保護フィルムの延在方向に延びる一対の辺と、一対の辺における粘着層の縁部と反対側の端部同士を結ぶ幅方向の辺とによって画成される切欠状の領域に設けられていてもよい。低粘着部分を切欠状の領域とすることで、低粘着部分が張出領域において過剰な面積を占めることがより確実に抑制され、積層フィルムの本来のフィルム機能を一層十分に維持できる。
【0009】
延在方向に延びる一対の辺の長さは、幅方向の辺の長さよりも小さくなっていてもよい。このような構成によれば、低粘着部分が粘着層の中心側に延びる長さを抑制できる。したがって、積層フィルムの粘着フィルムをリングフレームへの貼り付けに用いる場合に、低粘着部分がリングフレームへの貼付領域よりも内側の半導体ウェハの貼付領域に重なることを回避できる。
【0010】
低粘着部分は、張出領域において、保護フィルムの延在方向の一側の縁部及び他側の縁部にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、保護フィルムの延在方向の一側及び他側のいずれの方向からでも積層フィルムを使用することができる。
【0011】
低粘着部分は、粘着層を構成する樹脂組成物の硬化物又は半硬化物によって構成されていてもよい。この場合、低粘着部分を簡便に設けることができる。
【0012】
低粘着部分は、当該低粘着部分の配置領域に対応して保護フィルムに離型層を形成することによって構成されていてもよい。この場合、低粘着部分を簡便に設けることができる。
【0013】
本開示に係る積層フィルムの製造方法は、一面側に接着層が設けられた長尺の保護フィルムに、粘着層及び粘着層に重なる基材フィルムを有する粘着フィルムを積層する積層工程と、粘着フィルムを所定のパターンでプリカットし、接着層の縁よりも外側に張り出して保護フィルムの一面に接する張出領域を粘着フィルムに形成する切断工程と、張出領域において、粘着層の本体部分に比べて保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分を粘着層に形成する形成工程と、を備え、形成工程では、粘着層の周縁部の一部において、保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含み、且つ延在方向に直交する幅方向について見た場合に、低粘着部分が本体部分によって挟まれるように粘着層を形成する。
【0014】
この積層フィルムの製造方法では、粘着層の周縁部の一部において、保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含むように低粘着部分を形成する。低粘着部分は、剥離プレートを用いて保護フィルムを接着層及び粘着フィルムに対して折り返す際に、保護フィルムの剥離起点となる。したがって、基材フィルムが薄い場合であっても、保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる。この積層フィルムの製造方法では、保護フィルムの幅方向について見た場合に、粘着層の本体部分によって挟まれるように低粘着部分を配置する。これにより、低粘着部分が張出領域において過剰な面積を占めることが抑制され、積層フィルムの本来のフィルム機能を維持できる。
【0015】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、上記積層フィルムを半導体ウェハ及びリングフレームに向けて搬送する搬送工程と、剥離プレートを用いて保護フィルムを接着層及び粘着フィルムに対して折り返し、接着層及び粘着フィルムから保護フィルムを剥離する剥離工程と、接着層及び粘着フィルムを半導体ウェハ及びリングフレームに貼り付ける貼付工程と、を備える。
【0016】
この半導体装置の製造方法では、半導体ウェハ及びリングフレームへの貼り付けに用いる積層フィルムの粘着フィルムの張出領域において、積層フィルムの搬送方向の先端に対応するように、粘着層の本体部分に比べて保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分を位置させることができる。低粘着部分が剥離プレートを用いて保護フィルムを接着層及び粘着フィルムに対して折り返す際の剥離起点となることで、基材フィルムが薄い場合であっても、保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる。また、この半導体装置の製造方法では、積層フィルムを保護フィルムの幅方向について見た場合に、低粘着部分が本体部分によって挟まれている。これにより、低粘着部分が張出領域において過剰な面積を占めることが抑制され、リングフレームに対する粘着フィルムの貼付強度の低下を抑制できる。
【0017】
剥離工程において、接着層及び粘着フィルムに対する保護フィルムの折返位置に剥離をアシストするエアを供給してもよい。エアの供給により、接着層及び粘着フィルムが保護フィルムから反り易くなり、保護フィルムの剥離不良の発生をより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、本来のフィルム機能を維持しつつ、保護フィルムの剥離不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態に係る積層フィルムの平面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図1におけるIII-III線断面図である。
図4図1に示した積層フィルムの要部拡大平面図である。
図5】本開示に係る積層フィルムの製造工程の一例を示す図であり、(a)は形成工程を示す断面図、(b)は積層工程を示す断面図、(c)は切断工程を示す断面図である。
図6】本開示に係る積層フィルムの製造工程の別例を示す図であり、(a)は形成工程を示す断面図、(b)は積層工程を示す断面図、(c)は切断工程を示す断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法に適用される貼付装置の構成を示す模式図である。
図8】実施例及び比較例における剥離工程及び貼付工程の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る積層フィルム、積層フィルムの製造方法、及び半導体装置の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る積層フィルムの平面図である。図2は、図1におけるII-II線断面図であり、図3は、図1におけるIII-III線断面図である。図1図3に示すように、積層フィルム1は、例えばNAND型フラッシュメモリなどの半導体装置の製造工程において、ダイシング工程での半導体ウェハの固定、ダイボンディング工程での半導体チップとリードフレームとの接合などに用いられる長尺のフィルムである。積層フィルム1は、一般にはロール状に巻かれた状態で保存され、使用時には必要量に応じてロールから繰り出される。
【0022】
積層フィルム1は、図1図3に示すように、長尺の保護フィルム2と、接着層3と、粘着フィルム4とを備えて構成されている。接着層3及び粘着フィルム4は、保護フィルム2の一面2a側において、保護フィルム2の延在方向Dに沿って一定の間隔で配列されている。接着層3は、貼付対象である半導体ウェハW(図7参照)の平面形状に応じて、平面視で円形状をなしている。接着層3は、接着層3の厚さは、例えば3μm~100μmとなっている。
【0023】
粘着フィルム4は、粘着層6と、基材フィルム7とによって、2層構造となっている。粘着フィルム4は、粘着層6が保護フィルム2を向くように配置されている。粘着層6の厚さは、例えば3μm~400μmとなっている。基材フィルム7の厚さは、例えば30μm~150μmとなっている。
【0024】
粘着フィルム4は、接着層3を覆うラベル部11と、ラベル部11から離間して保護フィルム2の一面2aにおける幅方向Bの両端部に配置された保護部12,12とを有している。ラベル部11は、平面視において、接着層3よりも一回り大径の円形状をなしている。ラベル部11は、半導体ウェハW及びリングフレームR(図7参照)に貼り付けられる機能部分である。ラベル部11は、接着層3と同心になるように接着層3上に積層されている。
【0025】
保護部12,12は、積層フィルム1をロール状に巻回する際の圧力からラベル部11を保護する部分である。保護部12,12は、図2に示すように、ラベル部11のそれぞれを囲むように、保護フィルム2の幅方向Bについて対称に配置されている。ラベル部11と保護部12,12との間の領域では、粘着フィルム4が除去され、保護フィルム2の一面2aが露出している。
【0026】
ラベル部11の縁部は、接着層3よりも外側に張り出す張出領域Pとなっている。張出領域Pでは、接着層3を介さずに、粘着フィルム4の粘着層6が保護フィルム2の一面2aに接した状態となっている。張出領域Pの外縁部分は、後述のリングフレームR(図7参照)に貼り付けられる部分である。張出領域Pにおいて、基材フィルム7には、例えば製品識別用或いはラミネート時の張力判定用のマーキングが印字されていてもよい。マーキングは、例えばスクリーン印刷法、スタンプ法、及びインクジェット法などによって形成してもよい。
【0027】
張出領域Pにおいて、図1及び図3に示すように、粘着層6には、当該粘着層6の本体部分6A(図3参照)に比べて保護フィルム2に対する粘着力が小さい低粘着部分6Bが設けられている。低粘着部分6Bは、例えば粘着層6を構成する樹脂組成物の硬化物又は半硬化物によって構成されている。この場合、粘着層6の本体部分6Aは、例えばポリマー、架橋剤、光重合開始剤を含むフィルム状の組成物によって構成され、低粘着部分6Bは、粘着層6の本体部分6Aの一部を紫外線照射によって硬化或いは半硬化させることによって構成されている。低粘着部分6Bを粘着層6の本体部分6Aの半硬化によって構成する場合、その硬化率は、例えば50%以上100%未満とすることができる。
【0028】
低粘着部分6Bは、当該低粘着部分6Bの配置領域に対応して保護フィルム2に離型層2A(図6(a)参照)を形成することによって構成されていてもよい。離型層2Aを形成する処理としては、例えばマット処理といった表面粗化処理が挙げられる。上述した粘着層6の本体部分6Aの一部の硬化或いは半硬化と、保護フィルム2への離型層2Aの形成とを組み合わせて低粘着部分6Bを構成してもよい。
【0029】
低粘着部分6Bは、図4に示すように、粘着層6の周縁部6aの一部において、保護フィルム2の延在方向Dの先端となる縁部6cを含む領域に設けられている。縁部6cは、後述の貼付装置21(図7参照)によって積層フィルム1を搬送する際、ラベル部11における搬送方向の先端部となる部分である。低粘着部分6Bは、リングフレームRへの貼付領域となる領域に重なるように設定されることが好ましく、半導体ウェハWへの貼付領域には重ならないように設定されることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、低粘着部分6Bは、延在方向Dの一側の縁部6c及び他側の縁部6cにそれぞれ設けられている。低粘着部分6Bは、平面視において、保護フィルム2の幅方向Bの中心線Cについて対称となるように設けられている。図4の例では、低粘着部分6Bは、粘着層6の縁部6cと、当該縁部6cから保護フィルム2の延在方向Dに延びる一対の辺6d,6dと、前記一対の辺6d,6dにおける粘着層6の縁部6cと、反対側の端部同士を結ぶ幅方向Bの辺6eとによって画成される切欠状の領域に設けられている。
【0031】
本実施形態では、延在方向Dに延びる一対の辺6d,6d及び幅方向Bに延びる辺6eは、いずれも直線状となっている。また、本実施形態では、延在方向Dに延びる一対の辺6d,6dの長さL1は、幅方向Bに延びる辺6eの長さL2よりも小さくなっている。すなわち、低粘着部分6Bが設けられる切欠状の領域は、延在方向Dの長さが幅方向Bの長さよりも小さくなっている。本実施形態では、ラベル部11の直径が370mmであるのに対し、延在方向Dの辺6d,6dの長さL1は、7.5mm~15mmとなっており、幅方向Bの辺6eの長さL2は、30mm~50mmとなっている。
【0032】
低粘着部分6Bが切欠状の領域に設けられていることで、低粘着部分6Bにおける延在方向Dの辺6d,6d及び幅方向Bの辺6eは、いずれも低粘着部分6Bの本体部分6Aと接している。これにより、粘着層6を延在方向Dに直交する幅方向Bについて見た場合に、低粘着部分6Bは、粘着層6の本体部分6Aによって挟まれた状態となっている。図4に示すように、低粘着部分6Bを通り且つ辺6d,6dと交差(直交)する幅方向Bの仮想的なラインLaを設定した場合、当該ラインLa上では、本体部分6A(相対的に低粘着部分6Bよりも高い粘着力となる部分)、低粘着部分6B、本体部分6A(相対的に低粘着部分6Bよりも高い粘着力となる部分)がこの順に並ぶこととなる。
【0033】
なお、延在方向Dに延びる一対の辺6d,6d及び幅方向Bに延びる辺6eは、必ずしも直線状でなくてもよい。例えば一対の辺6d,6dの少なくとも一方が幅方向Bの外側に向かって凸或いは凹となるような湾曲状をなしていてもよい。一対の辺6d,6dは、延在方向Dに平行でなくてもよい。一対の辺6d,6dが延在方向Dに非平行となっており、切欠状の領域が粘着層6の縁部6cに向かって裾広がり或いは裾狭まりとなっていてもよい。同様に、幅方向Bに延びる辺6eが粘着層6の縁部6cに向かって凸或いは凹となるような湾曲状をなしていてもよい。
【0034】
次に、上述した積層フィルム1の製造方法について説明する。積層フィルム1の製造方法は、積層工程と、切断工程と、形成工程とを含んで構成されている。本実施形態では、形成工程、積層工程、切断工程の順に各工程を実施する。
【0035】
形成工程では、図5(a)に示すように、粘着層6及び粘着層6に重なる基材フィルム7を有する粘着フィルム4を用意する。次に、粘着層6における延在方向Dの一側の縁部6c及び他側の縁部6cとなる切欠状の領域に紫外線を照射し、当該切欠状の領域における粘着層6を硬化或いは半硬化させる。これにより、粘着層6の本体部分6Aに比べて保護フィルム2に対する粘着力が小さい低粘着部分6Bを粘着層6に形成する。図5(a)では図示していないが、粘着層6への紫外線の照射にあたって、粘着層6における基材フィルム7と反対側の面に、PETなどからなるカバーフィルムを配置してもよい。この場合、粘着層6での反応が酸素阻害を受けることを抑制でき、粘着層6の硬化を好適に進行させることが可能となる。
【0036】
積層工程では、図5(b)に示すように、一面2a側に接着層3が設けられた長尺の保護フィルム2を用意する。当該保護フィルム2に対し、接着層3と粘着層6とが向き合うように、低粘着部分6Bを形成した粘着フィルム4を積層する。
【0037】
切断工程では、図5(c)に示すように、ブレードなどを用いて粘着フィルム4を所定のパターンでプリカットし、接着層3の縁よりも外側に張り出して保護フィルム2の一面2aに接する張出領域Pを粘着フィルム4に形成する。ここでは、ラベル部11の周囲の所定部分を保護フィルム2から除去し、ラベル部11を囲う保護部12,12(図1参照)を合わせて保護フィルム2の一面2aに形成する。
【0038】
図5(a)~図5(c)の場合とは異なり、積層工程、形成工程、切断工程の順に各工程を実施してもよい。この場合、まず、接着層3と粘着層6とが向き合うように、保護フィルム2に対して粘着フィルム4を積層する。次に、粘着層6における延在方向Dの一側の縁部6c及び他側の縁部6cとなる切欠状の領域に紫外線を照射し、当該切欠状の領域における粘着層6を硬化或いは半硬化させて低粘着部分6Bを形成する。その後、粘着フィルム4を所定のパターンでプリカットし、接着層3の縁よりも外側に張り出して保護フィルム2の一面2aに接する張出領域Pを粘着フィルム4に形成する。
【0039】
また、図5(a)~図5(c)の場合とは異なり、積層工程、切断工程、形成工程の順に各工程を実施してもよい。この場合、この場合、まず、接着層3と粘着層6とが向き合うように、保護フィルム2に対して粘着フィルム4を積層する。次に、粘着フィルム4を所定のパターンでプリカットし、接着層3の縁よりも外側に張り出して保護フィルム2の一面2aに接する張出領域Pを粘着フィルム4に形成する。その後、粘着層6における延在方向Dの一側の縁部6c及び他側の縁部6cとなる切欠状の領域に紫外線を照射し、当該切欠状の領域における粘着層6を硬化或いは半硬化させて低粘着部分6Bを形成する。
【0040】
一方、保護フィルム2に離型層2Aを形成することによって低粘着部分6Bを構成する場合、形成工程において、図6(a)に示すように、低粘着部分6Bの配置領域に対応して保護フィルム2の一面2aに離型層2Aを予め形成する。次に、図6(b)に示すように、接着層3と粘着層6とが向き合うように、離型層2Aを形成した保護フィルム2に対して粘着フィルム4を積層する。これにより、粘着層6の本体部分6Aに比べて保護フィルム2に対する粘着力が小さい低粘着部分6Bを粘着層6に形成する。
【0041】
その後、図6(c)に示すように、切断工程において、ブレートなどを用いて粘着フィルム4を所定のパターンでプリカットし、接着層3の縁よりも外側に張り出して保護フィルム2の一面2aに接する張出領域Pを粘着フィルム4に形成する。その後、図5(c)の場合と同様に、ラベル部11の周囲の所定部分を保護フィルム2から除去し、ラベル部11を囲う保護部12,12(図1参照)を合わせて保護フィルム2の一面2aに形成する。
【0042】
続いて、上述した積層フィルム1を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、搬送工程と、剥離工程と、貼付工程とを含んで構成されている。搬送工程では、積層フィルム1を半導体ウェハW及びリングフレームRに向けて搬送する。剥離工程では、剥離プレート25を用いて保護フィルム2を接着層3及び粘着フィルム4に対して折り返し、接着層3及び粘着フィルム4から保護フィルム2を剥離する。貼付工程では、接着層3及び粘着フィルム4を半導体ウェハW及びリングフレームRに貼り付ける。
【0044】
上記の各工程は、例えば図7に示す貼付装置21を用いて実施される。図7の例では、貼付装置21は、ステージ22と、複数の搬送ローラ23と、検出部24と、剥離プレート25と、エア供給部26と、押圧ローラ27とを含んで構成されている。
【0045】
ステージ22には、貼付対象である半導体ウェハW及びリングフレームRが載置される。搬送ローラ23は、積層フィルム1を繰り出す繰出ローラ及びラベル部11を使用した後の保護フィルム2を巻き取る巻取ローラとの間で、積層フィルム1を一定の速度で搬送する。搬送中の積層フィルム1には、複数の搬送ローラ23によって所定の張力が付与される。
【0046】
検出部24は、例えば検出光を出力する発光部と、積層フィルム1を透過又は反射した検出光が入力される受光部とを有している。検出部24は、保護フィルム2を透過又は反射した場合の検出光の受光強度と、ラベル部11を透過又は反射した場合の検出光の受光強度との差分に基づいて、搬送される積層フィルム1のラベル部11の先端を検出する。ラベル部11の先端を検出した結果を示す情報は、エア供給部26の動作制御、押圧ローラ27の動作制御などに用いられる。
【0047】
剥離プレート25は、保護フィルム2を接着層3及び粘着フィルム4から剥離する。剥離プレート25は、積層フィルム1の搬送経路において、ステージ22の近傍に配置されている。積層フィルム1のうち、保護フィルム2のみが剥離プレート25の先端形状に沿って折り返され、搬送ローラ23によって巻取ローラに搬送される。接着層3及び粘着フィルム4は、剥離プレート25で折り返されず、剥離される保護フィルム2に対して僅かに反った状態で押圧ローラ27に向かって進行する。
【0048】
エア供給部26は、剥離をアシストするエア28を供給する。エア28は、例えばエア供給管に設けた一又は複数の供給孔から狙い位置に向かって供給される。エア28の狙い位置は、例えば接着層3及び粘着フィルム4に対する保護フィルム2の折返位置Sに設定される。エア28の狙い位置は、折返位置Sよりも接着層3及び粘着フィルム4の進行方向の前方(押圧ローラ27側)となる位置に設定されてもよい。
【0049】
押圧ローラ27は、保護フィルム2を剥離した後の接着層3及び粘着フィルム4を半導体ウェハW及びリングフレームRに向かって押圧する。これにより、リングフレームRには、粘着フィルム4が貼り付けられる。また、リングフレームR内に位置する半導体ウェハWには、粘着フィルム4に支持された状態で接着層3が貼り付けられる。
【0050】
以上説明したように、積層フィルム1では、粘着層6の周縁部6aの一部において、保護フィルム2の延在方向Dの先端となる縁部6cを含むように低粘着部分6Bが設けられている。低粘着部分6Bは、剥離プレート25を用いて保護フィルム2を接着層3及び粘着フィルム4に対して折り返す際に、保護フィルム2の剥離起点となる。したがって、基材フィルム7が薄い場合であっても、保護フィルム2の剥離不良の発生を抑制できる。また、積層フィルム1では、保護フィルム2の幅方向Bについて見た場合に、低粘着部分6Bが本体部分6Aによって挟まれている。これにより、低粘着部分6Bが張出領域Pにおいて過剰な面積を占めることが抑制され、積層フィルム1の本来のフィルム機能を維持できる。
【0051】
本実施形態では、低粘着部分6Bは、粘着層6の縁部6cと、当該縁部6cから保護フィルム2の延在方向Dに延びる一対の辺6d,6dと、一対の辺6d,6dにおける粘着層6の縁部6cと反対側の端部同士を結ぶ幅方向Bの辺6eとによって画成される切欠状の領域に設けられている。このように、低粘着部分6Bを切欠状の領域とすることで、低粘着部分6Bが張出領域Pにおいて過剰な面積を占めることがより確実に抑制され、積層フィルム1の本来のフィルム機能を一層十分に維持できる。
【0052】
本実施形態では、低粘着部分6Bが設けられる切欠状の領域において、延在方向Dに延びる一対の辺6d,6dの長さL1は、幅方向Bの辺6eの長さL2よりも小さくなっている。このような構成によれば、低粘着部分6Bが粘着層6の中心側に延びる長さを抑制できる。したがって、積層フィルム1の粘着フィルム4をリングフレームRへの貼り付けに用いる場合に、低粘着部分6BがリングフレームRへの貼付領域よりも内側の半導体ウェハWの貼付領域に重なることを回避できる。
【0053】
本実施形態では、低粘着部分6Bは、張出領域Pにおいて、保護フィルム2の延在方向Dの一側の縁部6c及び他側の縁部6cにそれぞれ設けられている。この場合、保護フィルム2の延在方向Dの一側及び他側のいずれの方向からでも積層フィルム1を使用することができる。
【0054】
本実施形態では、低粘着部分6Bは、粘着層6を構成する樹脂組成物の硬化物又は半硬化物によって構成されている。また、別例では、低粘着部分6Bは、当該低粘着部分6Bの配置領域に対応して保護フィルム2に離型層2Aを形成することによって構成されている。このような手法によれば、低粘着部分6Bを簡便に設けることができる。
【0055】
本実施形態に係る積層フィルム1の製造方法によれば、製造された積層フィルム1において、上記作用効果が奏される。また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、上述した積層フィルム1を用いることで、上記作用効果が奏される。本実施形態では、接着層3及び粘着フィルム4に対する保護フィルム2の折返位置Sに剥離をアシストするエア28を供給している。エア28の供給により、接着層3及び粘着フィルム4が保護フィルム2から一層反り易くなり、保護フィルム2の剥離不良の発生をより確実に抑制できる。
【0056】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、半導体ウェハW及びリングフレームRへの貼り付けに用いる積層フィルム1の粘着フィルム4の張出領域Pにおいて、積層フィルム1の搬送方向の先端に対応するように、粘着層6の本体部分に比べて保護フィルム2に対する粘着力が小さい低粘着部分6Bを位置させている。低粘着部分6Bが剥離プレート25を用いて保護フィルム2を接着層3及び粘着フィルム4に対して折り返す際の剥離起点となることで、基材フィルム7が薄い場合であっても、保護フィルム2の剥離不良の発生を抑制できる。また、この半導体装置の製造方法では、積層フィルム1を保護フィルム2の幅方向Bについて見た場合に、低粘着部分6Bが本体部分6Aによって挟まれている。これにより、低粘着部分6Bが張出領域Pにおいて過剰な面積を占めることが抑制され、リングフレームRに対する粘着フィルム4の貼付強度の低下を抑制できる。
【0057】
本実施形態では、剥離工程において、接着層3及び粘着フィルム4に対する保護フィルム2の折返位置Sに剥離をアシストするエア28を供給している。エア28の供給により、接着層3及び粘着フィルム4が保護フィルム2から反り易くなり、保護フィルム2の剥離不良の発生をより確実に抑制できる。
[実施例]
【0058】
以下、本開示の実施例について説明する。
[粘着フィルムの作製]
【0059】
スリーワンモータ、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLのフラスコに、酢酸エチル(溶剤)635質量部、2-エチルヘキシルアクリレート395質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート100質量部、メタクリル酸5質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を入れ、充分に均一になるまで内容物を撹拌した。その後、流量500mL/分にて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。脱気後、1時間かけて内容物を78℃まで昇温し、昇温後6時間重合させた。次に、スリーワンモータ、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLの加圧釜に反応溶液を移し、120℃、0.28MPaの条件にて4.5時間加温した後、室温まで冷却した。
【0060】
次に、酢酸エチルを490質量部加えて撹拌し、ウレタン化触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.10質量部添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(株式会社レゾナック社製、カレンズMOI(商品名))を105.3質量部加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。次に、酢酸エチルをさらに加え、アクリル系樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるように調整し、連鎖重合可能な官能基を有するアクリル系樹脂を含む溶液を得た。
【0061】
得られたアクリル系樹脂を含む溶液100質量部(固形分)に、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM RESINS B.V.社製、Omnirad184、「Omnirad」は登録商標)1.0質量部、光重合開始剤(B-2)フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM RESINS B.V.社製、Omnirad819、「Omnirad」は登録商標)0.2質量部と、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートLを2.0質量部(固形分)入れ、紫外線硬化型粘着剤のワニスを作成した。
【0062】
また、一面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(幅500mm、長さ500mm、厚さ38μm)を基材フィルムとして準備した。基材フィルムの離型処理が施された面に、アプリケータを用いて紫外線硬化型粘着剤のワニスを塗布した後、80℃で3分間乾燥した。これにより、基材フィルムと、当該基材フィルムの一面に形成された厚さ5μmの粘着層とからなる粘着フィルムを得た。
【0063】
さらに、一面にコロナ処理が施されたポリオレフィンフィルム(幅500mm、長さ500mm、厚さ30μm)をカバーフィルムとして準備した。コロナ処理が施された面と、上記粘着フィルムの粘着層とを室温にて貼り合わせた。これをゴムロールで押圧することで粘着層をカバーフィルムに転写した。その後、室温で3日間放置することでカバーフィルム付きの粘着フィルムを得た。
[接着層の作製]
【0064】
以下の成分を混合することで、接着層形成用のワニスを調製した。まず、以下の成分を含む混合物に対して、シクロヘキサノン(溶剤)を加えて撹拌混合した後、さらにビーズミルを用いて90分混練した。
・エポキシ樹脂(YDCN-700-10(商品名)、新日鉄住金化学株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:210、分子量:1200、軟化点:80℃):11.0質量部
・エポキシ樹脂(EXA-830CRP(商品名)、DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160、分子量:1800、軟化点:85℃):13.0質量部
・フェノール樹脂(ミレックスXLC-LL(商品名)、三井化学株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:175、吸水率:1.8%、350℃における加熱重量減少率:4%):18.7質量部
・シランカップリング剤(NUC A-189(商品名)株式会社NUC製、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン):0.1質量部
・シランカップリング剤(NUC A-1160(商品名)、日本ユニカー株式会社製、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン):0.2質量部
・フィラー(SC2050-HLG(商品名)、アドマテックス株式会社製、シリカ、平均粒径0.500μm):39質量部
【0065】
上記のようにして得られた混合物に以下の成分をさらに加えた後、撹拌混合及び真空脱気の工程を経て接着層形成用のワニスを得た。
・エポキシ基含有アクリル共重合体(HTR-860P-3(商品名)、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量:80万):16質量部
・硬化促進剤(キュアゾール2PZ-CN(商品名)、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、「キュアゾール」は登録商標)0.1質量部
【0066】
また、一面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を保護フィルムとして準備した。保護フィルムの離型処理が施された面に、アプリケータを用いて接着層形成用のワニスを塗布した後、140℃で5分間加熱乾燥した。これにより、保護フィルムと、当該保護フィルムの一面に形成された厚さ25μmの接着層(Bステージ状態)とからなるダイボンディングフィルムを得た。
[積層フィルムの作製]
【0067】
接着層を直径312mmの円形にプリカットした後、接着層の余剰部分を保護フィルム上から剥離した。次に、保護フィルム上の接着層に基材フィルムと粘着層とを張り合わせた後、粘着層及び基材フィルムを直径370mmの円形にプリカットした。その後、粘着層及び基材フィルムの余剰部分を保護フィルム上から剥離し、積層フィルムを得た。
[実施例及び比較例]
【0068】
実施例1では、粘着層の周縁部において、保護フィルムの延在方向の縁部を含む切欠状の領域に紫外線を照射し、粘着層に低粘着部分を形成した。保護フィルムの延在方向における低粘着部分の長さ(図4における長さL1に相当)は10mm、保護フィルムの幅方向における低粘着部分の長さ(図4の示す長さL2に相当)は30mmとした。実施例2では、紫外線の照射に代えて、低粘着部分の配置領域に対応する離型層を保護フィルムに形成することによって低粘着部分を形成し、それ以外は実施例1と同様とした。比較例では、低粘着部分を形成しない点を除いて実施例1と同様とした。
【0069】
実施例1,2に係る積層フィルムの粘着層の剥離強度は、本体部分において>0.45N/25mmであり、低粘着部分において<0.15N/25mmであった。比較例に係る積層フィルムの粘着層の剥離強度は、全ての部分で>0.45N/25mmであった。実施例1,2及び比較例に係る積層フィルムの粘着層の剥離強度は、SUS板(SUS420J2)に25mm幅の実施例1,2及び比較例に係る粘着フィルム片をそれぞれ貼り付け、常温下でSUS板に対して90°の角度で各粘着フィルム片を剥離することによって測定した。このときの剥離速度は、いずれも200mm/minとした。
[剥離工程の実施条件]
【0070】
図7に示した構成に準じた貼付装置を用いて剥離工程及び貼付工程を実施した。実施例1,2及び比較例でのサンプル数(剥離を実施するラベル部の数)は、いずれも10枚とした。保護フィルムの剥離にあたっては、剥離をアシストするエアの供給を行った。エアは、40mm程度の間隔をもって並ぶ直径1mm程度の供給孔から、接着層及び粘着フィルムに対する保護フィルムの折返位置に供給した。供給孔と折返位置との間隔は、およそ200mmとした。貼付工程には、フルオートウェハマウンタ(ディスコ社製DFM-2800)を用いた。貼付温度は70℃とし、貼付速度10mm/sの条件で、12インチウェハへの接着層の貼り付けを行った。
【0071】
図8は、試験結果を示す図である。図8に示すように、比較例では、接着層及び粘着フィルムから保護フィルムが剥離せず、接着層及び粘着フィルムが押圧ローラ側に向かわずに保護フィルムと共に巻取ローラ側に搬送された。一方、実施例1,2では、接着層及び粘着フィルムから保護フィルムが剥離し、接着層及び粘着フィルムが押圧ローラ側に搬送された。この結果から、本開示のように粘着層に低粘着部分を設ける構成が保護フィルムの剥離不良の抑制に寄与することが確認できた。
【0072】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、保護フィルム2の一面2aに複数のラベル部11が形成されているが、ラベル部11は単数であってもよい。ラベル部11を囲む保護部12,12は、省略してもよい。ラベル部11の平面形状は、円形状に限られず、楕円形状、長円形状、矩形状といった他の形状であってもよい。また、上記実施形態では、保護フィルム2の剥離にあたって、接着層3及び粘着フィルム4に対する保護フィルム2の折返位置Sにエア28を供給しているが、エア28の供給を省略してもよい。
【0073】
本開示の要旨は、以下の[1]~[9]に示すとおりである。
[1]長尺の保護フィルムと、前記保護フィルムの一面に設けられた接着層と、前記接着層に重なる粘着層及び前記粘着層に重なる基材フィルムによって構成された粘着フィルムと、を備え、前記粘着フィルムは、前記接着層の縁よりも外側に張り出して前記保護フィルムの一面に接する張出領域を有し、前記張出領域において、前記粘着層には、当該粘着層の本体部分に比べて前記保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分が設けられ、前記低粘着部分は、前記粘着層の周縁部の一部において、前記保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含み、且つ前記延在方向に直交する幅方向について見た場合に、前記低粘着部分が前記本体部分によって挟まれるように配置されている、積層フィルム。
[2]前記低粘着部分は、前記粘着層の縁部と、当該縁部から前記保護フィルムの延在方向に延びる一対の辺と、前記一対の辺における前記粘着層の縁部と反対側の端部同士を結ぶ前記幅方向の辺とによって画成される切欠状の領域に設けられている、[1]記載の積層フィルム。
[3]前記延在方向に延びる前記一対の辺の長さは、前記幅方向の辺の長さよりも小さくなっている、[2]記載の積層フィルム。
[4]前記低粘着部分は、前記張出領域において、前記保護フィルムの延在方向の一側の縁部及び他側の縁部にそれぞれ設けられている、[1]~[3]のいずれか記載の積層フィルム。
[5]前記低粘着部分は、前記粘着層を構成する樹脂組成物の硬化物又は半硬化物によって構成されている、[1]~[4]のいずれか記載の積層フィルム。
[6]前記低粘着部分は、当該低粘着部分の配置領域に対応して前記保護フィルムに離型層を形成することによって構成されている、[1]~[5]のいずれか記載の積層フィルム。
[7]一面側に接着層が設けられた長尺の保護フィルムに、粘着層及び粘着層に重なる基材フィルムを有する粘着フィルムを積層する積層工程と、前記粘着フィルムを所定のパターンでプリカットし、接着層の縁よりも外側に張り出して前記保護フィルムの一面に接する張出領域を前記粘着フィルムに形成する切断工程と、前記張出領域において、前記粘着層の本体部分に比べて前記保護フィルムに対する粘着力が小さい低粘着部分を前記粘着層に形成する形成工程と、を備え、前記形成工程では、前記粘着層の周縁部の一部において、前記保護フィルムの延在方向の先端となる縁部を含み、且つ前記延在方向に直交する幅方向について見た場合に、前記低粘着部分が前記本体部分によって挟まれるように前記粘着層を形成する、積層フィルムの製造方法。
[8][1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルムを半導体ウェハ及びリングフレームに向けて搬送する搬送工程と、剥離プレートを用いて前記保護フィルムを前記接着層及び前記粘着フィルムに対して折り返し、前記接着層及び前記粘着フィルムから前記保護フィルムを剥離する剥離工程と、前記接着層及び前記粘着フィルムを前記半導体ウェハ及び前記リングフレームに貼り付ける貼付工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
[9]前記剥離工程において、前記接着層及び前記粘着フィルムに対する前記保護フィルムの折返位置に剥離をアシストするエアを供給する、[8]記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
1…積層フィルム、2…保護フィルム、2a…一面、3…接着層、4…粘着フィルム、6…粘着層、6A…本体部分、6B…低粘着部分、6a…周縁部、6c…縁部、6d…延在方向の辺、6e…幅方向の辺、7…基材フィルム、28…エア、D…延在方向、P…張出領域、S…折返位置、R…リングフレーム、W…半導体ウェハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8