(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150964
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20241017BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01D5/20 A
G01B7/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064039
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA08
2F063BB03
2F063BC04
2F063BD15
2F063CA09
2F063CA29
2F063DA01
2F063DA05
2F063DB04
2F063DC08
2F063DD02
2F063GA03
2F077AA25
2F077AA41
2F077CC02
2F077FF02
2F077FF12
2F077JJ03
2F077JJ06
2F077JJ21
(57)【要約】
【課題】高い精度でラックシャフトの位置を検出することが可能な位置検出装置を提供する。
【解決手段】軸方向の一部にピニオンギヤ151と噛み合うラック歯部130を有するラックシャフト13の位置を検出するストロークセンサ1は、ラックシャフト13の外周に配置されたコイル2と、コイル2のインダクタンスに基づいてラックシャフト13の位置を演算する演算部4とを備える。コイル2は、ラック歯部130の少なくとも一部を囲んで配置され、ラックシャフト13の位置に応じてインダクタンスが変化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一部にピニオンギヤと噛み合うラック歯部を有するラックシャフトの位置を検出する位置検出装置であって、
前記ラックシャフトの外周に配置されたコイルと、前記コイルのインダクタンスに基づいて前記ラックシャフトの位置を演算する演算部とを備え、
前記コイルは、前記ラック歯部の少なくとも一部を囲んで配置され、前記ラックシャフトの位置に応じてインダクタンスが変化する、
位置検出装置。
【請求項2】
前記コイルは、その中心軸線が前記ラック歯部における複数のラック歯の歯筋方向に対して垂直になるように配置され、
前記ラックシャフトの軸方向における前記コイルの長さが、前記ラックシャフトの軸方向における前記複数のラック歯のピッチよりも短い、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記コイルは、前記ラック歯部の軸方向一端部の外周を囲むように配置された筒状であり、前記コイルの内側における前記ラックシャフトの体積の変化に応じてインダクタンスが変化する、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記ピニオンギヤを回転駆動する電動モータの回転角と前記コイルのインダクタンスとに基づいて前記ラックシャフトの位置を演算する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックシャフトの位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリング装置におけるラックシャフトの位置を検出するための装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の検出ユニットは、電動パワーステアリング装置のラックシャフトの軸方向の位置を検出するものであり、直流電源と、永久磁石と、永久磁石とラックシャフトとの間に配置された第1乃至第4の磁気抵抗素子からなる素子群と、ラックシャフトの位置を演算する演算部とを備えている。素子群は、第1及び第2の磁気抵抗素が直列接続された直列回路と、第3及び第4の磁気抵抗素が直列接続された直列回路とが並列に接続され、ブリッジ回路を構成している。演算部には、第1の磁気抵抗素子と第2の磁気抵抗素子との間に接続された第1端子の電位、及び第3の磁気抵抗素子と第4の磁気抵抗素子との間に接続された第2端子の電位が入力される。ラックシャフトにおける素子群との対向面には、ラックシャフトの軸方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝が形成されている。
【0004】
上記のように構成された検出ユニットにおいて、ラックシャフトに噛み合うピニオンギヤシャフトの回転によってラックシャフトが軸方向に移動して第1乃至第4の磁気抵抗素子と複数の溝との相対位置が変化すると、第1乃至第4の磁気抵抗素子の電気抵抗のバランスが変化して、第1端子及び第2端子の電位が変化する。演算部は、この電位の変化に基づいてラックシャフトの位置を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された検出ユニットでは、例えば車両の走行に伴う振動等によってラックシャフトが車両前後方向に動いたり中心軸線回りに回動したりすると、第1乃至第4の磁気抵抗素子と複数の溝との相対位置が変化し、ラックシャフトの検出位置に誤差が発生してしまう。そこで、本発明は、高い精度でラックシャフトの位置を検出することが可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、軸方向の一部にピニオンギヤと噛み合うラック歯部を有するラックシャフトの位置を検出する位置検出装置であって、前記ラックシャフトの外周に配置されたコイルと、前記コイルのインダクタンスに基づいて前記ラックシャフトの位置を演算する演算部とを備え、前記コイルは、前記ラック歯部の少なくとも一部を囲んで配置され、前記ラックシャフトの位置に応じてインダクタンスが変化する、位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る位置検出装置によれば、高い精度でラックシャフトの位置を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置としてのストロークセンサを備えたステアバイワイヤ式のステアリング装置が搭載された車両の模式図である。
【
図2】ラックシャフトの一部及びコイルを示す斜視図である。
【
図3】複数のラック歯の歯筋及びラックシャフトの軸方向に対して垂直な方向から見たラックシャフト及びコイルを示す構成図である。
【
図4】
図3のA-A線におけるラックシャフトの断面を、コイル、ハウジング、及び保持部材と共に示す断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、複数のラック歯の歯筋方向から見たラック歯部を、中心軸線に沿った断面におけるコイルと共に示す説明図である。
【
図6】(a)は、ラックシャフトの位置とコイルのインダクタンスとの関係の一例を示すグラフである。(b)は、ラックシャフトの位置とコイルのインダクタンスとの関係の一例を示すグラフである。
【
図7】第2の実施の形態のコイル及びラックシャフトの一部を示す斜視図である。
【
図8】複数のラック歯の歯筋及びラックシャフトの軸方向に対して垂直な方向から見たラックシャフト及びコイルを示す構成図である。
【
図9】ラックシャフトの位置とコイルのインダクタンスとの関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置としてのストロークセンサ1を備えたステアバイワイヤ式のステアリング装置10が搭載された車両の模式図である。この
図1では、ステアリング装置10を車両前後方向の後方側から見た状態を示しており、図面右側が車幅方向の右側にあたり、図面左側が車幅方向の左側にあたる。
【0011】
図1に示すように、ステアリング装置10は、ストロークセンサ1と、左右の転舵輪11(前輪)にそれぞれ連結された左右のタイロッド12と、軸方向の一部にラック歯部130を有するラックシャフト13と、ラックシャフト13を収容する筒状のハウジング14と、ラックシャフト13のラック歯部130に噛み合わされたピニオンギヤ151を有するウォーム減速機構15と、ウォーム減速機構15を介してラックシャフト13に車幅方向の移動力を付与する電動モータ16と、運転者が操舵操作するステアリングホイール17と、ステアリングホイール17の操舵角を検出する操舵角センサ18と、操舵角センサ18によって検出された操舵角に基づいて電動モータ16を制御する操舵制御装置19とを備えている。
【0012】
図1では、ハウジング14を仮想線で示している。ラックシャフト13は、ハウジング14の両端部に取り付けられた一対のラックブッシュ141に支持され、ハウジング14に対して軸方向に移動可能である。ラックシャフト13は、例えば炭素鋼等の鋼材からなるが、磁気特性として低い保磁力と高い透磁率を持つ軟磁性金属であれば、ラックシャフト13の材料として好適に用いることができる。ハウジング14は、例えばダイキャスト成形された筒状のアルミニウム合金からなる。ラックシャフト13の両端部には、ボールジョイントソケット121がそれぞれ取り付けられており、左右のタイロッド12がボールジョイントソケット121を介してラックシャフト13に対して揺動可能に連結されている。ラックシャフト13が軸方向に移動すると、左右の転舵輪11が転舵される。
【0013】
ストロークセンサ1は、ラックシャフト13の軸方向の位置を検出し、検出した位置の情報を操舵制御装置19に出力する。操舵制御装置19は、ストロークセンサ1によって検出されたラックシャフト13の位置が操舵角センサ18によって検出されたステアリングホイール17の操舵角に応じた位置となるように、電動モータ16を制御する。
【0014】
ウォーム減速機構15は、ウォームホイール152及びウォームギヤ153を有し、ウォームホイール152にピニオンギヤ151が固定されている。ウォームギヤ153は、電動モータ16のモータシャフト160に固定されている。電動モータ16は、操舵制御装置19から供給されるモータ電流によってトルクを発生し、ウォームギヤ153を介してウォームホイール152及びピニオンギヤ151を回転駆動する。電動モータ16が回転すると、ピニオンギヤ151がモータシャフト160よりも遅い回転速度で回転し、ラックシャフト13が軸方向に移動する。
【0015】
電動モータ16は、固定子161及び回転子162を有し、回転子162が固定子161に対してモータシャフト160と一体に回転する。固定子161に対する回転子162の回転角は、回転角センサ163によって検出される。回転角センサ163は、回転子162の回転角を1回転(0°以上360°未満)の範囲で検出可能なレゾルバである。回転角センサ163の検出結果を示す信号は、操舵制御装置19に出力される。
【0016】
ラックシャフト13は、転舵輪11の転舵角がゼロである場合の中立位置から所定の範囲で車幅方向の右側及び左側に移動可能である。
図1では、ステアリングホイール17が左右の一方の最大舵角から他方の最大舵角まで操舵されたときのラックシャフト13の最大移動距離に相当するストローク範囲Rを両矢印で示している。ストロークセンサ1は、ストローク範囲Rの全体にわたり、ハウジング14に対するラックシャフト13の絶対位置を検出可能である。ラック歯部130は、ラックシャフト13の軸方向における長さがストローク範囲Rよりもやや長く形成されている。
【0017】
ストロークセンサ1は、ラック歯部130の少なくとも一部を囲んでラックシャフト13の外周に配置されたコイル2と、コイル2に交流電流を供給する電源部3と、コイル2のインダクタンスに基づいてラックシャフト13の位置を演算する演算部4とを備えている。電源部3は、例えば1MHzから10MHzの交流電流をコイル2に供給する。演算部4は、例えばコイル2に供給される電流及びコイル2に印可される電圧の情報を電源部3から取得し、これらの電流及び電圧の関係に基づいてコイル2のインダクタンスを演算によって求める。
【0018】
図2は、ラックシャフト13の一部及びコイル2を示す斜視図である。ラックシャフト13は、ラック歯部130と、ラック歯部130の軸方向一方側及び軸方向他方側に設けられた断面円形状の円柱部131,132とを有している。ラック歯部130は、円柱部131,132と同径に形成された断面円形状の棒状素材の一部を切削することにより形成される。ラックシャフト13の軸方向に垂直な断面におけるラック歯部130の断面積は、円柱部131,132の断面積よりも小さい。
【0019】
ラック歯部130には、複数のラック歯130aが設けられており、複数のラック歯130aがラックシャフト13の軸方向に沿って等間隔に並んでいる。それぞれのラック歯130aは、歯筋がラックシャフト13の軸方向に対して傾斜している。複数のラック歯130aの間には、歯溝部130bが形成されている。
図2に示す例では、ラック歯部130におけるラック歯130aの歯数が30である。
【0020】
図3は、複数のラック歯130aの歯筋及びラックシャフト13の軸方向に対して垂直な方向から見たラックシャフト13及びコイル2を示す構成図である。
図3では、コイル2の近傍の二つのラック歯130aの歯筋線130Lを一点鎖線で示し、コイル2の中心軸線CLを二点鎖線で示している。コイル2は、エナメル線等の導線を円環状に巻き回して形成されたリング状であり、中心軸線CLがラック歯部130におけるラック歯130aの歯筋方向に対して垂直になるように配置されている。また、コイル2は、ラックシャフト13の軸方向における長さL
1が、ラックシャフト13の軸方向における複数のラック歯130aのピッチよりも短く形成されている。
図3では、複数のラック歯130aのピッチをPで示している。
【0021】
図4は、ラックシャフト13の軸方向に対して垂直な
図3のA-A線におけるラックシャフト13の断面を、コイル2、ハウジング14、及びコイル2をハウジング14に対して保持する保持部材5と共に示す断面図である。保持部材5は、樹脂等の非磁性体からなり、円筒状に形成され、その外周面5aがハウジング14の内面14aに例えば接着によって固定されている。コイル2は、保持部材5の内周面5bに例えば接着によって固定されている。この断面におけるコイル2の中心点CPの位置は、ラックシャフト13における円柱部131,132の中心線13Lの位置と一致している。
【0022】
図5(a)及び(b)は、複数のラック歯130aの歯筋方向から見たラック歯部130を、中心軸線CLに沿った断面におけるコイル2と共に示す説明図である。
図5(a)は、コイル2の内側にラック歯130aが位置している状態を示し、
図5(b)は、コイル2の内側に歯溝部130bが位置している状態を示している。コイル2の内側にあたる部分のラックシャフト13の体積は、コイル2の内側にラック歯130aが位置しているときに大きく、コイル2の内側に歯溝部130bが位置しているときに小さくなる。これにより、コイル2のリアクタンスは、コイル2の内側にラック歯130aが位置しているときと、コイル2の内側に歯溝部130bが位置しているときとで変化する。つまり、コイル2のリアクタンスがラックシャフト13の位置に応じて変化する。本実施の形態では、ラックシャフト13の材質として比透磁率の低い炭素鋼を用いている。そのため、コイル2のリアクタンスは、渦電流の影響により、コイル2の内側にラック歯130aが位置しているときに小さく、コイル2の内側に歯溝部130bが位置しているときに大きくなる。
【0023】
図6(a)は、ラックシャフト13の位置とコイル2のインダクタンスとの関係の一例を示すグラフである。
図6(b)は、ラックシャフト13の位置と電動モータ16の回転角との関係の一例を示すグラフである。
図6(a)及び(b)のグラフの横軸は、転舵角がゼロであるラックシャフト13の中立位置を0(mm)とし、その前後のラックシャフト13の位置を示している。この横軸では、ラックシャフト13が中立位置から軸方向一方側(例えば車両右側)に移動したときのラックシャフト13の位置を正とし、ラックシャフト13が中立位置から軸方向他方側(例えば車両左側)に移動したときのラックシャフト13の位置を負としている。
【0024】
電動モータ16は、ラックシャフト13が複数のラック歯130aの1ピッチ分移動する間に1回転(360°)を超えて回転する。ラックシャフト13が複数のラック歯130aの1ピッチ分移動する間の電動モータ16の回転角度をXとし、Xを360×n+α(°)で表したとき(nは整数、0<α<360)、α×1、α×2、α×3、・・・・α×m(mは、ストローク範囲Rの一方の移動端から他方の移動端まで移動する間にコイル2の内側に位置するラック歯130aの数)が何れも360の倍数とならないようにウォーム減速機構15の減速比が設定されている。
【0025】
演算部4は、回転角センサ163によって検出される電動モータ16の回転角とコイル2のインダクタンスとに基づいてラックシャフト13の位置を演算する。ウォーム減速機構15の減速比が上記のように設定されていることにより、演算部4は、ストローク範囲Rの全体にわたってラックシャフト13の絶対位置を検出可能である。つまり、コイル2のインダクタンスだけでは、ラック歯130aの1ピッチ分の範囲内ではラックシャフト13の位置を検出し得るものの、コイル2の内側に位置しているのが複数のラック歯130a又は複数の歯溝部130bの何れであるかが判別できないが、コイル2のインダクタンスと合わせて電動モータ16の回転角を参照することにより、この判別が可能となる。ラック歯130aの1ピッチの範囲内の各位置におけるコイル2のインダクタンスに対応する電動モータ16の回転角は、ストローク範囲R内における各ピッチごとに異なるためである。
【0026】
車両製造時には、ステアリング装置10の組み立て後に、例えば転舵輪11の転舵角をゼロにした状態で、そのときの電動モータ16の回転角を操舵制御装置19に記憶させるキャリブレーション作業を行う。操舵制御装置19は、この回転角の記憶を基に、電動モータ16の回転角とコイル2のインダクタンスとに基づいてラックシャフト13の位置を演算する。あるいは、ステアリング装置10の組み立て時において、転舵輪11の転舵角及び電動モータ16の回転角を予め決められた値とした状態で、電動モータ16の組み付けを行うようにしてもよい。
【0027】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、車両の走行に伴う振動の影響を受けにくく、高い精度でラックシャフト13の位置を検出することが可能となる。より具体的には、回転角センサ163の分解能にウォーム減速機構15の減速比を乗じた積に対応する分解能で、ストローク範囲Rの全体にわたってラックシャフト13の位置を一意に検出できる。
【0028】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係る位置検出装置としてのストロークセンサは、第1の実施の形態と同様にラックシャフト13の位置を検出可能であるが、ラックシャフト13の軸方向におけるコイルの長さ及び配置位置、ならびに演算部4における演算方法が第1の実施の形態とは異なる。
【0029】
図7は、ラックシャフト13の一部及び本実施の形態のコイル6を示す斜視図である。
図8は、複数のラック歯130aの歯筋及びラックシャフト13の軸方向に対して垂直な方向から見たラックシャフト13及びコイル6を示す構成図である。コイル6は、第1の実施の形態に係るコイル2と同様、保持部材5によってハウジング14内に保持される。
【0030】
コイル6は、ラック歯部130の軸方向一端部130cの外周を囲むように配置された筒状である。本実施の形態では、ラック歯部130における車両左側の軸方向の端部130cの外周を囲むようにコイル6が配置されているが、ラック歯部130における車両右側の軸方向の端部の外周を囲むようにコイル6を配置してもよい。ラックシャフト13の軸方向におけるコイル6の長さL2は、ラックシャフト13の軸方向におけるストローク範囲Rの長さと同等もしくはストローク範囲Rの長さよりも長く、ラックシャフト13が中立位置にあるとき、コイル6の長さ方向の中央部にラック歯部130の軸方向一端部130cが位置するようにコイル6が配置される。
【0031】
コイル6には、第1の実施の形態と同様に電源部3から交流電流が供給される。コイル6のインダクタンスは、コイル6の内側におけるラックシャフト13の体積の変化に応じて変化する。コイル6の内側におけるラックシャフト13の体積は、コイル6の内側におけるラック歯部130の長さの割合が減少して円柱部132の長さの割合が増加するほど大きくなる。演算部4は、コイル6のインダクタンスに基づいてラックシャフト13の位置を演算する。
【0032】
図9は、ラックシャフト13の軸方向の位置を横軸とし、ラックシャフト13の位置とコイル6のインダクタンスとの関係の一例を示すグラフである。本実施の形態では、ラックシャフト13がストローク範囲Rの一方の移動端P
1(例えば車両左側の移動端)から他方の移動端P
2(例えば車両右側の移動端)まで移動する間にコイル6のインダクタンスが単調に増加する。これにより、演算部4は、コイル6のインダクタンスに基づいてラックシャフト13の位置を演算することができる。
【0033】
また、演算部4は、回転角センサ163によって検出される電動モータ16の回転角とコイル6のインダクタンスとに基づいてラックシャフト13の位置を演算するようにしてもよい。この場合、ラックシャフト13がストローク範囲Rの一方の移動端から他方の移動端まで移動する間に電動モータ16が複数回にわたって回転するが、コイル6のインダクタンスによって電動モータ16が複数回の回転のうち何れの回転域にあるかが判別できるので、この判別結果と電動モータ16の回転角によってラックシャフト13の絶対位置を演算することができる。
【0034】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様、高い精度でラックシャフト13の位置を検出することが可能となる。
【0035】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、第1及び第2の実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を第1及び第2の実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0036】
[1]軸方向の一部にピニオンギヤ(151)と噛み合うラック歯部(130)を有するラックシャフト(13)の位置を検出する位置検出装置(ストロークセンサ1)であって、前記ラックシャフト(13)の外周に配置されたコイル(2、6)と、前記コイル(2,6)のインダクタンスに基づいて前記ラックシャフト(13)の位置を演算する演算部(4)とを備え、前記コイル(2、6)は、前記ラック歯部(130)の少なくとも一部を囲んで配置され、前記ラックシャフト(13)の位置に応じてインダクタンスが変化する、位置検出装置(1)。
【0037】
[2]前記コイル(2)は、その中心軸線(CL)が前記ラック歯部(130)における複数のラック歯(130a)の歯筋方向に対して垂直になるように配置され、前記ラックシャフト(13)の軸方向における前記コイル(2)の長さが、前記ラックシャフト(13)の軸方向における前記複数のラック歯(130a)のピッチ(P)よりも短い、上記[1]に記載の位置検出装置(1)。
【0038】
[3]前記コイル(6)は、前記ラック歯部(130)の軸方向一端部の外周を囲むように配置された筒状であり、前記コイル(6)の内側における前記ラックシャフト(13)の体積の変化に応じてインダクタンスが変化する、上記[1]に記載の位置検出装置(1)。
【0039】
[4]前記演算部(4)は、前記ピニオンギヤ(151)を回転駆動する電動モータ(16)の回転角と前記コイル(2、6)のインダクタンスとに基づいて前記ラックシャフト(13)の位置を演算する、上記[1]乃至[3]の何れか一つに記載の位置検出装置(1)。
【0040】
以上、本発明の第1及び第2の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0041】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。例えば、第1の実施の形態では、演算部4が回転角センサ163によって検出される電動モータ16の回転角とコイル2のインダクタンスとに基づいてラックシャフト13の位置を演算する場合について説明したが、例えば操舵角センサ18によって検出される操舵角が実質的にゼロで車両が直進走行している際のラックシャフト13の位置を中立位置とし、この中立位置からの変位量をコイル2のインダクタンスに基づいて求めることにより、ストローク範囲Rにおけるラックシャフト13の絶対位置を検出してもよい。
【0042】
また、第1の実施の形態では、コイル2に供給される電流及びコイル2に印可される電圧の関係に基づいてコイル2のインダクタンスを演算によって求める場合について説明したが、これに限らず、コイル2を含む共振回路を構成し、その共振周波数に基づいてコイル2のインダクタンスを求めてもよい。第2の実施の形態についても同様である。
【符号の説明】
【0043】
1…ストロークセンサ(位置検出装置) 13…ラックシャフト
130…ラック歯部 130a…ラック歯
151…ピニオンギヤ 16…電動モータ
2…コイル 4…演算部
6…コイル CL…中心軸線