(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150979
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物、及び帯電防止剤
(51)【国際特許分類】
C08L 75/08 20060101AFI20241017BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20241017BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20241017BHJP
C09K 3/16 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08L75/08
C08L101/12
C08G18/48
C09K3/16 101B
C09K3/16 102J
C09K3/16 108B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064062
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和香奈
(72)【発明者】
【氏名】山本 辰弥
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002AA00X
4J002BC10X
4J002BM00X
4J002CE00X
4J002CK04W
4J002DA016
4J002FD116
4J002FD11X
4J002GT00
4J002HA06
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC01
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC50
4J034DG05
4J034HA07
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA03
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
(57)【要約】
【課題】優れた導電性能を有する帯電防止剤を形成可能な導電性樹脂組成物、前記導電性樹脂組成物からなる帯電防止剤を提供する。
【解決手段】ウレタン樹脂(a1)及び水性媒体(a2)を含む水性ウレタン樹脂組成物(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有する導電性樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(a1)が、ポリエーテルポリオールを含むポリオール化合物(a1-1)、ポリイソシアネート化合物(a1-2)及び中和剤(a1-3)を必須原料とするものであり、前記ウレタン樹脂(a1)の酸価が20~60mgKOH/gの範囲であることを特徴とする導電性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(a1)及び水性媒体(a2)を含む水性ウレタン樹脂組成物(A)と、
導電性ポリマー(B)とを含有する導電性樹脂組成物であって、
前記ウレタン樹脂(a1)が、ポリエーテルポリオールを含むポリオール化合物(a1-1)、ポリイソシアネート化合物(a1-2)及び中和剤(a1-3)を必須原料とするものであり、
前記ウレタン樹脂(a1)の酸価が20~60mgKOH/gの範囲であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)が、脂環式ジイソシアネートを含むものである請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記中和剤(a3)が、アルカリ金属の水酸化物を含むものである請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(a1)が、更に、原料として、酸性ジオール化合物(a1-4)を含有するものである請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂(a1)が、更に、原料として、鎖伸長剤(a1-5)を含有するものである請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
前記導電性ポリマー(B)が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)、カーボンナノチューブ、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、イオン性液体からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
前記水性ウレタン樹脂組成物(A)と前記導電性ポリマー(B)との固形分あたりの質量割合[(A)/(B)]が、5/95~95/5の範囲である請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項記載の導電性樹脂組成物からなる帯電防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物、及び帯電防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電防止剤は、静電気の発生を抑制できることから、フィルムや半導体、電子部品の搬送用トレー、床などに広く使用されている。
【0003】
帯電防止剤としては、ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体と、導電性ポリマーとを含有し、前記重合体と前記導電性ポリマーとの質量比が、85/15~20/80である導電性組成物からなる帯電防止剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)が、導電性に関して、今後ますます高まる要求特性を満足するものではなく、昨今の市場要求に対し十分なものではなかった。
【0004】
そこで、優れた導電性を有する帯電防止剤を形成可能な材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた導電性能を有する帯電防止剤を形成可能な導電性樹脂組成物、前記導電性樹脂組成物からなる帯電防止剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のポリオール化合物を原料として用い、かつ特定範囲の酸価を有するウレタン樹脂を含む水性ウレタン樹脂組成物と、導電性ポリマーとを含有する導電性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ウレタン樹脂(a1)及び水性媒体(a2)を含む水性ウレタン樹脂組成物(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有する導電性樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(a1)が、ポリエーテルポリオールを含むポリオール化合物(a1-1)、ポリイソシアネート化合物(a1-2)及び中和剤(a1-3)を必須原料とするものであり、前記ウレタン樹脂(a1)の酸価が20~60mgKOH/gの範囲であることを特徴とする導電性樹脂組成物、及び前記導電性樹脂組成物からなる帯電防止剤に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性樹脂組成物は、優れた導電性を有することから、帯電防止剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電性樹脂組成物は、水性ウレタン樹脂組成物(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有するものであることを特徴とする。
【0011】
前記水性ウレタン樹脂組成物(A)としては、ウレタン樹脂(a1)及び水性媒体(a2)を含むものであり、前記ウレタン樹脂(a1)としては、ポリオール化合物(a1-1)、ポリイソシアネート化合物(a1-2)及び中和剤(a1-3)を必須原料とするとするものを用いる。
【0012】
前記ポリオール化合物(a1-1)としては、ポリエーテルポリオールを必須として用いる。
【0013】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたもの等が挙げられる。
【0014】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0015】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0016】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、1,000~3,000の範囲が好ましい。
【0017】
また前記ポリオール化合物(a1-1)としては、必要に応じて、前記ポリエーテルポリオール以外のその他のポリオール化合物を用いることもできる。
【0018】
前記その他のポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0019】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとをエステル化反応させて得られたもの等が挙げられる。
【0020】
前記多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル化物、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、セバシン酸、クロレンド酸、1,2,4-ブタン-トリカルボン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル化物などが挙げられる。これらの多価カルボン酸又はそのエステル化物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0021】
前記多価アルコールとしては、例えば、ベンゼンジメタノール、トルエンジメタノール、キシレンジメタノール等の芳香族ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロピレンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコールエチレングリコール等の脂肪族ポリオールなどが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0022】
前記ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば、開始剤にアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールと、多価カルボン酸とが反応したもの等が挙げられる。前記開始剤としては、上述の開始剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記アルキレンオキサイドとしては、上述のアルキレンオキサイドとして例示したものと同様のものを用いることができる。また、前記多価カルボン酸としては、上述の多価カルボン酸として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0023】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの、ホスゲンとビスフェノールAとを反応させて得られるもの等が挙げられる。前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ-ト等が挙げられ、前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリオール化合物(a1-1)の含有量としては、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(a1)の原料中に5~80質量%の範囲が好ましく、10~70質量%の範囲がより好ましい。
【0025】
前記ポリイソシアネート化合物(a1-2)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0026】
前記ポリイソシアネート化合物(a1-2)の含有量としては、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(a1)の原料中に10~60質量%の範囲が好ましく、20~50質量%の範囲がより好ましい。
【0027】
前記中和剤(a1-3)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、トリエチルアミン、アンモニア、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアミン化合物などが挙げられる。これらの中和剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0028】
前記中和剤(a1-3)の使用量としては、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料中に0.5~15質量%の範囲が好ましく、1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0029】
前記ウレタン樹脂(a1)としては、必要に応じて、酸性ジオール化合物(a1-4)を用いることもできる。
【0030】
前記酸性ジオール化合物(a1-4)としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸;N,N-ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの酸性ジオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0031】
前記酸性ジオール化合物(a1-4)の使用量としては、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料中に1~20質量%の範囲が好ましく、3~15質量%の範囲がより好ましい。
【0032】
また、前記ウレタン樹脂(a1)としては、必要に応じて、鎖伸長剤(a1-5)を用いることもできる。
【0033】
前記鎖伸長剤(a1-5)としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン等の1個の1級アミノ基と1個の2級アミノ基を含有するジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類や、ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジド-プロピル-カルバジン酸エステル、セミカルバジッド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0034】
前記鎖伸長剤(a1-5)の使用量としては、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料中に0.1~10質量%の範囲が好ましく、1~5質量%の範囲がより好ましい。
【0035】
前記ウレタン樹脂(a1)の酸価は、20~60mgKOH/gの範囲であり、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、25~50mgKOH/gの範囲が好ましく、25~40mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0036】
前記ウレタン樹脂(a1)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、ポリオール化合物(a1-1)、ポリイソシアネート化合物(a1-2)、及び中和剤(a1-3)を含む反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。
【0037】
前記水性媒体(a2)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。これらの水性媒体は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0038】
前記水性ウレタン樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記ウレタン樹脂(a1)と、前記水性媒体(a2)とを混合して得る方法等が挙げられる。
【0039】
前記ウレタン樹脂(a1)と、前記水性媒体(a2)との混合の方法としては、例えば、撹拌翼を備えた反応釜;ニーダー、コンテイニアスニーダー、テーパーロール、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、万能混合機、プラストミル、ボデーダ型混練機等の混練機;ホモミキサー、スタティックミキサー、フィルミックス、エバラマイルダー、クレアミックス、ウルトラターラックス、キャビトロン、バイオミキサー等の回転式分散混合機;超音波式分散装置;インラインミキサー等の可動部がなく、流体自身の流れによって混合できる装置などを用いることにより行う方法等が挙げられる。
【0040】
前記ウレタン樹脂(a1)と、前記水性媒体(a2)との質量割合[(a1)/(a2)]は、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、50/50~80/20の範囲が好ましく、50/50~70/30の範囲がより好ましい。
【0041】
前記水性ウレタン樹脂組成物(A)は、必要に応じて、その他の添加剤を含有することもできる。
【0042】
前記その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、難燃剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0043】
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体等のノニオン性界面活性剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0044】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などが挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記増粘剤としては、例えば、会合型や酸系増粘剤等が挙げられる。
【0046】
前記ウレタン化触媒としては、例えば、有機スズ系、ビスマス系等が挙げられる。
【0047】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。
【0048】
前記難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤等が挙げられる。
【0049】
前記レベリング剤としては、例えば、シリコン系レベリング剤等が挙げられる。
【0050】
前記ブロッキング防止剤としては、例えば、アクリル系、セルロールエステル等が挙げられる。
【0051】
前記導電性ポリマー(B)としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、「PEDOT:PSS」と称することがある。)、カーボンナノチューブ、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、イオン性液体等が挙げられる。
【0052】
前記水性ウレタン樹脂組成物(A)と前記導電性ポリマー(B)との固形分あたりの質量割合[(A)/(B)]は、優れた導電性を有する導電性樹脂組成物が得られることから、5/95~95/5の範囲が好ましい。
【0053】
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記水性ウレタン樹脂組成物(A)と、前記導電性ポリマー(B)とを混合して得る方法等が挙げられる。
【0054】
前記水性ウレタン樹脂組成物(A)と、前記導電性ポリマー(B)との混合の方法としては、例えば、撹拌翼を備えた反応釜;ニーダー、コンテイニアスニーダー、テーパーロール、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、万能混合機、プラストミル、ボデーダ型混練機等の混練機;ホモミキサー、スタティックミキサー、フィルミックス、エバラマイルダー、クレアミックス、ウルトラターラックス、キャビトロン、バイオミキサー等の回転式分散混合機;超音波式分散装置;インラインミキサー等の可動部がなく、流体自身の流れによって混合できる装置などを用いることにより行う方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の導電性樹脂組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含有することもできる。
【0056】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、充填剤、老化防止剤、顔料、可塑剤、架橋剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
前記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0058】
前記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0059】
前記老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
【0060】
前記顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0061】
前記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0062】
前記架橋剤としては、例えば、メラミン系、オキサゾリン系、エポキシ系、アルコキシシラン系等の化合物が挙げられる。これらの架橋剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0063】
前記界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0064】
本発明の帯電防止剤は、前記導電性樹脂組成物からなるものである。
【実施例0065】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0066】
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、エチレングリコール15質量部、ネオペンチルグリコール25質量部、テレフタル酸25質量部、イソフタル酸25質量部、アジピン酸10質量部及びジブチル錫オキサイド0.1質量部を仕込み230℃で酸価が0.1以下になるまで重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(1)を得た。
【0067】
(合成例2:ポリエステルポリオール(2)の合成)
表1に示した配合にて、合成例1と同様にしてポリエステルポリオール(2)を得た。
【0068】
合成例1及び2で得られたポリエステルポリオール(1)及び(2)の組成を表1に示す。
【0069】
【0070】
(実施例1:水性ウレタン樹脂組成物(1)の調製)
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、表1に示した配合にて、ポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製「PTMG2000」;数平均分子量2000)61.5質量部、ジメチロールプロピオン酸7.3質量部、ネオペンチルグリコール2.1質量部を入れ、十分に撹拌させた。次いで、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)24.9質量部、触媒としてジブチルスズジラウリレート0.1質量部を加え、75℃で反応させた。反応後、MEKで固形分濃度が60%になるようMEKを入れ、30分撹拌させるとともに、40℃以下まで冷却し、ウレタン樹脂溶液を得た。次いで、得られたウレタン樹脂溶液に中和剤(1)として水酸化カリウム2.7質量部を加え酸基を中和させた。次いで強攪拌下でイオン交換水で固形分濃度が20%になるよう添加し、ウレタンを乳化後、鎖伸長剤(エチレンジアミン)1.5質量部を加えた。反応完結後、減圧蒸留によりMEKを留去し固形分濃度25%の水性ウレタン樹脂組成物(1)を得た。
【0071】
(実施例2~5:水性ウレタン樹脂組成物(2)~(5)の調製)
表2に示した配合にて、実施例1と同様にして水性ウレタン樹脂組成物(2)~(5)を得た。
【0072】
(比較例1~3:水性ウレタン樹脂組成物(R1)~(R3)の調製)
表2に示した配合にて、実施例1と同様にして水性ウレタン樹脂組成物(R1)~(R3)を得た。
【0073】
実施例1~5で得られた水性ウレタン樹脂組成物(1)~(5)及び比較例1~3で得た水性ウレタン樹脂組成物(R1)~(R3)の組成を表2に示す。
【0074】
【0075】
なお、表2中の「Excenol2020」は、AGC株式会社製「Excenol2020」を示す。
【0076】
表2中の「UH-200」は、UBE株式会社製「UH-200」を示す。
【0077】
(実施例6~10:導電性樹脂組成物の調製)
実施例1~5で得た水性ウレタン樹脂組成物それぞれ16.0質量部に対して、PEDOT:PSS(Aldrich社製、1.3wt% dispersion in H2O,conductive grade)147.7質量部、エチレングリコール20質量部、エタノール10質量部、界面活性剤(EVONIK社製「Surfynol440」)0.04質量部を加え、水性媒体であるイオン交換水6.26質量部により希釈し、十分攪拌することで導電性樹脂組成物(1)~(5)を得た。
【0078】
(比較例4~6:導電性樹脂組成物の調製)
比較例1~3で得た水性ウレタン樹脂組成物それぞれ用いた以外は、実施例6~10と同様にして導電性樹脂組成物(R1)~(R3)を得た。
【0079】
上記の実施例及び比較例で得られた導電性樹脂組成物(1)~(5)、及び(R1)~(R3)を用いて、下記の評価を行った。
【0080】
[導電性の評価方法]
本発明において、導電性は、表面抵抗値、延伸抵抗値及びヘイズの測定により評価した。
【0081】
[表面抵抗値の評価方法]
上記の実施例及び比較例で得た導電性樹脂組成物(1)~(5)及び(R1)~(R3)それぞれからなる帯電防止剤を用いて、PETフィルム(ルミラー125T60(東レ社製)にバーコーターNo.4で塗布し、120℃で1分間の熱処理を実施し、帯電防止剤が塗工されたフィルムを得た。帯電防止剤を塗工したフィルムを25℃50%RHM環境下で半日静置した後、表面抵抗値を測定し、以下の基準に従い評価した。
【0082】
A:表面抵抗値が、1010Ω/sq.未満であった。
B:表面抵抗値が、1010Ω/sq.以上10Ω13/sq.未満であった。
C:表面抵抗値が、1013Ω/sq.以上であった。
【0083】
[延伸抵抗値の評価方法]
上記の実施例及び比較例で得た導電性樹脂組成物(1)~(5)及び(R1)~(R3)それぞれ115質量部をA5サイズの型枠に流し込み、25℃環境下で24時間乾燥後、120℃で1分間の熱処理を行い皮膜を作成した。その後、皮膜を300%に延伸し、延伸前後の皮膜の表面抵抗値を測定し、下記式にて延伸抵抗値の変化を算出し、以下の基準に従い評価した。
【0084】
延伸抵抗値=延伸後の表面抵抗値/延伸前の表面抵抗値
【0085】
A:延伸抵抗値が、100未満であった。
B:延伸抵抗値が、100以上1000未満であった。
C:延伸抵抗値が、1000以上であった。
【0086】
[ヘイズの評価方法]
上記の実施例及び比較例で得た導電性樹脂組成物(1)~(5)及び(R1)~(R3)それぞれ115質量部をA5サイズの型枠に流し込み、25℃環境下で24時間乾燥後、120℃で1分間の熱処理を行い皮膜を作成した。前記皮膜を300%延伸した際のヘイズの有無を目視で観測し、以下の基準に従い評価した。
【0087】
A:全くヘイズが発生しなかった。
B:一部ヘイズが発生した。
C:全体的にヘイズが発生した。
【0088】
実施例6~10で得られた導電性樹脂組成物(1)~(5)及び比較例4~6で得た導電性樹脂組成物(R1)~(R3)の評価結果を表3に示す。
【0089】
【0090】
表3に示した実施例6~10は、本発明の導電性樹脂組成物の例である。これらの導電性樹脂組成物は、優れた導電性を有することが確認できた。
【0091】
一方、表3に示した比較例4は、ポリオール化合物として、ポリエーテルポリオールを用いないウレタン樹脂を用い、かつ、当該ウレタン樹脂の酸価が、20~60mgKOH/gの範囲外である導電性樹脂組成物の例である。この導電性樹脂組成物は、表面抵抗値、及び延伸抵抗値が著しく高く、皮膜全体にヘイズが発生したことから、導電性が劣ることが確認できた。
【0092】
比較例5及び6は、ポリオール化合物として、ポリエーテルポリオールを用いないウレタン樹脂を用いた導電性樹脂組成物の例である。この導電性樹脂組成物は、延伸抵抗値が著しく高く、導電性が劣ることが確認できた。