(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151044
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241017BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064154
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 泰介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 憲史
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大志
(72)【発明者】
【氏名】寺井 純一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB03
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC06
2C056EC24
2C056EC54
2C056FA13
2C056HA44
2C056HA46
2C056HA58
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】印刷中であっても、印刷および用紙の搬送動作を停止せずに、発生したノズル抜けを解消することができる、画像形成装置、画像形成方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、前記搬送部、前記ヘッドユニット、および前記画像検査装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出し、印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、
前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、
前記搬送部、前記ヘッドユニット、および前記画像検査装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出し、
印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記用紙を減速搬送しながら前記回復動作を行う、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御装置は、ユーザ側の設定乃至当該制御装置による設定に基づいて、前記回復動作を実施するか、または、前記回復動作を停止して通常のクリーニング動作へ移行するか、を判定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回復動作における損紙の推定量および印刷を止めている推定時間に基づいて、前記回復動作を実施するか、または、前記回復動作を停止して通常のクリーニング動作を実施するかを判定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヘッドユニットは、吐出不良領域または回復動作領域に予め設定されたマークを印刷する、請求項1から4のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、後加工機に対して、前記吐出不良領域および前記回復動作領域の位置ないしタイミングに関する信号を発する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記後加工機は、前記吐出不良領域および前記回復動作領域を切断する切断部を備える、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記後加工機は、前記吐出不良領域および前記回復動作領域を別格納または排除する機構を有する、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記吐出不良領域および前記回復動作領域に対応する回復動作部数を記録し、前記回復動作後、印刷ジョブの必要部数のうち、前記回復動作部数を除いた残りの印刷部数を補完して印刷動作させる、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項10】
用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、を制御する制御装置で実行される画像形成方法であって、
前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出する工程と、
印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う工程と、
を含む画像形成方法。
【請求項11】
用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、を制御する制御装置を、
前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出し、印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う作像処理部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラインプリンタ等の画像形成装置において、印刷中にノズル抜けが発生することがある。これに対して、印刷および用紙の搬送を停止して、ノズル抜けへのクリーニング動作を実施し、これらを解消させる技術が開発されている。特許文献1には、ノズル抜けを抑えることを目的として、インク滴を吐出させて、フラッシングラインを打つ構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、プリントヘッド(ヘッドユニットの一例)を有する画像形成装置では、印刷中にもノズル抜けを検出する技術があり、印刷した画像と画像データとを照らし合わせることで、ノズル抜けが発生したノズル位置を特定して補正する技術がある。しかし、当該技術は、あくまでも補正技術であり、補正量に限界があり、ノズル抜けを是正することができない場合がある。また、特許文献1記載の技術では、印刷中に発生したノズル抜けを検出し、その検出結果に基づいて、印刷中にノズル抜けを解消することは難しい。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷中であっても、印刷および用紙の搬送動作を停止せずに、発生したノズル抜けを解消することができる、画像形成装置、画像形成方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、前記搬送部、前記ヘッドユニット、および前記画像検査装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出し、印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させることができかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷中であっても、印刷および用紙の搬送動作を停止せずに、発生したノズル抜けを解消することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置における回復動作の流れの概略の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置における回復動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置の回復動作におけるインクの吐出パターンの一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置における回復動作における減速制御および吐出制御の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置の回復動作における乾燥制御の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、画像形成装置、画像形成方法、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。本実施の形態にかかる画像形成装置は、
図1に示すように、作像部101、コントローラ102、画像検査器103、搬送装置104、乾燥装置105、および後加工機106を有する。
【0010】
搬送装置104は、記録媒体の一例である用紙を搬送方向に搬送する搬送部の一例である。作像部101は、ヘッドユニット101aを有する。ここで、ヘッドユニット101aは、用紙の搬送経路上に並んで配置され、搬送装置104により搬送される用紙にインク(インク滴)を吐出するヘッドユニットの一例である。
【0011】
また、ヘッドユニット101aは、用紙における吐出不良領域または回復動作領域に対して、予め設定されたマーク(例えば、フラッシングライン)を印刷する。これにより、不要な印字領域にマーキングすることで、後加工機106または後工程で、不要な印字領域を取り除きやすくすることが可能となる。ここで、吐出不良領域は、画像形成装置のクリーニング動作時に、用紙において、予め設定されたマークを印刷する領域である。また、ここで、回復動作領域は、回復動作時に、用紙において、予め設定されたマークを印刷する領域である。
【0012】
また、ここで、回復動作は、印刷中および用紙の搬送動作中に行われ、ヘッドユニット101aからのインクの吐出不良を回復させる回復動作の一例である。具体的には、回復動作は、ヘッドユニット101aを乾燥させ、ヘッドユニット101aの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含む。
【0013】
画像検査器103は、作像部101により用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置の一例である。乾燥装置105は、作像部101により用紙に形成される画像を乾燥させる。
【0014】
コントローラ102は、搬送装置104、作像部101、および画像検査器103を制御する制御装置の一例である。具体的には、コントローラ102は、作像処理部102aおよび搬送処理部102bを有する。
【0015】
作像処理部102aは、画像検査器103によりスキャンした画像に基づいて、ヘッドユニット101aからのインクの吐出不良を検出する。また、コントローラ102は、印刷動作中および用紙の搬送動作中に、ヘッドユニット101aのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う。ここで、回復動作は、上述したように、ヘッドユニット101aを乾燥させ、ヘッドユニット101aの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含む。これにより、ヘッドユニット101aを印刷から離れさせることなく、ノズル抜けを解消することができるので、印刷中であっても、印刷および用紙の搬送動作を停止せずに、発生したノズル抜けを解消することができる。
【0016】
搬送処理部102bは、搬送装置104によって用紙を減速搬送しながら回復動作を行っても良い。これにより、回復動作に要する時間を稼ぎ、回復動作を実施する量および時間をより増やすことができ、ノズル抜け等からの回復力を高めることができる。
【0017】
また、作像処理部102aは、ユーザ側の設定乃至当該コントローラ102による設定に基づいて、回復動作を実施するか、または、回復動作を停止して通常のクリーニング動作へ移行するか、を判定する。これにより、回復動作では不十分と判断する場合、自動的に用紙の搬送動作を停止してクリーニング動作を実施することで、ユーザが操作する手間を削減できる。ここで、通常のクリーニング動作とは、ヘッドユニット101aからインクを吐出させてノズル抜けを解消するフラッシングを含む。
【0018】
また、搬送処理部102bは、回復動作における損紙の推定量および印刷を止めている推定時間に基づいて、回復動作を実施するか、または、回復動作を停止し通常のクリーニング動作を実施するかを自動で判定する。これにより、通常のクリーニング動作(用紙の搬送を止めた上でのクリーニング動作)を実施する時間と用紙の搬送を止めた場合に生じる損紙量を、回復動作によって必要とされる推定時間と損紙量が上回り、回復動作の効果が低くなる場合は、回復動作を途中でやめて、用紙の搬送を止める。その結果、通常のクリーニング動作に移行することを自動化でき、人員の手間と更なる損紙量を低減する。
【0019】
また、搬送処理部102bは、後加工機106に対して、吐出不良領域または回復動作領域の位置またはタイミングを示す信号を発しても良い。これにより、後加工機106で、自動的に不要な印字領域を取り除くことが可能になる。
【0020】
また、搬送処理部102bは、吐出不良領域および回復動作領域に対応する印刷部数(以下、回復動作部数という)を記録し、回復動作後、印刷ジョブの必要部数のうち、回復動作部数を除いた残りの印刷部数を補完して前記印刷ジョブを再開させても良い。これにより、例えば、10部の必要部数があったとして、5部目の回復動作で不要領域が発生して必要部数分に達しない印刷になってしまった場合、4部までは使える領域であると記録して、5~10部分は回復動作で回復後に通常印刷し、最終的には正しく10部印刷できるように補完動作が可能な制御を持つことで、再印刷の時間等を削減できる。
【0021】
後加工機106は、吐出不良領域および回復動作領域を切断する切断部を備えていても良い。これにより、不要な印字領域の場所に、ミシン目等をいれることで、後加工機または人の手による後工程で、不要な印字領域を取り除くことを容易にすることができる。
【0022】
また、後加工機106は、用紙のうち吐出不良領域および回復動作領域を別格納または排除する機構を備えていても良い。これにより、不要な印字領域をカットしたり別ルートに流したりすることで、不要な印字領域の用紙を不要箱に廃棄することで、製品領域と、不要な領域を分けることができる。この場合は、画像形成装置で除去処理を実施することで、後加工機106では除去処理をしなくても良い。
【0023】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置における回復動作の流れの概略の一例を説明するための図である。本実施の形態にかかる画像形成装置は、ノズル抜けが発生して画像の欠損が発生した場合、以下の処理を実施する。
(1)画像検査器103により、用紙等の記録媒体に形成(印刷)される画像をスキャンし、スキャンした画像データと欠損部分とに基づいて、ノズル抜けの位置を特定する。
(2)欠損しているノズル位置周辺またはヘッド単体のみ回復動作を実施する。
ここで、回復動作は、CL(クリーニング動作)と似た波形によるヘッドユニット101aのフラッシングによりノズル抜けを回復することが可能な長さを持つフラッシングラインをカラーバーとして印刷する動作であっても良い。また、回復動作は、以下の条件A,Bで実施しても良い。
条件A:ヘッドユニット101a(吐出部)が乾燥で乾くこと。その際、コントローラ102は、印刷条件または乾燥装置105を強乾燥モードに移行させることで、乾燥温度を制御して、ヘッドユニット101aを乾燥させても良い。
条件B:ヘッドユニット101aの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを行うこと。
(3)回復動作中のフラッシングによってノズル抜けの解消を検出する。
(4)再度、製品の印刷を開始する。もし、仮に、ノズル抜けを回復できない場合は、通常のCLへ移行する。回復動作によりノズル抜けが回復できない場合、印刷動作を止めて通常のCLを行って再印刷しているのと変わりがないためである。
【0024】
一般的にラインプリンタでは、印刷の途中にノズル抜けを回復させる動作として、クリーニング動作を実施することが困難である。また、印刷の途中にクリーニング動作を可能とする機構を有する場合でも、印刷から離れ(ヘッド退避等)が発生し、印刷動作と合わせて実施することは困難である。これに対して、本実施の形態にかかる画像形成装置は、CLと類似した波形によるフラッシングと、ノズル抜けを回復することが可能な長さを持つカラーバー(予め設定されるマークの一例)を吐出する動作と、を含む回復動作を実行する。
【0025】
一般的に、クリーニング動作(CL)には、フラッシングという機能がある。ここで、フラッシングは、インクを吐出させてノズル抜けを解消させるものがある。具体的には、フラッシングは、ヘッドユニット101aからインクを吐出させ当該ヘッドユニット101aの液室内にある吐出不良を生じさせるインクを排出することを含む。また、一般的に、画像データを印刷するジョブの実行時に、フラッシングを行ってフラッシングラインを形成する技術がある。フラッシングラインは、通常、数mm~十数mmのラインであり、各色のヘッドユニット101aから線形状に打つ動作により形成される。また、フラッシングラインは、一定間隔で、ヘッドユニット101aのノズルからインクを吐出させることにより形成されても良い。これにより、印刷動作時にインクの吐出を安定させ、ノズル抜けを予防するものである。
【0026】
回復動作は、これらの機能を組み合わせ、ノズル抜けが発生した際に、用紙上でもクリーニング時に実施するフラッシングに類似した動作をさせ、フラッシングラインを拡張して、ヘッドユニット101aからインクを長く吐出することでカラーバーとして印刷する。コントローラ102は、この回復動作を用紙の搬送速度を減速しつつ実施することでヘッドユニット101aを退避位置に移動させることなくノズル抜けを解消へとつなげる。
【0027】
これにより、印刷を止めた場合に生じる、吐き出し分の損紙を減らすことができる。通常、印刷を止めた場合、ラインプリンタ内の紙を一度全パスにおいて吐き出して印刷を終了し、さらに印刷を再開した場合でも、ラインプリンタ内の紙を一度全パスにおいて吐き出して印刷を実施する。これが、印刷を止めた場合に生じる、吐き出し分の損紙の量である。本実施の形態では、印刷の途中で、用紙の搬送速度を減速した低速モードで回復動作を実施することにより、この損紙量を超えない範囲で用紙の吐き出しを実施し、ノズル抜けが解消した場合、損紙を結果的に減らすことができる。
【0028】
また、印刷中でも回復動作を行うことによりプロダクションを増大させられる。ここで、プロダクションとは、プリンタが稼動している総時間に対して、必要な印刷物を出力している時間に該当する割合のことを指す。通常であれば、印刷速度により損紙を吐き出す時間と、クリーニングを実施する時間と、の総時間が止めているための時間に該当する。本実施の形態によれば、この総時間に該当する時間より短時間でノズル抜けが解消される場合、総じて、印刷時間を増大させることができる。
【0029】
図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置における回復動作の流れの一例を示すフローチャートである。作像部101による一部の用紙に対する画像の印刷が開始される度に、コントローラ102の作像処理部102aは、画像検査器103によって、用紙に印刷された画像に基づいて、ノズル抜けおよび曲がりの少なくとも一方を検出する(ステップS301)。画像検査器103によってノズル抜けおよび曲がりが検出されなかった場合(ステップS301:No)、作像処理部102aは、作像部101による用紙に対する印刷(通常印刷)を行う(ステップS302)。
【0030】
次いで、作像処理部102aは、画像を印刷した用紙の部数が、予め指定された印刷部数に達したか否かを判断する(ステップS303)。画像を印刷した用紙の部数が、予め指定された印刷部数に達した場合(ステップS303:Yes)、作像処理部102aは、作像部101による用紙に対する画像の印刷を停止する(ステップS304)。
【0031】
また、ステップS301において、画像検査器103によってノズル抜けまたは曲がりが検出された場合(ステップS301:Yes)、作像処理部102aは、回復動作を実行する(ステップS305)。次に、作像処理部102aは、画像検査器103によって用紙に印刷された画像を読み取り、その読取結果に基づいて、ノズル抜けおよび曲がりが回復したか否かを判断する(ステップS306)。ノズル抜けおよび曲がりが回復した場合(ステップS306:Yes)、作像処理部102aは、ステップS303に示す処理に進む。
【0032】
一方、ノズル抜けおよび曲がりが回復していない場合(ステップS306:No)、作像処理部102aは、回復動作により形成されたカラーバーが、予め設定された部数または長さに達したか否かを判断する(ステップS307)。カラーバーが予め設定された部数または長さに達していない場合(ステップS307:No)、作像処理部102aは、ステップS305に示す処理に進む。
【0033】
カラーバーが予め設定された部数または長さに達した場合(ステップS307:Yes)、作像処理部102aは、作像部101による用紙に対する画像の印刷を停止する(ステップS308)。次に、作像処理部102aは、印刷停止後、クリーニング動作を実施する設定になっているか否かを判断する(ステップS309)。クリーニング動作を実施する設定になっている場合(ステップS309:Yes)、作像処理部102aは、クリーニング動作を実施する(ステップS310)。
【0034】
クリーニング動作を実施する設定になっていない場合(ステップS309:No)およびクリーニング動作の実施後、作像処理部102aは、用紙に対する画像の再印刷を実施するか否かを判断する(ステップS311)。再印刷を実施する場合(ステップS311:Yes)、作像処理部102aは、ステップS301に示す処理に進む。一方、再印刷を実施しない場合(ステップS311:No)、作像処理部102aは、タスクを終了する。
【0035】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置の回復動作におけるインクの吐出パターンの一例を説明するための図である。例えば、コントローラ102の作像処理部102aは、
図4に示すように、回復動作において、小滴、中滴、大滴等、異なるサイズのインク滴を選択しつつカラーバー(長いフラッシングにより形成されるフラッシングライン)を繰り返し打っても良い。これにより、どのインク滴のモードに対してもインクを吐出させることで、ノズル抜けを解消させることができる。また、通常のクリーニング動作ではヘッドユニット101aのノズル面を汚してしまう動作となってしまうが、ノズル面を汚さない程度の特殊な強いインクの吐出を実施することで、ノズル抜けを解消させることができる。
【0036】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置における回復動作における減速制御および吐出制御の一例を説明するための図である。例えば、コントローラ102の搬送処理部102bは、
図5に示すように、回復動作において、用紙の搬送を減速しながら、長いフラッシングにより形成されるフラッシングライン(カラーバー)を形成しても良い。その際、作像処理部102aは、回復動作において用紙の搬送を減速している場合でも、一定間隔でインクを吐出させても良い。これにより、ヘッドユニット101aに対して付着したインクが乾燥できない吐出量のインクが吐出されることを防止できる。
【0037】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置の回復動作における乾燥制御の一例を説明するための図である。例として、回復動作を実施する条件が、乾燥装置105によってインクを乾燥可能であること、およびヘッドユニット101aのノズル面を汚さない程度のインクの吐出を実施できることである場合、作像処理部102aおよび搬送処理部102bは、用紙の搬送速度を減速しかつ乾燥装置105によってインクを乾燥させる温度を調整して当該インクを十分に乾燥可能としても良い。これにより、損紙量を減らすために用紙の搬送速度を低速モードへと切り替えることもできれば、インクの吐出タイミングを用紙の減速と合わせて吐出量を制御するよりも、効率的に回復動作を実施できる。
【0038】
このように、本実施の形態にかかる画像形成装置によれば、ヘッドユニット101aを印刷から離れさせることなく、ノズル抜けを解消することができるので、印刷中であっても、印刷および用紙の搬送動作を停止せずに、発生したノズル抜けを解消することができる。
【0039】
本実施の形態において、画像形成装置は、インクジェット方式でインクを吐出することで、インクの層を形成する。この場合、画像形成装置は、例えば、インクを吐出すべき位置を示すデータを外部の制御装置から受け取り、このデータに基づいてインクを吐出することで、インクの層を形成する。また、本実施の形態において、画像形成装置は、複数のインクの層を重ねて形成することで、立体的な造形物を作成しても良い。この場合、造形物を作成する動作について、画像形成装置において行う印刷の動作の一例と考えることができる。また、複数のインクの層を積層して造形物を作成する動作について、印刷工程の動作と考えることができる。そのため、本実施の形態においても、画像形成装置は、外部の制御装置に対して設定されている生産条件において指定されている印刷工程の条件に従って、印刷工程を実行する。また、本実施の形態においては、例えば、印刷工程により作成される造形物について、印刷物の一例と考えることができる。また、造形物の状態について、印刷物の状態と考えることができる。また、造形物の状態を示す情報について、印刷物情報の一例と考えることができる。
【0040】
また、本実施の形態において、画像形成装置は、印刷工程の後に焼成処理を行うインクを用いて、印刷工程を実行する。このようなインクとしては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)および樹脂(例えば、バインダ樹脂)を含むインク等を用いることが考えられる。また、このようなインクとしては、焼成処理用の公知のインクを好適に用いることができる。また、この場合、立体物の造形については、例えば、媒体上にインクの層を積層することで行うことが考えられる。この場合、画像形成装置について、例えば、2.5Dプリンタ等と考えることができる。また、立体物の造形については、例えば、媒体を用いず、画像形成装置が備える造形台等の上にインクの層を積層することで行うことも考えられる。この場合、画像形成装置について、例えば、3Dプリンタ等と考えることができる。
【0041】
また、本実施の形態において、焼成処理を行う焼成処理機は、所定工程用装置及び後処理機の一例であり、画像形成装置において印刷工程を実行することで形成される造形物に対し、焼成処理を実行する。この場合、焼成処理については、例えば、対象物を加熱することで非耐熱性の成分を除去して、耐熱性の成分を残す処理等と考えることができる。より具体的に、例えば、アルミナおよび樹脂を含むインク等を用いる場合、焼成処理では、加熱により樹脂の成分を除去して、アルミナの成分を残すことが考えられる。この場合、例えば、所定の条件で温度を変化させつつ造形物を加熱することで、造形物に対する焼成処理として、脱脂処理および焼結処理等と行うことが考えられる。また、本実施の形態において、焼成処理機は、生産条件として指定される焼成処理の条件で焼成処理の工程を実行することで、印刷工程において作成される造形物に対して焼成処理を行う。この場合、焼成処理の条件として、例えば、焼成処理での温度の上昇のさせ方を示す昇温プロセス条件等を設定することが考えられる。このように構成すれば、画像形成装置において、例えば、立体的な造形物の造形を適切に行うことができる。
【0042】
なお、本実施の形態のコントローラ102で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態のコントローラ102で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0043】
さらに、本実施の形態のコントローラ102で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態のコントローラ102で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0044】
本実施の形態のコントローラ102で実行されるプログラムは、上述した各部(作像処理部102a、搬送処理部102b)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサの一例が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、作像処理部102a、搬送処理部102bが主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0045】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0046】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、
前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、
前記搬送部、前記ヘッドユニット、および前記画像検査装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出し、
印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う、画像形成装置。
<2> 前記制御装置は、前記用紙を減速搬送しながら前記回復動作を行う、<1>に記載の画像形成装置。
<3> 前記制御装置は、ユーザ側の設定乃至当該制御装置による設定に基づいて、前記回復動作を実施するか、または、前記回復動作を停止して通常のクリーニング動作へ移行するか、を判定する、<1>に記載の画像形成装置。
<4> 前記制御装置は、前記回復動作における損紙の推定量および印刷を止めている推定時間に基づいて、前記回復動作を実施するか、または、前記回復動作を停止して通常のクリーニング動作を実施するかを判定する、<1>に記載の画像形成装置。
<5> 前記ヘッドユニットは、吐出不良領域または回復動作領域に予め設定されたマークを印刷する、<1>から<4>のいずれか一つに記載の画像形成装置。
<6> 前記制御装置は、後加工機に対して、前記吐出不良領域および前記回復動作領域の位置ないしタイミングに関する信号を発する、<5>に記載の画像形成装置。
<7> 前記後加工機は、前記吐出不良領域および前記回復動作領域を切断する切断部を備える、<6>に記載の画像形成装置。
<8> 前記後加工機は、前記吐出不良領域および前記回復動作領域を別格納または排除する機構を有する、<7>に記載の画像形成装置。
<9> 前記制御装置は、前記吐出不良領域および前記回復動作領域に対応する回復動作部数を記録し、前記回復動作後、印刷ジョブの必要部数のうち、前記回復動作部数を除いた残りの印刷部数を補完して印刷動作させる、<5>から<8>のいずれか一つに記載の画像形成装置。
<10> 用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、を制御する制御装置で実行される画像形成方法であって、
前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出する工程と、
印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う工程と、
を含む画像形成方法。
<11> 用紙を搬送方向に搬送する搬送部と、前記用紙の搬送経路上に並んで配置され、前記搬送部により搬送される前記用紙にインクを吐出するヘッドユニットと、前記用紙に形成される画像をスキャンする画像検査装置と、を制御する制御装置を、
前記画像検査装置によりスキャンした前記画像に基づいて、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を検出し、印刷中および前記用紙の搬送動作中に、前記ヘッドユニットを乾燥させかつ前記ヘッドユニットの表面が汚れない程度でインクを吐出するフラッシングを含み、前記ヘッドユニットからのインクの吐出不良を回復させる回復動作を行う作像処理部、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0047】
101 作像部
102 コントローラ
102a 作像処理部
102b 搬送処理部
103 画像検査器
104 搬送装置
105 乾燥装置
106 後加工機
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】