(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151047
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】感染症媒介生物防除用製剤及びその使用、並びに感染症媒介生物防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 47/34 20060101AFI20241017BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20241017BHJP
A01N 43/30 20060101ALI20241017BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
A01N47/34 G
A01P7/04
A01N43/30
A01N25/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064159
(22)【出願日】2023-04-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和典
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC02
4H011BA01
4H011BA02
4H011BB14
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC08
4H011BC18
4H011BC19
4H011BC20
4H011DA06
4H011DA15
4H011DA16
4H011DA21
4H011DH02
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】感染症媒介生物防除において優れた防除効果を発揮する製剤及びその使用、並びに感染症媒介生物防除方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体を含有する感染症媒介生物防除用製剤、及び前記感染症媒介生物防除用製剤を施用する工程、を含む感染症媒介生物防除方法等に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体を含有する感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項2】
製剤が、屋内残留性噴霧用製剤、空間噴霧用製剤、又は塗布用製剤である請求項1に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項3】
製剤が、屋内残留性噴霧用製剤である請求項1に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項4】
屋内残留性噴霧用製剤が、水和剤(Wettable powder)、顆粒水和剤(Water Dispersible Granules)、水性濃縮懸濁剤(Aqueous Suspension concentrate)、及びマイクロカプセル剤(Microcapsule)からなる群より選ばれる一つである、請求項3に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項5】
感染症媒介生物が蚊である、請求項1~4のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項6】
感染症媒介生物が、マラリア原虫、ウエストナイルウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫及び日本脳炎ウイルスからなる群より選ばれる少なくとも一つの病原体を保有する蚊である、請求項1~5のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項7】
感染症媒介生物が、ヤブカ属(Aedes)、ハマダラカ属(Anopheles)、又はイエカ属(Culex)の蚊である、請求項1~6のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項8】
有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤を施用する工程を含む、感染症媒介生物防除方法。
【請求項10】
工程(1):請求項3~8のいずれか一項に記載の屋内残留性噴霧用製剤を水で希釈する工程、及び工程(2):前記工程(1)により得られた希釈液を、メタフルミゾンの処理量が50~1000mg/m2となるように被処理面に散布する工程、を含む感染症媒介生物防除方法。
【請求項11】
感染症媒介生物が蚊である、請求項9又は10に記載の防除方法。
【請求項12】
感染症媒介生物が、マラリア原虫、ウエストナイルウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫及び日本脳炎ウイルスからなる群より選ばれる少なくとも一つの病原体を保有する蚊である、請求項9又は10に記載の防除方法。
【請求項13】
メタフルミゾンの被処理面がコンクリート壁、木材壁、土壁、又は草木の葉でできた壁である、請求項9~12のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項14】
メタフルミゾンの被処理面が土壁である、請求項13に記載の防除方法。
【請求項15】
感染症媒介生物が、ヤブカ属(Aedes)、ハマダラカ属(Anopheles)、又はイエカ属(Culex)の蚊である、請求項9~12のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項16】
有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる、請求項9~15のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項17】
感染症媒介生物を防除するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤の使用。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載の感染症媒介生物防除用製剤を製造するための、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症媒介生物防除用製剤及びその使用、並びに感染症媒介生物防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアやデング熱など、蚊をはじめとする昆虫やダニ類などの感染症媒介生物(「ベクター」とも称される)によって媒介される疾病は熱帯、亜熱帯地域を中心として猛威をふるっている。中でもマラリアは世界三大感染症の一つとされ、特にサハラ以南のアフリカにて多くの死者を出している。マラリア等を媒介する感染症媒介生物の防除方法としては、長期残効性防虫蚊帳や殺虫剤の屋内残留性噴霧(Indoor residual spray、以下「IRS」と記載)が知られている。IRSとは、建物の壁に殺虫剤を噴霧し、その表面に止まった蚊等の感染症媒介生物に殺虫剤を曝露させることで該生物を殺す又はその寿命を短くし、感染症の原虫の生活環を遮断することで感染症を防ぐ方法である。その他にも、空間噴霧や塗布により、感染症の媒介生物を防除し、感染症を防ぐ方法も知られている。
【0003】
しかしながら、従来知られた感染症媒介生物防除用製剤は、残効性の面で十分な性能を発揮しない場合があることが報告されている(非特許文献1)。
一方、メタフルミゾン(化学名:2’-[2-(4-シアノフェニル)-1-(α,α,α-トリフルオロ-m-トリル)エチリデン]-4-(トリフルオロメトキシ)カルバニロヒドラジド)は、化学式(1)で表される化合物であり、農園芸用殺虫剤として知られている(特許文献1)。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Parasites & Vectors 2018, 11: 71
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、感染症媒介生物防除において優れた防除効果を発揮する、感染症媒介生物防除用製剤及びその使用、並びに感染症媒介生物防除方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、有効成分としてメタフルミゾンを含有し、さらに、界面活性剤及び共力剤を含有する感染症媒介生物防除用製剤を見出し、前記製剤を所定の処理量で施用することにより、感染症媒介生物に対する優れた防除効果を発揮することを見出した。
すなわち本発明は、以下の[1]乃至[18]を含むが、これらの態様に限定されるものではない。
[1] メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体を含有する感染症媒介生物防除用製剤。
[2] 製剤が、屋内残留性噴霧用製剤、空間噴霧用製剤、又は塗布用製剤である[1]に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[3] 製剤が、屋内残留性噴霧用製剤である[1]に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[4] 屋内残留性噴霧用製剤が、水和剤(Wettable powder)、顆粒水和剤(Water Dispersible Granules)、水性濃縮懸濁剤(Aqueous Suspension concentrate)、及びマイクロカプセル剤(Microcapsule)からなる群より選ばれる一つである、[3]に記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[5] 感染症媒介生物が蚊である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[6] 感染症媒介生物が、マラリア原虫、ウエストナイルウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫及び日本脳炎ウイルスからなる群より選ばれる少なくとも一つの病原体を保有する蚊である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[7] 感染症媒介生物が、ヤブカ属(Aedes)、ハマダラカ属(Anopheles)、又はイエカ属(Culex)の蚊である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[8] 有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる、[1]~[7]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤。
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤を施用する工程を含む、感染症媒介生物防除方法。
[10] 工程(1):[3]~[8]のいずれか1つに記載の屋内残留性噴霧用製剤を水で希釈する工程、及び工程(2):前記工程(1)により得られた希釈液を、メタフルミゾンの処理量が50~1000mg/m2となるように被処理面に散布する工程、を含む感染症媒介生物防除方法。
[11] 感染症媒介生物が蚊である、[9]又は[10]に記載の防除方法。
[12] 感染症媒介生物が、マラリア原虫、ウエストナイルウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫及び日本脳炎ウイルスからなる群より選ばれる少なくとも一つの病原体を保有する蚊である、[9]又は[10]に記載の防除方法。
[13] メタフルミゾンの被処理面がコンクリート壁、木材壁、土壁、又は草木の葉でできた壁である、[9]~[12]のいずれか1つに記載の防除方法。
[14] メタフルミゾンの被処理面が土壁である、[13]に記載の防除方法。
[15] 感染症媒介生物が、ヤブカ属(Aedes)、ハマダラカ属(Anopheles)、又はイエカ属(Culex)の蚊である、[9]~[12]のいずれか1つに記載の防除方法。
[16] 有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる、[9]~[15]のいずれか1つに記載の防除方法。
[17] 感染症媒介生物を防除するための、[1]~[8]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤の使用。
[18] [1]~[8]のいずれか1つに記載の感染症媒介生物防除用製剤を製造するための、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感染症媒介生物防除用製剤を、所定の方法で使用する感染症媒介生物防除方法により、感染症媒介生物を効果的に防除することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感染症媒介生物防除方法(以下、「本発明方法」と記す場合がある)は、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体を含有する感染症媒介生物防除用製剤(以下、「本発明製剤」と記す場合がある)を使用する。
1実施態様において、本発明の感染症媒介生物防除方法は、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体を含有する屋内残留性噴霧用製剤を水で希釈する工程を含む。
【0011】
本発明製剤は、有効成分としてメタフルミゾンを含有する。メタフルミゾンは、前記式(1)で表される。前記式(1)は、メタフルミゾンの幾何異性体のうち、E体を表すが、本発明製剤に係るメタフルミゾンは、E体90重量%以上、Z体10重量%以下で構成される混合物であり得る。メタフルミゾンは、それ自体公知の化合物であるので、市販品を入手するか、又はそれ自体公知の方法、例えば、特開平5-4958号公報に記載の方法により製造することができる。ここで、「有効成分としてメタフルミゾンを含有する」とは、本発明製剤において、メタフルミゾンが主成分であるか、又はメタフルミゾンが感染症媒介生物に対する防除活性を実質的に発現していることを示し、いわゆる活性成分であることを示す。すなわち、本発明製剤に含まれる、界面活性剤、共力剤、及び担体、並びに本発明製剤に含まれ得る、消泡剤、防腐剤、粘結剤、滑沢剤、及びpH調整剤等の製剤助剤は前記有効成分には含めないものとする。
本発明製剤は、メタフルミゾンに加えて、他の1又は2以上の有効成分を含有することを妨げない。
本明細書において、「有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる」とは、本発明製剤において、有効成分、すなわち、感染症媒介生物に対する防除活性を示す活性成分の総重量に対し、メタフルミゾンが90重量%以上、好ましくは93重量%以上、より好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、更に好ましくは99重量%以上含まれることを意味し、メタフルミゾンが有効成分の総重量に対し、100重量%であってもよいことを意味する。
本発明製剤はメタフルミゾンを、製剤の重量当たり、通常0.1~30重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは5~20重量%含有する。
【0012】
本発明製剤に含有されるメタフルミゾンの体積中位径(volume mean diameter)は、本発明製剤が感染症媒介生物に対する所望の防除活性を示す限り特に限定されないが、通常、1~50μmの範囲が好ましく、より好ましくは2~30μmの範囲であり、より好ましくは2~25μmの範囲である。本発明製剤がマイクロカプセル剤である場合、メタフルミゾンを含むカプセルの体積中位径(volume mean diameter)は、本発明製剤が感染症媒介生物に対する所望の防除活性を示す限り特に限定されないが、通常、1~50μmの範囲が好ましく、より好ましくは2~30μmの範囲であり、より好ましくは2~25μmの範囲である。
体積中位径は、体積基準の頻度分布において累積頻度で50%となる粒径(体積50%径(D50)とも呼称する)を指し、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて湿式測定により求めることができる。より具体的には、被測定物を水中に分散させてレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定する。被測定物が水溶性である場合は、該被測定物の飽和水溶液を測定媒体として使用する。かかるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、マルバーン社製のマスターサイザー2000及びマスターサイザー3000や堀場製作所製のPartica LA-960、島津製作所製のSALD-2300などが挙げられる。
【0013】
本発明製剤は、1つ以上の界面活性剤を含有する。かかる界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びそれらの2つ以上(例えば、2個、3個、又は4個)の混合物が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、糖エステル、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンビスフェノール、ポリオキシアルキレンの多芳香環、シリコン系ポリオキシエチレンエーテル、シリコン系ポリオキシエチレンエステル、フッ素系ポリオキシエチレンエーテル、及びフッ素系ポリオキシエチレンエステルが挙げられる。具体的には、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレンベンジル化フェニル、及びポリオキシアルキレンスチリル化フェニルエーテルが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、Tween20(ポリソルベート20又はモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンともいう)が挙げられる。
【0014】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアミン塩酸塩などのアルキルアミン塩酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩などのアルキル第四級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ポリアルキルビニルピリジニウム塩が挙げられる。塩としては、例えば、塩化物、臭化物、メチル硫酸塩、及びエチル硫酸塩が挙げられる。
【0015】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩型界面活性剤、スルホン酸塩型界面活性剤、カルボン酸塩型界面活性剤、及びリン酸エステル塩型界面活性剤を挙げることができる。硫酸エステル塩型界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール硫酸エステル塩を挙げることができる。スルホン酸塩型界面活性剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸塩及びそのホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩(例えば、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)及びそのホルムアルデヒド縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩(例えば、スルホメチル化リグニンスルホン酸ナトリウムなどのスルホメチル化リグニンスルホン酸塩)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルケニルスルホン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル塩を挙げることができる。カルボン酸塩型界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、N-メチル-脂肪酸サルトシネーチ塩、メタアクリル酸重合物塩、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合物塩、アクリル酸とメタアクリル酸ポリオキシエチレンエステルとの共重合物塩、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合物塩、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物塩、アクリル酸とマレイン酸との共重合物塩、マレイン酸とイソブチレンとの共重合物塩、及びスチレンとマレイン酸との共重合物塩を挙げることができる。リン酸塩エステル塩型界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンモノアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリル化フェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリル化フェニルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンリン酸エステル塩、及びアルキルリン酸エステル塩が挙げられる。
【0016】
両性界面活性剤としては、例えば、N-ラウリルアラニン、N,N,N-トリメチルアミノプロピオン酸、N,N,N-トリヒドロキシエチルアミノプロピオン酸、N-ヘキシル-N,N-ジメチルアミノ酢酸、1-(2-カルボキシエチル)ピリミジニウムベタイン、及びレシチンが挙げられる。
【0017】
1実施態様において、本発明製剤は、少なくとも1個(2個以上が好ましい)の非イオン性界面活性剤を含む。
【0018】
本発明製剤は界面活性剤を合計量で、製剤の重量当たり、通常0.1~20重量%含有する。
【0019】
本発明製剤に含まれる界面活性剤は、アジュバントとしての機能を有し得る。ここで、アジュバントとは、農薬の効果を補強する物質(機能性展着剤)を意味する。アジュバントとしての機能を有する界面活性剤としては、例えば、Tween20が挙げられる。
1実施態様において、本発明製剤は、アジュバントを含む。すなわち、1実施態様において、本発明製剤は、メタフルミゾン、アジュバント、共力剤、及び担体を含有する屋内残留性噴霧用製剤である。
1実施態様において、本発明製剤は、アジュバント及び界面活性剤を含む。すなわち、1実施態様において、本発明製剤は、メタフルミゾン、アジュバント、共力剤、界面活性剤及び担体を含有する屋内残留性噴霧用製剤である。
【0020】
本発明製剤は、共力剤を含有する。共力剤とは、有効成分と混合又は併用して用いた場合に、有効成分の効力を増強する成分を意味する。共力剤としては、例えば、1-ドデシル-1H-イミダゾール(1-dodecyl-1H-imidazole)、N-(2-エチルへキシル)-8,9,10-トリノルボルン-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド(N-(2-ethylhexyl)-8,9,10-trinorborn-5-ene-2,3-dicarboximide)、N,N-ジブチル-4-クロロベンゼンスルホンアミド(N,N-dibutyl-4-chlorobenzenesulfonamide)、ブカルポレート(bucarpolate)、ジエトレート(dietholate)、ジエチルマレエート(diethylmaleate)、イプロベンホス(iprobenfos)、ピペロニルブトキシド(piperonyl butoxide)(PBO)、ピペロニルシクロネン(piperonyl cyclonene)、ピプロタル(piprotal)、プロピルイソム(propyl isome)、サフロキサン(safroxan)、セサメックス(sesamex)、セサモリン(sesamolin)、スルホキシド(sulfoxide)、トリブホス(tribufos)、ベルブチン(verbutin)、DMC(1,1-bis(4-chlorophenyl)ethanol)、FDMC(1,1-bis(4-chlorophenyl)-2,2,2-trifluoroethanol)、ETN(1,2-epoxy-1,2,3,4-tetrahydronaphthalene)、ETP(1,1,1-trichloro-2,3-expoxypropane)、PSCP(phenylsaligenin cyclic phosphate)、TBPT(S,S,S-tributyl phosphorotrithioate)、、TPP(triphenyl phosphate)及びディル抽出物(extract of Anethum sowa)が挙げられる。これらの中でも、ピペロニルブトキシドが好ましい。
【0021】
本発明製剤は共力剤を合計量で、製剤の重量当たり、通常0.1~60重量%、好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~40重量%含有する。
本発明製剤におけるメタフルミゾンと共力剤との重量比は、用いる共力剤の種類にもよるが、例えば、5:1~1:5が挙げられ、2:1~1:2が好ましく、1:1~1:2がより好ましい。
【0022】
本発明製剤は、担体を含有する。担体としては、例えば、鉱物担体、植物質担体、合成担体、水溶性担体、ガス状担体、及び水が挙げられる。鉱物担体としては、例えば、カオリナイト、ディッカナイト、ナクライト及びハロサイト等のカオリン鉱物;クリソタイル、リザータイト、アンチコライト及びアメサイト等の蛇紋石;ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト及びマグネシウムモンモリロナイト等のモンモリロナイト鉱物;サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びハイデライト等のスメクタイト;パイロフィライト、タルク、蝋石、白雲母、フェンジャイト、セリサイト及びイライト等の雲母;非晶質シリカ、クリストバライト及びクォーツ等のシリカ;アタパルジャイト及びセピオライト等の含水珪酸マグネシウム;ドロマイト及び炭酸カルシウム微粉末等の炭酸カルシウム;ギプサム及び石膏等の硫酸塩鉱物;ゼオライト、沸石、凝灰石、バーミキュライト、ラポナイト、軽石、珪藻土、酸性白土、活性白土が挙げられる。植物質担体としては、例えば、セルロース(例えば、セルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩などのセルロースカルボキシメチルエーテルの塩)、籾殻、小麦粉、木粉、澱粉、糠、ふすま、及び大豆粉が挙げられる。合成担体としては、例えば、湿式法シリカ、乾式法シリカ、湿式法シリカの焼成品、表面改質シリカ、非晶質シリカ、及び加工澱粉が挙げられる。水溶性担体としては、例えば、乳糖、ショ糖、デキストリン等の糖類、尿素、硫安、食塩、芒硝、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、及びリンゴ酸が挙げられる。ガス状担体としては、例えば、フルオロカーボン、ブタンガス、LPG(液化石油ガス)、ジメチルエーテル、窒素、及び炭酸ガスが挙げられる。これらの中でも、乳糖が特に好ましい。本発明製剤は担体を合計量で、製剤の重量当たり、通常1~99.8重量%含有する。
【0023】
本発明製剤がマイクロカプセル剤である場合、通常、マイクロカプセル化剤を含有する。かかるマイクロカプセル化剤としては、天然ゴム、合成ゴム、樹脂(スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、ロジン、メラミン等)、ワックス(植物油脂、動物油脂、及びこれらの誘導体、パラフィン、オレフィン等)、多糖類(キサンタンガム、セルロースエステル、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース又はその塩、デキストリン、澱粉、グアーガム、アラビアガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、チロース、澱粉キサンテート、カラギナン等)、タンパク質(ゼラチン等)が挙げられる。本発明製剤がマイクロカプセル化剤を含有する場合、その合計含量は、製剤の重量当たり、通常0.001~20重量%である。
【0024】
本発明製剤は、溶剤を含有してもよい。かかる溶剤としては、脂肪族炭化水素(ヘキサン、1-ヘキセン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、1-ヘプテン、d-リモネン、ピネン、ヘキサデカン等)、芳香族炭化水素(アルキルベンゼン(トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン、p-ジエチルベンゼン等)、アルキルベンゼンの誘導体、アルキルナフタレン、アルキルナフタレンの誘導体、テトラヒドロナフタレン等)、塩素化炭化水素(モノクロロエチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン等)、ケトン類(シクロヘキサノン、アセトン、2-ヘプタノン、イソホロン、メシチルオキシド、メチルイソアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ジアセトンアルコール、メチルシクロヘキサノン等)、エステル類(脂肪酸エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソボルニル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸メチル、オレイン酸メチル、ラウリン酸メチル、アジピン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル等)、乳酸エステル(乳酸エチル、乳酸プロピル等)、炭酸エステル(炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジブチル等)、エステル化ポリオール類(グリセロールアセテート、グリコールアセテート、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、ジエチレングリコールアビエテート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールモノメチルエステル等)、ラクトン(γ-ブチルラクトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等)、アミド類(N-オクチル-カプロラクタム、N-ドデシル-カプロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、脂肪酸ジメチルアミド(N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド等)、アルキルピロリドン(N-メチルピロリドン、N-オクチル-ピロリドン、N-ドデシル-ピロリドン等)、ラクタム(α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム等)、アミン類(オクチルアミン、オクチルアミン酢酸塩、オレイルアミン、ジエタノールアミン、ラウリルアミン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール等)、ヘキシレングリコール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、メトキシプロパノール(1-メトキシ-2-プロパノール)、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレングルコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン等)、鉱物油類(ナフサ、石油エーテル、灯油、ディーゼル油、パラフィン、オレフィン等)、動植物由来の油類、植物由来の油類(パーム油、ナタネ油、ヒマシ油、ココナッツ油、大豆油及びその誘導体等)、動物由来の油類(イワシ油、サンマ油、鯨油及びその誘導体等)、ジメチルスルホキシド、シリコーンオイル、アセトニトリル、プロパネニトリル、酸無水物(無水酢酸など)、リン酸トリエチル、オレイン酸、プロピオン酸、乳酸、キシレンスルホン酸等が挙げられる。本発明製剤が溶剤を含有する場合、その合計含量は、製剤の重量当たり、通常0.1~30重量%である
【0025】
本発明製剤は、通常の殺虫剤含有製剤において用いられる製剤助剤を含有していてもよい。かかる製剤助剤としては、例えば、消泡剤、防腐剤、粘結剤、滑沢剤、及びpH調整剤等が挙げられる。本発明製剤が製剤助剤を含有する場合、その合計含有量は、製剤の重量当たり、通常0.1~10重量%である。
【0026】
本発明製剤としては、具体的には、例えば、屋内残留性噴霧用製剤、空間噴霧用製剤、及び塗布用製剤が挙げられ、中でも、屋内残留性噴霧用製剤が好ましく用いられる。
【0027】
<屋内残留性噴霧用製剤>
本発明製剤が屋内残留性噴霧用製剤である場合、本発明製剤は、通常、水に易分散であり水で希釈して用いられる製剤である。かかる製剤としては、水和剤(wettable powder)、顆粒水和剤(water dispersible granules)、水性濃縮懸濁剤(Aqueous suspension concentrate)、及びマイクロカプセル剤(Microcapsule)が挙げられる。
【0028】
本発明製剤が、水和剤である場合、1実施態様において、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、担体と、さらに必要に応じて製剤助剤とを混合し、エアーミル等の乾式粉砕機を用いてメタフルミゾンが所望の体積中位径となるように粉砕することにより、本発明製剤を製造することができる。また、別の実施態様において、あらかじめ所望の体積中位径となるようにエアーミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕したメタフルミゾンを、界面活性剤、共力剤、担体、さらに必要に応じて製剤助剤と混合することによっても、水和剤の形態である本発明製剤を製造することができる。
【0029】
本発明製剤が、顆粒水和剤である場合、1実施態様において、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、担体と、さらに必要に応じて製剤助剤とを混合し、エアーミル等の乾式粉砕機を用いてメタフルミゾンが所望の体積中位径となるように粉砕した後に、押出造粒機などにより顆粒状に成型することにより、本発明製剤を製造することができる。また、別の実施態様において、あらかじめ所望の体積中位径となるようにエアーミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕したメタフルミゾンを、界面活性剤、共力剤、担体、さらに必要に応じて製剤助剤とを混合し、押出造粒機などにより顆粒状に成型することによっても、顆粒水和剤の形態の本発明製剤を製造することができる。
【0030】
本発明製剤が、水性濃縮懸濁剤である場合、1実施態様において、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、担体としての水と、さらに必要に応じて製剤助剤とを混合し、ビーズミル等の湿式粉砕機を用いてメタフルミゾンが所望の体積中位径となるように粉砕することにより、本発明製剤を製造することができる。必要に応じて、湿式粉砕機を用いて混合物を粉砕した後に、さらに製剤助剤を添加してもよい。また、別の実施態様において、あらかじめ所望の体積中位径となるようにエアーミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕したメタフルミゾンを、界面活性剤、共力剤、水、さらに必要に応じて製剤助剤と混合することによっても、水性濃縮懸濁剤の形態の本発明製剤を製造することができる。
本発明製剤が、マイクロカプセル剤である場合、1実施形態において、メタフルミゾン、溶剤、共力剤、界面活性剤、マイクロカプセル化剤を混合し、界面活性剤を含む水溶液中で乳化する。該乳化液が所望の体積中位径となるように乳化することにより、本発明製剤を製造することができる。
【0031】
本発明製剤を希釈する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、井戸水、雨水、及び河川の水などが挙げられる。井戸水や河川の水などに関しては、軟水であるか硬水であるかを問わず用いることができる。
【0032】
<空間噴霧用製剤>
本発明製剤が空間噴霧用製剤である場合、1実施態様において、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び溶剤を混合してメタフルミゾン含有溶液を得る。次に、水及びポリビニルアルコールを混合したものに上記メタフルミゾン含有溶液を混合し、本発明製剤を製造することができる。
【0033】
<塗布用製剤>
本発明製剤が塗布用製剤である場合、1実施態様において、上述の水性懸濁製剤やマイクロカプセル製剤に、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル・ベオバ樹脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス等を混合し、本発明製剤を製造することができる。
【0034】
本発明製剤は、感染症媒介生物を防除するために使用される製剤であり得る。
本明細書において、「防除」とは、駆除、忌避及び予防を含む概念である。「駆除」とは、感染症媒介生物を死滅させること、追い払うこと、又は寄せ付けないことを含む概念を表す。
本発明製剤が適用され得る感染症媒介生物としては、例えば、蚊(Culicidae)、サシガメ(Reduviidae)、ブユ(Simuliidae)、ダニ(Acari)、シラミ(Anoplura)、サシチョウバエ(Phlebotominae)、ツェツェバエ(Glossinidae)、ゴキブリ(Blattodea)、及びトコジラミ(Cimicidae)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でも蚊、サシガメ、サシチョウバエ、ツェツェバエに好適に適用され、蚊により好適に適用される。蚊の中でも、ヤブカ属(Aedes)、ハマダラカ属(Anopheles)、及びイエカ属(Culex)に属するものに特に好適に適用される。
【0035】
本発明製剤が施用されることにより、感染拡大を防ぐことのできる感染症としては、マラリア、ウエストナイル熱、チクングニア熱、デング熱、リフトバレー熱、黄熱、リンパ系フィラリア症、日本脳炎、トリパノソーマ症、リーシュマニア症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。感染拡大を防ぐことのできる好ましい感染症としてはマラリア、ウエストナイル熱、チクングニア熱、デング熱、リフトバレー熱、黄熱、リンパ系フィラリア症、日本脳炎が挙げられ、さらに好ましくはマラリアが挙げられる。すなわち、本発明製剤は、これらの感染症の感染拡大を防ぐために適用される製剤であり得る。
【0036】
マラリアはマラリア原虫を保有するハマダラカ属の蚊などによって媒介され得、ウエストナイル熱はウエストナイルウイルスを保有するイエカ属の蚊などによって媒介され得、チクングニア熱はチクングニアウイルスを保有するヤブカ属の蚊などによって媒介され得、デング熱はデングウイルスを保有するヤブカ属の蚊などによって媒介され得、リフトバレー熱はリフトバレー熱ウイルスを保有するヤブカ属の蚊などによって媒介され得、黄熱は黄熱ウイルスを保有するヤブカ属の蚊などによって媒介され得、リンパ系フィラリア症は、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫又はチモール糸状虫を保有する、ヤブカ属、ハマダラカ属又はイエカ属の蚊などによって媒介され得、日本脳炎は日本脳炎ウイルスを保有するイエカ属の蚊などによって媒介され得、トリパノソーマ症はトリパノソーマ原虫を保有する、サシガメ又はツェツェバエなどによって媒介され得、リーシュマニア症はリーシュマニア原虫を保有するサシチョウバエなどによって媒介され得る。
【0037】
したがって、1実施態様において、本発明製剤は、マラリア原虫、ウエストナイルウイルス、チクングニアウイルス、デングウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫及び日本脳炎ウイルスからなる群より選ばれる少なくとも一つの病原体を保有する蚊を防除するために適用されるものであり、別の実施態様において、本発明製剤は、トリパノソーマ原虫を保有するサシガメ又はツェツェバエを防除するために適用されるものであり、更に別の実施態様において、本発明製剤は、リーシュマニア原虫を保有するサシチョウバエを防除するために適用されるものである。
1実施態様において、本発明製剤は、上記に例示した感染症媒介生物のうち、ピレスロイド等の他の殺虫剤に抵抗性を有する感染症媒介生物の防除に有効である。別の実施態様において、本発明製剤は、上記に例示した感染症媒介生物のうち、ピレスロイド等の他の殺虫剤に抵抗性を有する感染症媒介生物を防除するための製剤である。
【0038】
本発明方法は、屋内残留性噴霧用製剤、空間噴霧用製剤、又は塗布用製剤を施用する工程を含む。
1実施態様において、本発明方法は、屋内残留性噴霧用製剤を施用する工程を含む。
【0039】
本発明方法の1実施態様において、希釈液中のメタフルミゾンの濃度は、希釈液の体積当たり、通常1~50g/Lの範囲、好ましくは5~30g/Lの範囲に調整される。
【0040】
本発明方法の1実施態様において、本発明製剤の水希釈液を、被処理面に散布する工程を含む。被処理面へのメタフルミゾンの処理量は、通常、50~1000mg/m2、好ましくは、50~800mg/m2、より好ましくは、150~500mg/m2である。本発明製剤の水希釈液の散布には、噴霧散布機が使用され得る。
【0041】
本発明方法の1実施態様において、本発明製剤の水希釈液を散布する被処理面としては、例えば、コンクリート壁、木材壁、金属壁、テント生地、土壁、及び草木の葉でできた壁などが挙げられ、この中でもコンクリート壁、木材壁、土壁、及び草木の葉でできた壁が好ましく、さらに土壁が特に好ましい。上記の壁はその表面が塗料などで塗装されていてもよい。上記の土壁とは、例えば、土壌や藁、牛糞、及び石膏などを混ぜて水を加えて混練し、それを積み上げる、又はブロックなどで作った壁の表面に塗布して乾燥させる、ことにより作成される。前記土壁は内部に空隙を有する場合がある。空隙とは、土壁における凹凸のへこみ部分や気泡の入り込みにより空間ができた部分のことを言う。本発明方法における被処理面としての土壁は、内部に空隙を有していても、いなくてもいずれの土壁でもよいが、内部に空隙を有する土壁が好ましい。空隙率は一定の大きさの幅であれば特に限定されるものではないが、例えば、空隙率が10~60%の範囲である土壁が好ましく、空隙率が30~45%の範囲である土壁がより好ましい。土壁の空隙率は、X線CTスキャンにより撮影された内部画像の解析や水銀圧入法などの方法で測定することができるが、本発明における空隙率とは、X線CTスキャンにより撮影された画像を解析し、空隙部分の面積の比率を計算することにより求められた空隙率を意味する。
【0042】
本発明方法の1実施態様において、メタフルミゾンの被処理面は、建物の内側(例えば、壁、天井、床)であってもよいし、建物の外側であってもよいが、建物の内側(例えば、壁、天井、床)であることが好ましい。
【0043】
本発明方法により防除される感染症媒介生物としては、上記のように、本発明製剤が適用され得る感染症媒介生物として例示した生物が挙げられ、好適な例もまた同様である。
【0044】
本発明方法により感染拡大を防ぐことのできる感染症としては、上記のように、
本発明製剤が施用されることにより、感染拡大を防ぐことのできる感染症として例示した感染症が挙げられ、好適な例もまた同様である。
1実施態様において、本発明方法は、上記に例示した感染症媒介生物のうち、ピレスロイド等の他の殺虫剤に抵抗性を有する感染症媒介生物の防除に有効である。別の実施態様において、本発明方法により、上記に例示した感染症媒介生物のうち、ピレスロイド等の他の殺虫剤に抵抗性を有する感染症媒介生物を防除することができる。
【0045】
1実施態様において、本発明製剤は、有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる製剤であり、1実施態様において、本発明方法は、有効成分が、実質的にメタフルミゾンのみからなる本発明製剤を使用する感染症媒介生物防除方法である。
【実施例0046】
次に本発明に使用する製剤の製造例及び試験例等によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0047】
製剤例1
メタフルミゾン10重量部、Soprophor(登録商標) FLK 5重量部、ピペロニルブトキシド20重量部、イオン交換水15重量部、及び直径1mmのガラスビーズ30重量部を混合し、スラリーを得る。得られたスラリーをスリーワンモーターで混合し、メタフルミゾンの粉砕液を得る。また、Kelzan S plus 0.1重量部、Veegum(登録商標) Granule 0.2重量部、プロピレングリコール5重量部、Proxel(登録商標) GXL 0.2重量部、及びイオン交換水44.5重量部を混合し、増粘剤液を得る。前記メタフルミゾンの粉砕液と前記増粘剤液とを混合し、水性懸濁液を得る。
【0048】
製剤例2
メタフルミゾン30.0重量部、ピペロニルブトキシド30.0重量部、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム3.0重量部、スルホメチル化リグニンスルホン酸ナトリウム4.0重量部、セルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩0.25重量部、非晶質シリカ1.0重量部、及び乳糖31.75重量部を混合し、バンタムミルとエアーミルを用いて、粉末状混合物を得る。該粉末状混合物に水約10重量部を加えて混練し、得られた混練物を1.0mmφのスクリーンから押出造粒した後に乾燥することにより、顆粒水和剤を得る。
【0049】
製剤例3
メタフルミゾン10重量部、Tween 20 5重量部、及びピペロニルブトキシド20重量部、Solvesso(登録商標) 200ND 20重量部を混合し、スラリーを得る。得られたスラリーにDesmodur(登録商標) L-75 0.15重量部を加え、油相を得る。該油相とポリビニルアルコール1%水溶液40重量部とを混合し、乳化させた後に、60℃に加温してカプセルスラリーを得る。また、Kelzan S plus 0.1重量部、Veegum(登録商標) Granule 0.2重量部、プロピレングリコール5重量部、Proxel(登録商標) GXL 0.2重量部、及びイオン交換水14.35重量部を混合し、増粘剤液を得る。前記カプセルスラリーと前記増粘剤液とを混合し、マイクロカプセル剤を得る。
【0050】
製剤例4
メタフルミゾン10重量部、Tween 20 5重量部、ピペロニルブトキシド15重量部、リグニンスルホン酸カルシウム5部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、及びシリカ63部を粉砕混合し、水和剤を得る。
【0051】
製剤例5
メタフルミゾン10重量部、Soprophor(登録商標) FLK 5重量部、ピペロニルブトキシド20重量部、イオン交換水15重量部、及び直径1mmのガラスビーズ30重量部を混合し、スラリーを得る。得られたスラリーをスリーワンモーターで混合し、メタフルミゾンの粉砕液を得る。得られたメタフルミゾンの粉砕液50重量部と増粘液9重量部に、アクリルエマルション20重量部(ガラス転移温度-10℃)、アクリル樹脂エマルション20重量部(ガラス転移温度70℃)、及び酸化パラフィンワックス1重量部を混合し、塗布用製剤を得る。
【0052】
製剤例6
メタフルミゾン10重量部、ピペロニルブトキシド20重量部、及びソルベッソ200ND15重量部を混合し、油層を得る。また、ポリビニルアルコール2重量部及びイオン交換水43重量部を混合し、ポリビニルアルコール水溶液を得る。該油層を該ポリビニルアルコール水溶液で乳化し、乳化液を得る。別途、Kelzan S plus 0.1重量部、Veegum(登録商標) Granule 0.2重量部、プロピレングリコール5重量部、Proxel(登録商標) GXL 0.2重量部、及びイオン交換水14.35重量部を混合し、増粘剤液を得る。該乳化液に、Tween 80 2重量部及び該増粘剤液を8重量部加え、空間噴霧用製剤を得る。
【0053】
実施例1、比較例1~3は、WHOボトルバイオアッセイ法に準じて試験を行った。
【0054】
実施例1
Tween20(界面活性剤)とメタフルミゾンとを、重量比が1:1となるように溶解させたアセトン溶液に、メタフルミゾンとピペロニルブトキシド(PBO)(共力剤)との重量比が2:1、1:1、又は1:2となるようにピペロニルブトキシドを添加した溶液1mLを調製し、250mLのガラス瓶の内側にまんべんなくコーティングし、60分間乾燥させた。
上記の方法でメタフルミゾンの薬量が2.5、5、12.5、25、50、125、250、500、1250、又は2500μg/本となるように処理したガラス瓶をそれぞれ1本準備し、ピレスロイドに抵抗性をもつアラビエンシスハマダラカの雌成虫をそれぞれ20匹入れて60分間曝露させた。曝露後のアラビエンシスハマダラカの雌成虫を清潔なプラスチックカップに移し、砂糖水を与えて3日後の死虫率を観察した。
死虫率(%)=(1-生存虫数/20)×100
得られた死虫率(%)からLog-probit法で半数致死薬量(μg/本)を算出した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1(共力剤なし)
Tween20(界面活性剤)とメタフルミゾンとを、重量比が1:1となるように溶解させたアセトン溶液1mLを調製し、250mLのガラス瓶の内側にまんべんなくコーティングし、60分間乾燥させた。
上記の方法でメタフルミゾンの薬量が2.5、5、12.5、25、50、125、250、500、1250、又は2500μg/本となるように処理したガラス瓶をそれぞれ1本準備し、ピレスロイドに抵抗性をもつアラビエンシスハマダラカの雌成虫をそれぞれ20匹入れて60分間曝露させた。曝露後のアラビエンシスハマダラカの雌成虫を清潔なプラスチックカップに移し、砂糖水を与えて3日後の死虫率を観察した。
死虫率(%)=(1-生存虫数/20)×100
得られた死虫率(%)からLog-probit法で半数致死薬量(μg/本)を算出した。結果を表1に示す。
【0056】
比較例2(界面活性剤なし)
メタフルミゾンを溶解させたアセトン溶液に、メタフルミゾンとピペロニルブトキシド(PBO)(共力剤)との重量比が2:1、1:1、又は1:2となるようにピペロニルブトキシドを添加した溶液1mLを調製し、250mLのガラス瓶の内側にまんべんなくコーティングし、60分間乾燥させた。
上記の方法でメタフルミゾンの薬量が2.5、5、12.5、25、50、125、250、500、1250、又は2500μg/本となるように処理したガラス瓶をそれぞれ1本準備し、ピレスロイドに抵抗性をもつアラビエンシスハマダラカの雌成虫をそれぞれ20匹入れて60分間曝露させた。曝露後のアラビエンシスハマダラカの雌成虫を清潔なプラスチックカップに移し、砂糖水を与えて3日後の死虫率を観察した。
死虫率(%)=(1-生存虫数/20)×100
得られた死虫率(%)からLog-probit法で半数致死薬量(μg/本)を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
比較例3(共力剤なし、かつ界面活性剤なし)
メタフルミゾンを溶解させたアセトン溶液1mLを調製し、250mLのガラス瓶の内側にまんべんなくコーティングし、60分間乾燥させた。
上記の方法でメタフルミゾンの薬量が2.5、5、12.5、25、50、125、250、500、1250、又は2500μg/本となるように処理したガラス瓶をそれぞれ1本準備し、ピレスロイドに抵抗性をもつアラビエンシスハマダラカの雌成虫をそれぞれ20匹入れて60分間曝露させた。曝露後のアラビエンシスハマダラカの雌成虫を清潔なプラスチックカップに移し、砂糖水を与えて3日後の死虫率を観察した。
死虫率(%)=(1-生存虫数/20)×100
得られた死虫率(%)からLog-probit法で半数致死薬量(μg/本)を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3で算出したメタフルミゾンの半数致死薬量(μg/本)を表Aに示す。
【0059】
【0060】
以上のように、メタフルミゾン、界面活性剤、共力剤、及び担体を含有する本発明の感染症媒介生物防除用製剤は、より効果的に感染症媒介生物防除を防除することができる。
【0061】
試験例2
たい肥/砂/おがくず/灰を重量比で1:1:1:1で混合し、水を加えて混練し、シナベニア上(15cm×15cm)に厚さ2mmで塗布して室温で乾燥させることにより、土壁を作製する。製剤例1、2、3又は4の製剤を水で希釈し、メタフルミゾンの処理量が300mg/m2となるように前記土壁に散布する。製剤の水希釈液を散布した壁を室温で3か月間保存した後に、Guidelines for testing mosquito adulticides for indoor residual spraying and treatment of mosquito nets(WHO reference number: WHO/CDS/NTD/WHOPES/GCDPP/2006.3)の2.4.2に記載の方法に準じ、効力評価を実施する。ただし、苦死虫率の評価は、メタフルミゾン処理面への曝露から3日後又は5日後に行う。